用語「電気光学」は、材料またはディスプレイに適用されるように、画像化技術分野におけるその従来的な意味で使用され、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すために本明細書で使用され、材料は、材料への電場の印加によって、その第1からその第2の表示状態に変化させられる。光学特性は、典型的に、ヒトの眼に知覚可能な色であるが、それは、光学透過率、反射率、ルミネッセンス、または、機械読み取りのために意図されるディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射の変化の意味における擬似色等の別の光学特性であり得る。
用語「グレー状態」は、画像化技術分野におけるその従来的な意味で本明細書で使用され、2つの極端なピクセルの光学状態の中間の状態を指し、必ずしも黒と白とのこれらの2つの極端な状態間の遷移を意味するわけではない。用語「単色」は、以降では、介在グレー状態を伴わず、ピクセルをそれらの2つの極端な光学状態のみに駆動する駆動スキームを指すために使用され得る。
いくつかの電気光学材料は、材料が固体外部表面を有するという意味において固体であるが、材料は、多くの場合、内部の液体充填空間または気体充填空間を有し得る。固体電気光学材料を使用するそのようなディスプレイは、以降では、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と称され得る。したがって、用語「固体電気光学ディスプレイ」は、回転二色部材ディスプレイ、カプセル化された電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイ、およびカプセル化された液晶ディスプレイを含む。
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイを指すために本明細書で使用され、ディスプレイは、第1または第2の表示状態のうちのいずれか一方を示すために、有限持続時間のアドレッシングパルスを用いて、任意の所与の要素が駆動されてから、アドレッシングパルスが終了した後、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレッシングパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が続くようなものである。米国特許第7,170,670号では、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極端な黒および白状態においてだけではなく、それらの中間グレー状態においても、安定しており、同じことは、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切には、双安定ではなく、「多安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、本明細書では、双安定および多安定ディスプレイの両方を対象とするために使用され得る。
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、公知である。
(a)例えば、米国特許第5,808,783号(特許文献1)、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に説明されるような回転二色部材タイプ;
(b)エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成される電極と、電極に付着した可逆的色変化が可能な複数の染色分子とを備えているナノクロミックフィルムの形態におけるエレクトロクロミック媒体(例えば、米国特許第6,301,038号(特許文献2)、第6,870,657号、および第6,950,220号を参照);
(c)Hayes,R.A.,et al,“Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting”,Nature,425,383-385 (2003)、および米国特許第7,420,549号(特許文献3)に説明されるようなエレクトロウェッティングディスプレイ。
長年にわたり集中的な研究および開発の関心の対象である、あるタイプの電気光学ディスプレイは、複数の帯電粒子が電場の影響下で流体を通して移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定性、および、低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期画質に関する問題は、それらの広範な利用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降しやすく、これらのディスプレイの不十分な使用可能寿命をもたらす。
上記のように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。殆どの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生産されることもできる(例えば、Kitamura,T.,et al. “Electrical toner movement for electronic paper-like display”,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1、およびYamaguchi,Y.,et al.,“Toner display using insulative particles charged triboelectrically”,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4を参照)。同様に、米国特許第7,321,459号(特許文献4)および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベース電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直プレーンに配置される看板で、媒体がそのような沈降を可能にする向きで使用されるとき、粒子沈降に起因して液体ベース電気泳動媒体と同一のタイプの問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、液体の粘度と比較してガス状懸濁流体のより低い粘度が電気泳動粒子のより高速の沈降を可能にするので、液体ベース電気泳動媒体よりもガスベース電気泳動媒体において深刻な問題であると考えられる。
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願は、カプセル化された電気泳動および他の電気光学媒体に使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化された媒体は、多数の小型カプセルを含み、それらの各々は、それ自体が、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを含む。典型的に、カプセルは、それら自体がポリマー結合剤内に保持され、2つの電極間に位置付けられる密着した層を形成する。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号(特許文献5)および第7,679,814号を参照);
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号(特許文献6)および第7,411,719号を参照);
(c)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,825,829号(特許文献7)、第6,982,178号、第7,236,292号、第7,443,571号、第7,513,813号、第7,561,324号、第7,636,191号、第7,649,666号、第7,728,811号、第7,729,039号、第7,791,782号、第7,839,564号、第7,843,621号、第7,843,624号、第8,034,209号、第8,068,272号、第8,077,381号、第8,177,942号、第8,390,301号、第8,482,852号、第8,786,929号、第8,830,553号、第8,854,721号、および第9,075,280号、ならびに米国特許出願公開第2009/0109519号、第2009/0168067号、第2011/0164301号、第2014/0027044号、第2014/0115884号、および第2014/0340738号を参照);
