JP7161143B2 - 金属膜付き樹脂フィルムの製造装置と製造方法 - Google Patents

金属膜付き樹脂フィルムの製造装置と製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スパッタリング等の真空成膜法により金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルムの金属シード層上に湿式メッキ法により金属膜を形成して得られる金属膜付き樹脂フィルムの製造装置と製造方法に係り、特に、湿式メッキ法により金属シード層上に形成される金属膜にピンホール等の欠陥が生じ難い金属膜付き樹脂フィルムの製造装置と製造方法の改良に関するものである。
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、多種類のフレキシブル配線基板が用いられている。このフレキシブル配線基板の材料には、耐熱性樹脂フィルムの片面若しくは両面に金属膜を形成した金属膜付き樹脂フィルムが用いられており、この金属膜付き樹脂フィルムにフォトリソグラフィーやエッチング等の薄膜加工技術を適用することで所定の配線パターンを有するフレキシブル配線基板を得ることができる。フレキシブル配線基板の配線パターンは近年ますます微細化、高密度化しているため、金属膜付き樹脂フィルムの金属膜にはピンホール等の欠陥がないことがより一層重要になってきている。
この種の金属膜付き樹脂フィルムの製造方法として、金属箔を接着剤により耐熱性樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法と称される)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングした後、乾燥させて製造する方法(キャスティング法と称される)、真空成膜法により耐熱性樹脂フィルム上に金属膜を成膜する方法、若しくは、真空成膜法により耐熱性樹脂フィルム上に金属シード層を成膜しかつ金属シード層上に湿式メッキ法により金属膜を形成して製造する方法(メタライジング法と称される)等が従来から知られている。また、メタライジング法における真空成膜法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
上記メタライジング法として、特許文献1には、ポリイミド絶縁層上にクロムをスパッタリングした後、銅をスパッタリングしてポリイミド絶縁層上に導体層を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、銅ニッケル合金をターゲットとするスパッタリングにより形成された第一の金属薄膜と、銅をターゲットとするスパッタリングにより形成された第二の金属薄膜を、この順でポリイミドフィルム上に積層することによって得られるフレキシブル回路基板用材料が開示されている。尚、ポリイミドフィルムのような耐熱性樹脂フィルム(基板)に真空成膜を行う場合、スパッタリングウェブコータを用いることが一般的である。
近年、高密度配線基板として、メタライジング法による両面金属膜付き樹脂フィルムが製造されている。具体的に説明すると、耐熱性を有する長尺樹脂フィルムの両面にスパッタリング等の真空成膜法で金属シード層を成膜し、かつ、金属シード層上に湿式メッキ法により金属膜を形成して両面金属膜付き樹脂フィルムが製造されている。尚、金属シード層はスパッタリングウェブコータ等の真空成膜装置を用いて成膜され、金属膜は湿式メッキ装置を用いて形成されるため、メタライジング法による上記両面金属膜付き樹脂フィルムは製造装置が異なる2段階の工程を経て製造されている。すなわち、真空成膜装置により金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルムは、一旦、真空成膜装置内においてロール状に巻回された後、真空成膜装置から搬出されて湿式メッキ装置の湿式メッキ槽内に搬入され、長尺樹脂フィルムの金属シード層上に金属膜が形成されている。
ところで、真空成膜装置内における成膜直後の金属シード層は、その表面が酸化されておらず活性も高いため、金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルムを真空成膜装置内において空気の介在なしでロール状に巻回した場合、金属シード層同士が貼り付くブロッキング現象を引き起こし、ロールから長尺樹脂フィルムを巻き出したときに金属シード層のどちらかの面が局所的に引き剥がされてしまうことがあった。
そこで、この現象を回避するため、金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルムをロール状に巻回する際、長尺樹脂フィルムの層間に樹脂フィルム等から成る長尺合紙を挟み込みながら巻き取る方法が一般的に採用されている。
しかし、金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルムの層間に長尺合紙を挟み込みながら巻き取る方法は、成膜直後の金属シード層表面に長尺合紙が接触することになるため、長尺樹脂フィルムを真空中で強く巻き取った場合、長尺合紙の成分(例えば、樹脂フィルム成分や樹脂フィルムに含まれる溶剤成分等)が金属シード層の表面に局所的に転移してしまうことがあった。
そして、長尺合紙の成分が金属シード層表面に局所的に転移された長尺樹脂フィルムをロールから巻き出して湿式メッキを行った場合、図9に示すように金属シード層101表面に転移された長尺合紙の成分100に起因して金属膜にピンホール等の欠陥を生ずる問題が存在した。この問題に対し、金属シード層101表面に長尺合紙の成分100が局所的に転移された長尺樹脂フィルムをロールから巻き出した後、湿式メッキ槽内に搬入する前に金属シード層101表面を希硫酸溶液等で酸洗浄する方法が検討されている。しかし、金属シード層101表面に転移した長尺合紙の成分100を希硫酸溶液等で完全に除去することは難しく、ピンホール等の発生を完全に無くすことは困難であった。
このような技術的背景の下、本発明者は、図3に示す長尺樹脂フィルム巻出ロール600と湿式メッキ槽(642、643、644、645)との間に「大気圧プラズマ洗浄装置」を組み込むことで、長尺樹脂フィルム巻出ロール600から巻き出される長尺樹脂フィルム601の金属シード層表面がプラズマ洗浄される金属膜付き樹脂フィルムの製造装置を既に提案している(特許文献3参照)。尚、上記長尺樹脂フィルム巻出ロール600から長尺樹脂フィルム601が巻き出される際、長尺樹脂フィルム601の層間に挟み込まれた長尺合紙603は長尺樹脂フィルム601から分離され、長尺合紙巻取ロール602に巻き取られて回収されるようになっている。
特開平2-98994号公報 特許第3447070号公報 特願2018-199073
ところで、上記長尺樹脂フィルム巻出ロール600と湿式メッキ槽(642、643、644、645)との間に組み込まれた「大気圧プラズマ洗浄装置」は、図3に示すように、プラズマ処理ボックス662と、該プラズマ処理ボックス662内において長尺樹脂フィルム601の搬送方向に沿って並んで配置された大気圧プラズマヘッド665、666とで構成され、上記プラズマ処理ボックス662内をフローティング状態で搬送される長尺樹脂フィルム601の一方の金属シード層表面(第1面)に向け上流側の大気圧プラズマヘッド666から大気圧プラズマを照射して第1面が洗浄され、次いで、長尺樹脂フィルム601の他方の金属シード層表面(第2面)に向け下流側の大気圧プラズマヘッド665から大気圧プラズマを照射して第2面が洗浄されるようになっている。
そして、上記「大気圧プラズマ洗浄装置」を組み込んだ金属膜付き樹脂フィルムの製造装置によれば、湿式メッキ槽(642、643、644、645)内に長尺樹脂フィルム601を搬入する前に、金属シード層表面(第1面と第2面)から長尺合紙の転移成分が除去されるため、湿式メッキ法で形成される金属膜にピンホール等の欠陥が生じ難く、高品質の金属膜付き樹脂フィルムを高い歩留まりで製造できるものであった。
しかし、長尺樹脂フィルム601の一方の金属シード層表面(第1面)に向けて上流側の大気圧プラズマヘッド666からプラズマ照射し、次いで、下流側の大気圧プラズマヘッド665から長尺樹脂フィルム601の他方の金属シード層表面(第2面)に向けてプラズマ照射する方法(すなわち、長尺樹脂フィルム601の第1面と第2面が交互にプラズマ照射される方法)を採った場合、プラズマ照射される金属シード層とは反対側の金属シード層表面が変色(金属シード層を銅で構成した場合は赤く変色)することがあった。この原因は、金属シード層が形成された熱容量の小さい長尺樹脂フィルムが大気圧プラズマの熱エネルギーにより急激に温度上昇し、プラズマ照射されない裏面側の金属シード層表面が裏面周囲雰囲気(大気)の酸素により酸化されたためと考えられる。
