実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る回転電機を示す縦断面図、図2は、この発明の実施の形態1に係る回転電機の要部を示す斜視図、図3は、この発明の実施の形態1に係る固定子を軸方向から見た端面図、図4は、図3のA部拡大図である。なお、縦断面図とは、回転軸の軸心を含む平面における断面を示す図である。また、説明の便宜上、回転軸の軸心と平行な方向を軸方向、回転軸の半径方向を径方向、回転軸の軸心を中心とする回転方向を周方向とする。
図1において、回転電機100は、円筒部および底部を有するフレーム2およびフレーム2の開口を塞ぐブラケット3を有するハウジング1と、フレーム2の円筒部の内部に収納された固定子10と、フレーム2の底部およびブラケット3にベアリング4を介して回転可能に支持された回転軸6に固着されて、固定子10の内径側に同軸に回転可能に設けられた回転子30と、を備えている。固定子10と回転子30との間には、空隙が形成されている。
回転子30は、軸心位置に挿入された回転軸6に固着された回転子鉄心31と、回転子鉄心31の外周部に埋め込まれて周方向に等ピッチで配列され、磁極を構成する永久磁石32と、を備える。すなわち、回転子30は、小型高出力化が可能な永久磁石型回転子である。さらに、回転子30は、界磁巻線33と、界磁巻線33に給電するためのコンミテータ34と、を備えている。界磁巻線33は、コンミテータ34を介して給電されることで、径方向の磁束を発生する。そして、永久磁石32の磁束と同じ向きの磁束を界磁巻線33により発生させることで、トルクを向上させることができる。また、永久磁石32の磁束と逆向きの磁束を界磁巻線33により発生させることで、回転子30から固定子10に流れる磁束を低減させる。これにより、高速域における固定子10の固定子巻線20に発生する逆起電圧が低減され、高速回転化が図られる。
固定子10は、図2から図4に示されるように、固定子鉄心11と、固定子鉄心11に装着された固定子巻線20と、固定子鉄心11と固定子巻線20とを絶縁するインシュレータ18と、を備える。
固定子鉄心11は、円環状の外側固定子鉄心12と、円環状の内側固定子鉄心13と、を備える。ボルト9が貫通される取付穴8が穴方向を軸方向として外側固定子鉄心12に形成されている。内側固定子鉄心13は、例えば、48個の分割コア14を備える。分割コア14は、円弧状のコアバック部15と、コアバック部15の内周壁面から径方向内方に突出する1本のティース16と、を備える。48個の分割コア14は、コアバック部15の周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列され、圧入、焼き嵌めなどにより外側固定子鉄心12内に挿入されて保持されている。そして、周方向に隣り合うティース16間に形成されるスペースがスロット17となる。固定子巻線20を構成するコイル21が、スロット17に装着されている。インシュレータ18が、スロット17の内壁面に沿うように収納され、コイル21と内側固定子鉄心13とを電気的に絶縁している。固定子鉄心11は、取付穴8に通されたボルト9をブラケット3に締着してブラケット3に保持された状態で、フレーム2内に収納される。
外側固定子鉄心12および分割コア14は、例えば、電磁鋼板などの磁性薄板から打ち抜かれた磁性片を積層して構成される。なお、外側固定子鉄心12は、円環状に配列された分割コア14、すなわち内側固定子鉄心13を保持できればよく、アルミニウムなどの非磁性金属のリング体で構成されてもよい。
このように構成された回転電機100は、8極48スロットの永久磁石式回転電機である。固定子巻線20が三相巻線とすれば、スロット17は、毎極毎相あたり2の割合で固定子鉄心11に形成されている。
つぎに、固定子10の組み立て方法について説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係る固定子の組み立て方法におけるコイルアッセンブリを示す斜視図、図6は、この発明の実施の形態1に係る固定子の組み立て方法における分割コアをコイルアッセンブリに装着する前の状態を示す斜視図、図7は、この発明の実施の形態1に係る固定子の組み立て方法における分割コアをコイルアッセンブリに装着した状態を示す斜視図、図8は、この発明の実施の形態1に係る固定子の組み立て方法における内側固定子鉄心を外側固定子鉄心に装着した状態を示す斜視図である。
まず、図5に示されるように、48個のコイル21を組み合わせて、籠状のコイルアッセンブリ22を組み立てる。ついで、図6に示されるように、インシュレータ18が装着された48個の分割コア14が、コイルアッセンブリ22の径方向外側に、ティース16を径方向内方に向けて、周方向に等角ピッチで配列される。ついで、48個の分割コア14を径方向内方に移動させる。これにより、図7に示されるように、分割コア14がコイルアッセンブリ22に装着される。48個の分割コア14は、コアバック部15の周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列される。ついで、図8に示されるように、円環状に配列された分割コア14が、圧入、焼き嵌めなどにより、外側固定子鉄心12内に挿入され、保持される。
つぎに、回転子30の構造について図9から図19にもとづいて説明する。図9は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における回転子を軸方向から見た端面図、図10は、図9のX-X矢視断面図、図11は、図9のXI-XI矢視断面図、図12は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における回転子鉄心を軸方向から見た端面図、図13は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における回転子鉄心の内側鉄心を軸方向から見た端面図、図14は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における回転子鉄心の外側鉄心を軸方向から見た端面図、図15は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における絶縁部材を示す側面図、図16は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における絶縁部材を示す正面図、図17は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における絶縁部材を示す斜視図、図18は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における内側鉄心に1つの絶縁部材を装着した状態を軸方向から見た端面図、図19は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における内側鉄心に1つの絶縁部材を装着した状態を示す斜視図である。
