JP7168340B2 - 熱式流量計 - Google Patents

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Description

本開示は、熱式流量計に関する。
従来から空気への放熱量を基に空気流量を測定する熱式流量センサに係る発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された熱式流量センサは、空気流量検出素子と補正回路部とを有する(同文献、請求項1等を参照)。空気流量検出素子は、半導体基板に薄膜部を備えたダイアフラムを有する。
補正回路部は、空気流量検出素子のダイアフラム上に少なくとも一つの発熱抵抗体を有する。また、補正回路部は、発熱抵抗体の上流側と下流側に、少なくとも一つずつの温度を検出する測温抵抗体が形成されている。補正回路部は、少なくとも上流側と下流側の二つの測温抵抗体の温度差情報に基づいて、空気流量検出素子の出力信号として処理する。
この従来の熱式流量センサは、補正回路部で処理される出力信号の波形に特徴を有している。その出力信号の波形は、波形のピーク値がある任意の所定値を超えた時に所定値が出力されることでピーク値を成す山部あるいは谷部の一部を、その所定値にカットした波形である。これにより、計測精度を向上した熱式流量センサを提供することが可能となる(同文献、第0010段落等を参照)。
特開2015-049135号公報
前記従来の熱式流量センサは、前記した構成により、脈動した吸入空気の流量の測定時に出力信号の脈動誤差を低減し、計測精度を向上させることができる。しかしながら、上流側の測温抵抗体と下流側の測温抵抗体において異なる脈動誤差が生じるため、改善の余地がある。
本開示は、上流側温度センサと下流側温度センサにおいて発生する異なる脈動誤差を個別に補正することが可能な熱式流量計を提供する。
本開示の一態様は、発熱体の上下流に配置した上流側温度センサと下流側温度センサとの温度差に基づいて気体の流量を計測する熱式流量計であって、前記上流側温度センサと前記下流側温度センサから個別に出力信号を取り出す検出素子と、前記上流側温度センサの出力信号と前記下流側温度センサの出力信号とを個別に応答補償する補償部と、を有することを特徴とする熱式流量計である。
本開示の一態様によれば、上流側温度センサと下流側温度センサにおいて発生する異なる脈動誤差を個別に補正することが可能な熱式流量計を提供することができる。
実施形態1に係る熱式流量計の概略的な回路図。 実施形態1に係る熱式流量計の概略的な平面図。 図2のIII‐III線に沿う熱式流量計の断面図。 図1の熱式流量計の補償部の構成を示す回路図。 図4の補償部の周波数特性を示すグラフ。 図1の熱式流量計の上流側温度センサの出力特性を示すグラフ。 図1の熱式流量計の下流側温度センサの出力特性を示すグラフ。 図1の熱式流量計の上流側温度センサの応答性を示すグラフ。 図1の熱式流量計の下流側温度センサの応答性を示すグラフ。 図1の熱式流量計の上流側温度センサのゲインを示すグラフ。 実施形態2に係る熱式流量計の概略的な回路図。 図11の熱式流量計の上流側温度センサの信号線図。 図12の上流側温度センサの信号線図を書き換えた信号線図。 図12の上流側温度センサの信号線図の逆関数の信号線図。 実施形態3に係る熱式流量計の概略的な回路図。 図15の熱式流量計のAD変換器の入出力特性を示すグラフ。 実施形態4に係る熱式流量計の概略的な回路図。 図17の熱式流量計の検出素子の構成の一部を示す回路図。 図18の検出素子の一部の出力を示すグラフ。 実施形態5に係る熱式流量計の概略的な回路図。 実施形態6に係る熱式流量計の概略的な回路図。 従来の熱式流量計の検出素子の構成の一部を示す回路図。 図22に示す検出素子の一部の出力を示すグラフ。
以下、図面を参照して本開示に係る熱式流量計の実施形態を説明する。なお、各実施形態は、矛盾が生じない限り、組み合わせることが可能である。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る熱式流量計1の概略的な回路図である。図2は、実施形態1に係る熱式流量計1の概略的な平面図である。図3は、図2のIII‐III線に沿う熱式流量計1の断面図である。
本実施形態の熱式流量計1は、たとえば、自動車のエンジンなどの内燃機関に吸入される空気の流量を測定する空気流量計として用いられる。エンジンに吸入される空気の流量は、たとえばピストンの回転数に応じて脈動する。本実施形態の熱式流量計1は、以下の特徴的な構成により、たとえば空気などの測定対象の気体の流量に脈動が生じた場合でも、気体の流量の測定誤差、すなわち脈動誤差を従来よりも低減することが可能である。
本実施形態の熱式流量計1は、たとえば、検出素子10と、補償部20とを備える。検出素子10は、たとえば、発熱体11と、上流側温度センサ12と、下流側温度センサ13とを備える。熱式流量計1は、発熱体11の上流側と下流側にそれぞれ配置された上流側温度センサ12と下流側温度センサ13の温度差に基づいて気体の流量を測定する。検出素子10は、上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号を個別に出力する。補償部20は、上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号を個別に応答補償する。以下、本実施形態の熱式流量計1の構成について、より詳細に説明する。
図1に示すように、熱式流量計1は、前述の検出素子10と補償部20とに加えて、たとえば、減算器30と、脈動補正回路40とを備えている。また、図2および図3に示すように、熱式流量計1は、たとえば、基板2と、この基板2に設けられたダイアフラム3とを備えている。また、検出素子10は、前述の発熱体11、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13に加えて、第1の固定抵抗14と、第2の固定抵抗15と、電極パッド16とを備えている。
基板2は、たとえば、シリコン基板であり、基板2の表面の絶縁膜によってダイアフラム3が構成されている。より具体的には、ダイアフラム3は、たとえば、基板2の表面に設けられた熱絶縁膜が、基板2の裏面の中央部にエッチングで設けられた凹部によって、基板2の裏面側に露出した薄膜状の部分である。