(d)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、ならびにディスプレイで使用される方法(例えば、米国特許第D485,294号、第6,124,851号、第6,130,773号、第6,177,921号、第6,232,950号、第6,252,564号、第6,312,304号、第6,312,971号、第6,376,828号、第6,392,786号、第6,413,790号、第6,422,687号、第6,445,374号、第6,480,182号、第6,498,114号、第6,506,438号、第6,518,949号、第6,521,489号、第6,535,197号、第6,545,291号、第6,639,578号、第6,657,772号、第6,664,944号、第6,680,725号、第6,683,333号、第6,724,519号、第6,750,473号、第6,816,147号、第6,819,471号、第6,825,068号、第6,831,769号、第6,842,167号、第6,842,279号、第6,842,657号、第6,865,010号、第6,967,640号、第6,980,196号、第7,012,735号、第7,030,412号、第7,075,703号、第7,106,296号、第7,110,163号、第7,116,318号、第7,148,128号、第7,167,155号、第7,173,752号、第7,176,880号、第7,190,008号、第7,206,119号、第7,223,672号、第7,230,751号、第7,256,766号、第7,259,744号、第7,280,094号、第7,327,511号、第7,349,148号、第7,352,353号、第7,365,394号、第7,365,733号、第7,382,363号、第7,388,572号、第7,442,587号、第7,492,497号、第7,535,624号、第7,551,346号、第7,554,712号、第7,583,427号、第7,598,173号、第7,605,799号、第7,636,191号、第7,649,674号、第7,667,886号、第7,672,040号、第7,688,497号、第7,733,335号、第7,785,988号、第7,843,626号、第7,859,637号、第7,893,435号、第7,898,717号、第7,957,053号、第7,986,450号、第8,009,344号、第8,027,081号、第8,049,947号、第8,077,141号、第8,089,453号、第8,208,193号、第8,373,211号、第8,389,381号、第8,498,042号、第8,610,988号、第8,728,266号、第8,754,859号、第8,830,560号、第8,891,155号、第8,989,886号、第9,152,003号、および第9,152,004号、ならびに米国特許出願公開第2002/0060321号、第2004/0105036号、第2005/0122306号、第2005/0122563号、第2007/0052757号、第2007/0097489号、第2007/0109219号、第2009/0122389号、第2009/0315044号、第2011/0026101号、第2011/0140744号、第2011/0187683号、第2011/0187689号、第2011/0292319号、第2013/0278900号、第2014/0078024号、第2014/0139501号、第2014/0300837号、第2015/0171112号、第2015/0205178号、第2015/0226986号、第2015/0227018号、第2015/0228666号、および第2015/0261057号、ならびに国際出願公開第WO00/38000号、欧州特許第1,099,207B1号および第1,145,072B1号を参照);
(e)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号(特許文献8)および第7,839,564号を参照);
(f)ディスプレイを駆動する方法(例えば、米国特許第7,012,600号(特許文献9)および第7,453,445号を参照);
(g)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号(特許文献10)および第8,009,348号を参照);
(h)米国特許第6,241,921号(特許文献11)、第6,950,220号、第7,420,549号、第8,319,759号、および第8,994,705号、ならびに米国特許出願公開第2012/0293858号に説明されるような非電気泳動ディスプレイ。
前述の特許および出願の多くは、カプセル化された電気泳動媒体内の別々のマイクロカプセルを包囲する壁が、連続相と置換され得、したがって、いわゆる高分子分散電気泳動ディスプレイを生産し、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、高分子材料の連続相とを備え、そのような高分子分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別々の液滴が、別々のカプセル膜が各個々の液滴に関連付けられない場合でも、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのような高分子分散電気泳動媒体は、カプセル化された電気泳動媒体の亜種と見なされる。
電気泳動媒体は、多くの場合、不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子がディスプレイを通した可視光の透過を実質的に遮断するため)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、ある表示状態が、実質的に不透明であり、ある表示状態が、光透過性である、いわゆる「シャッタモード」で動作するようにされることができる。例えば、米国特許第5,872,552号(特許文献12)、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイに類似するが、電場強度の変動に依拠する、誘電泳動ディスプレイは、類似モードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッタモードで動作することが可能であり得る。シャッタモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイ用の多層構造において有用であり得、そのような構造では、ディスプレイの視認画面に隣接する少なくとも1つの層は、シャッタモードで動作して、視認画面からより遠くにある第2の層を露出させるか、または隠す。
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的に、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることがなく、多種多様な可撓性および堅い基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する。(用語「印刷」の使用は、全ての形態の印刷およびコーティングを含むことを意図しており、限定ではないが、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング、ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング等のロールコーティング、グラビアコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電気印刷プロセス、熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動析出(米国特許第7,339,715号(特許文献13)を参照)、ならびに他の類似技術を含む。)したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は(種々の方法を使用して)印刷され得るので、ディスプレイ自体は、安価に作製され得る。
他のタイプの電気光学材料も、本発明で使用され得る。
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産に非常に適した固体電気光学ディスプレイ(カプセル化された電気泳動ディスプレイを含む)を組み立てる方法を説明している。本質的に、本特許は、光透過性導電性層、導電性層と電気的に接触する固体電気光学媒体の層、接着剤層、および剥離シートを順に備えている、いわゆる「フロントプレーンラミネート」(「FPL」)を説明している。典型的に、光透過性導電性層は、光透過性基板上に支持され、好ましくは、基板が永久的な変形を伴わずに、(例えば)直径10インチ(254mm)のドラムの周囲に手動で巻かれ得るという意味で可撓性である。用語「光透過性」は、そのように指定される層が、その層を通して見ている観察者が、電気光学媒体の表示状態の変化を観察することを可能にするために十分な光を透過させ、通常、導電性層および隣接する基板(存在する場合)を通して視認されることを意味するために、本特許および本明細書で使用され、電気光学媒体が非可視波長における反射率の変化を示す場合、用語「光透過性」は、当然ながら、関連する非可視波長の透過を指すと解釈されるべきである。基板は、典型的に、ポリマーフィルムであり、通常、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは、約2~約10ミル(51~254μm)の範囲内の厚さを有するであろう。導電性層は、便宜上、例えば、アルミニウムもしくはITOの薄金属または金属酸化物層である、または伝導性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えば、E.I. du Pont de Nemours & Company(Wilmington DE)からの「アルミ被覆Mylar」(「Mylar」は、登録商標である)として市販されており、そのような市販の材料は、フロントプレーンラミネートにおける良好な結果と共に使用され得る。
そのようなフロントプレーンラミネートを使用した電気光学ディスプレイの組み立ては、剥離シートをフロントプレーンラミネートから除去し、接着剤層をバックプレーンに接着させるために効果的な条件下で接着剤層をバックプレーンと接触させ、それによって、接着剤層、電気光学媒体の層、および導電性層をバックプレーンに固定することによって、達成され得る。このプロセスは、フロントプレーンラミネートが、典型的に、ロールツーロールコーティング技術を使用して大量生産され、次いで、具体的バックプレーンとの使用に要求される任意のサイズの片に切断され得るので、大量生産に非常に適している。
前述の米国特許第7,561,324号は、いわゆる「二重剥離シート」を説明しており、それは、本質的に、前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーンラミネートの簡略化バージョンである。二重剥離シートの1つの形態は、2つの接着剤層間に挟まれた固体電気光学媒体の層を備え、接着剤層の一方または両方は、剥離シートによって被覆される。二重剥離シートの別の形態は、2つの剥離シート間に挟まれた固体電気光学媒体の層を備えている。二重剥離フィルムの両方の形態は、すでに説明されたフロントプレーンラミネートから電気光学ディスプレイを組み立てるためのプロセスに概して類似するプロセスで使用するために意図されるが、2つの分離したラミネート加工を伴い、典型的に、第1のラミネート加工では、二重剥離シートは、正面電極にラミネート加工されて、正面サブアセンブリを形成し、次いで、第2のラミネート加工では、正面サブアセンブリは、バックプレーンにラミネート加工されて、最終的なディスプレイを形成するが、これらの2つのラミネート加工の順序は、所望される場合、逆転され得る。
