JP7169413B2 - 感光性樹脂組成物、硬化物および電子回路基板 - Google Patents
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Description
特許文献3に開示される感光性樹脂組成物は、カプロラクトン変性(メタ)アクリレートを配合することにより、その柔軟性を向上し得るものである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂としては、感光性の不飽和二重結合を1つ以上とカルボキシル基とを有している樹脂であれば好適に使用し得る。
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂としては、(A-1)多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(例えば多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等)が好適に用いられる。このような多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂は、例えば以下の方法により作製される。
即ち、多官能性エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸(例えばアクリル酸やメタクリル酸(以下、これらを合わせて(メタ)アクリル酸と称する)等)を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(例えばエポキシ(メタ)アクリレート等)を作製し、この反応で当該ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に生成された水酸基に更に多塩基酸または多塩基酸無水物を反応させることにより得られる。
前記多官能性エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、好ましくは3,000g/eq以下であり、より好ましくは1,000g/eq以下であり、特に好ましくは100g/eq以上500g/eq以下である。
前記多官能性エポキシ樹脂としては、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂(例えばシリコーン変性エポキシ樹脂等)、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えばо-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等)、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等が挙げられる。またこれらの多官能性エポキシ樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものも使用し得る。
またこれらの多官能性エポキシ樹脂は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
また前記多官能性エポキシ樹脂と前記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は公知の方法を使用でき、例えば前記多官能性エポキシ樹脂と前記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適切な希釈剤中で加熱することにより反応させることができる。
前記多塩基酸としては、例えばコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびジグリコール酸等が挙げられる。また前記多塩基酸無水物としては、これらの無水物が挙げられる。
前記多塩基酸または多塩基酸無水物は、前記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に生成された水酸基にこれを反応させることで、当該ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に遊離のカルボキシル基を導入させるものである。
前記多塩基酸または多塩基酸無水物は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有するグリシジル化合物としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、前記1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有するグリシジル化合物に含まれるグリシジル基は、1分子中に複数存在していてもよい。
またこれらのグリシジル化合物は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
即ち、a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に、b)カルボキシル基1つあたりの炭素数が10以上である脂肪酸とc)エチレン性不飽和基含有カルボン酸を反応させて長鎖脂肪酸変性エチレン性不飽和基含有変性エポキシ樹脂を作製する。そしてこの際生成された水酸基(主に2級)にd)多塩基酸無水物を付加させることで、前記長鎖脂肪酸変性エチレン性不飽和基含有変性エポキシ樹脂に遊離のカルボキシル基を導入したもの(以下、(A-2)感光性樹脂という。)。
前記1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2つ以上有しているエポキシ樹脂であれば好適に使用し得る。
前記1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、好ましくは3,000g/eq以下であり、より好ましくは1,000g/eq以下であり、特に好ましくは100g/eq以上500g/eq以下である。当該エポキシ当量をこの範囲とすることにより、作製される長鎖脂肪酸変性エチレン性不飽和基含有変性エポキシ樹脂の長鎖脂肪酸と前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸の導入割合の低下による感光性と柔軟性の低下を防止することができる。
またこれらのエポキシ樹脂は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記カルボキシル基1つあたりの炭素数が10以上である脂肪酸は、前記1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基と反応することで当該エポキシ樹脂に前記脂肪酸由来の長鎖炭化水素構造を導入させるものである。これにより、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物の屈曲性(柔軟性)、耐水性および電気絶縁性を向上させることができる。
前記カルボキシル基1つあたりの炭素数が10以上である脂肪酸としては、飽和構造のものも不飽和構造のものも使用することができ、また直鎖状のものも分岐状のものも使用することができる。
