JP7166609B2 - ポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、ポリエチレンへのメッキについては、ABS樹脂等へのメッキを行う技術を転用することが難しい。ポリエチレンへのメッキは、プラズマ照射などによるエッチングを施しメッキ処理を行う手法等が検討(例えば、非特許文献1~2)されているが、十分には実用化や市販化に至っていない。
そのため、プラズマ照射などを施すことにより、ポリエチレンにメッキができる可能性が示唆されることもあるが、成形品全体への影響も大きく採用しにくかったり、成形品の形態によっては表面改質される場所を調整しにいという問題があった。また、メッキができても表面状態が不均一なため部分的なメッキとなったり、均質性が低いという問題があった。
<1> ポリオレフィン成形体と、前記ポリオレフィン成形体の表面に設けられた共重合体層と、前記共重合体層の上に設けられたナノ金属層と、前記ナノ金属層の上に設けられたメッキ層とを有するポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法であって、共重合体を分散させたメッキ助剤液に、前記ポリオレフィン成形体を接触させて、前記ポリオレフィン成形体の表面に前記共重合体を含む共重合体層を設ける表面修飾工程と、前記共重合体層にナノ金属層を設ける表面触媒化工程と、前記ナノ金属層が設けられたポリオレフィン成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介して前記ポリオレフィン成形体にメッキ層を設けるメッキ処理工程とを有し、前記ポリオレフィン成形体が、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体であり、前記共重合体が、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィンおよび置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)と、金属吸着能を有する構造を側鎖に有する構成単位(B)とを含む共重合体であることを特徴とする、ポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。
<2> 前記表面修飾工程において、80℃以上の前記メッキ助剤液に前記ポリオレフィン成形体を接触させる<1>に記載のポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。
<3> 前記構成単位(B)が、オキシアルキレン構造またはアミン構造を側鎖に有する<1>または<2>に記載のポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。
<4> 前記構成単位(B)が、キレート構造を側鎖に有する<1>から<3>のいずれかに記載のポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。
<5> 前記共重合体が、前記構成単位(A)のブロックと、前記構成単位(B)のブロックを有するブロック共重合体である<1>から<4>のいずれかに記載のポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。
<6> 前記ポリオレフィン成形体がリサイクルポリオレフィンの成形体であり、ポリエチレンを60質量%以上含有するものである<1>から<5>のいずれかに記載のポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。
<9> 共重合体を分散させたメッキ助剤液に、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体を接触させて、前記ポリオレフィン成形体の表面に前記共重合体を含む共重合体層を設ける表面修飾工程と、前記共重合体層にナノ金属層を設ける表面触媒化工程と、前記ナノ金属層が設けられたポリオレフィン成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介して前記ポリオレフィン成形体にメッキ層を設けるメッキ処理工程とを有し、前記共重合体が、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィンおよび置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)と、金属吸着能を有する構造を側鎖に有する構成単位(B)とを含む共重合体である、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体に電気伝導性を付与する方法。
