以下、実施例を図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
以下の実施例で説明されるシステムの一例は、送信機と受信機を備える無線システムであって、送信機は、M種類の独立な回転偏波を同時に送信し、受信機は、M種類の独立な回転偏波をN種類の独立な回転偏波として同時に受信する。ここでは、回転偏波の回転方向とアンテナに対する伝播方向(送信方向あるいは受信方向)の組み合わせを種類という。ここで、M≦N(ただし、Mは自然数、Nは2以上の自然数)であり、送信されたM種の回転偏波は、送信機から受信機までの伝播路の状態に依存して、N種の回転偏波となって受信機に到達している。通常は、送信された一種類の回転偏波に対して伝播路が複数あるので、M<Nとなる場合が多いと考えられる。回転偏波は右または左向きの2種類であり、3次元空間は3方向あるため、あり得る伝播路の状態を網羅的に把握するために、M=N=6とすることが一つの例である。なお、同時に送信あるいは受信するとは、処理が平行して行なわれるという意味であり、物理的に厳密な同時性を要求するものではない。
N種類の独立な回転偏波から送信された信号を復号して評価し、通信品質の良好な1または複数を選択すれば、複数の伝播路のうち特定の伝播路の影響を低減し、無線通信品質を向上させることができる。複数の伝播路のうち特定の伝播路の影響を低減する方法は特に限定しないが、例えば一度全ての伝播路からの受信信号を記憶しておき、後に選択した伝播路からの信号のみを用いて復号することが考えられる。あるいは、受信機が受信電界の方向を特定の伝播路に対する方向に一致させることにより、特定の回転偏波の到来波を削除してもよい。受信電界の方向の制御は、アンテナを機械的に動かしてもよいし、アンテナは不動としてゲインの調整等により行なっても良い。
実施例で説明される形態の一例を挙げるならば、送信機は回転方向の異なる2つの回転偏波の電磁波を用いて信号を送信し、受信機は異なる回転方向の回転偏波を分離して受信する。また、その他の一例を挙げるならば、送信機は回転方向の異なる2つの回転偏波の電磁波を用いて信号を送信し、受信機は異なる回転方向および伝播方向の回転偏波を分離して受信する。また、その他の一例を挙げるならば、送信機は伝播方向の異なる3つの回転偏波の電磁波を用いて信号を送信し、受信機は異なる回転方向および伝播方向の回転偏波を分離して受信する。また、その他の一例を挙げるならば、送信機は回転方向および伝播方向の異なる3つの回転偏波の電磁波を用いて信号を送信し、受信機は異なる回転方向および伝播方向の回転偏波を分離して受信する。また、その他の一例を挙げるならば、送信機は回転方向および回転周波数および伝播方向の異なる3つの回転偏波の電磁波を用いて信号を送信し、受信機は異なる回転方向および回転周波数および伝播方向の回転偏波を分離して受信する。
スネルの法則に従い電磁波は反射面のベクトルと偏波が平行な場合偏波シフトはゼロであり、直交する場合偏波シフトは180度となり偏波は反転する。従って、回転偏波の電磁波は反射の際にその回転方向が反転する。送受信機間に形成される複数の反射波による伝播路は一般に1回および複数の反射によって形成されるから、送信機が一方向の回転の回転偏波を送信すると、受信機は異なる回転方向の回転偏波の電磁波を受信するが、これらは重なる要素を持たない二種類の伝播路、すなわち奇数回反射および偶数回反射による伝播路の集合による到来波として受信する。従って、二種類の伝播路のうち片方を用いることにより、特定のひとつの伝播路の影響を削除することができる。これにより信号品質に影響を与える特定の伝播路の影響を削除して通信品質を向上させることが可能となる。
本実施例では、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムの動作を、図1~図3を用いて説明する。ここで、回転偏波とは伝播周波数とは異なる周波数で偏波ベクトルが回転する電磁波の形態をいうものとする。本実施例では回転偏波は、伝播周波数と回転周波数を独立に制御でき、例えば回転周波数を伝播周波数の1/10にできるため、汎用の商用デジタル信号処理デバイスでも処理が可能である。
<1.システム構成例>
図1は、本実施例の回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムの構成を説明する図の例である。回転偏波送信機(送信機という)201は、情報信号発生器1および5と、伝播路測定信号発生器2および6を具備する。対を成す信号切替器3および4が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器1と伝播路測定信号発生器2を切替える。対を成す信号切替器7および8が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器5と伝播路測定信号発生器6を切替える。
信号切替器3および4の出力は、各々第一の送信乗算回路12と第二の送信乗算回路13によって、夫々回転偏波周波数発生器11の出力cosωptおよび回転偏波周波数90°移相回路14を介した回転偏波周波数発生器11の出力-sinωptが掛け合わされ、各々第一の合成器25および第二の合成器26の第一入力となる。
信号切替器7および8の出力は、各々第三の送信乗算回路15と第四の送信乗算回路16によって、夫々回転偏波周波数270°移相回路18を介した回転偏波周波数発生器11の出力+sinωptおよび回転偏波周波数発生器11の出力cosωptが掛け合わされ、各々第一の合成器25および第二の合成器26の第二入力となる。
第一の合成器25および第二の合成器26の出力は、夫々第一の送信ミキサ22および第二の送信ミキサ23により搬送波周波数発生回路21の出力cosωctを用いてアップコンバートされ、各々互いに空間的に直交する第一の送信アンテナ31および第二の送信アンテナ32より回転偏波として空間に放射される。
回転偏波受信機(受信機という)301は、空間的に互いに直交する第一の受信アンテナ61および第二の受信アンテナ62を具備する。第一の受信アンテナ61および第二の受信アンテナ62の出力は、各々第一の受信ミキサ52および第二の受信ミキサ53により搬送波周波数発生回路51の出力cosωctを用いてダウンコンバートされる。
第一の受信ミキサ52の出力は二分岐され、第一の受信乗算回路42および第二の受信乗算回路43により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力sinωptおよび回転偏波周波数発生器41の出力cosωptが掛け合わされ、受信信号処理回路39に入力される。第二の受信ミキサ53の出力は二分岐され、第三の受信乗算回路45および第四の受信乗算回路46により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力sinωptおよび回転偏波周波数発生器41の出力cosωptが掛け合わされてダウンコンバートされ、受信信号処理回路39に入力される。
送信機201は対を成す信号切替器3および4と対を成す信号切替器7および8を用いて、右回転の回転偏波と左回転の回転偏波をそれぞれ独立および同時に送信することができる。送信機201は先ず、右回転の回転偏波と左回転の回転偏波をそれぞれ独立に用いて伝播路測定信号発生器2あるいは6の出力を送信する。
送信機201の信号切替器3,4は、出力として、情報信号発生器1の出力と、伝播路測定信号発生器2の出力と、入力なしの3つを切り替える4端子構成である。
送信機201の信号切替器7,8は、出力として、情報信号発生器5の出力と、伝播路測定信号発生器6の出力と、入力なしの3つを切り替える4端子構成である。
送信機201が右回転偏波を送信して、伝播路を評価する場合、信号切替器3と4は伝播路測定信号発生器2に接続され、信号切替器7と8は入力なしとなる。その結果、アンテナ31,32から右回転偏波が送信される。送信機201が左回転偏波を送信して、伝播路を評価する場合、信号切替器7と8は伝播路測定信号発生器6に接続され、信号切替器3と4は入力なしとなる。その結果、アンテナ31,32から左回転偏波が送信される。