発熱体11は、たとえば、基板2の表面の絶縁膜上に設けられ、通電によって発熱するヒータであり、流量の測定対象である空気等の気体よりも高温に加熱される。発熱体11は、たとえば、始端部が基板2の一側に設けられた電極パッド16に接続され、基板2の中央部のダイアフラム3へ向けて延びている。発熱体11は、さらにダイアフラム3の中央部を横切るように延び、ダイアフラム3の端縁の近傍で反対方向へ向けてU字状に折り返されて基板2の一側へ向けて延び、終端部が基板2の一側に設けられた電極パッド16に接続されている。
上流側温度センサ12および下流側温度センサ13は、それぞれ、発熱体11の上流側と下流側に配置されている。これら上流側温度センサ12および下流側温度センサ13における「上流側」および「下流側」は、たとえば、熱式流量計1の測定対象の気体である空気が、エンジンへ向けて流れる順流時における上流側と下流側である。したがって、たとえば、エンジンのピストンの往復運動に起因する空気の脈動により、空気が順流時と逆方向に流れる空気の逆流時には、上流側温度センサ12が空気の下流側に位置し、下流側温度センサ13が空気の上流側に位置することになる。
上流側温度センサ12および下流側温度センサ13は、たとえば、感熱抵抗または熱電対であり、ダイアフラム3に設けられている。より詳細には、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13は、たとえば、基板2の表面の絶縁膜上に設けられ、基板2のダイアフラム3が形成された領域内に配置されている。感熱抵抗は、たとえば、ポリシリコン薄膜や白金薄膜によって構成され、熱電対は、たとえば、ポリシリコン薄膜や金属薄膜によって構成される。
上流側温度センサ12および下流側温度センサ13は、たとえば、基板2の表面の絶縁膜上に形成された配線および電極パッド16を介して、電源電圧Vccに接続されている。上流側温度センサ12および下流側温度センサ13は、測定対象の気体の流れの方向において発熱体11の両側に配置され、発熱体11の上流側と下流側で気体の温度を測定し、気体の温度に応じた出力信号を出力する。
検出素子10は、上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号とを、個別に取り出し可能に構成されている。より具体的には、上流側温度センサ12によって測定された気体の温度に応じた出力信号を取り出すための配線が上流側温度センサ12と第1の固定抵抗14との間に接続され、この配線および電極パッド16を介して上流側温度センサ12の出力信号が第1の補償部20に入力される。また、下流側温度センサ13によって測定された気体の温度に応じた出力信号を取り出すための配線が下流側温度センサ13と第2の固定抵抗15との間に接続され、この配線および電極パッド16を介して下流側温度センサ13の出力信号が第2の補償部20に入力される。
第1の固定抵抗14は、上流側温度センサ12に直列に接続され、たとえば、電極パッド16を介して接地電位に接続されている。第2の固定抵抗15は、下流側温度センサ13に直列に接続され、たとえば、電極パッド16を介して接地電位に接続されている。上流側温度センサ12の形状は、たとえば、第1の固定抵抗14の形状と同一である。また、下流側温度センサ13の形状は、たとえば、第2の固定抵抗15の形状と同一である。さらに、第1の固定抵抗14の形状は、たとえば、第2の固定抵抗15の形状と同一である。すなわち、上流側温度センサ12の形状は、たとえば、下流側温度センサ13の形状と同一である。
より具体的には、上流側温度センサ12、下流側温度センサ13、第1の固定抵抗14、および第2の固定抵抗15は、測定対象の気体の流れの方向に波長を有し、測定対象の気体の流れの方向に直交する方向に振幅を有する矩形波状の形状を有している。なお、上流側温度センサ12、下流側温度センサ13、第1の固定抵抗14、および第2の固定抵抗15のいずれかの二つの形状が同一であるとは、二つの形状および寸法が同一である場合ならびに二つが線対称の形状を有する場合を含む。
第1の固定抵抗14および第2の固定抵抗15は、たとえば、ダイアフラム3の外側で基板2に設けられている。より詳細には、第1の固定抵抗14および第2の固定抵抗15は、たとえば、基板2の表面の絶縁膜上に設けられ、基板2のダイアフラム3が形成された領域の外側に配置されている。また、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15は、たとえば、近接して配置されている。より具体的には、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15は、発熱体11を介して互いに隣り合うように、近接して配置されている。換言すると、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15とは、発熱体11のみを介して隣り合っており、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15との間に発熱体11以外の素子は配置されていない。
補償部20は、たとえば応答補償回路であり、検出素子10から個別に出力された上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号を個別に応答補償する。より具体的には、第1の補償部20は、たとえば、配線および電極パッド16を介して上流側温度センサ12と第1の固定抵抗14との間に接続されることで、上流側温度センサ12の出力が個別に入力される。また、第2の補償部20は、たとえば、配線および電極パッド16を介して下流側温度センサ13と第2の固定抵抗15との間に接続されることで、下流側温度センサ13の出力が個別に入力される。
図4は、図1の熱式流量計1における補償部20の構成の一例を示す回路図である。補償部20は、たとえば、乗算器21と、微分回路22と、加算器23とを備えている。乗算器21は、たとえば、上流側温度センサ12または下流側温度センサ13からの出力信号である電圧の値に応じて係数kの値が変化するように構成されている。微分回路22は、たとえば、上流側温度センサ12または下流側温度センサ13からの出力信号である電圧を微分するように構成されている。加算器23は、たとえば、微分回路22の出力と、上流側温度センサ12または下流側温度センサ13からの出力信号である電圧を加算するように構成されている。
