JP7165395B2 - 金属板を線状加熱し曲げ加工する加工方法 - Google Patents
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線状加熱とは、鋼板の表面をガスバーナーで加熱した際に発生する熱変形を利用するものであり、現在国内の多くの造船所で古くから採用されている技術である。線状加熱により鋼板の曲げ加工をする際、ガスバーナーの炎で鋼板を局所的に加熱しつつ、鋼板に水をかけることにより加熱部を急冷却すると、鋼板に塑性変形が発生する。この塑性変形は、加熱するガスバーナーの移動速度、燃焼ガスと流入酸素と混合比、バーナーと鋼板の距離などを変化させて鋼板への入熱を調整することにより制御することができる。また、線状加熱による曲げ加工は、複数の加熱線を適当な位置に配置することによって、鋼板を目的の曲面形状に近づける加工技術である。
しかし、線状加熱時に生じる変形は、縦収縮・横収縮、縦曲り・横曲がりが混在する複雑なものであり、入熱量やガスバーナーの移動速度、加熱位置等にも依存するため、予測が非常に困難であることから、線状加熱による曲げ加工は自動化が困難とされる技術の一つである。
線状加熱による曲げ加工の自動化を実現するために用いる加熱方案算出方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、金属板を目的形状に近づけるために最適な複数の加熱線を含む加熱方案を算出することができる算出方法を提供する。
前記加熱方案は、第1、第2及び第3選択加熱線をこの順で含むことが好ましい。このようにして算出した加熱方案に基づき金属板を加熱することにより、金属板を目的形状により近い形状に変形させることが可能である。
第1又は第2加熱線は、直線又は曲線であることが好ましい。
本発明は、本発明の算出方法により算出された加熱方案に基づいて金属板を線状加熱し曲げ加工する加工方法も提供する。
本発明の加工方法は、第1選択加熱線を含む第1加熱条件で金属板を線状加熱し、前記金属板に曲げ加工を施すステップと、前記曲げ加工が施された前記金属板の立体形状を計測するステップと、計測された前記金属板の立体形状と、第1選択加熱線を含む第1加熱条件で実施した有限要素法構造解析の解析結果とを比較するステップと、比較した結果に基づき前記金属板の立体形状が第1選択加熱線を含む第1加熱条件で実施した有限要素法構造解析の解析結果に近づくように前記金属板を加熱するステップとを備えることが好ましい。このような加工方法により、金属板を目的形状により近い形状に変形させることができる。
本発明は、本発明の加工方法により金属板を線状加熱し曲げ加工するように設けられた加工装置も提供する。
本実施形態の算出方法は、線状加熱による金属板の曲げ加工に用いる加熱方案6の算出方法である。また、本実施形態の算出方法は、金属板の解析モデル2の任意の位置に設定した第1加熱線4を含む第1加熱条件で有限要素法構造解析を実施し、この解析結果3と目的形状10とを比較する第1試行を第1加熱線4の位置を変えて繰り返すステップと、繰り返した第1試行のうち解析結果3が最も目的形状10に近づいた第1試行で設定した第1加熱線4を第1選択加熱線5として選択するステップと、第1選択加熱線5と、解析モデル2の任意の位置に設定した第2加熱線4とを含む第2加熱条件で有限要素法構造解析を実施し、この解析結果3と目的形状10とを比較する第2試行を第2加熱線4の位置を変えて繰り返すステップと、繰り返した第2試行のうち解析結果3が最も目的形状10に近づいた第2試行で設定した第2加熱線4を第2選択加熱線5として選択するステップとを備える。また、加熱方案6は、第1選択加熱線5及び第2選択加熱線5を含む。ここでは、解析結果3が最も目的形状10に近づいた加熱線4を選択しているが、解析結果3が2番目又は3番目に目的形状10に近づいた加熱線4を選択してもよい。
また、本実施形態のプログラムは、本実施形態の算出方法をコンピューターに実行させるように作成されている。
加熱方案は、金属板を加熱し曲げ加工するためのプランである。
本実施形態の算出方法では、金属板の解析モデル2を用いる。解析モデル2には、金属板の長さ、幅、厚さなどを設定する。また、解析モデル2を複数個の要素(メッシュ)8に分割する。要素8は、例えば、四角形又は三角形のシェルであってもよく、立方体、直方体、三角錐、三角柱などのソリッドであってもよい。また、要素8の各頂点が節点9となる。例えば、図2(a)に示した解析モデル2では、解析モデル2は、20×20(400)個の要素8に分割され、この要素8は、4角形のシェルである。この場合、解析モデル2は格子状となり、各交点が節点9となる。
