JP7162208B2 - 含水比マッピング方法及び含水比マッピング装置 - Google Patents
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Description
特に、地震や異常気象,老朽化等による地中や構造物の異常が増加しており、例えばコンクリート内部の劣化状況や道路路面下などの空洞調査を正確・迅速に行うことが急務となっている。
このため、地中探査技術の重要性は益々高まっている。
とりわけ近年は、地中の埋設管の老朽化等に伴う漏水件数の増加などが見込まれることから、埋設管等の特定とその周囲の含水比の測定などの地中探査技術の重要性が高まっている。
このような地中の含水比の測定を目的として、例えば特許文献1には、地中の比誘電率を測定する方法が提案されている。
この特許文献1で提案されている方法は、土壌に埋設された深さが既知である対象物が存在する地中に向かって、地面に配置された送信アンテナから地中レーダの電磁波を放射し、送信アンテナと一定のアンテナ間隔で地面に配置された受信アンテナで電磁波の反射波を受信し、対象物からの反射波の到達時間を判断して、到達時間の判断の結果と対象物の深さとアンテナ間隔とを使用して土壌の比誘電率を算出するというものである。
また、特許文献1で用いられているような地中レーダを、例えば手押し型や牽引型の移動可能な構成とすることも考えられるが、道路などの広範囲な地中探査を行うことは、非常に手間と時間がかかり、実際の地中探査に適用することは困難乃至不可能であった。
そして、一次調査で得られた探査データの解析の結果、地中に例えば空洞が生じていると思われる箇所があれば、その周辺領域を詳細に調査し、空洞の位置や大きさ,規模等を正確に把握するための二次調査が行われ、陥没の危険性等が判定・評価される。その後、道路管理者等によって、空洞の補修等の必要な措置が取られることになる。
このため、特許文献1で提案されているような測定方法により土壌の比誘電率に基づく含水比が求められたとしても、地上との位置特定が正確に行われなければ、地中探査のデータとして活用することは困難であった。
このため、地中探査データと地表面の位置を正確に精度良く対応させるためには、GPSを用いた位置情報の取得・生成では不十分であり、特に、空洞や埋設管等の位置をセンチメートルの範囲で特定する必要のある地中探査技術では、より正確で信頼性の高い位置情報の取得が望まれていた。
これによって、地中探査データと地表面の情報を一元化された単一の情報として生成・表示させることが可能となり、例えば、地中の土壌の含水比の分布を正確に示すマッピング情報を、地表面を示す正確なオルソ画像とともに一体的に表示・出力させることが可能となる。
したがって、本発明によれば、従来にはない正確・高精度な地中探査を実現することができる。
ここで、以下に示す本発明の含水比マッピング方法及び含水比マッピング装置における地中探査データ及び地上三次元映像の生成・出力・一元化処理・カメラベクトル演算等は、プログラム(ソフトウェア)の命令によりコンピュータで実行される処理,手段,機能によって実現される。プログラムは、コンピュータの各構成要素に指令を送り、以下に示す本発明に係る所定の処理や機能等を行わせることができる。
すなわち、本発明における各処理や手段,機能は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段によって実現される。
また、プログラムは、記録媒体を介さず、通信回線を通じて直接にコンピュータにロードし実行することもできる。また、本発明に係る含水比マッピング装置に備えられる、単一の情報処理装置(例えば1台のパーソナルコンピュータ等)で構成することもでき、複数の情報処理装置(例えば複数台のコンピュータ群等)で構成することもできる。
図1に、本発明の一実施形態に係る含水比マッピング装置1の構成を示す。
同図に示す本発明の一実施形態に係る含水比マッピング装置1は、探査車両10と、探査車両10に搭載される地中レーダ20及び全方位カメラ30を備える構成となっている。
そして、図1に示すように、探査車両10が探査対象となる任意の路面を走行しながら、地中レーダ20によって路面下の地中探査データを取得・生成するとともに、全方位カメラ30によって路面上の地上三次元映像を取得・生成し、その後、地中探査データと地上三次元映像とを、一元化された単一の一元化情報(後述する図14参照)として生成・出力するようになっている。
以下、含水比マッピング装置1の各構成を具体的に説明する。
探査車両10は、地中探査の対象・範囲となる道路や地面などの路面を走行可能な車両であり、例えば乗用車やトラック,ライトバン,各種作業車,軽自動車などの自動車で構成される。なお、探査対象・目的となる所望の路面を走行可能である限り、探査車両10の具体的な構成は特に限定されるものではない。
図2に、本実施形態の探査車両10の動作イメージを模式的に示す。
同図(a)に示すように、探査車両10には、屋根上面に車載装備としてのGPS(高精度GNSS)11が取り付けられ、車両底面に地中レーダ20のアンテナ22が配置され、また、屋根後方に全方位カメラ30が配置されている。
また、探査車両10の車内には、地中レーダ20のレーダ本体21が配置されるとともに、CV演算部40,一元化処理部50が備えられる。なお、レーダ本体21,CV演算部40及び一元化処理部50は、具体的には所定のソフトウェア(プログラム)が実装されたPCなどの情報処理装置で構成される。
探査車両10に備えられる地中レーダ20は、探査車両10が走行する路面下の地中探査データを取得・生成するための地中探査手段(センサ)であり、図2に示すように、探査車両10の車内に搭載されるレーダ本体21と、探査車両10の底面に配置されるアンテナ22とで構成される。
本実施形態に係る地中レーダ20は、地中の物理的境界面で電磁波が反射する現象を利用して地中の土壌の含水比を測定し、また、地中の空洞や埋設管等の存在を探査・検出する物理探査レーダである。
このような地中レーダ20を備えることによって、本実施形態では、レーダ本体21の制御によってアンテナ22から電磁波を送受信させながら探査車両10を所定速度(例えば最大時速60km)で走行させることで、地中の所定深度(例えば地下2m)までの含水比の分布及び含水比境界面を示す三次元情報を、簡単にマッピングすることが可能となっている(後述する図4参照)。
ここで、従来技術の手押し型のセンサ等で使用されていた地中レーダは1チャンネル(シングルチャンネル)であった。シングルチャンネルは、電磁波の発信と受信のセンサが一対となっているアンテナ方式である。
本実施形態に係る地中レーダ20は、マルチチャンネルアンテナが、例えば7.5cmピッチで高密度に配置されており、地中の含水比の分布を高精細な三次元情報として取得できるようになっている。
また、マルチチャンネル型の地中レーダ20は、送信アンテナと受信アンテナのオフセット距離を一定(同一)にした複数の送受信アンテナ組を設定することができ、COG(Common Offset Gather)法によるアンテナ配置も設定することができる。これによって、CMP法による測定結果を、COG法による測定と組み合わせることができ、より精度の高い地中探査・含水比測定が可能となる。