図5は、図4の補償部20の周波数特性を示すグラフである。補償部20のカットオフ周波数は、乗算器21における係数kの値に応じて変化する。補償部20は、上流側温度センサ12または下流側温度センサ13からの出力信号である電圧の値に応じて、乗算器21において係数kの値を変化させることで、後述する上流側温度センサ12および下流側温度センサ13における応答性の変化を補償する。
減算器30は、上流側温度センサ12と第1の固定抵抗14との間に接続された補償部20の出力と、下流側温度センサ13と第2の固定抵抗15との間に接続された補償部20の出力との差を求める。脈動補正回路40は、減算器30によって求められた差に基づいて測定対象の気体の脈動を補正する。熱式流量計1は、脈動補正回路40の補正結果を、空気の流量に応じた信号として出力する。
以下、本実施形態の熱式流量計1の動作について説明する。
図6は、上流側温度センサ12の出力特性の一例を示すグラフである。図7は、下流側温度センサ13の出力特性の一例を示すグラフである。図8は、上流側温度センサ12の応答性の一例を示すグラフである。図9は、下流側温度センサ13の応答性の一例を示すグラフである。なお、図6から図9において、横軸は測定対象の気体である空気の流量[m/s]であり、負の値は逆流方向に流れる空気の流量を示し、正の値は順流方向に流れる空気の流量を示している。図10は、上流側温度センサ12のゲインの一例を示すグラフである。
熱式流量計1によって空気などの気体の流量を測定するには、発熱体11に通電させ、発熱体11を測定対象の気体の温度よりも高い温度に加熱しておく。この状態で、気体が基板2の表面の絶縁膜に沿って順流方向へ流れる順流時には、発熱体11によって加熱された発熱体11の周囲の気体が下流側へ移動することで、発熱体11の上流側で気体の温度が低下し、発熱体11の下流側で気体の温度が上昇する。
すると、発熱体11の上流側に配置された上流側温度センサ12の温度が低下して上流側温度センサ12の抵抗が上昇し、図6に示すように、上流側温度センサ12の出力信号である電圧が0[mV]よりも低下する。なお、空気などの気体流による放熱量は流量の平方根に比例するので、上流側温度センサ12の出力特性は、図6のような飽和特性を示す。また、気体の順流時には、発熱体11の下流側に配置された下流側温度センサ13の温度が上昇して上流側温度センサ12の抵抗が低下し、図7に示すように、下流側温度センサ13の出力信号である電圧が0[mV]よりも上昇する。
また、気体が基板2の表面の絶縁膜に沿って逆方向へ流れる逆流時には、発熱体11によって加熱された発熱体11の周囲の気体が上流側へ移動することで、発熱体11の上流側で気体の温度が上昇し、発熱体11の下流側で気体の温度が低下する。すると、発熱体11の上流側に配置された上流側温度センサ12の温度が上昇して上流側温度センサ12の抵抗が低下し、図6に示すように、上流側温度センサ12の出力信号である電圧が0[mV]よりも上昇する。また、気体の逆流時には、発熱体11の下流側に配置された下流側温度センサ13の温度が低下して下流側温度センサ13の抵抗が上昇し、図7に示すように、下流側温度センサ13の出力信号である電圧が0[mV]よりも低下する。
図6に示すように、気体の逆流時における上流側温度センサ12の電圧の増加量は、気体の順流時における上流側温度センサ12の電圧の減少量よりも小さい。一方、図7に示すように、気体の順流時における下流側温度センサ13の電圧の増加量は、気体の逆流時における下流側温度センサ13の電圧の減少量よりも小さい。このように、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の電圧の出力特性は、順流時と逆流時で非対称になる。
また、上流側温度センサ12と下流側温度センサ13は、電圧の出力特性が相違している。すなわち、上流側温度センサ12は、図6に示すように、気体の順流時の感度が高いが、気体の逆流時の感度が低い。一方、下流側温度センサ13は、図7に示すように、気体の逆流時の感度が高いが、気体の順流時の感度が低い。
また、図8および図9に示すように、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の応答性は、図6および図7に示す出力電圧に応じて変化する。これは、高い張力を加えた弦の中央を弾くと共振周波数が高くなるのと同様であり、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13においては、出力電圧の変化量が大きくなると、応答性が高くなる。
すなわち、図6および図7に示すように、任意の気体の流量に対する上流側温度センサ12と下流側温度センサ13の出力電圧が異なるため、図8および図9に示すように、任意の気体の流量に対する上流側温度センサ12と下流側温度センサ13の応答性も異なる。この上流側温度センサ12と下流側温度センサ13の応答性の相異によって、気体の脈動時の流量の測定誤差、すなわち脈動誤差が発生する。また、上流側温度センサ12と下流側温度センサ13では、脈動誤差の大きさも異なる。
前述のような出力特性および応答性を有し、異なる脈動誤差を有する上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号は、図1に示すように、それぞれ、検出素子10から個別に出力され、個別に補償部20に入力される。より詳細には、上流側温度センサ12の出力信号は、第1の補償部20に入力され、下流側温度センサ13の出力信号は、第2の補償部20に入力される。
上流側温度センサ12は、たとえば、図10に示すような周波数特性を有している。なお、カットオフ周波数は、図8に示すように、気体の流量すなわち空気流量に応じて変化する。前述のように、補償部20は、たとえば、図5に示すような周波数特性を有している。これにより、検出素子10から個別に出力されて補償部20に入力された上流側温度センサ12の出力信号の周波数特性は、補償部20によって個別に補償される。同様に、検出素子10から個別に出力されて補償部20に入力された下流側温度センサ13の出力信号の周波数特性は、補償部20によって個別に補償される。
補償部20によってそれぞれ個別に補償された上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号は、減算器30に入力される。減算器30は、上流側温度センサ12の補償後の出力信号と、下流側温度センサ13の補償後の出力信号との減算を行い、結果を脈動補正回路40へ出力する。脈動補正回路40は、減算器30から入力された減算結果に基づいて、脈動誤差が補正された空気等の気体の流量を出力する。