本実施形態の算出方法では、目的形状10のモデルを用いる。目的形状10は、金属板の曲げ加工の目標となる形状である。目的形状10のモデルは、金属板の解析モデル2の形状が目的形状10となるように節点9を動かして作成する。
まず、コンピューターに目的形状10のモデル及び解析モデル2を読み込む。
次に、解析モデル2の任意の位置に加熱線4を設定する。加熱線4は直線であってもよく、曲線であってもよい。また、複数の加熱線4を設定してもよい。例えば、5本の加熱線4を設定することができる。
例えば、加熱線4が直線である場合、図3に示したように、解析モデル2の任意の2つの節点9(x1、y1)、(x2、y2)をランダムに選択し、この2つの節点9を結ぶ直線に加熱線4を設定することができる。この場合、設定した加熱線4は、式:y={(y2-y1)/(x2-x1)}x+{(x2y1-x1y2)/(x2-x1)}で表すことができる。
例えば、図2(a)に示した加熱線4aを設定することができる。また、5本の加熱線4を設定する場合、加熱線4a~4eを設定することができる。
有限要素法構造解析はFEM熱弾塑性解析であってもよく、固有ひずみ法による弾性解析であってもよい。構造解析では、ガスバーナーを用いる線状加熱を想定してもよく、レーザを用いる線状加熱(レーザーフォーミング等)を想定してもよく、誘導加熱を用いる線状加熱を想定してもよい。また、構造解析では、曲げ加工の対象となる金属板の材料物性値(ヤング率、ポアソン比、密度など)を用いる。
FEM熱弾塑性解析では、加熱条件(設定した加熱線4の位置及び入熱量(J/mm))に対して選び出した要素8の縦収縮,横収縮,角変形,縦曲りの4成分の固有ひずみ量を算出する。FEM熱弾塑性解析では、熱及び変形履歴を逐次再現し変形解析を行うため、過渡の状況を解析できる。
また、固有ひずみ法は、弾性解析であるため,計算時間が熱弾塑性解析に比べてかなり短時間であることが特徴として挙げられる。
評価指標としては、例えば、節点9の面外方向変位量又は曲率とすることができる。図5は、評価指標を節点9の面外方向変位量13とした場合における解析結果3と目的形状10との比較の説明図である。例えば図5のように、解析結果3の節点9から対応する目的形状10の節点12までの面外方向の変位量(誤差)を算出する。
加熱線4の設定から誤差及び設定した加熱線4の位置の保存までのフローを1回目の試行という。
このような試行をX回繰り返す。例えば、図2(a)に示したように、加熱線4の位置を加熱線4c~4kとして、それぞれの位置で試行を行うことができる。また、各試行において複数の加熱線4を設定して試行を行うことができる。例えば、5本の加熱線を設定する場合、各試行において5本の加熱線4を設定して試行を行う。試行回数は、例えば、500回とすることができる。
各試行のおける解析結果3は、異なる位置の加熱線4に対応した形状となり、それぞれ違う形状となり、解析結果3と目的形状10との誤差は各試行で異なる。
1回目の試行から選択加熱線5を選択するまでを1回目の加熱線選択フローという。
2回目の加熱線選択フローにおいてX回まで試行を繰り返し、各試行のうち解析結果3と目的形状10との誤差が最も小さい試行における加熱線4を選択加熱線5として選択する。各試行のうち解析結果3と目的形状10との誤差が2番目又は3番目に小さい試行における加熱線4を選択加熱線5として選択してもよい。また、試行において複数の加熱線4を設定している場合、複数の加熱線4を選択加熱線5として選択する。例えば、図2(b)に示した加熱線4l~4vのうち加熱線4sを選択することができる。また、各試行において加熱線4を5本設定している場合、例えば、加熱線4l~4pを選択することができる。
例えば、3回目の加熱線選択フローでは、1回目の加熱線選択フローにおいて選択した選択加熱線5(4d)と、2回目の加熱線選択フローにおいて選択した選択加熱線5(4s)と、3回目の加熱線選択フローの各試行においてランダムに設定する少なくとも1本の加熱線4とを設定する。つまり、加熱線選択フローの回数を重ねるにつれて設定する選択加熱線5の数が増えていく。