回転子鉄心31は、図12示されるように、内側鉄心101と、外側鉄心102と、を備える。内側鉄心101には、図13に示されるように、基部103から径方向外方に突出する巻線部104が周方向に等角ピッチで8つ配置されている。巻線部104は、周方向に離れて配置されており、互いに平行に軸方向に延びる一対の磁束調整部105と、一対の磁束調整部105の径方向外方の端部間を連結する連結部106と、を備える。基部103と、一対の磁束調整部105と、連結部106とにより囲まれた領域が、磁石挿入穴107となる。すなわち、巻線部104には、軸方向に貫通する断面矩形の磁石挿入穴107が形成されている。嵌合溝108は、断面矩形の溝形状であり、溝方向を軸方向として、周方向に隣り合う巻線部104間に位置する基部103の部位に形成されている。嵌合溝108は、図23に示されるように、磁極間中心であるq軸上に位置している。
外側鉄心102は、図14に示されるように、周方向に等角ピッチで配列された8つの極間鉄心部111が連結部110により連結されて一体の環状体に構成されている。極間鉄心部111は、連結部110に対して径方向内方に突出している。スリット112が、極間鉄心部111のそれぞれの外周面に形成されている。外側鉄心102の極間鉄心部111の径方向内方の端部が、嵌合溝108に嵌合可能な断面形状の嵌合突起109となる。外側鉄心102の嵌合突起109は、図12に示されるように、軸方向から嵌合溝108に嵌合される。これにより、外側鉄心102は、位置決めされた状態で、巻線部104を覆うように内側鉄心101に取り付けられる。ここで、嵌合溝108が嵌合凹部であり、嵌合突起109が嵌合凸部である。
内側鉄心101および外側鉄心102は、例えば、0.1mmから0.5mmの板厚の電磁鋼板から打ち抜かれた磁性片を積層して作製される。内側鉄心101および外側鉄心102を構成する磁性片を同一材料から打ち抜くことで、材料歩留まりが向上し、省材料化および低コスト化が図られる。ここでは、内側鉄心101および外側鉄心102の材料として磁性鋼板を用いているが、他の磁性薄板を用いてもよい。
絶縁部材35は、絶縁性樹脂からなる樹脂成型体である。絶縁部材35は、図15から図17に示されるように、巻線部104に装着可能な矩形の筒状体に構成された巻胴部113と、巻胴部113の両縁部から巻胴部113と直角に、かつ外側に突出する状態で、巻胴部113の全周にわたって形成された一対の鍔部114と、を備える。絶縁部材35は、図18および図19に示されるように、径方向外方から巻線部104のそれぞれに装着される。永久磁石32は、絶縁部材35が巻線部104に装着される前に、磁石挿入穴107に装着される。これにより、磁石挿入穴107からの永久磁石32の軸方向の飛び出しが絶縁部材35により阻止される。そこで、永久磁石32の軸方向の飛び出しを阻止する端板などの部品が不要となるので、部品点数が削減され、生産性の向上が図られるとともに、低コスト化、小型化が図られる。
界磁コイル33aは、絶縁部材35の巻胴部113に径方向を軸方向として設定された回数だけ導体線を巻き付けて作製される。これにより、界磁コイル33aは、巻胴部113により内側鉄心101との間の電気絶縁性が確保される。また、界磁コイル33aの径方向の移動が鍔部114により規制され、界磁コイル33aの径方向位置が位置決めされる。
界磁巻線33は、8つの絶縁部材35に巻き付けられた界磁コイル33aにより構成される。8つの界磁コイル33aは、1本の導体線を8つの絶縁部材35に連続して巻き付けて一続きに作製される。8つの界磁コイル33aは、図9に示されるように、周方向に直列となるように配列されている。このとき、界磁コイル33aは、周方向に隣り合う界磁コイル33aの巻胴部113への巻き付け方向が交互に変わるよう巻かれている。界磁巻線33の第1端末が、図9および図10に示されるように、コンミテータ正極34aに接続されている。また、界磁巻線33の第2端末が、図9および図11に示されるように、コンミテータ負極34bに接続されている。これにより、コンミテータ正極34aからコンミテータ負極34bに電流を流すことで、界磁コイル33aのそれぞれは、磁束の向きを径方向とする磁界を形成する。そして、図9に矢印で示されるように、磁束の向きを径方向外方とする磁界を発生する界磁コイル33aと、磁束の向きを径方向内方とする磁界を形成する界磁コイル33aとが、周方向に交互に配列されている。ここで、便宜的に、コンミテータ34の正極をコンミテータ正極34aとし、負極をコンミテータ負極34bとした。
ここで、磁石挿入穴107に挿入された永久磁石32の着磁工程では、着磁時に増大した磁束量が発生する。そこで、界磁巻線33の装着後に着磁工程が行われる場合には、増大した磁束量により界磁巻線33の端子間に電圧が作用する。そのため、界磁巻線33には、耐圧の設計が必要となる、界磁巻線33の占積率が低下するという問題が生じる。また、着磁工程において作用する電磁力により界磁巻線33が振動する現象が発生する。そのため、界磁巻線33の導体線同士が擦れあい、さらには導体線と絶縁部材35とが擦れあい、導体線の絶縁被膜が損傷する危険性がある。これらの懸念を払拭するためには、界磁巻線33の装着工程に先だって、磁石母材を巻線部104に装着し、磁石母材を着磁する着磁工程を行うことが望ましい。
つぎに、回転子30の組み立て方法について説明する。図20は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における界磁コイルが内側鉄心の1つの巻線部に巻き付けられた状態を示す端面図、図21は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における界磁コイルを内側鉄心の1つの巻線部に巻き付ける方法を説明する模式図、図22は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における界磁コイルを内側鉄心のすべての巻線部に巻き付ける方法を説明する模式図、図23は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における外側鉄心を内側鉄心に装着した状態を示す端面図である。
界磁巻線装着工程に先だって、永久磁石32が内側鉄心101の1番目の巻線部104の磁石挿入穴107に軸方向から挿入される。界磁巻線装着工程では、まず、1番目の絶縁部材35が1番目の巻線部104に径方向外方から装着される。ついで、界磁コイル33aを構成する導体線であるマグネットワイヤ131が、フライヤ135を用いて1番目の巻線部104に装着された1番目の絶縁部材35に巻き付けられる。
フライヤ135は、ノズル130、フォーマ132、第1ガイド133、第2ガイド134を備える。ノズル130から繰り出されたマグネットワイヤ131が、図21に示されるように、径方向を軸方向として1番目の巻線部104に装着された1番目の絶縁部材35に設定された回数巻き付けられる。これにより、図20に示されるように、界磁コイル33aが1番目の絶縁部材35に装着される。フォーマ132は、マグネットワイヤ131が巻き付けられる1番目の巻線部104と周方向に隣り合う2番目および8番目の巻線部104とマグネットワイヤ131との干渉を回避する。さらに、フォーマ132がマグネットワイヤ131をガイドしてマグネットワイヤ131を屈曲させることで、マグネットワイヤ131が1番目の巻線部104に装着された1番目の絶縁部材35の径方向の内方まで効果的に巻き付けることができる。