以上のように、本実施形態の熱式流量計1は、発熱体11の上流側と下流側にそれぞれ配置された上流側温度センサ12と下流側温度センサ13の温度差に基づいて気体の流量を測定する。そして、熱式流量計1は、上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号を個別に出力する検出素子10と、上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号を個別に応答補償する補償部20と、を備えている。この構成により、前述のように、上流側温度センサ12と下流側温度センサ13との応答性の相異によって発生する上流側温度センサ12と下流側温度センサ13の異なる脈動誤差をそれぞれ個別に補正することが可能になる。したがって、熱式流量計1の脈動誤差を従来よりも低減し、従来よりも計測精度を向上させることができる。
また、本実施形態の熱式流量計1において、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13は、感熱抵抗または熱電対である。この構成により、発熱体11によって加熱され、順流方向または逆流方向に流れる空気などの気体の流量を、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の温度変化に基づいて測定することが可能になる。
また、本実施形態の熱式流量計1において、検出素子10は、上流側温度センサ12に直列に接続されて接地電位に接続される第1の固定抵抗14と、下流側温度センサ13に直列に接続されて接地電位に接続される第2の固定抵抗15と、を備えている。この構成により、上流側温度センサ12と下流側温度センサ13の電位を低下させ、静電気によって上流側温度センサ12および下流側温度センサ13に埃や塵芥が吸着されるのを抑制することができる。したがって、熱式流量計1を埃や塵芥が多い環境で使用することが可能になる。
また、本実施形態の熱式流量計1は、上流側温度センサ12の形状と第1の固定抵抗14の形状とが同一である。この構成により、上流側温度センサ12と第1の固定抵抗14との比精度を向上させることができる。すなわち、上流側温度センサ12の抵抗値と第1の固定抵抗14との抵抗値との比の値を、正確に所定の値にすることができる。より詳細には、製造コスト削減の観点から、上流側温度センサ12と第1の固定抵抗14は、たとえば、同一の材料によって形成されている。そのため、熱式流量計1の周囲の温度の変化により、上流側温度センサ12と同様に、第1の固定抵抗14の抵抗値も変化する。そこで、前述のように、上流側温度センサ12の形状と第1の固定抵抗14の形状とを同一にすることで、上流側温度センサ12の抵抗値と第1の固定抵抗14の抵抗値との比精度を向上させ、周囲の温度の変化による出力電圧の変動を抑制することができる。したがって、周囲の温度の影響が抑制された熱式流量計1を提供することができる。
また、本実施形態の熱式流量計1は、下流側温度センサ13の形状と第2の固定抵抗15の形状とが同一である。この構成により、下流側温度センサ13と第2の固定抵抗15との比精度を向上させることができる。すなわち、下流側温度センサ13の抵抗値と第2の固定抵抗15との抵抗値との比の値を、正確に所定の値にすることができる。より詳細には、製造コスト削減の観点から、下流側温度センサ13と第2の固定抵抗15は、たとえば、同一の材料によって形成されている。そのため、熱式流量計1の周囲の温度の変化により、下流側温度センサ13と同様に、第2の固定抵抗15の抵抗値も変化する。そこで、前述のように、下流側温度センサ13の形状と第2の固定抵抗15の形状とを同一にすることで、下流側温度センサ13の抵抗値と第2の固定抵抗15の抵抗値との比精度を向上させ、周囲の温度の変化による出力電圧の変動を抑制することができる。したがって、周囲の温度の影響が抑制された熱式流量計1を提供することができる。
また、本実施形態の熱式流量計1は、第1の固定抵抗14の形状と第2の固定抵抗15の形状とが同一である。これにより、第1の固定抵抗14の抵抗値と第2の固定抵抗15の抵抗値の比精度を向上させることができる。より詳細には、製造コスト削減の観点から、上流側温度センサ12、下流側温度センサ13、第1の固定抵抗14、および第2の固定抵抗15は、たとえば、同一の材料によって形成されている。そのため、熱式流量計1の周囲の温度の変化により、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13と同様に、第1の固定抵抗14および第2の固定抵抗15の抵抗値も変化する。そこで、前述のように、第1の固定抵抗14の形状と第2の固定抵抗15の形状とを同一にすることで、これらの抵抗値と、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の抵抗値との比精度を向上させることができる。これにより、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の周囲の温度の変化による出力電圧の変動を一致させることができる。したがって、周囲の温度の影響が抑制された熱式流量計1を提供することができる。
また、本実施形態の熱式流量計1は、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15とが近接して配置されている。この構成により、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15の温度をおおむね一致させることができる。前述のように、上流側温度センサ12、下流側温度センサ13、第1の固定抵抗14、および第2の固定抵抗15は、たとえば、同一の材料によって形成されている。そのため、第1の固定抵抗14および第2の固定抵抗15の抵抗値は、熱式流量計1の周囲の温度の変化に応じて変化する。しかし、前述のように、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15とが近接して配置されることで、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15との温度差を低減することができる。これにより、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15の温度差による上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の出力の変動を低減することができ、より高精度の熱式流量計1を提供することができる。
