以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る建具1の正面図である。図2は、本実施形態の建具1の斜視図である。図1に示すように、本実施形態の建具1は、建物に固定される枠体2と、枠体2の内側に納められる左右一対のスライドドア3と、スライドドア3の移動をガイドする左右一対のガイドレール4と、を備える。
枠体2は、建物の開口部6に沿って固定される。枠体2は、上枠21、左右一対の縦枠22及び下枠24が矩形に枠組みされて構成され、上枠21、左右一対の縦枠22及び下枠24によって囲まれた空間を形成する。以下の説明において、建物の開口部のうち、枠体2の内側の空間を枠体2の開口部20として説明する。左右一対のスライドドア3は、電動で開閉動作し、閉鎖位置、通風位置、及び閉鎖状態の3つの位置で停止させることが可能となっている。ガイドレール4は、枠体2の開口部20よりも室外側であって枠体2の左右方向外側に延び出ている。
図3Aは、本実施形態の建具1の閉鎖位置を示す平面図である。図3Aに示すように、閉鎖状態では、左右一対のスライドドア3は壁5に納まった状態となる。
図3Bは、本実施形態の建具1の通風位置を示す平面図である。図3Bに示すように、通風位置では、左右一対のスライドドア3は、ロック状態を保持しながら枠体2に一部が納まった状態で停止する。
図3Cは、本実施形態の建具1の開放位置を示す平面図である。図3Cに示すように、左右一対のスライドドア3は、通常状態から更に室外側にせり出した後、ロック状態を解除して左右方向で互いに離れる方向に移動する。左右一対のスライドドア3は、ガイドレール4に案内されながら開放位置まで移動する。
図3A~図3Cに示すように、スライドドア3の室外側(正面側)に位置する見付面を第1面3aとし、室内側(背面側)に位置する見付面を第2面3bとする。通風位置では、第1面3aが縦枠22(枠体2)の室外側見付面よりも見込方向室外側に位置する。また、通風位置から開放位置の移動では、通風位置から更に見込方向室外側に突出し、スライドドア3の第2面3bも、縦枠22(枠体2)の室外側見付面22aよりも見込方向室外側に位置する。この状態でスライドドア3が左右方向外側の開放位置まで移動する。開放位置では、スライドドア3の第2面3bが壁5に見込方向で対向する。
図4は、本実施形態の建具1の開放位置を示す斜視図である。図4に示すように、建具1は、スライドドア3を上枠21に対して前後方向に移動可能に支持する見込用スライド機構31と、見込用スライド機構31に支持されるとともにスライドドア3を左右方向に移動可能に吊り下げ支持する左右用スライド機構30と、スライドドア3の左右方向への移動時にスライドドア3を下から支持する戸車60,61(図11参照)と、を備える。
図5は、本実施形態の建具1の見込用スライド機構31及び左右用スライド機構30を示す拡大斜視図である。図6は、本実施形態の建具1の見込用スライド機構31及び左右用スライド機構30を示す拡大正面図である。図7は、本実施形態の建具1の見込用スライド機構31及び左右用スライド機構30の室内側を示す拡大斜視図である。
見込用スライド機構31は、前後レール取付板310と、枠側レール311と、中間スライドレール312と、支持レール313と、第1レールジョイント板314と、第2レールジョイント板315と、を備える。
前後レール取付板310は、上枠21に固定されており、枠側レール311を支持する。枠側レール311は、前後方向に延びており、中間スライドレール312を前後方向に移動可能に支持する。中間スライドレール312は、前後方向に延びており、枠側レール311に前後方向に移動可能に支持されるとともに、支持レール313を前後方向に移動可能に支持する。本実施形態では、中間スライドレール312の左右方向の一側に枠側レール311が嵌合されるとともに左右方向の他側に支持レール313が嵌合される。
第1レールジョイント板314は、支持レール313に固定されるL字プレートである。第2レールジョイント板315は、第1レールジョイント板314に固定されるL字プレートである。第2レールジョイント板315は、左右用スライド機構30を保持する。
左右用スライド機構30は、被支持レール32と、中間スライドレール33と、ドア側レール34と、を備える。被支持レール32は、左右方向に延びており、第2レールジョイント板315によって複数個所で支持されている。