<10> 共重合体を分散させたメッキ助剤液に、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体を接触させて、前記ポリオレフィン成形体の表面に前記共重合体を含む共重合体層を設ける表面修飾工程と、前記共重合体層にナノ金属層を設ける表面触媒化工程と、前記ナノ金属層が設けられたポリオレフィン成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介して前記ポリオレフィン成形体にメッキ層を設けるメッキ処理工程とを有し、前記共重合体が、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィンおよび置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)と、金属吸着能を有する構造を側鎖に有する構成単位(B)とを含む共重合体である、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体に抗菌性を付与する方法。
また、本発明によれば、リサイクルポリオレフィンを含有する成形体であっても、その表面をメッキ層で被覆するため、得られるポリオレフィンのメッキ成形体に金属光沢を付与することができ、その色調により利用用途が限定されていたリサイクルポリオレフィンの用途の拡大が可能である。さらに、電気伝導性、抗菌作用などを付与することができ、リサイクルポリオレフィンの高付加価値化が可能である。
まず、リサイクル樹脂は、完全に単一の成分に分離することが困難である。リサイクルポリオレフィンは、通常、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物であり、さらに、ポリオレフィンとは異種の樹脂(例えば、ポリスチレン)や、顔料等の無機物、不純物などが混入している。
このリサイクルポリオレフィンに混入する顔料等の無機物は、ポリオレフィン成形体の表面に微細な凹凸構造を形成したり、吸水性をわずかに示すと推測される。この表面の構造や吸水性が、接着性の向上に寄与していると推測される。
また、メッキ助剤液に、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体を接触させることで、リサイクルポリオレフィンに含まれる異種の樹脂や不純物などが溶出し、ポリオレフィン成形体の表面に微細な凹凸構造を生じさせたり、クラックや細孔が生じると推測される。その結果、アンカー効果を発揮し、ポリオレフィン成形体と、共重合体層やメッキ層との接着性が向上するものと推測される。
ポリオレフィンは、リサイクルプラスチックとして使用すると、バージン品の特性と比べて破断強度や伸度などの力学特性が著しく低下しやすいため、多くの場合、サーマルリサイクルされ、焼却処分されているか、あるいは埋め立て処分されている。また、混入する顔料などによってリサイクルポリオレフィンはグレイな色調となっており、マテリアルリサイクルする場合も、パレットや擬木等の限定的な用途に限定されている。本発明の製造方法は、このようなリサイクルポリオレフィンの用途を拡大する方法としても有用である。
このような構成とすることで、上記の通り、リサイクルポリオレフィンに含まれる異種の樹脂や、顔料、不純物等の混入に起因して、ポリオレフィン成形体の表面は微細な凹凸構造や吸水性を有するため、ポリオレフィン成形体と共重合体層やメッキ層との接着性が向上していると推測される。
このポリオレフィン成形体および表面修飾用の共重合体は、本発明のポリオレフィンのメッキ成形体においても、特徴的な構成要件となるものである。
本発明において、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体は、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィンが任意の形状に成形されたものである。
なお、リサイクル(廃棄)ポリオレフィンとは、バージン品のペレットからポリオレフィンを成形する工程で生じる廃棄物や不良品のようなプレコンシューマ品や、容器包装リサイクルプラスチック(いわゆる「容リプラ」)のような成形体として市場流通し、消費された後に廃棄されるポリオレフィンの総称である。また、ポリオレフィンとは、ポリエチレンやポリプロピレン等のように、1位に二重結合をもつαオレフィンの重合で得られる結晶性を有する高分子である。
メッキ層の接着がより良いものとするためには、リサイクルポリオレフィンを主成分とすることが好ましく、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体におけるリサイクルポリオレフィンの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。その上限は、95質量%以下や92質量%以下、90質量%以下であってもよい。
