JP7143044B2 - アレルギー性鼻炎症状改善用組成物、アレルギー性鼻炎症状に起因するqol低下改善用組成物、及び、アレルギー性鼻炎症状に起因するくしゃみ抑制用組成物 - Google Patents
アレルギー性鼻炎症状改善用組成物、アレルギー性鼻炎症状に起因するqol低下改善用組成物、及び、アレルギー性鼻炎症状に起因するくしゃみ抑制用組成物 Download PDFInfo
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Description
本発明の「アレルギー性鼻炎」は、鼻粘膜にI型のアレルギー反応、すなわちIgE依存型反応が生じる疾患である。アレルギー性鼻炎の症状は、反復性のくしゃみ、鼻漏(水様性)、鼻閉等である。アレルギー性鼻炎は、純粋にIgEに依存するアレルギーであり、アレルゲンが付着した局所(鼻及び目付近)のみに症状が現れる。アレルギー性鼻炎は、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎に分けられる。季節性アレルギー性鼻炎は、花粉症を含む。
本発明に係るアレルギー性鼻炎症状改善用組成物は、βカロテンを寄与成分として含有し、アレルギー性鼻炎症状を抑制する作用に優れる。当該アレルギー性鼻炎症状は、目症状及び鼻症状のうち少なくとも1つである。当該アレルギー性鼻炎症状は、好ましくは、涙目、くしゃみ、鼻のかゆみ及び鼻づまりのうち少なくとも1つであり、より好ましくは、くしゃみである。
本発明に係るアレルギー性鼻炎症状に起因するQOL低下改善用組成物は、βカロテンを寄与成分として含有し、アレルギー性鼻炎症状に起因するQOLの低下を改善する作用を有する。当該アレルギー性鼻炎症状は、目症状及び鼻症状のうち少なくとも1つである。当該アレルギー性鼻炎症状は、好ましくは、涙目、くしゃみ、鼻のかゆみ及び鼻づまりのうち少なくとも1つであり、より好ましくは、くしゃみである。また、前記QOLの詳細は、日常生活、社会生活及び睡眠のうち少なくとも1つである。本発明に係るアレルギー性鼻炎症状に起因するQOL低下改善用組成物は、前述のアレルギー性鼻炎症状改善用組成物の実施形態の1つである。
本発明に係るアレルギー性鼻炎症状に起因するくしゃみ抑制用組成物は、βカロテンを寄与成分として含有し、アレルギー性鼻炎症状に起因するくしゃみを抑制する作用を有する。本発明に係るアレルギー性鼻炎症状に起因するくしゃみ抑制用組成物は、前述のアレルギー性鼻炎症状改善用組成物の実施形態の1つである。
βカロテンとしては、特に制限されず、天然の成分であっても、合成されたものであってもよい。βカロテンを天然の成分として添加する場合、βカロテンを含むニンジンやその搾汁液、藻類等の形態で添加してもよく、それらの原料から抽出・精製したβカロテンを添加してもよい。
寄与成分とは、物質であって、その影響する先が身体の生理学的機能性であるものをいう。特定保健用食品及び機能性表示食品における寄与成分に相当するのは、いわゆる「関与成分」及び「機能性関与成分」である。医薬品及び医薬部外品の場合、いわゆる「有効成分」である。
前述のアレルギー性鼻炎症状改善用組成物、アレルギー性鼻炎症状に起因するQOL低下改善用組成物、及び、アレルギー性鼻炎症状に起因するくしゃみ抑制用組成物につて、本発明に係る組成物として説明する。本発明に係る組成物は、医薬品組成物及び食品組成物を含む。詳細は後述する。
本発明に係る組成物は、βカロテン及び薬学的に許容される担体を含む医薬品組成物であってもよい。上記の医薬品組成物は、経口投与されることが好ましく、経口的に使用される剤型に製剤化されていることが好ましい。経口的に使用される剤型としては、例えば錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等が挙げられる。薬学的に許容される担体としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤;デンプン、結晶性セルロース等の賦形剤;アルギン酸等の膨化剤等が挙げられる。
本発明に係る組成物は、βカロテンを寄与成分として含有する、食品組成物を提供する。実施例において後述するように、本実施形態の食品組成物を摂取することにより、ヒト又は動物においてアレルギー性鼻炎症状を改善することができる。