米国特許第7,839,564号(特許文献14)は、いわゆる「反転フロントプレーンラミネート」を説明しており、それは、前述の米国特許第6,982,178号に説明されるフロントプレーンラミネートの変形である。この反転フロントプレーンラミネートは、光透過性保護層および光透過性導電性層のうちの少なくとも1つ、接着剤層、固体電気光学媒体の層、ならびに剥離シートを順に備えている。この反転フロントプレーンラミネートは、電気光学層と正面電極または正面基板との間にラミネート加工接着剤の層を有する電気光学ディスプレイを形成するために使用され、接着剤の第2の典型的に薄い層が、電気光学層とバックプレーンとの間に存在することも、そうではないこともある。そのような電気光学ディスプレイは、良好な解像度を良好な低温性能と組み合わせることができる。
すでに示されているように、前述のフロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネート、および二重剥離フィルムは、ロールツーロールプロセスによる生産に非常に適しており、したがって、個々のディスプレイのために必要とされるサイズ片に切断され、適切なバックプレーンにラミネート加工され得る材料のロールの形態で、フロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネート、または二重剥離フィルムを生産する。しかしながら、同様にすでに示されているように、必要なラミネート加工を達成するために、ラミネート加工接着剤の層は、通常、電気光学層自体とバックプレーンとの間に存在する必要があり、このラミネート加工接着剤の層は、2つの電極間の最終的なディスプレイの中に残留する。このラミネート加工接着剤層の存在は、ディスプレイの電気光学特性に有意な影響を及ぼす。必然的に、電極間の電圧降下の一部は、ラミネート加工接着剤層内で起こり、したがって、電気光学層を駆動するために利用可能な電圧を低減させる。ラミネート加工接着剤の効果は、より低い温度においてより大きくなる傾向があり、温度によるラミネート加工接着剤の効果のこの変動は、ディスプレイの駆動を複雑にする。ラミネート加工接着剤内の電圧降下は、低減させられることができ、ディスプレイの低温動作は、例えば、米国特許第7,012,735号および第7,173,752号に説明されるように、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムまたは他の材料で層をドープすることによって、ラミネート加工接着剤層の伝導度を増加させることによって、改良されることができる。しかしながら、このようにしてラミネート加工接着剤層の伝導度を増加させることは、ピクセルブルーミング(ピクセル電極における電圧の変化に応答して光学状態を変化させる電気光学層の面積が、ピクセル電極自体よりも大きい、現象)を増加させる傾向があり、このブルーミングは、ディスプレイの解像度を低減させる傾向がある。故に、このタイプのディスプレイは、明白なこととして、低温性能とディスプレイ解像度との間の妥協を本質的に要求する。
本発明の一側面は、電気光学層とバックプレーンとの間にラミネート加工接着剤層の存在を要求しない、電気光学ディスプレイの生産のためのプロセスに関し、これらのプロセスは、バックプレーン上に電気光学材料をコーティングすることを伴う。
本発明の第2の側面は、基板へのカプセル化された電気泳動媒体の適用のための新規のプロセスに関する。これらのプロセスは、本発明の第1の側面を補助するために使用され得るが、他のタイプのコーティングプロセスでも使用され得る。
前述のE Ink特許および出願に説明される電気泳動媒体、ならびに類似する従来技術の電気泳動媒体は、典型的に、電気泳動粒子と、電荷制御剤と、画像安定剤と、典型的に、ゼラチン/アカシアコアセルベート等の可撓性有機基質の中にカプセル化される、非極性液体中の凝集剤とを備えている。市販のディスプレイを生産するために、電極を支承する正面基板(前述の米国特許第6,982,178号を参照)、バックプレーン、または剥離シートであり得る基板上のカプセルの薄い層(好ましくは単層、米国特許第6,839,158号を参照)を被覆することが必要である。これまで、基板へのカプセル化された電気泳動媒体のコーティングは、典型的に、キャリア媒体中のカプセルのスラリが、スロットを通して、スロットに対して移動している基板上に押し進められるスロットコーティングによって達成されてきた。スロットコーティングは、コーティングされている材料の粘度および他の物理的特性に制限を課し、典型的に、コーティングされた材料のレオロジーを制御し、コーティングが、乾燥より先に流動せず、厚さに非一様性を生じさせないことを確実にするために、スロットコーティング添加物の添加を要求する。したがって、スロットコーティングでは、電気泳動カプセルは、典型的に、随意のラテックス結合剤、レオロジー修飾剤、イオンドーパント、および界面活性剤を含む水性スラリの形態で供給される。これらの添加物は、最終的な乾燥した電気泳動媒体の中に残留し、その電気光学特性を含むその特性に影響を及ぼし得る。
さらに、スロットコーティングは、電気泳動媒体を連続ウェブに適用するために非常に適しているが、スロットダイマニホールド内のカプセルスラリの沈降および自己分離が、そのような「中断された」カプセル堆積プロセス中に問題になるので、移動ベルト上に位置するウェブの別々のエリアまたは別々の部品(例えば、個々のバックプレーン)の「パッチ」コーティングにあまり適していない。スロットコーティングは、概して、非平面的な基板に有用ではなく、それは、カプセル化された電気泳動媒体が、構造上の特徴を含む、3次元物体をコーティングするために非常に適しているので、残念である。スロットコーティングに関する他の問題は、コーティングスロットダイと平行なびびりのような筋(これらの筋は、カプセルの期間的集群または詰まりに起因すると考えられる)、およびコーティングの方向に筋をつけること(カプセルの詰まりまたはスロットコーティングスロットダイへのカプセルの送達における非一様な流動に起因すると考えられる)を含む。
スロットコーティングに関する前述の問題は、パッチコーティング、および非平面的な基板、ならびに平面的な物体およびウェブのコーティングを克服することが可能な代替コーティング技術の模索をもたらしている。この目的のために考慮されている1つの確立されているコーティング技術は、スプレーコーティング、すなわち、カプセル分散の空気圧式噴霧化および堆積である。スプレーコーティングは、成熟した技術であるが、技術をカプセル堆積に適用するための従来技術の試行は、種々の欠陥および故障モードを受けている。それらが、典型的に、可撓性カプセル壁を有するので、カプセルは、噴霧化ステップ中または標的への衝突時、噴霧中、変形し、時として、破裂する。電気泳動粒子、流体等の放出を含む有意なカプセル破裂の結果は、非常に重大であるので、本発明者らが認識している限り、容認不可能なレベルの破裂したカプセルは、単独で、カプセル化された電気泳動媒体をスプレーコーティングするための全ての以前の試行を破綻させるために十分となっている。本発明の第2の側面は、これらの問題を低減させ、または排除するスプレーコーティングプロセスを提供する。
本発明の第3の側面は、基板上のカプセルの密接な充塞を促進するために、コーティング中に基板へのカプセルの接着を低減させるためのプロセスに関する。この接着低減プロセスは、主に、カプセルのスプレーコーティングとの使用のために意図されているが、他のカプセル堆積技法でも有用であり得る。
前に記述されたように、電気泳動ディスプレイの生産では、概して、基板上にカプセルの単層を形成することが好ましい。しかしながら、基板(典型的に、ITO/PETフィルム、PET/剥離フィルム、または任意のタイプのシリコーン剥離フィルム)上に電気泳動カプセルをコーティングするときに遭遇される一般的な問題は、カプセルが基板に強力に接着し、乾燥すると、それら自体を最適に充塞された単層に再配列することができないことである。種々のコーティング材料が、カプセル・基板接着を有意に低減させ、したがって、カプセルが、乾燥中に毛細管力を用いてそれら自体を再配列することを可能にすることが見出されている。残念ながら、スロットコーティング中に一般的であるように、そのようなコーティング材料が、ドクターブレードを採用するスロットコーティングプロセスで使用される場合、低減させられたカプセル・基板接着は、カプセルをドクターブレードを越えて適切に通過させず、代わりに、カプセルの大部分は、単純に、ドクターブレードの前に押し出され、基板上に非常にわずかなカプセルコーティングのみを残す。故に、基板上のカプセルの密接に充塞された単層の形成のための改良されたプロセスの必要性があり、本発明の第3の側面は、そのようなプロセスを提供しようとする。
本発明の第4の側面は、電気光学材料をオーバーコーティングし、電気光学層を平坦化するプロセス、および/または、電気光学層をカラーフィルタに取り付けられ得る透明正面電極に接着させるためのプロセスに関する。
カラーディスプレイが、単色白黒電気光学ディスプレイの上にカラーフィルタアレイ(CFA)を重層することによって形成され得、CFA要素は、バックプレーンのピクセル電極と整合されることが公知である(特に、米国特許第7,839,564号を参照)。そのようなCFAは、例えば、反復赤色、緑色、および青色ストライプ、または反復2×2赤色/緑色/青色/白色(透明)ピクセルパターンを有し得る。そのようなディスプレイの最も明るい状態は、電気光学層の全てのピクセルが白色であるときに達成され、したがって、全体として見て、CFA要素の吸収は、最も明るい状態がいかなる色合いも有していないであろうように、可視範囲にわたって一定であることが好ましい。
このようにして電気光学層の上にCFAを重層することは、輝度と色飽和との間のトレードオフにつながり、レンダリングすることが最も困難である色は、白色および黄色等の最も明るい色である。そのようなディスプレイは、達成可能な色の品質をなおもさらに限定するいくつかの光損失または汚染源にも悩まされる。これらは、以下を含む。
