JP7162872B2 - 医薬用組成物 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 https://kaken.nii.ac.jp/report/KAKENHI-PROJECT-15K09514/15K095142016hokoku/、2018年1月16日
本発明は、関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の治療又は予防に有用な医薬用組成物に関する。
RAは、自己免疫機序による慢性多発性関節炎であり、滑膜の肥厚・増殖に伴う骨・軟骨破壊を特徴とする。RAの病態においては、関節滑膜局所で活性化されたT細胞、マクロファージから産生されるTNF-α(tumor necrosis factor alpha)、IL-6(interleukin-6)などの炎症性サイトカインにより腫瘍様増殖した線維芽細胞様滑膜細胞(fibroblast-like synoviocytes:FLS)が中心的役割を担う。無秩序に増殖したFLSはMMP(matrix metalloproteinase)などのタンパク分泌を介して軟骨破壊に関わるとともに、RANKL(Receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand)を発現することで破骨細胞を活性化し骨破壊を引き起こす。従来、非特異的経口治療薬や炎症性サイトカインをターゲットとした生物学的製剤による治療が行われてきたが、寛解率は必ずしも高くない。このため、RAの病態解明及び新たな治療ターゲットの探索、新規治療薬の開発が求められている。
RAは免疫関連疾患の一種であることから、免疫反応のさらなる解明により、新たな治療ターゲットが発見できる可能性がある。しかしながら、免疫反応は非常に多くの遺伝子が複雑に作用しあっており、実際に有望な治療ターゲットを探索することは困難である。例えば特許文献1には、CD4+T細胞の集団を、抗CD3抗体とICAM-1、又は、抗CD抗体と抗CD28抗体を用いて活性化した刺激細胞と、比較のための休止細胞とでマイクロアレイ解析を行ったところ、約8000もの遺伝子で刺激細胞と休止細胞とで発現量に差が観察されたことが開示されている。
一方で、非特許文献1には、RA患者のFLSではRasGRP4(Ras guanine nucleotide-releasing protein 4)の発現が亢進していること、FLSにおけるRasGRP4のmRNA発現量と細胞増殖能は正の相関関係にあること、siRNAを用いてRasGRP4をノックダウンした場合、FLSの細胞増殖能が低下すること、が報告されている。当該文献では、さらに、コラーゲン誘導滑膜炎(collage-induced arthritis:CIA)ラットにおいて、RasGRP4 siRNAの足関節内投与は、コントロールと比較して有意に足関節炎スコアと足関節径を減少させ、また骨破壊、軟骨破壊も軽減させることも報告されている。
なお、RasGRPは、別名CalDAG-GEFと呼ばれるGEF(guanine nucleotide exchange factor)の一種であり、RasGRPファミリー分子としてRasGRP1~4まで同定されている。このうち、RasGRP2(CalDAG-GEFI)は、Ras活性化因子というよりむしろRap-1の活性化を司るGEFであり、血小板においてRasGRP2は、Rap-1の活性化を通じてインテグリンの発現を調整し、血小板の接着、凝集に関与していることが報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。
国際公開第2004/047728号
Kono,et al.,Arthritis & Rheumatology,2015,vol.67,p.396-407. Stefanini,et al.,Platelets,2010,vol.21,p.239-243. Siebuhr,et al.,Journal of Translational Medicine,2012,10:195,doi: 10.1186/1479-5876-10-195. Pine,et al.,Clinical Immunology,2007,vol.124,p.244-257. Wruck et al.,Annals of the Rheumatic Diseases,2011,vol.70,p.844-850.
本発明は、RAの治療又は予防に有用な医薬用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、RA患者由来のFLSにRasGRP2が高発現していること、及び関節炎モデル動物において関節内局所でのRasGRP2発現抑制によって関節炎が改善することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の医薬用組成物提供するものである。
[1] RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質を有効成分とし、
前記RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質が、RNA干渉により、RasGRP2遺伝子の発現自体を抑制させる作用を有する物質であり、
関節リウマチの治療又は予防に用いられる、医薬用組成物。
[2] 前記RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質が、RasGRP2遺伝子を標的とするsiRNAである、前記[1]の医薬用組成物。
[3] 滑膜組織の浸潤を抑制する、前記[1]又は[2]の医薬用組成物。
[4] さらに、RasGRP4遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質を有効成分とし、
前記RasGRP4遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質が、RNA干渉により、RasGRP4遺伝子の発現自体を抑制させる作用を有する物質である、前記[1]~[3]のいずれかの医薬用組成物。