このように地中レーダ20のアンテナ22を探査車両10の底面に配置することにより、図2(b)に示すように、探査対象となる路面を複数回(例えば同じ道路を2回)、車幅方向にずらして走行させることで、アンテナ22の電磁波の照射範囲(照射幅)を超える道路であっても、路面の全幅にわたる地中探査データを取得することができる。図2(b)では、探査車両10を同一路面で2回走行させることにより、7.5cm間隔の地中探査データを、例えば道路幅3.0mの全範囲で取得できる場合を示している。
エア型は、未舗装地帯の地雷撤去での使用を想定しており、アンテナを地表より約20~30cm浮かせて測定を行うようになっている。このため、車両の前方に大きく突出するように取り付けたり、車両でけん引するなど、車両への装着等は簡単にできるが、アンテナと地表の距離が大きいことから、電磁波が減衰して探査深度が浅くなるという欠点がある。
このように、従来のエア型は、地表から20~30cm浮かせる必要があるアンテナ特性と、アンテナ自体の高さも約20cmと厚さがあるため、アンテナを直接車両に配置する車載型(グランド型)としては使用できなかった。
このため、電磁波が減衰しにくく、探査深度はエア型と比較して約1.5~2倍程度深くなる。
また、グランド型は、可能な限りアンテナを地表に近接させることができ、また、車両に直接配置するために、アンテナ高さも10cm程度と薄いため、地中探査における測定の安定性及び安全性に優れる。
具体的には、上述したノルウェーの3d-Radar社製のグランド型アンテナを採用し、地中レーダ20のアンテナ22を、探査車両10の前後輪の車軸間(ホイルベース間)に取り付けるようにしている。
3d-Radar社のグランド型アンテナは、従来製品のエア型アンテナや他社のグランド型アンテナに比べて、アンテナ高さが半分以上薄く、自動車等の前後輪車軸間の最も安定した位置に設置することが可能となる。
・探査車両10の車両全長を短くすることにより内輪差を小さくできる。
・探査車両10の車両全長を短くすることにより小回りがきく。
・けん引型のように後方を気にする必要がない。
・けん引型に比べて後進が容易になる。
・後輪後方設置型よりアンテナが路面に対して一定の高さになり、安定したデータが取得できる。
なお、探査車両10のホイルベース間に配置されるアンテナ22の位置は、探査車両10の前輪と後輪の間、あるいは複数の車輪の間において、車長方向の最適な位置に配置される。すなわち、探査車両10の車長や前後輪の配置,レーダの出力や特性などに応じて、探査車両10の車長方向(車両進行方向の前後)の適切・最適な位置にアンテナ22を配置する。
したがって、アンテナ22は、探査車両10の車長方向に移動可能・調整可能に構成されることが好ましい。
具体的には、図3(a),(b)に示すように、地中レーダ20のアンテナ22を、探査車両10の車幅方向の左右にスライド移動できるようになっており、車幅方向の所望の位置で固定可能となっている。これによって、探査対象となる路面の大きさ(道路幅)に応じて、アンテナ22を移動・調整することができ、様々な大きさ(幅)の路面に対応することができる。
このように、地中レーダ20のアンテナ22を探査車両10のホイルベース間において車幅方向に移動可能とすることで、アンテナ幅(例えば1.8m)のアンテナ1台を探査車両の左右寄りにスライドさせて複数回(例えば2回)走行することで、アンテナ幅を超える範囲(例えば最大3.5m)の幅でデータを取得することができる(図3参照)。
また、図3に示すように、探査車両10の側面左右への飛び出しは、片側15cm程度とすることで、例えば従来のエア型アンテナで使用されている2.5m幅のアンテナに比べて、路側の障害物や第三者等との接触事故の危険性を抑制乃至回避することできる。
また、アンテナ22の移動構造も、スライド構造や、ボルト等による固定位置を複数設ける段階構造など、アンテナ22を車幅方向に移動できる限り、特に限定されるものではない。
また、アンテナ22は、探査車両10の底面に露出した剥き出しの状態で配置することもできるが、異物の跳ね返りや衝突、地面や障害物との接触等による破損などに備えて、アンテナ22の全部又は一部をカバー等で覆うこともできる。例えばアンテナ22の電磁波の送受信に影響のないプラスチック製のカバーを備えることができる。
以上のような本実施形態に係る地中レーダ20で取得・生成される地中探査データによる含水比測定と含水比の境界面探査の概要について、図4を参照して説明する。
本実施形態の地中レーダ20によれば、まず、図4(a)に示すように、探査車両10が道路などの路面に沿って走行しつつ地中レーダ20によって地中探査データを取得することにより、走行方向と地中深度方向(縦方向)の二次元に広がる含水比の測定とそれに基づく含水比境界線の探査が可能となる。
そして、このような走行方向と地中深度方向(図4(a))、地中深度方向と車幅方向(図4(b))の二つの測定データを合成することにより、図4(c)に示すように、三次元に広がる含水比の分布と含水比境界面(マップ)の探査・生成が可能となる。
また、このような含水比の分布/境界面を示す三次元情報は、画像生成することで、地中の三次元画像情報として出力することができる。
なお、以上のような地中探査データに基づく含水比測定情報や含水比の分布/境界面情報の生成・出力は、地中レーダ20のレーダ本体21や、レーダ本体21に接続されるPC等によって行われる。
次に、以上のような含水比測定と含水比境界面の探査を行うための、本実施形態に係る含水比マッピング方法の詳細について、図5~図11を参照しつつ説明する。
まず、地中の土壌の含水比を測定する原理について説明する。
土壌中の電磁場伝搬速度vは、以下の式1となる。
式1中、土壌の比誘電率εr、真空中の電磁場伝搬速度cとする。
[式1]
上記式1を変形すると、以下の式2となる。
この式2より、電磁波速度vから比誘電率εrを計算することができる。
[式2]
そして、各送受信アンテナ組の異なるオフセット距離xについて、地中レーダ20の反射波の到達時間τを測定することにより(後述する図7参照)、以下の式3に示すように、地表面から地中の物理的境界面(埋設物や含水比境界面等)までの深さdと比誘電率εr(上記式2)を求めることができる。
[式3]
本実施形態の含水比測定方法によれば、深度が未知の土壌について、含水比を求めることが可能となる。
以上のような含水比の測定原理に基づいて、以下に具体的な含水比マッピング方法の各工程について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る含水比マッピング方法の各工程(ステップ1~ステップ7)を示すフローチャートである。
同図に示す含水比マッピング方法は、地中レーダ20において設定・構成される送信アンテナと受信アンテナが同一の中点と異なるオフセット距離を有する複数の送受信アンテナ組を用いて地中の含水比を測定し、含水比分布のマッピングを行う方法である。
