以下、本開示の勤務状態評価システム及び勤務状態評価プログラムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態1の勤務状態評価プログラムにより勤務状態評価を行う勤務状態評価システムAは、図1に示すように、入力部10、勤務状態評価演算処理部20、出力部30を備える。この勤務状態評価システムAは、異なる勤務時間帯のシフト勤務を行う複数の勤務者からなる母集団において、複数の勤務者から成るグループあるいは勤務者個人を評価対象として勤務状態を評価するシステムである。
以下の説明において、勤務状態評価システムAにより評価するシフト勤務の職場として病院を一例として示す。そして、病院内あるいは病棟内の複数の勤務者から成る母集団において、複数の勤務者から成るグループあるいは1人の勤務者を評価対象として勤務状態を評価する場合について説明する。なお、評価を行う対象となるシフト勤務の職場として、病院以外にも、工場、警察、消防署等の他の職場にも適用することができる。
まず、実施の形態1の勤務状態評価システムAについて説明する前に、病院のシフト勤務の形態について説明する。図2は、病院の勤務データの一例としての勤務表40を示し、図3は、病院のシフトデータの一例としてのシフトパターン表50を示す。
図3に示すように、評価を行う病院のシフト勤務の形態(勤務パターン)として、日勤(図2では「日」と表示)、準夜勤(図2では「準」と表示)、深夜勤(図2では「深」と表示)、及び看護学生勤務(図3では「学」と表示)が設定されている。この例では、日勤は、8時30分を勤務開始時刻とし、17時30分を勤務終了時刻とする勤務時間帯の勤務とする。また、準夜勤は、16時30分を勤務開始時刻とし、25時30分を勤務終了時刻とする勤務時間帯の勤務とする。深夜勤は、00時30分を勤務開始時刻とし、9時30分を勤務終了時刻とする勤務時間帯の勤務とする。看護学生勤務は、8時30分を勤務開始時刻とし、20時00分を勤務終了時刻とし、かつ、途中、看護学校に通う非勤務時間帯を有するもので、本実施の形態1では、この看護学生勤務は、評価対象に含まないものとして、図2のデータから除外している。また、図2に示す勤務データにおいて、「休」は、休日を示し、「有」は有給休暇を示す。
そして、本実施の形態1では、評価対象としての勤務者(グループを含む)の勤務負荷の妥当性や満足度(不満足度)が、病院全体の勤務者の負荷及び満足度と比較して、どの程度の負荷や満足度であるかを相対的に評価することを目的とする。さらに、具体的には、負荷の妥当性は、病院全体の勤務者の負荷の平均に対して、負荷が大きいか(不当か)、負荷が同等あるいは小さいか(妥当か)を評価する。同様に、満足度についても、病院全体の勤務者の平均等の基準になる値と比較して、相対的に高いか低いかにより評価する。
なお、夜勤専従の勤務者(「専」として示す)や、看護学生は、他の一般的な勤務者とは勤務形態が異なるため、評価対象から外して集計及び評価を行う。すなわち、この夜勤専従者や、看護学生の勤務データは、本実施の形態1では、勤務データとして用いないものとする。
さらに、図2に示す勤務データについて説明を加えると、勤務データには、氏名データ、属性データ、日付データ、勤務計画データ、希望データ、変更データが含まれる。なお、図2では各データを一覧表形式で示す。
日付データは、該当月の日付及び曜日を、日付欄41に示す。氏名データは、勤務者の氏名であり、氏名データ欄42に示す。
属性データは、資格や契約形態に関するデータであり、その一例を属性データ欄43に示す。なお、資格として、看護師(「看」)、准看護師(「准」)、補助看護師(「補」)等の種別を示す。また、契約形態として、常勤(「常」)、非常勤(「非」)、兼任(「兼」)、夜勤専従(「専」)、事務(「事」)等の種別を示す。
勤務計画データは、評価の対象となる月である該当月よりも前に作成された勤務計画によるシフト勤務に関するデータであり、勤務計画データ欄45に一例を示すもので、「日」「準」「深」「学」「休」「有」等のシフト勤務パターンを判別可能なデータである。
希望データは、勤務者が、勤務希望を提出した場合のシフト勤務及び休みの判別可能な勤務データであり、希望データ欄44に一例を示す。この勤務希望は、例えば、有休、休日等の休みの取得の希望や、日勤、夜勤等の所定時間帯のシフト勤務の希望がある。また、この勤務希望は、勤務者が、勤務計画を作成する前に行うことを前提とするが、勤務計画の作成後に行うこともある。
変更データは、勤務者が、勤務計画によるシフト勤務とは異なるシフト勤務を行った場合の勤務データであり、変更データ欄46に一例を示す。例えば、図2において氏名データ欄にBBと表記した勤務者は、14日、15日の勤務計画が準夜勤(「準」)、深夜勤(「深」)であったが、両日共に日勤(「日」)に変更した場合を示している。
なお、上述した勤務希望は、必ずしも、希望通りの勤務計画になるとは限らないとともに、希望通りの勤務計画となったとしても、実際に勤務計画通りの勤務を行うとは限らない。
勤務希望に関する具体例を以下に説明する。図2において氏名データ欄にGGと示す勤務者は、25日、26日、に有休を希望し、希望通りの勤務計画及び勤務実績となった例を示す。同様に、氏名データ欄にJJと示す勤務者は、6日、7日、に日勤を希望し、希望通りの勤務計画及び勤務実績となった例を示す。
一方、氏名データ欄にCCと示す勤務者は、22日に有休(「有」)を希望し、勤務計画も有休(「有」)となっていたが、実際には日勤を行った場合を示す。また、氏名データ欄にHHと記載した勤務者は、12日に日勤を希望し、13日に有休を希望しているのに対し、勤務計画では、12日に希望通りの日勤、13日に希望とは異なる日勤となり、勤務実績では、12日は希望及び勤務計画とは異なる有休となった例を示す。以上のように、勤務希望、勤務計画、勤務実績は、異なる場合がある。
次に、図1に示す勤務状態評価システムAについて説明する。
入力部10は、通信ネットワークNWに接続されている。なお、通信ネットワークNWは、いわゆるLAN(local area network)等の限定区域のネットワーク及び公衆回線等の広域ネットワークを含む。
そして、入力部10は、図2に示す勤務データや図3に示すシフトデータを入力する。この入力は、通信ネットワークNW等を介して入力することができる。例えば、勤務計画や勤務実績を作成及び記録したコンピュータやサーバ等の処理装置と、通信ネットワークNWと接続されている場合は、この通信ネットワークNWを介して入力する。また、データは、所定の記録媒体を用いて入力することもできる。あるいは、勤務状態評価システムAが勤務計画を作成するプログラムや、勤務計画及び勤務実績を記録する記憶部を有する場合もあり、その場合は、入力部10は、勤務状態評価システムAに含まれるそれらのデータを記憶する記憶部から勤務データを入力する。
なお、勤務データは、勤務計画の場合、例えば、1か月、1週間等の所定期間単位で読み込む。また、勤務データとして勤務実績を用いる場合は、毎日、入力してもよいし、1か月、1週間等の所定期間単位で入力してもよい。なお、シフトデータは、1回入力して記憶すれば、各勤務時間帯の規定等に変更が無い限り、新たに読み込む必要はない。また、勤務データのうち、勤務希望に関する情報の入力は、管理者が入力する他にも、勤務者自身が、携帯端末などを用いて入力するようにしてもよい。
勤務状態評価演算処理部20は、CPU、RAM、ROMを有したいわゆるコンピュータであり、実施の形態1の勤務状態評価プログラムに基づいて疲労度の蓄積を評価するための処理を行う。そして、この勤務状態評価演算処理部20は、図1に示すように、データ蓄積部21、評価演算部22、出力制御部23を備える。