そして前記カルボキシル基1つあたりの炭素数が20以上である二塩基酸とカルボキシル基1つあたりの炭素数が10以上である一塩基酸を併用する場合、上述する長鎖脂肪酸に由来する成分の組成比率を向上させながら、これらの脂肪酸と前記1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応生成物の分子量を適度に制御することができるため、本実施形態の感光性樹脂組成物の乾燥後の塗膜の指触乾燥性と弱アルカリ現像液への溶解性(現像性)とその感度とをバランスよく向上させることができる。またこの場合、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性と耐熱性をバランスよく向上させることができる。
前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸は、前記1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基と反応し、当該エポキシ樹脂に対し、光重合開始剤により発生するフリーラジカルによって重合をすることができる光硬化性基を導入する。
前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸としては、前記1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に光硬化性を付与するものであれば好適に使用し得る。
このようなエチレン性不飽和基含有カルボン酸としては、例えばラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が挙げられる。当該ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、β-アクリロキシプロピオン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン-(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の、アクリロイル基またはメタクリロイル基をエポキシ樹脂に導入し得るカルボン酸が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸が好ましく用いられ、特にアクリル酸が好ましく用いられる。
前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記多塩基酸無水物は、前記1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と前記カルボキシル基1つあたりの炭素数が10以上である脂肪酸との反応により生成された水酸基および/または前記1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応により生成された水酸基に反応し、作製された長鎖脂肪酸変性エチレン性不飽和基含有変性エポキシ樹脂に遊離のカルボキシル基を導入する。
前記多塩基酸無水物としては、飽和構造のものも不飽和構造のものもいずれをも使用し得る。
このような多塩基酸無水物としては、例えばコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびジグリコール酸等の多塩基酸の無水物が挙げられる。
なお、前記多塩基酸無水物は単独で使用してもよく、現像性を適度に調整するために複数種を混合して用いてもよい。
前記(A-3)酸変性ウレタン化エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、例えば以下の方法により作製される。
即ち、上述のように多官能性エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを作製し、この際に生成された水酸基に、前記多塩基酸またはその無水物と1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
またこれらの化合物は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
またこれらの(A)カルボキシル基含有感光性樹脂は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記(B)光重合開始剤は、一般的に使用し得るものであれば特に限定することなく使用し得る。
前記(B)光重合開始剤としては、例えばオキシム系開始剤(1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン等)、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、メチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、2-エチルへキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート等が挙げられる。
これらの(B)光重合開始剤は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記(B)光重合開始剤の配合量は、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂(固形分)100質量部に対して1質量部以上30質量部以下が好ましく、2質量部以上30質量部以下がより好ましく、2質量部以上20質量部以下が特に好ましい。
前記(C)エポキシ化合物は、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げることで、その機械的強度を向上し得る。
前記(C)エポキシ化合物としては、例えばエポキシ樹脂が挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(例えばビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p-tert-ブチルフェノールノボラック型等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノールFにエピクロルヒドリンを反応させて得られる)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(ビスフェノールFにエピクロルヒドリンを反応させて得られる)、シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基等を有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの(C)エポキシ化合物は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