本実施形態の食品組成物は、機能性表示食品であってもよい。「機能性表示食品」とは、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品を意味する。当該表示として、例えば、「花粉、ホコリ、ハウスダストなどによる鼻の不快感を軽減する」、「ハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減する」、「鼻目のアレルギー反応を有する人に」等があげられるが、これらに限定されるわけではない。また、機能性表示のない食品であっても、これら機能性をチラシ、メール、口頭でうたって製造、販売することも考えらえる。実施例において後述するように、本実施形態の食品組成物を摂取することにより、アレルギー性鼻炎症状が改善することが確認されている。
本実施形態の食品組成物は、特別用途食品であってもよい。特別用途食品とは、国の許可を受けて、乳児、幼児、妊産婦、病者等の発育、健康の保持・回復等に適するという特別の用途について表示する食品を意味する。
βカロテン(シグマアルドリッチ社:C9750)を0.48mg/mL及び4.8mg/mLとなるようにコーン油(和光純薬工業社:WDL0579)を媒体として調製したもの、並びに、βカロテン0.48mg/mLを含むニンジン濃縮液(RD2 International社)を用いた。
6週齢のBALB/c(雌)(日本エスエルシー社)を40匹用いて、OVA抗原に由来するアレルギー性鼻炎モデルマウスを作成し、βカロテンの薬効評価を行った。1週間の馴化後、表1のとおり、40匹のマウスを無作為に8匹ずつ5群(未感作群、感作群、βカロテン高用量群、βカロテン低用量群、ニンジンジュース群)に分けた。区分は順に対照1、対照2及び区分1~3とする。
くしゃみの回数は、35、41、48日後の二次感作実施後に5分間ビデオ撮影して回数を測定した。βカロテン及びニンジンジュースを49日間投与したOVA感作アレルギーモデルマウスのくしゃみ回数(35、41、48日目)の平均値±標準誤差の値をプロットした結果を図1に示す。対照1を除く4群間の比較にはOne-way ANOVAを行った後、事後検定としてTukey-Kramer検定を用いた(*:P<0.05、**:P<0.01)。また、対照1と対照2との比較には、Aspin Welch t検定を用いた($$:P<0.01)。
全測定日において、感作有の対照2は未感作の対照1と比較して、くしゃみの回数が有意に増加した。35日目の測定日において、対照2と区分1~3との間に顕著な差は認められなかったが、区分1は区分3と比較して有意にくしゃみの回数が少なかった。41日目の測定日において、区分1~3は、対照2と比較してくしゃみの回数が有意に少なかった。また、48日目の測定日においても、区分1、区分2はいずれも対照2と比較してくしゃみの回数が有意に少なかった。区分3は、対照2と比較して少ない傾向(P=0.087)であった。
血漿中OVA抗原特異的IgE量の測定は、0日目、41日目、50日目に行った。βカロテン及びニンジンジュースを49日間投与したOVA感作アレルギーモデルマウスの血漿中OVA抗原特異的IgE量を(a)41日目及び(b)50日目に測定した平均値+標準誤差を図2に示す。対照1を除く4群間の比較には、One-way ANOVA を行った後、事後検定としてTukey-Kramer検定(*:P<0.05)を用いた。対照1と対照2との比較には、Aspin Welch t 検定を用いた($$:P<0.01)。
感作前(0日目)のOVA抗原特異的IgE量は、対照1、対照2、区分1、区分2、区分3で各々0.00±0.00、0.00±0.00、0.37±0.37、0.20±0.19、0.04±0.04(a.u.)であった。a.u.とは、Arbitrary Unitの略称で、任意単位である。両測定日ともに、対照2は対照1と比較して、OVA抗原特異的IgE量が有意に増加した。また、両測定日ともに、対照2と区分1~3との間に顕著な差は認められなかったが、区分1は区分3と比較してOVA抗原特異的IgE量が有意な低値を示した。
自由意思に基づき、インフォームドコンセントを書面で得られた者のみを研究対象者候補とした。1群20名の計40名の研究対象者を募集した。次の選定基準に合致し、かつ、試験責任医師又は試験分担医師が研究対象者として不適格と判断した者等、試験に適さない者を除いて選定された40名を研究対象者とした。
選定基準は、(1)治療や投薬を受けていない健康な日本人男女、(2)同意取得時の年齢が20歳以上59歳以下の者、(3)軽症・中等症に分類される通年性アレルギー性鼻炎の自覚症状がある者、(4)血液のアレルギー検査で特異的IgE(ダニまたはハウスダスト)陽性の者、(5)試験責任医師又は試験分担医師が適格であると判定した者、とした。