本発明において、表面修飾用の共重合体は、上記の通り、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィンおよび置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)と、側鎖に金属吸着能を有する構造を有する構成単位(B)とを含む共重合体である。
構成単位(A)の側鎖は、リサイクルポリエチレンに代表されるようなメッキ対象のポリオレフィン成形体と優れた接着性を示す。構成単位(A)を介して表面修飾用の共重合体がポリオレフィン成形体の表面に修飾されることで、構成単位(B)に起因する金属吸着能をポリオレフィン成形体に付与することができる。
表面修飾用の共重合体は、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィンおよび置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)を有する。
なお、ここで、本願において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの両者を意味する。同様に、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドおよびメタアクリルアミドの両者を意味する。
表面修飾用の共重合体は、側鎖に金属吸着能を有する構造を有する構成単位(B)を有する。
ここで「金属吸着能」とは、分子構造に極性基を有するために金属や金属イオンと吸着特性を示したり、金属や金属イオンと化学結合したり、錯形成しやすい分子構造が共重合体内に設けられ、その構造が被処理物(リサイクルポリエチレン成形体等)の表面に配置されることで金属や金属イオンが担持され吸着・保持される性質を有することをいう。
Rx1で表されるアルキル基は、直鎖であっても分岐していてもよいが、直鎖であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数が大きくなると、ポリオレフィンとの相互作用が強くなり金属吸着能を十分に発揮できなかったり、ナノ金属触媒と相互作用しにくくなる場合がある。そのため、Rx1は水素原子または炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
中でも、Ry1およびRy2は、水素原子または炭素数1~5の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましい。Ry1およびRy2で表されるアルキル基の炭素数が大きくなると、金属と相互作用しにくい場合がある。
金属と相互作用しやすく、メッキ層の接着性がより優れたものとなるため、Rb2は、アミノ基または一般式(X)で表される置換基であることが好ましい。アミノ基としては、無置換のアミノ基(-NH2)であっても、アルキル基等が置換したアミノ基であってもよいが、上記一般式(Y)で表される構造がより好ましい。
表面修飾用の共重合体がブロック共重合体である場合、mは2~1,000であることが好ましい。より安定した改質効果を発揮し、ポリオレフィン成形体の表面に金属吸着能を付与するためには、mは、2以上が好ましく、mは5以上や、10以上とすることがより好ましい。また、mは、構成単位(A)および構成単位(B)の効果が十分に得られる範囲で、800以下や、500以下としてもよい。
また、表面修飾用の共重合体は、構成単位(A)および構成単位(B)を主成分として含むものであり、構成単位(A)と構成単位(B)との合計の割合が、表面修飾用の共重合体中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
本発明の製造方法は、上記の通り、表面修飾工程と、表面触媒化工程と、メッキ処理工程とを有する。本発明の製造方法の一例を図1に示す。
本発明の製造方法とすることで、安定してポリオレフィン成形体の上に、共重合体層とナノ金属層を介して、メッキ層を形成させることができ、形成されるメッキ層は接着性に優れたものとなる。
表面修飾工程は、共重合体を分散させたメッキ助剤液に、前記ポリオレフィン成形体を接触させて、前記ポリオレフィン成形体の表面に前記共重合体を含む共重合体層を設ける工程である。
表面修飾工程で用いられるポリオレフィン成形体、上記の通り、リサイクルポリオレフィンを含有するものである。
また、メッキ助剤液に分散させる共重合体(表面修飾用の共重合体)は、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィンおよび置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)と、側鎖に金属吸着能を有する構造を有する構成単位(B)とを含む共重合体であり、上記の通りである。
表面修飾用の共重合体を用いて、ポリオレフィン成形体の表面を修飾することで、金属との親和性が向上し、表面触媒化およびメッキ処理が進行しやすくなる。また、ポリオレフィン成形体の表面を、メッキ層との接着性に優れた表面状態とすることができる。
