JP7151786B2 - シリンダヘッド - Google Patents

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Description

本開示は、多気筒エンジンのシリンダヘッドに関し、特に、シリンダヘッドの内部に設けられる冷却水通路(ウォータジャケット)の構造に関する。
従来、多気筒エンジンのシリンダヘッドには、各気筒に対応する複数の排気ポートが形成されていた。シリンダヘッドには、各排気ポートに接続される複数の排気通路を備えた排気マニホールドが接続され、排気マニホールド内で排気通路を合流させていた。
また、シリンダヘッド内に、各気筒に対応する複数の排気ポートを集合させる排気集合部を形成することで、シリンダヘッドに単一の排気管が接続されるように構成される多気筒エンジンが開発されている。
このようなシリンダヘッドは、内部を通過する排気の影響により高温となる。このため、シリンダヘッドには、冷却水を循環させる冷却水通路(ウォータジャケット)が形成されている。特に、上記のように内部に排気集合部が形成されたシリンダヘッドは、排気が内部で集合するため、高温になりやすい。このため、排気集合部を備えるシリンダヘッドでは、冷却水通路(ウォータジャケット)による冷却性能の向上が図られている。
例えば、複数の排気導管を合流することによって形成される集合排気導管を一体的に設けたシリンダヘッドにおいて、排気導管の下方に配置される下側冷却ジャケットと、排気導管の上方に配置される上側冷却液ジャケットと、これら下側冷却ジャケットと上側ジャケットとを連通し冷却液の通路として機能する連通部とを備えるようにしたものがある(例えば、日本国特開2008-309158号公報を参照)。
日本国特開2008-309158号公報の構成によれば、従来のシリンダヘッドに比べると冷却性能を向上することはできる。
しかしながら、日本国特開2008-309158号公報に記載の構造でもシリンダヘッドの冷却性能は必ずしも十分とは言えず、さらなる向上が望まれている。
近年では、シリンダヘッドが、冷却水通路(冷却液通路)として、排気ポートの上方に設けられる上部通路と、この上部通路とは独立して排気ポートの下方に設けられる下部通路と、を備える構造も提案されている。このような構造のシリンダヘッドでは、上部通路と下部通路とに、別々に冷却水を供給することができるため、上部通路と下部通路とが一体的に形成された従来のシリンダヘッドに比べて冷却性能を高めることができる。
また、このように上部通路と下部通路とを独立させた構造であっても、シリンダヘッドの冷却性能はまだ十分ではなく、さらなる向上が望まれている。
本開示は、冷却水通路に冷却水を流通させるシリンダヘッドにおいて、冷却性能のさらなる向上を図ったシリンダヘッドを提供する。
本発明の一つの態様によれば、多気筒エンジンのシリンダヘッドは、複数の前記気筒にそれぞれ接続される複数の排気ポートと、複数の前記排気ポートが集合するように構成される排気集合部と、を含む集合排気ポートと、複数の前記気筒のそれぞれが並んで配置される列方向に冷却水を流すように構成される冷却水通路と、を備える。前記冷却水通路は、並んで配置される複数の前記気筒に配置される気筒通路部と、前記集合排気ポートに配置される第1のポート通路部とを有し、前記集合排気ポートの上部又は下部に設けられる第1の通路と、前記集合排気ポートに配置され、前記第1の通路に対向して設けられる第2のポート通路部を有する第2の通路と、を含む。前記第1の通路の前記第1のポート通路部の上流部には、前記第1の通路の一部を遮るように構成された第1の遮り部が設けられ、前記第2の通路の前記第2のポート通路部の上流部には、前記第2の通路の一部を遮るように構成された第2の遮り部が設けられ、前記第1の通路の前記第1のポート通路部の上流部の流路抵抗が、前記第2の通路の前記第2のポート通路部の上流部の流路抵抗よりも大きくなっている。
本発明の態様によれば、前記第1の遮り部の断面積の大きさと前記第2の遮り部の断面積の大きさとが、互いに異なっている。又は、前記第1の遮り部の断面形状と前記第2の遮り部の断面形状とが、互いにが異なっている。これにより、第1のポート通路部の上流部の流路抵抗が、第2のポート通路部の上流部の流路抵抗よりも大きくなっている。
