JP7154660B2 - 粘度計及び粘度測定方法 - Google Patents
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Description
本願は、2019年12月18日に、日本に出願された特願2019-228626号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
非特許文献1に記載された振動式粘度計による粘度評価の方法は、液体中に浸漬された振動子を共振させて往復運動を行い、振動子周辺の液体がせん断されることで振動子に負荷されるずり応力を基に液体の粘度を得る手法である。
[1] 固定部材と、上部ユニットと、下部ユニットと、情報処理ユニットとを備える粘度計であって、
前記上部ユニットは、圧電素子、前記圧電素子の前記下部ユニット側に配置された上部ディスク基板、前記圧電素子を前記固定部材に対して一方向に振動可能に支持する板バネ及び前記板バネの前記一方向の変位を検知する手段を有し、
前記下部ユニットは、下部ディスク基板、前記下部ディスク基板を固定する下部ディスクホルダ及び前記下部ディスク基板を固定した前記下部ディスクホルダを載置するステージを有し、
前記情報処理ユニットは、前記板バネの前記一方向の変位を検知する手段と、信号ケーブルを介して接続されており、
前記ステージは、前記上部ユニットの前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ユニットの前記下部ディスク基板の上面との間の距離を変更可能であるように、一定の方向に変位可能である、
粘度計。
[2] さらに、前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ディスク基板の上面との間の距離を計測する手段を有する、[1]に記載の粘度計。
[3] さらに、前記ステージを一定の方向に変位させる駆動系を有し、
前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ディスク基板の上面との間の距離を、前記計測する手段によって計測しながら、前記駆動系により変化させることができる、[2]に記載の粘度計。
[4] 前記上部ディスク基板の下面端と、前記下部ディスク基板の上面との間の距離を接触位置から、前記駆動系により一定距離離すことで変化させることができる、[3]に記載の粘度計。
[5] 前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ディスク基板の上面との間の距離が、0.1~1000μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の粘度計。
[6] 測定可能な試料の粘度が、0.1~20000mPa・sである、[1]~[5]のいずれかに記載の粘度計。
[7] 測定可能な試料の粘度が、0.5~10000mPa・sである、[1]~[6]のいずれかに記載の粘度計。
[8] 測定可能な試料の体積が、1~100μLである、[1]~[7]のいずれかに記載の粘度計。
[9] 測定可能な試料の体積が、1~50μLである、[1]~[8]のいずれかに記載の粘度計。
[10] 測定可能な試料の体積が、1~20μLである、[1]~[9]のいずれかに記載の粘度計。
[11] 測定可能な試料の体積が、5~20μLである、[1]~[9]のいずれかに記載の粘度計。
[12] 測定可能な試料が粒子を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の粘度計。
[13] 測定可能な試料が電解液である、[1]~[12]のいずれかに記載の粘度計。
[14] 測定可能な試料が生物の体液である、[1]~[12]のいずれかに記載の粘度計。
[15] 測定可能な試料が液状の薬剤である、[1]~[12]のいずれかに記載の粘度計。
[16] [1]~[15]のいずれかに記載の粘度計において、前記上部ディスク基板の下面と前記下部ディスク基板の上面との間の試料挿入部に試料を配置し、前記圧電素子に周波数を変化させながら交流電圧を印加することにより、前記上部ユニットの振動に伴う前記板バネの前記一方向の変位を検知する手段からの共振時の応答電圧を前記情報処理ユニットで測定し、前記試料の粘度を測定する、粘度測定方法。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