(a)全ての色の輝度を限定する電気光学層の白色状態による光の吸収:これは、電気光学層の白色領域に入射する光の50%と同量であり得る。
(b)他の色の不要な光による所望の色の汚染を引き起こす電気光学層の暗い状態による光の反射。
(c)ピクセルレベルにおけるコントラスト(「局所コントラスト」)は、ピクセルの縁における電気的効果(すなわち、画像「ブルーミング」)または電気光学層内の散乱長に関連する光学的効果(すなわち、「光学的ドットゲイン」)に起因して、ディスプレイ全体が白色状態から暗い状態に切り替えられる場合に測定されるコントラストよりも低くあり得る。
(d)ディスプレイ内の全内部反射に起因する光の損失:電気泳動および殆どの他の反射電気光学層がランバート反射体であるので、光の有意な割合が、ディスプレイの隣接する層間の少なくとも1つの表面における全内部反射のための臨界角を上回る法線に対する角度で反射され、失われ得る。
(e)照明視差:CFA要素が介在層によって電気光学層から有意に分離される場合、法線に対する十分に大きい角度でディスプレイに入射する光は、1つの色のカラーフィルタ要素を通過し、異なる色の要素を通してディスプレイから出射し、カラー画像の汚染および色シフトにつながり得る。
(f)視認視差:(e)と同一の理由により、視聴者が法線に対する十分に大きい角度でディスプレイを観察し、CFA要素が電気光学層から有意に分離される場合、視聴者は、意図されていないカラーフィルタ要素を通して反射率の変調を把握し得る。
電気光学ディスプレイが、米国特許第6,982,178号を参照して上で説明されるようなフロントプレーンラミネートを使用して形成されるとき、単一の接着剤層が、電気光学層とバックプレーンとの間に存在する。この接着剤層は、電気光学層とCFAとの間に配置されず(したがって、上で議論される問題の殆どに影響しない)、ディスプレイの電極間に存在し、したがって、画像ブルーミングに影響する。この接着剤層の存在はまた、電気光学層を横断して実際に起こる電圧降下を減退させ、それは、電気光学層の白色状態の反射率およびそのコントラスト比を限定する傾向がある。電気光学ディスプレイが、米国特許第7,561,324号を参照して上で説明されるような二重剥離フィルム、または米国特許第7,839,564号を参照して上で説明されるような反転フロントプレーンラミネートのいずれかを使用して、形成されるとき、典型的に、2つの接着剤層、すなわち、CFAと電気光学層との間の第1の層、および電気光学層とバックプレーンとの間の第2の層が、存在するであろう。第2の接着剤層は、すでに議論されているように、FPLに由来する接着剤層と同一の問題に影響し、第1の接着剤層は、少なくとも照明および視認視差問題に影響し、全内部反射問題にも影響し得る。
したがって、電極間の接着剤層の存在によって引き起こされる問題を低減または排除する電気光学ディスプレイを生産するプロセスの必要性がある。しかしながら、上で議論されるように、電気光学ディスプレイの製造が少なくとも1つのラミネート加工動作を必要とするので、最良のプロセスは、1つのみの薄い接着剤層の提供を伴い、本発明は、そのようなプロセスを提供しようとする。
付随する図面の図1は、本発明の第1のマスキングされたバックプレーンプロセスを受けるバックプレーンの概略上面図である。
図2Aは、図1の線2A-2Aに沿っているが、その上の電気光学材料の堆積後のバックプレーンを示す概略断面図である。
図2Bは、図2Aのそれに類似するが、マスキング層が除去された後のバックプレーンを示す概略断面図である。
図2Cは、光透過性導電性層と、ラミネート加工接着剤の層とを備えている、サブアセンブリを通した概略断面図である。
図2Dは、図2Aおよび2Bのそれらに類似するが、ラミネート加工接着剤の層を介した電気光学材料への正面電極および正面基板のラミネート加工後のバックプレーンを示す概略断面図である。
図3Aは、図2Aのそれに類似するが、本発明の第2のマスキングされたバックプレーンプロセスにおける同一の段階を示す概略断面図である。
図3Bは、図2Bおよび3Aのそれらに類似するが、電気光学材料に重なるラミネート加工接着剤の層の形成後であるがマスキング層の除去前のバックプレーンを示す概略断面図である。
図3Cは、図3Bのそれに類似するが、マスキング層の除去後のバックプレーンを示す概略断面図である。
図3Dは、図2Dおよび3Cのそれらに類似するが、ラミネート加工接着剤の層を介した電気光学材料への正面電極および正面基板のラミネート加工後のバックプレーンを示す概略断面図である。
図4Aは、図2Aおよび3Aのそれらに類似するが、2つの別個のマスキング層を使用する本発明の第3のマスキングされたバックプレーンプロセスにおける同一の段階を示す概略断面図である。
図4Bは、図4Aのそれに類似するが、第2のマスキング層の除去後のバックプレーンを示す概略断面図である。
図4Cは、図4Aおよび4Bのそれらに類似するが、電気光学材料に重なる光透過性正面電極層の形成後のバックプレーンを示す概略断面図である。
図4Dは、図4A-4Cのそれらに類似するが、第1のマスキング層の除去後のバックプレーンを示す概略断面図である。
図5は、2つのマスキング層の適用後であるが電気光学層の堆積の前の第3のマスキングされたバックプレーンプロセスで使用されるバックプレーンの図1に類似する概略上面図である。
図6は、本発明のスプレーコーティングプロセスで使用される単純なスプレーコーティングノズルを通した概略断面図である。
図7は、本発明のスプレーコーティングプロセスで使用されるより複雑なスプレーコーティングノズルを通した概略断面図である。
図8は、図7の点線のボックス内に位置するノズルの一部の拡大図である。
図9は、本発明のスプレーコーティングプロセスで使用される好ましいパラメータを図示するグラフである。
図10は、本発明のマスキングされたスプレーコーティングプロセスによって生産される第1の電気泳動ディスプレイの上面図である。
図11は、本発明のマスキングされたスプレーコーティングプロセスによって生産される第2の電気泳動ディスプレイの上面図である。
図12A-12Hは、ピペットから顕微鏡スライド上に堆積させられるカプセルを使用する本発明の膨潤性ポリマーコーティングプロセスの実験的実証を示す低速度撮影顕微鏡写真である。
図12A-12Hは、ピペットから顕微鏡スライド上に堆積させられるカプセルを使用する本発明の膨潤性ポリマーコーティングプロセスの実験的実証を示す低速度撮影顕微鏡写真である。
図12A-12Hは、ピペットから顕微鏡スライド上に堆積させられるカプセルを使用する本発明の膨潤性ポリマーコーティングプロセスの実験的実証を示す低速度撮影顕微鏡写真である。
図13は、カラーフィルタアレイを使用し、前述で説明されたような二重剥離フィルムを使用して生産される従来技術のカラーディスプレイを通した概略断面図である。
図14は、図13のそれに類似するが、本発明のオーバーコート層プロセスによって生産されるカラーディスプレイを通して得られた概略断面図である。
図15は、従来技術の本来のカラーディスプレイを通した図13および14のそれに類似する概略断面図である。
図16は、図13-15のそれらに類似するが、本発明のオーバーコート層プロセスによって生産される本来のカラーディスプレイを通して得られた概略断面図である。
すでに示されているように、本発明は、主に下記で別個に説明されるであろう、いくつかの異なる側面を有する。しかしながら、単一の物理的プロセスが、本発明の2つ以上の側面を利用し得ることを理解されたい。したがって、例えば、本発明のマスキングされたバックプレーンプロセスは、本発明のエアスプレーコーティングプロセスを利用し、本発明の膨潤性コーティングプロセスによって処理されるバックプレーン上に電気光学材料を堆積させ得、電気光学材料の層は、その後、本発明のオーバーコート層プロセスによって処理され得る。
(マスキングされたバックプレーンプロセス)
上で示されるように、本発明のマスキングされたバックプレーンプロセスは、電気光学ディスプレイにおける使用のためのサブアセンブリを生産するプロセスを提供する。このプロセスは、バックプレーンの第1のエリア内に位置する少なくとも1つの電極を備えているバックプレーンを提供することと、マスキング層で電極から間隔を置かれたバックプレーンの第2のエリアを被覆することと、電気光学材料の層で、その上にマスキング層を有するバックプレーンをコーティングすることと、バックプレーンから、マスキング層およびその上の電気光学媒体の一部を除去し、それによって、電気光学材料の層によって被覆されたその第1のエリアを有するが、電気光学材料の層を含まないその第2のエリアを有するバックプレーンを備えているサブアセンブリを生産することとを含む。したがって、マスキングされたバックプレーンプロセスは、事前形成されたフロントプレーンラミネートを使用することなく、電気光学層とバックプレーンとの間にラミネート加工接着剤層の存在を伴わずに、サブアセンブリ、最終的に、電気光学ディスプレイの形成を可能にし、したがって、上で議論されるように、このラミネート加工接着剤層に関連付けられる問題を低減させ、または排除する。
本発明のマスキングされたバックプレーンプロセスは、バックプレーンから開始して、サブアセンブリまたはディスプレイを構築する。このプロセスは、個々のバックプレーン上で実施され得るが、大量生産目的のために、マルチアップ構成に配列されたバックプレーン上でより都合よく達成される。概念的に、完全なディスプレイを生産するために使用されるとき、マスキングされたバックプレーンプロセスは、(a)セグメント化されたパッシブマトリクスまたはアクティブマトリクスバックプレーンであり得るバックプレーン自体、(b)電気光学材料によって被覆されていないバックプレーンのエリアを保護するためのマスキング層(保護されたエリアは、典型的に、最終的なディスプレイの正面電極への「上面接続」を行うために要求されるものとなり、ピクセル電極につながる導体ならびに行および列ドライバ等の電子構成要素に使用されるエリアも含み得る)、(c)固体電気光学媒体、典型的に、カプセル化された電気泳動媒体、(d)ディスプレイの正面電極を形成する光透過性導電性層、および、(e)光透過性導電性層を固体電気光学媒体に固定する手段(典型的に、ラミネート加工接着剤)を伴うものと見なされ得る。