伝播路測定信号発生器2,6が発生する測定信号は、受信側で測定信号を用いて同期が取れることが望ましいので、何らかの周期性のある信号が好適である。例えば、”10101010・・・”、”100100100100・・・”などがある。
<2.システム動作原理>
図2Aは、送信機201(Tx)から受信機301(Rx)へ向けて所定の回転偏波を送信した際の、伝播路による偏波状態の変化を模式的に示す図である。ここでは、送信機(Tx)から右回転の回転偏波Tx(R)が送信された場合を想定している。また、A,B,C,D,Eの5つの伝播路とそれらが含む反射面を模式的に示している。
先に述べたように、回転偏波の電磁波は反射の際にその回転方向が反転するとすれば、伝播路AとEからは2回反射により受信機(Rx)は右回転の回転偏波を受信し、伝播路BとDからは1回反射により受信機(Rx)は左回転の回転偏波を受信する。また、伝播路Cは障害物により伝播できない。すなわち、受信機(Rx)が受信する送信機(Tx)からの電波は、伝播路AとEを含む偶数回反射の第1の伝播経路群(便宜的に「偶数回反射パス」という)と、伝播路BとDを含む奇数回反射の第2の伝播路経路群(便宜的に「奇数回反射パス」という)のいずれかを経由して到達していることになる。
また、送信機(Tx)から左回転の回転偏波Tx(L)が送信された場合にも同様に、伝播路AとEを含む偶数回反射の第1の伝播経路群と、伝播路BとDを含む奇数回反射の第2の伝播路経路群のいずれかを経由して到達していることになる。
図2Aに示すように、受信機301(Rx)は、右回転の回転偏波Rx(R)と左回転の回転偏波Rx(L)を、それぞれ独立に受信することができる。これにより、右回転および左回転の送信回転偏波に対する、奇数回反射による伝播路B,Dに対応する無線チャネルと、偶数回反射による伝播路A,Eに対応する無線チャネルを、知ることができる。
したがって、受信機301(Rx)は、受信した測定信号の右回転偏波と左回転偏波のいずれが良好な信号であるかを判定し、引き続く情報信号の通信では、良好な無線チャネルの信号を選択して用いて通信を行なうことで、品質の良い無線チャネルを利用することができる。判定の方法としては、利得、信号対雑音比、エラーレートなど、通信品質の評価のために通常用いられる評価手法を採用してよい。この手法によれば、二種類の伝播路のうち片方を用いることにより、反射回数の異なる特定のひとつあるいは複数の伝播路の影響を削除することができる。
図2Aで説明した例では、M=1種類の独立な回転偏波を送信し、N=2種類の独立な回転偏波を同時に受信する。2種類の独立な回転偏波は、それぞれ異なる伝播路の影響を受けている。受信された一つの回転偏波からデータを復元することにより、M=1個のデータを送受信することになる。
<3.システム運用例>
以上のように、図1のシステムを用いると、1つの回転偏波を2つの伝播路を用いて送信し、かつ2つの伝播路からの信号を分離することが可能となる。以下では本実施例のシステムの運用例を説明する。
<例1:1種類の回転偏波で2種類の伝播路を識別する>
図2Bに示すように、伝播路測定時には、送信機201から、右(または左)回転偏波を用いて伝播路測定信号発生器2(または6)の出力を送信する。受信機301では、右回転偏波と左回転偏波を独立に受信して、それぞれの品質を評価して片方を選択する。この選択により、遇数回反射パスEと奇数回反射パスOの一つを選択していることになる。これは、M=1種類の独立な回転偏波を送信し、N=2種類の独立な回転偏波を同時に受信し、M=1個のデータを送受信する例である。
情報通信時には、送信機201から、右(または左)回転偏波を用いて情報信号発生器1(または5)の出力を送信する。受信機301では、選択した右回転偏波あるいは左回転偏波を受信して、データを復調する。図2Bの場合は、例えば選択した遇数回反射パスE経由の右回転偏波の信号のみを用いて、奇数回反射パスOの影響を除去する。
この例の場合は、送信側は右または左の回転偏波しか使わないので、2つある伝播路測定信号発生器2と6、情報信号発生器1と5、信号切替器3,4と7,8の片方は省略してもよい。
なお、伝播路の構造が普遍であればテストによる伝播路評価は1回でよいが、伝播路の環境が変化する場合には、使用状況に応じて定期的に伝播路測定を行なうことが望ましい。
<例2:2種類の回転偏波で2種類の伝播路を識別する>
図2Cに示すように、送信機201から、右と左の回転偏波を時間的に独立に用いて、伝播路測定信号発生器2と6の出力を送信する。受信機301では、右回転偏波と左回転偏波を独立に受信して、品質を評価して片方を選択する。
伝播路測定時、送信機201が右回転偏波を送信したとき、受信機301では右回転偏波と左回転偏波を独立に受信することで、右回転偏波を右回転偏波として送信する遇数回反射パスEと、右回転偏波を左回転偏波として送信する奇数回反射パスOの信号を区別できる。
伝播路測定時、送信機201が左回転偏波を送信したとき、受信機301では左回転偏波と右回転偏波を独立に受信することで、左回転偏波を左回転偏波として送信する遇数回反射パスE'と、左回転偏波を右回転偏波として送信する奇数回反射パスO'の信号を区別できる。
このとき、右回転偏波と左回転偏波は空間的に対称なので、遇数回反射パスEと遇数回反射パスE'は等価と考えられ、奇数回反射パスOと奇数回反射パスO'は等価と考えられる。よって、この場合は2種類の回転偏波を送信し、2種類(2集合)の伝播路からの信号を、2種類の回転偏波で受信しているということになる。この方法では、1つの伝播路について2回評価ができる。
なお、上記手法では右と左の回転偏波を時間的に独立に用いているため、伝播路測定信号発生器2と6は共通として1つだけ設けても良い。また、信号切替器3,4,7,8を全て伝播路測定信号発生器2と6に接続することで、テスト時に右回転偏波と左回転偏波を同時に送信することもできる。この場合には、伝播路測定信号発生器2と6の信号は、例えば互いに直交関係のある異なるものとしておけば、受信機301側でこれらを分離して評価することができる。
情報通信時には、例1と同様に、送信機201は、右回転偏波と左回転偏波を時間的に独立に送信する。
<例3:二重化あるいは並列化の例>
テスト時の処理は例1、例2と同様であるため、データ送信時の処理について説明する。情報信号の通信のために、図1の回路構成では、右回転偏波と左回転偏波のために情報信号発生器1,5を独立に設けている。右回転偏波と左回転偏波は、例1や例2のように時間的に異なるタイミングで送信することもできるが、信号切替器3,4,7,8を全て情報信号発生器1と5に接続することで、右回転偏波と左回転偏波を同時に送信することもできる。
右回転偏波と左回転偏波を同時に送信する場合には、情報信号発生器1と5の信号を同じものとすれば、二重化が可能になり信頼性が増す。また、情報信号発生器1と5の信号を異なるものとすれば、並列化が可能になり通信速度が増す。これらは用途に応じて選択すればよい。
図2Dに示すように、情報通信時に、送信機201が右回転偏波と左回転偏波を同時に送信すると、受信機301が受信する右回転偏波には、右回転偏波が右回転偏波のまま伝播されたもの(偶数回反射パスE経由のもの)と、左回転偏波が右回転偏波として伝播されたもの(奇数回反射パスO経由のもの)の両方が含まれる。また、受信機301が受信する左回転偏波には、左回転偏波が左回転偏波のまま伝播されたもの(偶数回反射パスE'経由のもの)と、右回転偏波が左回転偏波として伝播されたもの(奇数回反射パスO'経由のもの)の両方が含まれる。よって、これらを分離する必要がある。これは従来の多重化通信技術を用いればよく、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重などを適用すればよい。例えば、情報信号発生器1と5が生成する信号を直交符号等にしておけば、右(左)回転偏波中の2つの信号を区別することができる。
また、これら2つの信号は異なる伝搬路を経由しているため、受信点で異なる振幅と位相差の変化(無線チャネル)を受ける。この変化を用いると、直交符号等を用いることなく両者の区別が可能である。この原理を以下説明する。