メッキ助剤液とは、表面修飾用の共重合体が溶媒に溶解または分散した液である。メッキ助剤液を、ポリオレフィン成形体と接触させることで、その表面を表面修飾用の共重合体により改質させるものである。ポリオレフィン成形体のメッキ部分となる任意の場所に、表面修飾用の共重合体を含む共重合体層を設けやすいように調製されたものである。例えば、表面修飾用の共重合体は、適宜、本発明の共重合体が分散や溶解可能な溶媒等に混合させ、メッキ助剤液とされる。
沸点が低すぎると、ポリオレフィン成形体とメッキ助剤との接触時に、溶媒が揮発する場合がある。この揮発によりメッキ助剤液の液量変化や濃度変化を抑制するために還流する場合がある。溶媒の沸点が低いとより還流機能を向上させる必要が生じ操作性が低下する場合がある。このため沸点は、上記のような範囲としてより高くするほうがよい。一方、沸点の上限は特に設ける必要はない。
メッキ助剤液の表面修飾用の共重合体濃度は、0.01~2.0質量%であることが好ましい。表面修飾用の共重合体濃度の下限は、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。濃度が薄すぎる場合、ポリオレフィン成形体の表面に表面修飾用の共重合体を含む共重合体層が十分に形成されずに改質効果が不足する場合がある。表面修飾用の共重合体の濃度の上限は、1.5%質量以下が好ましく、1.0%質量以下がより好ましい。0.9%質量以下や0.8%質量以下とすることもできる。濃度を高くしても改質効果は飽和する場合がある。また濃度が高すぎると、表面修飾用の共重合体自体の自己集合によるミセル化が生じてしまい改質できない場合がある。
メッキ助剤液とポリオレフィン成形体との接触方法としては、メッキ助剤液中に浸漬させたり、任意の位置に刷毛やスプレー、コーター等の塗工手段でメッキ助剤液を塗工したりといった方法で接触させる。そして、メッキ助剤液中の溶媒を乾燥処理等を行うことで除去し、ポリオレフィン成形体の表面に共重合体層を設けることが一般的である。
また、メッキ助剤液の温度が高い場合、溶液中でポリオレフィン成形体の耐熱性が不足して変形したり、メッキ助剤液の溶媒に溶解するおそれがある。そのため、メッキ助剤液の温度は、200℃以下とすることが好ましく、180℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。一方、メッキ助剤液の温度が高い場合であっても、メッキ助剤液とポリオレフィン成形体との接触時間を短時間化することで、変形等の影響を限定的にし、表面修飾することもできる。
なお、本発明の製造方法では、このような所定の温度の共重合体溶液にポリオレフィン成形体を接触させる工程を有していればよく、その下限よりも低い温度で接触させる工程を有していてもよい。
好適な手法の一つは、80℃以上のメッキ助剤液中にポリオレフィン成形体を浸漬する方法である。
表面触媒化工程は、前記共重合体層にナノ金属層を設ける工程である。
ナノ金属層を設けることにより、ポリオレフィン成形体の表面をメッキする金属が析出しやすいように活性化させることができる。このポリオレフィン成形体の表面は、表面修飾工程において、共重合体層が設けられているためナノ金属層が形成しやすい状態となっている。
具体的には、酸性キャタライジング法やアルカリキャタライジング法等の公知の方法を用いることで、ナノ金属層を形成することができる。
また、ナノ金属溶液は通常、塩酸等の酸を含み、酸性である。そのpHは6以下や3以下とすることができる。また、ナノ金属溶液中のナノ金属触媒の濃度は、金属種や溶媒等に応じて適宜決定され、0.001~0.1mol/Lや0.005~0.05mol/Lとすることができる。
また、ナノ金属溶液の温度は、ナノ金属触媒の種類や濃度、溶媒の種類等に応じて、適宜決定される。例えば、10~50℃や20~30℃とすることができる。
活性化液は、硫酸水溶液や塩酸水溶液などの酸性水溶液が用いられることが一般的である。また、アクセレーターとして市販されている液も利用できる。
ポリオレフィン成形体と活性化液とを接触させる時間は、活性化液の組成等に応じて、適宜決定することができる。例えば、1~60分や1~10分とすることができる。
また、活性化液の温度は、活性化液の組成等に応じて、適宜決定される。例えば、10~50℃や20~30℃とすることができる。
また、ナノ金属層は、共重合体層全体に形成されるようにしてもよいし、共重合体層の任意の位置にのみ形成されるようにしてもよい。
メッキ処理工程は、前記ナノ金属層が設けられたポリオレフィン成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介して前記ポリオレフィン成形体にメッキ層を設ける工程である。
メッキ処理工程では、ナノ金属層のナノ金属触媒が起点となり、メッキする金属を析出し、ポリオレフィン成形体がメッキされる。