またこの場合、前記(C-1)エポキシ化合物と(C-2)結晶性エポキシ化合物の配合比率は、現像性および耐熱性を確実に向上させる点から、前記(C-1)エポキシ化合物100質量部に対して、前記(C-2)結晶性エポキシ化合物は40質量部以上140質量部以下が好ましく、60質量部以上130質量部以下がより好ましく、80質量部以上120質量部以下が特に好ましい。
このような(C-1)エポキシ化合物として市販されているものとしては、例えばTECHMORE VG3101L((株)プリンテック製)が挙げられる。
一方、前記(C-2)結晶性エポキシ化合物は、固形状においては上述の通り高い結晶性を有する。そして本実施形態の感光性樹脂組成物は、前記(C-1)エポキシ化合物と当該(C-2)結晶性エポキシ化合物とを併用することにより、当該感光性樹脂組成物の硬化物の柔軟性を阻害することなく、上述する弱アルカリ現像液への溶解性の低下を抑制することができる。
また前記(C-2)結晶性エポキシ化合物の融点は、好ましくは80℃以上200℃以下であり、より好ましくは90℃以上150℃以下であり、特に好ましくは100℃以上120℃以下である。当該融点をこの範囲とすることにより、本実施形態の感光性樹脂組成物の耐熱性をより向上し得る。
また前記(C-2)結晶性エポキシ化合物の質量平均分子量は、好ましくは200以上1,000以下であり、より好ましくは250以上600以下であり、特に好ましくは300以上450以下である。当該質量平均分子量をこの範囲とすることにより、本実施形態の感光性樹脂組成物における弱アルカリ現像液への溶解性をより向上し得る。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、前記(D)反応性希釈剤として、(D-1)カプロラクトン変性(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。前記(D-1)カプロラクトン変性(メタ)アクリレートは優れた柔軟性および耐熱性を有する。そのため、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物は耐熱性と柔軟性とを両立することができ、例えば350℃以上ではんだ加熱する場合であっても良好な耐熱性を発揮し得る。
前記カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば以下のものが挙げられる。
5官能以上:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等
4官能:カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等
2または3官能:カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート等
これらのカプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
このような(D-1)カプロラクトン変性(メタ)アクリレートとして市販されているものとしては、例えばDPCA-60、DPCA-120(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
またこれらのその他の反応性希釈剤は1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
このうちフレキシブルプリント配線板は、その性質から折り曲げたり折り畳んだりする部材に使用されることが多く、そのためフレキシブルプリント配線板上に形成される絶縁層にも高い柔軟性が求められる。また当該絶縁層は、フレキシブルプリント配線板上に電子部品を搭載する際、即ちはんだ付け時の加熱に耐え得る耐熱性も求められる。
ここではんだを用いて熱圧着により接続する方法の場合、ホットバー等を用いて、はんだの溶融温度以上(例えば300℃)の熱で圧着する必要があるため、リジッドプリント配線板およびフレキシブルプリント配線板上に形成された絶縁層はこの熱圧着にも耐え得る性能を有していることが求められる。
このように、本実施形態の感光性樹脂組成物は、特に加熱と加圧とが同時に負荷されるような用途に使用されるプリント配線板、その中でもフレキシブルプリント配線板に特に好適に使用することができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物には、更に(E)無機イオン交換体を配合することができる。当該(E)無機イオン交換体としては、陽イオン交換型のものも陰イオン交換型のものもいずれも使用し得るが、陽イオン交換体の方が好ましい。
前記(E)無機イオン交換体は、本実施形態の感光性樹脂組成物に含まれるイオン不純物や金属イオンを捕捉固定することにより、その硬化物におけるイオンマイグレーション現象の発生を防止できる。これにより、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁信頼性を向上することができる。
さらに、フレキシブルプリント配線板に形成されている絶縁層の表面に対して、金めっき処理等の表面処理を行う場合、当該(E)無機イオン交換体が、マスク開口部の断面に配向することにより、金めっき処理において絶縁層と導体の界面の侵食の原因となる金めっき処理液中のナトリウムイオン等を捕捉する結果、特に金めっき処理後の絶縁層の耐熱圧着性が向上すると考えられる。
前記(E)無機イオン交換体としては、例えばSb、Bi、Zr、Ti、Sn、MgおよびAlの少なくとも1種を含むものが好ましく、特にZrを含むものが好ましく用いられる。前記(E)無機イオン交換体として市販されているものとしては、例えばIXE-100、IXE-500、IXE-600、IXE-800(以上、東亜合成(株)製)が挙げられる。
本実施形態の感光性樹脂組成物には、例えば着色剤、非反応性希釈剤、消泡剤、難燃剤および添加剤等を更に配合させることができる。
撹拌機、還流冷却管を備えた500mLセパラブルフラスコに、窒素・空気(2:1)雰囲気下でエチルジグリコールアセテート(以下、「EDGAC」という。)86.45g、8-エチルオクタデカン二酸(製品名:SB-20、岡村製油(株)製)26.54g(6.3質量部)、ベヘニン酸45.35g(10.7質量部)、ステアリン酸9.71g(2.3質量部)、アクリル酸14.36g(3.4質量部)、トリフェニルホスフィン0.65g(0.1質量部)、メトキシハイドロキノン0.43g(0.1質量部)を仕込み、反応容器内に窒素・空気(2:1)を0.3mL/sec吹き込みながら、110℃で溶解するまで加熱撹拌した。
別途、EDGAC溶媒59.8g中にビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(製品名:NC-3000、日本化薬(株)製、エポキシ当量265~285g/eq)137.65g(32.6質量部)を80℃まで加熱して均一に溶解して上記フラスコ内に投入し、115℃にて15~17時間加熱撹拌させ、反応溶液の酸価が6mgKOH/g以下になるまで反応させた。この反応物に、更に水素添加トリメリット酸無水物(製品名:HTMAn、三菱ガス化学(株)製)を42.23g(9.9質量部)加え空気雰囲気下100℃で2~3時間撹拌した。その後酸無水物が消失したことをFT-IR(赤外分光光度計)により確認した。