また、本実施形態の熱式流量計1は、基板2と、その基板2に設けられたダイアフラム3とを備えている。そして、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13は、ダイアフラム3に設けられ、第1の固定抵抗14および第2の固定抵抗15は、ダイアフラム3の外側で基板2に設けられている。この構成により、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13と比較して、第1の固定抵抗14および第2の固定抵抗15に対する発熱体11の発熱による熱影響を小さくすることができる。これにより、発熱体11の温度変化による第1の固定抵抗14および第2の固定抵抗15の温度変化が抑制され、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15の温度差を低減することができる。したがって、第1の固定抵抗14と第2の固定抵抗15の温度差に起因する熱式流量計1の出力電圧の変動を抑制し、より高精度の熱式流量計1を提供することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、上流側温度センサ12と下流側温度センサ13において発生する異なる脈動誤差を個別に補正することが可能であり、従来よりも高精度の熱式流量計1を提供することができる。
[実施形態2]
次に、本開示に係る熱式流量計の実施形態2について説明する。図11は、実施形態2に係る熱式流量計1Aの概略的な回路図である。
本実施形態の熱式流量計1Aは、上流側温度センサ12の出力をAD変換する第1のアナログデジタル変換器51と、下流側温度センサ13の出力をAD変換する第2のアナログデジタル変換器52と、を備える点で、前述の実施形態1の熱式流量計1と異なっている。本実施形態の熱式流量計1Aのその他の点は、前述の実施形態1の熱式流量計1と同様であるので、同様の部分には同様の符号を付して説明を省略する。
第1のアナログデジタル変換器51は、たとえば、検出素子10から個別に取り出された上流側温度センサ12の出力が入力され、その上流側温度センサ12の出力をAD変換して補償部20に出力する。第2のアナログデジタル変換器52は、たとえば、検出素子10から個別に取り出された下流側温度センサ13の出力が入力され、その下流側温度センサ13の出力をAD変換して補償部20に出力する。
本実施形態の熱式流量計1Aは、第1のアナログデジタル変換器51および第2のアナログデジタル変換器52を備えることで、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13からの出力信号をデジタル化することができる。これにより、補償部20に入力される信号がアナログ信号である場合と比較して、より複雑な演算処理を行うことができ、より脈動誤差の小さい熱式流量計1を提供することができる。以下、上流側温度センサ12の信号線図および補償部20の演算処理内容について説明する。
図12は、上流側温度センサ12の信号線図である。ここで、上流側温度センサ12からの熱伝達によって失われる熱量、すなわち上流側温度センサ12の熱伝達による放熱量をQcとする。また、発熱体11から熱伝導によって上流側温度センサ12に移動する入熱量をQrとする。また、熱伝達係数をkc、上流側温度センサ12の初期温度をTo、上流側温度センサ12の温度変化をΔT、上流側温度センサ12の熱容量をC、熱伝導率をkr、ブリッジ感度をkbとする。
このとき、上流側温度センサ12の熱伝達による放熱量Qcは、以下の式(1)のように、熱伝達係数kcと、上流側温度センサ12の温度、すなわち上流側温度センサ12の初期温度Toと上流側温度センサ12の温度変化ΔTの差と、空気流量Uの平方根の積で表される。
Figure 0007168340000001
また、発熱体11から熱伝導によって上流側温度センサ12に移動する入熱量Qrは、熱伝導率krと上流側温度センサ12の温度変化ΔTとの積によって表される。また、上記放熱量Qcと、上記入熱量Qrの差分を、上流側温度センサ12の熱容量Cを係数にして積分することで、上流側温度センサ12の温度変化ΔTを得ることができる。
これにより、上流側温度センサ12の温度変化ΔTは、上流側温度センサ12と第1の固定抵抗14で構成されるブリッジ回路の感度kbを介して、センサ出力Voとして出力される。つまり、上流側温度センサ12からの放熱量Qcと発熱体11から上流側温度センサ12への入熱量Qrが均衡するように、系として動作することで、上流側温度センサ12の温度変化ΔTが決定され、センサ出力Voが決定される。
図13は、図12の信号線図を書き換えた信号線図である。図13では、積分器の帰還部に、熱伝導率krと、熱伝達係数kcと空気流量Uの平方根の積とが配置される。このような系の応答速度は、積分器の係数と帰還部の係数によって決定される。すなわち、上流側温度センサ12の応答速度は、空気流量Uの平方根に依存する。
図14は、図12の信号線図の逆関数の信号線図である。すなわち、図12に示す信号線図の逆関数を求めることで、図14に示す信号線図を得ることができる。つまり、図14の信号線図に示す演算処理を、応答補償回路である補償部20において実施することで、上流側温度センサ12の応答補償を行い、上流側温度センサ12の出力の飽和特性をリニアラズすることができる。
熱式流量計1Aの脈動誤差は、上流側温度センサ12の応答遅れによっても発生するが、上流側温度センサ12の飽和特性も熱式流量計1の脈動誤差に影響を与える。つまり、図14の信号線図に示す演算処理を補償部20によって実施することで、上流側温度センサ12の応答遅れおよび上流側温度センサ12の出力の飽和特性による脈動誤差も補正することができる。そのため、より脈動誤差が減少した熱式流量計1を提供することができる。なお、下流側温度センサ13についても、補償部20において上流側温度センサ12と同様の処理を行うことで、熱式流量計1Aの脈動誤差をより低減することが可能である。