なお、以下に示す含水比マッピング方法の各工程は、地中レーダ20のレーダ本体21や、レーダ本体21に接続されるPC等によって処理・実行される。
まず、図5に示すステップ1により、地中レーダ20の反射波が取得される。
具体的には、地中レーダ20を探査車両10の移動に伴って地表面に沿って移動させながら、アンテナ22から地中へ向けて電磁波を放射することにより、複数の各送受信アンテナ組によって得られる複数の反射波を取得する(本発明に係るレーダ反射波取得部)。
地中レーダ20の送信アンテナが、電磁波を地中へ向けて放射すると、電気的性質が地層境界で不連続に変わるため、放射された電磁波は地層境界で反射をする。
地中レーダ20の受信アンテナでは、地中で反射された電磁波(反射波)が受信されるとともに、送信アンテナからの電磁波が直接波として受信される。
ここで、地中レーダ20の複数の送受信アンテナ組におけるオフセット距離の設定について、図6を参照しつつ説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る含水比マッピング装置を構成する送受信アンテナの中点・オフセット距離の関係を模式的に示す図であり、(a)は送受信アンテナの断面正面図、(b)は中点と複数の送受信アンテナ組の位置を示す説明図である。
本実施形態の含水比マッピング方法では、CMP法を用いている。
CMP法では、図6(a)に示すように、地上の接地面(実際には探査車両10の底面)に、送信アンテナと受信アンテナが、所定のオフセット距離xだけ離間するようにして配置される。同図は、横断方向からの模式図を示しており、地中の層1と層2は異なる比誘電率を持つ一様な層である。
図6(a)の縦線丸印と横線丸印は、上面(地表面)からみた送信アンテナと受信アンテナの配置位置であり、白抜丸印は送受信アンテナの中点の位置を表現したものである。
すなわち、図6(a)において、左から「送信アンテナ・中点・受信アンテナ」を表しており、送信アンテナと受信アンテナの距離(間隔)が「オフセット距離x」として定義されている。
図6(b)の例では、送受信アンテナの組が、「A1・B1」の組,「A2・B2」の組,「A3・B3」の組の、異なる3つのオフセット距離で測定が行われる場合を示している。
なお、異なるオフセット距離の設定数は、図6に示す3つの場合に限定されず、地中レーダ20の構造(アンテナ数・チャンネル数)や大きさ,規模などに応じて、適宜任意の数を設定することができ、オフセット距離の設定数が多くなれば、より高精度な地中探査・含水比測定が行えるようになる。
次に、図5に示すステップ2により、直接波フィッティング処理が行われる。
具体的には、上記ステップ1で取得された反射波(電磁波)について、地中レーダ20の複数の各送受信アンテナ組において、送信アンテナから受信アンテナへの到達時間が最短の電磁波(送信アンテナから受信アンテナに最初に到達する電磁波)を直接波として、その直接波の到達時刻が抽出される(本発明に係る直接波フィッティング部)。
探査車両10の移動に伴い、地中レーダ20では、中点を同一とした送信アンテナと受信アンテナの複数組によって、複数の測定が行われる。
各測定において、受信アンテナへの到達時間が一番早い振幅の大きな波を直接波とみなして(図7参照)、直接波の到達時間の抽出が行われる。この直接波の到達時刻の抽出が、複数の各送信アンテナと受信アンテナの測定に対してそれぞれ行われる。
なお、上記手法以外にも、直接波の到達時間は、例えば、ステップ周波数連続波による周波数毎の強度と位相の測定から直接波の到達時間を求めることもできる。
次に、図5に示すステップ3により、ゼロ時間補正処理が行われる。
具体的には、上記ステップ2で求められた直接波の到達時刻から、当該直接波の地表面における到達時刻を時刻ゼロとする算出・補正が行われる(本発明に係るゼロ時間補正部)。
地中レーダ20は、探査車両10の底面に配置されており(図2(a)参照)、地表面から例えば約3~10cm上方に位置している。
このため、直接波の到達時刻を、地表面の位置における到達時刻が時刻ゼロとなるように校正・補正を行う。
図7は、オフセット距離が異なる複数の送受信アンテナ組によって取得される直接波・反射波の到達時間とオフセット距離の関係を示すグラフである。
図7のグラフでは、横軸がオフセット距離、縦軸が時間を表している。
同図では、縦軸方向の複数の各点線が、各オフセット距離における測定と対応しており、それぞれのオフセット距離の振幅強度の時間変化を示している。
なお、図7では、説明の煩雑さなくして理解を容易にするため、直接波と反射波のみを示し、多重反射成分などは割愛している。
直接波の到達時間は、以下の式4で与えられる。各オフセット距離x1,x2・・・のときに、対応する時刻t1,t2・・・が測定結果として得られる。
受信アンテナで受信された信号から、直接波の到達時間を抽出する。抽出された時刻から、地表面の時刻をゼロとする時間を「時刻t0」とする校正を行う。
[式4]
次に、ステップ4により、反射波フィッティング処理が行われる。
具体的には、地中レーダ20の複数の各送受信アンテナ組において、送信アンテナから受信アンテナへ直接波の次に到達する電磁波を反射波として、その反射波の到達時刻が抽出される(本発明に係る反射波フィッティング部)。
直接波の次に来る反射は、地層境界からの反射と考えることができ、その到達時刻を反射波の到達時刻として抽出する。
例えば、到達時刻が抽出された反射波の近傍について、COG法で測定されたデータを使用することにより、対応する中点で得られた反射波が、埋設物による反射やノイズではないことをCOG法で得られた反射映像から判断することができる。
次に、ステップ5により、比誘電率・深度計算処理が行われる。
具体的には、上記ステップ4で求められた反射波の到達時刻に基づいて、地中の比誘電率が算出される(本発明に係る比誘電率算出部)。
上述した式1~式3に示したように、反射波到達時間を、比誘電率εrと深度d(図6(a)参照)の2つのパラメータとして持つ双曲線モデルで回帰解析を行うことにより、比誘電率と深度を決定することができる。
上述のとおり、反射波の到達時刻は、境界面が平面である場合には、上記式5のようになる。
そして、式5により抽出された反射波の到達時刻から、層1(図6(a)参照)の比誘電率εrと深度dを、最小自乗誤差の最適解をLevenberg-Marquardt法により計算することができる。
得られた比誘電率εrは、Toppらによる比誘電率と含水比の関係式である以下の式6から、層1の含水比θwを計算することができる。
[式6]
さらに、ステップ6により、体積含水率計算処理が行われる。
具体的には、上記ステップ5で求められた比誘電率に基づいて、地中の含水比が算出される(本発明に係る含水比算出部)。
上記ステップ1~5により得られた比誘電率は、地層境界までの含水比と対応している。
したがって、比誘電率に基づいて、当該測定点における地層境界までの地中の含水比(体積含水率)を求めることができる。