すでに示されているように、マスキングされたバックプレーンプロセスで使用されるバックプレーンは、任意の公知のタイプであり得るが、使用されるバックプレーンが電気光学層を損傷しないことを確実にするように、注意を払うべきである。例えば、電気光学層がカプセル化された電気泳動媒体から形成されるべき場合、バックプレーンは、カプセルのうちのいくつかを破裂させる危険性に関するようなレベルにおける急激な変化を有するべきではない。マスキング層は、それ自身の物理的特性により、または接着剤コーティングの助けを借りてバックプレーンに接着する単純ポリマーフィルムから形成され得るが、望ましくは、厚さが約75μmを上回るべきではなく、マスキング層として有用であることが見出されているポリマーフィルムは、Kaptonテープ(du Pont de Nemours & Company(Wilmington,DE)から入手可能なポリイミドテープ)およびRP301フィルム(Nitto America,Inc.(Fremont,CA)から入手可能なアクリルフィルム)を含む。固体電気光学層は、典型的に、カプセル化された電気泳動層であるが、高分子分散電気泳動層または回転二色部材もしくはエレクトロクロミック層でもあり得る。マスキング層の部分がバックプレーン上に残されるようにマスキング層を引き裂くことなく、および/または、バックプレーンのマスキングされていない部分内の電気光学層の部分が不注意に除去されることなく、電気光学層の物理的特性が、マスキング層自体が除去されるとき、マスキング層に重なる層の部分が除去されるようなものであることを確実にするように、注意を払うべきである。正面電極を形成するために使用される材料および接着剤は、この目的のために従来技術で使用される材料のうちのいずれかであり得る。
本発明の具体的なマスキングされたバックプレーンプロセスが、ここで、付随する図面の図1-4を参照して、より詳細に説明されるであろう。図1は、ピクセル電極の2次元アレイ(図示せず)を提供される第1の中心エリア102と、マスキングフィルム106によって被覆される第2の周辺エリア104とを有するアクティブマトリクスバックプレーン(概して、100と指定される)の上面図である。(第1および第2のエリア102ならびに104の相対サイズおよび配置が、幅広く変動し得、第2のエリア104が第1のエリア102を包囲する必要はないことを理解されたい。)第2のエリア104は、通常、(下で説明される)正面電極と電気的に接触するための接触パッドを含み、第1のエリア102内のピクセル電極に接続される行および列電極と、行および列ドライバのためのソケットとを含み得る。
バックプレーン上のマスキング層の提供後、マスキングされたバックプレーンプロセスの次のステップは、図2Aに図示されるように、電気光学材料の層108でバックプレーンをコーティングするステップである。バックプレーン上に電気光学材料の層を堆積させることが可能な任意の技法が、層108を形成するために使用され得、カプセル化された電気泳動電気光学材料の場合、スロットダイコーティング、バーコーティング、およびスプレーコーティング方法の全てが、電気泳動材料をマスキングされたバックプレーンに直接適用するために正常に使用されている。使用される堆積方法に応じて、電気光学材料の層は、バックプレーンの第1および第2のエリアの両方を完全に被覆することも、そうではないこともあり、例えば、いくつかのスプレーコーティング方法は、マスキングされたエリアの一部のみをコーティングし得る。
プロセスの次のステップは、図2Bに図示されるように、バックプレーン100の第2のエリア104と、その上の電気コネクタおよび/またはソケットとを露出するためのマスキング層106の除去である。すでに記述されているように、マスキングフィルムおよび電気光学材料の重なる層が第2のエリア104から完全に除去されるが、第1のエリア102に重なる電気光学材料のいかなる部分も除去されないように、マスキング層および電気光学材料を選定することが重要である。
電気光学ディスプレイの組み立てを完了するために、電気光学材料の層108の上に光透過性導電性層を固定することが必要である。図2Cに示されるように、それは、光透過性導電性層または正面電極層112を支持する正面基板110を提供することによって、最も都合よく達成される。例えば、前述の米国特許第6,982,178号に議論されるように、インジウムスズ酸化物(ITO)でコーティングされたポリマーフィルムが、市販されており、正面基板110および正面電極層112を提供するために非常に好適である。ラミネート加工接着剤の層114が、次いで、正面電極層112上に形成され、バックプレーン100への電気接続を提供するために必要とされる正面電極層112の一部を露出した状態にする。実践では、概して、ロールツーロールプロセスを使用して、ラミネート加工接着剤層114で正面電極層112の全体をコーティングし、結果として生じたロールを個々のディスプレイのために必要とされるサイズの部分に切断し、次いで、電気接続を提供するために要求される正面電極層112の部分からラミネート加工接着剤を除去すること、または「取り除く」ことが、最も好都合である。正面電極層112の必要部分からラミネート加工接着剤を取り除くための種々の方法が、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第7,733,554号を参照されたい。
図2Cに示されるサブアセンブリは、次いで、図2Dに示される最終的なディスプレイを形成するために、電気光学層108と接触しているラミネート加工接着剤層114で、図2Cに示されるサブアセンブリにラミネート加工される。典型的に、伝導性インクまたは類似材料116が、前述の米国特許第6,982,178号に説明されるように、接着剤層114によって被覆されていない正面電極層112の部分に隣接するバックプレーン100上に設置される。この最終的なディスプレイは、電気光学層108が(いかなる介在接着剤層も伴わずに)バックプレーン100と直接接触し、それによって、ディスプレイの解像度を最大化するという利点を有する。加えて、正面電極層112に隣接する接着剤層114の位置付けは、ディスプレイの解像度への損害なく、接着剤層114が高度に伝導性に作製されることを可能にする。
図3A-3Dは、マスキング層が除去される前に接着剤層が電気光学層に重なって形成される本発明の第2のマスキングされたバックプレーンプロセスを図示する。この第2のプロセスの第1の段階、すなわち、バックプレーン100上のマスキング層106の提供およびバックプレーンを覆う電気光学層108の堆積は、上で説明される第1のプロセスと同じであり、図2Aに示されるものと本質的に同じである図3Aに示されるサブアセンブリをもたらす。しかしながら、第2のプロセスにおける次のステップは、図3Bに示される構造を生産するための電気光学層108を覆う100パーセント固体放射線硬化性接着剤層214のコーティングである。接着剤層214は、プロセスのこのステップにおいて未硬化の状態にされる。マスキング層106は、次に、図3Cに示されるように、除去され、それによって、以前はマスキング層106に重なっていた電気光学層108および接着剤層214の両方の部分を除去する。再度、マスキングフィルムと電気光学材料および接着剤の重なる層とが第2のエリア104から完全に除去されるが、第1のエリア102に重なる電気光学材料のいかなる部分も除去されないように、マスキング層、電気光学材料、および接着剤を選定することが重要である。
第2のプロセスにおける最終ステップは、図3Dに示される最終的なディスプレイを生産するための図3Cに示されるサブアセンブリへの正面基板110および正面電極層112を備えているフィルムのラミネート加工であり、それは、図2Dを参照して上で説明されるような伝導性インク116または類似伝導性材料の提供を伴う。放射線硬化性接着剤層214が、図3Cのアセンブリの中にすでに存在しているので、さらなる接着剤は、必要とされず、正面基板110および正面電極層112は、実質的に室温において、高い圧力を使用することなく、ラミネート加工されることができる。100%固体接着剤層214の使用は、正面電極層112および正面基板110が、可撓性基板およびガラスのような堅い基板も含む種々の形態をとることを可能にする。正面電極層112および正面基板110が適用されると、接着剤層214は、図3Dに示される最終的なディスプレイを生産するために、紫外線放射線で放射線硬化されることができる。このディスプレイは、図2Dに示されるもののように、電気光学層108がバックプレーン100と直接接触し、ディスプレイの解像度を最大化するという利点を有する。加えて、正面電極層112に隣接する接着剤層214の位置付けは、ディスプレイの解像度への損害なく、接着剤層214が高度に伝導性に作製されることを可能にする。図3A-3Dのプロセスは、図2A-2Dのプロセスで使用される上面清掃を排除し、この層が液体として適用されるので、より薄い接着剤層を可能にし、可撓性または堅い正面電極層を可能にし、高温ラミネート加工ステップの必要性を排除する。
図4A-4Dは、2つの別個のマスキング層が使用され、正面電極層が電気光学層上に直接形成される本発明の第3のマスキングされたバックプレーンプロセスを図示する。この第3のプロセスの第1の段階、すなわち、バックプレーン100上の2つの別個のマスキング層106Aおよび106Bの提供と、バックプレーンを覆う電気光学層108の堆積とは、概して、上で説明される第1および第2のプロセスに類似し、概して、2つの別個のマスキング層106Aおよび106Bの提供を除いて、図2Aおよび3Aに示されるものに類似する、図4Aに示されるサブアセンブリをもたらす。マスキング層106Aが、ドライバ電子機器用の接合面積および縁シール面積を被覆する一方で、マスキング層106Bは、正面電極接続のためのエリアを被覆する。2つのマスキング層は、別個のフィルムである必要はないが、図5で図式的に図示されるように、その2つの部分が別個に除去されることを可能にするように切断された単一のフィルムの形態であり得る。代替として、第1および第2のマスキングフィルムによって被覆されるエリアの幾何学形状に応じて、第1のマスキングフィルムは、その上に電気光学材料が堆積させられないバックプレーンの全てのエリアを被覆し得、第2のマスキングフィルムは、第1のマスキングフィルムの上に適用される別個のフィルムであり得る。前述で説明されたマスキングフィルムが、使用されることができる。図5に示されるマスキングされたバックプレーンは、次いで、図4Aに示される構造を生産するために、前述で説明された方法のうちのいずれかによって、その上に堆積させられた電気光学材料を有する。