本実施形態の熱式流量計1Aにおいて、補償部20は、応答補償部24とリニアライズ部25とを備える。リニアライズ部25は、上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力を個別にリニアライズする。応答補償部24の周波数特性におけるカットオフ周波数は、熱伝導率krと熱容量Cによって決まる。つまり、応答補償部24は、固定した周波数特性を持つ応答補償回路によって実現できる。また、リニアライズ部25も、上流側温度センサ12の放熱量Qcと温度変化ΔTを入力とする静的な関数であるため、2次元マップによって構成することが可能である。
そのため、本実施形態の熱式流量計1Aにおいて、補償部20は、固定された周波数特性を有する応答補償部24と、静的な関数で構成されるリニアライズ部25によって実現することができる。このような比較的簡単な演算処理を実施することで、本実施形態の熱式流量計1Aは、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の応答遅れおよび飽和特性による脈動誤差も補正することができる。
[実施形態3]
次に、本開示に係る熱式流量計の実施形態3について説明する。図15は、実施形態3に係る熱式流量計1Bの概略的な回路図である。本実施形態の熱式流量計1Bは、基準電圧を定める基準電圧回路60を備え、第1のアナログデジタル変換器51および第2のアナログデジタル変換器52が同一の基準電圧回路60に接続されている点で、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと異なっている。
また、本実施形態の熱式流量計1Bは、クロック信号を出力するクロック発生器70を備え、第1のアナログデジタル変換器51および第2のアナログデジタル変換器52は、同一のクロック発生器70に接続されて同一のクロック信号により動作する点で、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと異なっている。本実施形態の熱式流量計1Bのその他の点は、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと同様であるので、同様の部分には同様の符号を付して説明を省略する。
図16は、第1のアナログデジタル変換器51および第2のアナログデジタル変換器52の入出力特性の一例を示すグラフである。図16では、第1のアナログデジタル変換器51の入出力特性を破線L1で示し、第2のアナログデジタル変換器52の入出力特性を実線L2で示している。図16に示すように、第1のアナログデジタル変換器51の入出力特性と、第2のアナログデジタル変換器52の入出力特性は、同一ではなく、わずかに異なっている。第1のアナログデジタル変換器51の入出力特性と第2のアナログデジタル変換器52の入出力特性の差異は、熱式流量計1Bの精度を向上させる観点から、可及的に減少させる必要がある。
本実施形態の熱式流量計1Bは、前述のように、基準電圧を定める基準電圧回路60を備え、第1のアナログデジタル変換器51および第2のアナログデジタル変換器52が同一の基準電圧回路60に接続されている。この構成により、第1のアナログデジタル変換器51と第2のアナログデジタル変換器52の入出力特性の差異を低減することができ、熱式流量計1Bの測定精度を向上させることができる。
また、本実施形態の熱式流量計1Bは、前述のように、クロック信号を出力するクロック発生器70を備え、第1のアナログデジタル変換器51および第2のアナログデジタル変換器52は、同一のクロック発生器70に接続されて同一のクロック信号により動作する。この構成により、第1のアナログデジタル変換器51と第2のアナログデジタル変換器52の入出力特性の差異を低減することができ、熱式流量計1Bの測定精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態の熱式流量計1Bにおいて、たとえば、第1のアナログデジタル変換器51および第2のアナログデジタル変換器52が同一の回路構成を備える場合には、第1のアナログデジタル変換器51と第2のアナログデジタル変換器52の入出力特性の差異を低減することができる。したがって、熱式流量計1Bの測定精度を向上させることができる。なお、同一の回路構成とは、たとえば、同一の回路素子や同一の配線パターンを含む同一の回路配置を有していることを意味する。
[実施形態4]
次に、本開示に係る熱式流量計の実施形態4について説明する。図17は、実施形態4に係る熱式流量計1Cの概略的な回路図である。本実施形態の熱式流量計1Cは、上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力に基づいて故障を判定する故障判定部80を有する点で、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと異なっている。本実施形態の熱式流量計1Cのその他の点は、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと同様であるので、同様の部分には同様の符号を付して説明を省略する。
以下、本実施形態の熱式流量計1Cを従来の熱式流量計との対比に基づいて説明する。図22は、従来の熱式流量計の検出素子の構成の一部を示す回路図である。図23は、図22の検出素子の一部の出力を示すグラフである。なお、従来の熱式流量計において、本実施形態の熱式流量計1Cと同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
図22に示すように、従来の熱式流量計の検出素子は、上流側温度センサ12と下流側温度センサ13とが直列に接続され、下流側温度センサ13が電源電圧Vccに接続され、上流側温度センサ12が接地電位に接続されている。また、この従来の熱式流量計の検出素子は、上流側温度センサ12と下流側温度センサ13との間の接続点の電圧がAD変換器50によって検出されるように構成されている。
この場合、図23に示すように、発熱体11が非加熱状態にされた期間T1のAD変換器50の出力は、電源電圧Vcc/2になる。また、発熱体11が加熱状態にされた期間T2において、空気の流量が0である状態の期間T21は、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の温度がともに上昇する。そのため、AD変換器50の出力は電源電圧Vcc/2になる。また、空気などの気体が順流方向に流れかつ流量が増加している期間T22では、上流側温度センサ12の温度が低下し、下流側温度センサ13の温度が上昇するので、AD変換器50の出力は低下する。