ついで、内側鉄心101が45度回転される。そして、永久磁石32が2番目の巻線部104の磁石挿入穴107に挿入される。ついで、2番目の絶縁部材35が2番目の巻線部104に径方向外方から装着される。ついで、巻き付け方向を逆方向としてマグネットワイヤ131が、2番目の巻線部104に装着された2番目の絶縁部材35に連続して巻き付けられる。この操作を繰り返し、3番目、4番目・・・8番目の巻線部104に順次マグネットワイヤ131が巻き付けられ、界磁巻線装着工程が終了する。これにより、図22に示されるように、界磁コイル33aが、巻き付け方向を交互に変えて8つの巻線部104に装着された絶縁部材35に連続して巻き付けられる。8つの界磁コイル33aは、1本のマグネットワイヤ131により一続きに作製され、界磁巻線33を構成する。
ついで、外側鉄心102が、軸方向から内側鉄心101に装着される。これにより、図23に示されるように、回転子30が組み立てられる。
実施の形態1によれば、回転子鉄心31が、巻線部104を有する内側鉄心101と、極間鉄心部111が連結部110により連結されて一体の環状体に構成された外側鉄心102と、に分割構成さている。巻線部104が内側鉄心101の基部103から径方向外方に突出している。外側鉄心102は、巻線部104を覆うように内側鉄心101に装着されている。これにより、外側鉄心102が装着されていない状態では、内側鉄心101の巻線部104に簡易にマグネットワイヤ131を巻き付けることができ、生産性が向上される。また、回転子鉄心31が内側鉄心101と外側鉄心102とで構成されている。そこで、特許文献1と比較して、回転子鉄心の部品点数が少なく、極数が増えても部品点数が増加しないので、生産性が向上されるとともに、低コスト化が図られる。
また、8つの界磁コイル33aは、1本のマグネットワイヤ131を周方向に配列されている巻線部104に一続きに巻いて構成されている。そして、周方向に隣り合う巻線部104に巻かれているマグネットワイヤ131の巻き付け方向が逆方向となっている。すなわち、巻線部104におけるマグネットワイヤ131の巻き付け方向が、界磁コイル33aの周方向の並び順に、正方向→逆方向→正方向・・・→逆方向となっている。そして、1番目の界磁コイル33aの巻き始めがコンミテータ正極34aに接続され、8番目の界磁コイル33aの巻き終わりがコンミテータ負極34bに接続されている。これにより、周方向に隣り合う界磁コイル33aに逆向きの磁界を発生させることができる。このように、界磁巻線33を1本のマグネットワイヤ131により構成できるので、界磁コイル33a同士を接続する結線板などの部品が不要となる。そのため、部品点数が削減され、生産性が向上されるとともに、低コスト化、小型化が図られる。
特許文献1では、4個の界磁コイルを独立して作製している。そこで、4個の界磁コイルを回転子鉄心に装着した後、界磁コイル同士を結線して界磁巻線を構成するために、界磁コイルの端末を長くする必要がある。実施の形態1では、8個の界磁コイル33aが1本のマグネットワイヤ131を8個の巻線部104に連続して巻き付けて作製されている。そこで、界磁コイル33a間の渡り部の長さを最短にすることができ、省材料化が図られる。
特許文献1では、4個の界磁コイルを独立して作製し、界磁コイルの端末同士を接合して界磁巻線を構成している。実施の形態1では、8個の界磁コイル33aを1本のマグネットワイヤ131で作製している。これにより、界磁巻線33を作製するための接合部の個数を低減でき、信頼性および生産性を向上させることができる。
実施の形態1では、界磁コイル33aを巻線部104に巻き付けた後、外側鉄心102を内側鉄心101に装着している。嵌合突起109が軸方向からの圧入により嵌合溝108に挿入されて、外側鉄心102が内側鉄心101に保持される。そして、圧入時に外側鉄心102の全体が変形するので、外側鉄心102を内側鉄心101に簡易に固定でき、生産性が高められる。
また、外側鉄心102の連結部110と巻線部104の連結部106との境界面が、図23に示されるように、磁極中心であるd軸における回転子鉄心31の径方向の分割面となる。そこで、d軸における回転子鉄心31の径方向の分割面が、特許文献1では矩形コアの径方向の両面の2つであるのに対し、実施の形態1では1つであるので、d軸における磁気抵抗が小さくなり、高出力化が図られる。また、外側鉄心102が内側鉄心101に装着される前に、界磁巻線33が巻線部104に巻かれる。そこで、巻線部104の周辺部が空きスペースとなり、界磁巻線33の巻線工程が容易となり、生産性が高められる。
また、巻線部104の磁束調整部105は、永久磁石32の周方向の両側部に位置し、界磁巻線33の界磁により磁気飽和されやすくなっている。これにより、磁束調整部105を流れる永久磁石32の漏れ磁束量を界磁巻線33の界磁により簡易に制御できる。
また、永久磁石32に作用する遠心力は、磁束調整部105および連結部106からなる巻線部104により受けられる。そこで、外側鉄心102に作用する応力が小さくなり、連結部110の厚みを薄くすることができる。これにより、外側鉄心102を流れる永久磁石32の漏れ磁束が低減され、高出力化が図られる。
外側鉄心102の極間鉄心部111が、磁極間中心であるq軸に一致している。これにより、q軸における磁気抵抗が小さくなるので、リラクタンストルクが向上され、高出力化が図られる。極間鉄心部111が外側鉄心102の一部を構成している。そこで、外側鉄心102が内側鉄心101に装着される前の段階では、内側鉄心101の巻線部104周りには大きな空きスペースが確保される。これにより、界磁巻線33の巻線工程では、マグネットワイヤ131が内側鉄心101の巻線部104の周辺部分に干渉されることなく巻線部104に巻き付けられる。そこで、マグネットワイヤ131の巻線作業性が高められ、生産性が向上される。
外側鉄心102の極間鉄心部111の嵌合突起109が内側鉄心101の嵌合溝108に軸方向から嵌合されている。これにより、内側鉄心101に対する外側鉄心102の周方向位置が高精度に確保され、トルクリップルが低減される。また、外側鉄心102に作用する周方向のトルクが嵌合溝108で受けられる。これにより、内側鉄心101に対する外側鉄心102の周方向の位置ずれの発生が防止される。
スリット112が外側鉄心102の嵌合突起109の外周壁面に形成されている。これにより、d軸の磁気抵抗に対してq軸の磁気抵抗が小さくなるので、リラクランストルクが大きくなり、高出力化が図られる。
なお、上記実施の形態1では、極間鉄心部111が巻線部104間に位置する基部103の底部に至るように形成されているが、極間鉄心部111の径方向長さを短くし、基部103の底部を極間鉄心部111の短くなった長さだけ径方向外方に突出させてもよい。
実施の形態2.