中間スライドレール33は、左右方向に延びており、被支持レール32に左右方向に支持されるとともに、ドア側レール34を左右方向に移動可能に支持される。本実施形態では、中間スライドレール312の見込方向室内側に被支持レール32が嵌合され、見込方向室外側にドア側レール34が嵌合される。ドア側レール34は、スライドドア3の室内側の面における上部に固定される。
本実施形態の建具1は、スライドドア3を前後方向に移動させる電動の前後駆動機構40と、スライドドア3を室外側にせり出した状態から開放位置に移動させる電動の左右移動機構50と、を備える。
前後駆動機構40及びスライドドア3の前後移動について説明する。図8は、本実施形態の建具1の前後駆動機構40を示す斜視図である。図8では、縦枠22が鎖線で示されている。前後駆動機構40は、左右一対の縦枠22のそれぞれに配置される。図9は、本実施形態の建具1の前後駆動機構40を示す拡大斜視図である。
前後駆動機構40は、取付板44と、複数のアーム41と、リンクバー42と、見込用駆動モータ43と、アーム係合部45と、を備える。
取付板44は、縦枠22の内側に固定される。取付板44は、複数のアーム41が回転軸400を中心として回転可能に取り付けられるアーム41の支持部材である。アーム41は、縦枠22の内側の上部、中部、下部に配置される。リンクバー42は、各アーム41に連結される細長の板状部材である。リンクバー42によって複数のアーム41のうちの1つが動くと、その1つのアーム41の動きに連動して他のアーム41が同じように動く。
見込用駆動モータ43は、縦枠22の内側における中部に位置するアーム41に接続される。見込用駆動モータ43の駆動力によって中部に位置するアーム41が回転し、当該アーム41の回転に伴ってリンクバー42を介して上下のアーム41が連動回転する。
図9に示すように、アーム係合部45は、スライドドア3の見込面に固定される。アーム係合部45は、上方が開放された細長のカム溝411が形成される。カム溝411の上部には、上下方向でカム溝411に近づくにつれて狭まるテーパ部412が形成される。
アーム41の先端側にはカム溝411に係合可能なカムピン410が設けられる。アーム41は、カムピン410がカム溝411の内側に納まることによってスライドドア3に係合する。
図10Aは、本実施形態の閉鎖位置のアーム41とアーム係合部45の様子を示す図である。図10Aに示すように、閉鎖位置ではカムピン410がカム溝411の下端近くまで入り込んでいる。
図10Bは、本実施形態の通風位置のアーム41とアーム係合部45の様子を示す図である。閉鎖位置から通風位置又は開放位置に移行するときは、見込用駆動モータ43の駆動力によってアーム41が上方に回動する。スライドドア3は、アーム41のカムピン410によって室外側に押し出される力を受け、見込用スライド機構31の各部がスライドして室外側に移動する。図10Bに示すように、通風位置ではカムピン410とカム溝411の係合が維持された状態でアーム41の回転が停止される。通風位置では、アーム41の先端が縦枠22(枠体2)よりも見込方向室外側に飛び出した状態となる。
図10Cは、本実施形態の開放位置のアーム41とアーム係合部45の様子を示す図である。図10Cに示すように、閉鎖位置又は通風位置から開放位置に移行するときは、カムピン410とカム溝411の係合が解除されるまで見込用駆動モータ43の駆動力によってアーム41を回転させる。このとき、アーム41はスライドドア3との接触を回避する待機位置まで回転する。なお、スライドドア3の枠体2の内側から外側への見込方向の移動では、壁5の厚みが考慮される。本実施形態の壁5は化粧材を含んでいる。化粧材を含む壁5に干渉しない位置までスライドドア3は、見込方向室外側に移動することになる。従って、アーム41の先端側も、スライドドア3を開放位置に移動させる過程で化粧材を含む壁5よりも見込方向室外側に位置することになる。
開放位置から通風位置又は閉鎖位置に移行するときは、図10Cから図10Bの順にスライドドア3が移動する。アーム41を待機位置から下方に回転させてカムピン410をカム溝411の内側に入れる。このとき、カムピン410は、テーパ部412によってカム溝411の始端部にスムーズに誘導される。カムピン410がカム溝411の内側を下側に移動するようにアーム41を下方に回動させることにより、スライドドア3が室内側に引き寄せられる。図10Bの状態からアーム41の先端が更に下がってスライドドア3が室内側に引き寄せられて図10Aに示す状態となる。