上部ディスク基板16は上部ディスクホルダ13を介して、圧電素子15の下部ユニット11側に配置されている。
ステージ24は、駆動系(図示せず)により一定の方向に変位可能であり、上部ディスク基板16の下面と、下部ディスク基板14の上面との間の距離(以下、「距離D」という場合がある。)を可変としている。
距離Dが可変なので、下部ディスク基板14の上に試料を乗せる場合にも有用である。
上部ユニット10と下部ユニット11とは、鉛直方向に上下に配置することが好ましい。この場合において、板バネ17は鉛直方向と平行であり、前記駆動系は、ステージ24を鉛直方向に変位可能である。
上部ディスク基板16の下面は、図1及び図2に示すとおり、上部ユニット10と下部ユニット11とを鉛直方向に上下に配置した場合において、下部ディスク基板14に対向する面である。下部ディスク基板14の上面は、図1及び図2に示すとおり、上部ユニット10と下部ユニット11とを鉛直方向に上下に配置した場合に、上部ディスク基板16に対向する面である。
圧電素子駆動ユニット40は、関数発生器と増幅器からなる。圧電素子駆動ユニット4は、圧電素子15に電気ケーブル18を介して交流電圧を印加し、圧電素子15を振動させる。また、圧電素子駆動ユニット40は、情報処理ユニット50と信号ケーブル(図示せず)で接続され、圧電素子15に印加する交流電圧の周波数等の情報を送るようにしてもよい。
前記ひずみゲージは、板バネ17の表面に1つ以上を配置することが好ましい。
前記静電容量計及び前記レーザー変位計は、非接触で板バネ17の一方向の変位(振幅)を計測できるように配置することが好ましい。
板バネ17の一方向の変位を検知する手段19としてひずみゲージを用いると、粘度計の構造を簡素化でき、生産性も向上できる。
上部ディスク基板16の下面及び下部ディスク基板の上面の一方又は両方を曲面(球面、円柱面、平面、又は球面及び円柱面以外の曲面を包含する)とする場合の曲率半径Rは、特に限定されないが、例えば、1~1000mmの範囲内とすることができる。液体試料の粘度によって、曲率半径Rを変更してもよい。例えば、低粘度の液体試料では曲率半径Rを大きくする方が好ましく、高粘度の液体試料では曲率半径Rを小さくする方が好ましい。
表面間の距離Dの測定にはニュートンリング、レーザー変位計又は静電容量計をはじめとする様々な距離計測手段を用いることができる。また、表面間の距離Dは、距離Dを計測しながら駆動系により変化させることもできるが、より簡便には接触位置から、駆動系により一定距離離すことで変化させることができる。
本発明の粘度計1を使用して試料の粘度を測定する場合の距離Dは、0.1~1000μmが好ましく、0.5~500μmがより好ましく、1~100μmがさらに好ましく、2~50μmがいっそう好ましく、5~20μmがよりいっそう好ましい。
粒子の粒子径は、上部ディスク基板16の下面と下部ディスク基板14の上面との間の距離Dを調整することができる範囲内であれば特に限定されないが、距離Dの1/2以下が好ましく、1/4以下がより好ましい。例えば、距離Dが20μmであるとき、粒子の粒径は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。本発明の粘度計1では、上部ディスク基板16の下面と下部ディスク基板14の上面との間の距離Dを調整することにより、例えば、5μm以上の粒子が含まれる試料の粘度測定にも対応させることができる。なお、粒子の粒子径としては、最小フェレ径を用いる。
本発明の粘度計1の測定可能な試料としては、例えば、電解液、生物の体液又は液状の薬剤が挙げられる。
前記電解液としては、例えば、電解コンデンサの電解液、電池の電解液又はイオン液体が挙げられる。前記電池の電解液としては、例えば、リチウムイオン電池の電解液が挙げられる。特に電池の電解液は、充放電の繰返しに伴う粘度増加は性能劣化の指標であり、事故防止のためにも粘度測定が重要である。ところが、実電池内の電解液の回収が困難且つ危険であり、回収できる量は100μL程度である。そのため、微量試料の粘度測定が可能な本発明の粘度計1は有用である。
前記生物の体液としては、例えば、血液、リンパ液、組織液又は体腔液が挙げられる。特に血液は、高血糖症又は高コレステロール血症等での粘度増大が見られるため、これらの疾患の検査等のために粘度測定が重要である。そのため、より低侵襲で赤血球等の粒子を含む微量試料の粘度測定が可能な本発明の粘度計1は有用である。