[5] 前記RasGRP遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質が、RasGRP遺伝子を標的とするsiRNAである、前記[4]の医薬用組成物。
本発明に係る医薬用組成物は、RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質を有効成分とするため、滑膜組織の浸潤を抑制することができ、RAの治療又は予防に有用である。
また、滑膜組織を構成する細胞におけるRasGRP2遺伝子の発現量は、RAの診断マーカーとして有用であり、よって本発明に係るRA発症可能性の評価方法は、RAの早期発見や、RA治療剤の治療効果の評価に有用である。
参考例1において、リウマチ患者から採取されたFLSにおけるRasGRP1~4のmRNA発現量(相対値)の測定結果を示した図である。 参考例1において、RA患者(上段)及び変形性関節症(osteoarthritis:OA)患者(下段)から採取された滑膜組織の組織切片の染色像である。 参考例1において、CIAマウスと対照マウスの足関節組織の抗RasGRP2抗体による免疫組織化学染色像である。 参考例2において、各サイトカインで刺激したFLSのRasGRPのmRNA量及びタンパク質発現量の測定結果を示した図である。 参考例3において、RasGRP2強制発現細胞と対照細胞の抗RasGRP2抗体、抗Rap-1抗体、及び抗β-actin抗体を用いたイムノブロッティングの結果を示した図である。 参考例3において、RasGRP2強制発現細胞と対照細胞のBrdUアッセイの発光強度の測定結果を示した図である。 参考例3において、創傷形成直後(0時間後)、創傷形成から24時間後、及び48時間後の、対照細胞とRasGRP2強制発現細胞の透過光画像である。 参考例3において、創傷形成直後(0時間後)の創傷面積を100%とした、創傷形成から24時間後及び48時間後の対照細胞とRasGRP2強制発現細胞の相対創傷面積(%)の測定結果を示した図である。 参考例3において、対照細胞とRasGRP2強制発現細胞の培養上清中のIL-6濃度の測定結果を示した図である。 実施例1において、RNA干渉によりRasGRP2遺伝子の発現を抑制したCIAラット及びRasGRP2遺伝子の発現を抑制していないCIAラットの関節炎スコアの測定結果を示した図である。 実施例1において、RNA干渉によりRasGRP2遺伝子の発現を抑制したCIAラット及びRasGRP2遺伝子の発現を抑制していないCIAラットの足関節の直径の測定結果を示した図である。 実施例1において、RNA干渉によりRasGRP2遺伝子の発現を抑制したCIAラット及びRasGRP2遺伝子の発現を抑制していないCIAラットの足関節のマイクロCT画像である。 実施例1において、RNA干渉によりRasGRP2遺伝子の発現を抑制したCIAラット及びRasGRP2遺伝子の発現を抑制していないCIAラットの骨びらんスコアの測定結果を示した図である。 実施例2において、RNA干渉によりRasGRP2遺伝子の発現を抑制したCIAラット(RasGRP2ノックダウンCIAラット)、RasGRP4遺伝子の発現を抑制したCIAラット(RasGRP4ノックダウンCIAラット)、RasGRP2遺伝子とRasGRP4遺伝子の発現を抑制したCIAラット(RasGRP2/RasGRP4ダブルノックダウンCIAラット)、及びRasGRP2遺伝子とRasGRP4遺伝子の両方の発現を抑制していないCIAラット(コントロールCIAラット)の関節炎スコアの測定結果を示した図である。 実施例2において、RasGRP2ノックダウンCIAラット、RasGRP4ノックダウンCIAラット、RasGRP2/RasGRP4ダブルノックダウンCIAラット、及びコントロールCIAラットの足関節の直径の測定結果を示した図である。 実施例2において、RasGRP2ノックダウンCIAラット、RasGRP4ノックダウンCIAラット、RasGRP2/RasGRP4ダブルノックダウンCIAラット、及びコントロールCIAラットの足関節のマイクロCT画像及びHE染色画像である。 実施例2において、RasGRP2ノックダウンCIAラット、RasGRP4ノックダウンCIAラット、RasGRP2/RasGRP4ダブルノックダウンCIAラット、及びコントロールCIAラットの骨びらんスコアの測定結果を示した図である。 実施例2において、RasGRP2ノックダウンCIAラット、RasGRP4ノックダウンCIAラット、RasGRP2/RasGRP4ダブルノックダウンCIAラット、及びコントロールCIAラットのパンヌススコアの測定結果を示した図である。
本発明に係る医薬用組成物は、RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質(以下、まとめて「RasGRP2阻害物質」という。)を有効成分とする。RasGRP2は、FLSの遊走を制御し、また、IL-6の産生にも関与している。このため、滑膜組織においてRasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害することにより、FLSの遊走及びIL-6の産生が抑制され、FLSによる滑膜組織の浸潤や炎症を抑えることができる。このため、本発明に係る医薬用組成物は、RAの治療又は予防に有用である。
本発明に係る医薬用組成物は、滑膜の浸潤性そのものをターゲットとしている。本発明に係る医薬用組成物は、従来のRA治療は免疫担当細胞やサイトカインを標的とした炎症の抑制を目的とする治療方法とは異なり、新しい治療方法のための医薬品となり得る。このため、本発明に係る医薬用組成物は、従来のRA治療の難治例に対する治療として選択可能な治療になり得る。特に、RasGRP2阻害物質によるRA治療は免疫抑制作用を介さないと考えられるため、現行のRA治療の効果と表裏一体である易感染性の問題を解決できる可能性もある。また、一般的に、作用機序の異なる治療を選択することによって副作用の抑制が期待できるため、本発明に係る医薬用組成物を従来のRA治療と併用することも好ましい。