図24は、この発明の実施の形態2に係る回転電機の回転子鉄心を示す端面図、図25は、この発明の実施の形態2に係る回転電機の回転子鉄心の内側鉄心を示す端面図である。
図24および図25において、回転子鉄心31Aは、内側鉄心101Aと、外側鉄心102と、を備える。内側鉄心101Aには、基部103から径方向外方に突出する巻線部104Aが周方向に等角ピッチで8つ配置されている。巻線部104Aは、周方向に離れて配置されており、互いに平行に軸方向に延びる一対の磁束調整部105を備える。基部103と、一対の磁束調整部105とにより囲まれた領域が、磁石挿入穴107となる。
実施の形態2の他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
したがって、実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
実施の形態2では、巻線部104Aは、一対の磁束調整部105の径方向外方の端部同士を連結する連結部106が省略されている。つまり、巻線部104Aは、径方向外方に開口している。そこで、永久磁石32に作用する遠心力は、連結部110に直接作用するので、磁束調整部105に作用する引っ張り応力は生じない。これにより、強度要件の制約条件に左右されずに、磁束調整部105の幅を任意に設定できる。そのため、磁束調整部105の幅を最適化することができ、小型高出力化が図られる。
また、巻線部104Aが径方向外方に開口しているので、永久磁石32を径方向外方から巻線部104Aに装着できる。そこで、界磁コイル33aが巻線部104Aに巻かれる前に永久磁石32を巻線部104Aに装着してもよいし、界磁コイル33aが巻線部104Aに巻かれた後に永久磁石32を巻線部104Aに装着してもよい。なお、生産性を向上する観点から、界磁コイル33aが巻線部104Aに巻かれた後に永久磁石32を巻線部104Aに装着することが望ましい。
実施の形態3.
図26は、この発明の実施の形態3に係る回転電機の回転子鉄心を示す端面図である。
図26において、回転子鉄心31Bは、内側鉄心101Bと、外側鉄心102Bと、を備える。内側鉄心101Bの嵌合溝108Aは、あり溝に形成されている。外側鉄心102Bの極間鉄心部111の嵌合突起109Aは、嵌合溝108Aの溝形状に適合した断面形状に形成されている。
実施の形態3の他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
したがって、実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
実施の形態3では、嵌合溝108Aと嵌合突起109Aとの嵌合部の結合強度が大きくなる。これにより、嵌合突起109Aの嵌合溝108Aからの径方向の抜けが阻止され、外側鉄心102Bが内側鉄心101Bに強固に保持され、信頼性が向上される。
さらに、外側鉄心102Bが径方向内側の内側鉄心101Bに強固に保持されるので、回転子鉄心31Bの回転時に外側鉄心102Bに作用する応力が低減される。これにより、高回転化が可能となり、高出力化が図られる。
実施の形態4.
図27は、この発明の実施の形態4に係る回転電機の回転子鉄心を示す端面図である。
図27において、回転子鉄心31Cは、内側鉄心101Bと、外側鉄心102Cと、を備える。第1応力緩和溝120が、外側鉄心102Cの極間鉄心部111に、その内径側端面から径方向外方に延びて、軸方向の第1方向から第2方向に至るように形成されている。
実施の形態4の他の構成は、上記実施の形態3と同様に構成されている。
したがって、実施の形態4においても、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。
実施の形態4では、第1応力緩和溝120が、極間鉄心部111の嵌合突起109Aに形成されている。そこで、嵌合突起109Aの嵌合溝108Aとの嵌合部における周方向の剛性が小さくなる。そこで、嵌合突起109Aを嵌合溝108Aに軸方向から圧入させた時に、嵌合突起109Aの第1応力緩和溝120の周方向両側の部分が第1応力緩和溝120側に変位する。これにより、嵌合突起109Aの嵌合溝108Aへの圧入力が小さくなり、圧入時のかじりの発生が抑制され、生産性が向上される。
実施の形態5.
図28は、この発明の実施の形態5に係る回転電機の回転子鉄心を示す端面図である。
図28において、回転子鉄心31Dは、内側鉄心101Bと、外側鉄心102Dと、を備える。磁気劣化部であるカシメ部121が、外側鉄心102Dの連結部110の極間鉄心部111側の端部に形成されている。
実施の形態5の他の構成は、上記実施の形態3と同様に構成されている。
したがって、実施の形態5においても、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。
実施の形態5では、カシメ部121が外側鉄心102Dの連結部110の極間鉄心部111側の端部に形成されている。そこで、カシメ部121を含む領域の磁気抵抗が大きくなる。これにより、永久磁石32および界磁巻線33により発生する磁束が、連結部110を通って極間鉄心部111に流れ難くなる。その結果、固定子10に鎖交する磁束量が多くなり、回転電機の高トルク化および高出力化が可能となる。
なお、上記実施の形態5では、カシメ部121を連結部110の界磁コイル33aの径方向外方の部位に設けているが、漏れ磁束の経路の磁気抵抗を大きくする手段は、カシメ部121に限定されず、連結部110に磁気劣化部を形成させるものであればよい。
また、上記実施の形態5では、実施の形態3における外側鉄心102Bの連結部110の界磁コイル33aの径方向外方の部位にカシメ部121を設けているが、他の実施の形態における外側鉄心の連結部の界磁コイル33aの径方向の外方の部位にカシメ部121を設けてもよい。
実施の形態6.
図29は、この発明の実施の形態6に係る回転電機の回転子鉄心を示す端面図、図30は、図29の要部拡大図である。
図29および図30において、回転子鉄心31Eは、内側鉄心101Cと、外側鉄心102Bと、を備える。第2応力緩和溝122が、内側鉄心101Cの嵌合溝108Aの周方向両側に、径方向の内径側に延びて、軸方向の第1方向から第2方向に至るように形成されている。
実施の形態6の他の構成は、上記実施の形態3と同様に構成されている。
したがって、実施の形態6においても、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。
実施の形態6では、第2応力緩和溝122が、嵌合溝108Aの周方向両側の基部103の部位に形成されている。そこで、嵌合溝108Aと第2応力緩和溝122との間の基部103の部位における周方向の剛性が小さくなる。そこで、嵌合突起109Aを嵌合溝108Aに軸方向から圧入させた時に、嵌合溝108Aの周方向の両側の部位が第2応力緩和溝122側に変位する。これにより、嵌合突起109Aの嵌合溝108Aへの圧入力が小さくなり、圧入時のかじりの発生が抑制され、生産性が向上される。
なお、上記実施の形態6では、実施の形態3における内側鉄心101Bの嵌合溝108Aの周方向両側に第2応力緩和溝122を設けているが、他の実施の形態における内側鉄心の嵌合溝の周方向両側に第2応力緩和溝122を設けてもよい。
実施の形態7.