本発明の他の態様によれば、前記第1の遮り部は、前記第1のポート通路部に冷却水が流入するように構成される第1の流入口の近傍に設けられ、前記第2の遮り部は、前記第2のポート通路部に冷却水が流入するように構成される第2の流入口の近傍に設けられている。
本発明の他の態様によれば、前記第1のポート通路部及び前記第2のポート通路部のそれぞれは、前記集合排気ポートの上方又は下方に対向する横溝通路部と、該横溝通路部から連続して設けられ前記集合排気ポートの側面に対向する縦溝通路部と、を有している。また、前記第1の遮り部及び前記第2の遮り部が、前記横溝通路部と前記縦溝通路部との間に設けられている。
本発明の態様によれば、冷却水通路に冷却水を流通させることによる冷却性能の向上を図ることができる。すなわち、冷却水通路内に第1の遮り部及び第2の遮り部が設けられていることで、冷却水通路内のより広い範囲で冷却水を流通させることができる。言い換えれば、冷却水通路内の所定部位での冷却水の滞留を抑制することができる。したがって、冷却水通路内を流通する冷却水によって、各気筒(燃焼室)の周囲や集合排気ポートの周囲を良好に冷却することができる。
本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの上面図である。 本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの側面図である。 本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの断面図である。 本発明の一実施形態に係るウォータジャケットを模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係るアッパジャケットを説明する図である。 本発明の一実施形態に係るロアジャケットを説明する図である。 本発明の一実施形態に係るアッパジャケットの拡大図である。 本発明の一実施形態に係るロアジャケットの拡大図である。 本発明の一実施形態に係るアッパジャケットの断面を模式的に示す図である。
以下、本発明の一実施形態が図面を参照して詳細に説明される。
図1Aは、シリンダヘッドの上面(シリンダブロックへの取付け面とは反対側の面)を示す図であり、図1Bは、シリンダヘッドのフロント側の側面を示す図である。図2は、シリンダヘッドのA-A′線断面図である。また図3は、ウォータジャケットの形状を、砂中子の形状として示した斜視図である。図4は、ウォータジャケットの形状を示す上面図であり、図5は、ウォータジャケットの形状を示す底面図である。また図6は、アッパジャケットの拡大図であり、第1の遮り部の構成及び冷却水の流れを説明する図である。図7は、ロアジャケットの拡大図であり、第2の遮り部の構成及び冷却水の流れを説明する図である。図8は、アッパジャケットのB-B′線に相当する断面を模式的に示す図であり、冷却水の流れを説明する図である。
図1A及び図1Bに示す本実施形態に係るシリンダヘッド10は、フロント側(車両前方側)から直列(一列)に配置された4つの気筒(シリンダ)を有する空冷式の直列4気筒エンジンを構成する。シリンダヘッド10の下面10aには、第1~第4の気筒11(11a~11d)が形成されたシリンダブロック(図示なし)が取付けられる。
一方、シリンダヘッド10の上面10bには動弁室12が形成されている。図示は省略するが、この動弁室12内には吸気弁や排気弁を駆動する動弁機構が収容され、シリンダヘッド10の上面には、この動弁室12を覆うリンダカバーが取付けられる。
本開示は、このような水冷式の多気筒エンジンを構成するシリンダヘッド10の内部構造、特に、シリンダヘッド10が備えるウォータジャケット(冷却水通路)の構造に特徴がある。以下では、シリンダヘッド10の内部構造が詳細に説明される。
図1A及び図1B及び図2に示すように、シリンダヘッド10には、各気筒11に対応する2つの吸気バルブ孔13(13a,13b)と、2つの排気バルブ孔14(14a,14b)とが設けられている。つまりシリンダヘッド10には、合計8つの吸気バルブ孔13及び排気バルブ孔14が設けられている。
