JP7155922B2 - 冷却ロールの製造方法、及び、薄肉鋳片の製造方法 - Google Patents
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そこで、例えば特許文献1、2には、冷却ロールの外周面に酸化物からなる溶射層を形成することにより、冷却ロールの外周面における緩冷却化を図り、熱ひずみに起因した割れや変形を抑制する技術が提案されている。
そこで、例えば特許文献3においては、溶射層の表面に封孔材を塗布して封孔処理を行うことにより、気孔内のガスが溶融金属側に排出されることを抑制し、薄肉鋳片の表面欠陥の発生を抑制する技術が提案されている。
(1)式:2r≦w≦1.2mm
(2)式:0<d≦D
(3)式:0<p-w≦2r
また、本体溝部の深さdが、溶射層の厚みDに対して、0<d≦Dの範囲内とされているので、冷却ロールの外周面全面を溶射層で覆うことができ、緩冷却効果が期待できる。
さらに、ピッチpと本体溝部の幅wとの差p-wが、溶射後の溶射粒子の長径2r以下とされているので、本体溝部同士の間の領域には、一つの溶射粒子が積層する構造となる。溶射粒子自体には気孔が存在していないことから、本体溝部同士の間の領域に形成された溶射層には気孔が存在せず、鋳造時に溝部同士の間の領域からガスが発生せず、ガスに起因する薄肉鋳片の表面疵の発生を抑制することができる。
(4)式:0°≦θ≦80°
この場合、前記本体溝部の延在方向と前記ロール本体の周方向とがなす角度θが、0°≦θ≦80°の範囲内とされているので、溶射層を備えた冷却ロールの外周面に形成された溝部も前記ロール本体の周方向とがなす角度θが、0°≦θ≦80°の範囲内とされることになり、鋳造時において、溶射層の気孔内のガスが冷却ロールの周方向に沿って溶融金属プール部の湯面に向けて排出されることになり、凝固シェル内にガスが巻き込まれることを抑制できる。
(5)式:Vs>Ve
この場合、前記ロール本体の外周面における単位面積当たりの前記本体溝部の体積Vsを、前記冷却ロールの外周面における単位面積当たりの前記溶射層から発生するガス体積Veよりも大きくすることで、溶射層を備えた冷却ロールの外周面に形成された溝部を介して、溶射層の気孔内のガスを確実に排出することができる。
また、本実施形態では、製造される薄肉鋳片1の幅が200mm以上1800mm以下の範囲内、厚さが0.8mm以上5mm以下の範囲内とされている。
図1に示す双ロール式連続鋳造装置10は、一対の冷却ロール20(20A,20B)と、薄肉鋳片1を支持するピンチロール12,12及び13,13と、一対の冷却ロール20(20A,20B)の幅方向端部に配設されたサイド堰15と、これら一対の冷却ロール20(20A,20B)とサイド堰15とによって画成された溶鋼プール部16に供給される溶鋼3を保持するタンディッシュ18と、このタンディッシュ18から溶鋼プール部16へと溶鋼3を供給する浸漬ノズル19と、を備えている。
ロール本体21は、熱伝導性に優れた金属で構成されており、本実施形態では、銅又は銅合金で構成されている。
溶射層25は、図2(b)に示すように、酸化物からなる溶射粒子26がロール本体21の外周面に堆積することが形成されている。なお、溶射層25(溶射粒子26)は、例えば、アルミナ、チタニア、クロミア、ジルコニア、イットリアから選択される一種又は二種以上で構成されたものを用いることが好ましい。
外周面に溝部が形成されていない従来の冷却ロール120においては、図3(a)のように、溶鋼3が冷却ロール120の表面に接触して凝固シェル5が形成される際に、溶射層125の表層部に位置する気孔127内のガスが凝固シェル5側に排出され、ガスの巻き込みや凝固遅れが発生し、凝固シェル5の冷却ロール120に接触した側の表面にクレータ状の表面疵が生じることになる。
(1)式:2r≦w≦1.2mm
(2)式:0<d≦D
(3)式:0<p-w≦2r
なお、本発明に使用する溶射前の溶射粒子は、球体であることを前提としている。したがって、溶射後の溶射粒子は、ほぼ円形であり、長径(2r)と短径との差はほとんど無い。
(4)式:0°≦θ≦80°
(5)式:Vs>Ve