そして、洗浄処理前の金属シード層表面(第2面)が裏面周囲雰囲気(大気)の酸素により酸化された場合、大気圧プラズマヘッド665による洗浄効果が若干落ちるため、金属シード層表面(第2面)に長尺合紙の転移成分が少量ではあるが残ってしまい、湿式メッキ法で形成される金属膜にピンホール等の欠陥を引き起こす問題が存在した。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、金属シード層の第1面と第2面が均等に大気圧プラズマ洗浄される金属膜付き樹脂フィルムの製造装置と製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
両面に金属シード層を成膜した長尺樹脂フィルムがその層間に長尺合紙を挟み込みながら巻回された長尺樹脂フィルム巻き出しロールと、
該長尺樹脂フィルム巻き出しロールから巻き出される長尺樹脂フィルムから上記長尺合紙を分離して巻き取る長尺合紙巻き取りロールと、
上記長尺合紙が分離された長尺樹脂フィルムを搬入してその金属シード層上に金属膜を形成する湿式メッキ槽と、
上記金属膜が形成された長尺樹脂フィルムを巻き取る長尺樹脂フィルム巻き取りロールを備え、かつ、
上記長尺樹脂フィルム巻き出しロールと湿式メッキ槽との間に、長尺合紙が分離された長尺樹脂フィルムの金属シード層表面を洗浄する大気圧プラズマ洗浄装置が設けられた金属膜付き樹脂フィルムの製造装置において、
上記大気圧プラズマ洗浄装置のプラズマ処理ボックス内に長尺樹脂フィルムの搬送方向に沿って第一洗浄部と第二洗浄部が並んで設けられ、
上記第一洗浄部は、長尺樹脂フィルムが搬送される搬送路を室内に有する第一搬送室と、上記搬送路を挟んで第一搬送室の一方側に連設されかつ上記搬送路に向け開口する第一スリット部を有すると共に長尺樹脂フィルムの第1面に向けてプラズマを照射する第一大気圧プラズマヘッドと、上記搬送路を挟んで第一搬送室の他方側に設けられかつ搬送路内における上記長尺樹脂フィルムの第2面側に回り込んだプラズマガスを排出する第一排気管とで構成され、
上記第二洗浄部は、長尺樹脂フィルムが搬送される搬送路を室内に有する第二搬送室と、上記搬送路を挟んで第二搬送室の一方側に連設されかつ上記搬送路に向け開口する第二スリット部を有すると共に長尺樹脂フィルムの第2面に向けてプラズマを照射する第二大気圧プラズマヘッドと、上記搬送路を挟んで第二搬送室の他方側に設けられかつ搬送路内における上記長尺樹脂フィルムの第1面側に回り込んだプラズマガスを排出する第二排気管とで構成されていることを特徴とし、
第2の発明は、
第1の発明に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造装置において、
上記第一大気圧プラズマヘッドにおける搬送路側の第一スリット部周囲と第一排気管の開口周囲にガス隔壁が付設され、かつ、上記第二大気圧プラズマヘッドにおける搬送路側の第二スリット部周囲と第二排気管の開口周囲にガス隔壁が付設されていることを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造装置において、
上記長尺樹脂フィルムの金属シード層と金属膜は、Cuを主成分とすることを特徴とし、
第4の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造装置において、
上記長尺合紙は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、アラミド、ポリイミド、トリアセテートの単体若しくはこれ等を貼り合わせた複合体で構成されることを特徴とし、
また、第5の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造装置において、
上記大気圧プラズマ洗浄装置は、遠隔操作型であることを特徴とする。
次に、本発明に係る第6の発明は、
両面に金属シード層を成膜した長尺樹脂フィルムがその層間に長尺合紙を挟み込みながら巻回された長尺樹脂フィルム巻き出しロールから上記長尺樹脂フィルムを巻き出す工程と、
長尺樹脂フィルム巻き出しロールから巻き出された長尺樹脂フィルムから上記長尺合紙を分離して長尺合紙巻き取りロールに巻き取る工程と、
上記長尺合紙が分離された長尺樹脂フィルムを湿式メッキ槽に搬入してその金属シード層上に金属膜を形成する工程と、
上記金属膜が形成された長尺樹脂フィルムを長尺樹脂フィルム巻き取りロールに巻き取る工程を具備する金属膜付き樹脂フィルムの製造方法において、
上記長尺合紙を分離した長尺樹脂フィルムが湿式メッキ槽に搬入される前に、上記長尺樹脂フィルム巻き出しロール側に設けられた第一大気圧プラズマヘッドから長尺樹脂フィルムの第1面側に向けプラズマを照射して長尺樹脂フィルムの第1面を洗浄しかつ長尺樹脂フィルムの第2面側にプラズマガスを回り込ませて排気すると共に、上記湿式メッキ槽側に設けられた第二大気圧プラズマヘッドから長尺樹脂フィルムの第2面側に向けプラズマを照射して長尺樹脂フィルムの第2面を洗浄しかつ長尺樹脂フィルムの第1面側にプラズマガスを回り込ませて排気することを特徴とし、
第7の発明は、
第6の発明に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造方法において、
上記長尺樹脂フィルムの金属シード層と金属膜がCuを主成分とすることを特徴とし、
第8の発明は、
第6の発明に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造方法において、
上記長尺合紙を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、アラミド、ポリイミド、トリアセテートの単体若しくはこれ等を貼り合わせた複合体で構成することを特徴とし、
また、第9の発明は、
第6の発明に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造方法において、
上記長尺樹脂フィルムの各金属シード層表面を大気圧プラズマ洗浄する装置を、遠隔操作型の装置で構成することを特徴とするものでる。
本発明に係る金属膜付き樹脂フィルムの製造装置と製造方法は、
長尺樹脂フィルム巻出ロールと湿式メッキ槽との間に設けられた大気圧プラズマ洗浄装置のプラズマ処理ボックス内に、長尺樹脂フィルムの搬送方向に沿って第一洗浄部と第二洗浄部が並んで設けられ、
上記第一洗浄部は、長尺樹脂フィルムが搬送される搬送路を室内に有する第一搬送室と、上記搬送路を挟んで第一搬送室の一方側に連設されかつ上記搬送路に向け開口する第一スリット部を有すると共に長尺樹脂フィルムの第1面に向けてプラズマを照射する第一大気圧プラズマヘッドと、上記搬送路を挟んで第一搬送室の他方側に設けられかつ搬送路内における上記長尺樹脂フィルムの第2面側に回り込んだプラズマガスを排出する第一排気管とで構成され、
上記第二洗浄部は、長尺樹脂フィルムが搬送される搬送路を室内に有する第二搬送室と、上記搬送路を挟んで第二搬送室の一方側に連設されかつ上記搬送路に向け開口する第二スリット部を有すると共に長尺樹脂フィルムの第2面に向けてプラズマを照射する第二大気圧プラズマヘッドと、上記搬送路を挟んで第二搬送室の他方側に設けられかつ搬送路内における上記長尺樹脂フィルムの第1面側に回り込んだプラズマガスを排出する第二排気管とで構成されていることを特徴としている。
そして、上流側に位置する第一洗浄部で長尺樹脂フィルムの金属シード層(第1面)がプラズマ洗浄される際、長尺樹脂フィルムの裏面側(第2面側)においては、第2面側に回り込んだプラズマガスを第一排気管により排出して酸素が極端に少ない雰囲気になっているため、大気圧プラズマの熱負荷に起因した裏面酸化[すなわち、金属シード層(第2面)の酸化]を防止することができる。
また、下流側に位置する第二洗浄部で長尺樹脂フィルムの金属シード層(第2面)がプラズマ洗浄される際、第一洗浄部での金属シード層(第2面)の酸化が防止されていることから第二洗浄部による金属シード層(第2面)の洗浄効果が落ちていないため、長尺樹脂フィルムにおける金属シード層(第1面)と金属シード層(第2面)を均等に洗浄することが可能となり、更に、長尺樹脂フィルムの第1面側に回り込んだプラズマガスを第二洗浄部の第二排気管で排出しているため、上流側の第一洗浄部でプラズマ洗浄された金属シード層表面(第1面)が下流側の第二洗浄部において酸化されることもない。
このため、金属シード層(第1面)と金属シード層(第2面)に湿式メッキ法により形成される各金属膜にピンホール等の欠陥が生じ難くなり、高品質な金属膜付き樹脂フィルムを高い歩留まりで製造することが可能となる。