またシリンダヘッド10には、各気筒11に対応する4つの吸気ポート15が設けられている。各吸気ポート15の一端側は、各気筒11に対応する2つの吸気バルブ孔13に接続されている。これらの吸気ポート15は、互いに集合することなく独立して設けられ、シリンダヘッド10の一方の側面10cにそれぞれ開口している。つまりシリンダヘッド10の側面10cには、各気筒11にそれぞれに繋がる4つの吸気口16が形成されている(図1A及び図1B参照)。
またシリンダヘッド10には、各気筒11に接続される集合排気ポート17が設けられている。集合排気ポート17は、各気筒11に接続される4つの排気ポート18(18a~18d)と、これらの排気ポート18(18a~18d)が集合する排気集合部19と、を含むように構成されている。
各排気ポート18の一端側は、各気筒11に対応する2つの排気バルブ孔14a,14bに接続され、各排気ポート18の他端側は、排気集合部19で集合している。この排気集合部19は、気筒11の列設方向(シリンダヘッド10の前後方向、気筒11が並んで配置される方向)の中央部に位置し、シリンダヘッド10の吸気口16が開口する側面10cとは反対側の側面10dに開口している。つまりシリンダヘッド10の側面10dには、排気集合部19にて集合された排気が流出する1つの排気口20が、気筒の列設方向(シリンダヘッド10の前後方向)の中央部に形成されている。
また各排気ポート18は、仕切壁21(21a~21b)によって隣接する排気ポート18の間で仕切られている。これらの仕切壁21は排気集合部19に向かって所定の長さで設けられている。これらの仕切壁21の長さは、適宜決定されればよい。また、少なくとも隣接する排気ポート18間での排気干渉が抑制されうるように、これら仕切壁21の長さが設定されていることが好ましい。
例えば、シリンダヘッド10の中央部に位置する(列設方向において4つの気筒のうち、内側に位置する)第2の気筒11bに対応する排気ポート18bと、第3の気筒11cに対応する排気ポート18cとの間を仕切る仕切壁21bは、排気口20の付近まで延設されていることが好ましい。これにより、仕切壁21bによって、隣接する排気ポート18bと排気ポート18cとの間での排気干渉を抑制できると共に、第1の気筒11aに対応する排気ポート18aと第4の気筒11dに対応する排気ポート18dとの間での排気干渉を抑制することもできる。
また、このような構造のシリンダヘッド10には、気筒11の列設方向に冷却水を流通させるウォータジャケット(冷却水通路)30が一体的に形成されている。本実施形態では、ウォータジャケット30に、シリンダヘッド10のフロント側からリア側に向かって冷却水を流通させることで、排気熱による各気筒(燃焼室)11付近や集合排気ポート17付近の温度上昇を抑制している。
本実施形態に係るウォータジャケット30は、図3に示すように、集合排気ポート17の上方に設けられるアッパジャケット(第1の通路)31と、集合排気ポート17の下方に設けられるロアジャケット(第2の通路)32と、を備えている。
アッパジャケット(第1の通路)31は、図3及び図4に示すように、各気筒11の上方に設けられる気筒通路部33と、集合排気ポート17の上方に集合排気ポート17の上部を覆うように設けられる第1のポート通路部34と、を有する。すなわちアッパジャケット31には、冷却水の主な流れとして、気筒通路部33及び第1のポート通路部34を流れる2つの流れが形成される。
なおこれら気筒通路部33と第1のポート通路部34とは、第1の気筒11aに対応する排気バルブ孔14aの外側及び第4の気筒11dに対応する排気バルブ孔14bの外側と、隣接する排気バルブ孔14の間でそれぞれ連通している。
一方、ロアジャケット(第2の通路)32は、図3及び図5に示すように、各気筒11に対応する部分には設けられておらず、集合排気ポート17の下方に、集合排気ポート17の下部を覆うように設けられる第2のポート通路部35によって構成されている。
ここで、アッパジャケット31とロアジャケット32とは独立して設けられている。すなわちアッパジャケット31及びロアジャケット32には、別々の経路から冷却水が供給されるように形成されている。
アッパジャケット31は、シリンダヘッド10のフロント側に、冷却水が供給される1つのアッパ入口通路部36を有し、シリンダヘッド10のリア側にアッパ出口通路部37を有する。すなわちアッパジャケット31内には、アッパ入口通路部36から冷却水が供給され、供給された冷却水は、気筒通路部33及び第1のポート通路部34を通過した後に、アッパ出口通路部37から外部に排出されるようになっている。なおアッパ出口通路部37は必ずしも一つでなくてもよく、複数設けられていてもよい。