RasGRP2遺伝子の機能の抑制又は阻害は、RasGRP2遺伝子の発現を阻害することによって達成できる。すなわち、本発明に係る医薬用組成物の有効成分であるRasGRP2阻害物質としては、RNA干渉等により、RasGRP2遺伝子の発現自体を抑制させる作用を有する物質が挙げられる。当該物質としては、例えば、RasGRP2遺伝子のcDNAの部分領域(RNAi(RNA干渉)標的領域)のセンス鎖とアンチセンス鎖からなる二本鎖構造を有するsiRNA(small interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)又はmiRNA(micro RNA)が挙げられる。また、標的であるFLSや滑膜組織を構成する細胞の細胞内において、siRNA等を生産させることができるRNAi誘導ベクターであってもよい。siRNA、shRNA、miRNA、及びRNAi誘導ベクターの作製は、標的とするRasGRP2遺伝子のcDNAの塩基配列情報から、常法により設計し製造することができる。また、RNAi誘導ベクターは、市販の各種RNAiベクターの塩基配列に、RNAi標的領域の塩基配列を挿入することによって作製することもできる。
本発明に係る医薬用組成物の有効成分としては、RasGRP2タンパク質に直接又は間接的に結合することによって、RasGRP2タンパク質の機能、特に、Rap-1の活性化又は間接的にRasの活性化を抑制若しくは阻害する物質であってもよい。当該物質としては、特に限定されるものではなく、核酸、ペプチド、タンパク質、低分子化合物のいずれであってもよい。
RasGRP2タンパク質に結合してRasGRP2タンパク質の機能を阻害するタンパク質としては、例えば、RasGRP2タンパク質と特異的に結合する抗体(抗RasGRP2抗体)が挙げられる。当該抗体としては、モノクローナル抗体でもよく、ポリクローナル抗体でもよい。また、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の人工的に合成された抗体であってもよい。これらの抗体は、常法により製造することができる。
本発明に係る医薬用組成物の有効成分としては、RasGRP2タンパク質を分解する物質であってもよい。RasGRP2タンパク質自体が分解されることにより、その機能は阻害される。RasGRP2タンパク質を分解する物質としては、RasGRP2タンパク質を直接分解する分解酵素であってもよく、タンパク質分解酵素の基質になるようにポリユビキチン等の各種標識を行う物質であってもよい。
本発明に係る医薬用組成物は、RasGRP2阻害物質の作用を損なわない限り、その他の有効成分を含有していてもよい。その他の有効成分としては、例えば、TNF-α阻害薬、IL-6阻害薬などの従来からRA治療に使用されてきた生物学的製剤や免疫抑制剤のように、RAに対する治療効果が期待される物質が挙げられる。
本発明に係る医薬用組成物は、RasGRP2阻害物質と共にRasGRP4遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質(以下、まとめて「RasGRP4阻害物質」という。)を有効成分とすることが好ましい。RasGRP4遺伝子の発現を抑制することによってFLSの細胞増殖を抑制することができる(非特許文献1)ことから、RasGRP2阻害物質と、RasGRP4遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質を併用使用することにより、RAに対する相加的・相乗的な治療効果が期待できる。RasGRP4阻害物質としては、RasGRP4遺伝子のcDNAの部分領域(RNAi(RNA干渉)標的領域)のセンス鎖とアンチセンス鎖からなる二本鎖構造を有するsiRNA、shRNA又はmiRNAや、抗RasGRP4抗体、RasGRP4に特異的に結合する低分子化合物等が挙げられる。
本発明に係る医薬用組成物の投与経路は特に限定されるものではなく、標的とする細胞及びそれを含む組織に応じて適宜決定される。例えば、本発明に係る医薬用組成物の投与経路としては、経口投与、関節への直接投与、経皮投与、経静脈投与、腹腔内投与、注腸投与等が挙げられる。
本発明に係る医薬用組成物は、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤、徐放剤などの経口用固形剤、溶液剤、シロップ剤などの経口用液剤、注射剤、注腸剤、スプレー剤、貼付剤、軟膏剤などに製剤化することができる。製剤化は、製剤上の必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、流動化剤、溶剤、溶解補助剤、緩衝剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、着色剤等を配合して常法により行うことができる。
本発明に係る医薬用組成物をヒトやヒト以外の動物に投与し、RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害することにより、FLSの遊走及びIL-6の産生が抑制され、これらの動物の関節の滑膜組織の浸潤や炎症を抑制することができる。当該動物としては、特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。非ヒト動物としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物や、ニワトリ、ウズラ、カモ等の鳥類等が挙げられる。
RAのFLSは、健常者又はOAのFLSに比べてRasGRP2遺伝子の発現量が多い。このため、RasGRP2遺伝子の発現量は、RAを検出するための診断マーカーとして有用である。例えば、被検動物から採取されたFLSのRasGRP2遺伝子の発現量が、予め設定された所定の閾値以上である場合には、当該被検動物がRAを発症している可能性が高いと評価することができる。逆に、FLSのRasGRP2遺伝子の発現量が予め設定された所定の閾値よりも少ない場合には、当該被検動物はRAを発症している可能性が低い、と評価することができる。