ロール本体21の外周面に形成された本体溝部22の幅wが、溶射後の溶射粒子26の長径2rよりも小さい場合には、溶射層25を形成する際に、本体溝部22の内部に溶射粒子26が入り込むことがなく、本体溝部22に沿って溶射層25を形成することができず、溶射層25を備えた冷却ロール20の外周面に溝部28を形成することができなくなる。一方、本体溝部22の幅wが1.2mmを超える場合には、溶射層25を備えた冷却ロール20の外周面に形成された溝部28の幅も大きくなり、鋳造時において溝部28の内部に溶鋼3が入り込み、気孔27内のガスが溝部28を介して排出されず、溶鋼3側に排出されてしまい、ガスの巻き込みや凝固遅れが発生し、クレータ状の表面疵が生じるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、本体溝部22の幅wを、(1)式:2r≦w≦1.2mmを満足するように規定している。
なお、本体溝部22の幅wの下限は、0.3mm以上とすることが好ましく、0.4mm以上とすることがさらに好ましい。また、本体溝部22の幅wの上限は、1.0mm以下とすることが好ましく、0.8mm以下とすることがさらに好ましい。
ロール本体21の外周面に形成された本体溝部22の深さdが、溶射層25の厚みDを超えると、本体溝部22の内部に溶射粒子26が十分に堆積せず、溶射層25を安定して形成することができないおそれがある。なお、本体溝部22の深さdの下限は、ガスが通過することが可能であればよい。
以上のことから、本実施形態では、本体溝部22の深さdを、(2)式:0<d≦Dを満足するように規定している。
なお、溶射層25の厚みDは0.1mm以上0.15mm以下の範囲内であることが好ましいため、本体溝部22の深さdも0.1mm以上0.15mm以下の範囲内であることが好ましい。
本体溝部22のロール軸方向のピッチpと本体溝部22の幅wとの差p-wは、隣り合う本体溝部22同士の間の領域の幅となる。ここで、本体溝部22のロール軸方向のピッチpと本体溝部22の幅wとの差p-wが溶射後の溶射粒子の長径2rを超える場合には、隣り合う本体溝部22同士の間の領域に、複数の溶射粒子26が積層する構造となり、溶射粒子26と溶射粒子26との間に気孔27が形成されるおそれがある。なお、本体溝部22のロール軸方向のピッチpと本体溝部22の幅wとの差p-wの下限は、本体溝部22同士が連結しなければよい。
以上のことから、本実施形態では、ピッチpと本体溝部の幅wとの差p-wを、(3)式:0<p-w≦2rを満足するように規定している。
なお、ピッチpと本体溝部の幅wとの差p-wの下限は、0.01mm以上とすることが好ましく、0.1mm以上とすることがさらに好ましい。また、ピッチpと本体溝部の幅wとの差p-wの上限は、0.3mm以下とすることが好ましく、0.2mm以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態において、本体溝部22の延在方向とロール本体21の周方向とがなす角度θが、(4)式:0°≦θ≦80°を満足する場合には、本体溝部22がロール本体の周方向に向くように延在しており、冷却ロール20の外周面に形成された溝部28も冷却ロール20の周方向に向くように延在することになり、この溝部28を介して排出されたガスが、溶鋼プール部16の湯面に向かって排出され、凝固シェル5内にガスが巻き込まれることを抑制できる。
なお、本体溝部22の延在方向とロール本体21の周方向とがなす角度θは、0°とすることが最も好ましい。
本実施形態において、ロール本体21の外周面における単位面積当たりの本体溝部22の体積Vsが、冷却ロール20の外周面における単位面積当たりの溶射層25から発生するガス体積Veに対して、(5)式:Vs>Veを満足する場合には、溶射層25の気孔27内のガスを、溝部28を介して確実に排出することが可能となる。
まず、ロール本体21の外周面に本体溝部22を形成する。ここで、本実施形態においては、後述の溶射処理工程S02において形成される溶射層25及び溶射粒子26を考慮して、形成する本体溝部22の構造を決定する。
なお、本体溝部22の形成方法について特に限定はなく、既存の加工手段を適宜選択して適用すればよい。
次に、本体溝部22が形成されたロール本体21の外周面に対して溶射処理を行って、溶射層25を形成する。
溶射処理は、溶射粒子26を加熱・加圧し、高速で母材に衝突させ、母材の表面を被覆する表面処理方法である。本実施形態では、上述のように、各種酸化物からなる溶射粒子26を用いている。溶射方法には、フレーム溶射、アーク溶射、プラズマ溶射、高速フレーム溶射、爆発溶射などがあるが、それぞれで溶射粒子の加熱・加圧方法が異なる。ここで、溶射粒子のエネルギーが高いほど、形成される溶射層25の気孔率xが低くなる。