研究対象者を年齢、性別及び鼻症状で層別した。鼻症状については、「鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-」(ライフサイエンス社:2020年版(改訂第9版))に基づく重症度分類スコア及び日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(以下、「JRQLQ」という。)のスコアで層別した。その後、1群あたり20名となるように、乱数発生法を用いてランダムにプラセボ食品摂取群(プラセボ群)と被験食品摂取群(βカロテン群)の2群に分けた。なお、盲検化の対象は、試験に関与する者全てであり、解析対象者が固定されるまで割付表は開鍵しなかった。
βカロテンを含む野菜・果実ミックスジュース(原材料:ニンジン、リンゴ、クエン酸、香料、200mL/本)を被験食品として,βカロテンを含まない野菜・果実ミックスジュース(原材料:ニンジン、リンゴ、レモン、クエン酸、香料、200mL/本)をプラセボ食品として使用した。被験食品及びプラセボ食品1本あたりの栄養成分を表2に示した。なお、被験食品とプラセボ食品は、無地の白色容器にて製造することで、試験実施者と研究対象者が外見上の見分けがつかないようにした。
全ての研究対象者には、試験食品摂取期間中、試験食品を1日1本、毎日摂取させた。試験前観察開始日から試験食品摂取完了まで毎日、重症度分類スコアを記録させた。JRQLQアンケートは試験食品摂取-3、0、2、4、6、8週の計6回記入させた。また、試験期間中は以下の制限事項を遵守させた。
制限事項は、(1)試験期間中は毎日、日誌に必要事項を記載する、(2)試験以前と同様の生活(食事、運動、睡眠)を維持し、不規則な生活(暴飲・暴食、極度のダイエット、徹夜など)は避ける、(3)新たな医薬品、内服の医薬部外品、漢方、健康食品(サプリメントも含む)の使用は控える。但し、やむを得ず使用した場合は、生活日誌にその内容を記載する、(4)現在使用している医薬部外品や漢方、健康食品(サプリメントも含む)は、用量用法を変えずに継続する。変更があった場合は、生活日誌にその旨記載する、(5)抗アレルギー作用を訴求する健康食品の摂取、カロテノイドを高含有する健康食品(サプリメントも含む)の使用や野菜ジュース、野菜・果実ミックスジュースの摂取を禁止する、(6)βカロテンを多く含む食品の摂取を控える、(7)採血前日のアルコール摂取と激しい運動を禁止する、(8)採血を行う前日の夜9時から翌朝採血を行うまでの間は、水又は白湯を除き、飲食を禁止する、(9)他の試験食品や医薬品・医薬部外品、化粧品等を使用する臨床試験に参加することは禁止する、(10)試験期間中は、200mL以上の採血行為(献血等)を禁止する、(11)試験に関する話を関係者以外の第三者に漏洩すること、及びSNSなどWEB上に投稿・掲載することを禁止する、(12)その他、試験責任医師及び試験分担医師の指示には従う、とした。
主評価項目として、重症度分類の鼻4項目(くしゃみ、鼻汁、鼻閉、鼻症状)及び、JRQLQの鼻6項目(水っぱな、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、鼻症状、目鼻症状)を評価した。重症度分類スコアは、その日の状態を0点(症状なし)、1点(軽症)、2点(中等症)、3点(重症)、4点(最重症)の5段階で毎日記録させ、記録した毎日の値を、前観察期間は3週間、試験食品摂取期間は2週間毎に平均し、解析に用いた。JRQLQは、2週間毎に記録日の2週間前までを振り返り、最も症状がひどかったときの状態を0点(症状なし)、1点(軽い)、2点(やや軽い)、3点(重い)、4点(非常に重い)の5段階で記録させ、その値を解析に用いた。
各週での実測値や変化量の群間比較にMann-WhitneyのU検定を、0週との群内比較にはBonferroni補正により多重性を考慮したWilcoxonの符号順位検定を用いた。いずれも有意水準5%で検定を行った。統計解析ソフトにはEZR(EZR Version 1.40、Rコマンダー Version 2.5-1)及びSPSS(Ver.15.0J)を用いた。なお、各評価項目は、平均値±標準偏差で表記した。図3から図5において、βカロテン群とプラセボ群との比較で有意差が示された値に*:p<0.05を、試験食品摂取0週との比較で有意差が示された値には、†:p<0.05、††:p<0.01を付した。
