JP7148225B2 - タイトジャンクション形成促進剤 - Google Patents
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Description
以上のように、タイトジャンクションの機能破綻によるこれらの傷害から生体を守るため、タイトジャンクション形成促進剤の開発が望まれていた。
しかしながら、上皮細胞においてクローディンの発現を促進しても、未重合で過剰なクローディンタンパク質が排除される機構が備わっており、本来タイトジャンクションが形成されるべき細胞の側底膜領域でクローディンの重合はおこらず、タイトジャンクション形成が誘導されないことがある。また、より短時間の内にタイトジャンクション形成を促進する成分が望まれていた。
以上より、タイトジャンクション形成を短時間で誘導することができ、供給安定性に問題のないタイトジャンクション形成促進剤の開発が望まれていた。
すなわち、本発明は、ユーカリ葉抽出物からなるタイトジャンクション形成促進剤である。
ユーカリ葉の抽出方法としては、浸漬抽出法、連続抽出法、水蒸気蒸留抽出法(常圧、減圧)、超臨界流体抽出法、圧搾抽出法等が挙げられるが、この中でも浸漬抽出法等の抽出溶媒を使用した抽出方法が特に好ましい。
以下、浸漬抽出法等の抽出溶媒を使用した抽出方法について、具体例を挙げて詳細に説明する。
浸漬抽出法の具体的手順としては、ユーカリの葉を抽出溶媒に浸漬して抽出し、ろ過等の公知の固液分離方法によってユーカリの葉と抽出液を分離する方法が挙げられる。なお、得られたユーカリ葉抽出物は、そのままタイトジャンクション形成促進剤として利用するほか、抽出溶媒を留去して濃縮したり、カラムクロマトグラフィーや溶媒分画等の処理により精製したりしてもよい。
抽出に使用するユーカリの葉は、抽出効率を高めるために乾燥させたものであることが好ましい。乾燥方法としては、天日干し、風乾、加熱乾燥、真空乾燥、気流乾燥等が挙げられる。
また、抽出に使用するユーカリの葉は、抽出効率を高めるために粗く破砕されたものであることが好ましい。破砕方法としては、一軸型破砕機や二軸型破砕機等の破砕機を用いて行うことが挙げられる。
抽出溶媒がアルコール類を含む混合溶媒である場合の抽出溶媒におけるアルコール類の含有量は、通常1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上であり、通常99体積%以下、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下である。
抽出溶媒が水とアルコール類の混合溶媒である場合、水とアルコールの体積比率(水/アルコール類)は、通常0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.4以上であり、通常100以下、好ましくは10以下、より好ましくは2.0以下である。
上記の範囲内であると、タイトジャンクション形成促進作用に優れたユーカリ葉抽出物を得やすくなる。
抽出時間は、抽出温度等に応じて適宜選択されるべきであるが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上であり、通常1週間以下である。
乾燥したユーカリの葉100gに1000gの50質量%エタノール水溶液を加えて60℃で1時間抽出し、ろ過することによりユーカリ葉の抽出液を得た。この抽出液をロータリーエバポレーターで減圧下、60℃で固形状態になるまで濃縮し、ユーカリ葉抽出物20.1gを得た。得られた固形物を所定の有効分濃度となるように、50質量%エタノール水溶液で希釈して使用した。
本発明のタイトジャンクション形成促進作用の評価方法は、国際公開第2015/159855号やShiomi等の文献(Sci Rep.2015、5、13262)に記載された細胞及びそれを利用したスクリーニング方法で実施した。pCAGGS-Claudin1-GFPを安定発現するL929細胞(GFPmCL1L細胞)を96マイクロウエルオプティカルボトムプレート(Nunc社製)に播種し、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地)に10%牛胎児血清を添加した培地でコンフルエントになるまで培養した。所定の濃度になるように培地で調整した試料をオプティカルボトムプレート中に添加した。ユーカリ葉抽出物の濃度は0.01%、KN-93は10μMに調整した。