(A)第1の実施形態
以下、本発明による親局通信装置、光通信ネットワークシステム、及び通信システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。以下では、本発明の親局通信装置、光通信ネットワークシスムを、それぞれOLT、PONに適用した例について説明する。
(A-1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る通信システム1の全体構成について示したブロック図である。
通信システム1は、ユーザが所持する無線通信端末(移動体通信端末)としての端末30を、コアネットワークNに接続させる移動体通信網のシステムである。
通信システム1は、通信キャリアの電話局の局舎内等に配置された信号処理装置としてのBUs10と、BUs10の配下に接続された複数の無線アンテナ装置としてのRH20とを有している。そして、通信システム1では、各RH20が1つのセルを構成し、BUs10の制御に応じて当該セル内の端末30と接続する。なお、BUs10及びRH20は、従来のLTEにおけるBBUやRRHに後述する省電力制御に関する構成(省電力モードに関する処理)が付加されている点で異なる。
通信システム1には、領域が隣接する2つのマクロセルCM(CM-A、CM-B)が配置されているものとする。また、この実施形態の例では、マクロセルCM-A、CM-Bの領域内に、それぞれ7個のスモールセルCS-A1~CS-A7、CS-B1~CS-B7が配置されている。
そして、この実施形態の例では、それぞれのマクロセルCM-A、CM-Bの領域に対応するRH20-A0、20-B0が配置されている。また、この実施形態の例では、それぞれのスモールセルCS-A1~CS-A7、CS-B1~CS-B7の領域に対応するRH20-A1~20-A7、20-B1~20-B7が配置されている。
そして、図1に示す例では通信システム1では、各BUs10と各RH20との間の有線区間がOLT40とONU50により構成されるPON(光通信ネットワークシステム)により接続されている。通信システム1では、BUs10ごとに異なる系統のPONが構成されている。
具体的には、図1に示す例では、BUs10-1、10-2にそれぞれOLT40(40-1、40-2)が接続されている。また、RH20-A0~20-A7、20-B0~20-B7に、それぞれONU50-A0~50-A7、50-B0~50-B7が接続されている。さらにまた、OLT40-1は、スプリッタ60-1で分岐された光ファイバ70-1で、ONU50-A0~50-A7と接続している。また、OLT40-2は、スプリッタ60-2で分岐された光ファイバ70-2で、ONU50-B0~50-B7と接続している。
すなわち、図1に示す例では、マクロセルCM-Aに属するBUs10-1とRH20-A0~20-A7との間は、OLT40-1とONU50-A0~50-A7により構成される1つのPONで接続されている。また、マクロセルCM-Bに属するBUs10-2とRH20-B1~20-B7との間は、OLT40-2とONU50-B0~50-B7により構成される1つのPONで接続されている。各ONU50は、対応するRH20と同じロケーション(例えば、マンションの屋上や電柱の上等)に配置されているものとする。
なお、OLT40及びONU50のインタフェースとしては種々のPONやGE-PON(Gigabit Ethernet(登録商標)-Passive Optical Network)のインタフェース(例えば、IEEE802.3ahで規定されるインタフェース)やITU-T G.989シリーズに対応したTWDM-PON(Time and Wavelength Division Multiplexing-PON)のインタフェースを適用することができる。この実施形態では、PON2を構成するOLT40及びONU50のインタフェースとして、TWDM-PONが適用されるものとして説明する。
端末30としては種々の無線通信端末を適用することができる。端末30としては、例えば、スマートホンやモバイルルータ等のモバイル通信端末(無線通信可能なもの)等が該当する。
スプリッタ60は、下位側(ONU50側)の光ファイバ70を8つに分岐(ONU50の数分岐)して、他方、上位側(OLT40側)の光ファイバ70に接続させるものである。なお、一般にOLT40とスプリッタ60との間は数km~数十km、スプリッタ60とONU50との間は数百m~数kmとなっており、ONU-OLT間に、個別に光ファイバを敷設する場合に比べ総ファイバ長を抑えることができる。
次に、OLT40の内部構成について説明する。
OLT40では、下り通信(OLT40からONU50への通信)及び上り通信の両方で、1波長(1λ)で10Gbpsの通信が可能となっているものとする。また、OLT40では、下り通信及び上り通信の両方で、4つの波長(以下ではこの4つの波長を、λ1~λ4と表す)を用いた通信が可能であるものとする。したがって、OLT40では、下り通信及び上り通信の両方で合計40Gbps(10Gbps×4λ)の通信が可能となっているものとする。
次に、各OLT40の内部構成について説明する。OLT40-1、40-2は、いずれも同様のハードウェア構成であるものとして説明する。
OLT40は、PON(光ファイバ70)と接続し、上位側(BUs10)との通信を中継(トランスポート)するトランスポート部41と、装置全体を制御する制御部42とを有している。
制御部42は、トランスポート部41を制御するOLT制御部422と、BUs10から供給される情報を取得してOLT制御部422に供給する情報入力部421とを有している。
トランスポート制御部110は、複数の波長可変光(λ1~λNの各波長の光信号(Nは整数))が可能な光フィルタ411(光トランシーバ)、4つの終端装置(1波長分のPONを終端する終端装置)としてのOLTC412(412-1~412-4)、及びスイッチ413を有している。トランスポート制御部110は、従来のTWDM-PONに後述する省電力制御(省電力モード)の機能が付加されている点で異なる。
OLT制御部422は、OLTC412-1~412-4に対して、いずれかの波長(λ1~λ4のいずれか)を割当てる処理を行う。
光フィルタ411は、下位側(スプリッタ60側)で分岐された光ファイバ70を上位側で分岐して、OLTC412-1~412-4に接続させる。光フィルタ411は、上位側のOLTC412-1~412-4から供給された各波長の光信号(λ1~λ4の各波長の光信号)を混合して、下位側(スプリッタ60側)に送出する。
また、光フィルタ411は、下位側から供給された光信号(λ1~λ4の波長が混合された光信号)から各波長の光信号を抽出して、それぞれの波長の光信号を対応するOLTC412-1~412-4に供給する。