電磁波は横波のベクトル波であるから、空間的に直交する2つの偏波を独立に同時に送信可能である。図1の送信機201は回転偏波として、垂直の偏波にcos波・水平の偏波にsin波を使って同一の信号を送信することができる。もともと偏波は2つ同時に送信できるので、垂直の偏波にcos波・水平の偏波にsin波を使って第一の信号を、垂直の偏波にcos波・水平の偏波に-sin波を使って第二の信号を、夫々独立且つ同時に送信可能である。両者は右回転と左回転の回転偏波となる。
上記の回転偏波を用いた送信方法では、普通の電磁波ではAとBの信号を独立に送るのに対してA+BとA-Bの信号を独立に送っていることになる。このことは線形結合の原理より正しい。受信機301では直交するアンテナ61,62の夫々より、cos波とsin波で送られた信号を得ることができるので、夫々の和と差を取ることにより、右回転の回転偏波で送られた信号と左回転の偏波で送られた信号を独立に得ることが可能である。
ここで伝播路の様子を考える。右回転の円偏波のみを使って信号αを送信したとする。受信機301は偶数回反射の第一の伝播路群(偶数回反射パスE)を経て受信点で合成された、位相と振幅を複素数で表現した量(これを無線チャネルと呼ぶ)Srrを用いαSrrと表される信号を得る。また、受信機301は奇数回反射の第二の伝播路群(奇数回反射パスO)を経て受信点で合成された、位相と振幅を複素数で表現した量Srlを用いてαSrlと表される信号を得る。
次に、左回転の円偏波のみを使って信号αを送信したとする。受信機301は偶数回反射の第一の伝播路群(偶数回反射パスE')を経て受信点で合成された、位相と振幅を複素数で表現した量Sllを用いてαSllと表される信号を得る。また、受信機301は、奇数回反射の第二の伝播路群(奇数回反射パスO')を経て受信点で合成された、位相と振幅を複素数で表現した量Slrを用いてαSlrと表される信号を得る。
そこで、送信機201と受信機301がαの値を共有していれば、伝送路固有の値である無線チャネルSrr,Srl,Sll,Slrの値を受信機301は知ることができる。この動作は伝播路測定信号発生器2を用いて信号αを送信し、伝播路測定時に予め定めたプロトコルにより送受信を実行することで可能である。受信機301には、信号αのデータを別途格納しておくものとする。
システムを並列化あるいは二重化する場合には、右回転の回転偏波でβの信号を送信し、同時に左回転の回転偏波でγの信号を送信すれば、受信機は右回転の回転偏波の受信信号としてΛ=βSrr+γSlrを得て、同時に左回転の回転偏波の受信信号として=βSrl+γSllを得る。よって先に求めた、Srr,Srl,Sll,Slrの値および受信信号P、Λを用いて、線形演算により同時に送信された信号βおよびγを求めることができる。このような処理は、受信機301の受信信号処理回路39において、ソフトウェア的に計算することで可能である。
以上のように、受信機301(Rx)はこれら無線チャネルを用いて、送信機201(Tx)が右回転の回転偏波Tx(R)と左回転の回転偏波Tx(L)を同時に用いて同時に送信する情報信号発生器1および5の出力を、奇数回反射による伝播路と偶数回反射による伝播路に関する到来波に分けて受信できる。このため、特定の伝播路の影響を削除して情報信号発生器1および5の出力を同時に得ることができるので、複数の伝播路の特定の伝播路を使用しないことで通信品質が向上する効果がある。
図2Dの例では、情報通信時にM=2種類の独立な回転偏波を送信し、N=2種類の独立な回転偏波を同時に受信し、M=2個のデータを送受信する。例えば、偶数回反射パスE,E'のほうが良好な伝播路である場合には、受信した右回転偏波から右回転偏波で送信されたデータを復元し、受信した左回転偏波から左回転偏波で送信されたデータを復元する。
以上では、送信方向をX方向として説明したが、回転偏波の種類は、回転方向と伝播方向(送信方向あるいは受信方向)の組み合わせを増やすことで、増やすことができる。回転偏波の回転方向は右と左の2方向、3次元では互いに直交する3つの方向があるので、例えばM=2×3=6、N=2×3=6のように回転偏波の種類を増やすことにより、実質的に識別可能な伝播路を増やすことができる。この場合には、N種類の回転偏波のそれぞれには、異なった伝播経路を経て受信されたM種類の回転偏波の信号が含まれているので、データの復元時には上述の計算により分離を行なって、良好な伝播路経由のデータを復元する。
<4.通信プロトコル例>
図3は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムの通信プロトコルの例を説明する図であり、回転方向の異なる回転偏波を用いる通信に係わるプロトコルの例である。本実施例では、一対の無線機を#1と#2で区別する。無線機#1と無線機#2はそれぞれ、例えば図1の送信機201と受信機301の両方の構成を備えたものに相当する。
図3(A)を参照すると、先ず、無線機#1が左回転の回転偏波(Tx l-RPW)を送信する。電磁波の伝播速度は光速であるから、ほぼ同時に無線機#2は送受信機間に形成される複数の伝播路を互いに共通要素のない2つの伝播路の集合として、右回転の回転偏波(Rx r-RPW)と左回転の回転偏波(Rx l-RPW)で独立に受信する。
このときに、無線機#1は予め無線機#2と取り決めておいた情報un(例えばオール1あるいは1010…等)を伝送する。無線機#2では、受信した左回転偏波から情報hllnを得、右回転偏波から情報hlrnを得る。情報hllnと情報hlrnは、左回転偏波と右回転偏波に対して伝播路が与える影響を表したものと考えることができる。そこで、無線機#2は該予め取り決めておいた情報unが回転偏波の一周期でどのような時間変化で受信されたかを記憶しておく。次に無線機#1と#2が送受の役割を交換して同一の通信を行う。
次に、無線機#1は回転方向の異なる右回転の回転偏波(Tx r-RPW)を用いて同様の通信を行う。以上の処理は、図2Cで示した処理に相当する。引き続き無線機#1と#2が送受の役割を交換して同一の通信を行う。この四種類の一連の通信により、無線機#1および#2は互いに独立な左回転の回転偏波と右回転の回転偏波で通信を行う際に夫々どのような変化を環境から受けるかを知る事ができる。
ここでは説明上、無線機#1は右回転偏波と左回転偏波を時間的に独立に送信するものとしているが、直交符号等の採用により同時に送信することも可能であることは既述のとおりである。
次に、図3(B)を参照すると、無線機#1は互いに直交する左回転の回転偏波(Tx l-RPW)と右回転の回転偏波(Tx r-RPW)を同時に用いて二種類の情報(S1n,S2n)を送る。無線機#2は左回転の回転偏波と右回転の回転偏波を単独で用いた場合の伝播環境の与える効果(情報hlln、情報hlrn)を用いて、左回転の回転偏波(Rx l-RPW)による受信信号と右回転(Rx r-RPW)の回転偏波による受信信号とから、無線機#1が送信した左回転の回転偏波(Tx l-RPW)による受信信号(S1n,S2n)と右回転の回転偏波(Tx r-RPW)による送信信号(S1n,S2n)を分離・再生することができる。以上の処理は、図2Dで示した処理に相当する。分離・再生の原理については、<3.システム運用例:例3>で説明したとおりである。
無線機#1から無線機#2への情報の無線伝送が終了したら、図3(C)のように、引き続き無線機#2から無線機#1への情報の無線伝送を行う。以下、同様の動作を全ての情報の伝送が終了するまで繰り返す。本例に拠れば、互いに直交する二種類の回転偏波を同時に用いて異なる情報S1nとS2nを伝送できるので、伝送容量増大の効果がある。なお、二種類の回転偏波を同時に用いて同一の情報を伝送して、信頼性増大の効果を得ることもできる。
本実施例では、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる他の無線システムの動作を図4を用いて説明する。本実施例は、受信機側で受信できる回転偏波の到来方向を増やす例である。
図4は、本実施例の回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムの構成を説明する図の例である。送信機201は図1と同一である。
受信機302は、空間的に互いに直交する第一の受信アンテナ61、第二の受信アンテナ62に加えて第三の受信アンテナ63を具備する。以下、図1の受信機301の構成との差分について説明する。