長尺樹脂フィルムの片面に金属シード層を成膜するスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)の構成説明図。 長尺樹脂フィルムの両面に金属シード層を成膜するスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)の構成説明図。 プラズマ処理ボックス内において長尺樹脂フィルムの搬送方向に沿って二組の大気圧プラズマヘッドが並んで配置された従来例に係る「大気圧プラズマ洗浄装置」を込み込んだ金属膜付き樹脂フィルム製造装置の説明図。 本発明の金属膜付き樹脂フィルム製造装置に組み込まれ、プラズマ処理ボックス内において長尺樹脂フィルムの搬送方向に沿って第一洗浄部と第二洗浄部が並んで設けられた第一実施形態に係る「大気圧プラズマ洗浄装置」の説明図。 本発明の金属膜付き樹脂フィルム製造装置に組み込まれる第一実施形態に係る「大気圧プラズマ洗浄装置」の構成部品を示し、図5(A)は第一洗浄部における第一大気圧プラズマヘッドの底面図、図5(B)は第一大気圧プラズマヘッドと第一搬送室および第一搬送室に設けられた第一排気管とで構成される第一洗浄部の正面図、図5(C)は第一洗浄部における第一搬送室の底面図。 本発明の金属膜付き樹脂フィルム製造装置に組み込まれる第一実施形態に係る「大気圧プラズマ洗浄装置」の構成部品を示し、図6(A)は第一洗浄部の概略斜視図、図6(B)は第二洗浄部の概略斜視図。 本発明の金属膜付き樹脂フィルム製造装置に組み込まれ、プラズマ処理ボックス内において長尺樹脂フィルムの搬送方向に沿って第一洗浄部と第二洗浄部が並んで設けられた第二実施形態に係る「大気圧プラズマ洗浄装置」の説明図。 本発明の金属膜付き樹脂フィルム製造装置に組み込まれる第二実施形態に係る「大気圧プラズマ洗浄装置」の構成部品を示し、図8(A)は第一洗浄部における第一大気圧プラズマヘッドの底面図、図8(B)は第一大気圧プラズマヘッドと第一搬送室および第一搬送室に設けられた第一排気管とで構成される第一洗浄部の正面図、図8(C)は第一洗浄部における第一搬送室の底面図。 長尺樹脂フィルムの金属シード層表面に転移された長尺合紙の成分を示す説明図。
以下、本発明の実施形態に係る金属膜付き樹脂フィルムの製造装置について詳細に説明し、かつ、金属シード層を成膜するスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)についても具体的に説明する。
1.片面に金属シード層を成膜するスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)
まず、片面に金属シード層を成膜するスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)について、図1を参照しながら具体的に説明する。
図1では、モータで駆動するローラはM(モータ)、張力測定ローラはTP(テンションピックアップ)、フリーローラはF(フリー)の記号を付している。
このスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)は、巻出室210、乾燥室211、成膜室212、および、巻取室213とで構成されている。尚、上記乾燥室211と成膜室212との間に、プラズマ照射やイオンビーム照射を行ってフィルムと金属膜の密着力を向上させる「表面処理室」が組み込まれる場合もある。
上記巻出室210には、未成膜若しくは片面に金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルム214を巻回した巻出ロール215が配置され、巻出ロール215から巻き出された長尺樹脂フィルム214が、フリーローラ216、張力測定ローラ217、および、フリーローラ218を経由して乾燥室211へ搬出されるように構成されている。尚、フィルムの巻出張力は、張力測定ローラ217で測定され、巻出ロール215にフィードバック制御されるように構成されている。
上記乾燥室211には、フィルム乾燥用のヒータ224が配置され、巻出室210から搬入された長尺樹脂フィルム214が乾燥処理されると共に、駆動ローラ219、フリーローラ220、張力測定ローラ221,フリーローラ222、および、フリーローラ223を経由して成膜室212へ搬出されるように構成されている。尚、フィルムの乾燥張力は、張力測定ローラ221で測定され、上記駆動ロール219にフィードバック制御されるように構成されている。
上記成膜室212内には、スパッタリングカソード239、240、241、242が配置され、乾燥室211から搬入された長尺樹脂フィルム214の片面に金属シード層が成膜されると共に、駆動ローラ229、張力測定ローラ230、キャンローラ231、張力測定ローラ232、および、駆動ローラ233を経由して巻取室213へ搬出されるように構成されている。また、キャンローラ231上流のフィルム張力は、張力測定ローラ230で測定され、駆動ロール229にフィードバック制御されるように構成され、キャンローラ下流のフィルム張力は、張力測定ローラ232で測定され、駆動ロール233にフィードバック制御されるように構成されている。尚、図1中の符号238は、遮蔽板を示し、スパッタリングカソードのターゲットから叩き出されたスパッタリング粒子が所定の進行経路を外れて乾燥室211や巻取室213等へ向かうのを防止するよう構成されている。
上記巻取室213内には、巻取ロール246および長尺合紙巻出ロール248が配置され、成膜室212から搬入された金属シード層を有する長尺樹脂フィルム214が、長尺合紙巻出ロール248から巻き出される長尺合紙249を、フリーローラ247を経由してフィルムの層間に挟み込みながら、フリーローラ243、張力測定ローラ244、および、フリーローラ245を経由して巻取ロール246に巻き取られるように構成されている。尚、フィルムの巻取張力は、張力測定ローラ244で測定され、巻取ロール246にフィードバック制御されるように構成されている。
そして、上記巻出室210、乾燥室211および成膜室212を通過し、金属シード層を成膜した長尺樹脂フィルム214がその層間に長尺合紙249を挟み込みながら巻取室213の巻取ロール246に巻き取られるようになっている。尚、このスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)を用いて長尺樹脂フィルム214の両面に金属シード層を成膜する場合、上記巻取ロール246に巻き取られた片面に金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルム214を一旦取り出し、再度、巻出ロール215にセットし、巻出室210、乾燥室211および成膜室212を通過させて片面に金属シード層が予め成膜された長尺樹脂フィルム214のもう片面に金属シード層を成膜する。この場合、上記巻出ロール215からの通紙ルートは巻出室210に示された破線となる。
ところで、もう片面に金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルム214を巻取ロール246にそのまま巻き取った場合、片面側ともう片面側にそれぞれ成膜された金属シード層が真空中で強く接触し、貼り付いてしまうブロッキング現象が発生する。このブロッキング現象を防止するには、片面側に金属シード層が成膜された場合と同様、長尺合紙巻出ロール248から巻き出される長尺合紙249をフィルムの層間に挟み込みながら長尺樹脂フィルム214を巻取室213の巻取ロール246に巻き取ればよい。尚、図1においては、スパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)を説明するための最低限のローラしか記載していないが、図示していないローラも存在する。
また、巻出室210、乾燥室211、成膜室212、および、巻取室213を構成する各真空室は排気設備を備え、特に、成膜室212ではスパッタリング成膜のため到達圧力10-4Pa程度までの減圧と、その後のスパッタリングガス導入による0.1~10Pa程度の圧力調整が行われる。スパッタリングガスにはアルゴン等公知のガスが使用され、目的に応じて更に酸素等のガスが添加される。各真空室の形状や材質は、このような減圧状態に耐え得るものであれば特に限定はなく、種々のものを使用することができる。各真空室内を減圧してその状態を維持するため、図示しないドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等の種々の装置が設けられている。
また、金属シード層をスパッタリング成膜する場合、図1に示すように板状のターゲットが使用されるが、板状のターゲットを用いた場合、ターゲット上にノジュール(異物の成長)を発生することがある。これが問題になる場合には、ノジュールの発生がなく、ターゲットの使用効率も高い円筒形ロータリーターゲットを使用することが好ましい。