OLTC412-1~412-4は、それぞれ異なる波長の光信号で、配下のONU50との通信、及び配下のONU50の制御(PONの制御)を行う。この実施形態では、OLTC412-1~412-4は、それぞれλ1~λ4の波長で光通信を行うものとして説明する。また、それぞれのOLTC412-1~412-4は、上位側でスイッチ413に接続している。
OLTC412-1~412-4は、それぞれ異なる波長(OLT制御部422の制御に応じた波長)で下位側(PON)と通信を行い、同一の波長で通信するONU50の制御を行う。また、OLTC412-1~412-4は、それぞれ下位側から受信した上り通信のデータ(パケット)をスイッチ413を介して上位側に転送(送信)し、上位側からスイッチ413を介して受信した下り通信のデータ(パケット)を下位側(配下のONU50宛)に送信する。
スイッチ413は、OLTC412-1~412-4と、上位側(BUs10側)との間のパケット(イーサネット(登録商標)フレーム)送受信を中継するスイッチである。
次に、各RH20で対応する省電力動作について説明する。
この実施形態では、各RH20は、特に省電力制御を行わない非省電力モードと、1又は複数段階の省電力モードに対応しているものとする。
具体的には、各RH20は、データ送信を不可(例えば、データ送信するインタフェースをオフ)としてデータ受信のみ可能とする第1の省電力モードと、データ送受信を不可として間欠的にデータ受信を可能とする(例えば、一定時間間隔でデータ受信するインタフェースをONとする)第2の省電力モードに対応しているものとする。第2の省電力モードでは間欠タイミング以外の期間はデータ送受信を不可とするので、第1の省電力モードよりも省電力効果が高い(消費電力が少ない)。各RH20は、第1の省電力モードで動作する場合、データ受信を契機に即座に他の動作モード(例えば、非省電力モード)に遷移することができる。また、各RH20は、第2の省電力モードで動作する場合、当該RH20が次にデータ受信可能となる間欠タイミングにならないと他の動作モード(例えば、非省電力モードや第1の省電力モード)に遷移することはできない。
次に、各ONU50で対応する省電力動作について説明する。
この実施形態では、各ONU50も、特に省電力制御を行わない非省電力モードと、1又は複数段階の省電力モードに対応しているものとする。
具体的には、各ONU50は、データ送信を不可(例えば、データ送信するインタフェースをオフ)としてデータ受信(OLT40又はRH20からのデータ受信)のみ可能とする第1の省電力モードと、データ送受信を不可として間欠的にデータ受信を可能とする(例えば、一定時間間隔でデータ受信するインタフェースをONとする)第2の省電力モードに対応しているものとする。第2の省電力モードでは間欠タイミング以外の期間はデータ送受信を不可とするので、第1の省電力モードよりも省電力効果が高い(消費電力が少ない)。各ONU50は、第1の省電力モードで動作する場合、OLT40又はRH20からデータ受信を契機に即座に非省電力モードに遷移することができる。また、各ONU50は、第2の省電力モードで動作する場合、当該ONU50が次にデータ受信可能となる間欠タイミングにならないと他の動作モード(例えば、非省電力モードや第1の省電力モード)に遷移することはできない。
次に、各OLT40のトランスポート部41で対応する省電力動作について説明する。
この実施形態では、OLT40のトランスポート部41も、特に省電力制御を行わない非省電力モードと、1又は複数段階の省電力モードに対応しているものとする。
この実施形態のOLT40(トランスポート部41)は、4つのOLTC412を備えているので、段階的に動作させるOLTC412を減らすことにより複数段階の省電力モードに対応させることができるものとする。ただし、全てのOLTC412の動作を休止(停止)させてしまうと、上位層(BUs10とRH20との間の通信)に影響を与える恐れがあるため、最低限1つのOLT40を動作させておくことが望ましい。したがって、この実施形態のOLT40では、少なくともOLTC412の総数マイナス1段階の省電力モードに対応しているものとする。すなわち、この実施形態のOLT40では、4つのOLTC412のうち1つのOLTC412を休止させた第1の省電力モードと、2つのOLTC412を休止させた第2の省電力モードと、3つのOLTC412を休止させた第3の省電力モードの3つの省電力モードに対応しているものとする。なお、OLT40では、OLTC412を休止(停止)させる際には、完全に動作を停止させる場合と、データ受信のみ可能な状態とし、データ受信を契機に即座に通常モードに復帰可能な場合の何れかとする。
なお、OLT40では、動作させるOLTC412の数が変動するたびに、非省電力モードで動作している各ONU50を、動作している各OLTC412に掛かる負荷が均等になるよう分散して接続させる制御を行う必要がある。
例えば、OLT40では、1つのOLTC412を停止させる場合、当該OLTC412に接続する非省電力モードのONU50を、他の休止させないOLTC412に分散して接続変更させる必要がある。ただし、第1の省電力モード又は第2の省電力モードで動作するONU50については、かならずしても休止させないOLTC412に接続変更する必要はない。また、上述の通り、この実施形態ではTWDM-PONが採用されているので、OLT40では、1つのOLTC412を停止させる場合、当該OLTC412を停止させる前に、当該OLTC412に接続する非省電力モードのONU50が送受信する光信号の波長を他の停止させないOLTC412の波長に変更させる必要がある。
なお、OLT40では、OLTC412を動作させる数だけでなく、各OLTC412内の省電力制御を行うようにしてもよい。例えば、各OLTC412内で活性化させる通信バッファの規模を制御すること等が挙げられる。
次に、BUs10の内部構成について説明する。
BUs10は、通信処理部11、情報出力部12、及び無線帯域割当部13を有している。
無線帯域割当部13は、RH20ごとに無線通信する際の周波数やタイムスロット等の資源の割当を決定し、決定した内容に従って動作するように各RH20を制御する。また、無線帯域割当部13は、マクロセルCM及び各スモールセルCS及びその周辺の端末30の位置等に基づいて、各RH20の動作モード(非省電力モード/第1、第2の省電力モード)を決定し、その決定に基づき各RH20に制御信号を送信して制御する。