第三の受信アンテナ63の出力は、第三の受信ミキサ54により搬送波周波数発生回路51の出力を用いてダウンコンバートされる。第三の受信ミキサ54の出力は二分岐され、第五の受信乗算回路47および第六の受信乗算回路49により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力および回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ、受信信号処理回路39に入力される。
送信機201は先ず、右回転の回転偏波と左回転の回転偏波をそれぞれ独立に用いて伝播路測定信号発生器2あるいは6の出力を送信し、受信機301は右回転の回転偏波と左回転の回転偏波をそれぞれ独立に受信する。
これにより、右回転および左回転の送信回転偏波に対する、奇数回反射による伝播路に対する無線チャネルと偶数回反射による伝播路に対する無線チャネルを知ることができる。受信機302はこれら無線チャネルを用いて、送信機201が右回転の回転偏波と左回転の回転偏波を同時に用いて同時に送信する情報信号発生器1および5の出力を、奇数回反射による伝播路と偶数回反射による伝播路に関する到来波に分けて受信できる。
更に受信機302は、空間的に直交する3つの受信アンテナ61および62および63により特定の方向に受信アンテナのベクトルを向けることができる。それにより、図2Aに示したように特定の伝播路を経由して受信機302に到来する電磁波の伝播方向に、受信アンテナのベクトルをあわせることができる。電磁波の偏波は伝播方向に直角であるから電磁波の伝播方向に受信アンテナのベクトルをあわせることにより、特定の伝播路を経由して受信機に到来する電磁波の影響を削減できる。
本実施例によれば、送信機201は右回転偏波または左回転偏波を1方向(例えばX方向)に送信し、受信機302は3方向(X,Y,Z方向)からの右回転偏波または左回転偏波を独立して受信できる。この場合には、1種類の回転偏波を6種類の回転偏波として受信し、6つの伝播路を識別できることになる。なお、回転偏波の回転方向と伝播方向の組み合わせを種類と呼ぶことにし、回転方向と伝播方向の少なくとも一つが異なれば、種類が異なる回転偏波ということにする。
本実施例に拠れば、図1の実施例に比べて特定の伝播路の影響を削除する能力が向上するので、通信品質向上が図られると共に、通信に用いると独立な伝播路の数が増えるので伝送容量増加の効果がある。
図5は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる他の無線システムの構成を説明する図の例である。送信機202は情報信号発生器1、5および55と、伝播路測定信号発生器2、6および56を具備する。対を成す信号切替器3および4が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器1と伝播路測定信号発生器2を切替える。対を成す信号切替器7および8が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器5と伝播路測定信号発生器6を切替える。対を成す信号切替器57および58が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器55と伝播路測定信号発生器56を切替える。
信号切替器3および4の出力は、各々第一の送信乗算回路12と第二の送信乗算回路13によって、回転偏波周波数90°移相回路14を介した夫々回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第一の合成器25および第二の合成器26の入力となる。信号切替器7および8の出力は、各々第三の送信乗算回路15と第四の送信乗算回路16によって、夫々回転偏波周波数90°移相回路14を介した回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第三の合成器27および第二の合成器26の入力となる。信号切替器57および58の出力は、各々第五の送信乗算回路17と第六の送信乗算回路19によって、夫々回転偏波周波数90°移相回路14を介した回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第一の合成器25および第三の合成器27の入力となる。
第一の合成器25、第二の合成器26および第三の合成器27の出力は、夫々第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24により搬送波周波数発生回路21の出力を用いてアップコンバートされ、各々互いに空間的に直交する第一の送信アンテナ31、第二の送信アンテナ32および第三の送信アンテナ33より空間に放射される。
受信機302は図4の受信機と同一である。送信機202は、対を成す信号切替器3および4と、対を成す信号切替器7および8と、対を成す信号切替器57および58を用いて、伝播方向が互いに直交する3つの右回転の回転偏波をそれぞれ独立および同時に送信することができる。
送信機202は先ず、伝播方向が直交する3つの右回転の回転偏波をそれぞれ独立に用いて、伝播路測定信号発生器2あるいは6あるいは56の出力を送信する。これにより、直交する3つの右回転の回転偏波に対する無線チャネルを知ることができる。受信機302はこれら無線チャネルを用いて、送信機202が直交する3つの右回転の回転偏波を同時に用いて同時に送信する情報信号発生器1および5および55の出力を、直交する3つの右回転の回転偏波に関する到来波に分けて受信できる。同様に、左回転の回転偏波でも送信を行なう。
受信機302は空間的に直交する3つの受信アンテナ61、62および63により特定の方向に受信アンテナのベクトルを向けることができる。それにより、特定の伝播路を経由して受信機302に到来する電磁波の伝播方向に受信アンテナのベクトルをあわせることができる。電磁波の偏波は伝播方向に直角であるから、電磁波の伝播方向に受信アンテナのベクトルをあわせることにより、特定の伝播路を経由して受信機に到来する電磁波の影響を削減できる。
本実施例によれば、特定の伝播路の影響を削除して情報信号発生器1および5および55の出力を同時に得ることができるので、通信品質向上と伝送容量増加の効果がある。
図6A~図6Cは、本例の回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる通信プロトコルの例を説明する図である。ここでは、2つの回転方向と、空間的に直交する3つの伝播方向を持つ6種類の回転偏波を用いる例である。
本実施例では、一対の無線機を#1と#2で区別し、各無線機は空間的に互いに直交する3つのアンテナを具備するものとする。無線機を#1と#2は、それぞれ送信機202と受信機302の両方の構成を備えるものとする。
図6Aにおいて、先ず、無線機#1が左回転の回転偏波(Tx lx-RPW)を第一の方向(x)に放射し信号を送信する。電磁波の伝播速度は光速であるからほぼ同時に無線機#2は空間的に互いに直交する3つのアンテナからの受信信号を用いて、互いに独立な空間三方向に関して、右回転の回転偏波(Rx rx-RPW, Rx ry-RPW, Rx rz-RPW)と左回転の回転偏波(Rx lx-RPW, Rx ly-RPW, Rx lz-RPW)で独立に受信する(期間a)。
このときに、無線機#1は予め無線機#2と取り決めておいた情報(例えばオール1あるいは1010…等)を伝送する。無線機#2は該予め取り決めておいた情報が回転偏波の一周期でどのような時間変化で受信されたかを、互いに直交する空間三方向に対して各々記憶しておく。次に無線機#1と#2が送受の役割を交換して同一の通信を行う(期間b)。同様のプロセスを、第二の方向(y)および第三の方向(z)に対しても行なう(期間c~f)。
次に、図6Bにおいて、無線機#1は回転方向の異なる右回転の回転偏波(Tx rx-RPW)を第一の方向(x)に放射して同様の通信を行う。引き続き無線機#1と#2が送受の役割を交換して同一の通信を行う。さらに、同様のプロセスを、第二の方向(y)および第三の方向(z)に対しても行なう。