図31は、この発明の実施の形態7に係る回転電機の回転子鉄心を示す端面図である。
図31において、回転子鉄心31Fは、内側鉄心101Dと、外側鉄心102Eと、を備える。第1嵌合凸部123が、内側鉄心101Dの巻線部104の連結部106の外周面のd軸上の位置に形成されている。第1嵌合凹部124が、外側鉄心102Eの連結部110の内周面のd軸上の位置に形成されている。第1嵌合凹部124は、あり溝に形成されている。第1嵌合凸部123は、第1嵌合凹部124の溝形状に適合した断面形状に形成されている。
実施の形態7の他の構成は、上記実施の形態3と同様に構成されている。
したがって、実施の形態7においても、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。
実施の形態7では、外側鉄心102Eの第1嵌合凹部124が内側鉄心101Dの第1嵌合凸部123に嵌合されている。これにより、内側鉄心101Dに対する外側鉄心102Eの周方向位置が高精度に確保され、トルクリップルが低減される。また、外側鉄心102Eに作用する周方向のトルクが第1嵌合凸部123で受けられる。これにより、内側鉄心101Dに対する外側鉄心102Eの周方向の位置ずれの発生が防止される。
第1嵌合凹部124があり溝に形成されているので、第1嵌合凸部123と第1嵌合凹部124との嵌合部の結合強度が大きくなる。これにより、第1嵌合凸部123の第1嵌合凹部124からの径方向の抜けが阻止され、外側鉄心102Eが内側鉄心101Dに強固に保持され、信頼性が向上される。そして、外側鉄心102Eが径方向内側の内側鉄心101Dに強固に保持されるので、回転子鉄心31Fの回転時に外側鉄心102Eに作用する応力が低減される。これにより、高回転化が可能となり、高出力化が図られる。
なお、上記実施の形態7では、第1嵌合凸部123が内側鉄心101Dに形成され、第1嵌合凹部124が外側鉄心102Eに形成されているが、第1嵌合凸部123が外側鉄心102Eに形成され、第1嵌合凹部124が内側鉄心101Dに形成されてもよい。
また、上記実施の形態7では、嵌合溝108Aと嵌合突起109Aとの嵌合に加えて、第1嵌合凸部123と第1嵌合凹部124との嵌合により、外側鉄心102Eを内側鉄心101Dに固定しているが、第1嵌合凸部123と第1嵌合凹部124との嵌合のみにより、外側鉄心102Eを内側鉄心101Dに固定してもよい。
実施の形態8.
図32は、この発明の実施の形態8に係る回転電機の回転子鉄心を示す端面図である。
図32において、回転子鉄心31Gは、内側鉄心101Eと、外側鉄心102Fと、を備える。第2嵌合凹部125が、内側鉄心101Eの嵌合溝108Aの底面のq軸上の位置に形成されている。第2嵌合凸部126が、外側鉄心102Fの嵌合突起109Aの内径側の端面のq軸上の位置に形成されている。第2嵌合凹部125は、あり溝に形成されている。第2嵌合凸部126は、第2嵌合凹部125の溝形状に適合した断面形状に形成されている。
実施の形態8の他の構成は、上記実施の形態7と同様に構成されている。
したがって、実施の形態8においても、上記実施の形態7と同様の効果が得られる。
実施の形態8では、第1嵌合凸部123と第1嵌合凹部124とが嵌合されているのに加えて、第2嵌合凸部126と第2嵌合凹部125とが嵌合されている。これにより、外側鉄心102Fが内側鉄心101Eにさらに強固に保持される。そして、外側鉄心102Fが径方向内側の内側鉄心101Eにさらに強固に保持されるので、回転子鉄心31Gの回転時に外側鉄心102Fに作用する応力がさらに低減される。これにより、さらなる高回転化が可能となり、高出力化が図られる。
なお、上記実施の形態8では、第2嵌合凹部125が内側鉄心101Eに形成され、第2嵌合凸部126が外側鉄心102Fに形成されているが、第2嵌合凹部125が外側鉄心102Fに形成され、第2嵌合凸部126が内側鉄心101Eに形成されてもよい。
また、上記実施の形態8では、第1嵌合凸部123と第1嵌合凹部124との嵌合部がd軸上に設けられ、第2嵌合凸部126と第2嵌合凹部125との嵌合部がq軸上に設けられているが、図33に示されるように、d軸上に設けられる第1嵌合凸部123と第1嵌合凹部124との嵌合部を省略してもよい。あり溝などによる空隙が永久磁石32および界磁巻線による磁束の中央部に生じると、磁束の流れが変化し、磁束の偏りが生じる。この磁束の偏りにより高調波成分が多くなり、トルクリプル、電磁音などが発生する。図33に示された回転子鉄心31Nでは、外側鉄心102Nの連結部110と内側鉄心101Nの巻線部104との間のd軸上に、第1嵌合凸部123と第1嵌合凹部124との嵌合部による隙間が生じない。そこで、巻線部104の連結部106と外側鉄心102Nの連結部110との間のd軸上に位置し、トルクリプルおよび電磁音に影響度の大きい隙間が小さくなる。これにより、巻線部104と連結部110との間の空隙における磁束の波形に高調波が少なくなり、トルクリップルおよび電磁音の発生が抑制される。
また、上記実施の形態3-8では、上記実施の形態1による回転電機に適用しているが、上記実施の形態2による回転電機に適用してもよい。
実施の形態9.