第2のプロセスにおける次のステップは、第1のマスキング層106Aを除去することがない第2のマスキング層106Bの除去であり、したがって、正面電極接点のために必要とされるバックプレーンのエリアを露出し、図4Bに示される構造を生産する。次に、光透過性導電性正面電極層312が、図4Cに示される構造を生産するために、バックプレーンの上に(通常、ウェットコーティングプロセスによって)堆積させられる。正面電極層312は、電気光学層108の上に正面電極を形成するだけではなく、図4Cの右側に図示されるように、バックプレーンの露出エリアと正面電極接続も形成する。正面電極層312は、伝導性ポリマー、例えば、通常、そのポリ(スチレンスルホン)塩(「PEDOT:PSS」)の形態で使用されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)、もしくはポリアニリンから形成され得るか、または、導体のネットワーク、例えば、カーボンナノチューブもしくはナノワイヤから形成され得る。本発明者らは、カプセル化された電気泳動層の直接上にPEDOTおよびカーボンナノチューブ正面電極の両方を正常にコーティングしている。
プロセスの最終ステップは、図4Dに図示されるディスプレイを生産するために、電気光学層108および正面導体層312の重なる部分と一緒に第1のマスキング層106Aを除去することである。所望される場合、ドライバ電子機器および/または縁シールが、ここで、バックプレーンの露出表面内に設置され得る。
図4Dに示されるディスプレイは、図2Dおよび3Dに示されるもののように、電気光学層がバックプレーンと直接接触し、したがって、ディスプレイの解像度を最大化するという利点を有する。しかしながら、上で説明されるディスプレイと対照的に、図4Dに示されるディスプレイは、その電極間にラミネート加工接着剤を有しておらず、したがって、そのような接着剤の電気的効果を完全に排除する。したがって、図4Dに示されるディスプレイ構造は、所与の電気光学層のための最高の解像度および温度性能を可能にする。図4Dに示されるディスプレイ構造に関する1つの潜在的な実際的問題は、電気光学層内の任意の細孔またはピンホールが、コーティングされた正面電極がバックプレーン上のピクセル電極と電気的に接触することを可能にし、したがって、ディスプレイを短絡させるであろうことである。
前述から、本発明のマスキングされたバックプレーンプロセスは、温度性能を損なうことなく、高解像度アドレッシングを提供し、したがって、電気光学層とバックプレーンとの間に薄い接着剤を要求する従来技術のディスプレイ構築方法によって課される制限を除去し得ることが分かるであろう。加えて、マスキングされたバックプレーンプロセスは、単一の製造工場で製造プロセス全体を行う可能性を広げる。
(スプレーコーティングプロセス)
すでに述べたように、本発明は、基板上に電気泳動媒体のカプセルを噴霧するプロセスも提供する。このプロセスは、液体中にカプセルの分散を形成することと、第1のオリフィスを通して分散を送給することと、第1のオリフィスを包囲している第2の環状オリフィスを通して、ガスの連続流を送給し、それによって、カプセルの噴霧を形成することとを含む。このスプレーコーティングプロセスは、最終的なコーティングがレオロジー修飾剤を含まず、故に、そのようなレオロジー修飾剤がスロットコーティングされた電気泳動媒体の特性に及ぼし得る影響を含まないように、スプレーコーティングが、通常、噴霧されている液体中でそのようなレオロジー修飾剤の使用を要求しないというスロットコーティングと比べた利点を有する。典型的に、スプレーコーティングでは、最終製品で実際に必要とされる添加物のみが、噴霧されている液体に添加される必要がある。
図6は、本発明のスプレーコーティングプロセスで使用され得る単純なスプレーコーティングノズル(概して、600と指定される)を通した概略的断面図である。ノズル600は、液体(図示せず)中に分散させられた電気泳動カプセル(同様に図示せず)が圧送される中心軸方向ボア604を有する実質的に円筒形の本体602を備えている。中心ボア604は、空気の連続流が押し進められる環状ボア606によって包囲される。中心ボア604の下端は、オリフィス608の中で終端し、環状ボア606の下端は、オリフィス608を包囲する環状オリフィス610の中で終端する。円筒形バッフル612が、環状オリフィス610を包囲する。バッフル612によって抑止される環状オリフィス610を通した空気流は、オリフィス608を通過するカプセルの分散に噴霧または噴射614を形成させる。
ノズル600は、数が6または8であり得る成形空気ボア616も提供される。図6に示されるように、ボア616が通過するノズル600の周辺部分は、オリフィス608、610およびバッフル612より下で下向きに延び、ボア616の下側部分は、直接下向きかつ内向きである。成形空気は、ボア616を通して連続的に押し進められ、それによって、成形空気が噴射614に衝突し、それによって、噴射が広い噴霧618に広がるようにし、広い噴霧618が、ノズル600の下方に配置される基板620に衝突する。
図7および8は、本発明の大量スプレーコーティングプロセスで使用するために好適な大量低圧噴霧化ノズル(概して、700と指定される)を図示する。使用時、ノズル700は、通常、ノズルから出現するカプセルが、図6に図示されるように、基板上に下向きに向けられるであろうように、図7および8に図示される位置に対して反転されるであろうことを理解されたい。
スプレーノズル技術の当業者に容易に明白であろうように、図7および8に示されるノズル700は、図6に示されるノズル600と実質的に同様に動作するが、ノズル700は、以下の構造差を有する。
(a)カプセル分散が通過する中心軸方向ボア702は、そのオリフィス708に隣接して先細になり、カプセル分散がこのオリフィスを通過する速度を増加させる。
(b)図6の単純環状ボア606は、空気送給通路706A、円筒形空気プレナム706B、円錐形先細部分706C、および環状オリフィス710の中で終端する出口部分706D(図8)の組み合わせによって、置換される。加えて、補助成形空気噴射が、先細部分706Cからオリフィス708の両側のオリフィスまで延びているボア706Eによって提供される。
(c)成形空気ボア716は、最終的なカプセルスプレーの形状のより優れた制御を提供するための二重出口部分716A、716Bを提供される。
図8は、図7および8に示されるノズル700から良好なスプレーコーティング結果を達成することにおいて重要であることが見出されている4つの寸法を示し、これら4つの寸法は、(A)中心オリフィス708の半径、(B)中心オリフィス708の外縁と環状オリフィス706Dの内縁との間の半径方向距離、(C)環状オリフィス706Dの半径方向幅、および、(D)オリフィス708と710との間の軸方向距離である。
カプセルコーティングの品質は、それらの再現性粒度、平均コーティング重量、一様性、および欠陥密度の観点から査定され、欠陥密度は、標準ディスプレイ構造内の単位ディスプレイ面積あたりの非切り替えカプセルの数によって定量化され、標準ディスプレイ構造は、この目的のために、ラミネート加工接着剤の25μm層、20μmカプセル層、および25μmポリエチレンテレフタレートフィルム上にITO層を備えている正面基板を支承するバックプレーンとして画定される。良好なスプレーコーティングを達成することにおいて考慮されるべき第1の要因は、カプセルおよびガスの流量および圧力である。カプセル噴霧は、大量低圧(「HVLP」)ノズルを使用して最良に達成されることが経験的に見出されており、当技術分野で公知である種々の標準ノズル設計が、使用され得るが、好ましい設計は、図7および8に示されるものである。好ましくは、噴霧化空気出口断面対カプセル分散出口断面の比は、約8.5以下、好ましくは、約5.0~約7.0である。カプセル分散オリフィス直径(図8のAの2倍)は、好ましくは、約1.0~1.40mmの範囲内である。カプセル分散は、好ましくは、約38.0~約40.5重量パーセントの重量分率でカプセルを含有し得、本分散は、随意に、最大約4.0重量パーセントの濃度における1-ブタノールと、最大約0.04重量パーセントの濃度におけるX-100等の界面活性剤とを含み得る。
広範囲のカプセル分散送給率および噴霧化空気送給率が、本発明のスプレーコーティングプロセスで使用されることができる。典型的に、カプセル分散送給率MFは、約30g/分以上かつ約70g/分以下であり、最適条件は、主に、噴霧化ゾーン(すなわち、第1のオリフィスから出現するカプセル分散カラムが、流体のシートに分解し、続いて、間膜、最終的に、液滴に分解する領域)における適切な滞留時間に基づいて決定される。望ましくは、液滴サイズ分布は、液滴あたりの平均カプセル数が約5.0未満であり、標準偏差が液滴あたり約3.0個のカプセルであるようなものである。噴霧化空気送給率は、第2のオリフィスにおいて測定される、臨界空気速度v*に基づいて設定され、典型的に、約100m/秒である。好ましいプロセスでは、約150~200g/分の合計空気送給率MA(噴霧化空気および成形空気を含む)が、成形空気がない場合に採用され、成形空気を用いると最大300g/分である。
経験的に、MA/MF対MFの観点から、HVLP噴霧化のための動作窓は、図9に示される形態を有するが、関与する数値は、使用される特定のノズル設計に伴って変動するであろうことが見出されている。図9のグラフの陰影のない領域は、望ましい動作窓を表す。陰影付き領域は、過剰な流体速度(「噴射」)、極めて不規則かつ一過性の噴霧構造、および粗い液滴分布等の望ましくない噴霧パターンをもたらす欠陥領域を表す。