無線帯域割当部13が、各RH20に対する動作モードを決定する方式については限定されないものである。無線帯域割当部13は、例えば、各RH20について、当該RH20に対応するスモールセルCS(以下、「自スモールセル」とも呼ぶ)に端末30が存在するか否か、及び、当該スモールセルCSに隣接するスモールセルCS(以下、「隣接スモールセル」とも呼ぶ)に端末30が存在するか否かを確認し、その確認結果に基づいて動作モードを判断するものとする。なお、無線帯域割当部13は、各スモールセルCSの位置情報が参照可能な状態となっているものとする。無線帯域割当部13は、例えば、自スモールセルに端末30が存在するRH20については非省電力モードで動作させるものとする。また、無線帯域割当部13は、自スモールセルに端末30が存在せず、かつ、隣接スモールセルに端末30が存在するRH20については第1の省電力モードで動作させるものとする。さらに、無線帯域割当部13は、自スモールセルに端末30が存在せず、かつ、隣接スモールセルに端末30が存在しないRH20については第2の省電力モードで動作させるものとする。
言い換えると、無線帯域割当部13が、各RH20に対して省電力モードを決定する際には、RH20について、非省電力モードで動作しなければならない緊急度(非省電力モードで動作しなければならないタイミングまでの残り時間)に応じたモードを決定しているといえる。例えば、非省電力モードで動作しなければならない緊急度が閾値より高い(非省電力モードで動作しなければならないタイミングまでの残り時間が閾値より短い)RH20については、復帰時間の短い第1の省電力モードで動作させ、非省電力モードで動作しなければならない緊急度が閾値より低い(非省電力モードで動作しなければならないタイミングまでの残り時間が閾値より長い)RH20については復帰時間が長く省電力効果の高い第2の省電力モードで動作させることになる。すなわち、無線帯域割当部13が、各RH20に対して省電力モードを決定する際には、非省電力モードで動作しなければならない緊急度が高い(非省電力モードで動作しなければならないタイミングまでの残り時間が短い)ほど、復帰までの時間が短い省電力モードを選択することが望ましい。
情報出力部12は、無線帯域割当部13が、各RH20に対して決定した資源の割当内容を示す情報(以下、「割当情報」と呼ぶ)や、各RH20の動作モード(非省電力モード/第1の省電力モード/第2省電力モード)の情報(以下、「動作モード情報」と呼ぶ)を含む情報(以下、「アンテナ制御情報」と呼ぶ)を、各OLT40に出力(供給)する処理を行うものである。情報出力部12が、OLT40にアンテナ制御情報を供給する手段については限定されないものである。例えば、BUs10とOLT40とを直接通信ケーブル(例えば、LANケーブルやシリアルケーブル等)で接続して通信するようにしてもよいし、RH20へ接続するパスに保守用のパスを設定して通信するようにしてもよい。
通信処理部11は、PON(OLT40及びONU50)を介して各RH20と接続し、各RH20とコアネットワークNとの間の通信を中継する通信処理を行うものである。
次に、OLT40を構成する制御部42の詳細構成について、図2を用いて説明する。
上述の通り、制御部42は、情報入力部421及びOLT制御部422を有している。
図2に示すように、OLT制御部422は、トランスポート制御部110、資源割当部120及びPONシステム管理情報DB130を有している。
トランスポート制御部110は、資源割当部120の指示に従ってトランスポート部41の制御や、トランスポート部41を介した各ONU50の制御を行う。
PONシステム管理情報DB130は、当該OLT40で管理する各構成要素に関する情報を保持している。PONシステム管理情報DB130は、トランスポート部41が有する各OLTC412の情報や、各ONU50の情報を管理する。
資源割当部120は、使用すべき資源(資源割当情報)や動作モード(省電力モード/非省電力モード)をトランスポート制御部110に指示する。具体的には、資源割当部120は、各ONU50の動作モード(非省電力モード/第1、第2の省電力モード)やトランスポート部41の動作モード(非省電力モード/第1~第3の省電力モード)を決定して、トランスポート制御部110に指示する処理等を行う。
資源割当部120は、資源割当制御部121、資源割当計算部122、要求条件算出部123、及び省電力モード時利用可能資源情報DB124を有している。
要求条件算出部123は、情報入力部421から供給される制御情報に含まれる割当情報(BUs10における無線帯域割当の情報)や、トランスポート制御部110からの各ONU50に対するバッファの待ち行列の長さの情報(以下、「Q長情報」とも呼ぶ)など、トラヒックに関する情報を集め、各ONU50との通信で必要とされる通信の要求条件を計算する。以下では、各ONUとの通信で必要とされる通信の要求条件の情報を「要求条件情報」とも呼ぶ。
要求条件算出部123は、例えば、BUs10から供給される制御情報に含まれる割当情報と、トランスポート部41における現状の各ONU50に対応するQ長情報(未送信のままバッファされている下り方向のデータ量)とに基づいて、各ONU50に対して割り当てるべき帯域(必要となる上り方向及び下り方向の帯域)を計算して要求条件情報として生成するようにしてもよい。
省電力モード時利用可能資源情報DB124は、トランスポート部41を各省電力モードに移行させた際に利用可能な資源の量や使用可能な機能、遅延等の性能情報を保持している。上述の通り、トランスポート部41で対応する省電力モードは1つではなく、複数存在するため、省電力モード時利用可能資源情報DB124は、省電力モード毎に、異なる利用可能な資源や機能、性能の情報を保持している。
例えば、省電力モード時利用可能資源情報DB124には、第1の省電力モード(OLTC412を1つ停止させた状態)における性能情報(例えば、1秒あたりに処理可能な最大トラヒック量や収容可能なONU50の最大数)、第2の省電力モード(OLTC412を2つ停止させた状態)における性情報、第3の省電力モード(OLTC412を3つ停止させた状態)における性能情報を保持している。
資源割当計算部122は、資源割当制御部121からの指示で、要求条件算出部123から出力される要求条件情報と省電力モード時利用可能資源情報DB124からの情報を得て、現在、並びに、各動作モード(非省電力モード/第1~第3の省電力モード)を使用した場合のトラヒックの状態等を見積計算する。資源割当計算部122は、計算結果を、資源割当制御部121に供給する。
例えば、資源割当計算部122は、要求条件算出部123から供給された要求条件情報に基づき、全てのONU50で必要となる帯域(上り方向及び下り方向の帯域)の総量を計算する。そして、資源割当計算部122は、省電力モード時利用可能資源情報DB124の情報に基づき、各動作モード(非省電力モード/第1~第3の省電力モード)を使用した場合のトラヒックの状態(資源が充足するか不足するかの判断)を行う。例えば、資源割当計算部122は、全てのONU50で必要となる帯域の総量に基づき、最低限必要となるOLTC412の数が2つであった場合、非省電力モード、第1の省電力モード、第2の省電力モードを選択可能と判断する。