データ蓄積部21は、入力部10が読み込んだ勤務データ及びシフトデータ等を記憶し蓄積する。なお、データ蓄積部21は、いわゆるメモリであり、勤務データ及びシフトデータの他にも後述する演算した負荷妥当性の評価結果や満足度の評価結果及びその演算に使用した値等も蓄積する。
評価演算部22は、母集団データ演算部22a、負荷妥当性評価部22b、満足度評価部22c、総合評価部22dを備える。そして、評価演算部22は、勤務データ及びシフトデータに基づいて、所定期間の母集団に対する評価対象の勤務負荷妥当性に関する評価、満足度に関する評価を行い、さらに、両評価に基づいて、総合評価を行う。
母集団データ演算部22aは、母集団における後述する各評価項目のデータの平均値、偏差、分散、標準偏差等を求める。
負荷妥当性評価部22bは、負荷妥当性を評価するために予め設定された後述する負荷評価項目に関し、母集団の平均値と評価対象の値との比較に基づいて負荷妥当性の評価を行う。この負荷妥当性の評価は、母集団の平均値を偏差値50として、評価対象の値が母集団の平均よりも(偏差値が50よりも)大きい場合を負荷妥当性が高い(妥当)と評価する。一方、評価対象の値が母集団の平均よりも(偏差値が50よりも)低い場合を負荷妥当性が低い(不当)と評価するよう評価を行う。ここで、評価対象の値は、評価対象が個人の場合は、個人のデータの値であり、評価対象が複数の勤務者の集団である場合は、その集団の平均値を用いる。なお、詳細については、後述する。
満足度評価部22cは、満足度を評価するために予め設定された後述する満足度評価項目に関し、母集団の値と評価対象の値との比較に基づいて、評価対象における満足度の程度を評価する。なお、詳細については、後述するが、満足度の評価には、上述した母集団の平均値を偏差値50として大小の程度を比較するのに加え、評価対象が複数の勤務者から成る場合は、評価対象の分散値を、母集団の分散値と比較する公平性の評価も行う。
総合評価部22dでは、負荷妥当性評価部22bの負荷妥当性の評価結果と、満足度評価部22cの満足度の評価結果とに基づいて、総合評価を行う。
そして、出力制御部23は、負荷妥当性評価部22bの負荷妥当性の評価結果と、満足度評価部22cの満足度の評価結果と、総合評価部22dにおける総合評価とを、出力部30により出力する制御を行う。本実施の形態1では、出力部30として、画面による表示を行うディスプレイ装置を用いるもので、図5A、図5B、図5Cは、その出力例を示す。なお、この出力例の詳細については、後述する。
次に、図4に示すフローチャートに基づいて、勤務状態評価演算処理部20による勤務状態評価の処理の流れを説明する。
まず、最初のステップS101では、入力部10から、データ蓄積部21にデータの読み込み及び蓄積を行う。このデータとしては、図2に示す勤務計画や勤務実績等の勤務データ及び図3に示すシフトパターンのデータであるシフトデータが含まれる。また、勤務実績としては、シフトパターンに沿った時間以外の残業時間や早退時間等の時刻データが含まれる。
次のステップS102では、評価演算部22の母集団データ演算部22aにより、読み込んだ勤務データにおける各勤務者の各評価項目の値から、母集団のデータ値を演算する。この母集団のデータ値としては、平均値、偏差、分散、標準偏差を含む。
ステップS102に続く処理として、ステップS103a、S103bを並行して実行する。ステップS103aでは、負荷妥当性評価部22bにおいて、後述する複数の負荷評価項目に関し、評価対象の値と母集団の値との比較に基づいて評価対象の負荷妥当性の評価を行う。また、ステップS103bでは、満足度評価部22cにおいて、後述する複数の満足度評価項目について、評価対象の値と母集団の値との比較に基づいて満足度の評価を行う。なお、これらの評価の詳細については後述する。
さらに、ステップS103a、S103bに続くステップS104では、総合評価部22dにおいて、負荷妥当性の評価結果と満足度の評価結果とに基づいて、総合評価を行う。なお、この総合評価の詳細についても、詳細については後述する。
次のステップS105では、負荷妥当性の評価結果、満足度の評価結果、総合評価を、出力部30に出力してディスプレイ装置の画面の表示部300(図5A、図5B、図5C参照)に表示する。
以下に、ステップS103a、S103b、S104、S105にて行う処理を詳細に説明する。
まず、ステップS103aの負荷妥当性評価部22bによる負荷妥当性の評価について説明する。
この負荷妥当性評価部22bにおいて評価に用いる負荷評価項目としては、図5Aに示すように、勤務間隔、夜勤回数、連続夜勤回数、夜勤後休憩、土日休回数、早朝出勤回数、連続勤務回数、逆循環回数、拘束時間が含まれる。
勤務間隔は、勤務終了時刻と次の勤務開始時刻との間隔であり、この間隔が大きい方が勤務負荷は小さい。そこで、母集団データ演算部22aでは、該当月における母集団の勤務者の勤務間隔の平均値を求める。そして、負荷妥当性評価部22bでは、母集団の平均値と評価対象の値と比較して、負荷妥当性の評価を行う。本実施の形態1では、以下の説明において、評価対象を、ある病棟の複数の勤務者から成る集団とするため、各病棟の平均値を偏差値50として、評価対象の病棟の勤務者の集団の平均値の偏差値を求める。なお、評価対象が1人の勤務者(勤務者個人)の場合は、母集団を病院全体、あるいは、評価対象の勤務者が勤務する病棟とし、母集団の平均値に対して、評価対象の値の偏差値を求める。
そして、勤務間隔に関しては、評価対象の集団の平均値が母集団の平均値以上の場合に、負荷が低い(妥当)と評価し、評価ポイントP11を偏差値が50以上の位置に設定する。すなわち、評価ポイントP11を、図5Aにおいて点線により示す偏差値が50の負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。なお、勤務間隔の評価対象の集団の平均値が母集団の平均値未満の場合は、負荷が高い(不当)と評価して、評価ポイントP11を負荷妥当性基準チャート410の内側に設定する。
勤務間隔について、図5Aに示す例では、評価対象の集団の平均値が母集団の平均値未満であり、評価ポイントP11を、偏差値が50未満の位置、すなわち、偏差が50の負荷妥当性基準チャート410の内側に設定する。
夜勤回数は、勤務時間が、所定の夜間(例えば、22:00~5:00の間)にかかってシフト勤務を行った回数であり、この夜勤回数は少ない方が勤務負荷は低い。そこで、夜勤回数に関し、評価対象の勤務者の集団の平均値が母集団の平均値未満の場合に、負荷が低い(妥当)として、評価ポイントP12を負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。図5Aに示す例では、評価対象の勤務者の集団の平均値が母集団の平均値未満であり、評価ポイントP12を負荷妥当性基準チャート410の外側の位置に設定する。
夜勤連続回数は、所定の夜間(例えば、22:00~5:00の間)のシフト勤務の連続回数であり、この夜勤連続回数は、少ない方が勤務負荷は低い。そこで、夜勤連続回数について、勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値よりも小さい場合に、負荷が低い(妥当)として評価ポイントP13を、偏差値50以上、すなわち、負荷妥当性基準チャート410の外側の位置に設定する。夜勤連続回数について、図5Aに示す例では、勤務者の集団の平均値が母集団の平均値と同じ値であり、評価ポイントP13を、負荷妥当性基準チャート410の上に設定する。