また、既知の土質の場合には、対応した比誘電率と含水比関係を適応して含水比を調べることができる。
最後に、ステップ7により、体積含水分布図作成処理が行われる。
具体的には、上記ステップ1~6で求められた複数の各送受信アンテナ組に対応する複数の含水比に基づいて、含水比分布図が生成される(本発明に係る含水比分布図生成部)。
上記ステップ1~6が繰り返し実行されることにより、同一中点を持つ複数の送受信アンテナ組の測定によって(後述する図6,図9参照)、その中点位置における含水比が得られる。
また、送受信アンテナ組の中点の位置を異ならせて(後述する図8参照)、他の中点の場合についても上記ステップ1~6を繰り返し実行する。
そして、探査車両10が走行されることにより、車両進行方向における複数の測定点(図4(a)参照)と、車両幅方向における複数の測定点(図4(b)参照)での測定が行われ、さらに、複数の異なる中点の位置情報を組み合わせることができる。
これによって、複数走行による測定結果を重ね合わせ含水比分布図(図4(c)参照)が得られる。
上述したステップ1~7の含水比マッピング方法においては、説明の便宜上、複数の送受信アンテナ組における中点を一つに固定した場合について説明している。
但し、同じ送受信アンテナ組について、中点の位置を変えることで、異なる位置の含水比を求めることができる。
図8に、中点の位置を複数異ならせた場合の、中点と複数の送受信アンテナ組の位置を示す。
また、図9に、探査車両(地中レーダ)の移動に伴って移動する中点と複数の送受信アンテナ組の位置を示す。
図8では、オフセット距離の方向に移動させた3組の中点をとる場合について示している。「A1・B1」の組は「中点C1」の測定,「A2・B2」の組は「中点C2」の測定,「A3・B3」の組は「中点C3」の測定、となり、異なる3つの測定点(中点)についての測定が行えるようになる。
さらに、送受信アンテナのオフセット距離の方向は、図9(a)に示すように、各中点で常に同一(一直線)である場合に限られず、異なる方向であっても良い。
具体的には、図9(b)に示すように、探査車両10は道路などの路面のルートや形状に応じてカーブしながら走行することも一般的であり、探査車両10の底面に配置された地中レーダ20の送受信アンテナは、そのオフセット距離の方向も、それに応じて変化することになる。
図10(a)は、探査車両が同じ路面を複数回(例えば2回)異なるルートで移動した場合を示している。
図10(b)は、図10(a)の図から中点のみを代表して表示させた場合である。
これらの図からも明らかなように、各中点について含水比を求めることができ、それぞれの中点の位置情報と組み合わせることで、含水比分布を示すマッピング表示が可能となる。
図11(a)は、図10(b)に対応する中点のみを表示させた場合であり、図11(b)はその中点とともに含水比の分布を等高線状に示した場合である。
また、図11(c)は、図11(b)から中点を取り除いて等高線のみを示した場合である。なお、図11(b),(c)中で、等高線の色付き部分は含水比が○○~△△の値の領域、また、色の無い白色の領域は含水比が○○以下の領域、というように、含水比の値に応じた色分け表示をすることができる。
そして、このように生成・出力される含水比マッピングを示す地中探査データは、後述する地上三次元映像とともに、一元化された情報として生成・表示等することができるようになる(後述する図14参照)。
実際には、各層で異なる角度で電磁波の伝搬方向が変化するが、理解を容易にするため、各層が同じ角度で伝搬すると近似して扱うことととし、また、境界面は水平、各層の比誘電率は一様と想定して、以下に説明する。
複数の境界面がある場合には、複数の反射波が測定される。
この場合、最初に到達する信号は、多重反射を無視すると、地表に近い境界面からの反射に対応する。そこで、各オフセット距離に対して、電磁波反射の到達時間を測定し、各反射波の時刻を抽出して、回帰分析を行う。
これによって、各層の比誘電率と深度が求められ、その比誘電率の値を用いて、比誘電率-含水比関係から、含水比を計算により求めることができる。
全方位カメラ30は、探査車両10の例えば屋根上面などに配置され、探査車両10が走行する路面上の地上三次元映像を生成する地上映像生成手段である。
具体的には、全方位カメラ30は、走行する探査車両10の周囲を360°撮影できる1台又は複数台のビデオカメラであり、探査車両10の走行に伴って、上述した地中レーダ20が取得する地中データに対応する、地上の三次元映像(全周映像)を撮像できるようになっている。
全方位カメラ30は、周囲360°の全周映像を撮像できるため、例えば図12(a)に示すように、路面を走行する探査車両10を中心とした半径約5mの地上の状態・風景が撮像される。同図の例では、全幅員14.55m,有効幅員13.75mの道路や橋梁等で、片側車線の中央を走行する探査車両10を中心とした車道部3.5m,路肩0.5m,側帯0.5m,歩道部2.0m,分離帯0.75,地覆0.4mの範囲について、360°の全周映像が撮像・取得できることが分かる。
また、図12(b)に示すように、路面を走行する探査車両10を中心とした半径約5~25mの範囲で地上の状態・風景が撮像され、路面横にある斜面(法面)についても360°の全周映像が撮像・取得できることが分かる。
図12(c)は、全方位カメラ30で撮像された360°の全周映像の出力例である。
一般に、探査車両を構成する自動車等に搭載されているGPSや4方向カメラによる位置情報は、GPSの受信状況により例えば0.5m~数m程度の誤差が出る。このため、それだけでは任意の異常箇所等の位置特定を行うことは困難である。また、トンネルの中や高架橋の下ではGPSが受信できないので、位置情報は車両に搭載された4方向カメラの映像のみとなり、任意の箇所の位置特定は更に困難となる。
そこで、本実施形態では、全方位カメラ30で取得された360°全周映像に基づいて、CV演算部40において所定のカメラベクトル演算を行うことで、GPSに依ることなく、また、現地での測量・計測等を行うことなく、高精度な三次元地上マッピングを行うようになっている。
CV演算部40は、上述した全方位カメラ30で撮像された地上三次元映像の画像データから、高精度の位置情報を演算により算出・生成することができるカメラベクトル演算手段である。
具体的には、本実施形態に係るCV演算部40は、所定数の特徴点を自動抽出する特徴点抽出部41と、抽出された特徴点について、動画映像の各フレーム画像内で自動追跡してフレーム画像間での対応関係を求める特徴点対応処理部42と、対応関係が求められた特徴点の三次元位置座標を求め、当該三次元位置座標から、各フレーム画像に対応したカメラの三次元位置座標及び三次元回転座標からなるカメラベクトルを求めるカメラベクトル演算部43などの手段で構成される(後述する図15参照)。
カメラベクトル演算は、本出願人に係る特許第4446041号公報等で開示している技術であり、360°全周映像の中に特徴点を自動抽出し、それを隣接する複数フレームにトラッキングし、カメラ移動のベースとトラッキング点で校正する三角形を構成し、そのトラッキングデータを解析することで、特徴点の三次元座標と、カメラ位置と姿勢を持つ全周CV(カメラベクトル)映像を取得するものである。