資源割当制御部121は、資源割当計算部122の処理結果に基づき、適切な動作モードを判断し、現状維持か適切な動作モードへの移行を決定する。資源割当制御部121は判断結果に基づき、資源割当を決定し、トランスポート制御部110に資源割当や使用すべき省電力モード(又は非省電力モードでの使用)を伝える。
例えば、資源割当制御部121は、資源割当計算部122の計算に基づき選択可能な動作モードの中から適切な動作モードを選択して移行を判断する。例えば、資源割当制御部121で、可能な限り省電力で動作することが設定(プログラミング)されている場合には、資源割当計算部122から提示された動作モードの中から最も省電力で動作する動作モードを選択する。
そして、資源割当制御部121は、非省電力モードで動作する各ONU50を、各OLTC412(選択された動作モードで動作を継続するOLTC412)に分散して接続させる組み合わせを決定する。このとき、資源割当制御部121は、例えば、各OLTC412で使用される帯域が平均化するように非省電力モードで動作する各ONU50を分散するようにしてもよい。
そして、トランスポート制御部110は、資源割当制御部121の指示に従って動作するように、非省電力モードで動作する各ONU50及びトランスポート制御部110(各OLTC412)を制御する。
トランスポート制御部110は、例えば、資源割当制御部121で決定された内容に従って、非省電力モードで動作する各ONU50を各OLTC412に接続させた後に、資源割当制御部121で決定された動作モードで動作するようにトランスポート部41を制御(例えば、決定した動作モードに従って各OLTC412を休止させる制御)を行う。
また、要求条件算出部123は、BUs10から供給されるアンテナ制御情報に含まれる各RH20の動作モード情報を取得し、資源割当計算部122を介し、資源割当制御部121に供給する。資源割当制御部121は、取得した動作モード情報に基づき、各ONU50(各RH20に接続されたONU50)に対する動作モードを決定する。そして、資源割当制御部121は、決定した動作モード情報に従い、トランスポート制御部110を介して各ONU50の動作モードを制御(非省電力モード、第1の省電力モード、又は第2の省電力モードのいずれかの動作モードに遷移するように制御)する。
ここでは、上述の通り、RH20は、非省電力モード、第1の省電力モード、及び第2の省電力モードの3つの動作モードに対応している。また、上述の通り、各ONU50も第1の省電力モード、及び第2の省電力モードの3つの動作モードに対応している。そして、要求条件算出部123は、動作モード情報で各RH20に指定された動作モードと同様の動作モードで各ONU50を動作させると決定するようにしてもよい。例えば、あるRH20に対応する動作モード情報で、第1の省電力モードが指定されていた場合、要求条件算出部123は、当該RH20に接続されたONU50についても同様に第1の省電力モードで動作させると決定するようにしてもよい。なお、RH20の動作モードと、当該RH20に接続されたONU50の動作モードの対応付けは任意であり、通信に支障の生じない組み合わせであれば良い。
言い換えると、通信システム1において、各ONU50についても、RH20と同様に、非省電力モードで動作しなければならない緊急度が高い(非省電力モードで動作しなければならないタイミングまでの残り時間が短い)ほど、復帰までの時間が短い省電力モードを選択することが望ましい。この実施形態では、BUs10において、非省電力モードで動作しなければならない緊急度に応じたRH20に対する動作モードを決定しているので、結果として、資源割当制御部121は、BUs10で決定した内容を利用するだけで良い構成となっている。
(A-2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態の通信システム1の動作を説明する。
図3は、図1に示す第1の実施形態の通信システム1において、各OLT40及び各ONU50で省電力制御が行われた状態の例について示した説明図である。
図3(a)は、各マクロセルCM(CM-A、CM-B)、及び各スモールセルCS(CS-A1~CS-A7、CS-B1~CS-B7)におけるONU50-A0~50-A7、50-B0~50-B7の動作モードについて示した説明図である。図3(a)では図示の都合上、各マクロセルCM及び各スモールセルCSを示す枠線内に各ONU50の動作状態(非省電力モード/第1、第2の省電力モード)を図示している。
ここでは、マクロセルCM-Bでは、スモールセルCS-B6にだけ端末30が存在しており、その他のスモールセルCSには端末30は存在していない状態であるものとする。一方、マクロセルCM-Aでは、全体的にトラヒックが少ないながらも各スモールセルCSに端末30が存在する状態であるものとする。
このとき、マクロセルCM-Aに対応するBUs10-1では、マクロセルCM-A及び全てのスモールセルCS-A1~CS-A7に対応するRH20-A0~20-A7について非省電力モードで動作させると判断する。そして、OLT40-1のOLT制御部422は、BUs10-1からのアンテナ制御情報に基づき、ONU50-A0~50-A7に対して、RH20-A0~20-A7と同様の省電力制御を行う。具体的には、OLT40-1のOLT制御部422は、ONU50-A0~50-A7について全て非省電力モードで動作させると判断することになる。
また、このとき、OLT40-1のOLT制御部422(要求条件算出部123)では、1つのOLTC412-1だけで、配下の全てのONU50の処理が可能であると判断し、第3の省電力動作モード(3つのOLTC412-2~412-4を休止させる動作モード)でトランスポート部41を動作させたものとする。このとき、OLT制御部422は、全てのONU50をOLT40-1の配下に接続させるように制御することになる。
さらに、このとき、マクロセルCM-Bに対応するBUs10-2では、端末30の存在するスモールセルCS-B6のRH20-B6については非省電力モードと判断し、スモールセルCS-B6に隣接するスモールセルCS-B1、CS-B5、CS-B7のRH20-B1、20-B5、20-B7については、第1の省電力モードと判断し、その他のスモールセルCSについて第2の省電力モードと判断する。そして、OLT40-2のOLT制御部422(資源割当制御部121)は、BUs10-2からのアンテナ制御情報に基づき、ONU50-B0~50-B7に対して、RH20-B0~20-B7と同様の省電力制御を行う。具体的には、OLT40-2のOLT制御部422は、ONU50-B6について非省電力モードで動作せると判断し、ONU50-B5、50-B1、50-B7については第1の省電力モードで動作させると判断し、その他のONU50-B4、50-B3、50-B2については第2の省電力モードで動作させると判断することになる。