当該閾値は、RasGRP2遺伝子の発現量の測定方法の種類等を考慮して、また必要な予備検査等を行うことにより、適宜設定することができる。例えば、その他の検査方法の結果から、RAを発症していないことが確認されている被検動物から採取されたFLS(非RA群)のRasGRP2遺伝子の発現量の測定値と、RAを発症していることが確認されている被検動物から採取されたFLS(RA群)のRasGRP2遺伝子の発現量の測定値とを比較することにより、両群を識別するための閾値を適宜設定することができる。
FLSのRasGRP2遺伝子の発現量は、mRNAレベルで測定してもよく、タンパク質レベルで測定してもよい。RasGRP2遺伝子の発現量の測定方法としては、細胞中の標的タンパク質量又は標的のmRNA量を定量的又は半定量的に測定可能な方法であれば特に限定されるものではなく、検体中のmRNAやタンパク質の検出に用いられる公知の方法の中から、適宜選択して用いることができる。各方法は常法により行うことができる。
RasGRP2遺伝子のmRNA量は、RasGRP2遺伝子のmRNAとハイブリダイズし得るプローブを用いたハイブリダイゼーション法により検出してもよく、RasGRP2遺伝子のmRNAとハイブリダイズし得るプライマーとポリメラーゼとを用いた核酸増幅反応を利用した方法により検出してもよい。その他、市販されている検出用キット等を利用することもできる。例えば、FLSから抽出した総RNAを鋳型として逆転写反応を行うことによりcDNAを合成した後、得られたcDNAを鋳型としてPCR(Polymerase Chain Reaction)等を行い、得られた増幅産物量を測定することによって、RasGRP2遺伝子のmRNA量を定量できる。増幅産物量は、ゲルやキャピラリー電気泳動等で特異的に分離した後、それを検出することにより定量的に測定することができる。また、PCRに代えてリアルタイムPCR等の半定量的PCRを行うことにより、RasGRP2遺伝子のmRNAの検出と同時にその定量を簡便に行うことができる。
RasGRP2タンパク質量は、抗RasGRP2抗体を用いて測定することができる。例えば、抗RasGRP2抗体を一次抗体とした免疫染色を行い、染色の有無や染色強度に基づいて、FLS中におけるRasGRP2の発現の有無や発現強度を調べる。当該免疫染色は、酵素標識した抗体を用いる酵素抗体染色法であってもよく、蛍光標識した抗体を用いる蛍光抗体染色法であってもよい。また、FLSのRasGRP2タンパク質量は、FLSから調製された細胞抽出液中のタンパク質を、SDS-PAGE等により分離させた後、ウェスタンブロット法等により定量的に測定することができる。
RAのFLSは、健常者又はOAのFLSに比べてRasGRP4遺伝子の発現量が多い(非特許文献1参照。)。このため、RasGRP4遺伝子の発現量は、RAを検出するための診断マーカーとして有用である。例えば、被検動物から採取されたFLSのRasGRP4遺伝子の発現量が、予め設定された所定の閾値以上である場合には、当該被検動物がRAを発症している可能性が高いと評価することができる。逆に、FLSのRasGRP4遺伝子の発現量が予め設定された所定の閾値よりも少ない場合には、当該被検動物はRAを発症している可能性が低い、と評価することができる。FLSのRasGRP4遺伝子の発現量は、前述のRasGRP2遺伝子の発現量の測定と同様にして測定することができる。RA発症の有無を判断するためのRasGRP4遺伝子の発現量の閾値は、前述のRasGRP2遺伝子の発現量の閾値と同様して設定することができる。
RasGRP2遺伝子の発現量とRasGRP4遺伝子の発現量とを組み合わせてRAを検出するための診断マーカーとして用いることにより、より精度よくRAを検出することができる。例えば、被検動物から採取されたFLSのRasGRP2遺伝子の発現量が予め設定された所定の閾値以上であり、かつRasGRP4遺伝子の発現量が予め設定された所定の閾値以上である場合には、当該被検動物がRAを発症している可能性が高いと評価することができる。逆に、FLSのRasGRP2遺伝子の発現量が予め設定された所定の閾値よりも少ない場合やRasGRP4遺伝子の発現量が予め設定された所定の閾値よりも少ない場合には、当該被検動物はRAを発症している可能性が低い、と評価することができる。
RasGRP2遺伝子の発現量やRasGRP4遺伝子の発現量を、RAを検出するための診断マーカーとして用いる対象の被検動物としては、特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。非ヒト動物としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物や、ニワトリ、ウズラ、カモ等の鳥類等が挙げられる。
次に実施例等を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以降の動物実験は、北海道大学の動物実験倫理委員会の承認のもと、北海道大学動物実験に関する規定に従い行った。
[参考例1]
リウマチ患者の滑膜組織におけるRasGRPの発現解析を行った。
<リウマチ患者>
2012年4月から2017年4月までに北海道大学病院整形外科で人工膝関節置換術を施行されたリウマチ患者のうち、RA患者8名(RA1~8)及びOA患者6名(OA1~6)から、文書による説明と同意取得を行った後、滑膜組織を採取した。本研究はヘルシンキ宣言と臨床試験の基本理念に従って施行し、北海道大学大学院医学研究科倫理委員会の承認(承認番号:008-0103)を得て行った。
<FLSの採取>
各リウマチ患者から採取された滑膜組織は、結合組織や脂肪を除去した後、細かく切り刻み、5mg/mLのType I collagenase(Sigma社製)含有Hanks’ balanced salt solutionで37℃、2時間インキュベートを行った。インキュベート後の懸濁物を、メッシュを通した後、遠心分離して細胞成分を回収した。回収された細胞成分を、10%非働化FBS(ウシ胎児血清)含有のIscove’s modified Dulbecco’s medium(Sigma社製)で培養した。この方法で分離・培養される細胞は、97%以上の純度でFLSである。なお、FLSは、HSP-47染色によって確認できる。