また、図1のスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)ではマグネトロンスパッタリングカソードが図示されているが、CVD(化学蒸着)や蒸着処理等他の真空成膜装置を用いる場合には、板状ターゲットに代えて他の真空成膜手段が組み込まれる。
2.両面に金属シード層を成膜するスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)
次に、両面に金属シード層を成膜するスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)について、図2を参照しながら具体的に説明する。
図2では、モータで駆動するローラはM(モータ)、張力測定ローラはTP(テンションピックアップ)、フリーローラはF(フリー)の記号を付している。
このスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)は、図2に示すように巻出室110、乾燥室111、成膜室112、搬送室400、成膜室312、および、巻取室113とで構成されている。尚、上記乾燥室111と成膜室112との間に、プラズマ照射やイオンビーム照射を行ってフィルムと金属膜の密着力を向上させる「表面処理室」が組み込まれる場合もある。
上記巻出室110には、未成膜の長尺樹脂フィルム114を巻回した巻出ロール115が配置され、巻出ロール115から巻き出された長尺樹脂フィルム114が、フリーローラ116、張力測定ローラ117、および、フリーローラ118を経由して乾燥室111へ搬出されるように構成されている。尚、フィルムの巻出張力は、張力測定ローラ117で測定され、巻出ロール115にフィードバック制御されるように構成されている。
上記乾燥室111には、フィルム乾燥用のヒータ124が配置され、巻出室110から搬入された未成膜の長尺樹脂フィルム114が乾燥処理されると共に、駆動ローラ119、フリーローラ120、張力測定ローラ121,フリーローラ122、および、フリーローラ123を経由して成膜室112へ搬出されるように構成されている。尚、フィルムの乾燥張力は、張力測定ローラ121で測定され、上記駆動ロール119にフィードバック制御されるように構成されている。
上記成膜室112内には、スパッタリングカソード139、140、141、142が配置され、乾燥室111から搬入された未成膜長尺樹脂フィルム114の片面に金属シード層が成膜されると共に、駆動ローラ129、張力測定ローラ130、キャンローラ131、張力測定ローラ132、および、駆動ローラ133を経由して搬送室400へ搬出されるように構成されている。また、キャンローラ131上流のフィルム張力は、張力測定ローラ130で測定され、駆動ロール129にフィードバック制御されるように構成され、キャンローラ下流のフィルム張力は、張力測定ローラ132で測定され、駆動ロール133にフィードバック制御されるように構成されている。尚、図2中の符号138は遮蔽板を示している。
また、上記搬送室400にはフリーローラ401、402、403が配置され、成膜室112から搬入された片面に金属シード層を有する長尺樹脂フィルム114が上記フリーローラ401、402、403を経由して成膜室312へ搬出されるように構成されている。尚、長尺樹脂フィルム114が上記搬送室400を経由することで、次工程の成膜室312内において、長尺樹脂フィルム114の未成膜面側がスパッタリングカソード側に露出してもう片面側も成膜されるよう調整されている。
上記成膜室312内には、スパッタリングカソード339、340、341、342が配置され、搬送室400から搬入された長尺樹脂フィルム114のもう片面に金属シード層が成膜されると共に、駆動ローラ333、張力測定ローラ332、キャンローラ331、張力測定ローラ330、および、駆動ローラ329を経由して巻取室113へ搬出されるように構成されている。また、キャンローラ331上流のフィルム張力は、張力測定ローラ332で測定され、駆動ロール333にフィードバック制御されるように構成され、キャンローラ下流のフィルム張力は、張力測定ローラ330で測定され、駆動ロール329にフィードバック制御されるように構成されている。尚、図2中の符号338は遮蔽板を示している。
上記巻取室113内には、巻取ロール146および長尺合紙巻出ロール148が配置され、成膜室312から搬入された両面に金属シード層を有する長尺樹脂フィルム114が、長尺合紙巻出ロール148から巻き出される長尺合紙149を、フリーローラ147を経由してフィルムの層間に挟み込みながら、フリーローラ143、張力測定ローラ144、および、フリーローラ145を経由して巻取ロール146に巻き取られるように構成されている。尚、フィルムの巻取張力は、張力測定ローラ144で測定され、巻取ロール146にフィードバック制御されるように構成されている。
このように、上記巻出室110、乾燥室111、成膜室112、搬送室400および成膜室312を通過し、両面に金属シード層を成膜した長尺樹脂フィルム114が、その層間に長尺合紙149を挟み込みながら巻取室113の巻取ロール146に巻き取られるようになっている。
ところで、両面に金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルム114を巻取ロール146にそのまま巻き取った場合、片面側ともう片面側にそれぞれ成膜された金属シード層が真空中で強く接触し、貼り付いてしまうブロッキング現象が発生する。このブロッキング現象を防止するため、上述したように長尺合紙巻出ロール148から巻き出される長尺合紙149をフィルムの層間に挟み込みながら長尺樹脂フィルム114を巻取ロール146に巻き取ればよい。尚、図2においては、スパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)を説明するための最低限のローラしか記載していないが、図示していないローラも存在する。
また、巻出室110、乾燥室111、成膜室112、搬送室400、成膜室312、および、巻取室113を構成する各真空室は排気設備を備え、特に、成膜室112、312ではスパッタリング成膜のため到達圧力10-4Pa程度までの減圧と、その後のスパッタリングガス導入による0.1~10Pa程度の圧力調整が行われる。スパッタリングガスにはアルゴン等公知のガスが使用され、目的に応じて更に酸素等のガスが添加される。各真空室の形状や材質は、このような減圧状態に耐え得るものであれば特に限定はなく、種々のものを使用することができる。各真空室内を減圧してその状態を維持するため、図示しないドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等の種々の装置が設けられている。
また、金属シード層をスパッタリング成膜する場合、図2に示すように板状のターゲットが使用されるが、板状のターゲットを用いた場合、ターゲット上にノジュール(異物の成長)を発生することがある。これが問題になる場合には、ノジュールの発生がなく、ターゲットの使用効率も高い円筒形ロータリーターゲットを使用することが好ましい。
また、図2のスパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)ではマグネトロンスパッタリングカソードが図示されているが、CVD(化学蒸着)や蒸着処理等他の真空成膜装置を用いる場合には、板状ターゲットに代えて他の真空成膜手段が組み込まれる。
3.長尺樹脂フィルムをその層間に長尺合紙を挟み込んで巻回した場合の問題
金属膜付き樹脂フィルムに適用される長尺樹脂フィルムとしては、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルムまたは液晶ポリマー系フィルムから選ばれる耐熱性の樹脂フィルム等が例示される。これ等の樹脂フィルムを用いて得られる金属膜付き樹脂フィルムは、上述したフレキシブル配線基板に要求される柔軟性、実用上必要な強度、配線材料として好適な電気絶縁性に優れているからである。
他方、片面若しくは両面に金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルムの層間に挟み込まれる長尺合紙も、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルムまたは液晶ポリマー系フィルムから選ばれる樹脂フィルム等が使用される。