さらにまた、このとき、OLT40-2のOLT制御部422(要求条件算出部123)では、2つのOLTC412-1、412-4だけで、配下の全てのONU50の処理が可能であると判断し、第2の省電力動作モード(2つのOLTC412-2、412-3を休止させる動作モード)でトランスポート部41を動作させたものとする。この場合、OLT40-2のOLT制御部422は、少なくとも非省電力モードで動作するONU50-B0、50-B6については、休止しないOLTC412に接続させた状態を保つ必要がある。例えば、元々ONU50-B0がOLTC412-1に接続し、ONU50-B6がOLTC412-4に接続した状態であれば、OLT40-2のOLT制御部422は、OLTC412-2、2-3を停止させるだけで他のONU50の接続変更をせずに第2の省電力モードへの移行を行うことができる。このように、OLT制御部422は、休止させるOLTC412を選択する際に、接続変更が必要となるONU50の数が少ない組み合わせを選択することが望ましい。
(A-3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
第1の実施形態の通信システム1では、各OLT40が、BUs10からアンテナ制御情報を取得し、取得したアンテナ制御情報に基づいて、PONの各資源(ONU50やトランスポート部41)の省電力制御内容を判断している。これにより、第1の実施形態の通信システム1では、無線トラヒックの変動等に応じて、RH20だけでなく、BUs10と各RH20との間のデータ伝送を行うPONの区間(ONU50及びOLT40)の省電力制御を効率的に行うことが可能となる。
(B)第2の実施形態
以下、本発明による親局通信装置、光通信ネットワークシステム、及び通信システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。以下では、本発明の親局通信装置、光通信ネットワークシスムを、それぞれOLT、PONに適用した例について説明する。
(B-1)第2の実施形態の構成
図4は、第2の実施形態に係る通信システム1Aの全体構成について示したブロック図である。
通信システム1Aでは、BUs10(10-1、10-2)、OLT40(40-1、40-2)が、それぞれOLT40A(40A-1、40A-2)、BUs10A(10A-1、10A-2)に置き換わっている点で第1の実施形態と異なっている。
BUs10A(10A-1、10A-2)では、情報出力部12が除外されている点で第1の実施形態と異なっている。すなわち、第2の実施形態では、BUs10AからOLT40Aに明示的にアンテナ制御情報が供給されない。
OLT40A(40A-1、40A-2)では、制御部42とトランスポート部41が、制御部42Aとトランスポート部41Aに置き換わっている点で第1の実施形態と異なっている。また、制御部42Aでは、情報入力部421が除外され、無線情報分析部423及び情報交換部424が追加されている点で第1の実施形態と異なっている。さらに、トランスポート部41Aでは、スイッチ413が、コピー機能付スイッチ413Aに置き換わっている点で第1の実施形態と異なっている。コピー機能付スイッチ413Aは、BUs10Aが各RH20と送受信するパケットをコピーして、制御部42A(無線情報分析部423)に供給する処理を行うコピー機能(ミラーリング機能)が付加されている点で第1の実施形態と異なる。
図5は、制御部42Aの詳細構成について示したブロック図である。
上述の通り、制御部42Aは、OLT制御部422、無線情報分析部423、及び情報交換部424を有している。
無線情報分析部423は、コピー機能付スイッチ413Aから供給された無線通信に係るパケット(BUs10Aが送受信するパケット)を解析して、各RH20に対する制御情報(第1の実施形態におけるアンテナ制御情報に相当する情報)を認識する処理を行う。BUs10Aが送受信するパケットには、どのRH20からどの様なトラヒックを流そうとしているのかや、RH20で収容している加入者(端末30)の情報や、各RH20に適用する動作モードの情報等が含まれるため、それらを解析すれば、第1の実施形態におけるアンテナ制御情報に相当する情報を得ることができる。
情報交換部424は、他のOLT40Aと通信して、他のOLT40Aで得られたアンテナ制御情報を交換して、他のOLT40Aから取得したアンテナ制御情報を無線情報分析部423に供給する。
この実施形態では、無線情報分析部423は、他のOLT40Aで得られたアンテナ制御情報も含めて取得し、OLT制御部422に供給するものとして説明する。
資源割当部120では、他のOLT40Aで得られたアンテナ制御情報も考慮して、各ONU50やトランスポート部41の制御内容を決定することが可能となっている点で、第1の実施形態と異なる。
(B-2)第2の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第2の実施形態の通信システム1Aの動作を説明する。
以下では、第2の実施形態について、第1の実施形態との差異部分を中心に説明する。
まず、第2の実施形態のOLT40Aでは、上述の通り、コピー機能付スイッチ413Aから、各RH20とBUs10Aとの間で送受信されるパケットをコピーして取得する。そして、無線情報分析部423は、それらのパケットを解析することで各RH20に対応するアンテナ制御情報を取得する。
また、第2の実施形態のOLT40Aでは、情報交換部424によりOLT40A間でアンテナ制御情報を交換することで、他のOLT40Aが対応する領域のアンテナ制御情報をトランスポート部41A及び各ONU50の省電力制御に反映する。
例えば、第2の実施形態の資源割当部120(資源割当制御部121)は、当該OLT40Aが対応するマクロセルCM(以下、「自マクロセル」とも呼ぶ)に隣接するマクロセルCM(以下、「隣接マクロセル」とも呼ぶ)におけるトラヒックの発生状況を把握し、自マクロセルで省電力モード(第1又は第2の省電力モード)で動作中のONU50の動作モードを制御する。
図6は、第2の実施形態において、マクロセルCM-AのOLT40A-1が、マクロセルCM-BのOLT40A-2から取得したアンテナ制御情報に基づいてトランスポート部41A及び各ONU50の省電力制御を行う例について示している。
図6は、各マクロセルCM(CM-A、CM-B)、及び各スモールセルCS(CS-A1~CS-A7、CS-B1~CS-B7)におけるONU50-A0~50-A7、50-B0~50-B7の動作モードについて示した説明図である。図6では図示の都合上、各マクロセルCM及び各スモールセルCSを示す枠線内に各ONU50の動作状態(非省電力モード/第1、第2の省電力モード)を図示している。
図6(a)は、OLT40A-1が、OLT40A-2から取得したアンテナ制御情報を利用せずに省電力制御を行った場合の状態を示しており、図6(b)は、OLT40A-1が、OLT40A-2から取得したアンテナ制御情報を利用して省電力制御を行った場合の状態を示している。