具体的には、金属塩と還元剤が含まれるメッキ溶液と、ナノ金属層が設けられたポリオレフィン成形体とを接触させることで、ポリオレフィン成形体の表面に付与されたナノ金属触媒によって還元剤が酸化され電子を生じる。この電子によってメッキ溶液中の金属塩が還元され、ポリオレフィン成形体上に金属が析出することで、ポリオレフィン成形体をメッキすることができる。メッキ溶液とポリオレフィン成形体との接触は、一般的に、メッキ溶液にポリオレフィン成形体を浸漬させることで行われる。
また、メッキ溶液の温度は、メッキさせる金属の種類やメッキ溶液中の金属塩の濃度、溶媒の種類等に応じて、適宜決定される。例えば、20~100℃や20~30℃とすることができる。
また、無電解メッキ処理後に、場合によってはさらに電気メッキを行ってもよい。
一般的に、銅メッキには、硫酸銅や塩化銅等の銅塩、ホルムアルデヒドやその誘導体等の還元剤、酒石酸塩(ロシェル塩)やエチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等の錯化剤、水酸化ナトリウム等のpH調整剤等を含むメッキ溶液が用いられる。
また、ニッケルメッキには、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等のニッケル塩、次亜リン酸ナトリウム等の還元剤、酢酸ナトリウム等の錯化剤、水酸化ナトリウム等のpH調整剤等を含むメッキ浴液が用いられる。
このようなメッキ溶液(メッキ浴)は市販されており、市販のメッキ浴を用いて、メッキ処理を行うこともできる。
例えば、図1に示すように、共重合体層、ナノ金属層およびメッキ層で全体的に被覆されたポリオレフィンのメッキ成形体を製造することもできる。
また、メッキ処理では、ナノ金属層のナノ金属触媒を触媒として、ナノ金属層を介して、金属がメッキされるので、一般的に、ナノ金属層全体にメッキ層が形成される。そのため、用途に応じて、共重合体層やナノ金属層を特定のパターンとなるように設計することで、特定のパターンのメッキ層を形成させることができる。
また、部分的にメッキ層を設けたポリオレフィンのメッキ成形体は、図4に示すように、ポリオレフィン成形体の任意の面の任意の部分に共重合体層を設けた後、前記共重合体層の上に全体的にナノ金属層を設け、更に、前記ナノ金属層の上に全体的にメッキ層を設ける方法でも製造することが可能である。
本発明のポリオレフィンのメッキ成形体は、ポリオレフィン成形体と、前記ポリオレフィン成形体の表面に設けられた共重合体層と、前記共重合体層の上に設けられたナノ金属層と、前記ナノ金属層の上に設けられたメッキ層とを有するポリオレフィン成形体である。上記の通り、本発明のポリオレフィンのメッキ成形体の基材となるポリオレフィン成形体は、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体である。また、共重合体層に含まれる共重合体が、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィンおよび置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)と、金属吸着能を有する構造を側鎖に有する構成単位(B)とを含む共重合体である。
この本発明のポリオレフィンのメッキ成形体は、上記した製造方法により好適に製造できる。
ナノ金属層は、共重合体層の少なくとも一部に設けられていればよく、共重合体層に全体的に設けられていても、任意の位置に部分的に設けられた構造であってもよい。
また、メッキ層は、ナノ金属層のナノ金属触媒を触媒としてメッキされ形成することで簡単に製造できるため、ナノ金属層に全体的に設けられた構造であることが好ましい。
[原料]
・モノマー(A):BHA
ベヘニルアクリレートを用いた。このモノマーは、炭素数22のアルカン鎖を側鎖に有し、メタクリレート構造が、主鎖となるモノマーである。
メタクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル(2-(tert-Butylamino)ethyl methacrylate:TBAEMA)を用いた。このモノマーは、側鎖に2級アミノ基を有し、メタクリレート構造が、主鎖となるモノマーである。
・ラジカル発生剤:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
・溶媒:酢酸ブチル
BHA6.7g、酢酸ブチル6.7g、開始剤0.385gを混合した溶液を、重合温度約105℃、リアクターの撹拌速度75rpm、窒素雰囲気下でリビングラジカル重合することにより、第1のモノマー(A)であるBHAのブロック重合体を製造した。さらに、これにより得られたBHAのブロック重合体の溶液に、第2のモノマー(B)であるTBAEMAを3.61g、酢酸ブチルを3.76g投入してBHAとTBAEMAのブロック共重合体である共重合体(1)を得た。この共重合体(1)の構造式を式(I)として示す。