夜勤後休息は、夜勤の終了時刻から次のシフト勤務の開始時刻までの時間であり、次のシフト勤務の開始時刻から、所定の夜間(例えば、22:00~5:00の間)のシフト勤務の終了時刻を差し引いた時間である。そして、夜勤後休息は、長い方が勤務負荷は低い。そこで、夜勤後休息について、評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値以上の場合、負荷が低い(妥当)と評価し、評価ポイントP14を、偏差値50以上の位置、すなわち、負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。図5Aに示す例では、夜勤後休息について、評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値未満であり、負荷妥当性基準チャート410の内側に評価ポイントP14を設定する。
土日休回数は、所定期間(例えば、1か月)において土日に勤務を休んだ回数であり、土日休回数は、多い方が勤務負荷は低い。そこで、土日休回数について、評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値以上の場合に、負荷が低い(妥当)として、評価ポイントP15を、偏差値50以上の位置、すなわち、負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。図5Aに示す例では、土日休回数について、評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値以上であり、評価ポイントP15を、負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。
早朝出勤回数は、早朝に出勤した回数であり、具体的には、シフト勤務の開始時刻が5:00~7:00の勤務回数であり、この早朝出勤回数は、少ない方が勤務負荷は低い。そこで、早朝出勤回数について、評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値以下の場合、負荷が低い(妥当)として、偏差値が50以上の位置に評価ポイントP16を設定する。図5Aに示す例では、評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値と同値であり、負荷妥当性基準チャート410の上に評価ポイントP16を設定する。
連続勤務回数は、シフト勤務の連続の日数であり、連続勤務回数が少ない方が勤務負荷は低い。そこで、連続勤務回数について、所定期間(例えば、1か月)の評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値以下の場合に、負荷が低い(妥当)として、評価ポイントP17を偏差値が50以上の位置、すなわち、負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。図5Aに示す例は、評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値以下の場合の例であり、評価ポイントP17を、負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。
逆循環回数は、次のシフト勤務の開始時刻と、その前のシフト勤務開始時刻との間隔が、24時間未満でシフト勤務を行った回数であり、逆循環回数は、少ない方が勤務負荷は低い。そこで、例えば、1か月の所定期間における評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値以下の場合に、偏差値が50以上、すなわち、負荷が低い(妥当)として、評価ポイントP18を、偏差値が50以上の位置、すなわち、負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。図5Aに示す例は、逆循環回数について、評価対象の勤務者の集団の平均値が母集団の平均値以上の場合の例であり、評価ポイントP18を、負荷妥当性基準チャート410の内側に設定する。
勤務拘束時間は、勤務開始時刻から勤務終了時刻までの時間であり、勤務拘束時間が短い方が勤務負荷は低い。そこで、勤務拘束時間について、所定期間(例えば、1か月の所定期間)における評価対象の勤務者の集団の平均値が、母集団の平均値未満の場合に、負荷が低い(妥当)として、評価ポイントP19を、偏差値が50以上の位置、すなわち、負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。勤務拘束時間について、図5Aに示す例は、評価対象の勤務者の集団の平均値が母集団の平均値未満の場合の例であり、評価ポイントP19を、負荷妥当性基準チャート410の外側に設定する。
次に、ステップS103bの満足度評価部22cによる満足度の評価について説明する。
この満足度評価部22cにおける満足度評価項目としては、図5Bに示すように休日回数、勤務希望回数、勤務希望公平性、勤務変更回数、勤務変更公平性、夜勤回数公平性、夜勤回数、土日休公平性、休日公平性が含まれる。
休日回数は、例えば、1か月の所定期間における休日の回数であり、休日回数は、多い方が心理的に望ましく満足度が高い。したがって、評価対象の平均値が、母集団の平均値以上の場合に、偏差値が50以上として、すなわち、満足度が高評価として満足度基準チャート510の外側に評価ポイントを設定する。図5Bに示す例では、評価対象の勤務者の平均値が、母集団の平均値を下回り、満足度が低いと判定して、評価ポイントP21を偏差値50未満の値、すなわち、満足度基準チャート510の内側に設定した例を示している。
勤務希望回数は、勤務者が所定の日に所望のパターンの勤務の(日勤、夜勤等の種別)を希望した回数であり、回数が多い方が、心理的な満足度は高い。そこで、所定期間、例えば、1か月の評価対象の平均値が、母集団の平均値以上の場合に、偏差値が50以上として、すなわち、高評価の満足度として満足度基準チャート510の外側に評価ポイントP22を設定する。図5Bに示す例では、評価対象の勤務者の平均値が、母集団の平均値を上回り、満足度が高いと判定して、評価ポイントP22を偏差値50以上の値、すなわち、満足度基準チャート510の外側に設定した例を示している。
勤務希望公平性は、勤務希望と勤務計画との不一致回数から一致回数を除算した数の標準偏差であり、評価対象の分散値が母集団の分散値以下で、偏差値を50以上として、すなわち、満足度が高いとして満足度基準チャート510の外側に評価ポイントP23を設定する。図5Bに示す例では、評価対象の勤務者の分散値と、母集団の分散値とが一致し、評価ポイントP23を満足度基準チャート510の上に設定した例を示している。この公平性は、評価対象のばらつきの大きさを判定しており、要するに、ばらつきが少ない方が、対象となる集団において公平性が高いことを示し、高評価としている。
勤務変更回数は、勤務実績が勤務計画から変更になった回数(図2の変更データ欄46の記入数)であり、このような勤務変更は、少ない方が、心理的な満足度は高い。したがって、所定期間、例えば、1か月の評価対象の集団の平均値が、母集団の平均値以下の場合に、偏差値が50以上として、すなわち、満足度が高いとして満足度基準チャート510の外側に評価ポイントP24を設定する。図5Bに示す例では、評価対象の集団の平均値が、母集団の平均値以上であり、評価ポイントP24を満足度基準チャート510の内側に設定した例を示している。
