JP7142856B2 - 金属材の耐食性試験方法及び耐食性試験装置 - Google Patents
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Description
また、前記容器は、前記基端側開口部を有する容器本体と、前記容器本体の先端側に接続され、前記先端側開口部を有する筒状のノズル部とを備えている。本構成によれば、測定によりノズル部が汚染された場合であっても、ノズル部を交換することにより、新たな測定が可能となり、装置の利便性が向上する。また、ノズル部を交換することにより、液滴が吐出される先端側開口部の開口径を容易に調節することができる。
そして、前記ノズル部内部の前記先端側開口部側にスポンジ部材が配置されており、前記ノズル部内部の前記容器本体側から前記先端側開口部側に延びるように糸状部材が配置されており、前記糸状部材は前記スポンジ部材に接触している。本構成によれば、容器内部、特にノズル部内部の電解液に気泡が生じた場合であっても、容器本体に収容された電解液が糸状部材に浸透するとともにノズル部の先端側開口部側に配置されたスポンジ部材まで到達する。そして、スポンジ部材まで到達した電解液はスポンジ部材に浸透した状態で保持される。そうして、先端側開口部からの電解液の液滴の吐出を確保するとともに、糸状部材及びスポンジ部材により、液滴と容器本体側の電解液との接続も確保される。
図1は、本実施形態に係る金属材の耐食性試験装置1を模式的に示す図である。図2は、本実施形態に係る耐食性試験装置の測定対象であるコンデンサR(金属材)の構造を示している。なお、図1に示す測定対象である金属材は、コンデンサRであり、図2の符号Aで示す部分を拡大したものである。また、図3は耐食性試験装置1の測定部11、図4は容器本体3、図5はノズル部4を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る金属材の耐食性試験装置1は、参照電極2に対するコンデンサRの測定部位の電位を測定することによりコンデンサRの測定部位における耐食性を評価する装置である。耐食性試験装置1は、参照電極2を含む測定部11と、参照電極2及びコンデンサRのチューブ部R1に配線13,14により電気的に接続された電位計12(電位測定部)とを備えている。測定部11は、基端側開口部31と先端側開口部41とを備えた筒状の容器30を備えている。筒状の容器30には、電解液6が収容されている。参照電極2は、容器30の基端側開口部31から容器30内に挿入されており、容器30内に収容された電解液6に浸漬されている。
図2に示すコンデンサRは、例えば自動車用の熱交換器である。コンデンサRは、チューブ部R1、フィン部R2(測定部位)、及びこれらチューブ部R1とフィン部R2とを接合させるフィレット部R3を備えている。コンデンサRの上記3つの部材の中で、チューブ部R1は冷媒の通路であり、腐食により孔が形成されると冷媒の漏れにつながることから、最も耐食性を確保すべき部材である。従って、フィン部R2、フィレット部R3、そしてチューブ部R1の順に電位が高くなるように金属材料の種類を調整して、フィン部R2から腐食が始まるように構成されている。具体的に、例えば、アルミニウム製のコンデンサの場合、フィン部R2は、亜鉛を含有するアルミニウム-マンガン系合金製、フィレット部R3はアルミニウム-シリコンろう材、チューブ部R1は、アルミニウム-マンガン系合金及び純アルミニウム製の芯材に亜鉛の防食層を形成した構成等が採用されている。
電位計12及び配線13,14は、特に限定されるものではなく、一般的に公知のものを採用することができる。
参照電極としては、電気化学測定に用いられる一般的な参照電極を使用することができ、例えば銀/塩化銀電極、カロメル電極、水銀/硫酸水銀電極、水銀/酸化水銀電極、パラジウム/水素電極等を用いることができる。
電解液6は、電気化学測定に用いられる一般的な電解液を使用することができるが、一般に金属材が曝され得る腐食液を模擬した溶液を使用することが好ましく、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸カリウム、リン酸カルシウム、酒石酸水素カリウム等の水溶液である。電解液の濃度は、腐食液を模擬した溶液を採用する観点から、例えば1~10質量%程度とすることができる。
容器30は、図3に示すように、基端側開口部31を有する容器本体3と、先端側開口部41を有する筒状のノズル部4とを備えている。ノズル部4は、容器本体3の先端側に接続されている。
次に、本実施形態に係る耐食性試験装置1を用いた耐食性試験方法について説明する。
まず、測定対象である金属材、すなわちコンデンサRを準備する。測定値の安定性を確保するため、測定前に、コンデンサRの測定部位の表面を例えばアセトン等の溶剤で拭き取り(以下、「アセトン処理」と称することがある。)、表面の油分等を除去することが好ましい。