A回目の加熱線選択フローにおいてX回まで試行を繰り返し、各試行のうち解析結果3と目的形状10との誤差が最も小さい試行における加熱線4を選択加熱線5として選択する。各試行のうち解析結果3と目的形状10との誤差が2番目又は3番目に小さい試行における加熱線4を選択加熱線5として選択してもよい。また、試行において複数の加熱線4を設定している場合、複数の加熱線4を選択加熱線5として選択する。
n回目の加熱線選択フローにおいて選択した選択加熱線5を含む加熱条件での解析結果3と目的形状10との誤差が小さいと判断すると、加熱線選択フローの繰り返しを終了し、1~n回目の加熱線選択フローで選択した選択加熱線5を含む加熱方案6が完成する。加熱方案6は、例えば、図2(c)のように複数の選択加熱線5を含む。
加熱方案6は、加熱線選択フローの順序に対応した選択加熱線5の順序を含むことができる。加熱方案6に基づき金属板を線状加熱し曲げ加工する際、この順序に従って、選択加熱線5を加熱することができる。このことにより、金属板を目的形状により近い形状に変形させることが可能である。
金属板の立体形状を計測するステップは、三次元測定器を用いて行うことができる。三次元測定器は、接触式であってもよく、走査レーザプローブタイプ又は光学タイプの非接触式であってもよい。このことにより、金属板を目的形状により近い形状に変形させることが可能である。
本発明の算出方法(構造解析:固有ひずみ法による弾性解析)を用いて加熱方案(目的形状:椀型、鞍型、捩れ型)を算出し、算出した加熱方案を用いて固有ひずみ法による弾性解析(構造解析)を行うシミュレーションを実施した。
固有ひずみ法による変形解析のために要素に付与する固有ひずみは、解析モデルに対しFEM熱弾塑性解析を実施し、その変形結果より取得した。
固有ひずみ法による構造解析では、板長さ:500mm、板幅:500mmの板状の解析モデルを用い、解析モデルは、節点数、要素数がそれぞれ2,601、2,500となるように四角形のシェル要素に分割した。また、金属板の材料はSM490A(溶接構造用圧延鋼材)と仮定し、板厚は16mmと仮定した。SM490Aの材料定数を表1に示す。また、シミュレーションでは、目的形状として3種類(椀型、鞍型、捩れ型)を設定した。1本の選択加熱線の位置決定に費やす試行回数は500回とした。
図6(a)~(e)は、選択加熱線の本数をそれぞれ10本、20本、30本、40本、55本として算出した加熱方案であり、図7(a)~(d)は、選択加熱線の本数をそれぞれ10本、20本、30本、40本として算出した加熱方案に基づき固有ひずみ法による構造解析を行ったときの解析結果である。図8(a)は構造解析に用いた目的形状であり、図8(b)は選択加熱線の本数を55本として算出した加熱方案に基づき固有ひずみ法による構造解析を行ったときの解析結果である。図9は、図8(a)(b)の破線A-A’において目的形状と解析結果とを比較した面外方向変位分布であり、図10は、図8(a)(b)の一点鎖線B-B’において目的形状と解析結果とを比較した面外方向変位分布である。
このシミュレーションでは、図6(a)~(e)に示した加熱方案を算出することができた。また、算出した加熱方案に基づき固有ひずみ法による構造解析を行ったところ、図7(a)~(d)、図8(b)に示した解析結果を得ることができた。なお、図6の実線は金属板の表面の選択加熱線を表し、点線は金属板の裏面の選択加熱線を表す。
また、図8(a)(b)、図9、10から図8(b)に示した解析結果は目的形状の傾向を良好に捉えていることが確認できた。従って、本発明の算出方法により算出した加熱方案に基づき金属板を加熱することにより、金属板を目的形状に近い形状に曲げ加工できることがわかった。
図11(a)は構造解析に用いた目的形状であり、図11(b)は選択加熱線の本数を40本として算出した加熱方案に基づき固有ひずみ法による構造解析を行ったときの解析結果である。図12は、選択加熱線の本数を40本として算出した加熱方案である。図13は、図11(a)(b)の破線A-A’において目的形状と解析結果とを比較した面外方向変位分布であり、図14は、図11(a)(b)の一点鎖線B-B’において目的形状と解析結果とを比較した面外方向変位分布である。
このシミュレーションでは、図12に示した加熱方案を算出することができた。また、算出した加熱方案に基づき固有ひずみ法による構造解析を行ったところ、図11(b)に示した解析結果を得ることができた。