ところで、両面に金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルムをスパッタリングウェブコータ等の真空成膜装置内において空気の介在なしでロール状に巻回した場合、金属シード層同士が貼り付くブロッキング現象を引き起こし、ロールから長尺樹脂フィルムを巻き出したときに金属シード層のどちらかの面が局所的に引き剥がされてしまう問題が存在する。この問題を回避するため上記長尺合紙が利用されるが、長尺樹脂フィルムの層間に長尺合紙を挟み込みながら巻き取った場合、成膜直後の金属シード層表面に長尺合紙が接触することになるため、長尺合紙の成分(例えば、上述した樹脂フィルム成分や樹脂フィルムに含まれる溶剤成分等)が金属シード層の表面に局所的に転移してしまうことがある。そして、長尺合紙の成分が金属シード層表面に局所的に転移された長尺樹脂フィルムをロールから巻き出して湿式メッキを行った場合、金属シード層表面に転移された上記成分に起因して金属膜にピンホール等の欠陥を生ずる新たな問題が確認されている。
この問題に対し、上記成分が金属シード層表面に局所的に転移された長尺樹脂フィルムをロールから巻き出した後、湿式メッキ槽内に搬入する前に金属シード層表面を希硫酸溶液等で酸洗浄する方法が検討されたが、上記金属シード層表面に転移した長尺合紙の成分を希硫酸溶液等で完全に除去することは難しく、ピンホール等の発生を完全に無くすことは困難であった。
本実施形態に係る金属膜付き樹脂フィルム製造装置は、金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルムを湿式メッキ槽内に搬入する前に、金属シード層表面を大気圧プラズマ洗浄してピンホール等が存在しない金属膜付き樹脂フィルムを提供するものである。
4.従前の大気圧プラズマ洗浄装置を組み込んだ金属膜付き樹脂フィルム製造装置
プラズマ処理ボックス662内において長尺樹脂フィルム601の搬送方向に沿って二組の大気圧プラズマヘッド665、666が並んで配置された従来例に係る「大気圧プラズマ洗浄装置」を組み込んだ金属膜付き樹脂フィルム製造装置を図3に示す。
尚、スパッタリングウェブコータ(真空成膜装置)の場合と同様、金属膜付き樹脂フィルム製造装置を説明する最低限のロールしか図示しておらず、かつ、モータで駆動するローラはM(モータ)、張力測定ローラはTP(テンションピックアップ)、フリーローラはF(フリー)の記号を付している。
従前の大気圧プラズマ洗浄装置を組み込んだ金属膜付き樹脂フィルム製造装置は、図3に示すように、金属シード層を成膜した長尺樹脂フィルム601が巻回された長尺樹脂フィルム巻出ロール600と、長尺樹脂フィルム巻出ロール600から巻き出された長尺樹脂フィルム601の金属シード層表面を洗浄する「大気圧プラズマ洗浄装置」と、「大気圧プラズマ洗浄装置」から搬出される長尺樹脂フィルム601の金属シード層上に金属膜を形成する「湿式メッキ装置」と、「湿式メッキ装置」から搬出された長尺樹脂フィルム601を巻き取る長尺樹脂フィルム巻取ロール641とで構成されている。
上記長尺樹脂フィルム巻出ロール600には、金属シード層を成膜した長尺樹脂フィルム601がその層間に長尺合紙603を挟み込みながら巻回されており、長尺樹脂フィルム巻出ロール600から長尺樹脂フィルム601を巻き出すときに上記長尺合紙603が分離され、該長尺合紙603はフリーローラ604を介し長尺合紙巻取ロール602に回収されるようになっている。尚、長尺合紙巻取張力については、中間に張力測定ローラを配置して長尺合紙巻取ロール602のモータトルクにフィードバック制御してもよいし、モータに付随したトルク計とエンコーダ信号から求めてもよい。
上記長尺樹脂フィルム巻出ロール600から巻き出された長尺樹脂フィルム601は、フリーローラ605、張力測定ローラ606、フリーローラ607を経由して「大気圧プラズマ洗浄装置」のプラズマ処理ボックス662内に搬入される。
上記「大気圧プラズマ洗浄装置」のプラズマ処理ボックス662内をフローティング状態で搬送される長尺樹脂フィルム601に対し、長尺樹脂フィルム601の搬送方向に沿って並んで配置された大気圧プラズマヘッド665、666から大気圧プラズマが照射されるように構成されている。また、長尺樹脂フィルム601の両面(第1面と第2面)処理が可能となるように、上記大気圧プラズマヘッド665、666は長尺樹脂フィルム601を挟んでそれぞれ反対側に配置されている。尚、大気圧プラズマ処理は、使用するガスと条件によって大量のオゾンを発生するため排気が必要となり、また、使用するガスと条件によって長尺樹脂フィルムが高温になる場合があるため、プラズマ照射された長尺樹脂フィルムがあまり高温にならないよう適宜調整されている。
上記「大気圧プラズマ洗浄装置」から搬出された長尺樹脂フィルム601は、湿式メッキ槽642、643、644、645を有する「湿式メッキ装置」に搬入される。
すなわち、「大気圧プラズマ洗浄装置」のプラズマ処理ボックス662から搬出された長尺樹脂フィルム601は、フリーローラ608、両面分に相当する給電ローラ609、610を経由して湿式メッキ槽642内に搬入され、かつ、湿式メッキ槽642内のフリーローラ613、614を経由して湿式メッキ槽642から搬出された後、給電ローラ615、616を通過し、フリーローラ617、両面分に相当する給電ローラ618、619を経由して湿式メッキ槽643内に搬入される。
次に、上記湿式メッキ槽643内に搬入された長尺樹脂フィルム601は、湿式メッキ槽643内のフリーローラ620、621を経由して湿式メッキ槽643から搬出された後、給電ローラ622、623を通過し、かつ、フリーローラ624、両面分に相当する給電ローラ625、626を経由して湿式メッキ槽644内に搬入される。
次いで、上記湿式メッキ槽644内に搬入された長尺樹脂フィルム601は、湿式メッキ槽644内のフリーローラ627、628を経由して湿式メッキ槽644から搬出された後、給電ローラ629、630を通過し、かつ、フリーローラ631、両面分に相当する給電ローラ632、633を経由して湿式メッキ槽645内に搬入される。
そして、上記湿式メッキ槽645内に搬入された長尺樹脂フィルム601は、湿式メッキ槽645内のフリーローラ634、635を経由して湿式メッキ槽645から搬出された後、給電ローラ636、637を通過して「湿式メッキ装置」から搬出される。
尚、この金属膜付き樹脂フィルム製造装置においては「湿式メッキ装置」が4槽の湿式メッキ槽642、643、644、645で構成されているが、4槽に限定されるものでは無く、4槽以下若しくは4槽以上の湿式メッキ槽で構成してもよい。また、図3は、水洗槽やメッキ槽循環に必要なポンプ類等について図示を省略している。
また、「湿式メッキ装置」を構成する湿式メッキ槽642、643、644、645内には、搬入される長尺樹脂フィルム601の両面分に相当するアノード646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661がそれぞれ配置されている。また、湿式メッキ槽642、643、644、645における各面の長尺樹脂フィルム601がカソードとなるための給電ローラとアノードはペアでめっき電源(整流器)に接続されている。尚、湿式メッキ槽642、643、644、645には硫酸銅めっき槽を使用している。
次に、「湿式メッキ装置」から搬出された長尺樹脂フィルム601は、フリーローラ638、張力測定ローラ639、および、フリーローラ640を経由して長尺樹脂フィルム巻取ロール641に巻き取られるように構成されている。尚、フィルムの巻取張力は、張力測定ローラ639で測定され、長尺樹脂フィルム巻取ロール641にフィードバック制御されるように構成されている。
そして、従前(従来例)の「大気圧プラズマ洗浄装置」が組み込まれた金属膜付き樹脂フィルム製造装置によれば、プラズマ処理ボックス662内をフローティング状態で搬送される長尺樹脂フィルム601の一方の金属シード層表面(第1面)に向け上流側の大気圧プラズマヘッド666から大気圧プラズマを照射して第1面が洗浄され、次いで、長尺樹脂フィルム601の他方の金属シード層表面(第2面)に向け下流側の大気圧プラズマヘッド665から大気圧プラズマを照射して第2面も洗浄されることから、金属シード層(第1面と第2面)上の金属膜にピンホール等の欠陥が形成され難いため、高品質な金属膜付き樹脂フィルムを製造することが可能となる。
従前(従来例)の大気圧プラズマ洗浄装置が組み込まれた場合の課題
しかし、長尺樹脂フィルム601の一方の金属シード層表面(第1面)に向け上流側の大気圧プラズマヘッド666からプラズマ照射し、次いで、下流側の大気圧プラズマヘッド665から長尺樹脂フィルム601の他方の金属シード層表面(第2面)に向けプラズマ照射する従前の「大気圧プラズマ洗浄装置」が組み込まれた場合、プラズマ照射される金属シード層(第1面)とは反対側の金属シード層表面(第2面)が裏面周囲雰囲気(大気)の酸素により酸化され易く、下流側の大気圧プラズマヘッド665による金属シード層表面(第2面)の洗浄効果が低下してしまう問題が存在した。