次に、左右移動機構50及びスライドドア3の左右移動について説明する。図7及び図8に示すように、左右移動機構50は、上枠21及び縦枠22の内側に配置される。
左右移動機構50は、無端状のベルト部51と、遊星ギア等からなる伝達機構52と、左右用駆動モータ53と、ベルト部51に固定されるとともにスライドドア3に連結されるスライドドア連結部54と、を備える。
左右用駆動モータ53は、カムピン410とカム溝411の係合が解除された後に駆動し、伝達機構52を介してベルト部51を回動させる。ベルト部51の移動に伴って移動するスライドドア連結部54により、スライドドア3がベルト部51の移動方向と同じ方向に移動する。
閉鎖位置に移行するときは、左右一対のスライドドア3が互いに離れる方向に移動する。左右用スライド機構30によってスライドドア3が吊り下げ支持された状態であり、左右用スライド機構30は、被支持レール32に対して中間スライドレール33がスライド移動した後、中間スライドレール33に対してドア側レール34がスライド移動する。
左右用スライド機構30によって吊り下げ支持されたスライドドア3は、開放位置に至る過程で戸車60,61によって下から支持される。次に、戸車60,61によるスライドドア3の支持について説明する。
図11は、本実施形態の建具1が備える戸車60,61の位置を示す拡大正面図である。図11に示すように、スライドドア3の下部には複数の戸車60,61が配置される。戸車60,61は、ガイドレール4に係合可能に構成される。戸車60は戸尻側に位置し、戸車61は左右方向で略中央に位置する。ガイドレール4は、壁5より室外側の土間部100に固定されており、壁5の見込方向室外側に位置している。
図12は、本実施形態の建具1の縦断面図である。図13は、本実施形態の建具1が備える戸車60,61を示す拡大断面図である。図14Aは、本実施形態の建具1の閉鎖位置を示す拡大横断面図である。図14Bは、本実施形態の建具1の通風位置を示す拡大横断面図である。
図12、図13、図14A及び図14Bに示すように、スライドドア3は、上框331、左右一対の縦框332及び下框334を備える。スライドドア3の室外側面340には壁5と共通の意匠を有する化粧板350が固定される。
上枠21、左右一対の縦枠22及び下枠24の室外側の見付面には気密材210が配置される。気密材210は、閉鎖位置のスライドドア3の室内側面342に見込方向で接触する。また、上框331の上部には上枠21との間の隙間を塞ぐ框側気密材341が配置される。戸車60,61は、見込方向で室外側から見たときにスライドドア3の室外側面340と室内側面342の間の下框334に回転可能に取り付けられる。
本実施形態のガイドレール4は、図1及び図11に示すように、正面側(奥行方向)から見たときにその始端部401が枠体2の開口部20よりも左右方向外側に位置している。即ち、図11の正面視で右側に位置するガイドレール4の始端部401は枠体2の開口部20よりも右側に位置し、左側に位置するガイドレールの始端部401は枠体2の開口部20よりも左側に位置しており、枠体2の開口部20の延長線状にはガイドレール4の始端部401が位置しない位置関係となっている。そのため、スライドドア3が見込方向で室外側に移動した突出位置の状態では、戸尻側に位置する戸車60もガイドレール4に係合しない。
スライドドア3は、見込用スライド機構31及び左右用スライド機構30を介して上枠21によって吊り下げ支持されている。スライドドア3は、左右用スライド機構30によって開放位置に近づくにつれて重心が左右方向の外側に移動し、重みによってスライドドア3の位置が下がることで、戸車60,61がガイドレール4に係合する。従って、突出位置から開放位置に移動した後に戸車60,61がガイドレール4の始端部に係合し、戸車60,61によってスライドドア3の荷重が受け止められる。
次に、通風位置について説明する。図14A及び図14Bに示すように、左右一対のスライドドア3の戸先側には嵌合部335a,335bが配置される。また、一側(図14A及び図14Bの紙面左側)のスライドドア3の戸先側には電気錠70の動作部71と、他側(図14A及び図14Bの紙面右側)のスライドドア3の戸先側には電気錠70の受け部72と、が配置される。
左右一対のスライドドア3は、閉鎖位置において電気錠70によってロック状態となる。また、図14Bに示すように、通風位置においても電気錠70のロック状態は維持される。