本発明のスプレーコーティングプロセスでは、空気送給率とノズルから基板までの距離とは、カプセル損傷を回避するように慎重に制御されるべきである。一般に、200~320mmのノズルから基板までの距離が、最適であり、この距離は、噴霧化空気速度の2乗にほぼ反比例して調節されるべきである。
噴霧カプセルコーティングの品質および一様性が、基板の前処理およびカプセル分散に添加される添加物による影響を強く受け得ることも見出されている。有用な前処理および添加物は、限定ではないが、以下を含む。
1)Triton X-100、ブタノール等の界面活性剤を組み込み、基板表面の湿潤を向上させるカプセル分散
2)Triton X-100、1-ブタノール、および洗剤構造を保有するその他等の界面活性剤、随意に、ポリウレタンラテックスを組み込むサブ層を用いた基板表面の事前コーティング
3)大気プラズマまたはコロナ放電処理で基板を事前処理すること
4)カプセル分散は、ポリマー結合剤、例えば、ポリウレタンラテックスを含み得る。
(実施例1)
カプセル分散が、カプセル分散の重力送給を用いて、ノズル入口において測定された20psig(約330MNwm
-2)の圧力における入口噴霧化空気を使用するHVLPノズルで噴霧された。分散粘度に応じて、分散の質量流量は、約25~35g/分であった。噴霧は、垂直に下向きに向けられ、堆積は、堆積後の傾斜面流を回避するように、水平基板上への近法線入射において行われた。ノズルと基板の距離は、240~280mmであったが、より短い、または長くあり得る。カプセル噴霧は、以下の関係によって求められる標的平均コーティング重量を達成するように、1回以上の通過回数で、薄膜トランジスタバックプレーンを横断して行われた。
式中、θは、平均コーティング重量(g/m
2単位)であり、M
Fは、分散質量送給率(g/分単位)であり、Nは、基板にわたる通過の回数であり、ηは、(少なくとも50%であるべきである)各通過における噴霧伝達効率であり、Wは、基板幅(メートル単位)であり、vは、作動速度(m/分単位)である。本発明の1つのプロセスでは、標的平均コーティング重量θ=20-d、M
F=35g/分、η=60~70%、W=0.107mである。このプロセスでは、ノズルの下の所与の基板の合計滞留時間が約3または4秒を超えない限り、複数のコーティング通過が使用され得、より長いコーティング時間は、薄いサブ層を蒸発によって無効な状態にした。
すでに記述されているように、本発明のスプレーコーティングプロセスは、マスキング材料の除去後、マスキング材料が存在しなかった基板のそれらの部分上にのみカプセルが残留するように、基板の一部を被覆するマスキング材料の使用を含み得る。基板の一部を被覆するために使用されるマスキング材料は、多孔質であるべきではないか、または、少なくとも、基板のマスキングされたエリア上へのカプセル堆積が起こらないことを確実にするために十分に低い多孔性を有するべきである。マスキング材料は、カプセルが分散させられる液体(通常は水性である)を有意に吸収すべきではなく、基板のマスキングされていない領域からマスキングされたエリアの中へのマスキング材料の下のカプセルの側方ドリフトが起こらないように、基板の表面に十分に近く設置されるべきである。カプセルが基板上に堆積させられた後、カプセルは、マスキング材料が依然として定位置にある状態で乾燥され得る(もしくは、例えば、放射線への暴露によって、密着した層を形成するように別様に処理される)、または、マスキング材料が、最初に除去され得、次いで、カプセルが、乾燥もしくは別様に処理され得る。いずれの場合も、マスキング材料およびカプセル分散の物理的特性は、マスキング材料の除去中、カプセルが基板の前もってマスキングされたエリアの中に引きずり込まれることも、(例えば、カプセルの密着した乾燥層の不規則な断裂によって)カプセルがマスキングされていないエリアから除去されることもないように、選定されるべきである。
マスキングフィルムは、その上にカプセルが堆積させられる表面上に事前ラミネート加工される接着剤と、噴霧にさらされる剥離フィルムとを備え得る。カプセル堆積後、剥離フィルムが、除去され、その後、追加の処理が続く。結果として生じた噴霧印刷フィルムは、透明または不透明のいずれかであり得るバックプレーンにラミネート加工され得る。
図10は、本発明のマスキングされたスプレーコーティングプロセスによって生産される第1の電気泳動ディスプレイの上面図である。バックプレーンは、カプセルが堆積させられているエリア(図10の円)の外側のディスプレイを通した可視性を可能にするように、透明に作製される。そのようなバックプレーンは、電気泳動媒体が生成することが可能であるそれと同数の個々の光学状態を伴って、パターン化された画像を生成することができる。図10に示されるディスプレイでは、カプセルは、ディスプレイの全ての可能な状態が、極端なマゼンタおよび白色光学状態を含むマゼンタおよび/または白色の組み合わせであるように、白色およびマゼンタ顔料を含む。
すでに記述されているように、本発明のマスキングされたスプレーコーティングプロセスは、2つ以上のコーティングステップを含み、したがって、単一の基板上での2つ以上の異なる電気泳動媒体の堆積を可能にし得る。図11は、このようにして生産されるディスプレイの上面図である。図11に示されるディスプレイは、第1のマスキング材料をフロントプレーン電極に適用し、次いで、第1のマスキング材料の上に青色および白色顔料を含む電気泳動カプセルをスプレーコーティングすることによって、生産される。カプセルを乾燥させ、第1のマスキング材料を除去した後、第2のマスキング材料が、正面電極に適用され、黄色および白色顔料を含む電気泳動カプセルが、電極上にスプレーコーティングされる。第2のマスキング材料が、次いで、除去され、正面電極および重なる電気泳動層が、バックプレーンにラミネート加工される。図11に示されるディスプレイは、2つの主要な光学状態、すなわち、一般的な顔料(この場合は白色)によって決定される一様な色、および図11に図示されるような第2のパターン化された(青色/黄色)状態を有する。
本発明のスプレーコーティングプロセスは、スロットコーティング等の従来技術のコーティングプロセスの限界を克服し、したがって、パッチコーティングおよび3次元物体のコーティングを行う能力を提供する。スプレーコーティングプロセスは、スロットコーティングプロセスにおける金型の詰まりに起因する筋をつけることの影響も受けにくく、したがって、増進した収率を提供し得る。スプレーコーティングプロセスは、ディスプレイの電極間のラミネート加工接着剤層の必要性も排除し、したがって、所与の動作電圧のための電気泳動層を横断したより高い電場を可能にし、したがって、より高い白色状態輝度およびより高いコントラスト比、ならびにバックプレーンと直接接触している電気泳動カプセルの結果として低減したブルーミングおよび増進したマイクロコントラストの可能性を可能にする。
印刷されるカプセル化された電気泳動ディスプレイが、最小限のアクティブマトリクス駆動を伴って、または全く伴わずに、低情報密度ディスプレイまたは芸術的娯楽のいずれかが所望される窓スクリーン、壁パネル、または他の建築要素等の用途において望ましい。代わりに、切り替えと非切り替えとの間、または定性的に異なる様式で切り替わる異なる電気泳動媒体の2つの領域の間のインターフェースが、ディスプレイに事前パターン化され得る。本発明のマスキングされたスプレーコーティングプロセスは、堆積させられたカプセルの機械的完全性を損なうことなく、これらの目標を達成する方法を提供する。
(膨潤性ポリマーコーティングプロセス)
すでに記述されているように、本発明は、基板上にカプセルの単層を形成するプロセスを提供し、プロセスは、基板上に水膨潤性ポリマーの溶液を堆積させることと、その後、基板上にカプセルの単層を形成するために十分な数量のカプセルを堆積させることと、カプセルがそれら自体を基板上で単層に配列することを可能にすることとを含む。
このプロセスでは、基板の各単位面積上に堆積させられるカプセルの数量を制御することが重要であり、この数量は、カプセルが基板上で緊密に充塞された単層に再配列し得るように、制御されるべきである。カプセルの再配列は、基板上のカプセルの堆積の直後に行われ得るが、おそらくより一般的に、カプセル層が基板上にカプセルの密着した層を形成するように乾燥または別様に処理された後に行われ得る。前に記述されたように、カプセルの堆積は、カプセル層とのコーティングヘッドまたはコーティングバーの接触を要求しないスプレーコーティング(または代替として、カーテンコーティング、もしくはノズルからのカプセルの堆積、または類似プロセス)等のプロセスによって達成されることが望ましい。基板へのカプセルの接着を低減させる膨潤性ポリマーを用いると、コーティングヘッドまたはバーは、それとともにカプセルを引きずる傾向があり、したがって、まばらすぎてカプセルの十分に充塞された単層が形成されることを可能にしない、基板上の非常にまばらなカプセルコーティングをもたらすであろう。コーティングが膨潤性ポリマー前処理を伴わずに試行される場合、カプセルは、コーティングヘッドまたはバーによって堆積させられるにつれて基板に付着するが、基板へのカプセルの接着が非常に強いので、毛細管力は、カプセル再配列およびカプセルの十分に充塞された単層の形成を可能にするためには不十分である。
付随する図面の図12A-12Hは、顕微鏡スライドが卵アルブミンで処理され、次いで、カプセルがピペットからその上に堆積させられている本発明の実験プロセスの連続段階を図示する。これらの図から、ピペットから堆積させられた最初に散乱させられたカプセルは、図に示されるスライドの面積の約4分の3を被覆する密接に充塞された単層の中に毛細管力によって徐々に引き込まれたことが分かるであろう。類似実験がアルブミン処理スライド上でバーコーティングを用いて試行されたとき、カプセルは、単純に、コーティングバーにくっつき、事実上いかなるカプセルもスライド上に残されなかった。顕微鏡スライドよりもはるかに広い面積を被覆するとき、本発明のアルブミンコーティングプロセスは、カプセルの密接に充塞された単層の広いエリアを生成することを可能にする。