<RasGRPのmRNAに基づく発現解析>
4~8継代培養したFLSを回収し、TRIzol RNA reagentを用いてmRNAを抽出した。抽出したmRNAは、SuperScript VILO を用いてcDNAとし、Taq-Man Gene Expression Assay(Applied Biosystems社製)によるReal-time-PCR法でヒトRasGRP1 mRNA、ヒトRasGRP2 mRNA、ヒトRasGRP3 mRNA、ヒトRasGRP4 mRNA及びヒトGAPDH mRNAの発現を定量した。ΔΔCT値法によって各FLSにおけるRasGRP1~4のmRNA発現量の比較を行った。RasGRP1~4のmRNA発現量は、OA1患者由来のFLSにおけるRasGPR1のΔΔCT値を1とした相対量(RQ)として求めた。
FLSにおけるRasGRP1~4のmRNA発現量(相対値)の測定結果を図1に示す。図1中、「Biologics」の欄中、「+」が生物学的製剤治療を受けていることを、「-」が生物学的製剤治療を受けていないことを、それぞれ示す。RA患者群のFLSにおいて、OA患者群と比較してRasGRP1~4は全てmRNAの発現が亢進している傾向が観察された。特に、RA患者の一部(RA1~RA3)では、RasGRP4と共にRasGRP2の顕著な発現亢進が認められた。
<RasGRPの免疫組織化学染色に基づく発現解析>
各リウマチ患者から採取された滑膜組織の一部は、4%パラホルムアルデヒドで24時間固定し、パラフィン包埋した後、6μm厚さの組織切片を作成した。この組織切片は、キシレンで脱パラフィンを行い、エタノールで洗浄し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)に置換した。次いで、抗原賦活化液 High pH(DAKO社製)を加え、95℃で20分間静置した後、水洗した。水洗後の組織切片は、内因性ペルオキシダーゼ活性を不活化するため、さらに、0.3%過酸化水素を混ぜたPBSに常温で30分間浸した。
続いて、各組織切片に、抗Cadherin-11抗体(R&D Systems社製)、抗RasGRP2抗体(Abcam社製)を加えて、一晩4℃でインキュベートし、それぞれ免疫組織化学染色を行った。連続切片を用いて免疫組織化学染色することで、これらのタンパク質の共発現を検討した。
図2に、RA1患者由来の滑膜組織切片とOA4患者由来の滑膜組織切片の染色像を示す。免疫組織化学染色において、RasGRP2はRA患者の血管内皮細胞とCadherin-11で同定されるFLSに発現が確認された。一方OA患者においては、RasGRP2は、血管内皮細胞に発現は認められるものの、FLSにおける発現は確認されなかった。
<CIAマウスの足関節組織の免疫組織化学染色>
非特許文献1に記載されている方法によりCIAマウスを作成し、RasGRP2の発現解析を免疫組織化学染色にて行った。具体的には、各リウマチ患者から採取された滑膜組織と同様にして、CIAマウスの足関節組織から6μm厚さの組織切片を作成し、抗RasGRP2抗体による免疫組織化学染色を行った。対照として、健常マウスの足関節組織の免疫組織化学染色も同様にして行った。
図3に、CIAマウスと対照マウスの足関節組織の抗RasGRP2抗体による免疫組織化学染色像を示す。CIAマウスの滑膜組織においても、RasGRP2の発現が確認された。また、マウスRasGRP2が、増殖滑膜組織の表層部に高発現しており、また骨に増殖滑膜が侵入している箇所において特に高発現していることも確認された。
[参考例2]
FLSをサイトカイン刺激した場合のRasGRP2の発現変化を調べた。サイトカインは、TNF-α、IL-6、IL-1β、IFN-γ(interferon gamma)、IL-17A、IL-22、PDGF(platelet-derived growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、及びTGF-β(transforming growth factor beta)を用いた。
<サイトカイン刺激>
4~8継代のFLSを12ウェルプレートに散布し、10%非働化FBS含有Iscove’s modified Dulbecco’s mediumで培養を行った。1~10ng/mLの各サイトカインを培養液に添加し、24時間後に細胞を回収した。
<RasGRPの発現解析>
回収した細胞の一部から、参考例1と同様にしてmRNAを抽出し、Real-time-PCR法でヒトRasGRP2 mRNAとヒトGAPDH mRNAの発現を定量した。ΔΔCT値法によってサイトカイン刺激におけるRasGRP2のmRNA発現量の比較を行った。ΔΔCT値は、サイトカイン無添加の対照細胞におけるRasGPR1の発現量を1とした。
また、回収した細胞の残りはprotease inhibitor(Sigma社製)含有のcell lysis buffer(Wako社製)で処理を行い、15分間氷上に放置した後、10分間遠心分離し、上清を回収した。濃度調整した上清にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えて95℃で10分間加温した。次に、9%アクリルアミドゲルを作製し、サンプル中のタンパク質を電気泳動させた。その後、PVDF(polyvinylidene difluoride)膜にタンパク質を転写し、スキムミルクでブロッキングを行った。Solution 1(Toyobo社製)で1000倍希釈した抗RasGRP2抗体を室温で一晩反応させ、洗浄後、二次抗体を反応させた。検出試薬には、Amerisham(登録商標)ECL(登録商標) Western Blotting Detection Reagents(GE Healthcare社製)を使用した。