これによって、任意の全周映像について、CV値を生成・付与することができ、このCV値に基づいて、全周映像と、上述した地中レーダ20で取得される地中三次元情報とを一元化する三次元情報一元化処理が実行される。
このCV演算部40におけるCV演算の具体的な詳細内容については、図15~17を参照しつつ後述する。
一元化処理部50は、地中レーダ20で生成される地中三次元情報と、全方位カメラ30で生成される地上三次元映像を、所定のデータ一元化処理により、地中から地上空間まで一元化された三次元情報として生成する三次元情報一元化処理手段である。
具体的には、本実施形態に係る一元化処理部50は、上記のCV演算部40で生成されるカメラベクトルと、地中レーダ20で取得された地中三次元情報が有する位置座標情報に基づいて、地中三次元情報と地上三次元映像を一元化する。
同図に示すように、本実施形態の一元化処理では、まず、地中レーダ20で取得された地中探査データ(ステップ1)と、全方位カメラ30で取得された地上の360°全周映像(ステップ2)が、一元化処理部50に入力される。
このとき、地中レーダ20で取得された地中探査データには、探査車両10に搭載されたGPS(高精度GNSS)11で取得される位置情報や時間情報などに基づく位置情報が含まれている。
全方位カメラ30の360°全周映像には、探査車両10に搭載されたGPS(高精度GNSS)11で取得される位置情報や時間情報などに基づく位置情報が含まれ、また、上述したCV演算部40において演算処理され(ステップ3)、三次元一座標となるCV値が付与されている。
これにより、地中探査データは、位置座標としてCV値が与えられた高精度マッピングされた地中三次元情報となる(ステップ5)。
また、360°全周映像は、オルソ画像処理されて、CV値が付与された高精度のオルソ画像からなる地上三次元映像として生成される(ステップ6)。
その後、対応するCV値に基づいて、地中三次元情報とオルソ画像からなる地上三次元映像が一元化処理され、地中地上一元化データとして生成・出力される(ステップ7)。
また、オルソ画像は、真上から見たような歪のない画像に変換し、位置情報を付与したもので、路面のオルソ画像は三次元座標データが付加された全方位カメラの映像から生成することができる。このようなオルソ画像は、平面地図と同様の精度を持つため、三次元地中レーダ結果を表示するのに適した画像となる。
図14(a)及び(b)は、地中レーダ20により得られた含水比の分布を等高線状に示した情報と、この地下情報に対応する路面等の地上情報を、CV演算部40で求められた三次元位置情報から生成した路面のオルソ画像に一元化した出力結果である。これによって、含水比の分布と路面の状況等を、画像上で対比して視認・解析等することができる。
また、このような対比情報により、路面の状態・状況(例えば、ひび割れや陥没,腐食等)の位置と地中の含水比分布の位置が明確となり、次回調査や補修工事後の時系列のデータ変化を視覚的に比較し、データベース化することができる。また、異常箇所のデータベース化は、例えば補修計画等の維持管理に役立つ有用な情報となる。
このような本実施形態に係る一元化処理画像は、例えばPC等の情報処理装置で任意に加工・編集したり、表示装置(ディスプレイ)で表示させることができ、また、プリンタ等の印刷装置で印刷することができる。
(1)高精度三次元座標が得られるため、二次元地中レーダによる位置特定が不要になる。
(2)位置補正装置により、トンネルや高架橋のGPSが受信できない場所でも高精度の三次元座標を得ることができる。
(3)効率よく地上の高精度三次元座標が得られるので、現地で構造物の形状や道路周辺物などを計測する必要がない。
(4)三次元地中レーダの地下情報と、全方位カメラ30及びCV演算部40の地上情報のデータベース化で一元管理ができる。
(5)高精度のオルソ画像による視覚情報から、次回調査や補修工事後との比較といった情報の時系列管理ができる。
(6)オルソ画像は平面地図と同様の精度を持ちながら、視覚的に地図より優れているので、発注者に効果的な成果が提供できる。
(7)調査の効率化、一元化に及び映像から簡単に高精度の三次元座標情報が得られることから、災害時の供給道路の安全確保などの緊急時に迅速な対応ができる。
次に、上述した本実施形態に係る地中探査装置のCV演算部40で実行されるCV演算の具体的な内容について、図15~図25を参照しつつ説明する。
上記のとおり、CV演算とはCV値を求める方法の一つであり、CV演算により求められた結果をCV値,CVデータと呼ぶ。CVという表記は、カメラベクトル:CameraVectorの略記であり、カメラベクトル(CV)とは計測等のために映像を取得するビデオカメラ等のカメラの三次元位置と3軸回転姿勢を示す値である。
CV演算は、動画像(ビデオ映像)を取得し、その映像内の特徴点を検出し、それを隣接する複数のフレームに追跡し、カメラ位置と特徴点の追跡軌跡とが作る三角形を画像内に数多く生成し、その三角形を解析することで、カメラの三次元位置とカメラの3軸回転姿勢を求めるものである。
また、動画像から演算で求められるCV値は、動画像の各フレームに対応して、三次元のカメラ位置と三次元のカメラ姿勢とが同時に求まる。しかも、原理的には一台のカメラで、映像と対応してCV値が求められる特性は、CV演算でしか実現し得ない、優れた特徴である。
但し、CV値は、例えば、他の方法による計測手段(GPSとジャイロ、又はIMU等)より求めることもできる。従って、CV値の取得はCV演算による場合には限られない。
なお、GPSとジャイロ、又はIMU等によりCV値を取得する場合には、動画像の各フレームと、その三次元的カメラ位置と三次元的カメラ姿勢とを同時に取得するためには画像フレームと計測サンプリング時刻を高精度で、かつ完全に同期させる必要がある。
また、CVデータを画像から取得する場合は、取得されたデータは相対値であり、絶対値に変換するには既知の地点でのキャリブレーションが必要であるが、CV値と同時に取得される特徴点三次元位置座標と姿勢により、又は新たに画像内に指定して取得した特徴点により、画像内の任意の対象物との位置関係を計測することができるという、他の方法では実現困難な優れた特性を備える。
また、画像に対応したCV値が求まるので、画像との相性が良く、画像から取得したCV値である限り、その画像内では矛盾が無いので、画像以外から求めるCV値と比較して、画像から直接にカメラ位置とその3軸回転姿勢を求めることができるCV演算は画像内計測や画像内測量に好適となる。
そして、本発明では、このCV演算により得られたCV値データに基づいて、上述した地上オルソ画像の生成、地中三次元データと地上オルソ画像の一元化処理画像を生成するものである。