前述から、本発明の膨潤性ポリマーコーティングプロセスは、大量生産のために好適な従来の機器および材料を使用して、大量の密接に充塞されたカプセル単層コーティングを生成するプロセスを提供することが分かるであろう。このプロセスは、噴霧がコーティングエリアにわたるカプセルのサイズ分布を無作為化するべきであるので、特に、カプセルがスプレーコーティングによって適用される場合、本質的に粒子を含まないコーティングを生産するはずである。膨潤性ポリマーコーティングプロセスは、コーティングの多層およびコーティング欠陥(コーティングされていないエリア)がよく見え、窓の品質に悪影響を及ぼす可変透過窓で使用するためのコーティングを提供することに特に有用であり得る。
(オーバーコート層プロセス)
すでに記述されているように、本発明のオーバーコート層プロセスは、少なくとも1つの電極を備えているバックプレーンを提供することと、電気光学材料の層でバックプレーンをコーティングすることと、電気光学材料の層の上に実質的に無溶媒の重合性液体材料の層を堆積させることと、重合性液体材料を少なくとも1つの光透過性導電性層と接触させることと、重合性液体材料を材料の重合を引き起こすために効果的な条件にさらし、それによって、少なくとも1つの光透過性導電性層を電気光学材料の層に接着させることとを含む。
本発明のオーバーコート層プロセスの利点は、図13および14を比較することによって分かり得る。図13は、バックプレーン1302と、第1の(比較的に薄い)接着剤層1304と、単色電気光学層1306と、第1の接着剤層1304よりも実質的に厚い第2の接着剤層1308と、正面電極層1310と、正面基板1312と、正面基板1312上に直接印刷され得るカラーフィルタアレイ1314とを順に備えている従来技術のカラーディスプレイ(概して、1300と指定される)を通した概略断面図を示す。この構造は、上で説明される様式で二重剥離フィルムを使用して形成され得る。ディスプレイ1300では、CFA1314が、典型的に、ともに厚さ約50μmである正面基板1312および第2の接着剤層1308の厚さだけ、電気光学層1306から分離されていることに留意されたい。(正面電極層1310は、典型的に、厚さ1μm未満であり、したがって、実用的な目的のために、その厚さは、無視され得る。)
図14は、図13のそれに類似するが、本発明のオーバーコート層プロセスによって生産されるディスプレイ(概して、1400と指定される)を通して得られた概略断面図を示す。バックプレーン1302、電気光学層1306、正面電極層1310、正面基板1312、およびCFA1314の全ては、図13に示される従来技術のディスプレイ1300内の対応する層に類似する。しかしながら、図14では、電気光学層1306は、ディスプレイ1300の中に存在する第1の接着剤層1304が排除されるように、バックプレーン1302上に直接コーティングされる。さらに、ディスプレイ1300の中の第2の接着剤層1308は、無溶媒重合性液体材料の重合によって形成される、はるかに薄い接着剤層1408によってディスプレイ1400内で置換される。接着剤層1408は、典型的に、わずか約5μmの厚さを有し、したがって、照明および視認視差の両方の低減を伴って、CFA1314と電気光学層1306との間の間隔をディスプレイ1300内の間隔から40%低減である約30μmまで低減させ、したがって、より広い視認角およびより高い色飽和を提供する。加えて、ディスプレイ1300内の第1の接着剤層1304のディスプレイ1400からの排除は、電気光学層を横断した電圧降下を増加させ、ブルーミングを低減させる。本発明のオーバーコート層プロセスは、ディスプレイ1400のそれに類似する構造を有するが、CFA1314を欠いている白黒ディスプレイにも適用され得る。
すでに示されているように、本発明は、図15および16に図示されるように、本来のカラーディスプレイに適用され得る。図15は、電気光学層1506が、例えば、米国特許第8,576,476号に説明されるように、ディスプレイの全ピクセルにおいて一連の色を表示することが可能である本来のカラー電気光学層であり、カラーフィルタアレイが省略されることを除いて、図13に示されるディスプレイ1300に概して類似する従来技術のディスプレイ(概して、1500と指定される)を通した概略断面図である。図16は、本発明のオーバーコート層プロセスによって生産されるディスプレイ1600を示す。上で説明されるディスプレイ1400と同様に、ディスプレイ1600では、第1の接着剤層1304は、省略され、第2の接着剤層1308は、無溶媒重合性液体材料の重合によって形成される、はるかに薄い接着剤層1408と置換される。上で説明されるディスプレイ1400と同様に、第1の接着剤層1304を排除することは、ディスプレイに印加される電場のより多くが、電気光学層1506内に存在することを可能にし、より明るい白色状態およびより高いコントラスト比をもたらす。加えて、第1の接着剤に関連付けられるブルーミング効果が、排除され、それによって、色域および画像鮮明度を増加させるので、マイクロコントラストが、大いに向上されるであろう。
本発明のオーバーコート層プロセスは、種々の随意の特徴を含み得る。電気光学層がカプセル化された電気泳動層であるべきとき、カプセルをバックプレーンに適用するために使用されるカプセルスラリは、バックプレーンの湿潤を向上させるためのTriton X-100またはブタノール等の界面活性剤を含み得る。電気光学層のコーティングに先立って、バックプレーンは、Triton X-100またはブタノール等の界面活性剤で、もしくはポリウレタンラテックスで事前コーティングされ得る。代替として、または加えて、バックプレーンは、プラズマ(大気プラズマを含む)またはコロナ放電処理で事前処理され得る。そのような処理は、種々の電力設定において、限定ではないが、酸素、窒素等を含む、種々のガスを用いて、達成され得る。前に記述されたように、一般に、オーバーコート層プロセスにおける電気光学層は、静電スプレーコーティングを含む、スプレーコーティングによって適用されるが、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、およびロールコーティング(フレキソ印刷およびグラビア技法を含む)等の他の適用技法も、使用され得ることが好ましい。電気光学層がカプセル化された電気泳動層であるべきとき、カプセルは、望ましくは、ポリマー結合剤、例えば、ポリウレタンラテックスを含む、スラリの形態である。
(実施例2)
本発明のオーバーコート層プロセスは、バックプレーン上に電気泳動媒体のカプセルを堆積させ、無溶媒重合性液体材料でカプセルをオーバーコーティングし、重合性液体材料を用いて、正面電極層/正面基板(ITOで1つの表面をコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの形態である)を電気泳動媒体に接着させることによって、実施された。
アクティブマトリクスバックプレーン上へのカプセルの噴霧は、25~35g/分の質量流量におけるカプセル分散の重力送給を用いて、ノズル入口において測定された20psig(約330MNwm-2)の圧力におけるHVLPノズルを使用して、実質的に上記の実施例1のように本発明のスプレーコーティングプロセスを使用して、達成された。噴霧は、垂直に下向きに向けられ、堆積は、堆積後の傾斜面流を回避するように、水平基板上への近法線入射において行われた。ノズルと基板の距離は、240~280mmであった。標的コーティング重量は、20g/m2であった。複数のスプレーヘッドおよびより高い希釈のコーティングスラリが、増加したコーティング一様性に寄与し得る。
使用された重合性液体材料は、以下のように調合された(使用される種々のSartomer樹脂は、Sartomer Americas,Inc.,(Overland Park KS)から入手可能である)。
Sartomer SR 9087 44.55%重量比
Sartomer SR 9038 14.85%重量比
Sartomer CN 3108 39.6%重量比
TPOジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド 0.5%重量比
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.5%重量比
これらの成分は、組み合わせられ、徹底的な混合を確実にするように少なくとも8時間にわたってロールミル上に設置された。
ディスプレイは、以下のように組み立てられた。金属製型枠が、緩衝を提供するようにボール紙で被覆され、1枚のプラスチック剥離シートが、ボール紙の上に設置された。カプセルコーティングされたバックプレーンが、この製型枠の上に設置され、ポリイミドテープが、バックプレーン上の接点を被覆するために使用された。PET/ITOフィルムが、バックプレーンのサイズに切断され、カプセルコーティングされたバックプレーンの上に設置され、ポリイミドテープを用いて定位置に貼り付けられた。1枚の金属化剥離シートが、スタックの上に設置され、アセンブリ全体が、バックプレーンのガラス上すれすれに接近したローラを用いて、ラミネータまで移動された。ラミネータは、所望の厚さの紫外線硬化コーティングを確実にするように、20psiおよび25ft/分(7.62m/分)に設定された。PET/ITOが、持ち上げられ、重合性液体混合物のビーズがPET/ITOフィルムの1つの縁に可能な限り近く設置されることを可能にし、ローラが重合性液体混合物をバックプレーンの反対縁まで移動させている間、フィルムが、可能な限り長く持ち上げられた。最終的に、金属化剥離フィルムが、除去され、重合性液体混合物が、硬化された。バックプレーン上の接点を被覆するために使用されたテープが、除去され、ITO層と電気接触を行うように適用されるカーボンテープ(または銀ペースト)を使用した。ディスプレイは、したがって、25℃および50%相対湿度において5日間調整され、次いで、縁は、疎水性UV硬化性ポリマーで密閉された。
前述から、本発明のオーバーコート層プロセスは、カラーおよび単色ディスプレイの両方において、より高い白色状態輝度、ならびに本来のカラーおよびカラーフィルタアレイディスプレイの両方において、増加した色域を可能にすることが、分かるであろう。