一方、ロアジャケット32は、シリンダヘッド10のフロント側に、アッパ入口通路部36とは独立するロア入口通路部38を有しており、ロアジャケット32内には、このロア入口通路部38から冷却水が供給されるようになっている。またロアジャケット32は、シリンダヘッド10のリア側(冷却水の流れ方向の下流側)で、アッパジャケット31に接続されている。すなわちロアジャケット32内に供給された冷却水は、第2のポート通路部35を通過した後に、アッパジャケット31のアッパ出口通路部37を介して外部に排出されるようになっている。
具体的には、ロアジャケット32は、第2のポート通路部35の下流側の端部近傍から気筒11の列設方向に沿って延在するサブ通路部39を備えている。一方、アッパジャケット31は、アッパ出口通路部37から分岐してサブ通路部39に向かって延設される分岐通路部40を有している。そして、ロアジャケット32のサブ通路部39は、この分岐通路部40に接続されている。本実施形態では、サブ通路部39は、第2のポート通路部35との接続部分の直径よりも大径の大径部39aを有しており、この大径部39aにおいてアッパジャケット31の分岐通路部40に接続されている。
つまり本実施形態に係るシリンダヘッド10においては、ロアジャケット32内に供給された冷却水は、第2のポート通路部35及びサブ通路部39を通過した後、アッパジャケット31の分岐通路部40を介してアッパ出口通路部37から外部に排出されるようになっている。
なお、ロアジャケット32が備えるサブ通路部39は、シリンダヘッド10を鋳造する際に、第2のポート通路部35を形成するための中子を支持する幅木によって形成される空間である。このため、サブ通路部39の先端部(下流側端部)は開口しているが、このサブ通路部39の開口は、図示しない封止部材(エキスパンションプラグ)によって封止されている。
このようにロアジャケット32を構成する第2のポート通路部35が、第2のポート通路部35の下流側の端部近傍から延在するサブ通路部39を介してアッパジャケット31の分岐通路部40に連通されていることで、ロアジャケット32内の第2のポート通路部35の冷却水の流れを阻害することなく、ロアジャケット32内に冷却水を良好に流通させることができる。
またサブ通路部39が、アッパジャケット31の気筒通路部33及び第1のポート通路部34よりも下流側の分岐通路部40に接続されているため、アッパジャケット31の気筒通路部33及び第1のポート通路部34の流れが阻害されることもなく、アッパジャケット31内にも冷却水を良好に流通させることができる。
つまり、アッパジャケット31とロアジャケット32のそれぞれに冷却水を良好に流通させることができるため、シリンダヘッド10の冷却性能を向上することができる。
さらにアッパジャケット31とロアジャケット32とは独立して設けられているため、アッパジャケット31とロアジャケット32とを接続するには、シリンダヘッド10を鋳造後に加工する必要がある。すなわち鋳造時には、サブ通路部39と分岐通路部40とは分離されているため、その後にシリンダヘッド10を加工して、サブ通路部39と分岐通路部40とを連通させる必要がある。
本実施形態では、ロアジャケット32のサブ通路部39が、中子を支持する幅木によって形成された空間であり、その先端部は開口した状態であるため、サブ通路部39と分岐通路部40とを連通させるための加工を比較的容易に行うことができる。
ところで、アッパジャケット(第1の通路)31には、図6に示すように、第1のポート通路部34の上流部(排気口20の中心部よりも上流側)に、アッパジャケット31(第1のポート通路部34)の一部を遮る第1の遮り部50が設けられている。また、ロアジャケット(第2の通路)32には、図7に示すように、第2のポート通路部35の上流部に、ロアジャケット32(第2のポート通路部35)の一部を遮る第2の遮り部60が設けられている。これら第1の遮り部50及び第2の遮り部60は、冷却水の通路の絞り(流路の縮小)として機能をする。