勤務変更公平性は、所定期間、例えば、1か月の評価対象の集団の分散値が、母集団の分散値以下の場合に、偏差値が50以上として、すなわち、満足度が高いとして満足度基準チャート510の外側に評価ポイントを設定する。図5Bに示す例では、評価対象の集団の分散値が、母集団の分散値以下で、満足度が高いとして評価ポイントP25を満足度基準チャート510の外側に設定した例を示している。
夜勤回数公平性は、所定期間、例えば、1か月の評価対象の夜勤回数の分散値が、母集団の夜勤回数の分散値未満の場合に、偏差値が50以上として、すなわち、満足度が高いとして満足度基準チャート510の外側に評価ポイントP26を設定する。図5Bに示す例では、評価対象の夜勤回数の分散値が、母集団の夜勤回数の分散値と一致し評価ポイントP26を満足度基準チャート510の上に設定した例を示している。
夜勤回数は、負荷妥当性の評価で説明したように、勤務時間が、所定の夜間(例えば、22:00~5:00の間)にかかってシフト勤務を行った回数であり、この夜勤回数は、少ない方が心理的な満足度は高い。そこで、評価対象の集団の平均値が、母集団の平均値以下の場合、偏差値が50以上として、すなわち、満足度が高いとして満足度基準チャート510の外側に評価ポイントP27を設定する。図5Bに示す例では、評価対象の集団の平均値が、母集団の平均値以下で満足度が高いとして評価ポイントP27を満足度基準チャート510の僅かに外側に設定した例を示している。
土日休公平性は、所定期間、例えば、1か月間の評価対象の集団の土日休(土曜日または日曜日の休日)の回数の分散値が、母集団の土日休の回数の分散値未満の場合、偏差値が50以上、すなわち、満足度が高いとして満足度基準チャート510の外側に評価ポイントP28を設定する。図5Bに示す例では、評価対象の集団の土日休の回数の分散値が、母集団の土日休の回数の分散値評価以上で、評価ポイントP28を満足度基準チャート510の内側に設定した例を示している。
休日公平性は、所定期間、例えば、1か月間の評価対象の集団の休日の回数の分散値が、母集団の休日の回数の分散値未満の場合、偏差値が50以上として、すなわち、満足度が高いとして満足度基準チャート510の外側に評価ポイントP29を設定する。図5Bに示す例では、評価対象の集団の休日の分散値が、母集団の休日の回数の分散値未満で評価ポイントP29を満足度基準チャート510の外側に設定した例を示している。
次に、ステップS104の総合評価部22dによる総合評価について説明する。
この総合評価を示す総合評価値は、負荷妥当性の評価結果である各評価項目の偏差値(評価ポイント)の平均値と、満足度の評価結果である各評価項目の偏差値(評価ポイント)の平均値とを、それぞれ2で割った値を合算した値(偏差平均値)とする。
次に、ステップS105の出力制御について説明する。
図5Aは、出力制御による負荷妥当性の評価結果の表示例を示し、図5Bは出力制御による満足度の評価結果の表示例を示し、図5Cは出力制御による総合評価の表示例を示す。
図5Aに示すように、負荷妥当性の評価結果は、負荷妥当性表示チャート400を表示部300に表示する。この負荷妥当性表示チャート400は、負荷評価項目の数と同数の9個の頂点を有する正9角形の負荷妥当性基準チャート410(点線で表示)を有する。この負荷妥当性基準チャート410は、各負荷評価項目の偏差値を0~70で表示する基準軸421~429の偏差値が50の位置を結んで形成された正9角形を成す。そして、評価結果は、各負荷評価項目の評価対象の偏差値(評価ポイントP11~P19)を結んだ負荷妥当性評価結果チャート430(実線で表示)により示す。前述したように、勤務負荷は、偏差値が50よりも大きい方が負荷が少ない(妥当)ことを示す。よって、負荷妥当性評価結果チャート430は、負荷妥当性基準チャート410の外側が、負荷が妥当であることを示し、負荷妥当性基準チャート410の内側が、負荷が不当である(負荷が高い)ことを示す。
本実施の形態1では、評価対象をある病棟の勤務者の集団としており、母集団は、病院全体の勤務者であり、かつ、複数の病棟の各病棟の平均値を偏差値50とした例を示している。したがって、図5Aの負荷妥当性の表示例では、評価対象の病棟では、他の病棟と比較して、勤務間隔、夜勤後休息、逆循環回数による負荷が不当である(負荷が高い)ことが分かる。特に、逆循環回数による負荷が相対的に大きくなっているのが分かる。
そして、評価対象の病棟では、他の病棟と比較して、夜勤回数、土日休回数、連続勤務回数、拘束時間による負荷が低く妥当であり、特に、土日休回数による満足度が高いことが分かる。また、夜勤連続回数、早朝出勤回数による負荷については、他の病棟と同等であることが分かる。
このように、負荷妥当性の評価結果を示す負荷妥当性評価結果チャート430を、基準となる負荷妥当性基準チャート410と併せて表示するため、負荷妥当性基準チャート410の内外のいずれに位置するかで、各負荷評価項目の負荷妥当性を直感的に把握できる。さらに、各基準軸421~429における評価ポイントP11~P19と、負荷妥当性基準チャート410との間隔により、負荷の妥当性(不当性)の程度を直感的に認識することができる。
次に、出力制御による満足度の評価結果を、図5Bの表示例に基づいて説明する。
図5Bに示すように、満足度の評価結果は、満足度表示チャート500を表示部300に表示する。この満足度表示チャート500は、負荷妥当性表示チャート400と同様に、各満足度評価項目の偏差値を0~70で表示する基準軸521~529の偏差値が50の位置を結んで形成された正9角形の点線で示す満足度基準チャート510を有する。そして、評価結果は、各満足度評価項目の偏差値(評価ポイントP21~P29)を結んだ満足度評価結果チャート530(実線で示す)により示す。すなわち、満足度評価結果チャートは、各満足度評価項目において、満足度基準チャート510よりも外側に評価ポイントが位置すれば、満足度が良好であることを示し、満足度基準チャート510よりも内側に評価ポイントが位置すれば、満足度が不当(不足)であることを示す。
したがって、図5Bの満足度の表示例では、評価対象の病棟では、他の病棟に対し、休日回数、勤務変更回数、土日休公平性の満足度が低いことが分かる。また、評価対象の病棟では、他の病棟に対し、勤務希望回数、勤務変更公平性、夜勤回数、休日公平性の満足度が高く、勤務希望公平性、夜勤回数公平性の満足度が、他の病棟と同等であることが分かる。
このように、満足度についても、満足度の評価結果を示す満足度評価結果チャート530を、基準となる満足度基準チャート510と併せて表示するため、満足度基準チャート510の内外のいずれに位置するかにより、各負荷評価項目の満足度を直感的に把握できる。さらに、各基準軸521~529における評価ポイントP21~P29と、満足度基準チャート510との距離により、満足度(不満足度)の程度を直感的に認識することができる。
次に、図5Cに示す総合評価の表示例について説明する。
総合評評価の表示は、表示部300において、総合評価表示画面600を用いて表示する。この総合評価表示画面600は、総合評価表示部610、前月・当月比較表示部620、負荷妥当性評価表示部630、満足度評価表示部640を備える。
総合評価表示部610は、総合評価ランクを、A~Dの4段階のランクで表示するランク表示部611と、総合評価に基づいて改善を図るためのアドバイスを表示するアドバイス表示部612とを備える。
ランク表示部611にて表示するランクは、図6Aの評価基準・アドバイス一覧図に示すように、総合評価値(偏差平均値)に基づいてA~Dの4ランクに分類する。すなわち、総合評価値が60以上でAランク、50~59の範囲内でBランク、40~49の範囲内でCランク、39以下でDランクに分類する。