この六種類の一連の通信により、無線機#1および#2は、互いに独立な左回転の回転偏波と右回転の回転偏波で通信を行う際に、互いに直交する空間三方向に対して夫々どのような変化を環境から受けるかを知ることができる。すなわち、送信側は6種類(2回転方向×3送信方向)の回転偏波を送信し、受信側は1つの回転偏波の送信に対して6種類(2回転方向×3受信方向)の回転偏波で受信することになる。右回転偏波と左回転偏波は空間的に対称なので、この場合18の伝播路を区別していることになる。
次に、図6Cにおいて、無線機#1は互いに空間的に直交する左回転の回転偏波と右回転の回転偏波を同時に用いて計六種類の情報を送る。無線機#2は互いに直交する空間三方向に対して左回転の回転偏波と右回転の回転偏波を単独で用いた場合の伝播環境の与える効果を用いて、左回転の回転偏波による受信信号と右回転の回転偏波による受信信号とから、無線機#1が互いに直交する空間三方向に対して各々左回転の回転偏波と右回転の回転偏波を用いて送信した合計6種類の信号を分離・再生することができる。
無線機#1から無線機#2への情報の無線伝送が終了したら、引き続き無線機#2から無線機#1への情報の無線伝送を行う。以下、同様の動作を全ての情報の伝送が終了するまで繰り返す。
図7は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる他の無線システムの構成例を示す。
送信機203は、情報信号発生器1、5、55、101、105および155と、伝播路測定信号発生器2、6、56、102、106および156を具備する。対を成す信号切替器3および4が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器1と伝播路測定信号発生器2を切替える。対を成す信号切替器7および8が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器5と伝播路測定信号発生器6を切替える。対を成す信号切替器57および58が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器55と伝播路測定信号発生器56を切替える。
信号切替器3および4の出力は、各々第一の送信乗算回路12と第二の送信乗算回路13によって、夫々回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数90°移相回路14を介した回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第一の四合成器225および第二の四合成器226の入力となる。信号切替器7および8の出力は、各々第三の送信乗算回路15と第四の送信乗算回路16によって、夫々回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数90°移相回路14を介した回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第三の四合成器227および第二の四合成器226の入力となる。信号切替器57および58の出力は、各々第五の送信乗算回路17と第六の送信乗算回路19によって、夫々回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数90°移相回路14を介した回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第一の四合成器225および第三の四合成器227の入力となる。
対を成す信号切替器103および104が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器101と伝播路測定信号発生器102を切替える。対を成す信号切替器107および108が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器105と伝播路測定信号発生器106を切替える。対を成す信号切替器157および158が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器155と伝播路測定信号発生器156を切替える。
信号切替器103および104の出力は、各々第七の送信乗算回路112と第八の送信乗算回路113によって、夫々回転偏波周波数270°移相回路18を介した回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第一の四合成器225および第二の四合成器226の入力となる。信号切替器107および108の出力は、各々第九の送信乗算回路115と第十の送信乗算回路116によって、夫々回転偏波周波数270°移相回路18を介した回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第三の四合成器227および第二の四合成器226の入力となる。信号切替器157および158の出力は、各々第十一の送信乗算回路117と第十二の送信乗算回路119によって、夫々回転偏波周波数270°移相回路18を介した回転偏波周波数発生器11の出力および回転偏波周波数発生器11の出力が掛け合わされ、各々第一の四合成器225および第三の四合成器227の入力となる。
第一の四合成器225、第二の四合成器226および第三の四合成器227の出力は、夫々第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24により、搬送波周波数発生回路21の出力を用いてアップコンバートされる。コンバートされた信号は、各々互いに空間的に直交する第一の送信アンテナ31、第二の送信アンテナ32および第三の送信アンテナ33より空間に放射される。
受信機303は、空間的に互いに直交する第一の受信アンテナ61、第二の受信アンテナ62および第三の受信アンテナ63を具備する。第一の受信アンテナ61、第二の受信アンテナ62および第三の受信アンテナ63の出力は、各々第一の受信ミキサ52、第二の受信ミキサ53および第三の受信ミキサ54により搬送波周波数発生回路51の出力を用いてダウンコンバートされる。
第一の受信ミキサ52の出力は三分岐され、第一の受信乗算回路42、第二の受信乗算回路43および第七の受信乗算回路142により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力、回転偏波周波数発生器41の出力、および回転偏波周波数270°移相回路48を介した回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ、受信信号処理回路39に入力される。
第二の受信ミキサ53の出力は三分岐され、第三の受信乗算回路45、第四の受信乗算回路46、および第八の受信乗算回路145により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力、回転偏波周波数発生器41の出力、および回転偏波周波数270°移相回路48を介した回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ、受信信号処理回路39に入力される。
第三の受信ミキサ54の出力は三分岐され、第五の受信乗算回路47、第六の受信乗算回路49、および第九の受信乗算回路147により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力、回転偏波周波数発生器41の出力、および回転偏波周波数270°移相回路48を介した回転偏波周波数発生器41が掛け合わされ、受信信号処理回路39に入力される。
送信機203は、対を成す信号切替器3,4と、対を成す信号切替器7,8と、対を成す信号切替器57,58を用いて、伝播方向が互いに直交する3つの右回転の回転偏波をそれぞれ独立および同時に送信することができる。また、対を成す信号切替器103,104と、対を成す信号切替器107,108と、対を成す信号切替器157,158を用いて、伝播方向が互いに直交する3つの左回転の回転偏波をそれぞれ独立および同時に送信することができる。