図34は、この発明の実施の形態9に係る回転電機の回転子鉄心の外側鉄心を示す端面図である。
実施の形態9では、電磁鋼板から内側鉄心および外側鉄心102を打ち抜いた後に、外側鉄心102の内側鉄心に接する面、すなわち図34中一点鎖線で示される領域をシェービングにより抜き落としている。
なお、実施の形態9の他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
内側鉄心および外側鉄心を同じ材料から打ち抜いた場合、パンチとダイとのクリアランスにより、圧入時の締め代が決定される。パンチとダイとのクリアランスは、電磁鋼板の板厚方向の5%から10%が最適とされており、外側鉄心を内側鉄心に軸方向から圧入する場合、必要な固定力に対して締め代が過大となる場合がある。実施の形態9では、電磁鋼板から打ち抜かれた外側鉄心102の内側鉄心101に接する面をシェービングにより抜き落としているので、内側鉄心101と外側鉄心との接触面の締め代を自由に設定できる。これにより、軸長が長い回転子においても、外側鉄心102を内側鉄心101に軸方向から圧入する際の圧入力が過大となることがなく、生産性が向上される。
なお、上記実施の形態9では、外側鉄心102を内側鉄心101に軸方向から圧入しているが、外側鉄心102を内側鉄心101に隙間嵌めした後、接着剤で外側鉄心102と内側鉄心101とを固定してもよい。
また、上記実施の形態9では、実施の形態1における外側鉄心102にシェービング工程を行っているが、他の実施の形態における外側鉄心にシェービング工程を行ってもよい。
実施の形態10.
図35は、この発明の実施の形態10に係る回転電機の回転子における界磁巻線の装着方法を説明する模式図である。
実施の形態10による界磁巻線装着工程では、図35に示されるように、1番目の絶縁部材35が治具36に保持されて径方向の軸A周りに回転される。そして、スピンドル巻線機37のノズル130から繰り出されるマグネットワイヤ131が回転する1番目の絶縁部材35に巻き付けられる。ついで、マグネットワイヤ131が巻き付けられた1番目の絶縁部材35が、径方向外方から内側鉄心101の1番目の巻線部104に装着される。ついで、2番目の絶縁部材35が治具36に保持されて軸A周りに逆方向に回転される。そして、ノズル130から繰り出されるマグネットワイヤ131が回転する2番目の絶縁部材35に巻き付けられる。ついで、内側鉄心101が45度回転される。ついで、マグネットワイヤ131が巻き付けられた2番目の絶縁部材35が、径方向外方から内側鉄心101の2番目の巻線部104に装着される。この操作を繰り返し、同様に、3番目、4番目・・・8番目の巻線部104にマグネットワイヤ131が巻き付けられた絶縁部材35が装着される。
実施の形態10では、巻線部104に装着されていない状態の絶縁部材35にマグネットワイヤ131を巻き付けている。これにより、マグネットワイヤ131を絶縁部材35に整列された状態に巻き付けることができるので、コイルの占積率が高められ、高出力化が図られる。さらに、簡素で汎用的な巻線機を用いることができるので、低コスト化が図られる。巻線部104に装着された絶縁部材35にマグネットワイヤ131を巻き付ける煩雑な巻線工程が省略されるので、回転子の組立性が向上される。
なお、上記実施の形態10では、実施の形態1の回転子における界磁巻線の装着方法として説明しているが、他の実施の形態の回転子における界磁巻線の装着に適用してもよい。
実施の形態11.
図36は、この発明の実施の形態11に係る回転電機の回転子における界磁巻線の装着方法を説明する模式図である。
実施の形態11による界磁巻線装着工程では、図36に示されるように、1番目の絶縁部材35が1番目の巻線部104に最終的な装着位置から径方向外方にずらした位置に装着される。ついで、フライヤ135により、マグネットワイヤ131が1番目の絶縁部材35に巻き付けられる。ついで、マグネットワイヤ131が巻き付けられた1番目の絶縁部材35が径方向内方に押し込まれて1番目の巻線部104の最終的な装着位置に装着される。ついで、内側鉄心101が45度回転されて、2番目の絶縁部材35が2番目の巻線部104に最終的な装着位置から径方向外方にずらした位置に装着される。ついで、フライヤ135により、マグネットワイヤ131が2番目の絶縁部材35に巻き付けられる。ついで、マグネットワイヤ131が巻き付けられた2番目の絶縁部材35が径方向内方に押し込まれて2番目の巻線部104の最終的な装着位置に装着される。この操作を繰り返し、同様に、3番目、4番目・・・8番目の巻線部104にマグネットワイヤ131が巻き付けられた絶縁部材35が装着される。
実施の形態11では、絶縁部材35が巻線部104に最終的な装着位置から径方向外方にずらした位置に装着される。そこで、ノズル130から繰り出されたマグネットワイヤ131が、周方向に隣り合う巻線部104と干渉することなく絶縁部材35に巻き付けられる。これにより、マグネットワイヤ131を絶縁部材35に整列された状態に巻き付けることができるので、コイルの占積率が高められ、高出力化が図られる。フォーマ132を省略することができ、フライヤ135の低コスト化が図られる。
なお、上記実施の形態11では、実施の形態1の回転子における界磁巻線の装着方法として説明しているが、他の実施の形態の回転子における界磁巻線の装着に適用してもよい。
実施の形態12.
図37は、この発明の実施の形態12に係る回転電機における回転子を示す端面図である。なお、図37では、界磁巻線33が省略されている。
図37において、回転子鉄心31Hは、内側鉄心101Bと、外側鉄心102Gと、を備える。断面矩形の一対の副永久磁石38,39が、外側鉄心102Gの連結部110の極間鉄心部111側の端部に軸方向の第1方向から第2方向に至るように設けられている。一対の副永久磁石38,39は、その断面矩形の長辺方向が回転子鉄心31Hの軸心と直交する姿勢で、周方向間隔が径方向外方に向かって漸次広くなるように傾斜して相対して設けられている。永久磁石32および副永久磁石38,39は、一対の副永久磁石38,39の相対する面および永久磁石32の径方向外方を向く面が同じ極性となるように着磁されて1磁極を構成する。
実施の形態12の他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
したがって、実施の形態12においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
実施の形態12による回転子30Hは、一対の副永久磁石38,39が、界磁コイル33aの径方向外方に界磁コイル33aを周方向に挟んでおり、周方向の間隔が径方向外方に向かって漸次広くなる姿勢で外側鉄心102Gの連結部110に配置されている。これにより、d軸とq軸との突極比が大きくなり、リラクタンストルクが増加し、高出力化が図られる。
なお、上記実施の形態12では、実施の形態1における外側鉄心102の連結部110に一対の副永久磁石38,39を設けているが、他の実施の形態における外側鉄心の連結部に一対の副永久磁石38,39を設けてもよい。
実施の形態13.