図11、図13、14から図11(b)に示した解析結果は目的形状の傾向を良好に捉えていることが確認できた。
図15(a)は構造解析に用いた目的形状であり、図15(b)は選択加熱線の本数を16本として算出した加熱方案に基づき固有ひずみ法による構造解析を行ったときの解析結果である。図16は、選択加熱線の本数を16本として算出した加熱方案である。図17は、図15(a)(b)の破線A-A’において目的形状と解析結果とを比較した面外方向変位分布であり、図18は、図15(a)(b)の一点鎖線B-B’において目的形状と解析結果とを比較した面外方向変位分布である。
このシミュレーションでは、図16に示した加熱方案を算出することができた。また、算出した加熱方案に基づき固有ひずみ法による構造解析を行ったところ、図15(b)に示した解析結果を得ることができた。
図15、図17、18から図15(b)に示した解析結果は目的形状の傾向を良好に捉えていることが確認できた。
Claims (8)
- 算出方法により算出された加熱方案に基づいて金属板を線状加熱し曲げ加工する加工方法であって、
前記算出方法は、
前記金属板の解析モデルの任意の位置に設定した少なくとも1本の第1加熱線を含む第1加熱条件で有限要素法構造解析を実施し、この解析結果と目的形状とを比較する第1試行を第1加熱線の位置を変えて繰り返すステップと、
繰り返した第1試行のうち解析結果が目的形状に近づいた第1試行で設定した少なくとも1本の第1加熱線を第1選択加熱線として選択するステップと、
第1選択加熱線と、前記解析モデルの任意の位置に設定した少なくとも1本の第2加熱線とを含む第2加熱条件で有限要素法構造解析を実施し、この解析結果と目的形状とを比較する第2試行を第2加熱線の位置を変えて繰り返すステップと、
繰り返した第2試行のうち解析結果が目的形状に近づいた第2試行で設定した少なくとも1本の第2加熱線を第2選択加熱線として選択するステップとを備え、
前記加熱方案は、第1及び第2選択加熱線を含み、
前記加工方法は、
第1選択加熱線を含む第1加熱条件で金属板を線状加熱し、前記金属板に曲げ加工を施すステップと、
前記曲げ加工が施された前記金属板の立体形状を計測するステップと、
計測された前記金属板の立体形状と、第1選択加熱線を含む第1加熱条件で実施した有限要素法構造解析の解析結果とを比較するステップと、
比較した結果に基づき前記金属板の立体形状が第1選択加熱線を含む第1加熱条件で実施した有限要素法構造解析の解析結果に近づくように前記金属板を加熱するステップとを備えることを特徴とする加工方法。 - 前記算出方法は、
第1選択加熱線と、第2選択加熱線と、前記解析モデルの任意の位置に設定した少なくとも1本の第3加熱線とを含む第3加熱条件で有限要素法構造解析を実施し、この解析結果と目的形状とを比較する第3試行を第3加熱線の位置を変えて繰り返すステップと、
繰り返した第3試行のうち解析結果が目的形状に近づいた第3試行で設定した少なくとも1本の第3加熱線を第3選択加熱線として選択するステップとをさらに備え、
前記加熱方案は、第1、第2及び第3選択加熱線を含む請求項1に記載の加工方法。 - 前記加熱方案は、第1、第2及び第3選択加熱線をこの順で含む請求項1又は2に記載の加工方法。
- 前記有限要素法構造解析は、FEM熱弾塑性解析又は固有ひずみ法による弾性解析である請求項1~3のいずれか1つに記載の加工方法。
- 第1又は第2加熱線は、直線又は曲線である請求項1~4のいずれか1つに記載の加工方法。
- 第1加熱条件は、複数の第1加熱線を含み、
第2加熱条件は、複数の第2加熱線を含む請求項1~5のいずれか1つに記載の加工方法。 - 少なくとも1本の第1加熱線を第1選択加熱線として選択するステップは、繰り返した第1試行のうち解析結果が最も目的形状に近づいた第1試行で設定した少なくとも1本の第1加熱線を第1選択加熱線として選択するステップであり、
少なくとも1本の第2加熱線を第2選択加熱線として選択するステップは、繰り返した第2試行のうち解析結果が最も目的形状に近づいた第2試行で設定した少なくとも1本の第2加熱線を第2選択加熱線として選択するステップである請求項1~6のいずれか1つに記載の加工方法。 - 請求項1~7のいずれか1つに記載の加工方法により金属板を線状加熱し曲げ加工するように設けられた加工装置。
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