第1の遮り部50は、本実施形態では、冷却水の流れ方向の上流側から順に第1の柱状部51A、第2の柱状部51B及び第3の柱状部51Cが配置されるように構成されている。これらの柱状部51(51A~51C)が、アッパジャケット31の第1のポート通路部34の上流部に適宜配置されている。
また第2の遮り部60は、冷却水の流れ方向の上流側から順に第1の柱状部61A及び第2の柱状部61Bが配置されるように構成されている。これらの柱状部61(61A,61B)が、ロアジャケット32の第2のポート通路部35の上流部に適宜配置されている。
なお第1の遮り部50の各柱状部51の配置は、第1のポート通路部34の上流部に設けられていればよく、その配置は特に限定されない。同様に、第2の遮り部60の各柱状部61の配置は、第2のポート通路部35の上流部に設けられていればよく、その配置は特に限定されない。本実施形態に係る各柱状部51,61の配置は、後述される。
第1の遮り部50の各柱状部51(51A~51C)は、略円形の横断面形状を有し、第1のポート通路部34の高さ方向に延在して設けられている。一方、第2の遮り部60の各柱状部61(61A,61B)は、略楕円形の横断面形状を有し、第2のポート通路部35の高さ方向に延在して設けられている。
本実施形態では、第1の遮り部50の柱状部51と、第2の遮り部60の柱状部61とには、それぞれの横断面形状が互いに異なるが、それぞれの断面積は互いに略同程度の大きさを有している。第1の遮り部50の各柱状部51と、第2の遮り部60の各柱状部61とは、互いに同一の横断面形状に形成されていてもよい。
このような第1の遮り部50及び第2の遮り部60が設けられていることで、アッパジャケット31の第1のポート通路部34の上流部の流路抵抗は、ロアジャケット32の第2のポート通路部35の上流部の流路抵抗よりも大きくなっている。
例えば、本実施形態では、ロアジャケット32の第2のポート通路部35には2本の柱状部61が設けられている構成と比較して、アッパジャケット31の第1のポート通路部34には3本の柱状部51が設けられている。つまりロアジャケット32とアッパジャケット31とでは、設けられている柱状部の本数が異なる。その結果、第1のポート通路部34の上流部の流路抵抗は、第2のポート通路部35の上流部の流路抵抗よりも大きくなっている。
これにより、シリンダヘッド10の各部位での冷却性能の均一化を図ることができる。第1の遮り部50及び第2の遮り部60が設けられていない場合、第1のポート通路部34と共に気筒通路部33を備えるアッパジャケット31は、第2のポート通路部35のみを備えるロアジャケット32に比べて、冷却水の流量が多くなる。またアッパジャケット31及びロアジャケット32の何れにおいても、上流部の冷却水の流量が下流部の冷却水の流量よりも多くなる。しかしながら、第1の遮り部50及び第2の遮り部60を設け、第1のポート通路部34の上流部の流路抵抗が、第2のポート通路部35の上流部の流路抵抗よりも大きくなるという構成によって、ウォータジャケット30の各部位での流量の差が小さくなる。したがって、シリンダヘッド10の各部位での冷却性能の均一化を図ることができる。
なお第1のポート通路部34の上流部の流路抵抗を、第2のポート通路部35の上流部の流路抵抗よりも大きくするための第1の遮り部50及び第2の遮り部60の構成は特に限定されない。
例えば、第1のポート通路部34の上流部の流路抵抗が第2のポート通路部35の上流部の流路抵抗よりも大きくなるように、第1の遮り部50の各柱状部51と、第2の遮り部60の各柱状部61とを、異なる大きさ(断面積)で形成するようにしてもよい。或いは第1の遮り部50の各柱状部51と、第2の遮り部60の各柱状部61とを異なる断面形状を有するように形成することで、第1のポート通路部34の上流部の流路抵抗が第2のポート通路部35の上流部の流路抵抗よりも大きくなるようにしてもよい。
またアッパジャケット31の第1のポート通路部34に第1の遮り部50を設けると共に、ロアジャケット32の第2のポート通路部35に第2の遮り部60を設けることで、ウォータジャケット30内の冷却水の流れを適切に制御して、ウォータジャケット30の全体に冷却水を適切に流通させることができる。すなわちウォータジャケット30内に冷却水が流れ辛い部位がある場合でも、その部位での冷却水の滞留を抑制して冷却水を適切に流通させることができる。