伝播路測定時に送信機203は、伝播方向が直交する3つの右回転の回転偏波および伝播方向が直交する3つの左回転の回転偏波をそれぞれ独立に用いて、伝播路測定信号発生器2、6、56、102、106あるいは156の出力を送信する。受信機303は、直交する3つの右回転の回転偏波と直交する3つの左回転の回転偏波を、それぞれ独立に受信することができる。これにより、送信された直交する3つの右回転の回転偏波に対する無線チャネル、および送信された直交する3つの左回転の回転偏波に対する無線チャネルを知ることができる。すなわち、送信信号に対して無線チャネルを形成する伝播路固有の影響(振幅と位相の変化)を特定することができる。
送信機203は、直交する3つの右回転の回転偏波および直交する3つの左回転の回転偏波を同時に用いて、情報信号発生器1、5、55、101、105および155の出力を同時に送信する。受信機303が独立に受信する各種類の回転偏波は、情報信号発生器1、5、55、101、105および155からの信号を含んでいるが、受信機303は先に知った無線チャネルを用いて、送信機203が送信した信号を、直交する3つの右回転の回転偏波および直交する3つの左回転の回転偏波に関する到来波に分けて受信できる。
更に、受信機303は右回転の回転偏波と左回転の回転偏波をそれぞれ独立に受信できるので、奇数回反射による伝播路と偶数回反射による伝播路に関する到来波に分けて受信できる。更に、受信機303は空間的に直交する3つの受信アンテナ61、62、および63により、特定の方向に受信アンテナのベクトルを向けることができる。それにより、特定の伝播路を経由して受信機302に到来する電磁波の伝播方向に受信アンテナのベクトルをあわせることができる。電磁波の偏波は伝播方向に直角であるから電磁波の伝播方向に受信アンテナのベクトルをあわせることにより、特定の伝播路を経由して受信機に到来する電磁波の影響を削減できる。
本実施例に拠れば、特定の伝播路の影響を削除して情報信号発生器1、5、55、101、105および155の出力を同時に得ることができるので、通信品質向上と伝送容量増加の効果がある。
図8は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる他の無線システムに用いられる送信機の構成を説明する図の例である。送信機204は、情報信号発生器1、5、55、101、105および155と、伝播路測定信号発生器2、6、56、102、106および156を具備する。
図5の送信機202と同様に、送信機204は、信号切替器3,4,7,8,57,58をそなえ、これらは送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器と伝播路測定信号発生器を切替える。信号切替器3,4,7,8,57,58から、第一の合成器25、第二の合成器26および第三の合成器27に至る構成は図5の送信機202と同様である。
対を成す信号切替器103および104が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器101と伝播路測定信号発生器102を切替える。対を成す信号切替器107および108が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器105と伝播路測定信号発生器106を切替える。対を成す信号切替器157および158が送信信号処理回路9で制御され、情報信号発生器155と伝播路測定信号発生器156を切替える。
信号切替器103および104の出力は、各々第七の送信乗算回路112と第八の送信乗算回路113によって、夫々回転偏波周波数90°移相回路214を介した第二の回転偏波周波数発生器211の出力および第二の回転偏波周波数発生器211の出力が掛け合わされ、各々第四の合成器125および第五の合成器126の入力となる。信号切替器107および108の出力は、各々第九の送信乗算回路115と第十の送信乗算回路116によって、夫々回転偏波周波数90°移相回路214を介した第二の回転偏波周波数発生器211の出力および第二の回転偏波周波数発生器211の出力が掛け合わされ、各々第六の合成器127および第五の合成器126の入力となる。信号切替器157および158の出力は、各々第十一の送信乗算回路117と第十二の送信乗算回路119によって、夫々回転偏波周波数90°移相回路214を介した第二の回転偏波周波数発生器211の出力および第二の回転偏波周波数発生器211の出力が掛け合わされ、各々第四の合成器125および第六の合成器127の入力となる。
第一の合成器25の出力と第一の送信重み回路167を経由した第四の合成器125の出力は、第七の合成器64の入力となる。第二の合成器26の出力と第二の送信重み回路168を経由した第五の合成器126の出力は、第八の合成器65の入力となる。第三の合成器27の出力と第三の送信重み回路169を経由した第六の合成器127の出力は、第九の合成器66の入力となる。
第七の合成器64、第八の合成器65および第九の合成器66の出力は、夫々第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24により、搬送波周波数発生回路21の出力を用いてアップコンバートされる。アップコンバートされた出力は、各々互いに空間的に直交する第一の送信アンテナ31、第二の送信アンテナ32および第三の送信アンテナ33より空間に放射される。第一の回転偏波周波数発生器11と第二の回転偏波周波数発生器211の周波数は整数倍の関係にある。
本実施例の送信機204と図5の実施例の送信機202の違いは、本実施例の送信機が、互いに周波数的に直交する異なる偏波回転周波数を有する回転偏波を同時に送受信できる点である。本実施例に拠れば、第一および第二の回転偏波周波数で独立に情報信号を送ることができるので、図5の実施例に比べて伝送容量を増大させる効果がある。
図9は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる他の無線システムの構成を説明する図の例である。図5の実施例と異なる点としては、送信機と受信機が具備する回転偏波周波数発生器11および41が、可変回転偏波周波数発生器311および241で置き換えられている。また、回転偏波周波数90°移相回路14および44が、可変回転偏波周波数90°移相回路314および244で置き換えられている。また、送信機の第一の合成器25と第一の送信ミキサ22の間、第二の合成器26と第二の送信ミキサ23の間、および第三の合成器27と第三の送信ミキサ24の間に、第一の送信重み回路167、および第二の送信重み回路168、および第三の送信重み回路169が挿入されている。
可変回転偏波周波数発生器311および241と、第一の送信重み回路167、第二の送信重み回路168および第三の送信重み回路169は、送信信号処理回路9あるいは受信信号処理回路39で制御される。
一般に無線機を取り囲む機器の設置状態によって電波環境は変化する。例えば、電磁波を散乱する障害物の間隔が通信に用いる電磁波の半波長より狭まると、この間隔を電磁波は通過しにくくなる。また、送信機の前方且つ近傍に電磁波の散乱体が存在する場合、その正面方向に伝播する電磁波は送信機自体に跳ね返され、受信機に到達するのが困難となる。
本実施例に拠れば、図5の実施例と比べて、回転偏波の周波数を可変と出来、且つ送信機が回転偏波の放射方向を制御できる。よって、送受信機を取り囲む機器によって形成される電波環境の変化に対応して、回転偏波周波数および送信回転偏波の放射方向を通信品質を向上させるべく変化可能であるから、無線機を取り囲む電波環境の変化に追随して良好な通信品質を維持する効果がある。
図10は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムに用いられる無線機の構成を説明する図の例である。本実施例では図1に示した送信機201と受信機301の機能を兼ね備える構成について説明し、図1と同様の構成は適宜説明を省略する。
回転偏波無線機401は、図1の送信機201と同様に、情報信号発生器1,5、伝播路測定信号発生器2,6、信号切替器3,4,7,8を備え、これらが信号処理回路109で制御される。送信乗算回路12,13,15,16、回転偏波周波数発生器11、回転偏波周波数90°移相回路14、第一の合成器25および第二の合成器26の構成も図1と同様である。