次に、測定部11の準備を行う。容器本体3とノズル部4とを接続し、容器30内部に電解液6を注入する。なお、容器30内の電解液6に気泡が見られる場合は、容器30に振動を与えたり、細い糸等を容器30内に挿入したりして気泡を予め取り除いておくことが好ましい。
図3に示すように、電解液6に作用する重力により、先端側開口部41から容器30内部の電解液6が吐出され、液滴61が形成される。そして、液滴61の表面張力と重力との釣りあいにより、液滴61は先端側開口部41の先に形成されたまま、落下することなく保持される。すなわち、先端側開口部41から吐出された電解液6の液滴61は、容器30内部の電解液6と連続した状態でその表面張力により先端側開口部41の先に保持されている状態である。
液滴61をコンデンサRのフィン部R2に接触させた状態で、電位計12によりフィン部R2と参照電極2間の電位差を測定する。測定時間は、電位を安定させる観点から、例えば15秒程度以上、好ましくは20秒程度以上1分程度以下とすることができる。
測定により得られた電位の値から、測定部位の耐食性を評価する。具体的には、電位が高い程耐食性は高く、電位が低い程耐食性は低いと判断することができる。例えば、同一測定部位の電位の時間変化を測定することにより、電位の低下が観測された場合には、耐食性が低下していると評価することができる。また、複数の測定部位について、電位を測定し、比較することで、当該複数の測定部位のうち、耐食性の高い部位と低い部位とを判別することができる。
本実施形態に係る耐食性試験装置1を用いた耐食性試験方法は、液滴61をフィン部R2に接触させ、参照電極2に対するフィン部R2の電位を測定することにより、当該電位に基づいてコンデンサRのフィン部R2の耐食性を評価することができる。そして、液滴61をフィレット部R3やチューブ部R1に接触させることにより、これらフィレット部R3やチューブ部R1の電位測定及び耐食性評価が可能となる。上述のごとく、コンデンサRの部位毎の電位は、チューブ部R1、フィレット部R3、フィン部R2の順に低くなるように構成され、フィン部R2から腐食が始まるように設定されている。各部位毎の電位を測定し、それらの耐食性を評価することで、コンデンサRの劣化の程度を推測したり、コンデンサRの劣化の原因を推測したりすることができる。
以下、本開示に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
実施形態1,2では、金属材としてコンデンサRを例に挙げて説明したが、金属材は、コンデンサRに限らず、金属製の部材であればよい。具体的には例えば、自動車部品、家電製品、建材等の金属製の部材が挙げられる。自動車部品としては、自動車用ラジエータ、エバポレータ、自動車用内外装部品、エンジン部品などが挙げられる。また、スポット溶接などの溶接部位、製品のエッジ部分、塗装被膜や酸化被膜などの被膜を有する部品、模擬泥などを表面に塗布した状態の部品であってもよい。また、金属材は、金属製部分と金属以外の材質の部分とを備えた複合部材であってもよい。この場合、金属以外の材質の部分は、樹脂製、繊維強化樹脂製その他種々の添加材を含む樹脂製、セラミック製等であってもよい。
本開示の耐食性試験方法により、コンデンサの部位毎の電位を測定し、コンデンサの部位毎の耐食性を評価した。結果を図9に示す。
参照電極は銀/塩化銀電極(東亜ディーケーケー社製HS-205C)、電解液は5質量%塩化ナトリウム水溶液を使用した。容器本体はテフロン(登録商標)製の成形部品として作製した。ノズル部は、ピペットチップ(アイビスピペットチップI-503Y イエロー 1~200μL)を用いた。糸状部材はフッ素樹脂製凧糸、スポンジ部材は連泡スポンジを使用した。
コンデンサとして、市販のアルミニウム製自動車用PF型コンデンサを用いた。
実施例1の新品では、符号E1a、E1bで示すように、チューブ部に比べ、フィン部の方が、電位が低く、腐食されやすい、すなわち耐食性が低いことが判った。これは、一般的なコンデンサの設計と整合する結果である。
実施例4として、スポット溶接を施したステンレス鋼板の耐食性試験を行った。結果を図10に示す。
上記コンデンサの耐食性試験で用いた測定部の構成と同一である。
図10の上部に示すように、スポット溶接部SWを備えたステンレス鋼板M1について、スポット溶接部SWの中心SW1から二点鎖線上における所定距離の測定位置において、本開示の耐食性試験方法により電位を測定し、耐食性を評価した。
11 測定部
12 電位計
2 参照電極
3 容器本体
30 容器
31 基端側開口部
4 ノズル部
41 先端側開口部
42 糸状部材
43 スポンジ部材