第1の遮り部50を構成する第1の柱状部51A及び第2の柱状部51Bは、第1のポート通路部34に冷却水が流入する第1の流入口70の近傍に設けられている。本実施形態では、アッパジャケット31には、シリンダヘッドのフロント側にアッパ入口通路部36が設けられている。第1のポート通路部34には、主に、第1の気筒11aに対応する排気バルブ孔14aの外側から冷却水が流入する。つまり本実施形態に係るアッパジャケット31では、第1の気筒11aに対応する排気バルブ孔14aの外側部分が第1の流入口70となる。そして、第1の柱状部51A及び第2の柱状部51Bは、この第1の流入口70に最も近い第1の気筒11aに繋がる2つの排気バルブ孔14a,14bの近傍にそれぞれ配置されている。
これら第1の柱状部51A及び第2の柱状部51Bを設けることで、アッパジャケット31内の冷却水の流れが適切に制御することができる。例えば、図6中に矢印で示すように、第1の流入口70から第1のポート通路部34内に流入した冷却水の流線は、第1の柱状部51Aによって第1の方向d1と第2の方向d2とに分割される。
第1の方向d1に流れた冷却水は、第1のポート通路部34の外側(湾曲した外周側)を流通する。一方、第2の方向d2に分割された冷却水の流線は、さらに第2の柱状部51Bによって第3の方向d3と第4の方向d4とに分割される。そして、第3の方向d3に流れた冷却水は、例えば、第1の気筒11aと第2の気筒11bとの間を通過して気筒通路部33に流入する。一方、第4の方向d4に流れた冷却水は、第1のポート通路部34の内側(気筒通路部33側)を流通する。
第1の遮り部50の第3の柱状部51Cは、この第3の方向d3に流れた冷却水が通過する位置に設けられている。第3の柱状部51Cは、上述のように第1のポート通路部34の上流部に設けられていればよいが、本実施形態では、第2の気筒11bに対応する位置に設けられている。
このため、第3の方向d3に分割された冷却水の流線は、さらにこの第3の柱状部51Cによって第5の方向d5と第6の方向d6とに分割される。第5の方向d5に流れた冷却水は、第2の気筒11b付近を通過して気筒通路部33に流入する。また第6の方向に流れた冷却水は、第1の柱状部で第1の方向d1に流れた冷却水と合流して第1のポート通路部34内を流通する。
このようにアッパジャケット31の第1のポート通路部34の上流部に、第1の遮り部50の各柱状部51を適宜配置することで、特に、第1の柱状部51Aと第2の柱状部51Bとを、第1の流入口70に最も近い第1の気筒11aに繋がる2つの排気バルブ孔14a,14bの近傍にそれぞれ配置することで、冷却水の流れを適切に制御してアッパジャケット31の各部位に冷却水を流通させることができる。
また本実施形態では、図8に模式的に示すように、第1のポート通路部34は、集合排気ポート17の上部を覆うように設けられている。また、第1のポート通路部34は、集合排気ポート17(18a)の上面に対向する横溝通路部34aと、横溝通路部34aから連続して設けられ集合排気ポート17(18a)の側面に対向する縦溝通路部34bと、を有している。そして、第1の遮り部50の第1の柱状部51Aは、横溝通路部34aと縦溝通路部34bとの境界付近に設けられている。
これにより、横溝通路部34a内に冷却水を良好に流通させることができるのはもちろん、縦溝通路部34bにも冷却水を良好に流通させることができる。すなわち、第1の流入口70から第1のポート通路部34内に流入した冷却水の流線が、第1の柱状部51Aによって第1の方向d1と第2の方向d2とに分割されることで(図6参照)、第1の方向d1に流れる冷却水は、縦溝通路部34b内に縦方向(図8中下向き)にも流れ込み易くなる。
また、第2の遮り部60の第1の柱状部61A及び第2の柱状部61Bが、第1の遮り部50の第1の柱状部51A及び第2の柱状部51Bと同様な形で、第2のポート通路部35に冷却水が流入する第2の流入口80の近傍に設けられている。