また、アドバイス表示部612による表示は、総合評価のランク、負荷妥当性の偏差の平均値、満足度の偏差の平均値の組み合わせにより、予め設定されたアドバイスを表示する。この表示するアドバイスは、図6Aにも示すが、以下の通りである。なお、以下の表示は、病棟の管理者に対するアドバイスである。
総合評価がAランクの場合は、「あなたの病棟の働き方にはまったく問題がないようです。負荷も低く、満足度も高い最高の状態と言えます。この状態を維持できるように頑張ってください。」と表示する。
総合評価がBランクであり、かつ、負荷妥当性の評価負荷妥当性の偏差の平均値、満足度の偏差の平均値が共に、50以上の場合は「あなたの病棟の働き方には問題はみられないようです。今のところ大きな心配はありませんが、特定の個人に負荷が寄ってしまわないように日頃から注意を払いましょう。」と表示する。
総合評価がBランクであり、負荷妥当性の偏差の平均値が50未満の場合は「あなたの病棟の働き方には大きな問題はみられないようです。ただ、全体的に負荷が高くなっている傾向があるため、注意が必要です。」と表示する。
総合評価がBランクであり、満足度の偏差の平均値が50未満の場合は「あなたの病棟の働き方には大きな問題はみられないようです。ただ、全体的に満足度が低くなっている傾向があるため、注意が必要です。」と表示する。
総合評価がCランクであり、負荷妥当性の偏差の平均値、満足度の偏差の平均値が共に50未満の場合は「あなたの病棟の働き方には少し問題があるようです。全体的に負荷が高く、満足度も低い傾向にあります。ガイドラインを参考に、働き方の見直しを検討してください。」と表示する。なお、ガイドラインとしては、公益社団法人日本看護協会(JNA)のガイドラインを用いるのが好ましい。
総合評価がCランクであり、負荷妥当性の偏差の平均値が50以上の場合は「あなたの病棟の働き方には少し問題があるようです。特に満足度が低い傾向にあり、今後問題が発生する可能性があります。休暇を適切に取らせるなど対策を講じましょう。」と表示する。
総合評価がCランクであり、満足度の偏差の平均値が50以上の場合は「あなたの病棟の働き方には少し問題があるようです。特に負荷が高い傾向にあり、今後問題が発生する可能性があります。JNAガイドラインを参考に、働き方の見直しを検討してください。」と表示する。
総合評価がDランクの場合は「あなたの病棟の働き方には大きな問題があるようです。負荷がとても高く、満足度も非常に低いため危険な状態と言えます。JNAガイドラインを参考に、早急に見直しを行ってください。」と表示する。
図5Cに戻り、前月・当月比較表示部620は、当月評価表示部621と前月評価表示部622とを備える。当月評価表示部621は、横方向の棒グラフにより、その全長で総合評価の偏差を表し、棒グラフの左半分で負荷妥当性の評価(偏差値)を表し、棒グラフの右半分で満足度の評価(偏差値)を表す。
前月評価表示部622は、当月評価表示部621と同様に、横方向の棒グラフにより、その全長で総合評価の偏差値を表し、棒グラフの左半分で負荷妥当性の評価(偏差)を表し、棒グラフの右半分で満足度の評価(偏差値)を表す。
負荷妥当性評価表示部630は、該当月の負荷妥当性のランクを示すランク表示部631と、負荷妥当性に関するアドバイスを表示するアドバイス表示部632とを備える。負荷妥当性のランクも、総合評価と同様にA~Dの4ランクに分けて表示する。このランク分けは、総合評価と同様に、評価値(各項目の偏差値の平均値)によりランク分けするもので、すなわち、図6Aに示すように、負荷妥当性評価値が60以上でAランク、50~59の範囲内でBランク、40~49の範囲内でCランク、39以下でDランクに分類する。
また、アドバイス表示部632に表示するアドバイスは、負荷妥当性のランクに応じて設定されている。図6Bに示すように、負荷妥当性がAランクの場合「まったく問題ありません。この状態を維持しましょう。」と表示する。負荷妥当性がBランクの場合「負荷の偏りも少なく、現状は問題ないようです。」と表示する。負荷妥当性がCランクの場合「負荷が少し高い傾向にあります。シフトの見直しが必要です。」と表示する。負荷妥当性がDランクの場合「負荷が非常に高くなっており、危険な状態です。早急に改善が必要です。」と表示する。
満足度評価表示部640は、該当月の満足度のランクを示すランク表示部641と、満足度に関するアドバイスを表示するアドバイス表示部642とを備える。満足度のランクも、総合評価と同様にA~Dの4ランクに分けて表示する。このランク分けは、総合評価と同様に、評価値(各項目の偏差値の平均値)によりランク分けするもので、図6Bに示すように、満足度評価値が60以上でAランク、50~59の範囲内でBランク、40~49の範囲内でCランク、39以下でDランクに分類する。
また、アドバイス表示部642に表示するアドバイスは、満足度のランクに応じて設定されている。満足度がAランクの場合「まったく問題ありません。この状態を維持しましょう。」と表示する。満足度がBランクの場合「満足度の偏りも少なく、現状は問題はないようです。」と表示する。満足度がCランクの場合「満足度が少し低い傾向にあります。休暇の取得や夜勤労働に偏りが出ないように注意しましょう。」と表示する。満足度がDランクの場合「満足度が著しく低く、危険な状態です。早急に改善が必要です。」と表示する。
以上のように、総合評価表示部610により、該当月の総合評価及び改善するためのアドバイスを知ることができる。そして、前月・当月比較表示部620により、該当月の総合評価における負荷妥当性と満足度とのバランスを知ることができるとともに、これらの評価結果を前月の評価結果と一目で比較することができる。この比較により、負荷と満足度とのいずれを改善すべきか、あるいは、両方を改善すべきか、一目で把握することができる。
また、前月・当月比較表示部620により負荷と満足度とのいずれを改善すべきかを認識した際に、負荷妥当性評価表示部630と満足度評価表示部640のランク表示及びアドバイスの表示を確認することにより、さらに、具体的な改善の方向性を的確に知ることができる。
(実施の形態の解決課題)
以下に、実施の形態が解決する課題について改めて説明する。
従来の設問に回答する形式のストレスチェックは、勤務者の主観的な評価に基づくものであり、勤務者に対する負荷や、勤務の満足度等を客観的に評価することが難しい。例えば、主観的な評価が平等になるように勤務計画を立てても、実際の勤務時間や勤務負荷が平等になるとは限らない。
また、勤務実績による勤務負荷に注目して勤務負荷の評価を行うものの場合、勤務実績だけでは、心理的な要因の負荷を考慮ができず、身体的、心理的に公平となる勤務計画を立てたり、勤務実績を評価したりするのが難しい。例えば、心理的な要因の負荷は、例えば、勤務希望が叶えられたか否かで異なったり、勤務時間の中で、早出勤務、連続深夜勤務等の心理的に負担が大きい勤務時間の割合が大きいか否かで異なったり、夜勤の回数等によって異なったりする。したがって、単に勤務時間を積算するものでは、このような心理的な要因による負荷や、満足、不満足の程度を客観的かつ高精度に評価することができない。そして、客観的で正確な評価が行うことができない場合、勤務負担、疲労、不満足度の原因を分析し、勤務計画の改善を図るのが難しい。
さらに、負荷や満足度は、個人的なものと、全体的なものがある。例えば、全体的に負荷が大きな職場環境では、各人の満足度も低く、このような環境で、個々の負荷や満足度を演算やアンケートにより求めても、勤務者の多くの負荷が高いという結果や、勤務者の多くが不満足という結果しか得られず、改善策を見つけにくい。