CV演算部40は、上述した全方位カメラ30で撮像されるビデオ映像について所定のCV演算処理を行うことでCV値を求めるようになっており、具体的には、図15に示すように、特徴点抽出部41と、特徴点対応処理部42と、カメラベクトル演算部43と、誤差最小化部44と、三次元情報追跡部45と、高精度カメラベクトル演算部46とを備えている。
また、映像は、一般には予め記録した動画映像を使うことになるが、自動車等の移動体の移動に合わせてリアルタイムに取り込んだ映像を使用することも勿論可能である。
全周映像の平面展開とは、全周映像を、通常の画像として遠近法的に表現するものである。ここで、「遠近法」と呼称するのは、全周画像のそのものはメルカトール図法や球面投影図法のように、遠近法とは異なる方法で表示されているので(図16参照)、これを例えば等距離図法のように平面展開表示することで、通常の遠近法映像に変換表示できるからである。
なお、探査車両10には、その位置座標を取得する目的で、例えば、絶対座標を取得するGPS機器単独やIMU機器を付加したもの等により構成した位置計測機器等を備えることができる。
また、探査車両10に搭載される全方位カメラ30としては、広範囲映像を撮影,取得するカメラであればどのような構成であってもよく、例えば、広角レンズや魚眼レンズ付きカメラ、移動カメラ、固定カメラ、複数のカメラを固定したカメラ、360度周囲に回転可能なカメラ等がある。本実施形態では、上述したように、探査車両10に一台又は複数台のカメラが一体的に固定され、探査車両10の移動に伴って広範囲映像を撮影する全方位カメラ30を使用している。
ここで、全方位カメラ30は、カメラの全周映像を直接取得できるビデオカメラであるが、カメラの全周囲の半分以上を映像として取得できれば全周映像として使用できる。
また、画角が制限された通常のカメラの場合でも、CV演算の精度としては低下するが、全周映像の一部分として取り扱うことが可能である。
仮想球面に貼り付けられた球面画像データは、仮想球面に貼り付けた状態の球面画像(360度画像)データとして保存・出力される。仮想球面は、広範囲映像を取得するカメラ部を中心点とした任意の球面状に設定することができる。
図16(a)は球面画像が貼り付けられる仮想球面の外観イメージであり、同図(b)は仮想球面に貼り付けられた球面画像の一例である。また、同図(c)は、(b)の球面画像をメルカトール図法に従って平面展開した画像例を示す。
CV演算部40では、まず、特徴点抽出部41が、全方位カメラ30で撮影されて一時記録された動画像データの中から、十分な数の特徴点(基準点)を自動抽出する。
特徴点対応処理部42は、自動抽出された特徴点を、各フレーム間で各フレーム画像内において自動的に追跡することで、その対応関係を自動的に求める。
カメラベクトル演算部43は、対応関係が求められた特徴点の三次元位置座標から各フレーム画像に対応したカメラベクトルを演算で自動的に求める。
誤差最小化部44は、複数のカメラ位置の重複演算により、各カメラベクトルの解の分布が最小になるように統計処理し、誤差の最小化処理を施したカメラ位置方向を自動的に決定する。
高精度カメラベクトル演算部46は、三次元情報追跡部45で得られた追跡データに基づいて、カメラベクトル演算部43で得られるカメラベクトルより、さらに高精度なカメラベクトルを生成,出力する。
そして、以上のようにして得られたカメラベクトルが、上述した一元化処理部50に入力され、地上オルソ画像の生成、地中三次元データと地上オルソ画像の一元化処理に利用されることになる。
特徴点を充分に多くとることにより、カメラベクトル情報が重複することで、三地点の座標で構成される単位の三角形を、その十倍以上の多くの特徴点から求めることになり、重複する情報から誤差を最小化させて、より精度の高いカメラベクトルを求めることができる。
一般に、静止した三次元物体は、位置座標(X,Y,Z)と、それぞれの座標軸の回転角(θx,θy,θz)の六個の自由度を持つ。従って、カメラベクトルは、カメラの位置座標(X,Y,Z)とそれぞれの座標軸の回転角(θx,θy,θz)の六個の自由度のベクトルをいう。なお、カメラが移動する場合は、自由度に移動方向も入るが、これは上記の六個の自由度から微分して導き出すことができる。
このように、本実施形態のカメラベクトルの検出とは、カメラは各フレーム毎に六個の自由度の値をとり、各フレーム毎に異なる六個の係数を決定することである。
まず、上述した全方位カメラ30で取得された画像データは、間接に又は直接に、CV演算部40の特徴点抽出部41に入力され、特徴点抽出部41で、適切にサンプリングされたフレーム画像中に、特徴点となるべき点又は小領域画像が自動抽出され、特徴点対応処理部42で、複数のフレーム画像間で特徴点の対応関係が自動的に求められる。
具体的には、カメラベクトルの検出の基準となる、十分に必要な数以上の特徴点を求める。画像間の特徴点とその対応関係の一例を、図17~図19に示す。図中「+」が自動抽出された特徴点であり、複数のフレーム画像間で対応関係が自動追跡される(図19に示す対応点1~4参照)。
ここで、特徴点の抽出は、図20に示すように、各画像中に充分に多くの特徴点を指定,抽出することが望ましく(図20の○印参照)、例えば、100点程度の特徴点を抽出する。
本実施形態では、例えば、360度全周画像のエピポーラ幾何からエピポーラ方程式を解くことによりカメラ運動(カメラ位置とカメラ回転)を計算するようになっている。また、これを三角測量として説明すれば、方位と俯角仰角を測量する機器を車載して、対象となる複数の測量地点を、移動する測量機器により同一対象物を計測して取得したデータから、各対象地点の座標と測量機器の移動の軌跡を求める場合と同じである。
十分な数の特徴点を与えることにより、線形代数演算により最小自乗法による解としてt及びRを計算することができる。この演算を対応する複数フレームに適用し演算する。
カメラベクトル演算に用いる画像としては、原理的にはどのような画像でも良いが、全周映像は対象物の方向がそのまま緯度経度で表現されていることから、きわめて有利である。図19に示す360度全周画像のような広角レンズによる画像の方が特徴点を数多く選択し、複数フレームに渡って追跡し易くなる。また、狭角レンズによる映像あっても、同一対象物の周りを移動しながら様々な方向から撮影する場合には特徴点が視界から逃げないので有効である。
なお、図19は、CV演算部40における処理を理解し易くするために、1台又は複数台のカメラで撮影した画像を合成した360度全周囲の球面画像を地図図法でいうメルカトール図法で展開したものを示しているが、実際のCV演算では、必ずしもメルカトール図法による展開画像である必要はない。
さらに、誤差の分布が大きい特徴点については削除し、他の特徴点に基づいて再演算することで、各特徴点及びカメラ位置での演算の精度を上げるようにする。
このようにして、特徴点の位置とカメラベクトルを精度良く求めることができる。
図21では、図19の画像1,2に示した特徴点1~4の三次元座標と、画像1と画像2の間で移動するカメラベクトル(X,Y,Z)が示されている。