通風位置のスライドドア3は、閉鎖状態よりも見込方向室外側にせり出した位置であって、開放状態よりも見込方向室内側に位置する。そして、通風位置では、左右一対のスライドドア3の連結状態が維持される。スライドドア3の戸先側と反対側の端面は、縦枠22の見込面に対向しつつ、枠体2とスライドドア3の間に隙間が形成される。図14Bの矢印に示すように、枠体2とスライドドア3の間に隙間によって通風が可能となる。
次に、電気錠70への電力の供給経路について説明する。図15は、本実施形態の建具1が備える給電装置80の位置を示す拡大正面図である。図16は、本実施形態の建具1が備える給電装置80及び受電プレート90を示す拡大斜視図である。
本実施形態の建具1は、閉鎖状態及び通風位置の何れにおいても、電力をスライドドア3に供給可能な給電装置80を備える。図15に示すように、給電装置80は、枠体2の上枠21の内側に配置される。
図16に示すように、電気錠70が電気的に接続される受電プレート90がスライドドア3に固定されており、給電装置80は受電プレート90に電力を供給する。
給電装置80は、枠体固定部81と、2本(複数)の軸部82と、2個(複数)の接触子83と、接触子保持部84と、2個(複数)のバネ(弾性部材)85と、を備える。
枠体固定部81は、上枠21の内側に固定される。2本の軸部82は、枠体固定部81に見込方向にスライド移動可能に保持される。2本の軸部82の先端には、接触子保持部84が固定され、接触子保持部84の室外側に2本の接触子83が保持される。2個のバネ85が配置される。バネ85はコイルバネであり、その内側に軸部82を通した状態で枠体固定部81と接触子保持部84の間に保持される。
図17Aは、本実施形態の建具1が閉鎖位置にある状態での給電装置80及び受電プレート90を示す拡大縦断面図である。図17Aに示すように、閉鎖位置では、給電装置80の接触子83が受電プレート90に接触した状態である。接触子83及び接触子保持部84が室内側に押され、鎖線で示すバネ85が自然状態よりも縮んだ状態となり、軸部82が室内側に移動する。
図17Bは、本実施形態の建具1が通風位置にある状態での給電装置80及び受電プレート90を示す拡大縦断面図である。図17Bに示すように、通風位置では、閉鎖位置に比べてスライドドア3が見込方向室外側に移動する。そして、バネ85によって接触子保持部84が室外側に押され、軸部82が室外側に移動してスライドドア3の移動に追従する。通風位置においても、給電装置80の接触子83と受電プレート90の接触が維持される。
図17Cは、本実施形態の建具1が突出位置にある状態での給電装置80及び受電プレート90を示す拡大縦断面図である。図17Cに示すように、突出位置までスライドドア3が移動すると、給電装置80の接触子83と受電プレート90の接触が解除される。なお、電気錠70のロックは、突出位置又は通風位置から突出位置に移動するときに解除される。左右一対のスライドドア3は、突出位置から互いに離れるように左右方向で開放位置に移動する。
以上説明したように、上記実施形態は以下のように構成される。
建具1は、建物の開口部に沿って固定される枠体2と、枠体2内に納まるスライドドア(障子)3と、開口部を閉鎖する閉鎖位置と開口部から見込方向で枠体2の外側に突出した突出位置の間でスライドドア3を移動可能に支持する見込用スライド機構31と、突出位置と該突出位置から左右方向に離間した開放位置との間でスライドドア3を移動可能に支持する左右用スライド機構30(左右移動支持部)と、を備える。
本実施形態のスライドドア3は、閉鎖位置と突出位置の間でスライドドア3の見込面と枠体2の見込面とが対向した状態でスライドドア3と枠体2の間に隙間を形成する通風位置で停止可能に構成される。これにより、スライドドア3が左右方向に移動しようとしても枠体2に干渉するので、開口部を開放できなくなる。スライドドア3が通風位置であっても、防犯性能を維持できる建具1を実現できる。
本実施形態のスライドドア3は、左右一対で互いの戸先面が対向するように枠体2の開口部20に配置され、閉鎖位置において左右一対のスライドドア3が左右方向で離れる方向の移動を規制可能な電気錠(ロック機構)70を有し、通風位置では電気錠70が規制状態にある。これにより、通風位置で電気錠70によっても固定されるので、通風位置の防犯性をより一層向上させることができる。