このような場合、職場の中で、評価対象の負荷や満足度が相対的にどの程度であるかを客観的、かつ、高精度に把握する必要がある。本実施の形態1の勤務状態評価システム及び勤務状態評価プログラムは、この目的を達成するものである。
(実施の形態1の作用)
以下に、実施の形態1の作用を説明する。なお、前述したように、実施の形態1では、勤務データとして、1カ月分の勤務計画、勤務実績、勤務希望のデータを入力し、病院全体の勤務者を母集団とし、ある病棟の勤務者の集団を評価対象として負荷妥当性、満足度を評価した場合について説明する。
例えば、評価対象の病棟の管理者は、病院全体及び評価対象の病棟の勤務希望を含む勤務計画及び勤務実績のデータを実施の形態1の勤務状態評価システムAに入力して、該当月の負荷妥当性及び満足度を評価することができる。
このような評価は、翌月の勤務計画を立てる際に、前月の各評価を参照し、改善を図ることができる。ここで、図5Cに示す総合評価表示画面600を表示することにより、勤務状態の総合評価の評価結果を参照することができる。この時、例えば、総合評価がCランクやDランクの場合、アドバイス表示部612の表示を参考にして改善を図ることができる。さらに、この際、図5Aに示す負荷妥当性表示チャート400及び図5Bに示す満足度表示チャート500における各評価項目の評価ポイントP11~P19、P21~P29の位置と、各基準チャート410、510との比較により、より具体的な改善項目を知ることができる。
同様に、管理者は、翌月の勤務計画を作成した際に、データとして、新規に作成した翌月の勤務計画のデータを入力して、勤務計画が望ましいものか否かを、病院全体の勤務計画と比較して確認することができる。なお、この場合、勤務希望公平性、勤務変更回数、勤務変更公平性等の勤務実績が必要な項目については、評価を行わず、例えば、偏差値50という評価にする。
このように、翌月の勤務計画を入力した際には、図5Cに示す総合評価表示画面600の表示内容に従って、修正して勤務計画を作成し直すことができる。この場合も、図5Aに示す負荷妥当性表示チャート400及び図5Bに示す満足度表示チャート500における各評価項目の評価ポイントP11~P19、P21~P29の位置と、各基準チャート410、510との比較により、より具体的な改善項目を知ることができる。このように勤務計画を修正することで、より望ましい勤務計画を作成することができる。
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1の勤務状態評価プログラムを実行する勤務状態評価システムAの効果を列挙する。
(1)実施の形態1の勤務状態評価システムAは、異なる勤務時間帯のシフト勤務を行う複数の勤務者の勤務に関するデータの入力部10と、入力したデータに基づいて1または複数の前記勤務者を評価対象として、評価対象の勤務状態に関する評価を行う勤務状態評価演算処理部20と、評価結果を出力する出力部30とを備える。
そして、入力部10に入力するデータには、複数の勤務時間帯の種別を規定したシフトパターンデータと、勤務者の勤務開始時刻と勤務終了時刻を含む勤務データとが含まれる。
さらに、勤務状態評価演算処理部20は、データに基づいて、予め設定された複数の負荷評価項目における母集団の値と評価対象の値とから評価対象の負荷の妥当性を評価する負荷妥当性評価部22bと、データに基づいて、予め設定された複数の満足度評価項目における母集団の値と評価対象の値とから評価対象の満足度を評価する満足度評価部22cと、負荷妥当性評価部22bの負荷妥当性評価と、満足度評価部22cの満足度評価とに基づいて、評価対象の勤務に対する総合評価を行う総合評価部22dと、総合評価部22dによる総合評価結果を出力部30により出力する出力制御部23と、を備える。
したがって、勤務に関するデータに基づいて、評価対象の勤務者の身体的な負荷に加え、心理的な満足度を、母集団全体の勤務者の負荷及び満足度と相対的に比較して、評価対象の勤務状態を客観的かつ総合的に評価することができる。例えば、母集団の勤務者が全体的に忙しく負荷が大きい職場環境では、評価対象の負荷の絶対値がある程度大きい場合でも、母集団との相対評価では負荷を妥当と評価する場合もある。また、母集団の勤務者の満足度が全体的に低い環境では、評価対象の満足度がある程度低い場合でも、評価対象における相対的な満足度は低くならない場合もある。このように、評価対象の絶対値としての負荷や満足度の評価ではなく、母集団における負荷や満足度との相対的な評価を行うことで、母集団の勤務環境における公平性を考慮した勤務状態を評価する新規な評価システムを提供することができる。
すなわち、絶対値としての負荷や満足度は、例えば、その時点での人員が不足している場合、評価対象の全員の評価が、負荷が過大、満足度が低いという評価結果となる可能性がある。このような場合、原因の分析が難しく改善を図ることが難しい。本実施の形態1では、そのような勤務環境の中であっても、母集団に対する負荷の偏りや満足度の偏りの有無を客観的、かつ、高精度に評価することができ、これにより、適切な改善を図ることが可能となる。
さらに、負荷妥当性に加え勤務に対する充足度等による満足度も併せて客観的に評価して総合評価を行うため、単にシフト勤務時間を時系列で単に積算して負荷を求めるもの等と比較して、より詳細に勤務状態を評価することができる。
(2)実施の形態1の勤務状態評価システムAは、データとして、勤務計画に基づくデータを用いて評価を行うことができる。
したがって、勤務計画を作成した段階で、負荷の高さ、偏りの有無や、満足度の高さ、偏りの有無の評価をシミュレーションとして用いることができる。よって、評価結果を参考に勤務計画の見直しを行って、負荷が過大となったり、偏ったり、満足度が低くなったり、偏ったりすることの無い勤務計画を作成することが可能である。
(3)実施の形態1の勤務状態評価システムAは、負荷妥当性評価部22bは、母集団の平均値に対する評価対象の値の偏差に基づいて負荷評価項目の評価を行う。
したがって、評価対象の負荷の妥当性の評価を、母集団の平均値との偏差に基づいて行うことで、単純な演算により、母集団との相対的な負荷の妥当性を客観的に評価することができる。
(4)実施の形態1の勤務状態評価システムAは、満足度評価部22cは、満足度評価項目として、母集団の平均値に対する評価対象の値の偏差に基づいて満足度評価項目の評価を行う。
したがって、評価対象の満足度の評価を、母集団の平均値との偏差を用いることで、単純な演算により、母集団に対する相対的な満足度を客観的に評価することができる。
(5)実施の形態1の勤務状態評価システムAは、評価対象は、複数の前記勤務者の集団とする。そして、満足度評価部22cは、満足度評価項目として、勤務の公平性を指標とする項目である、勤務希望公平性、勤務変更公平性、夜勤回数公平性、土日休公平性、休日公平性を有し、母集団の分散と、評価対象の分散との偏差に基づいて各公平性を評価する。
したがって、評価対象の満足度の公平性を、母集団の分散と評価対象の分散との偏差を用いることで、単純な演算により、公平性を客観的に評価することができる。
(6)実施の形態1の勤務状態評価システムAの総合評価部22dは、負荷妥当性の偏差の平均と、満足度の偏差の平均とにより総合評価を行う。
したがって、勤務状態として、負荷妥当性と満足度とのバランスを、認識することができる。
(7)実施の形態1の勤務状態評価システムAは、負荷評価項目には、勤務時間、夜勤回数、夜勤連続回数、夜勤後休息、土日休回数、早朝出勤回数、連続勤務回数、逆循環回数、拘束時間のいずれかが含まれる。