5.第一実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置
大気圧プラズマ装置は、真空設備を必要とせず、樹脂フィルムにプラズマを照射できる装置であり、樹脂フィルムの表面改質や表面を荒す等の目的で使用される。真空プラズマ装置と同様、電源のタイプは中周波(MHz)、高周波(MHz)、マイクロ波(GHz)があり、周波数が高い程、表面の荒れが少ない均一な効果が期待できる。プラズマガスのベースには、窒素、アルゴン、空気等が採用され、目的に応じて微量の添加ガスが混合される。
そして、図3に示す金属膜付き樹脂フィルム製造装置に組み込まれる第一実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置は、従前(従来例)の「大気圧プラズマ洗浄装置」が組み込まれた場合における大気圧プラズマの熱負荷に起因する裏面酸化を防止して、金属シード層の各表面(第1面と第2面)を均等に洗浄するようにしたものである。
すなわち、第一実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置は、図4~図6に示すようにプラズマ処理ボックス700と、該プラズマ処理ボックス700内において長尺樹脂フィルム10の搬送方向に沿って並んで設けられた第一洗浄部710と第二洗浄部720とで構成されている。
上記第一洗浄部710は、長尺樹脂フィルム10がフローティング状態で搬送される搬送路を室内に有する第一搬送室711と、上記搬送路を挟んで第一搬送室711の一方側に連設されかつ上記搬送路に向け開口する第一スリット部715を有すると共に長尺樹脂フィルム10の第1面に向けてプラズマPを照射する第一大気圧プラズマヘッド712と、上記搬送路を挟んで第一搬送室711の他方側に設けられかつ搬送路内における上記長尺樹脂フィルム10の第2面側に回り込んだプラズマガスを排出する第一排気管713とで構成され、かつ、第一搬送室711における長尺樹脂フィルム10の搬入側と搬出側にはスリット状の開口71a、71bが設けられている。
また、上記第二洗浄部720は、長尺樹脂フィルム10がフローティング状態で搬送される搬送路を室内に有する第二搬送室721と、上記搬送路を挟んで第二搬送室721の一方側に連設されかつ上記搬送路に向け開口する第二スリット部725を有すると共に長尺樹脂フィルム10の第2面に向けてプラズマPを照射する第二大気圧プラズマヘッド722と、上記搬送路を挟んで第二搬送室721の他方側に設けられかつ搬送路内における上記長尺樹脂フィルム10の第1面側に回り込んだプラズマガスを排出する第二排気管723とで構成され、かつ、第二搬送室721における長尺樹脂フィルム10の搬入側と搬出側にもスリット状の開口72a、72bが設けられている。
尚、上記第一大気圧プラズマヘッド712の第一スリット部715および第二大気圧プラズマヘッド722の第二スリット部725からプラズマPと共に放出される上記プラズマガスには、窒素若しくはアルゴンに微量の酸素、水素等が添加されることがあるが、多くとも0.1%未満であり、大気中の酸素濃度より遙かに少ない。
そして、第一実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置によれば、図4に示すように上流側に位置する第一洗浄部710で長尺樹脂フィルム10の金属シード層(第1面)がプラズマ洗浄される際、長尺樹脂フィルム10の裏面側(第2面側)においては、第2面側に回り込んだプラズマガスを第一排気管713により排出して酸素が極端に少ない雰囲気になっているため、大気圧プラズマの熱負荷に起因した裏面酸化[すなわち、金属シード層(第2面)の酸化]を防止することができる。
また、下流側に位置する第二洗浄部720で長尺樹脂フィルム10の金属シード層(第2面)がプラズマ洗浄される際、上述したように第一洗浄部710での金属シード層(第2面)の酸化が防止されていることから第二洗浄部720による金属シード層(第2面)の洗浄効果が落ちていないため、長尺樹脂フィルム10における金属シード層(第1面)と金属シード層(第2面)を均等に洗浄することが可能となる。更に、長尺樹脂フィルム10の第1面側に回り込んだプラズマガスを第二洗浄部720の第二排気管723で排出しているため、上流側の第一洗浄部710でプラズマ洗浄された金属シード層表面(第1面)が下流側の第二洗浄部720において酸化されることもない。
このため、金属シード層(第1面)と金属シード層(第2面)に湿式メッキ法により形成される各金属膜にピンホール等の欠陥が生じ難くなり、より高品質な金属膜付き樹脂フィルムを高い歩留まりで製造することが可能となる。
6.第二実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置
図3に示す金属膜付き樹脂フィルム製造装置に組み込まれる第二実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置は、第一実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置と同様、従前の「大気圧プラズマ洗浄装置」が組み込まれた場合における大気圧プラズマの熱負荷に起因する裏面酸化を防止して、金属シード層の各表面(第1面と第2面)を均等に洗浄するようにしたものである。
すなわち、第二実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置は、図7~図8に示すようにプラズマ処理ボックス800と、該プラズマ処理ボックス800内において長尺樹脂フィルム10の搬送方向に沿って並んで設けられた第一洗浄部810と第二洗浄部820とで構成され、上記第一洗浄部810は、長尺樹脂フィルム10がフローティング状態で搬送される搬送路を室内に有する第一搬送室811と、搬送路を挟んで第一搬送室811の一方側に連設されかつ搬送路に向け開口する第一スリット部815を有すると共に長尺樹脂フィルム10の第1面に向けてプラズマPを照射する第一大気圧プラズマヘッド812と、搬送路を挟んで第一搬送室811の他方側に設けられかつ搬送路内における長尺樹脂フィルム10の第2面側に回り込んだプラズマガスを排出する第一排気管813とで構成され、上記第一大気圧プラズマヘッド812における搬送路側の第一スリット部815周囲および第一排気管813の開口周囲にガス隔壁817、818が付設されている。また、上記第二洗浄部820は、長尺樹脂フィルム10がフローティング状態で搬送される搬送路を室内に有する第二搬送室821と、搬送路を挟んで第二搬送室821の一方側に連設されかつ搬送路に向け開口する第二スリット部(図示せず)を有すると共に長尺樹脂フィルム10の第2面に向けてプラズマPを照射する第二大気圧プラズマヘッド822と、搬送路を挟んで第二搬送室821の他方側に設けられかつ搬送路内における長尺樹脂フィルム10の第1面側に回り込んだプラズマガスを排出する第二排気管823とで構成され、上記第二大気圧プラズマヘッド822における搬送路側の第二スリット部周囲および第二排気管823の開口周囲にガス隔壁827、828が付設されている。
尚、第一実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置と同様、第一搬送室811における長尺樹脂フィルム10の搬入側と搬出側にスリット状の開口81a、81bが設けられ、かつ、第二搬送室821における長尺樹脂フィルム10の搬入側と搬出側にもスリット状の開口82a、82bが設けられている。
そして、第二実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置においても、第一実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置と同様、大気圧プラズマの熱負荷に起因した裏面酸化[すなわち、金属シード層(第2面)の酸化]を防止できるため、長尺樹脂フィルム10の金属シード層(第1面)と金属シード層(第2面)を均等に洗浄することが可能となり、かつ、長尺樹脂フィルム10の第1面側に回り込んだプラズマガスを第二洗浄部820の第二排気管823で排出しているため、上流側の第一洗浄部810でプラズマ洗浄された金属シード層表面(第1面)が下流側の第二洗浄部820において酸化されることもない。