第一の合成器25および第二の合成器26の出力は、夫々第一のサーキュレータ74および第二のサーキュレータ75の第一端子に結合する。第一のサーキュレータ74および第二のサーキュレータ75の第二端子と、第一の送受共用アンテナ131および第二の送受共用アンテナ132の間には、夫々第一の送信ミキサ22および第二の送信ミキサ23が挿入されている。第一の送信ミキサ22および第二の送信ミキサ23のローカル入力には、搬送波周波数発生回路21の出力が結合する。
第一のサーキュレータ74および第二のサーキュレータ75の各第三端子は、二分岐線を介して信号処理回路109に接続される。サーキュレータ74,75の第三端子から信号処理回路109に至る構成は、図1の構成と同様である。
本実施例に拠れば、サーキュレータ74,75の切替作用により、アンテナ131,132を送受信兼用に使用できる。よって、図1の送信機201と受信機301の機能を有する無線機が実現でき、且つ送信と受信を同時に実行する効果がある。
図11は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムに用いられる無線機の構成を説明する図の例である。本実施例と図10の実施例の違いは、サーキュレータ74および75に代えて高周波スイッチ76および77が搭載されている点である。
本実施例に拠れば、図10の実施例と同様に図1の送信機201と受信機301の機能を有する無線機が実現できる。本実施例では、送受信を同時にすることはできないが、寸法の大きい磁気回路を用いるサーキュレータに代えて、半導体で実現可能な小型・安価・軽量な高周波スイッチを用いることができるので、無線機の小型・軽量化と製造コスト低減を実現する効果がある。
図12は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムに用いられる無線機の構成を説明する図の例である。本実施例では図4に示した送信機201と受信機302の機能を兼ね備える構成について説明し、図4と同様の構成は適宜説明を省略する。
回転偏波無線機403は、図4に示した送信機201と同様に、情報信号発生器1,5、伝播路測定信号発生器2,6、信号切替器3,4,7,8を備える。これらは、信号処理回路109で制御される。信号切替器3,4,7,8の出力は、図4に示した送信機201と同様の構成により処理され、第一の合成器25および第二の合成器26の第一入力となる。
第一の合成器25および第二の合成器26の出力は、夫々第一の高周波スイッチ76および第二の高周波スイッチ77の第一分配端子に結合する。第一の高周波スイッチ76および第二の高周波スイッチ77の共通端子と、第一の送受共用アンテナ131および第二の送受共用アンテナ132の間には、夫々受信兼用の第一の送信ミキサ22および第二の送信ミキサ23が挿入される。第一の送信ミキサ22および第二の送信ミキサ23のローカル入力には、搬送波周波数発生回路21の出力が結合する。
第一の高周波スイッチ76および第二の高周波スイッチ77の各第二分配端子は、二分岐線を介して信号処理回路109に入力される。それぞれの二分岐線から信号処理回路109に至る構成は、図4の受信機302の受信ミキサ52と53から受信信号処理回路39に至る構成と同様である。
受信アンテナ63の出力は受信兼用の第三の送信ミキサ24により搬送波周波数発生回路21の出力を用いてダウンコンバートされ、第三の送信ミキサ24の出力は二分岐され、第五の受信乗算回路47および第六の受信乗算回路49により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力および回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ信号処理回路109に入力される。
本実施例に拠れば、図4の送信機201と受信機302の機能を有する無線機を小型・安価・軽量で実現する効果がある。
図13は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる他の無線システム用いられる無線機の構成を説明する図の例である。本実施例では図5に示した送信機202と受信機302の機能を兼ね備える構成について説明し、図5と同様の構成は適宜説明を省略する。
回転偏波無線機404は、図5に示した送信機202と同様に、情報信号発生器1,5,55、伝播路測定信号発生器2,6,56、信号切替器3,4,7,8,57,58を備える。これらは、同様に信号処理回路109で制御される。信号切替器3,4,7,8,57,58の出力は、図5に示した送信機202と同様の構成により処理され、第一の合成器25、第二の合成器26および第三の合成器27の第一入力となる。
第一の合成器25、第二の合成器26および第三の合成器27の出力は、夫々第一の高周波スイッチ76、第二の高周波スイッチ77および第三の高周波スイッチ78の第一分配端子に結合する。第一の高周波スイッチ76、第二の高周波スイッチ77および第三の高周波スイッチ78の共通端子と、第一の送受共用アンテナ131、第二の送受共用アンテナ132および第三の送受共用アンテナ133の間には、夫々第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24が挿入される。第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24のローカル入力には、搬送波周波数発生回路21の出力が結合する。
第一の高周波スイッチ76、第二の高周波スイッチ77、および第三の高周波スイッチ78の各第二分配端子は、それぞれ二分岐線を介して信号処理回路109へ入力される。二分岐線から先の構成は、図5に示した受信機302の構成と同様である。
本実施例に拠れば、図5の送信機202と受信機302の機能を有する無線機を小型・安価・軽量で実現する効果がある。
図14は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる他の無線システムに用いられる無線機の構成を説明する図の例である。本実施例は、図8の送信機204と図5の受信機302の機能を有する。図5、図8と同様の構成は適宜説明を省略する。
回転偏波無線機405は、図8に示した送信機204と同様に、情報信号発生器1、5、55、101、105および155と、伝播路測定信号発生器2、6、56、102、106および156を具備する。また、図8に示した送信機204と同様に、信号切替器3,4,7,8,57,58,103,104,107,108,157,158を備える。また、第一の送信重み回路167、第二の送信重み回路168、および第三の送信重み回路169を備えている。これらは、図5と同様に信号処理回路109で制御される。また、第一乃至第九の合成器25,26,27,125,126,127,64,65,66を備えている。ここで、第七乃至第九の合成器までの構成は図8と同様なので説明を省略する。
第七の合成器64、第八の合成器65および第九の合成器66の出力は、夫々第一の高周波スイッチ76、第二の高周波スイッチ77および第三の高周波スイッチ78の第一分配端子に結合される。
第一の高周波スイッチ76、第二の高周波スイッチ77および第三の高周波スイッチ78の共通端子と、第一の送受共用アンテナ131、第二の送受共用アンテナ132および第三の送受共用アンテナ133の間には、夫々第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24が挿入される。