図38は、この発明の実施の形態13に係る回転電機における回転子鉄心を示す端面図、図39は、この発明の実施の形態13に係る回転電機における回転子鉄心の外側鉄心を構成する連結部を示す端面図である。
図38および図39において、回転子鉄心31Iは、内側鉄心101Fと、外側鉄心102Hと、を備える。内側鉄心101Fは、基部103と、基部103のd軸位置から径方向外方に突出する巻線部104と、基部103のq軸位置から径方向外方に突出して回転子鉄心31Iの外周面に至る極間鉄心部111と、備える。外側鉄心102Hは、巻線部104を覆って相対する極間鉄心部111間に配置される8つの連結部110Aを備える。第1嵌合凸部123が巻線部104の連結部106の外周面のd軸位置に設けられている。あり溝の第1嵌合凹部124が連結部110Aの内周面のd軸位置に設けられている。連結部110Aは、第1嵌合凹部124を軸方向から第1嵌合凸部123に嵌合させて、巻線部104に固定されている。これにより、連結部110Aは、巻線部104を覆って周方向に相対する極間鉄心部111の周方向を向く側面に接して設けられている。極間鉄心部111および連結部110Aの外周面が周方向に連なって回転子鉄心31Iの外周面を構成している。
実施の形態13では、回転子鉄心31Iのd軸での分割面が1つであり、巻線部104が基部103から径方向外方に突出している。したがって、実施の形態13においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
実施の形態13では、d軸上の磁路が内側鉄心101Fと外側鉄心102Hを構成する連結部110Aとに分割されており、d軸上の磁路の磁気抵抗が高くなっている。一方、q軸位置の鉄心部分が基部103から一体に延びる極間鉄心部111のみにより構成されており、q軸上の磁路の磁気抵抗が低くなっている。これにより、d軸とq軸との磁気抵抗差が大きくなり、大きなリラクタンストルクが得られる。
あり溝の第1嵌合凹部124と第1嵌合凸部123との嵌合により連結部110Aが巻線部104に固定されているので、巻線部104による連結部110Aの保持の耐遠心力性が確保される。
なお、上記実施の形態13では、第1嵌合凸部123が巻線部104の連結部106に設けられ、第1嵌合凹部124が外側鉄心102Hの連結部110Aに設けられているが、第1嵌合凸部123が外側鉄心102Hの連結部110Aに設けられ、第1嵌合凹部124が巻線部104の連結部106に設けられてもよい。
実施の形態14.
図40は、この発明の実施の形態14に係る回転電機における回転子鉄心を示す端面図である。
図40において、回転子鉄心31Jは、内側鉄心101Gと、外側鉄心102Hと、を備える。第3応力緩和溝128が、巻線部104の連結部106に形成された第1嵌合凸部123に設けられている。
なお、実施の形態14の他の構成は、上記実施の形態13と同様に構成されている。
したがって、実施の形態14においても、上記実施の形態13と同様の効果が得られる。
実施の形態14では、第3応力緩和溝128が巻線部104の連結部106に形成された第1嵌合凸部123に形成されている。そこで、第1嵌合凸部123の第1嵌合凹部124との嵌合部における周方向の剛性が小さくなる。第1嵌合凹部124を軸方向から第1嵌合凸部123に嵌合させる際に、第1嵌合凸部123の第3応力緩和溝128の周方向の両側部が第3応力緩和溝128側に変位する。これにより、第1嵌合凹部124の第1嵌合凸部123への圧入力が小さくなり、圧入時のかじりの発生が抑制され、生産性が向上される。
実施の形態15.
図41は、この発明の実施の形態15に係る回転電機における回転子鉄心を示す端面図、図42は、この発明の実施の形態15に係る回転電機における回転子鉄心の巻線部周りを示す要部拡大端面図である。
図41および図42において、回転子鉄心31Kは、内側鉄心101Hと、外側鉄心102Iと、を備える。第3嵌合凹部140は、あり溝であり、巻線部104を挟んで配置されている2つの極間鉄心部111の周方向に相対する側面の径方向外側の縁部に溝方向を軸方向として設けられている。第3嵌合凸部141は、外側鉄心102Iを構成する連結部110Aの周方向を向く面に設けられている。連結部110Aは、第1嵌合凹部124を軸方向から第1嵌合凸部123に嵌合させ、第3嵌合凸部141を軸方向から第3嵌合凹部140に嵌合させて、内側鉄心101Hに固定されている。
実施の形態15の他の構成は、上記実施の形態13と同様に構成されている。
したがって、実施の形態15においても、上記実施の形態13と同様の効果が得られる。
実施の形態15では、第1嵌合凹部124と第1嵌合凸部123とを嵌合させるとともに、第3嵌合凸部141と第3嵌合凹部140とを嵌合させている。これにより、外側鉄心102Iの連結部110Aが内側鉄心101Hに強固に固定され、対遠心力性が向上され、高速回転化が可能となる。
第3嵌合凸部141と第3嵌合凹部140との嵌合部では、磁気抵抗が大きい。そこで、永久磁石32および界磁コイル33aによる磁束が連結部110Aを介して極間鉄心部111に流れ難くなっている。これにより、固定子に鎖交する磁束量が多くなり、回転電機の高トルク化および高出力化が可能となる。
ここで、外側鉄心102Iの連結部110Aの内側鉄心101Hへの取付構造の実施態様について説明する。
図43に示されるように、第3嵌合凸部141と第3嵌合凹部140とのみを嵌合させて、外側鉄心102Iの連結部110Aが内側鉄心101Hに固定してもよい。この場合においても、第3嵌合凸部141と第3嵌合凹部140との嵌合により、連結部110Aと内側鉄心101Hとの取付部の対遠心力性が確保される。また、凹部と凸部とによる嵌合部が巻線部104と連結部110Aとの間のd軸上の位置にないので、巻線部104と連結部110Aとの間のd軸上における隙間が小さくなる。これにより、巻線部104と連結部110との間の空隙における磁束の波形に高調波が少なくなり、トルクリップルおよび電磁音の発生が抑制される。
図44に示されるように、突起部142が、巻線部104を挟んで配置されている2つの極間鉄心部111の周方向に相対する側面の径方向外側の縁部を巻線部104側に突出させて形成されている。そして、連結部110Aは、第1嵌合凹部124を軸方向から第1嵌合凸部123に嵌合させ、周方向の両先端部143を軸方向から突起部142に嵌合させて、内側鉄心101Hに固定されている。この場合、第1嵌合凹部124と第1嵌合凸部123とを嵌合させるとともに、連結部110Aの先端部143と突起部142とを嵌合させているので、連結部110Aが内側鉄心101Hに強固に固定され、対遠心力性が向上される。ここで、先端部143と突起部142との嵌合においては、先端部143が嵌合凸部として機能し、突起部142により形成される空間が嵌合凹部として機能する。
図45に示されるように、連結部110Aの先端部143と突起部142とのみを嵌合させて、連結部110Aを内側鉄心101Hに固定してもよい。この場合においても、連結部110Aの先端部143と突起部142との嵌合により、連結部110Aと内側鉄心101Hとの取付部の対遠心力性が確保される。また、凹部と凸部とによる嵌合部が巻線部104と連結部110Aとの間のd軸上の位置にないので、巻線部104と連結部110Aとの間のd軸上における隙間が小さくなる。これにより、巻線部104と連結部110との間の空隙における磁束の波形に高調波が少なくなり、トルクリップルおよび電磁音の発生が抑制される。
実施の形態16.