6 電解液
61 液滴
L1 長さ
L2 (先端側開口部41の)開口径
R コンデンサ(金属材)
R2 フィン部(測定部位)
Claims (7)
- 参照電極に対する金属材の電位に基づいて該金属材の耐食性を評価する耐食性試験方法であって、
前記参照電極と前記金属材との間に両者に接触するように電解液が配置されており、
前記電解液は、基端側開口部と先端側開口部とを備えた筒状の容器に収容されており、
前記参照電極は、前記基端側開口部を通じて前記容器内に挿入されるとともに、前記電解液に浸漬されており、
前記容器の前記先端側開口部から吐出された前記電解液の液滴が、該容器内部の該電解液と連続した状態でその表面張力により該先端側開口部の先に保持されており、
前記電解液の前記液滴は前記金属材の測定部位に接触しており、
前記容器内部の前記先端側開口部側にスポンジ部材が配置されており、
前記容器内部の前記基端側開口部側から前記先端側開口部側に延びるように糸状部材が配置されており、
前記糸状部材は前記スポンジ部材に接触している
ことを特徴とする金属材の耐食性試験方法。 - 請求項1において、
前記液滴の径は、0.1mm以上3.5mm以下である
ことを特徴とする金属材の耐食性試験方法。 - 請求項1又は請求項2において、
前記参照電極は銀/塩化銀電極であり、
前記電解液は塩化ナトリウム水溶液である
ことを特徴とする金属材の耐食性試験方法。 - 参照電極に対する金属材の電位に基づいて該金属材の耐食性を評価する耐食性試験装置であって、
基端側開口部と先端側開口部とを備えた筒状の容器と、
前記容器に収容された電解液と、
前記基端側開口部から前記容器内に挿入され、前記電解液に浸漬された前記参照電極と、
前記参照電極と、前記金属材と、に電気的に接続された電位測定部とを備え、
前記容器は、
前記基端側開口部を有する容器本体と、
前記容器本体の先端側に接続され、前記先端側開口部を有する筒状のノズル部とを備えており、
前記ノズル部内部の前記先端側開口部側にスポンジ部材が配置されており、
前記ノズル部内部の前記容器本体側から前記先端側開口部側に延びるように糸状部材が配置されており、
前記糸状部材は前記スポンジ部材に接触しており、
前記容器の前記先端側開口部から吐出された前記電解液の液滴が、該容器内部の該電解液と連続した状態でその表面張力により該先端側開口部の先に保持されており、
前記液滴を前記金属材の測定部位に接触させた状態で、前記電位測定部により前記参照電極に対する該測定部位の前記電位を測定する
ことを特徴とする金属材の耐食性試験装置。 - 請求項4において、
前記容器の前記先端側開口部の開口径は、0.1mm以上3.5mm以下である
ことを特徴とする金属材の耐食性試験装置。 - 請求項4又は請求項5において、
前記参照電極の前記電解液に浸漬された部分の先端部分から前記容器の前記先端側開口部までの前記容器の長さは、前記容器の前記先端側開口部の開口径の5倍以上500倍以下である
ことを特徴とする金属材の耐食性試験装置。 - 請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
前記参照電極は銀/塩化銀電極であり、
前記電解液は塩化ナトリウム水溶液である
ことを特徴とする金属材の耐食性試験装置。
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US20030178321A1 (en) | 2000-09-22 | 2003-09-25 | Markus Buchler | Electrochemical cell, use of the electrochemical cell, and method for electrolytically contacting and electrochemically influencing a surface |
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JP3272456B2 (ja) * | 1993-03-02 | 2002-04-08 | ハリマ化成株式会社 | 金属表面の酸化被膜の測定方法 |
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Title |
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(株)島津テクノリサーチ,ヘキサブロモビフェニル,国立環境研究所ウェブサイト,日本,国立環境研究所,2005年 |
容器の素材や形状による液だれの発生について,自然科学観察コンクール,日本,毎日新聞社,2018年02月17日 |
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