図22及び図23は、充分に多くの特徴点とフレーム画像により得られた特徴点の位置と移動するカメラの位置が示されている。同図中、グラフ中央に直線状に連続する○印がカメラ位置であり、その周囲に位置する○印が特徴点の位置と高さを示している。
具体的には、CV演算部40では、画像内には映像的に特徴がある特徴点を自動検出し、各フレーム画像内に特徴点の対応点を求める際に、カメラベクトル演算に用いるn番目とn+m番目の二つのフレーム画像FnとFn+mに着目して単位演算とし、nとmを適切に設定した単位演算を繰り返すことができる。
mはフレーム間隔であり、カメラから画像内の特徴点までの距離によって特徴点を複数段に分類し、カメラから特徴点までの距離が遠いほどmが大きくなるように設定し、カメラから特徴点までの距離が近いほどmが小さくなるように設定する。このようにするのは、カメラから特徴点までの距離が遠ければ遠いほど、画像間における位置の変化が少ないからである。
このようにして、フレーム画像FnとFn+mに着目した単位演算を行うことにより、m枚毎にサンプリングした各フレーム間(フレーム間は駒落ちしている)では、長時間かけて精密カメラベクトルを演算し、フレーム画像FnとFn+mの間のm枚のフレーム(最小単位フレーム)では、短時間処理で行える簡易演算とすることができる。
このようにして、画像の進行とともにnが連続的に進行することにより、同一特徴点について複数回演算されて得られる各カメラベクトルの誤差が最小になるようにスケール調整して統合し、最終のカメラベクトルを決定することができる。これにより、誤差のない高精度のカメラベクトルを求めつつ、簡易演算を組み合わせることにより、演算処理を高速化することができるようになる。
これによって、各特徴点及びカメラ位置の誤差が最小になるようにスケール調整する形で統合し、距離演算を行い、さらに、誤差の分布が大きい特徴点を削除し、必要に応じて他の特徴点について再演算することで、各特徴点及びカメラ位置での演算の精度を上げることができる。
カメラベクトルのリアルタイム処理は、目的の精度をとれる最低のフレーム数と、自動抽出した最低の特徴点数で演算を行い、カメラベクトルの概略値をリアルタイムで求め、表示し、次に、画像が蓄積するにつれて、フレーム数を増加させ、特徴点の数を増加させ、より精度の高いカメラベクトル演算を行い、概略値を精度の高いカメラベクトル値に置き換えて表示することができる。
具体的には、まず、三次元情報追跡部45で、カメラベクトル演算部43,誤差最小化部44を経て得られたカメラベクトルを概略のカメラベクトルと位置づけ、その後のプロセスで生成される画像の一部として得られる三次元情報(三次元形状)に基づいて、複数のフレーム画像に含まれる部分的三次元情報を隣接するフレーム間で連続的に追跡して三次元形状の自動追跡を行う。
そして、この三次元情報追跡部45で得られた三次元情報の追跡結果から、高精度カメラベクトル演算部46においてより高精度なカメラベクトルが求められる。
そこで、特徴点追跡で得られるカメラベクトルを概略値と位置づけ、その後のプロセスで得られる三次元情報(三次元形状)を各フレーム画像上に追跡して、その軌跡から高精度カメラベクトルを求めることができる。
三次元形状の追跡は、マッチング及び相関の精度を得やすく、三次元形状はフレーム画像によって、その三次元形状も大きさも変化しないので、多くのフレームに亘って追跡が可能であり、そのことでカメラベクトル演算の精度を向上させることができる。これはカメラベクトル演算部43により概略のカメラベクトルが既知であり、三次元形状が既に分かっているから可能となるものである。
また、得られた三次元形状を、カメラ位置から二次元画像に変換して、二次元画像として追跡することも可能である。カメラベクトルの概略値が既知であることから、カメラ視点からの二次元画像に投影変換が可能であり、カメラ視点の移動による対象の形状変化にも追従することが可能となる。
例えば、図25に示すように、車載カメラからの映像を平面展開して、各フレーム画像内の目的平面上の対応点を自動で探索し、対応点を一致させるように結合して目的平面の結合画像を生成し、同一の座標系に統合して表示する。
さらに、その共通座標系の中にカメラ位置とカメラ方向を次々に検出し、その位置や方向、軌跡をプロットしていくことができる。CVデータは、その三次元位置と3軸回転を示しており、ビデオ映像に重ねて表示することで、ビデオ映像の各フレームでCV値を同時に観察できる。CVデータをビデオ映像に重ねて表示した画像例を図25に示す。
なお、ビデオ映像内にカメラ位置を正しく表示すると、CV値が示すビデオ映像内の位置は画像の中心となり、カメラ移動が直線に近い場合は、すべてのフレームのCV値が重なって表示されてしまうので、例えば図25に示すように、敢えてカメラ位置から真下に1メートルの位置を表示することが適切である。あるいは道路面までの距離を基準として、道路面の高さにCV値を表示するのがより適切である。
まず、本発明によれば、マルチチャンネル型の地中レーダを使用することにより、広い範囲における含水比測定を容易・迅速かつ効率的に行うことができるようになる。
また、手押し型のセンサ等を用いた従来技術では、広範囲の探査には非常に時間がかかり、また、牽引型の地中レーダを用いる場合には、得られる位置情報はGPSによるものだけとなり、位置精度が良くなかった。特に、地中の水分動態を調べるには、GPSによる数メートルオーダーの誤差がある位置情報では有効な測定は行えず、数センチの誤差範囲での測定・探査は実現不可能であった。
また、従来の手押し型や牽引型の探査方法では、道路で行う場合には通行規制が必要となってしまい、また、規制をしない場合には、十分な位置精度を持たないために、含水比マッピングを実用的な位置精度を持った情報として得ることはできなかった。
これによって、地中の土壌の含水比を広範囲にわたって正確かつ効率的に測定することができ、測定された含水比データに対して、GPSによることなく、より正確で高精度な位置情報を付与することができる。
特に、従来技術では、例えば車両の前後左右を撮影する4方向カメラとGPSによる簡易位置特定に基づく位置特定作業が必須であったことから、本実施形態による効果は非常に大きなものとなる。
また、このようにCV演算により効率良く地上の高精度三次元座標が得られることから、検出位置特定のために、例えば現地での構造物の形状や道路周辺物等を計測する工程なども不要となり、作業効率は格段に向上することになる。
また、このように一元管理された地下・地上情報のデータベースは、例えば米国ESRI社製「ArcGIS」(登録商標)など、GIS(地理情報システム:Geographic Information System)関連のソフトウェア(アプリケーション)に対応させることができ、取扱性や汎用性,拡張性等にも優れたデータベース管理が可能となる。
また、本実施形態で得られるオルソ画像は、例えば1/500の平面図(地図)と同じ精度を持ちながら、映像に基づいて視覚的に現地状況等を把握することでき、視覚的に地図等より優れ、単なる平面図(地図)では得られない有用な付加価値のある成果・情報を提供することができる。