前記液状の薬剤としては、例えば、リポソーム懸濁液等の分散液、免疫グロブリン製剤や抗体医薬品等の溶液又はω-3脂肪酸等の液体が挙げられる。特にリポソーム懸濁液等のドラッグデリバリーシステム(DDS)の分子設計最適化指標として重要である。そのため、リポソーム等の粒子を含む微量試料の粘度測定が可能な本発明の粘度計1は有用である。
図1に示す粘度計を用いて、水(バルク粘度:1.0mPa・s)、炭酸ジエチレン(バルク粘度:0.8mPa・s)、粘度標準液2種類(バルク粘度:2.0mPa・s、8.3mPa・s)の粘度を測定した。
上部ディスクの曲率半径Rを20mm、距離Dを8μm、試料液体の体積Vを20μLとした。
情報処理ユニット50において、ひずみゲージ19の出力から得られる共振曲線を物理モデル解析して粘性パラメータb2(N・s/m)を算出し、予め作成しておいた粘度と粘性パラメータb2との関係を示す直線(検量線)から、試料の粘度を求める。
図4に、試料液体の粘度(mPa・s)と粘性パラメータb2(N・s/m)との関係を示す。測定した範囲内で線形性が確認された。また、炭酸ジエチレンと水とが粘度で区別可能であったことから、0.1mPa・sの粘度差が測定可能であることが示せた。
上部ディスクの曲率半径Rを6.8mm、距離Dを20μm、試料液体の体積Vを20μLとした。
情報処理ユニット50において、ひずみゲージ19の出力から得られる共振曲線を物理モデル解析して粘性パラメータb2(N・s/m)を算出し、予め作成しておいた粘度と粘性パラメータb2との関係を示す曲線(検量線)から、試料の粘度を求める。
図5に、試料液体の粘度(mPa・s)と粘性パラメータb2(N・s/m)との関係を示す。測定した範囲内で線形性が確認された。
図1に示す粘度計を用いて、粘度標準液7種類(バルク粘度:2.0mPa・s,8.3mPa・s,43mPa・s,180mPa・s,484mPa・s,1800mPa・s,12000mPa・s)の粘度を測定した。
情報処理ユニット50において、ひずみゲージ19の出力から、(応答電圧の振幅Uout)/(印加電圧の振幅Uin)のピーク強度比を算出し、試料液体の粘度(mPa・s)粘度とピーク強度比との関係を示す曲線(検量線)を図6のように作成した。測定した範囲内で相関が確認された。
リチウムイオン電池用の電解液G(電解質:1MのLiPF6、溶媒:炭酸エチレン:ジメチルエチレン溶液=1:1(容積比、キシダ化学社製))を準備した。
図1に示す粘度計1の上部ディスク基板16の下面と下部ディスク基板14の上面との間の試料挿入部21に、20μLの電解液Gを挿入する。電解液Gを試料挿入部21に挟んだ状態で、圧電素子15に周波数を変化させながら正弦波の交流電圧を印加することにより、上部ユニット10の振動に伴うひずみゲージ19からの応答電圧を測定し、情報処理ユニット50により、共振曲線を作成する。
図1に示す粘度計1の上部ディスク基板16の下面と下部ディスク基板14の上面との間の試料挿入部21に、20μLの電解液Hをマイクロシリンジで挿入して、応答電圧を測定し、共振曲線を作成する。上部ディスク基板16の下面と下部ディスク基板14の上面との間の距離Dは5μmである。
図1に示す粘度計を用いて、エチレングリコール(日本触媒社製;バルク粘度:19.9mPa・s(化学便覧 基礎編、改定第5版、日本化学会編、丸善出版、2004年2月),21mPa・s(日本触媒社))の粘度を、実施例1と同じ条件(上部ディスクの曲率半径R=20mm、距離D=8μm、試料液体の体積V=20μL)で測定した。
エチレングリコールの粘度は、21.0±0.4mPa・sと測定された。
粘度の実測値が文献値とよく一致した。
リチウムイオン電池の電解液(電解質:1MのLiPF6、溶媒:炭酸エチレン:ジメチルエチレン溶液=1:1(容積比、キシダ化学社製))の未使用、出荷品仕様及び充放電サイクル(1Cの条件で、充放電を10回繰り返した)後の粘度を、実施例1と同じ条件(上部ディスクの曲率半径R=20mm、距離D=8μm、試料液体の体積V=20μL)で測定した。
未使用の電解液の粘度は、3.1mPa・sと測定された。
出荷品仕様の電解液の粘度は、5.5mPa・sと測定された。
充放電サイクル後の電解液の粘度は、6.2mPa・sと測定された。
充放電サイクル後の電解液の粘度が未使用及び出荷品仕様に比べて増大しており、劣化していることが確認された。
図1に示す粘度計を用いて、エチレングリコール(日本触媒社製;バルク粘度:19.9mPa・s(化学便覧 基礎編、改定第5版、日本化学会編、丸善出版、2004年2月),21mPa・s(日本触媒社))の粘度を、実施例1とは距離及び試料液体の体積を変更した点を除いて同じ条件(上部ディスクの曲率半径R=20mm、距離D=5μm、試料液体の体積V=5μL)で測定した。