目鼻の重症度分類スコアの実測値および試験食品摂取0週からの変化量(Δ値)を図3に示した。鼻の重症度分類スコアにおいて、実測値、変化量共に、βカロテン群とプラセボ群との間に有意な差は確認されなかった。一方、試験食品摂取0週との比較では、βカロテン群のみ、くしゃみ(摂取6、8週)と鼻閉(摂取8週)で有意な低値を示した。目の重症度分類スコアにおいても、実測値、変化量共に、βカロテン群とプラセボ群との間に有意な差は確認されなかった。一方、試験食品摂取0週との比較では、βカロテン群のみ、目のかゆみと目症状(いずれも摂取8週)で有意な低値を示した。
1群48名の計96研究対象者を募集した。次の選定基準に合致し、かつ、試験責任医師又は試験分担医師が研究対象者として不適格と判断した者等、試験に適さない者を除いて選定された96名を研究対象者とした。
選定基準は、(1)治療や投薬を受けていない健康な日本人男女、(2)同意取得時の年齢が20歳以上59歳以下の者、(3)軽症・中等症に分類される通年性アレルギー性鼻炎の自覚症状がある者、(4)事前検査時のアレルギー検査で血清中特異的IgE(ダニまたはハウスダストのいずれか)が陽性または疑陽性の者、(5)試験責任医師又は試験分担医師が適格であると判定した者、とした。
研究対象者として選定された96名を年齢、性別及び鼻症状(重症度分類スコア)で層別した。その後、1群あたり48名となるように、乱数発生法を用いてランダムにプラセボ食品摂取群(プラセボ群)と被験食品摂取群(βカロテン群)の2群に分けた。なお、盲検化の対象は、試験に関与する者全てであり、解析対象者が固定されるまで割付表は開鍵しなかった。
βカロテンを含む野菜・果実ミックスジュース(原材料:ニンジン、リンゴ、クエン酸、香料、195mL/本)を被験食品として、βカロテンを含まない野菜・果実ミックスジュース(原材料:ニンジン、リンゴ、レモン、クエン酸、香料、195mL/本)をプラセボ食品として使用した。被験食品及びプラセボ食品1本あたりの栄養成分を表3に示した。製造方法及び管理方法は実施例2と同様に行った。
全ての研究対象者には、試験食品摂取期間中、試験食品を1日1本、毎日摂取させた。試験前観察開始日から試験食品摂取完了まで毎日、重症度分類スコアを記録させた。JRQLQアンケートは試験食品摂取-6、0、2、4、6、8週の計6回記入させた。また、試験期間中は、実施例2と同様の制限事項を遵守させた。
主評価項目として、重症度分類の鼻4項目(くしゃみ、鼻汁、鼻閉、鼻症状)を評価した。重症度分類スコアは生活日誌に記録した値を前観察期間の2週間,試験食品摂取期間は2週間毎に平均した値を用いた。
各週での実測値や変化量の群間比較にMann-WhitneyのU検定を、0週との群内比較にはBonferroni補正により多重性を考慮したWilcoxonの符号順位検定を用いた。いずれも有意水準5%で検定を行った。統計解析ソフトにはEZR(EZR Version 1.40、Rコマンダー Version 2.5-1)及びSPSS(Ver.15.0J)を用いた。なお、各評価項目は、平均値±標準偏差で表記した。図6から図8において、βカロテン群とプラセボ群との比較で有意差が示された値に*:p<0.05を、試験食品摂取0週との比較で有意差が示された値には、†:p<0.05、††:p<0.01及び†††:p<0.001を付した。
重症度分類スコアの実測値および試験食品摂取0週からの変化量(Δ値)を図6に示した。鼻の重症度分類スコアにおいて、βカロテン群はプラセボ群と比較して、鼻汁と鼻症状の変化量(ともに摂取2週)で有意な低下が確認された。目の重症度分類スコアにおいて、実測値、変化量共に、βカロテン群とプラセボ群との間に有意な差は確認されなかった。一方、摂取0週との比較では、βカロテン群、プラセボ群ともに、目のかゆみ、流涙、目症状の3項目すべてで有意な改善が確認された。
Claims (4)
- ヒトのアレルギー性鼻炎症状改善用組成物であって、
前記アレルギー性鼻炎症状は、目症状及び鼻症状のうち少なくとも1つであり、
その寄与成分は、βカロテンであり、
前記組成物に含まれるβカロテンは、1日当たりの摂取量として4.0mg以上15mg以下である。 - ヒトのアレルギー性鼻炎症状改善用組成物であって、
前記アレルギー性鼻炎症状は、涙目、くしゃみ、鼻のかゆみ及び鼻づまりのうち少なくとも1つであり、
その寄与成分は、βカロテンであり、
前記組成物に含まれるβカロテンは、1日当たりの摂取量として4.0mg以上15mg以下である。 - 請求項1又は2の組成物であって、
前記アレルギー性鼻炎症状は、くしゃみである。 - アレルギー性鼻炎症状に起因するくしゃみ抑制用組成物であって、
その寄与成分は、βカロテンである。
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