図4に、各サイトカインで刺激したFLSのRasGRP2のmRNA量及びタンパク質発現量の測定結果を示す。データは平均±標準誤差で示した(*:p<0.05、**:p<0.01、t-test)。VEGF及びTGF-βの刺激によって、RasGRP2 mRNAの発現量が増加した。また、統計学的有意差は確認できなかったものの、IL-6、IL-1β、IFN-γ、IL-17A、IL-22、及びPDGFの刺激によってもRasGRP2 mRNAの発現量が増加する傾向が認められた。イムノブロッティングでは、IL-22、PDGF、VEGF、TGF-βの刺激によるRasGRP2のタンパク質発現量の増加が確認された。
[参考例3]
FLSにRasGRP2を強制発現し、その影響を調べた。
<RasGRP2発現ベクターの作成>
RasGRP2のリファレンス配列(アクセッション番号:NM_001098670.1、Homo sapiens RAS guanyl releasing protein 2, transcript variant 3)をPubMedから入手し、Primer-BLASTを用いて全オープンリーディングフレーム(ORF)を含むように、プライマーを表1のように設計した。
Figure 0007162872000001
Jurkat細胞のcDNAを鋳型とし、KOD plus Neo(Toyobo社製)を用いたPCR反応で、RasGRP2のORF配列の増幅を行った。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動し、目的サイズのDNA断片が増幅されていることを確認した。目的のDNAは、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社製)を用いてゲル片から抽出した。得られたDNAは、Taq酵素(Toyobo社製)を用いてT付加反応を行った後、pcDNA3.1/V5-His-TOPO expression vector(Thermo Fisher Scientific社製)にライゲーションした。
その後、大腸菌コンピテントセルに形質転換し、培養を行った。得られたコロニーに対し、表2に記載のプライマーを用いてコロニーPCRを行った。PCR産物をアガロースゲル電気泳動し、目的のバンドが得られたコロニーを液体培地でさらに培養し、Wizard(登録商標)Plus SV Minipreps DNA Purification System(Promega社製)を用いてプラスミドベクターの単離、精製を行った。
Figure 0007162872000002
<RasGRP2の強制発現>
まず、緑色蛍光蛋白質(GFP)発現ベクターを用いたトランスフェクションし、蛍光顕微鏡観察で最大のトランスフェクション効率となる条件を検討した。
次いで、このトランスフェクション効率が最大となる条件で、RasGRP2発現ベクターをトランスフェクションし、参考例2と同様にしてReal-time-PCR法とイムノブロッティングを行い、RasGRP2のmRNAとタンパク質発現量が増加することを確認した。
<シグナル伝達関連因子のイムノブロッティング>
シグナル伝達関連因子のイムノブロッティングを行い、RasGRP2強制発現によるシグナル伝達経路の変化を調べた。
RasGRP2発現ベクターをFLSにトランスフェクションし、72時間後に細胞を回収した。対照として空ベクターも同様の方法でFLSにトランスフェクションした。
参考例2と同様にして各FLSの細胞ライセートを作成し、そのうち一部は、GST(Glutathione S-transferase)融合タンパク質、グルタチオンアガロースビーズ(Cell signaling technology社製)と共にインキュベートし、SDS溶液でGTP結合Rap-1を沈降させた(プルダウンアッセイ)。得られたライセート及び溶出液は、ポリアクリルアミド電気泳動の後、抗RasGRP2抗体、抗Erk1/2抗体、抗P-Erk抗体、抗p38MAPK抗体、抗P-p38MAPK抗体、抗JNK抗体、抗P-JNK抗体、抗m-TOR抗体、抗Rap-1抗体、及び抗β-actin抗体を用いてイムノブロッティングを行った。
この結果、Erk1/2、P-Erk、p38MAPK、P-p38MAPK、JNK、P-JNK、及びm-TORの発現量は、RasGRP2発現ベクターを導入したRasGRP2強制発現細胞と空ベクターを導入した対照細胞で差がなかった。すなわち、RasGRP2強制発現により、Erk経路、p38MAPK経路、JNK経路、m-TOR経路の明らかな変化は認められなかった。一方で、RasGRP2強制発現細胞では対照細胞と比べて、Rap-1の総タンパク質量には変化はみられなかったものの、GTP結合型のRap-1タンパク質は明らかに増加していた。抗RasGRP2抗体、抗Rap-1抗体、及び抗β-actin抗体を用いたイムノブロッティングの結果を図5に示す。図中、「Control」は対照細胞の結果を、「RasGRP2+」はRasGRP2強制発現細胞の結果を、それぞれ示す。
<BrdUアッセイ>
RasGRP2強制発現と細胞増殖能との関係をBrdUアッセイにより調べた。
RasGRP2発現ベクター又は空ベクターをそれぞれFLSにトランスフェクションし、48時間後に細胞培養液中にBrdU(ブロモデオキシウリジン)を添加した。チミジンアナログであるBrdUは、細胞周期のS期において新たに合成されたDNAに取り込まれ、細胞増殖を反映する。添加24時間後に細胞を固定し、ペルオキシダーゼ標識抗BrdU抗体(Roche社製)を反応させた。その後、化学発光基質を加え、発光強度をELISAリーダーで測定した。
発光強度の測定結果を図6に示す。データは平均±標準誤差で示した。発光強度は、対照細胞(図中、「Control」)とRasGRP2強制発現細胞(図中、「RasGRP2+」)とで有意な差はなく、RasGRP2の強制発現は、BrdUアッセイにおける細胞増殖能評価に明らかな影響を及ぼさなかった。
<創傷治癒アッセイ>
創傷治癒アッセイを行い、RasGRP2強制発現と細胞遊走能との関係を調べた。
RasGRP2発現ベクター又は空ベクターをそれぞれFLSにトランスフェクションし、48時間後にコンフルエントとなるように12ウェルプレートで培養した。コンフルエントとなった12ウェルプレートを、1000μLピペットチップの先端でひっかき、細胞の空白地帯(創傷)を作成した。その後、細胞が遊走し空白が埋まっていく(創傷が治癒していく)様子を経時的に光学顕微鏡で観察し、空白(創傷)面積の大きさを画像解析ソフトウェアImage Jで定量した。