エチレングリコールの粘度は、19.8±0.4mPa・sと測定された。
粘度の実測値が文献値とよく一致した。
図1に示す粘度計を用いて、ICRマウス(メス、日本チャールス・リバー社製)から採取した血液(血液の体積の4~50体積%を赤血球(直径7~8μm,厚さ2μm)が占める)の粘度を、実施例1とは距離を変更した点を除いて同じ条件(上部ディスクの曲率半径R=20mm、距離D=20μm、試料液体の体積V=20μL)で測定した。
血液の粘度は、3.5mPa・sと測定された。
直径5μm以上の粒子を含む試料液体であっても粘度を測定できることが確認できた。
Claims (16)
- 固定部材と、上部ユニットと、下部ユニットと、情報処理ユニットとを備える粘度計であって、
前記上部ユニットは、圧電素子、前記圧電素子の前記下部ユニット側に配置された上部ディスク基板、板バネ及び前記板バネの一方向の変位を検知する手段を有し、
前記下部ユニットは、下部ディスク基板、前記下部ディスク基板を固定する下部ディスクホルダ及び前記下部ディスク基板を固定した前記下部ディスクホルダを載置するステージを有し、
前記上部ディスク基板の下面と前記下部ディスク基板の上面との間に、試料を配置するための試料挿入部を有し、
前記板バネは前記上部ディスク基板を前記固定部材に対して前記一方向に振動可能に支持し、
前記圧電素子は前記上部ディスク基板を駆動し、
前記情報処理ユニットは、前記板バネの前記一方向の変位を検知する手段と、信号ケーブルを介して接続されており、前記圧電素子に周波数を変化させながら交流電圧を印加した際の、前記上部ユニットの振動に伴う前記板バネの前記一方向の変位を検知する手段からの共振時の応答電圧を測定する、
粘度計。 - 前記ステージは、前記上部ユニットの前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ユニットの前記下部ディスク基板の上面との間の距離を変更可能であるように、一定の方向に変位可能である、請求項1に記載の粘度計。
- さらに、前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ディスク基板の上面との間の距離を計測する手段を有する、請求項2に記載の粘度計。
- さらに、前記ステージを一定の方向に変位させる駆動系を有し、
前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ディスク基板の上面との間の距離を、前記計測する手段によって計測しながら、前記駆動系により変化させることができる、請求項3に記載の粘度計。 - 前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ディスク基板の上面との間の距離を接触位置から、前記駆動系により一定距離離すことで変化させることができる、請求項4に記載の粘度計。
- 前記上部ディスク基板の下面と、前記下部ディスク基板の上面との間の距離が、0.1~1000μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘度計。
- 測定可能な試料の粘度が、0.1~20000mPa・sである、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘度計。
- 測定可能な試料の粘度が、0.5~10000mPa・sである、請求項7に記載の粘度計。
- 測定可能な試料の体積が、1~100μLである、請求項1~8のいずれか1項に記載の粘度計。
- 測定可能な試料の体積が、1~50μLである、請求項9に記載の粘度計。
- 測定可能な試料の体積が、1~20μLである、請求項10に記載の粘度計。
- 測定可能な試料の体積が、5~20μLである、請求項11に記載の粘度計。
- 測定可能な試料が粒子を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の粘度計。
- 測定可能な試料が電解液である、請求項1~13のいずれか1項に記載の粘度計。
- 測定可能な試料が生物の体液である、請求項1~13のいずれか1項に記載の粘度計。
- 測定可能な試料が液状の薬剤である、請求項1~13のいずれか1項に記載の粘度計。
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