また、空気などの気体が逆流方向に流れかつ流量が増加している期間T23では、上流側温度センサ12の温度が上昇し、下流側温度センサ13の温度が低下する。そのため、AD変換器50の出力は増加する。また、図22において、回路が点Aにおいて断線した場合、AD変換器50の出力は、電源電圧Vcc/2になる。この場合、空気の流量が0である期間T21と、回路の断線を区別することができず、AD変換器50の出力のみでは、点Aの断線を検出することができない。
図18は、図17の熱式流量計1Cの検出素子10の構成の一部を示す回路図である。図19は、図18の検出素子10の一部の出力を示すグラフである。図22に示す従来の熱式流量計に対し、図18に示す本実施形態の熱式流量計1Cは、上流側温度センサ12と第1の固定抵抗14とを直列に接続し、上流側温度センサ12を電源電圧Vccに接続し、第1の固定抵抗14を接地電位に接続している。また、上流側温度センサ12と第1の固定抵抗14の接続点の電圧を第1のアナログデジタル変換器51で検出している。
この場合、図19に示すように、発熱体11が非加熱の期間T1においては、第1のアナログデジタル変換器51の出力が電源電圧Vcc/2になる。また、発熱体11が加熱状態の期間T2において、空気の流量が0である期間T21は、上流側温度センサ12の温度が上昇する。これにより、第1のアナログデジタル変換器51の出力は、上流側温度センサ12の温度上昇によって増加する。
また、空気が順流方向に流れかつ流量が増加している期間T22は、上流側温度センサ12の温度が低下する。そのため、第1のアナログデジタル変換器51の出力は、空気の流量が0である期間T21の出力電圧よりも低下する。また、空気が逆流方向に流れかつ流量が増加している期間T23は、上流側温度センサ12の温度が上昇する。そのため、上流側温度センサ12の出力は、空気の流量が0である期間T21の出力電圧よりも増加する。
また、図18に示す回路が点Aにおいて断線した場合、第1のアナログデジタル変換器51の出力は電源電圧Vcc/2になる。この場合、点Aが断線したときの第1のアナログデジタル変換器51の出力電圧と、空気の流量が0である期間T21の第1のアナログデジタル変換器51の出力電圧は、明確に区別される。すなわち、故障判定部80によって第1のアナログデジタル変換器51の出力を観測し、所定の出力範囲にあるかどうかを検出することで、回路の点Aにおける断線を検出することができる。
以上の上流側温度センサ12の説明は、下流側温度センサ13についても同様に成立する。そのため、故障判定部80によって第1のアナログデジタル変換器51および第2のアナログデジタル変換器52の出力電圧が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、熱式流量計1Cの回路の断線を検出することができ、熱式流量計1Cの回路の断線を診断することが可能になる。したがって、本実施形態によれば、信頼性の高い熱式流量計1Cを提供することができる。
[実施形態5]
次に、本開示に係る熱式流量計の実施形態5について説明する。図20は、実施形態5に係る熱式流量計1Dの概略的な回路図である。本実施形態の熱式流量計1Dは、補償部20によって個別に応答補償された上流側温度センサ12の出力信号と下流側温度センサ13の出力信号とを加算する加算器90を備える点で、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと異なっている。また、本実施形態の熱式流量計1Dは、加算器90の出力信号に基づいて発熱体11の温度を制御する温度制御回路100を備える点で、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと異なっている。本実施形態の熱式流量計1Dのその他の点は、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと同様であるので、同様の部分には同様の符号を付して説明を省略する。
上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力の平均は、発熱体11の温度に比例する。そこで、本実施形態では、補償部20によって応答補償された上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力を、加算器90によって加算することで、上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力の平均を求める。そして、この加算器90の出力に基づいて、温度制御回路100によって発熱体11の温度を制御する。これにより、発熱体11の温度を検出するための特別な回路が不要になり、熱式流量計1Dのコストを低減することができる。
また、発熱体11と、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13とは、離れた位置にある。そのため、発熱体11の温度を上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の出力の平均値から求める場合、応答遅れが生じ、発熱体11の高速な温度制御が困難であった。しかし、本実施形態では、補償部20を配置することで、上流側温度センサ12および下流側温度センサ13の出力の平均値から発熱体11の温度を高速に検出することができる。これにより、温度制御回路100によって発熱体11の温度を高速に制御できるので、高速な応答の熱式流量計1Dを提供することができる。
[実施形態6]
最後に、本開示に係る熱式流量計の実施形態6について説明する。図21は、実施形態6に係る熱式流量計1Fの概略的な回路図である。本実施形態の熱式流量計1Fは、加算器90と、その加算器90の出力信号に基づいて感度補正を行う乗算器110を備える点で、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと異なっている。本実施形態の熱式流量計1Fのその他の点は、前述の実施形態2の熱式流量計1Aと同様であるので、同様の部分には同様の符号を付して説明を省略する。