まず、図6(a)を用いて、仮に、OLT40A-1が、OLT40A-2から取得したアンテナ制御情報を利用せずに省電力制御を行った場合の動作について説明する。
図6(a)に示すように、マクロセルCM-BのスモールセルCS-B4には、大容量のトラヒックを発生する端末30が存在するため、RH20-B4及びONU50-B4は非省電力モード(アクティブ状態)であり、近隣のスモールセルCS-B5、CS-B1、CS-B3のONU50-B5、50-B1、50-B3はすぐに起動できる第1の省電力モードとなっている。
そして、本来であれば、隣のマクロセルCM-Aであるが、スモールセルCS-B4に隣接するスモールセルCS-A7のONU50-A7も第1の省電力モードにすべきである。上述の通り、各ONU50について、非省電力モードで動作しなければならない緊急度が高い(非省電力モードで動作しなければならないタイミングまでの残り時間が短い)ほど、復帰までの時間が短い省電力モードを選択することが望ましいというポリシーが存在するからである。しかし、図6(a)では、OLT40A-1が、OLT40A-2から取得したアンテナ制御情報を利用せずに省電力制御を行った場合の状態を示しているので、OLT40A-1はマクロセルCM-Bの状況を知りえないため、スモールセルCS-A7のONU50-A7を第2の省電力モードとしている。
一方、図6(b)では、OLT40A-1が、OLT40A-2から取得したアンテナ制御情報を利用して省電力制御を行う前提であるため、OLT40A-1では、スモールセルCS-B4における大容量トラヒックの発生を各ONU50の省電力制御に反映している。具体的には、図6(b)の例では、OLT40A-1の資源割当部120(資源割当制御部121)は、OLT40A-2から取得したアンテナ制御情報を考慮して、スモールセルCS-B5に隣接するスモールセルCS-A7のONU50-A7について、すぐに起動できる第1の省電力モードで動作させている。
(B-3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
第2の実施形態の通信システム1Aでは、各OLT40Aが、BUs10Aから明示的にアンテナ制御情報を取得せず、PONの区間(トランスポート部41)を流れるパケットを解析することでアンテナ制御情報を取得している。これにより、第2の実施形態の通信システム1Aでは、OLT40Aにおける省電力制御処理に際してBUs10Aの機能付加(情報出力部12の追加等)を必要としないので、容易にOLT40Aにおける省電力制御処理の実装や保守を行うことが可能となる。
(C)第3の実施形態
以下、本発明による親局通信装置、光通信ネットワークシステム、及び通信システムの第3の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。以下では、本発明の親局通信装置、光通信ネットワークシスムを、それぞれOLT、PONに適用した例について説明する。
(C-1)第3の実施形態の構成
図8は、第3の実施形態に係る通信システム1Bの全体構成について示したブロック図である。
以下では、第3の実施形態について第2の実施形態との差異を説明する。
通信システム1Bでは、OLT40A(40A-1、40A-2)が、それぞれOLT40B(40B-1、40B-2)に置き換わっている点で第2の実施形態と異なっている。
OLT40B(40B-1、40B-2)では、制御部42Aが、制御部42Bに置き換わっている点で第2の実施形態と異なっている。また、制御部42Bでは、OLT制御部422がOLT制御部422Bに置き換わっている点で第1の実施形態と異なっている。
図8は、制御部42Bの詳細構成について示したブロック図である。
図8に示すように、制御部42Bでは、OLT制御部422AがOLT制御部422Bに置き換わっている点で第2の実施形態と異なっている。また、OLT制御部422Bでは、資源割当部120が資源割当部120Bに置き換わっている点で第2の実施形態と異なっている。さらに、資源割当部120Bでは、要求条件算出部123が要求条件算出部123Bに置き換わっている点で第2の実施形態と異なっている。
要求条件算出部123Bは、将来の各セル(当該OLT40Bが管理するマクロセルCM及びスモールセルCS)の将来のトラヒックの状況を予測しトラヒック予測情報を生成する。要求条件算出部123Bにおけるトラヒックの予測処理については種々の処理を適用することができるが図8ではその一例を実現する構成を示している。
図8に示すように要求条件算出部123Bは、端末位置条件計算機能301、及び他の条件の算出機能302を有している。
端末位置条件計算機能301は、各セルにおける各端末30の将来位置を予測し、その予測結果(例えば、予測確率情報)を出力する。
まず、端末位置条件計算機能301が行う処理の概要について説明する。
ここで、端末位置条件計算機能301は、予測の手段として、各端末30がどの様な移動手段上に存在するかの情報と、拘束条件(例えば、端末30の固定方法の情報)を用いるものとする。端末30がどの様な移動手段上に存在するか(端末30がどのような条件で固定されているか)については、端末30が、自動車に組み込まれた端末であるとか、自販機に内蔵された装置であるといった明示的な情報である場合と、推定情報である場合の両方を含む。後者の場合、例えば、当該端末30は新幹線の線路上に存在し、線路に沿って移動している場合は新幹線の車内に存在すると推定(新幹線内に固定されていると推定)される。以下では、この様な推定の為の条件情報(例えば、端末30の固定方法)、ならびに、将来の位置を予測するための情報の集合体を「拘束条件DB」と呼ぶものとする。
将来の位置を予測するための情報としては、例えば、「高速道路上や鉄道線路上の端末30は、その高速道路や線路上方の進行方向には、短時間のうちに長い距離を移動可能だが、それ以外の場所への移動は限定される可能性が極めて高い」といった情報である。具体的には、駅間を移動中の新幹線の車中の端末30は、線路の進行方向には、1秒間に最大100m近く移動する可能性がある(時速360km=秒速100m)が、それ以上遠方に進む可能性や、線路を離れる方向や後方に移動する可能性は極めて少ない。一般道路であって、渋滞している都市部では、1秒間に30m移動することは少ない。また、田園地帯や山間部では、一般車両が突然に道路から離れた田畑や森林の中心に向かって高速で移動する可能性も極めて少ない。端末位置条件計算機能301は、この様な将来の位置を予測するための情報として保持するものとする。この様な情報は人間や機械によって、明示的にルールで記述される。また、別の方法として、全端末30の移動履歴の情報を端末30移動履歴DBに蓄積し、その情報を元に拘束条件情報を抽出し、それを載せる動作もまた行われる。例えば、地図上では道路であっても、自動車上の端末30が移動したことが1年間に一度もないような道路は、歩行者専用であるか、自動車の通行が困難な階段の道路であると推定される。なお、機械学習した情報を基に拘束条件情報を導くことも可能である。第3の実施形態の資源割当部120Bでは、上述の様な高速条件DBや移動履歴DB情報を元に、各セル内の端末30の将来位置を予測し、将来に必要な各資源(ONU50やトランスポート部41A等)を求め、その情報に基づき、各要素(ONU50やトランスポート部41A)の動作モードを決定するようにしてもよい。