創傷形成直後(0時間後)、創傷形成から24時間後、及び48時間後の対照細胞(図中、「Control」)とRasGRP2強制発現細胞(図中、「RasGRP2+」)の透過光画像を図7に示す。また、創傷形成直後(0時間後)の創傷面積を100%とした、創傷形成から24時間後及び48時間後の相対創傷面積(%)の測定結果を図8に示す。24時間後と48時間後のいずれにおいても、RasGRP2強制発現細胞(図中、「RasGRP2+」)では対照細胞(図中、「Control」)よりも創傷面積が小さかった。つまり、RasGRP2の強制発現によって有意な創傷治癒 (遊走) の促進が確認された。
<IL-6産生量の測定>
RasGRP2強制発現とIL-6産生量との関係を調べた。
RasGRP2発現ベクター又は空ベクターをそれぞれFLSにトランスフェクションし、48時間後に培地交換を行い、その24時間後に細胞培養上清を回収した。その培養上清中のIL-6濃度をELISAキット(R&D System社製)で定量した。
定量結果を図9に示す。RasGRP2強制細胞(図中、「RasGRP2+」)では、対照細胞(図中、「Control」)に比べて培養上清中のIL-6濃度は有意に増加していた。この結果から、RasGRP2の強制発現によって、FLSのIL-6分泌が促進されることがわかった。
これらの知見から、RasGRP2はRAの病態と深く関わっていることが明らかである。より詳細には、RAのFLSが腫瘍様に増殖し、骨・軟骨に遊走、浸潤してパンヌスを形成していく過程で、RasGRP2は、遊走とIL-6産生に関与する。
[実施例1]
RAモデルラットにおけるRasGRP2ノックダウンの影響を調べた。RAモデルラットとして、CIAラットを用いた。また、RasGRP2のノックダウンは、RasGRP2遺伝子の第6エキソン中の領域をターゲットとするsiRNA(RasGRP2-1)(S167867:Applied Biosystems社製)と、第7エキソン中の領域をターゲットとするsiRNA(RasGRP2-2)(S167865:Applied Biosystems社製)を用いた。また、対照のsiRNAは、siRNA(Control)(Applied Biosystems社製)を用いた。
<CIAラットの作製>
7週齢のLEWラット(雌)に対し、200μLのincomplete Freund’s adjuvant(Chondrex社製)に溶解した200μgのウシType II collagen(Chondrex社製)を尾に皮下投与して免疫を行った(Day 0)。
コラーゲン投与から7日目(Day 7)には、100μLのincomplete Freund’s adjuvant(Chondrex社製)に溶解した100μgのウシType II collagen(Chondrex社製)を尾に再皮下投与して追加免疫を行った。
コラーゲン投与から7日目以降は、誘導された関節炎について、関節炎スコアと足関節の直径を、週1回測定した。
<関節炎スコア>
関節炎スコアは、0点:関節に発赤及び腫脹を認めない、1点:足根骨又は足関節に軽度の発赤と腫脹を認める、2点:足関節から足根骨にかけて軽度の発赤と腫脹を認める、3点:足関節から中足骨関節にかけて中等度の発赤と腫脹を認める、4点:足関節、足部、足趾にまで広がる重度の発赤と腫脹を認める、又は足趾の関節強直を認める、とした(非特許文献3参照。)。
<RNA干渉によるRasGRP2のノックダウン>
コラーゲン投与から14日目(Day 14)のCIAラットの関節内に、10μMとなるようにsiRNA(RasGRP2-1)、siRNA(RasGRP2-2)、又はsiRNA(Control)をatelocollagen(Koken社製)に混合したsiRNA溶液50μLを投与した。
図10に、各CIAラットの関節炎スコアの測定結果を、図11に各CIAラットの足関節の直径の測定結果を、それぞれ平均±標準誤差で示す(*:p<0.05、**:p<0.01、t-test)。この結果、siRNA(RasGRP2-1)を投与したCIAラット(図中、「siRNA RasGRP2-1」)又はsiRNA(RasGRP2-2)を投与したCIAラット(図中、「siRNA RasGRP2-2」)では、関節炎スコアと足関節の直径のいずれも、対照であるsiRNA(Control)を投与したCIAラット(図中、「Control」)よりも明らかに小さく抑えられていた。
<足関節組織のマイクロCT撮像と骨びらんスコア>
CIAラットは、コラーゲン投与から35日目(Day 35)に、麻酔下の心臓全採血により安楽死処理した。各CIAラットの足関節組織を、4%パラホルムアルデヒドで24時間固定した。次いで、足関節のマイクロCTを撮像した後、脱灰しパラフィン包埋を行った。
マイクロCT所見による骨びらんスコアは、0点:正常、1点:軟部組織の腫脹のみ、2点:軟部組織の腫脹と軽度の骨びらん、3点:重度の骨びらん、とした(非特許文献4参照。)。
各CIAラットの足関節のマイクロCT画像を図12に、骨びらんスコアの結果を図13(*:p<0.05、t-test)に、それぞれ示す。siRNA(Control)を投与したCIAラット(図中、「Control」)では、重度の骨びらんが観察されたが(図12左図中、矢印箇所)、siRNA(RasGRP2-1)又はsiRNA(RasGRP2-2)を投与したCIAラット(図中、「siRNA RasGRP2」)では、軟部組織の腫脹は観察されたものの、重度の骨びらんは生じておらず(図12右図中、矢印箇所)、骨びらんスコアも小さかった。
これらの結果から、RNA干渉によってRasGRP2遺伝子の発現を抑制することによって、RAの病態が改善されること、すなわち、RasGRP2阻害物質がRA治療のための医薬用組成物の有効成分として有用であることが確認された。
[実施例2]