また、第二実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置においては、第一大気圧プラズマヘッド812における搬送路側の第一スリット部815周囲および第一排気管813の開口周囲にガス隔壁817、818が付設され、第二大気圧プラズマヘッド822における搬送路側の第二スリット部周囲および第二排気管823の開口周囲にガス隔壁827、828が付設され、これにより第一搬送室811の開口81a、81bおよび第二搬送室821の開口82a、82bからプラズマガスが外部へ漏れ難くなり、更に、プラズマ処理ボックス800内に存在する酸素が図7のプラズマP照射エリアに流れ込み難くなるため、第一実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置に較べて金属シード層の裏面酸化が更に起こり難くなり、この結果、金属シード層の各表面(第1面と第2面)をより均等に洗浄することが可能となる。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
尚、実施例で使用した真空成膜装置は長尺樹脂フィルムの両面に金属シード層を成膜する図2のスパッタリングウェブコータが適用され、また、金属膜付き樹脂フィルム製造装置については図7~図8に示した第二実施形態に係る大気圧プラズマ洗浄装置を組み込んだ金属膜付き樹脂フィルム製造装置が適用されている。
[金属シード層の成膜]
図2に示すスパッタリングウェブコータを用いて長尺樹脂フィルムの両面に金属シード層を成膜した。図2に示す長尺樹脂フィルム114には、幅600mm、長さ1000m、厚さ25μmの宇部興産株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックス(登録商標)」を使用した。
長尺樹脂フィルム114の両面(第1面と第2面)に成膜する金属シード層は、第一層であるNi-Cr膜の上に第二層であるCu膜を成膜するものとし、そのため、長尺樹脂フィルム114の第1面に金属シード層を成膜する成膜室112に設けられたマグネトロンスパッタカソード139のターゲットにはNi-Crターゲットを用い、マグネトロンスパッタカソード140、141、142のターゲットにはCuターゲットを用いた。また、長尺樹脂フィルム114の第2面に金属シード層を成膜する成膜室312に設けられたマグネトロンスパッタカソード342のターゲットにはNi-Crターゲットを用い、マグネトロンスパッタカソード341、340、339のターゲットにはCuターゲットを用いた。
そして、この状態で、複数台のドライポンプを用いて成膜室112および成膜室312内の空気を5Paまで排気した後、更に、複数台のターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて3×10-3Paまで排気した。
次に、スパッタリングウェブコータの回転駆動装置を起動して長尺樹脂フィルム114を搬送速度5m/分で搬送させながら、アルゴンガスを300sccmで導入すると共に、それぞれNi-Crターゲットのマグネトロンスパッタカソードには20kW、それぞれCuターゲットのマグネトロンスパッタカソードには30kWの電力を印加して、第一層であるNi-Cr層25nm、第二層であるCu層100nmを成膜した。
そして、両面に金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルム114を巻取室113内に搬入し、ブロッキングが起こらないように長尺樹脂フィルム114の層間に長尺合紙149を挟み込みながら巻取ロール146に長尺樹脂フィルム114を巻き取った。
尚、長尺合紙149には、厚さ10μmのPETフィルムを使用したがPP(ポリプロピレン)フィルムを使用してもよい。
[金属膜の形成]
Ni-Cr層とCu層から成る金属シード層が両面に成膜されかつフィルム層間にブロッキング防止用の長尺合紙を挟み込みながら巻き取られた長尺樹脂フィルム601を、上記金属膜付き樹脂フィルム製造装置の長尺樹脂フィルム巻出ロール600から長尺合紙603を分離しながら巻き出すと共に、搬送速度1m/分で上記長尺樹脂フィルム601を「大気圧プラズマ洗浄装置」内に搬入し、第一洗浄部810と第二洗浄部820で金属シード層表面を洗浄して金属シード層表面に転移した長尺合紙603からの成分を除去した後、搬送速度1m/分で「湿式メッキ装置」内に搬入して金属シード層上に1μmのCu層をメッキした。
更に、搬送速度を3m/分に変更して長尺樹脂フィルム601を「大気圧プラズマ洗浄装置」内に搬入し、第一洗浄部810と第二洗浄部820で金属シード層表面を洗浄して金属シード層表面に転移した長尺合紙603からの成分を除去した後、搬送速度3m/分の条件で「湿式メッキ装置」内に搬入して金属シード層上に1μmのCu層をメッキした。
尚、「大気圧プラズマ洗浄装置」には、アルゴンガスに100ppmの酸素が混合されたプラズマガスを用いたリモート型の高周波(13MHz)プラズマ装置が用いられ、図7に示すプラズマ処理ボックス800内において長尺樹脂フィルム10の搬送方向に沿って並んで設けられた第一洗浄部810の第一大気圧プラズマヘッド812と第二洗浄部820の第二大気圧プラズマヘッド822に図示外のプラズマ電源から500Vを印加している。
そして、「大気圧プラズマ洗浄装置」から搬出される洗浄直後における長尺樹脂フィルム601の両面(金属シード層表面)を観察したところ、搬送速度が1m/分の場合、および、搬送速度が3m/分の場合とも、赤く変色する現象(すなわち、金属シード層が酸化される現象)は確認されなかった。
[比較例]
プラズマ処理ボックス662内において大気圧プラズマヘッド665と大気圧プラズマヘッド666が長尺樹脂フィルム601の搬送方向に沿って並んで配置されている図3の金属膜付き樹脂フィルム製造装置を用い、搬送速度1m/分で長尺樹脂フィルム601を「大気圧プラズマ洗浄装置」内に搬入し、その大気圧プラズマヘッド665と大気圧プラズマヘッド666で金属シード層表面を洗浄して転移した長尺合紙603からの成分を除去した後、搬送速度1m/分の条件で「湿式メッキ装置」内に搬入して金属シード層上に1μmのCu層をメッキした。
更に、搬送速度を3m/分に変更して長尺樹脂フィルム601を「大気圧プラズマ洗浄装置」内に搬入し、その大気圧プラズマヘッド665と大気圧プラズマヘッド666で金属シード層表面を洗浄して金属シード層表面に転移した長尺合紙603からの成分を除去した後、搬送速度3m/分の条件で「湿式メッキ装置」内に搬入して金属シード層上に1μmのCu層をメッキした。
尚、上記「大気圧プラズマ洗浄装置」には、アルゴンガスに100ppmの酸素が混合されたプラズマガスを用いたリモート型の高周波(13MHz)プラズマ装置が用いられ、プラズマ処理ボックス662内において長尺樹脂フィルム601の搬送方向に沿って並んで配置された大気圧プラズマヘッド665と大気圧プラズマヘッド666に図示外のプラズマ電源から500Vを印加している。
そして、「大気圧プラズマ洗浄装置」から搬出されるプラズマ洗浄直後における長尺樹脂フィルム601の両面(金属シード層表面)を観察したところ、搬送速度が1m/分の場合、および、搬送速度が3m/分の場合ともに赤く変色する現象(すなわち、金属シード層が酸化される現象)が確認され、特に、低速である搬送速度が1m/分の場合に顕著であった。
[評価方法]
図9に示すように、長尺合紙の成分(上述したように樹脂フィルム成分や樹脂フィルムに含まれる溶剤成分等)100が長尺樹脂フィルムの金属シード層101表面に局所的に転移してしまうと、この部分が、湿式メッキ後に直径数μmのピンホールになってしまうことが電子顕微鏡観察により確認されている。これを応用し、大気圧プラズマによる上記転移成分の洗浄効果をピンホール数で評価することができる。
但し、両面に金属膜が形成された両面金属膜付き樹脂フィルムにおけるピンホールの確認は困難なため、まず、評価用に用意した両面金属膜付き樹脂フィルムにおける第1面の金属膜をマスキングしてその反対面(第2面)の金属膜をエッチングにより除去し、その後、透過顕微鏡で5.6mm×4.2mm視野範囲のピンホールを撮影し、直径3μm以上のピンホールを画像解析によりカウントして評価する。同様に、評価用に用意した別の両面金属膜付き樹脂フィルムにおける第2面の金属膜をマスキングしてその反対面(第1面)の金属膜をエッチングにより除去し、その後、透過顕微鏡で5.6mm×4.2mm視野範囲のピンホールを撮影し、直径3μm以上のピンホールを画像解析によりカウントして評価する。
このような評価による大気圧プラズマの有無によるピンホール数の減少を表1に示す。
尚、表1中「プラズマ照射無」欄は、プラズマ洗浄がなされていない両面金属膜付き樹脂フィルムにおける第1面と第2面のピンホール数を示している。
Figure 0007161143000001
[確 認]
(1)表1に示す結果から、実施例においては、搬送速度が1m/分の場合および搬送速度が3m/分の場合ともに、プラズマ洗浄がなされていない両面金属膜付き樹脂フィルムの第1面と第2面におけるピンホール数(表1の「プラズマ照射無」欄参照)より著しく減少していることが確認される。