したがって、病院などのシフト勤務において、評価対象における負荷を高精度で評価することができる。また、上記の項目が多ければ多い程、高精度で負荷を評価することができる。
特に、本実施の形態1では、勤務時間、夜勤回数、夜勤連続回数、夜勤後休息、土日休回数、早朝出勤回数、連続勤務回数、逆循環回数、拘束時間の全てを負荷評価項目としている。これにより、勤務者の負荷に影響を与える身体的要因となる勤務の頻度や時間を詳細に把握して、負荷の妥当性をきめ細かに評価できる。そして、負荷妥当性に偏りがある場合、その原因の分析を詳細にでき、その改善を的確に図ることができる。
(8)実施の形態1の勤務状態評価システムAは、満足度評価項目には、休日回数、勤務希望回数、勤務希望公平性、勤務変更回数、勤務変更公平性、夜勤回数公平性、夜勤回数、土日休公平性、休日公平性のいずれかが含まれる。
したがって、病院などのシフト勤務において、評価対象における満足度を高精度で評価することができる。また、上記の項目が多ければ多い程、高精度で満足度を評価することができる。
特に、本実施の形態1では、休日回数、勤務希望回数、勤務希望公平性、勤務変更回数、勤務変更公平性、夜勤回数公平性、夜勤回数、土日休公平性、休日公平性の全てを満足度評価項目としている。これにより、勤務者の満足度に影響を与える心理的要因となる勤務に関する回数や公平性をきめ細かく評価できる。従来、勤務希望回数、勤務希望公平性、勤務変更回数、勤務変更公平性、土日休公平性、休日公平性等に細かに着目して、心理的な満足度を客観的に評価するものが無かったが、本実施の形態1では、このような細かな分析、評価が可能である。そして、このような細かな分析を行うため、仮に満足度に偏りがある場合、その原因を正確に把握し、その改善を的確に図ることができる。
(9)実施の形態1の勤務状態評価プログラムは、異なる勤務時間帯のシフト勤務を行う複数の勤務者の勤務に関するデータであって、複数の勤務時間帯の種別を規定したシフトパターンデータと、勤務者の勤務開始時刻と勤務終了時刻を含む勤務データとを入力する入力部10と、入力部10に入力されたデータに基づいて1または複数の勤務者を評価対象として評価対象の勤務状態に関する評価を行う勤務状態評価演算処理部20と、評価結果を出力する出力部30とを備えた勤務状態評価システムAにより実行される勤務状態評価プログラムであって、
勤務状態評価演算処理部20に、
データに基づいて、予め設定された複数の負荷評価項目における母集団の値と評価対象の値とから評価対象の負荷の妥当性を評価するステップS103aと、
データに基づいて、予め設定された複数の満足度評価項目における母集団の値と評価対象の値とから評価対象の満足度を評価するステップS103bと、
負荷妥当性の評価結果と、満足度の評価結果とに基づいて、評価対象の勤務に対する総合評価を行うステップS104と、
総合評価の結果を出力部30により出力するステップS105と、
を実行させる。
したがって、上記(1)で述べたように、評価対象の身体的及び心理的な勤務状態を客観的かつ総合的に評価することができる。また、評価対象の絶対的な負荷や満足度の評価ではなく、母集団における負荷や満足度との相対的な比較を行うことで、母集団の勤務環境における公平性を考慮した勤務状態を評価する新規なプログラムを提供することができる。
以下に、他の実施の形態の勤務状態評価システム及び勤務状態評価プログラムについて説明する。なお、他の実施の形態の勤務状態評価システム及び勤務状態評価プログラムについて説明するのにあたり、相互に共通する構成要素には共通する符号を付けて説明を省略する。
(実施の形態2)
実施の形態2は、総合評価の表示の仕方として、実施の形態1とは異なる表示の仕方を用いた例である。
出力部30の表示部300における図7に示す総合評価表示画面700は、評価対象病棟表示欄710、年度表示欄720、月表示欄730、比較チャート表示部740を備える。
評価対象病棟表示欄710は、評価対象となる病棟を表示する。年度表示欄720は、評価を行う勤務データの該当年度を表示する。月表示欄730は、評価を行う勤務データの該当月を表示する。
比較チャート表示部740は、負荷の妥当性の高低を表す縦軸と、満足度の高低を表す横軸とを備える。そして、評価対象の病棟の総合評価を、図において丸枠印により示し、太い実線が該当月の総合評価を示し、二点鎖線が前月の総合評価を示し、点線が年間平均の総合評価を示す。また、病院全体の総合評価を、図において正方形枠印により示し、太い実線が該当月の総合評価を示し、二点鎖線が前月の総合評価を示し、点線が年間平均の総合評価を示す。
なお、この例では、評価対象の病棟の総合評価の表示は、横軸と縦軸との交点PIは、母集団である病院の負荷妥当性及び満足度の平均値(偏差値50)とする。また、病院の総合評価は、交点PIは、複数の病院の負荷妥当性及び満足度の平均値(偏差値50)とする。
この実施の形態2による総合評価表示画面700の表示では、評価対象となる病棟の負荷妥当性及び満足度の総合評価を、該当する病棟の前月や年間の総合評価や、病院の総合評価と、直観的に比較し把握することができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3の勤務状態評価プログラムにより勤務状態評価を行う勤務状態評価システムについて説明する。
実施の形態3は、負荷妥当性評価部22b及び満足度評価部22cにおける負荷妥当性及び満足度の評価に用いるデータとして、職場の属性データ及び勤務者属性データを含む特性データを加え、評価に特性データによる分析や補正を加えるようにした例である。
職場属性データ項目としては、病床種別、病棟の病床数、病床数に対する看護師配置の割合、患者の重症度が含まれる。すなわち、病床種別、病棟の病床数、病床数に対する看護師の適正な配置の割合が異なっており、また、それにより1日に必要な夜勤人数も異なる。
したがって、病棟における看護師の数が同じであっても、上記の職場属性データ項目の違いにより負荷を与える影響が大きく、負荷妥当性が異なる。そこで、上記の項目における看護師の適正な配置の割合が大きい職場属性データ項目におけるデータ値は、負荷を大きくする側に補正する。例えば、病床種別において、適正な配置の割合が大きく相対的に負荷が大きい種別の勤務者の拘束時間は、1よりも大きな係数を乗じたり、補正値を加算したりして、適正な配置の割合が小さく負荷が小さい種別の勤務者のデータ値と、負荷が同等となるように補正する。あるいは、病棟間の比較を行うにあたっては、母集団を同一の条件の病棟として、これらの病棟間で比較を行うことでも、負荷の妥当性をよりきめ細かに確認できる。
また、勤務者属性データ項目において勤務に関する属性データとして、契約形態、資格、経験年数、通勤時間、夜勤希望の度合い等の勤務属性を含む。例えば、資格、経験年数、契約形態の違いにより、同じ勤務に対する負担が異なる。具体的には、相対的に上位の資格や経験年数が長い勤務者の方が、相対的に低位の資格や経験年数が短い勤務者よりも、同じシフト勤務でも、相対的に負荷が低い場合がある。あるいは、逆に、勤務状況によっては、上位の資格者や経験年数が長い勤務者の方が、同じシフト勤務であっても、責任や負荷が大きな勤務を担当し、負荷が高い場合もある。
したがって、資格、経験年数、契約形態の違いと、それに応じた負荷妥当性の評価が行えるように各負荷評価項目のデータ値に補正を加え、負荷の妥当性をよりきめ細かに確認できる。