本実施形態の建具1は、閉鎖位置においてスライドドア3と枠体2の間の見込方向の隙間を閉塞する気密材210を更に備え、通風位置では気密材210の閉塞が解除される。これにより、閉鎖位置の気密性を向上させつつ、通風位置での通気性を確保することができる。
本実施形態の建具1は、スライドドア3を見込方向に移動させる駆動力を出力する見込用駆動モータ43を更に備え、見込用駆動モータ43の駆動によってスライドドア3を閉鎖位置と開放位置の間を移動させ、見込用駆動モータ43の停止によってスライドドア3を通風位置で停止させる。これにより、ユーザが操作部(図示省略)の操作によって電動で通風位置とすることができ、開閉動作の自動化が実現できる。
また、本実施形態の建具1は、スライドドア3の下部に配置される戸車(車輪)60,61と、スライドドア3が開放位置に移動する際に、戸車60,61の左右方向の移動をガイドするガイドレール(ガイド部)4と、を更に備える。これにより、見込用スライド機構31及び左右用スライド機構30によって枠体2の外側で支持されるスライドドア3の荷重を戸車60,61で受けることができるとともに、戸車60,61がガイドレール4によって見込方向の揺れが規制されるので、左右方向の移動を安定的なものとすることができる。
本実施形態のガイドレール4は、見込方向で開口部の外側に位置する。これにより、ガイドレール4がユーザの出入りの邪魔となることもなく、利便性を維持しつつスライドドア3の左右方向の移動が安定的なものとなる。
本実施形態のガイドレール4の始端部401は、枠体2が有する縦枠22の内側の見込面よりも正面視で左右方向の外側に設けられる。これにより、ガイドレール4が枠体2の開口部20の延長線上になくなるので、出入りの際の邪魔になることもない。
本実施形態の戸車60は、スライドドア3の左右方向中央よりも戸尻側に配置される。これにより、突出位置から開放位置に移動する初期の段階で戸車60がガイドレール4にガイドされるので、スライドドア3の左右方向の移動をより安定的なものとすることができる。
本実施形態の戸車60,61は、ガイドレール4に係合する。これにより、スライドドア3がガイドレール4により一層安定的にガイドされる。
また、本実施形態では、見込用スライド機構31は、枠体2の上部に左右方向で間隔をあけて複数配置され、見込方向で枠体2の外側に向けて突出する枠側レール311、中間スライドレール312及び支持レール313を有する。また、左右用スライド機構30は、複数の被支持レール32、中間スライドレール33及びドア側レール34によって見込方向で移動可能に支持され、開口部から見込方向で枠体2の外側に突出した突出位置と該突出位置に対して左右方向に離間した開放位置との間で建物の壁5に沿ってスライドドア3をスライド移動可能に支持する。これにより、スライドドア3を枠体2に上吊り支持する構成をシンプルな構成で実現できる。見込用スライド機構31が左右方向で間隔をあけて複数配置されるので、左右用スライド機構30を安定的に保持できる。また、枠体2の室外側への露出を少なくできるので断熱性能を向上させるとともに、スライドドア3を見込方向に移動させるため、気密、水密性能も確保できる。
また、本実施形態のスライドドア3は、正面側に位置する第1面3a及び第1面3aの裏側に位置する第2面3bを有し、突出位置では、第2面3bが枠体2の正面側の室外側見付面22aよりも見込方向で外側に位置し、開放位置では、第2面3bが壁5と見込方向で対向する。これにより、枠体2の開口部20に重ならい壁5の前までスライドドア3を移動させることができるので、枠体2の開口部20を大きく開放することができる。
本実施形態のスライドドア3は、壁5と共通の意匠を有する化粧板350を室外側に有し、スライドドア3が開口部を閉鎖する閉鎖位置では化粧板350と壁5が略同一平面に位置する。これにより、閉鎖位置でスライドドア3が壁5に埋まったような状態とすることができ、意匠性が向上する。また、スライドドア3が左右方向に移動するときの壁5との接触を確実に避けることができる。
本実施形態の建具1は、見込用駆動モータ43に加え、枠体2に配置され、スライドドア3を左右方向に移動させる駆動力を出力する左右用駆動モータ53を更に備え、スライドドア3が閉鎖位置、突出位置、開放位置の間を電動で移動する。これにより、ユーザが操作部(図示省略)を操作することにより、電動でスライドドア3を所望の位置に移動させることができる。