よって、冷却ロール20の外周面における単位面積当たりの溶射層25の体積V1及び気孔率xは、溶射粒子26の径、溶射粒子26を衝突させるときのエネルギー、溶射時間を調整することで制御可能である。
また、溶射後の溶射粒子26は、衝突によって扁平しており、その長径2rは、0.1mm以上0.3mm以下の範囲内であることが好ましい。本実施形態では、この溶射後の溶射粒子26の長径2rは、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて100個の溶射粒子26の長径を測定し、この平均値として求めた。
以上のようにして、本実施形態における冷却ロール20が形成されることになる。
また、ピッチpと本体溝部22の幅wとの差p-wが、溶射後の溶射粒子26の長径2r以下とされているので、隣接する本体溝部22、22同士の間の領域には、一つの溶射粒子26が積層する構造となり、本体溝部22,22同士の間の領域に形成された溶射層25には気孔27がほとんど存在せず、鋳造時に気孔27が溶鋼3と接触することを抑制でき、気孔27内のガスが凝固シェル5側に排出されることが抑制され、薄肉鋳片1の表面疵の発生を抑制することができる。
例えば、本実施形態では、図1に示すように、ピンチロールを配設した双ロール式連続鋳造装置を例に挙げて説明したが、これらのロール等の配置に限定はなく、適宜設計変更してもよい。
なお、(5)式については、溶鋼と接触する前の溶射層の温度T0を80℃、溶鋼と接触したときの溶射層の温度Tを1000℃として計算した。
特に、(1)~(5)式を満足する本発明例1~9においては、クレータ状の疵や穴あきが観察されず、さらに高品質な薄肉鋳片を製造することができた。
3 溶鋼(溶融金属)
5 凝固シェル
10 双ロール式連続鋳造装置
15 サイド堰
16 溶鋼プール部(溶融金属プール部)
20 冷却ロール
21 ロール本体
22 本体溝部
25 溶射層
26 溶射粒子
27 気孔
28 溝部
Claims (4)
- 回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に、溶融金属を供給し、前記冷却ロールの外周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置に用いられる冷却ロールの製造方法であって、
ロール本体の外周面に本体溝部を形成する本体溝部形成工程と、前記本体溝部が形成された前記ロール本体の外周面に対して溶射処理を行って、溶射層を形成する溶射処理工程と、を備えており、
前記本体溝部は、前記ロール本体の周方向に沿って周状に延在して形成されており、前記本体溝部の幅w、前記本体溝部の深さd、前記本体溝部のピッチp、溶射後の前記溶射粒子の長径2r、前記溶射層の厚みDとした場合に、以下の(1)~(3)式を満足することを特徴とする冷却ロールの製造方法。
(1)式:2r≦w≦1.2mm
(2)式:0<d≦D
(3)式:0<p-w≦2r - 前記本体溝部の延在方向と前記ロール本体の周方向とがなす角度θが、以下の(4)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の冷却ロールの製造方法。
(4)式:0°≦θ≦80° - 前記ロール本体の外周面における単位面積当たりの前記本体溝部の体積Vsが、前記冷却ロールの外周面における単位面積当たりの前記溶射層から発生するガス体積Veに対して、以下の(5)式を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷却ロールの製造方法。
(5)式:Vs>Ve - 回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に、溶融金属を供給し、前記冷却ロールの外周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷却ロールの製造方法で製造された前記冷却ロールを備えた双ロール式連続鋳造装置を用いることを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。
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