なお、得られた共重合体(1)の分子量(Mw:重量平均分子量)を、GPCにより測定し、ポリスチレン換算にて求めた。モノマー(A-1-1)由来の構造は推算値として約5,000(g/mol)、モノマー(B-1-1)由来の構造が約6,000(g/mol)、Mw/Mnが1.1の共重合体であった。
・ポリオレフィン成形体(基材):
広島リサイクルセンター製のPE選別容リプラを180℃、25mPa、2分で熱プレス成型し、シート状(縦4cm×横3cm×厚さ0.1cm)に成形加工したリサイクルポリオレフィンフィルムを用いた。なお、広島リサイクルセンター製のPE選別容リプラは、ISO18263の規格では、ポリエチレンの準リッチ品となるものである。
・アクセレーター:メルプレートPA-360(メルテックス株式会社製)
・無電解銅メッキ浴:メルプレートCU-390(メルテックス株式会社製)
参考例1で製造した共重合体(1)を、キシレンを溶媒として、70℃にて混合撹拌することで溶解させて、共重合体(1)の濃度が0.1質量%の共重合体溶液を調製した。
リサイクルポリエチレンフィルムをアセトンで洗浄して表面を清浄化させた後、上記の共重合体溶液に、室温(25℃)で10分間浸漬させ、その後、常温で静置し24時間自然乾燥させることで、表面修飾したリサイクルポリエチレンフィルムを得た。この表面修飾したリサイクルポリエチレンフィルムには、共重合体(1)の層が表面に設けられている。
上記の表面修飾工程を行って得た表面修飾したリサイクルポリエチレンフィルムを、25℃に調整したキャタリストに浸漬した。浸漬は、浸漬温度を25℃とし、撹拌しながら10分間行った。その後、表面を水洗した。次いで、25℃に調整したアクセレーターに浸漬した。浸漬は、浸漬温度を25℃とし、撹拌しながら1分間行った。その後、表面を水洗した。これにより、リサイクルポリエチレンフィルムの表面に設けられた共重合体(1)の層に触媒を付与し、共重合体(1)の層にナノ金属層を設けた。
上記の表面触媒化工程を行い、ナノ金属層を設けたリサイクルポリエチレンフィルムを、25℃に調整した無電解銅メッキ浴に浸漬した。浸漬は、浸漬温度を25℃とし、撹拌しながら20分間浸漬させた。これにより、リサイクルポリエチレンフィルムの表面にメッキ層を設けた。
さらに、メッキ処理後のリサイクルポリエチレンフィルムの表面を水洗し、表面の水分をふき取り乾燥させ、メッキ層を有するポリエチレンフィルム(1)を得た。
表面修飾工程において、アセトンで洗浄して表面を清浄化させた後のリサイクルポリエチレンフィルムの共重合体溶液への浸漬を、室温で10分間に変えて、80℃で10分間とした以外は、実施例1と同様にして、メッキ層を有するポリエチレンフィルム(2)を得た。
このポリエチレンフィルム(2)は、ポリエチレンフィルム(1)と比較して、メッキ層がしっかり接着していた。
リサイクルポリエチレンフィルムの代わりに、市販のポリエチレンフィルム(京葉ポリエチレン株式会社製HDPE FX201)を用いた以外は、実施例2と同様にし、メッキ層を有するポリエチレンフィルム(3)を得た。
1.フィルムの外観
メッキ処理フィルムである実施例1のポリエチレンフィルム(1)および実施例2のポリエチレンフィルム(2)を目視で観察したところ、その表面は銅の光沢が確認されるものだった。
基材のリサイクルポリエチレンフィルムおよび実施例2により得られたメッキ層を有するポリエチレンフィルム(2)の外観写真を図5に示す。図5に示すように、メッキ処理フィルムの表面は、銅の光沢が確認される。
テープ剥離試験は、JIS H 8504(1999)を参考にして行った。
ニチバン社製のセロテープ(登録商標)CT-12M(12mm×30mm)を、実施例2のポリエチレンフィルム(2)および比較例1のポリエチレンフィルム(3)の上面に貼り付け、剥がした後の、テープの接着面を目視で評価した。
図6に、テープ剥離試験(1)後の実施例2のポリエチレンフィルム(2)とテープの写真を示す。また、図7に、テープ剥離試験(1)後の比較例1のポリエチレンフィルム(3)とテープの写真を示す。
テープ剥離(1)後のテープの接着面を確認すると、比較例1のポリエチレンフィルム(3)では、全体的にメッキ層が剥がれているのに対して、実施例2のポリエチレンフィルム(2)では、メッキの剥離が少なく、リサイクルポリエチレンフィルムを基材として用いるとメッキ層の接着性が大きく向上することがわかる。
また、メッキ層のリサイクルポリエチレンフィルム上における粘着力は、0.1kN/m未満であった。
実施例2のポリエチレンフィルム(2)および比較例1のポリエチレンフィルム(3)の表面に2mm幅の正方形ができるように基材に達する切り込みを入れた上で、ニチバン社製のセロテープ(登録商標)CT-12M(12mm×30mm)を貼り付けた。テープを剥がした後の、テープの接着面を目視で評価した。
図8に、テープ剥離試験(2)後の実施例2のポリエチレンフィルム(2)とテープの写真を示す。また、図9に、テープ剥離試験(2)後の比較例1のポリエチレンフィルム(3)とテープの写真を示す。