さらに、本実施形態の地中探査装置によれば、探査車両を走行させるだけで、探査結果の全方位連続一元化処理及び映像から、簡単に高精度の三次元座標情報が得られることから、空洞等の地中探査だけでなく、例えば災害時の緊急輸送道路等の安全確保等、緊急時にも迅速な対応ができるという優れた効果もある。
したがって、本実施形態によれば、地中探査データと地表面の情報を、従来技術のような地中探査データと平面図(地図等)を単に並べて表示させたものとは異なる、地中探査データと地上のオルソ画像を一元化した単一の三次元情報として生成・表示させることができる。これによって、空洞や埋設管等を示す地中探査データを、地上の映像を示す正確なオルソ画像中に一体的に表示させて特定・把握でき、従来技術では得られない正確・高精度な地中探査が可能となる。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係る地中探査手段(センサ)として、電磁波を利用したレーダ(地中レーダ20)を例に取って説明したが、地中探査手段は、地中の三次元情報を取得・生成できる限り、電磁波を用いるレーダに限定されるものではない。具体的には、地中探査手段としては、電磁波を用いる場合の他、地震波や電気比抵抗,超音波,レーダなどを用いるセンサ等であっても良い。
10 探査車両
11 GPS(高精度GNSS)
20 地中レーダ
21 レーダ本体
22 アンテナ
30 全方位カメラ
40 CV演算部
50 一元化処理部
Claims (5)
- 送信アンテナと受信アンテナが同一の中点と異なるオフセット距離を有する、前記オフセット距離方向に沿って前記中点が異なる複数の送受信アンテナ組を備えた地中レーダを用いて地中の含水性状のマッピングを行う含水比マッピング方法であって、
前記地中レーダを地表面に沿って移動させながら地中へ向けて電磁波を放射することにより、前記送受信アンテナのオフセット距離方向に沿って前記中点の異なる前記複数の各送受信アンテナ組によって得られる複数の反射波を、前記地中レーダの進行方向に沿った複数の測定点において取得するレーダ反射波取得工程と、
前記複数の各送受信アンテナ組において送信アンテナから受信アンテナへの到達時間が最短の電磁波を直接波として、その直接波の到達時刻を抽出する直接波フィッティング工程と、
前記直接波の到達時刻から、当該直接波の地表面における到達時刻を時刻ゼロとして算出するゼロ時間補正工程と、
前記複数の各送受信アンテナ組において送信アンテナから受信アンテナへ前記直接波の次に到達する電磁波を反射波として、その反射波の到達時刻を抽出する反射波フィッティング工程と、
前記反射波の到達時刻に基づいて、前記地中の比誘電率を算出する比誘電率算出工程と、
前記比誘電率に基づいて、前記地中の含水比を算出する含水比算出工程と、
前記複数の各送受信アンテナ組に対応する複数の前記含水比に基づいて、含水比分布図を生成する含水比分布図生成工程と、を備え、
前記複数の各送受信アンテナ組のうち、前記送受信アンテナのオフセット距離方向に沿って中点の異なる前記送受信アンテナの組で得られる複数の反射波を、前記地中レーダの進行方向に沿った同一ルートにおける前記複数の測定点となる各中点における測定結果として前記含水比を算出し、
前記同一ルートにおける複数の各中点における前記地中の含水比を、当該複数の各中点の地上と対応した位置情報と対応付けることにより、前記送受信アンテナのオフセット距離方向及び前記地中レーダの進行方向に沿った複数の各中点における含水比の分布を示す前記含水比分布図を生成する
ことを特徴とする含水比マッピング方法。 - 送信アンテナと受信アンテナが同一の中点と異なるオフセット距離を有する、前記オフセット距離方向に沿って前記中点が異なる複数の送受信アンテナ組を備えた地中レーダと、
前記地中レーダを地表面に沿って移動させながら地中へ向けて電磁波を放射することにより、前記送受信アンテナのオフセット距離方向に沿って前記中点の異なる前記複数の各送受信アンテナ組によって得られる複数の反射波を、前記地中レーダの進行方向に沿った複数の測定点において取得するレーダ反射波取得部と、
前記複数の各送受信アンテナ組において送信アンテナから受信アンテナへの到達時間が最短の電磁波を直接波として、その直接波の到達時刻を抽出する直接波フィッティング部と、
前記直接波の到達時刻から、当該直接波の地表面における到達時刻を時刻ゼロとして算出するゼロ時間補正部と、
前記複数の各送受信アンテナ組において送信アンテナから受信アンテナへ前記直接波の次に到達する電磁波を反射波として、その反射波の到達時刻を抽出する反射波フィッティング部と、
前記反射波の到達時刻に基づいて、前記地中の比誘電率を算出する比誘電率算出部と、
前記比誘電率に基づいて、前記地中の含水比を算出する含水比算出部と、
前記複数の各送受信アンテナ組に対応する複数の前記含水比に基づいて、含水比分布図を生成する含水比分布図生成部と、を備え、
前記複数の各送受信アンテナ組のうち、前記送受信アンテナのオフセット距離方向に沿って中点の異なる前記送受信アンテナの組で得られる複数の反射波を、前記地中レーダの進行方向に沿った同一ルートにおける前記複数の測定点となる各中点における測定結果として前記含水比を算出し、
前記同一ルートにおける複数の各中点における前記地中の含水比を、当該複数の各中点の地上と対応した位置情報と対応付けることにより、前記送受信アンテナのオフセット距離方向及び前記地中レーダの進行方向に沿った複数の各中点における含水比の分布を示す前記含水比分布図を生成する
ことを特徴とする含水比マッピング装置。 - 前記地中レーダが、
路面を走行可能な探査車両の底面の、前輪と後輪の間、又は複数の車輪の車軸間に配置される、複数の送信アンテナ及び受信アンテナを備えたマルチチャンネル地中レーダからなる
ことを特徴とする請求項2記載の含水比マッピング装置。 - 路面を走行可能な探査車両が走行する路面上の地上映像を生成する地上映像生成部と、
前記含水比分布図生成部で生成される含水比分布図と、前記地上映像生成部で生成される地上映像を、地中及び地上の位置情報が一元化された一元化情報として生成する地中・地上情報一元化処理部と、を備える
ことを特徴とする請求項2又は3記載の含水比マッピング装置。 - 前記地上映像生成部が、
前記探査車両が走行する路面上の地上三次元映像の画像データから、所定数の特徴点を自動抽出する特徴点抽出部と、
抽出された特徴点について、動画映像の各フレーム画像内で自動追跡してフレーム画像間での対応関係を求める特徴点対応処理部と、
対応関係が求められた特徴点の三次元位置座標を求め、当該三次元位置座標から、各フレーム画像に対応したカメラの三次元位置座標及び三次元回転座標からなるカメラベクトルを求めるカメラベクトル演算部と、
を有するCV演算部を備え、
前記地中・地上情報一元化処理部が、
前記カメラベクトルと、前記含水比分布図が有する位置情報とに基づいて、前記地上三次元映像と前記含水比分布図を一元化する
ことを特徴とする請求項4記載の含水比マッピング装置。
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