第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24のローカル入力には、搬送波周波数発生回路21の出力が結合する。第一の高周波スイッチ76の第二分配端子は、二分岐線を介し第一の受信乗算回路42および第二の受信乗算回路43により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力および回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ信号処理回路109に入力される。第二の高周波スイッチ77の第二分配端子は、二分岐線を介し第三の受信乗算回路45および第四の受信乗算回路46により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力および回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ、信号処理回路109に入力される。第三の高周波スイッチ78の第二分配端子には二分岐線を介し第五の受信乗算回路47および第六の受信乗算回路49により、夫々回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力および回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ信号処理回路109に入力される。
本実施例に拠れば、図8の送信機204と図5の受信機302の機能を有する無線機を小型・安価・軽量で実現する効果がある。
図15は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる他の無線システムに用いられる無線機の構成を説明する図の例である。図10の実施例と異なる点は、送信機と受信機が具備する回転偏波周波数発生器11および41が可変回転偏波周波数発生器311および241で置き換えられ、回転偏波周波数90°移相回路14および44が可変回転偏波周波数90°移相回路314および244で置き換えられ、該可変回転偏波周波数発生器311および241は信号処理回路109あるいは信号処理回路109で制御される。
本実施例に拠れば、図9の送信機205と受信機304の機能を有する無線機を小型・安価・軽量で実現する効果がある。
図16は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線機の他の構成例である。この例では、図7の送信機203と受信機303と同様の機能を実現し、アンテナを送受信で共用可能とする。
回転偏波無線機407は、情報信号発生器1,5,55,101,105および155と、伝播路測定信号発生器2,6,56,102,106および156を具備する。各信号発生器から、第一の四合成器225、第二の四合成器226および第三の四合成器227までの構成は、図7の送信機203と同様なので説明を省略する。
第一の四合成器225、第二の四合成器226および第三の四合成器227の出力は、夫々第一の高周波スイッチ76、第二の高周波スイッチ77および第三の高周波スイッチ78の第一分配端子に結合される。第一の高周波スイッチ76、第二の高周波スイッチ77および第三の高周波スイッチ78の共通端子と、第一の送受共用アンテナ131、第二の送受共用アンテナ132および第三の送受共用アンテナ133の間には、夫々第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24が挿入される。第一の送信ミキサ22、第二の送信ミキサ23および第三の送信ミキサ24のローカル入力には、搬送波周波数発生回路21の出力が結合する。
第一の高周波スイッチ76の第二分配端子には、三分岐線を介し第一の受信乗算回路42、第二の受信乗算回路43および第七の受信乗算回路142により、夫々回転偏波周波数発生器41の出力、回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力および回転偏波周波数270°移相回路48を介した回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ信号処理回路109に入力される。
第二の高周波スイッチ77の第二分配端子には、三分岐線を介し第三の受信乗算回路45、第四の受信乗算回路46および第八の受信乗算回路145により、夫々回転偏波周波数発生器41の出力、回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力および回転偏波周波数270°移相回路48を介した回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ、信号処理回路109に入力される。
第三の高周波スイッチ78の第二分配端子には、三分岐線を介し第五の受信乗算回路47、第六の受信乗算回路49および第九の受信乗算回路147により、夫々回転偏波周波数発生器41の出力、回転偏波周波数90°移相回路44を介した回転偏波周波数発生器41の出力および回転偏波周波数270°移相回路48を介した回転偏波周波数発生器41の出力が掛け合わされ信号処理回路109に入力される。
本実施例に拠れば、高周波スイッチで切り替えることにより、図7の送信機203と受信機303の機能を有する無線機を小型・安価・軽量で実現する効果がある。
図17は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムを適用した、昇降機監視・制御システムの構成図の例である。
本実施例の昇降機監視・制御システム1700は、昇降機が設置される建物1701の内部を複数の昇降カゴ1711が昇降する。建物1701の内部の床部および天井部には、既に説明した実施例に基づく回転偏波機能を有する基地局回転偏波無線機1703と基地局2直交偏波一体アンテナ1702が結合し設置される。昇降カゴ1711の外部天井と外部床面には其々端末局2直交偏波一体アンテナ1712が設置され、高周波ケーブル1714を用いて無線端末機1713に結合している。
基地局回転偏波無線機1703と無線端末機1713は、建物1701の内部を無線伝送媒体とするので、該建物1701の内壁および該昇降機の外壁により電磁波は多重反射を受け、複数の無線端末機1713が送信する電磁波が基地局回転偏波無線機1703に到達する際の偏波は同一ではない。また、昇降カゴ1711はその相対位置を変えるので、エレベータが停止する際に基地局回転偏波無線機1703と無線端末機1713が無線通信を行う場合に、そのつど複数の無線端末機1713から基地局回転偏波無線機1703に到達する電磁波の偏波は一般に変化する。
本実施例によれば、基地局回転偏波無線機1703と無線端末機1713が相対的位置を固定する時間内に、無線チャネル測定モードとデータ伝送モードの処理を行うことで、相対固定位置の予測が困難である昇降機システムにおいて、昇降機と固定設置の回転偏波無線機との間で信頼性高い無線通信を無線通信を行うことができる。そのため、昇降カゴ1711の制御・監視を建物1701より有線接続手段を用いずに遠隔で実施できるので、ケーブル等の有線接続手段を削除可能で、同一の輸送能力をより小さい建物体積で実現でき、あるいは同一の建物体積で昇降機寸法を増大させることによる輸送能力向上を実現できる。
図18は、回転偏波を用いて特定の伝播路の影響を低減し通信品質を向上させる無線システムを適用した、変電設備監視・制御システムの構成図の例である。
本実施例の変電設備監視・制御システム1800は、複数の変電機1801を具備する。この変電機1801には無線端末機1803と無線端末機2直交偏波一体アンテナ1802が結合し設置される。複数の変電機1801の近傍に、無線基地局1811が設営される。無線基地局1811は、既に説明した実施例に基づく回転偏波送受信を行う、回転偏波無線機1813と回転偏波無線機2直交偏波一体アンテナ1812が結合し設置される。
変電機1801の寸法は数mのオーダーであり、無線機が使用する電磁波の周波数である数百MHzから数GHzに対応する波長に比べ圧倒的に大きい。このため、複数の変電機1801により電磁波は多重反射を受け、多重波干渉環境が形成される。よって、各変電機1801に固定設置される無線端末機1803からの送信波は、異なる偏波で無線基地局1811に設置される回転偏波無線機1813に到達する。
本実施例によれば、回転偏波無線機1813と複数の無線端末機1803との間で信頼性高い無線通信を無線通信を行うことができる。このため、同無線機を用いた無線接続手段を用いて、変電機1801の制御・監視を複数の無線基地局1811により有線接続手段を用いずに遠隔で実施可能となる。ケーブル等の該有線接続手段を用いる場合に問題となる高圧誘導電力の問題を解決でき、同ケーブルの敷設コストを削除できるので、変電機1801の制御・監視システムの安全性向上およびコスト削減に効果がある。