上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力の平均は、発熱体11の温度に比例する。そこで、本実施形態では、補償部20によって応答補償された上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力を、加算器90によって加算することで、上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力の平均を求める。また、上流側温度センサ12の出力と下流側温度センサ13の出力は、発熱体11の温度に比例する。そこで、発熱体11の温度を加算器90で検出し、乗算器110で感度補正を行うことで発熱体11の温度の変動を補正することができ、より高精度な熱式流量計1Fを提供することができる。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1 熱式流量計
1A 熱式流量計
1B 熱式流量計
1C 熱式流量計
1D 熱式流量計
1F 熱式流量計
2 基板
3 ダイアフラム
10 検出素子
11 発熱体
12 上流側温度センサ
13 下流側温度センサ
14 第1の固定抵抗
15 第2の固定抵抗
16 電極パッド
20 補償部
21 乗算器
22 微分回路
23 加算器
24 応答補償部
25 リニアライズ部
30 減算器
40 脈動補正回路
50 AD変換器
51 第1のアナログデジタル変換器
52 第2のアナログデジタル変換器
60 基準電圧回路
70 クロック発生器
80 故障判定部
90 加算器
100 温度制御回路
110 乗算器
Vcc 電源電圧

Claims (17)

  1. 発熱体の上流側と下流側にそれぞれ配置された上流側温度センサと下流側温度センサの温度差に基づいて気体の流量を測定する熱式流量計であって、
    前記上流側温度センサの出力信号と前記下流側温度センサの出力信号を個別に出力する検出素子と、前記上流側温度センサの出力信号と前記下流側温度センサの出力信号を個別に応答補償する補償部と、を備え
    前記上流側温度センサは、前記気体の順流時の出力信号の応答性が前記気体の逆流時の出力信号の応答性よりも高く、
    前記下流側温度センサは、前記気体の逆流時の出力信号の応答性が前記気体の順流時の出力信号の応答性よりも高く、
    前記補償部は、前記上流側温度センサの出力信号が入力される第1の補償部と、前記下流側温度センサの出力信号が入力される第2の補償部と、を有し、
    前記第1の補償部のカットオフ周波数は、前記上流側温度センサからの出力信号の値に応じて変化し、
    前記第2の補償部のカットオフ周波数は、前記下流側温度センサからの出力信号の値に応じて変化することを特徴とする熱式流量計。
  2. 前記上流側温度センサおよび前記下流側温度センサは、感熱抵抗または熱電対であることを特徴とする請求項1に記載の熱式流量計。
  3. 前記検出素子は、前記上流側温度センサに直列に接続されて接地電位に接続される第1の固定抵抗と、前記下流側温度センサに直列に接続されて接地電位に接続される第2の固定抵抗と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱式流量計。
  4. 前記上流側温度センサの形状と前記第1の固定抵抗の形状とが同一であることを特徴とする請求項3に記載の熱式流量計。
  5. 前記下流側温度センサの形状と前記第2の固定抵抗の形状とが同一であることを特徴とする請求項3に記載の熱式流量計。
  6. 基板と、該基板に設けられたダイアフラムとを備え、
    前記上流側温度センサおよび前記下流側温度センサは、前記ダイアフラムに設けられ、 前記第1の固定抵抗および前記第2の固定抵抗は、前記ダイアフラムの外側で前記基板に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の熱式流量計。
  7. 前記第1の固定抵抗と前記第2の固定抵抗とが近接して配置されていることを特徴とする請求項3に記載の熱式流量計。
  8. 前記第1の固定抵抗の形状と前記第2の固定抵抗の形状とが同一であることを特徴とする請求項3に記載の熱式流量計。
  9. 前記上流側温度センサの出力と前記下流側温度センサの出力を個別にリニアライズするリニアライズ部を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱式流量計。
  10. 前記上流側温度センサの出力と前記下流側温度センサの出力に基づいて故障を判定する故障判定部を有することを特徴とする請求項1に記載の熱式流量計。
  11. 前記上流側温度センサの出力をAD変換する第1のアナログデジタル変換器と、前記下流側温度センサの出力をAD変換する第2のアナログデジタル変換器と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱式流量計。
  12. 基準電圧を定める基準電圧回路を備え、
    前記第1のアナログデジタル変換器および前記第2のアナログデジタル変換器は、同一の前記基準電圧回路に接続されていること特徴とする請求項11に記載の熱式流量計。
  13. 前記第1のアナログデジタル変換器および前記第2のアナログデジタル変換器は、同一の回路構成を備えることを特徴とする請求項11に記載の熱式流量計。
  14. クロック信号を出力するクロック発生器を備え、
    前記第1のアナログデジタル変換器および前記第2のアナログデジタル変換器は、同一の前記クロック発生器に接続されて同一の前記クロック信号により動作することを特徴とする請求項11に記載の熱式流量計。
  15. 前記補償部によって個別に応答補償された前記上流側温度センサの出力信号と前記下流側温度センサの出力信号とを加算する加算器を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱式流量計。
  16. 前記加算器の出力信号に基づいて前記発熱体の温度を制御する温度制御回路を備えることを特徴とする請求項15に記載の熱式流量計。
  17. 前記加算器の出力信号に基づいて感度補正を行う乗算器を備えることを特徴とする請求項15に記載の熱式流量計。
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