ロアジャケット32は、上述のようにシリンダヘッド10のフロント側にロア入口通路部38が設けられており、第2のポート通路部35には、主に、第1の気筒11aに対応する排気バルブ孔14aの外側から冷却水が流入する。つまりロアジャケット32でも、第1の気筒11aに対応する排気バルブ孔14aの外側部分が第2の流入口80となる。そして、第1の柱状部61A及び第2の柱状部61Bは、この第2の流入口80に最も近い第1の気筒11aに繋がる2つの排気バルブ孔14a,14bの近傍にそれぞれ配置されている。
第1の柱状部61A及び第2の柱状部61Bは、上述のように略楕円形の横断面形状を有し、その長軸方向が所望の向きとなるように配置されている。例えば、第1の柱状部61Aは、楕円の長軸方向L1が集合排気ポート17の排気集合部19を向くように配置されている(図5参照)。一方、第2の柱状部61Bは、その長軸方向L2が、排気集合部19よりも集合排気ポート17の外側を向くように配置されている。つまり第2の柱状部61Bは、その長軸方向L2が冷却水の流れ方向とは交差するように配置されている。この配置では、第1の柱状部61Aの長軸方向L1と第2の柱状部61Bの長軸方向L2との交差角度θ1は鈍角となる。
ロアジャケット32(第2のポート通路部35)内に、これら第1の柱状部61A及び第2の柱状部61Bが設けられていることで、ロアジャケット32内の冷却水の流れを制御して、各部位に冷却水を流通させることができる。例えば、図7中に矢印で示すように、第2の流入口80から第2のポート通路部35内に流入した冷却水は、第1の柱状部61Aによって流れの向きが決定され、主に、第2のポート通路部35の湾曲した外周面に沿って流通するようになる。
ただし、第2のポート通路部35内に流入した冷却水の流線は、第1の柱状部61Aによって分割されるため、第7の方向d7にも冷却水が流れる。第7の方向d7に流れた冷却水は、さらに第2の柱状部61Bによって流れの方向が決定される。すなわち、第7の方向d7に流れた冷却水は、第2の柱状部61Bによって流れの向きが変えられて、第2のポート通路部35の外側(湾曲した外周側)に向かう第8の方向d8に流れる。
これにより、第2のポート通路部35内の冷却水の流れを適切に制御して、ロアジャケット32(第2のポート通路部35)内の各部位に冷却水を流通させることができる。
またロアジャケット32内を流通する冷却水の流量は比較的少なく、例えば、アッパジャケット31内を流れる冷却水の流量よりも少ないが、第1の柱状部61A及び第2の柱状部61Bが楕円形の横断面形状を有していることで、ロアジャケット32(第2のポート通路部35)内の冷却水の流れをより適切に制御することができる。すなわち、横断面形状が楕円形である第1の柱状部61A及び第2の柱状部61Bは、冷却水の流線を分割する機能もあるが、冷却水の流れを決定する機能が大きいため、流量が比較的少ないロアジャケット32内の冷却水の流れを適切に制御することができる。
なお第2のポート通路部35は、集合排気ポート17の下部を覆うように設けられており、図示は省略するが、アッパジャケット31の第1のポート通路部34と同様に、集合排気ポート17の下面に対向する横溝通路部と、集合排気ポート17の側面に対向する縦溝通路部と、を有している。そして、第2の遮り部60を構成する第1の柱状部61Aは、横溝通路部と縦溝通路部との境界付近に設けられている。これにより、ロアジャケット32の第2のポート通路部35内の冷却水を、横溝通路部内に良好に流通させることができるのはもちろん、縦溝通路部にも冷却水を良好に流通させることができる。
以上のように本実施形態に係るシリンダヘッド10の構造によれば、ウォータジャケット30を構成するアッパジャケット31及びロアジャケット32内に冷却水を全体に亘って良好に流通させることができる。すなわちウォータジャケット30内に冷却水が流れ難い部位がある場合でも、その部位での冷却水の滞留を抑制して冷却水を適切に流通させることができる。したがってシリンダヘッド10の冷却性能を向上することができる。
上述されるように、本発明の一実施形態が説明されたが、本開示は、上述の実施形態に限定されない。本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、第2の遮り部を構成する各柱状部の横断面形状を略楕円形とした例を説明したが、各柱状部の横断面形状は、これに限定されない。第2の遮り部を構成する各柱状部の横断面形状は任意に決定されればよいが、その横断面が長軸と短軸とを有する形状となっていることが好ましい。具体的には、楕円形状の他、非菱形や、いわゆるオーバル形状(トラック形状)等であってもよい。