試料を添加して5時間後に、共焦点顕微鏡を用いてクローディン-1 GFP(蛍光)が細胞接着部位に高度に濃縮しているかどうか、つまりクローディンの重合によるタイトジャンクションが形成しているかどうかを観察した(図1参照)。また、そのときの細胞間接着部位に濃縮された蛍光強度を画像解析で求め、試料添加時のクローディン-1GFP強度を、試料無添加のときの蛍光強度を100%とした相対値で表した(図2参照)。図1の写真の比較から、無添加よりもユーカリ葉抽出物やKN-93の添加の方が細胞間接着部位に濃縮されたクローディン-1GFPによる蛍光強度が増強され、クローディンの重合によるタイトジャンクションの形成が促進されていることが確認できた。また、図2より、そのときの細胞間接着部位に濃縮されたクローディン-1GFPの蛍光強度は、ユーカリ葉抽出物が最も顕著に高かった。したがって、ユーカリ葉抽出物が5時間という短時間のうちにタイトジャンクション形成促進作用を発揮していることが確認できた。
マウス乳腺上皮細胞(EpH4細胞)を用いてタイトジャンクションの形成誘導を確認した。Eph4細胞をDMEM培地でコンフルエントになるまで培養した。ユーカリ葉抽出物の濃度を0.01%になるように培地で調整し、それを添加して5時間培養した後、蛍光抗体法にてクローディンを染色した。無添加は培地のみとした。図3に抗体染色像を示した。図3より、ユーカリ葉抽出物は無添加よりも細胞間の抗体染色像が側方向に広がっていることから、上皮細胞においてユーカリ葉抽出物はクローディンの重合を5時間で増強し、タイトジャンクションの形成を促進することが確認できた。
タイトジャンクションのバリア機能の定量法の一つであるTER(trans-epithelial electrical resistance、経上皮電気抵抗)法を用いて、細胞間隙における物質透過性を定量した。実際の手順は以下の通りである。ヒト正常表皮細胞を重層培養したヒト3次元培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL12(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製)を付属のアッセイ培地で24時間培養した。ユーカリ葉抽出物(0.01%及び0.03%)及びKN-93(50μM)を所定の濃度になるようにアッセイ培地で試料溶液を調製し、各試料溶液を培養カップの表皮組織表面に1mL添加した。コントロールはアッセイ培地のみを添加した。3次元培養表皮モデルの上下に発生するTER値は、電極Millicell-ERS2(ミリポア社製)を用いて、試料溶液の添加直後(0時)、1時間後及び2時間後に測定した。図4に、TER値は各試料0時のTER値を100%として相対値として表した。その結果、ユーカリ葉抽出物はKN-93と同様に添加1時間後からTER値を上昇させたことから、3次元培養表皮モデル上下間にバリア機能を増強させることが確認できた。
以上の評価試験で得られた結果は、ユーカリ葉抽出物がクローディンを短時間で細胞膜上に重合させることでタイトジャンクション形成を促進し、バリア機能を高めることが可能であることを示すものである。
Claims (1)
- ユーカリ(Eucalyptus globulus)葉抽出物からなるタイトジャンクション形成促進剤。
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WO2015159855A1 (ja) | 2014-04-15 | 2015-10-22 | 国立大学法人九州大学 | タイトジャンクション形成促進を評価するための細胞、およびタイトジャンクション形成促進剤 |
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WO2015159855A1 (ja) | 2014-04-15 | 2015-10-22 | 国立大学法人九州大学 | タイトジャンクション形成促進を評価するための細胞、およびタイトジャンクション形成促進剤 |
Non-Patent Citations (2)
Title |
---|
Journal of Cosmetic Dermatology,2013年,Vol.12,pp.3-11 |
新 化粧品ハンドブック,2006年,p.503 |
Also Published As
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