RAモデルラットにおけるRasGRP2及びRasGRP4ノックダウンの影響を調べた。RAモデルラットとして、実施例1と同様にして作製したCIAラットを用いた。RasGRP2のノックダウンは、RasGRP2遺伝子の第6エキソン中の領域をターゲットとするsiRNA(RasGRP2-1)(S167867:Applied Biosystems社製)を用い、RasGRP4のノックダウンは、RasGRP4遺伝子の第6エキソン中の領域をターゲットとするsiRNA(RasGRP4-1)(S139320:Applied Biosystems社製)を用いた。対照のsiRNAは、siRNA(Control)(Applied Biosystems社製)を用いた。
<RNA干渉によるRasGRP2及び/又はRasGRP4のノックダウン>
RasGRP2ノックダウンCIAラット、RasGRP4ノックダウンCIAラット、及びコントロールCIAラットは、それぞれ、10μMとなるようにsiRNA(RasGRP2-1)、siRNA(RasGRP4-1)、又はsiRNA(Control)をatelocollagen(Koken社製)に混合したsiRNA溶液50μLを、コラーゲン投与から14日目(Day 14)のCIAラットの関節内に投与して作製した(それぞれ、n=3)。RasGRP2/RasGRP4ダブルノックダウンCIAラットは、10μMとなるようにsiRNA(RasGRP2-1)をatelocollagen(Koken社製)に混合したsiRNA溶液25μLと、10μMとなるようにsiRNA(RasGRP4-1)をatelocollagen(Koken社製)に混合したsiRNA溶液25μLとを、コラーゲン投与から14日目(Day 14)のCIAラットの関節内に投与して作製した(n=3)。
<関節炎スコアと足関節の直径>
各CIAラットについて、実施例1と同様にして、関節炎スコアと足関節の直径の測定を行った。
<足関節組織のマイクロCT撮像と骨びらんスコア>
各CIAラットは、コラーゲン投与から35日目(Day 35)に、麻酔下の心臓全採血により安楽死処理した。各CIAラットの足関節組織を、4%パラホルムアルデヒドで24時間固定した。次いで、足関節のマイクロCTを撮像した後、脱灰しパラフィン包埋を行った。足関節のマイクロCT画像に基づき、実施例1と同様にして、骨びらんスコアを測定した。
<HE染色とパンヌススコア>
パラフィン包埋から作製した切片に対して、HE(hematoxylin-eosin)染色を行い、HE染色画像からパンヌス形成を評価した。パンヌス形成は、0点:正常、1点:軽度のパンヌス形成、2点:中等度のパンヌス形成、3点:重度のパンヌス形成、としてスコア化した(非特許文献5参照。)。
図14に各CIAラットの関節炎スコアの測定結果を、図15に各CIAラットの足関節の直径の測定結果を、図17に各CIAラットの骨びらんスコアの測定結果を、図18に各CIAラットのパンヌススコアの測定結果を、それぞれ平均±標準誤差で示す(*:p<0.05、**:p<0.01、t-test)。また、図16に、各CIAラットの足関節のマイクロCT画像及びHE染色画像を示す。各図中、「Control」はコントロールCIAラット、「siRNA RasGRP2」はRasGRP2ノックダウンCIAラット、「siRNA RasGRP4」はRasGRP4ノックダウンCIAラット、「siRNA RasGRP2+4」はRasGRP2/RasGRP4ダブルノックダウンCIAラット、の結果を表す。また、図16中、矢印箇所は足関節を示し、矢頭は増殖性滑膜組織を示す。
この結果、RasGRP2ノックダウンCIAラットとRasGRP4ノックダウンCIAラットは、関節炎スコア、足関節の直径、骨びらんスコア、及びパンヌススコアのいずれも、コントロールCIAラットよりも明らかに小さく抑えられていた。関節炎スコア、足関節の直径、骨びらんスコア、及びパンヌススコアへの改善効果は、いずれもRasGRP2ノックダウンCIAラットよりもRasGRP4ノックダウンCIAラットのほうが大きな効果を示した。また、骨びらん及びパンヌス形成に対しては、投与したsiRNAはそれぞれ半量でしかなかったにもかかわらず、RasGRP2/RasGRP4ダブルノックダウンCIAラットは、RasGRP4ノックダウンCIAラットよりも高い改善効果を示した。これらの結果から、RasGRP2とRasGRP4の両者の機能を抑制することにより、滑膜組織の浸潤等の関節炎の諸症状への治療効果に対して相乗効果を示すことが確認された。

Claims (5)

  1. RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質を有効成分とし、
    前記RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質が、RNA干渉により、RasGRP2遺伝子の発現自体を抑制させる作用を有する物質であり、
    関節リウマチの治療又は予防に用いられる、医薬用組成物。
  2. 前記RasGRP2遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質が、RasGRP2遺伝子を標的とするsiRNAである、請求項1に記載の医薬用組成物。
  3. 滑膜組織の浸潤を抑制する、請求項1又は2に記載の医薬用組成物。
  4. さらに、RasGRP4遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質を有効成分とし、
    前記RasGRP4遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質が、RNA干渉により、RasGRP4遺伝子の発現自体を抑制させる作用を有する物質である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
  5. 前記RasGRP遺伝子の機能を抑制又は阻害する物質が、RasGRP遺伝子を標的とするsiRNAである、請求項に記載の医薬用組成物。
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Arthritis and Rheumatology,2015年,67,396-407
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