図46は、この発明の実施の形態16に係る回転電機における回転子鉄心を示す端面図である。
図46において、回転子鉄心31Lは、内側鉄心101Iと、外側鉄心102Jと、を備える。内側鉄心101Iは、基部103と、巻線部104と、極間鉄心部111と、を備える。外側鉄心102Jは、8つの連結部110Bにより構成されている。第4嵌合凸部144が極間鉄心部111の外周面のq軸の位置に設けられている。あり溝の第4嵌合凹部145が連結部110Bの内周面のq軸の位置に設けられている。連結部110Bは、第4嵌合凹部145を軸方向から第4嵌合凸部144に嵌合させて、極間鉄心部111に固定されている。これにより、連結部110Bは、極間鉄心部111を覆って周方向に隣り合う2つの巻線部104の周方向を向く側面に接して設けられている。そして、巻線部104および連結部110Bの外周面が周方向に連なって回転子鉄心31Lの外周面を構成している。
実施の形態16では、連結部110Bが極間鉄心部111に固定されている点を除いて、上記実施の形態13と同様に構成されている。
したがって、実施の形態16においても、上記実施の形態13と同様の効果が得られる。
実施の形態16では、第4嵌合凸部144と第4嵌合凹部145との嵌合により連結部110Bが極間鉄心部111に固定されている。これにより、極間鉄心部111に保持された連結部110Bの対遠心力性が確保される。連結部110Bと巻線部104とが別部材で構成されているので、連結部110Bと巻線部104との連結部での磁気抵抗が高くなる。そこで、巻線部104から連結部110Bを介して極間鉄心部111に流れる漏れ磁束量が少なくなる。これにより、固定子に鎖交する磁束量が多くなり、高トルク化が図られる。また、巻線部104が回転子鉄心31Lの外周面を構成しているので、d軸上の磁気抵抗が小さくなり、固定子に鎖交する磁束量が多くなり、高トルク化が図られる。
なお、実施の形態16においても、実施の形態14と同様に、応力緩和溝を第4嵌合凸部144に形成してもよい。
また、実施の形態16においても、実施の形態15と同様に、嵌合突起と嵌合凹部との嵌合により、連結部110Bと巻線部104の連結部106とを固定してもよい。
実施の形態17.
図47は、この発明の実施の形態17に係る回転電機における回転子を示す端面図、図48は、この発明の実施の形態17に係る回転電機における回転子の巻線部周りを示す要部拡大端面図である。
図47および図48において、回転子鉄心31Mは、内側鉄心101Jと、外側鉄心102Kと、を備える。内側鉄心101Jは、基部103と、巻線部104と、基部103のq軸の位置から径方向外方に突出する極間鉄心部111と、を備える。外側鉄心102Kは、8つの連結部110Cを周方向に配列して一体の環状体に構成されている。第5嵌合凹部146が巻線部104の連結部106の外周面のd軸の位置に設けられている。第5嵌合凸部147が連結部110Cの内周面のd軸の位置に設けられている。第5嵌合凹部146は、回転軸の軸方向と直交する断面における形状が台形形状である。第5嵌合凹部146は、周方向に相対する面の間隔が径方向内方に向かって漸次狭くなる凹形状に形成されている。第5嵌合凸部147は、第5嵌合凹部146に適合する凸形状に形成されている。すなわち、第5嵌合凹部146および第5嵌合凸部147の周方向に相対する面間の角度θは一致している。
実施の形態17では、まず、外側鉄心102Kが加熱される。これにより、外側鉄心102Kは、図48中実線で示される常温での輪郭から二点鎖線で示される輪郭に膨張する。ついで、加熱された外側鉄心102K内に、軸方向から常温の内側鉄心101Jを挿入する。そして、外側鉄心102Kの温度が下がると、外側鉄心102Kは収縮する。そして、第5嵌合凸部147は、第5嵌合凹部146の相対する2辺に沿って径方向内方に移動し、ついには、第5嵌合凹部146に嵌合する。これにより、外側鉄心102Kと内側鉄心101Jとが焼き嵌めにより固定される。そして、外側鉄心102Kの外周面が回転子鉄心31Mの外周面を構成している。
実施の形態17では、内側鉄心101Jを外側鉄心102Kに接触させることなく外側鉄心102K内に挿入できるので、外側鉄心102Kを内側鉄心101Jに圧入する際に生じる削りカスがでない。これにより、削りカスに起因する絶縁性の低下がなく、絶縁に対する信頼性が高められる。
第5嵌合凹部146が周方向に相対する2面の間隔が径方向内方に向かって漸次狭くなる台形形状に形成されている。そこで、外側鉄心102Kの径が縮小する過程で、第5嵌合凸部147が第5嵌合凹部146の相対する2辺の面形状に沿って移動する。その結果、外側鉄心102Kは、内側鉄心101Jの設定された位置に固定される。
なお、上記実施の形態17では、第5嵌合凹部146を周方向の位置決め部として機能させたが、組立時に、内側鉄心101Jに対して外側鉄心102Kを位置決めできれば、周方向の位置決め部を省略できる。また、第5嵌合凹部146の周方向に相対する面間の角度θは、内側鉄心および外側鉄心の材料によって適宜設定される。