図8、9からも、実施例2のポリエチレンフィルム(2)は、比較例1のポリエチレンフィルム(3)と比較してメッキ層の接着性が大きく向上していることがわかる。
テープ剥離試験における剥離部分を評価するために、比較例1のポリエチレンフィルム(3)のメッキ層をセロテープ(登録商標)で強制的に剥離した後、実施例2のメッキ処理工程と同様にメッキ処理を行ったところ、メッキ層が形成されることが確認できた。
この結果より、テープ剥離試験によって剥離が生じた部分は、ナノ金属層とメッキ層との界面である可能性が高いことがわかった。したがって、メッキ層が剥がれにくいものとするためには、基材と共重合体層との密着性(接着性)や共重合体層とナノ金属層との密着性よりも、ナノ金属層とメッキ層との密着性を向上させることが重要であるといえる。ナノ金属層とメッキ層との密着性を向上させるためには、基材の表面を粗化するなどして表面形状を制御することが重要であると考えられる。
この結果より、実施例2では、基材の表面形状等を特段制御することなしに、比較例1に比べて、ナノ金属層とメッキ層との界面の密着性が向上しているといえる。このように、リサイクルポリオレフィンを用いることで、簡単に、メッキ層が剥がれにくいポリエチレンフィルムを製造できた。
Claims (4)
- ポリオレフィン成形体と、前記ポリオレフィン成形体の表面に設けられた共重合体層と、前記共重合体層の上に設けられたナノ金属層と、前記ナノ金属層の上に設けられたメッキ層とを有するポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法であって、
共重合体を分散させた、80℃以上のメッキ助剤液に、前記ポリオレフィン成形体を接触させて、前記ポリオレフィン成形体の表面に前記共重合体を含む共重合体層を設ける表面修飾工程と、
前記共重合体層にナノ金属層を設ける表面触媒化工程と、
前記ナノ金属層が設けられたポリオレフィン成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介して前記ポリオレフィン成形体にメッキ層を設けるメッキ処理工程とを有し、
前記ポリオレフィン成形体が、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体であり、
前記共重合体が、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)と、オキシアルキレン構造またはアミン構造を側鎖に有する構成単位(B)とを含む共重合体であることを特徴とする、ポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。 - ポリオレフィン成形体と、前記ポリオレフィン成形体の表面に設けられた共重合体層と、前記共重合体層の上に設けられたナノ金属層と、前記ナノ金属層の上に設けられたメッキ層とを有するポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法であって、
共重合体を分散させた、80℃以上のメッキ助剤液に、前記ポリオレフィン成形体を接触させて、前記ポリオレフィン成形体の表面に前記共重合体を含む共重合体層を設ける表面修飾工程と、
前記共重合体層にナノ金属層を設ける表面触媒化工程と、
前記ナノ金属層が設けられたポリオレフィン成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介して前記ポリオレフィン成形体にメッキ層を設けるメッキ処理工程とを有し、
前記ポリオレフィン成形体が、リサイクルポリオレフィンを含有するポリオレフィン成形体であり、
前記共重合体が、側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーに由来する構成単位(A)と、イミノ二酢酸(IDA)基、低分子ポリアミノ基、アミノリン酸基、イソチオニウム基、ジチオカルバミン酸基およびグルカミン基からなる群から選択されるいずれかの構造を側鎖に有する構成単位(B)とを含む共重合体であることを特徴とする、ポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。 - 前記共重合体が、前記構成単位(A)のブロックと、前記構成単位(B)のブロックを有するブロック共重合体である請求項1または2に記載のポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。
- 前記ポリオレフィン成形体がリサイクルポリオレフィンの成形体であり、ポリエチレンを60質量%以上含有するものである請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィンのメッキ成形体の製造方法。
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