また、本実施形態の建具1は、枠体2に回転可能に配置されるアーム41と、アーム41に配置されるカムピン(カム部)411と、スライドドア(障子)3に配置され、カムピン410に係合可能なカム溝411と、を備え、アーム41の回転によってカムピン410がカム溝411に係合する係合位置からカム溝411から離脱してスライドドア3に左右方向視で重ならない待機位置に移動することにより、スライドドア3が閉鎖位置から突出位置に移動する。これにより、見込用スライド機構31によって支持されたスライドドア3をアーム41の回転によって見込方向に安定的かつ容易に移動させることができる。また、アーム41が待機位置に移動しているので突出位置から開放位置への移動時にスライドドア3がアーム41に接触することもなく、スライドドア3の左右方向の移動も安定的に行うことができる。
本実施形態の枠体2には、アーム41が上下方向に間隔をあけて複数配置され、スライドドア3には、カム溝411がアーム41のカムピン410に対応して複数配置され、複数のアーム41のそれぞれがリンクバー42に連結される。複数のアーム41のうちの1つが回転すると、他のアーム41も連動して回転する。これにより、上下方向の複数個所でスライドドア3を見込方向に移動させる力をカムピン410とカム溝411からなるカム構造によって伝達できるので、スライドドア3の見込方向の移動をより一層安定的なものにすることができる。
また、本実施形態の建具1は、スライドドア(障子)3に配置され、電気錠70に電気的に接続される受電プレート(受電部)90と、枠体2に配置され、受電プレート90に電力を供給する給電装置(給電部)80と、を備え、給電装置80は、閉鎖位置と突出位置の間でスライドドア3の移動に追従し、閉鎖位置から離れた状態でも受電プレート90との接触を維持し、電力を給電する。これにより、閉鎖位置から突出位置に向けて見込方向で枠体2の外側に移動し始めた後も、受電プレート90と給電装置80の接触が維持され、電気錠70への電力の供給も維持される。また、突出位置から閉鎖位置に戻る過程で閉鎖位置に到達する前に、受電プレート90と給電装置80が接触して電力の供給が可能となる。
本実施形態のスライドドア3は、少なくとも閉鎖位置から通風位置の間では給電装置80と受電プレート90の接触が維持される。これにより、通風位置でも給電装置80から電力を電気錠70に供給でき、電気錠70のロック状態を制御することができる。
本実施形態の給電装置80は、枠体2に固定される枠体固定部81と、枠体固定部81に対して見込方向で移動可能に保持される接触子83と、少なくとも閉鎖位置において接触子83をスライドドア3側に付勢するバネ(弾性部材)85と、を有する。これにより、閉鎖位置から離れた状態で給電装置80がスライドドア3の受電プレート90に追従できる構成をシンプルに実現できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
上記実施形態では、閉鎖状態のスライドドア3とガイドレール4が見込方向で重ならない位置関係となっているが、この構成に限定されるわけではない。閉鎖状態において、スライドドア3とガイドレール4が見込方向で重なる構成としてもよい。
上記実施形態では、アーム41が回転可能に取り付けられる取付板44が細長の板状部材として形成されるが、この構成に限定されるわけではない。複数のアーム41ごとにブラケットを配置し、当該ブラケットによってアーム41を回転可能に支持する構成としてもよい。
上記実施形態では、ガイド部としてのガイドレール4が見込方向で枠体2の開口部20に重ならない位置に配置されるが、この構成に限定されない。ガイドレール4の始端部401が枠体2の開口部20に重なる位置にあってもよい。また、ガイド部は、ガイドレール4に限定されず、車輪も戸車60,61に限定されない。ガイド部を溝状に形成し、車輪がガイド部の溝によってガイドされる構成としてもよい。
上記実施形態の構成に加えて見込方向の移動、通風位置及び突出位置でのスライドドア3の位置をガイドするガイド部を配置する構成としてもよい。例えば、下枠24や土間部100に配置され、スライドドア3がガイド位置に到達したときに磁力によって上方に突出し、スライドドア3の下部に形成される係合溝に係合してスライドドア3の位置をガイドする部材を配置してもよい。
上記実施形態の構成に加えて通風位置で前後方向の移動を規制するロック装置を更に備えてもよい。これによって、防犯性能が更に向上する。
なお、上記の閉鎖位置、通風位置、開放位置の何れかの位置でのみスライドドア3が停止させる構成に限定されるわけではなく、任意の位置でスライドドア3を停止させてもよい。