これにより、表1に示す固形分(樹脂分)65質量%、酸価85mgKOH/gの合成樹脂A(ビフェニルアラルキル構造を有するカルボキシ基含有樹脂)を得た。
表1および表2に示す組成および配合にて各成分を3本ロールを用いて室温にて混合分散し、実施例1から9および比較例1から5に係る各感光性樹脂組成物を得た。なお、表1および表2のうち、組成を表すものに係る数値の単位は、特に断り書きがない限り質量部である。
※2 酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレート樹脂(65質量%)、エチルジグリコールアセテート(35質量%)、日本化薬(株)製
※3 (9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノンO-アセチルオキスム、(株)ADEKA製
※4 2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、IGM Resins B.V.社製
※5 高耐熱3官能エポキシ樹脂、(株)プリンテック製
※6 ビスフェノールA型エポキシ樹脂、DIC(株)製
※7 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC(株)製
※8 ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂、三菱化学(株)製
※9 トリアジン骨格を有する3官能結晶性エポキシ樹脂、日産化学(株)製
※10 ハイドロキノン型2官能結晶性エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製
※11 チオール型官能結晶性エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製
※12 カプロラクトン変性アクリレート(カプロラクトンの平均繰り返し単位数は1)、日本化薬(株)製
※13 カプロラクトン変性アクリレート(カプロラクトンの平均繰り返し単位数は2)、日本化薬(株)製
※14 ウレタンアクリレート、ダイセルオルネクス(株)製
※15 フタロシアニン化合物、トーヨーカラー(株)製
※16 カーボンブラック、三菱化学(株)製
※17 粉末ウレタン樹脂、大日精化工業(株)製
※18 水酸化アルミニウム、日本軽金属(株)製
※19 有機リン酸塩、クラリアントジャパン(株)製
※20 エチルジグリコールアセテート、三洋化成品(株)製
※21 シリコーン系ポリマー、信越化学工業(株)製
※22 陽イオン交換体(Zr系)、東亜合成(株)製
※23 ジシアンジアミド、三菱化学(株)製
厚さ25μmのポリイミドフィルム(製品名:カプトン100H、東レ・デュポン(株)製)上に導体(銅箔)厚18μm、ライン幅100μm、スペース幅100μmの櫛形の回路パターンを設けたフレキシブルプリント配線板を用意した。そして当該フレキシブルプリント配線板を3質量%の硫酸水溶液で表面処理した後、導体上のDRY膜厚が20μmとなるようスクリーン印刷法にて各実施例および比較例にかかる感光性樹脂組成物を塗布し、これらをBOX炉内にて70℃、20分の条件で予備乾燥を行った。
予備乾燥後の各感光性樹脂組成物(乾燥塗膜)上に前記回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、露光装置(製品名:HMW-680GW、(株)オーク製作所製)を用いて400mJ/cm2の紫外線(波長300~400nm)を照射した。紫外線照射後の各フレキシブルプリント配線板について、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧0.1MPaで60秒間、現像を行った。現像後、BOX炉内にて前記各フレキシブルプリント配線板を150℃、60分でポストキュアを行うことにより、前記各感光性樹脂組成物の硬化物を有する各評価用試験片を作製した。
予備乾燥までは上記各評価用試験片の作製工程と同じ工程にて、各フレキシブルプリント配線板上に各乾燥塗膜を作製した。次いで各乾燥塗膜に対し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧0.2MPaで現像を行った。そして現像開始から各フレキシブルプリント配線板の各乾燥塗膜が除去されたことが目視にて確認できた時点までに要した時間(ブレークポイント)を計測し、以下の基準に基づき評価した。その結果を表3に示す。
○:ブレークポイント30秒未満
△:ブレークポイント30秒以上60秒未満
×:ブレークポイント60秒以上
前記各評価用試験片について、1kg荷重でハゼ折りにより180°折り曲げこれを5秒間保持する工程(以下、「折り曲げ工程」という。)を1工程とし、これを複数回行い、前記各硬化物にクラックが発生したかどうかを目視および×200の光学顕微鏡で観察した。そして前記各硬化物にクラックが発生するまでの折り曲げ工程の回数(クラックが発生した工程は算入せず)を計測し、以下の基準に基づき評価した。その結果を表3に示す。
◎:5回以上
〇:2回以上4回以下
△:1回
×:0回
前記各評価用試験片について、前記硬化物が形成されている面にマスク開口径が0.8mmのパッドを備える各試験用基板を作製した。そして各試験用基板を無電解金めっき処理後(ニッケル3~5μmt、金0.05μmt)、各開口部分にフラックスを0.01mg塗布した。その後、熱圧着機(パルスヒートユニット:日本アビオニクス社製)のステージ温度を170~180℃に設定し、ステージ上にガラス板(厚み:3mm)を設置し、前記各試験用基板の硬化物が形成されている面がガラス板に接するようにし、これを圧力0.5MPaで、315~325℃で6~10秒圧着した。圧着後、各評価試験基板上のフラックス残渣を除去し、光学顕微鏡にてその外観を観察した。そしてこれらの工程を1工程とし、各評価試験基板上の硬化物にクラックまたは剥離が生じるまでの工程の回数を以下の基準に基づき評価した。その結果を表3に示す。
◎:30回以上
〇:20回以上29回以下
△:10回以上19回以下
×:0回以上9回以下
また実施例の感光性樹脂組成物は、前記(C-1)エポキシ化合物と(C-2)結晶性エポキシ化合物とを併用するため、その硬化物の耐熱性と柔軟性を阻害することなく、良好な現像性を発揮することができる。
Claims (5)
- 更に(E)無機イオン交換体を含む請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
- 前記(E)無機イオン交換体は陽イオン交換体であり、Zrを含む請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
- 請求項4に記載の硬化物を有する電子回路基板。
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