同様に、通勤時間についても、相対的に通勤時間が長い勤務者の負荷は、相対的に通勤時間が短い勤務者の負荷に対して負荷が大きいため、負荷評価項目のデータ値に対して通勤時間に応じて通勤時間が長い勤務者のデータ値が相対的に大きくなるように補正を行うことで、負荷の妥当性をよりきめ細かに確認できる。また、夜勤希望の度合いについても、夜勤希望の度合いが低い勤務者は、夜勤希望の高い勤務者に対して夜勤による負荷が相対的に高くなると考えられるため、負荷評価項目において夜勤に関するデータ値に対して、夜勤希望の度合いが低い勤務者の値が大きくなるように補正することで、負荷の妥当性をよりきめ細かに確認できる。
さらに、勤務者属性データ項目において個人に関する属性データとして、性別、年齢、婚姻状況、子供の有無、介護者の有無等を含む。例えば、勤務者の子供の有無は、満足度評価項目である土日休回数、土日休公平性に影響する。具体的には、子供を有する勤務者の土日休の満足度は、子供を持たない勤務者の土日休の満足度よりも高くなる。よって、勤務データの集計を行う際に、子供の有無により勤務者を分けることで、満足度の評価をより細かに確認することができる。あるいは、負荷評価において、子供を有する勤務者の土日休回数の値を実際値よりも少ない側(負荷を大きくする側)に補正してもよい。
また、性別、年齢、婚姻状況、介護者の有無によっても、負荷妥当性や満足度が異なる項目について、補正を行ったり、集計を分けたりすることで、負荷妥当性の評価や、満足度の評価を精度の高いものとすることができる。例えば、年齢として、中間層の勤務者は、その上下の年齢層と比較して、同じデータに対して、相対的に負荷が低くなるように、かつ、満足度が高くなるような補正を加えることで、より正確な評価を行うことができる。また、独身者は、既婚者に比べ、相対的に負荷が低くなるように、かつ、満足度が高くなるような補正を加えることで、より正確な評価を行うことができる。逆に、介護者を有する勤務者に対して、相対的に負荷が高くなるように、かつ、満足度が低くなるような補正を加えることで、より正確な評価を行うことができる。また、業務内容により、性別により、負荷や満足度が異なる場合、それに応じた補正を加えることができる。
なお、上述の職場属性データや勤務者属性データにおいて個人的な情報に関しては、予め管理者が取得するようにしてもよいが、例えば、勤務者自身が、携帯端末などを用いて、勤務者に対する負荷情報として入力するようにしてもよい。
(4-1)実施の形態4の勤務状態評価システムは、入力部10に入力するデータに、職場の属性データと勤務者属性データとを含む特性データが含まれ、負荷妥当性評価部22bと満足度評価部22cとの少なくとも一方は、特性データに基づく評価を加える。
したがって、勤務計画や勤務実績の負荷妥当性や満足度の評価結果と、職場の特性や各勤務者の特性の情報を組み合わせて分析することにより、勤務の負荷や満足度の評価を、よりきめ細かに行うことができる。これにより、勤務状態と、家庭状況、個人の状況等の特性との調和を図る新規な勤務状態評価システムを提供できる。そして、勤務の負荷や満足度と、職場の環境を特徴づける特性や各スタッフを特徴づける特性との相関を把握できるため、勤務計画の改善に有効な情報(評価結果)を取得して、適切な改善を図ることができる。
具体的には、職場属性データとして、病床種別、病棟の病床数、病床数を用いてこれらの違いを評価に反映するようにしたため、これらを考慮しないものと比較して、きめの細かな評価が可能である。また、このような細かな分析に基づいて、より適切な改善を行うことが可能である。
さらに、勤務者属性データとして、契約形態、資格、経験年数、通勤時間、夜勤希望の度合い、性別、年齢、婚姻状況、子供の有無、介護者の有無等を含み、これらの特性の違いを評価に反映するようにしたため、これらを考慮しないものと比較して、きめの細かな評価が可能である。また、このような細かな分析に基づいて、より適切な改善を行うことが可能である。
なお、実施の形態4では、職場の特性や勤務者の特性に基づく評価を加えた例を示したが、さらに、実際の勤務者の身体的な情報や、事故に至る可能性のあった出来事もしくはその発見(以下、ヒヤリハットと称する)の発生の情報と勤務計画及び評価結果と組み合わせて、勤務者の身体的なトラブルやヒヤリハットの発生を予測し、これを未然に防ぐことも可能である。
ここで、身体的な情報として、心拍数に関する情報や、主観的な疲労度の情報を用いることができる。なお、主観的な疲労度の情報は、例えば、疲労感VAS(Visual Analogue Scale)や、Numerical Rating Scale(NRS)を用いた疲労の評価を用いることができる。これらの心拍数の情報や、疲労度の情報は、毎日のある一定の頻度で取得した時系列データとして読み込む。そして、その変化量と疲労蓄積の変化量(疲労蓄積曲線の導関数)を比較することにより、どの勤務計画のシフトの並びが主観的な疲労感の増大に影響しているのかを知ることができる。
さらに、ヒヤリハットの発生日時と疲労蓄積曲線の発生日時前後の値の比較により、疲労蓄積値に対するヒヤリハット発生の危険率を計算できる。そして、ヒヤリハットの発生日時及びその前の任意の区間の疲労蓄積曲線を取り出し、疲労蓄積曲線毎のヒヤリハット発生頻度を記録し蓄積する。さらに、蓄積されたデータに基づき、類似の疲労蓄積曲線を含む勤務計画に対して、ヒヤリハット発生の可能性があることを事前に発見することが可能となる。
加えて、このような疲労蓄積とヒヤリハットの発生との関連性に加え、負荷妥当性や満足度の評価結果との関連性を蓄積し、勤務計画の負荷妥当性や満足度の評価結果を得た際に、併せて、ヒヤリハットの発生の可能性がある場合には、その旨、報せるようにすることができる。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、実施の形態では、病院の勤務者の勤務状態を評価する例を示したが、勤務場所としては、病院に限定されるものではない。要は、勤務時間帯が異なる勤務シフトを有する職場であれば、例えば、工場、飲食店、警察、消防署等の病院以外の職場の勤務負荷評価に適用することができる。
また、実施の形態では、出力部として、管理者が使用するディスプレイ画面を示したが、これに限定されるものではない。例えば、プリントアウトにより出力したり、記憶媒体に出力したり、通信ネットワークNWを介して他の管理用のサーバやあるいは勤務者が所持する携帯端末等に出力したりすることができる。また、評価対象として、勤務者が、個人的に自身の負荷妥当性や満足度を客観的に評価することも可能である。その場合、評価結果を、勤務者個人のパーソナルコンピュータや携帯端末に出力し表示するようにしてもよい。
実施の形態では、負荷を評価するための負荷評価項目として、勤務間隔、夜勤回数、連続夜勤回数、夜勤後休憩、土日休回数、早朝出勤回数、連続勤務回数、逆循環回数、拘束時間を示した。また、満足度を評価するための満足度評価項目として、休日回数、勤務希望回数、勤務希望公平性、勤務変更回数、勤務変更公平性、夜勤回数公平性、夜勤回数、土日休公平性、休日公平性を示した。しかし、これらは一例であり、それぞれ、負荷を評価可能な項目、満足度を評価可能な項目であれば、これ以外のデータを用いてもよい。また、これらの各項目は、勤務場所として病院を例に挙げた場合の項目であり、他の勤務場所においては、それぞれに、任意に最適な項目を用いることができる。
また、負荷妥当性の評価として、全体の平均値を偏差値50として、比較対象の値との偏差を評価値とした例を示したが、母集団の値と評価対象の値との比較に基づいて評価するものであれば、実施の形態で示したものに限らず、一般的な統計手法を任意に用いることができる。
同様に、満足度の評価においても、実施の形態では、偏差及び分散を用いた例を示したが、評価に用いる評価項目の選択によっては、偏差、分散のいずれか一方を用いた評価を行ってもよいし、他の一般的な統計手法を用いてもよい。