また上述の実施形態では、ウォータジャケットを構成するアッパジャケットに第1の遮り部を構成する各柱状部を設けると共に、ロアジャケットに第2の遮り部を構成する各柱状部を設けるようにしたが、アッパジャケット及びロアジャケットの一方に柱状部を設けるようにしてもよい。すなわちアッパジャケット及びロアジャケットのうち気筒通路部及び第1のポート通路部を備える一方のみに柱状部を設けるようにしてもよい。
また上述の実施形態では、多気筒エンジンとして直列4気筒のエンジンを例示して本発明を説明したが、本発明に係るシリンダヘッドは、直列4気筒のエンジン以外の多気筒エンジンにも適用可能なものである。
本出願は、2018年12月19日出願の日本特許出願特願2018-237726に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
10 シリンダヘッド
11 気筒(シリンダ)
11a~11d 第1~第4の気筒
12 動弁室
13(13a,13b) 吸気バルブ孔
14(14a,14b) 排気バルブ孔
15 吸気ポート
16 吸気口
17 集合排気ポート
18(18a~18d) 排気ポート
19 排気集合部
20 排気口
21(21a~21b) 仕切壁
30 ウォータジャケット
31 アッパジャケット
32 ロアジャケット
33 気筒通路部
34 第1のポート通路部
35 第2のポート通路部
34a 横溝通路部
34b 縦溝通路部
36 アッパ入口通路部
37 アッパ出口通路部
38 ロア入口通路部
39 サブ通路部
39a 大径部
40 分岐通路部
50 第1の遮り部
51(51A~51C) 柱状部
60 第2の遮り部
61(61A,61B) 柱状部
70 第1の流入口
80 第2の流入口

Claims (5)

  1. 複数の筒にそれぞれ接続される複数の排気ポートと、複数の前記排気ポートが集合するように構成される排気集合部と、を含む集合排気ポートと、
    複数の前記気筒のそれぞれが並んで配置される列方向に冷却水を流すように構成される冷却水通路と、を備え、
    前記冷却水通路は、
    並んで配置される複数の前記気筒に配置される気筒通路部と、前記集合排気ポートに配置される第1のポート通路部とを有し、前記集合排気ポートの上部と下部のうち一方に設けられる第1の通路と、
    前記集合排気ポートに配置され、前記第1の通路に対向して設けられる第2のポート通路部を有し、前記集合排気ポートの前記上部と前記下部のうち他方に設けられる第2の通路と、を含み、
    前記第1の通路の前記第1のポート通路部の上流部には、前記第1の通路の一部を遮るように構成された第1の遮り部が設けられ、前記第2の通路の前記第2のポート通路部の上流部には、前記第2の通路の一部を遮るように構成された第2の遮り部が設けられ、前記第1の通路の前記第1のポート通路部の上流部の流路抵抗が、前記第2の通路の前記第2のポート通路部の上流部の流路抵抗よりも大きくなっている、多気筒エンジンのシリンダヘッド。
  2. 前記第1の遮り部の断面積の大きさと前記第2の遮り部の断面積の大きさとが、互いに異なっている、請求項1に記載のシリンダヘッド。
  3. 前記第1の遮り部の断面形状と前記第2の遮り部の断面形状とが、互いにが異なっている、請求項1又は2に記載のシリンダヘッド。
  4. 前記第1の遮り部は、前記第1のポート通路部に冷却水が流入するように構成される第1の流入口の近傍に設けられ、
    前記第2の遮り部は、前記第2のポート通路部に冷却水が流入するように構成される第2の流入口の近傍に設けられている、請求項1から3の何れか一項に記載のシリンダヘッド。
  5. 前記第1のポート通路部及び前記第2のポート通路部のそれぞれは、前記集合排気ポートの上方又は下方に対向する横溝通路部と、該横溝通路部から連続して設けられ前記集合排気ポートの側面に対向する縦溝通路部と、を有し、
    前記第1の遮り部及び前記第2の遮り部が、前記横溝通路部と前記縦溝通路部との間に設けられている、請求項1から4の何れか一項に記載のシリンダヘッド。
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