(2)他方、比較例においては、プラズマ洗浄がなされていない両面金属膜付き樹脂フィルムの第1面と第2面におけるピンホール数より著しく減少していることが確認されるが、第2面のピンホール数が第1面より若干多いことも確認される。
この理由として、両面金属膜付き樹脂フィルムの第1面が大気圧プラズマヘッド666でプラズマ洗浄されているときに裏面側の第2面が酸化され、これにより第2面(表面が若干酸化されている)の洗浄効果が低下したためと推察している。
本発明によれば、金属膜にピンホール等の無い高品質な金属膜付き樹脂フィルムを高い歩留まりで製造できるため、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等のフレキシブル配線基板に用いられる金属膜付き樹脂フィルムの製造装置として適用される産業上の利用可能性を有している。
P プラズマ
71a、71b、72a、72b、81a、81b、82a、82b 開口
100 長尺合紙から転移した成分
101 金属シード層
110、210 巻出室
111、211 乾燥室
124、224 ヒータユニット
112、212、312 成膜室
400 搬送室
113、213 巻取室
114、214 長尺樹脂フィルム
10、601 金属シード層が成膜された長尺樹脂フィルム
115、215、600 長尺樹脂フィルム巻出ロール
146、246、641 長尺樹脂フィルム巻取ロール
149、249、603 長尺合紙
148、248 長尺合紙巻出ロール
602 長尺合紙巻取ロール
131、231、331 キャンローラ
138、238、338 遮蔽板
139、140、141、142、239、240、241、242、339、340、341、342 スパッタリングカソード
116、118、120、122、123、143、145、147、216、218、220、222、223、243、245、247、401、402、403、604、605、607、608、613、614、617、620、621、624、627、628、631、634、635、638、640 フリーローラ
117、121、130、132、144、217、221、230、232、244、332、330、606、639 張力測定ローラ
119、129、133、219、229、233、333、329 モータ駆動ローラ
642、643、644、645 湿式メッキ槽
609、610、615、616、618、619、622、623、625、626、629、630、632、633、636、637 給電ローラ
646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661 アノード
662、700、800 プラズマ処理ボックス
665、666 大気圧プラズマヘッド
712、812 第一大気圧プラズマヘッド
722、822 第二大気圧プラズマヘッド
715、815 第一スリット部
725 第二スリット部
710、810 第一洗浄部
711、811 第一搬送室
713、813 第一排気管
720、820 第二洗浄部
721、821 第二搬送室
723、823 第二排気管
817、818、827、828 ガス隔壁

Claims (9)

  1. 両面に金属シード層を成膜した長尺樹脂フィルムがその層間に長尺合紙を挟み込みながら巻回された長尺樹脂フィルム巻き出しロールと、
    該長尺樹脂フィルム巻き出しロールから巻き出される長尺樹脂フィルムから上記長尺合紙を分離して巻き取る長尺合紙巻き取りロールと、
    上記長尺合紙が分離された長尺樹脂フィルムを搬入してその金属シード層上に金属膜を形成する湿式メッキ槽と、
    上記金属膜が形成された長尺樹脂フィルムを巻き取る長尺樹脂フィルム巻き取りロールを備え、かつ、
    上記長尺樹脂フィルム巻き出しロールと湿式メッキ槽との間に、長尺合紙が分離された長尺樹脂フィルムの金属シード層表面を洗浄する大気圧プラズマ洗浄装置が設けられた金属膜付き樹脂フィルムの製造装置において、
    上記大気圧プラズマ洗浄装置のプラズマ処理ボックス内に長尺樹脂フィルムの搬送方向に沿って第一洗浄部と第二洗浄部が並んで設けられ、
    上記第一洗浄部は、長尺樹脂フィルムが搬送される搬送路を室内に有する第一搬送室と、上記搬送路を挟んで第一搬送室の一方側に連設されかつ上記搬送路に向け開口する第一スリット部を有すると共に長尺樹脂フィルムの第1面に向けてプラズマを照射する第一大気圧プラズマヘッドと、上記搬送路を挟んで第一搬送室の他方側に設けられかつ搬送路内における上記長尺樹脂フィルムの第2面側に回り込んだプラズマガスを排出する第一排気管とで構成され、
    上記第二洗浄部は、長尺樹脂フィルムが搬送される搬送路を室内に有する第二搬送室と、上記搬送路を挟んで第二搬送室の一方側に連設されかつ上記搬送路に向け開口する第二スリット部を有すると共に長尺樹脂フィルムの第2面に向けてプラズマを照射する第二大気圧プラズマヘッドと、上記搬送路を挟んで第二搬送室の他方側に設けられかつ搬送路内における上記長尺樹脂フィルムの第1面側に回り込んだプラズマガスを排出する第二排気管とで構成されていることを特徴とする金属膜付き樹脂フィルムの製造装置。
  2. 上記第一大気圧プラズマヘッドにおける搬送路側の第一スリット部周囲と第一排気管の開口周囲にガス隔壁が付設され、かつ、上記第二大気圧プラズマヘッドにおける搬送路側の第二スリット部周囲と第二排気管の開口周囲にガス隔壁が付設されていることを特徴とする請求項1に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造装置。
  3. 上記長尺樹脂フィルムの金属シード層と金属膜は、Cuを主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造装置。
  4. 上記長尺合紙は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、アラミド、ポリイミド、トリアセテートの単体若しくはこれ等を貼り合わせた複合体で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造装置。
  5. 上記大気圧プラズマ洗浄装置は、遠隔操作型であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造装置。
  6. 両面に金属シード層を成膜した長尺樹脂フィルムがその層間に長尺合紙を挟み込みながら巻回された長尺樹脂フィルム巻き出しロールから上記長尺樹脂フィルムを巻き出す工程と、
    長尺樹脂フィルム巻き出しロールから巻き出された長尺樹脂フィルムから上記長尺合紙を分離して長尺合紙巻き取りロールに巻き取る工程と、
    上記長尺合紙が分離された長尺樹脂フィルムを湿式メッキ槽に搬入してその金属シード層上に金属膜を形成する工程と、
    上記金属膜が形成された長尺樹脂フィルムを長尺樹脂フィルム巻き取りロールに巻き取る工程を具備する金属膜付き樹脂フィルムの製造方法において、
    上記長尺合紙を分離した長尺樹脂フィルムが湿式メッキ槽に搬入される前に、上記長尺樹脂フィルム巻き出しロール側に設けられた第一大気圧プラズマヘッドから長尺樹脂フィルムの第1面側に向けプラズマを照射して長尺樹脂フィルムの第1面を洗浄しかつ長尺樹脂フィルムの第2面側にプラズマガスを回り込ませて排気すると共に、上記湿式メッキ槽側に設けられた第二大気圧プラズマヘッドから長尺樹脂フィルムの第2面側に向けプラズマを照射して長尺樹脂フィルムの第2面を洗浄しかつ長尺樹脂フィルムの第1面側にプラズマガスを回り込ませて排気することを特徴とする金属膜付き樹脂フィルムの製造方法。
  7. 上記長尺樹脂フィルムの金属シード層と金属膜がCuを主成分とすることを特徴とする請求項6に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造方法。
  8. 上記長尺合紙を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、アラミド、ポリイミド、トリアセテートの単体若しくはこれ等を貼り合わせた複合体で構成することを特徴とする請求項6に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造方法。
  9. 上記長尺樹脂フィルムの各金属シード層表面を大気圧プラズマ洗浄する装置を、遠隔操作型の装置で構成することを特徴とする請求項6に記載の金属膜付き樹脂フィルムの製造方法。
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