なお、この実施形態の端末位置条件計算機能301で用いる拘束条件DBや移動履歴DBの詳細については後述する。
以下では、端末位置条件計算機能301は、各端末30の位置予測処理に、各セルにおける各端末30の位置情報をリアルタイムに把握することができる端末位置情報DB400の情報と、各セルを含む領域の地図情報が登録された地図情報DB500の情報を用いるものとする。端末位置情報DB400は、例えば、通信システム1B(移動体通信網)の全体を管理し、リアルタイムに各端末30の位置を取得することができるシステムを適用することができる。なお、端末位置条件計算機能301は、端末位置情報DB400からではなく、無線情報分析部423が取得したアンテナ制御情報に含まれる情報から各セルにおける各端末30の位置情報を取得するようにしてもよい。地図情報DB500は、例えば、インターネット上の地図データベースを適用することができる。
端末位置条件計算機能301は、端末位置予測機能301a、拘束条件DB301b、及び端末移動履歴DB301cを有している。
端末位置予測機能301aは、端末位置情報DB400及び地図情報DB500の情報に基づき、拘束条件DB301b及び端末移動履歴DB301cを更新する。
端末位置予測機能301aは、地図情報DB500に基づいて、拘束条件DB301bを更新する。拘束条件DB301bは、例えば、高速道路や鉄道の線路等、端末30が高速に移動する可能性のある経路の情報を適用することができる。例えば、端末位置予測機能301aは、地図情報DB500から、各セルの領域を含む領域における鉄道や高速道路の経路情報(位置情報)と移動手段の種類(例えば、一般鉄道、新幹線、高速道路等の区分)を拘束条件DB301bとして取得するものとする。なお、拘束条件DB301bは、端末位置予測機能301aが地図情報DB500に基づいて生成した情報ではなく、予め生成された情報をインプットするようにしてもよい。その場合、端末位置予測機能301aは、予め設定された拘束条件DB301bを利用するだけであるので地図情報DB500を必要としないことになる。
端末移動履歴DB301cは、過去に実際に各端末30が移動した履歴(軌跡)を管理するデータベースである。端末位置予測機能301aは、端末位置情報DB400に基づいて端末移動履歴DB301cを更新する。
例えば、ある端末30が、拘束条件DB301bにより管理される鉄道の経路に沿って移動している場合、当該端末30が鉄道内に固定されていると推定し、当該端末30が当該経路に沿って、端末移動履歴DB301cにより管理される方向に、当該経路に対応する移動手段に応じた所定の速度(例えば、一般鉄道の線路であれば時速60km、高速道路であれば時速80km、新幹線の線路であれば時速300km等)で移動するものとして、将来における当該端末30の位置を予測する。
端末位置予測機能301aは、拘束条件DB301b及び端末移動履歴DB301cに基づいて、ある時間範囲における各端末30の存在確率の情報(例えば、将来のある時点で各端末30が最も存在する確率の高い位置の情報)を他の条件の算出機能302とともに、資源割当計算部122に供給する。
他の条件の算出機能302は、各端末30の位置以外の条件(例えば、時間帯による領域ごとのトラヒックの変動)に基づく領域ごとのトラヒック予測結果とともに、資源割当計算部122に供給する。なお、第3の実施形態においては、他の条件の算出機能302を除外した構成としてもよい。
(C-2)第3の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第3の実施形態の通信システム1Bの動作を説明する。
以下では、第2の実施形態について、第1の実施形態との差異部分を中心に説明する。
第3の実施形態では、資源割当部120Bが、将来の各セル内の無線トラヒックの変動を予測した結果(例えば、将来の端末30の位置の移動を予測した結果)を利用して、資源の割当(各ONU50やトランスポート制御部110Aの動作モードの決定)を行う点で第2の実施形態と異なっている。
図9は、マクロセルCM-AのスモールセルCS-A5に存在する端末30の将来の位置予測を行った結果に基づいて各ONU50の動作モードを決定した場合の例について示した説明図である。図9では、各マクロセルCM(CM-A、CM-B)、及び各スモールセルCS(CS-A1~CS-A7、CS-B1~CS-B7)におけるONU50-A0~50-A7、50-B0~50-B7の動作モードについて示している。
図9では図示の都合上、各マクロセルCM及び各スモールセルCSを示す枠線内に各ONU50の動作状態(非省電力モード/第1、第2の省電力モード)を図示している。図9(a)は、仮に、OLT40B-1、40B-2の資源割当部120B(要求条件算出部123B)が、各セル内の各端末30の移動予測結果を利用せずに各ONU50の動作モードを決定した場合の状態を示している。一方、図9(b)は、OLT40B-1、40B-2の資源割当部120B(要求条件算出部123B)が、各セル内の各端末30の移動予測結果を利用して各ONU50の動作モードを決定した場合の状態を示している。
図9では、マクロセルCM-A、CM-B内に、新幹線の線路の経路(軌道)Lを図示している。図9に示すように、マクロセルCM-A、CM-Bにおいて、新幹線の経路Lは、スモールセルCS-A5、CS-A1、CS-A7、CS-B4、CS-B1、CS-B7を通過している。
ここでは、OLT40B-1、40B-2の拘束条件DB301bには、この新幹線の経路Lの経路情報が保持されており、端末移動履歴DB301cには、ある端末30(以下、「注目端末」と呼ぶ)の過去の移動履歴として、この経路Lに沿って移動している情報が残されているものとして以下の説明を行う。なお、図9の例では説明を簡易とするためマクロセルCM-A、CM-B内に注目端末以外の端末30は存在しないものとして説明する。
図9ではある時点T1の注目端末の位置をP1と図示している。図9に示すように、T1の時点で注目端末はスモールセルCS-A5内の経路L上に存在している。
ここでは、端末位置条件計算機能301は、注目端末が経路Lに沿って所定時間以上移動している端末30については、経路Lに沿って新幹線に対応する所定のスピード(例えば、時速300km)で移動すると予測するものとして説明する。端末位置条件計算機能301は、端末移動履歴DB301cに基づいて、注目端末が移動する方向(進行方向)を把握することができる。
そして、ここでは、要求条件算出部123B(端末位置条件計算機能301)は、T1の時点で、T1からα経過したT2の時点(T1+αの時点)における注目端末の位置を予測し、その予測結果に基づいて各ONU50の動作モードを決定するものとする。ここでは、要求条件算出部123B(端末位置条件計算機能301)は、T2の時点で注目端末はスモールセルCS-B4内のP2の位置まで経路Lに沿って移動すると予測したものとする。
このとき、資源割当部120Bの資源割当制御部121では、各ONU50について、非省電力モードで動作しなければならない緊急度が高い(非省電力モードで動作しなければならないタイミングまでの残り時間が短い)ほど、復帰までの時間が短い省電力モードを選択するというポリシーを適用するものとする。そうすると、この場合、資源割当部120Bの資源割当制御部121は、図9(b)に示すように、T1の時点で、要求条件算出部123B(端末位置条件計算機能301)の予測結果に従い、少なくとも経路L上でP1からP2までの区間のスモールセルCSに対応するONU50をすぐに動作可能な第1の省電力モードとする決定を行うものとする。
そうすると、図9(b)に示すように、OLT40B-1、40B-2の資源割当制御部121は、T1の時点で、経路L上でP1からP2までの区間のスモールセルCS-A5、CS-A1、CS-A7、CS-B4に対応するONU50-A5、50-A1、50-A7、50-B4を第1の省電力モードで動作させることになる。この場合、注目端末は、経路Lに沿って移動することが予測されるので、OLT40B-1、40B-2の資源割当制御部121は、経路Lから外れるスモールセルCSのONU50については、緊急度低いため第2の省電力状態を継続させるようにしてもよい。
ところで、図9(b)の例では、注目端末は、スモールセルCS-A5に存在するので、仮に資源割当部120B(資源割当制御部121)が第2の実施形態と同様に注目端末の移動予測結果を用いずに各ONU50の動作モード決定の処理を行うとすれば、図9(a)に示すように、スモールセルCS-A5に隣接するスモールセルCS-A4、CS-A1、CS-6を全て第1の省電力モードで動作させる一方、高速に移動している注目端末の移動に対して経路L上のスモールセルCSにおけるONU50の復帰(第2の省電力モードからの復帰)が間に合わない可能性(注目端末の通信に影響を与える可能性)が発生することになる。
すなわち、図9(a)に示すように、資源割当部120B(資源割当制御部121)が、注目端末の移動予測結果を用いて各ONU50の動作モード決定の処理を行うことで、図9に示すように、実際には利用されないスモールセルCSのONU50を復帰させることなく、注目端末の通信品質(BUs10A及びRH20に提供する通信品質)の劣化を抑制すること(効率的な省電力制御)ができる。
(C-3)第3の実施形態の効果
第3の実施形態によれば、第1及び第2の実施形態と比較して以下のような効果を奏することができる。
第3の実施形態では、各OLT40Bにおいて、資源割当部120Bが、将来の各セル内の無線トラヒックの変動を予測した結果(例えば、将来の端末30の位置の移動を予測した結果)を利用して、資源の割当(各ONU50やトランスポート制御部110Aの動作モードの決定)を行う。これにより、第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態と比較して、ONU50等に対して、より効率的な省電力制御を行うことができる。例えば、第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態と比較して、より省電力な動作を長くすることが可能になったり、省電力の動作をさせるべきでないのに誤って省電力の動作をさせてしまうという動作を防ぐことができる。
(D)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
(D-1)第1の実施形態において、要求条件算出部123は、トランスポート制御部110からの情報に加え、BUs10内の無線帯域割当部からの情報を用いて要求条件を求め、これを元に資源割当計算部122で資源割当計算をしているが、同様の機能を2系統持たせ、片方でトランスポート制御部110からの情報と現有の資源の情報のみで資源割当計算し、通常、この情報を用いて運用し、もう片方で、適切な動作モード(非省電力モード/第1~第3の省電力モード)を検討し、後者の計算サイクルを長くする構成をとっても良い。
(D-2)第2及び第3の実施形態において、OLT40A、40Bから情報交換部424を除外して、他のOLT40A、40Bからのアンテナ制御情報を用いずに省電力制御を行うようにしてもよい。また、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、OLT40Bがアンテナ制御情報をBUs10から明示的に取得する構成としてもよい。
(D-3)上記の各実施形態において、各RH20は、BUs10、10Aからの制御によらず、独自の判断で省電力状態に移行する構成としてもよい。このとき、OLT40、40A、40Bは、アンテナ制御情報に各端末30の位置情報や各アンテナRHに接続する端末30の情報等に基づいて、各セルにおける端末30の分布を確認した結果に基づいて各ONU50の動作モードを決定するようにしてもよい。例えば、OLT40、40A、40Bは、第1の実施形態で記したBUs10(無線帯域割当部13)が各RH20の動作モードを決定したポリシーと同様のポリシーで各ONU50の動作モードを決定するようにしてもよい。
(D-4)上記の各実施形態では、各スモールセルCSのアンテナRHがカバーする領域(端末30との無線通信を担う領域)は固定されている前提で説明したが、各アンテナRHがカバーする領域は、無線信号のパワーや指向性の調整により変動することもあり得る。この場合、上記の各実施形態においてOLT40、40A、40Bは、各RH20がカバーする領域の変動に応じて同様のポリシーで省電力制御を行う必要がある。
(D-5)上記の各実施形態では、各RRHを上述のようにPON(ONU及びOLT)を介してBBU(コア側)と接続されている前提で説明したが、N組の光伝送装置を用いて省電力制御を適用する構成としてもよい。このとき、トラヒックが流れている区間を接続する光伝送装置は、非省電力モードで運用し、端末が存在しないが、近い将来、トラヒックが流れる可能性が高い区間の伝送装置は第1の省電力モードで運用し、トラヒックが流れるまで長い時間がかかると推定される区間は第2の省電力モードで運用することで、常に非省電力モードで運用する場合に比べ、省電力なネットワークを構築するようにしてもよい。