JP7140521B2 - 成膜装置及び成膜方法 - Google Patents
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フォトン方式は、感度が大きく、応答速度が大きい、というメリットがある反面、77Kまで冷却が必要、感度の波長依存性が大きい、というデメリットがある。
サーマル方式は、冷却不要、感度の波長依存性が小さい、というメリットがある反面、感度が小さい、応答速度が小さい、というデメリットがある。
減圧可能なチャンバ内において、バナジウムのターゲットから飛翔したスパッタ粒子が、前記被処理体の被処理面に対して斜め入射するように、前記ターゲットと前記被処理体とが所定の離間距離で配置されており、
前記被処理体を載置する支持台は、前記斜め入射を保ちながら、前記被処理体の被処理面をその面内において回転させる機構、および、前記被処理体を上下動させて所定の高さ位置で前記被処理体を保持するための機構を備えると共に、
第一プロセスガスとしてアルゴンを導入する第一プロセスガス導入手段と、第二プロセスガスとして酸素とアルゴンからなる混合ガスを流す第二プロセスガス導入手段と、を備え、
前記第一プロセスガス導入手段によって前記ターゲットの近傍に前記第一プロセスガスを導入するとともに、前記第二プロセスガス導入手段によって前記被処理体の被処理面の上空を通過するように前記第二プロセスガスを流しながら、前記被処理面を覆うように所望の抵抗体膜を形成可能とする、ことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の成膜装置は、請求項1において、前記第二プロセスガスを構成する、前記酸素の流量をF1[sccm]、前記アルゴンの流量をF2[sccm]と定義した場合、
前記第二プロセスガス導入手段は、8.75≦{F1/(F1+F2)}≦11.5 の条件を満たすように、前記第二プロセスガスの流量比を制御する、ことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の成膜装置は、請求項1において、前記支持台は前記被処理体の温度制御手段を備え、前記温度制御手段は、成膜工程における前記被処理体の温度TSを、成膜の後工程として行われるアニール時の前記被処理体の温度TAより高い温度に保つ、ことを特徴とする。
減圧可能なチャンバ内において、前記被処理体の被処理面に対して、バナジウムのターゲットから飛翔したスパッタ粒子を斜め入射させると共に、
プラズマを励起させるプロセスガスとして、第一プロセスガスを前記ターゲットの近傍に導入するとともに、第二プロセスガスを前記被処理体の被処理面の上空を通過するように流しながら、前記被処理面を覆うように所望の抵抗体膜を形成する際に、
前記第一プロセスガスとしてアルゴンを用いるとともに、前記第二プロセスガスとして酸素とアルゴンからなる混合ガスを用いる、ことを特徴とする。
このような構成、すなわち、「斜め入射」と「プロセスガスの導入手段の位置」を制御する構成を備えることにより、本発明の成膜装置は、各種VOxからなる(酸化バナジウムを主成分とする)抵抗体膜を形成する(作り分ける)ことが可能となる。ここで、各種VOxとは、非晶質、VO2、V6O13、V6O13とV2O5の混在、を意味する。この作り分けにより、本発明の成膜装置は、TCR(抵抗温度係数)が高く、かつ、後加熱処理の影響を抑制できる、酸化バナジウムを主成分とする抵抗体膜の製造に寄与する。
図1は、本発明に係る成膜装置の一実施形態を示す模式的な断面図である。図1に示すように、成膜装置10における真空槽11には、この真空槽11の内部空間11aを排気する各種の真空ポンプからなる排気手段12が連結されている。真空槽11と排気手段12との間には、ゲートバルブ等からなる仕切弁13が配置されている。真空槽11の仕切弁13と対向する位置には、被処理体である基板Sを搬送手段(不図示)により、真空槽11の外部と搬入・搬出するためのドアバルブ15が配置されている。
換言すると、被処理体である基板Sを載置する支持台21は、前記斜め入射を保ちながら、前記被処理体の被処理面をその面内において回転させる機構(第二移動機構23)を備えたものである。
本例では、図1に示す成膜装置を用い、以下の成膜条件によってVOx膜を形成した。VOx膜を形成する際の成膜温度(基板温度(とも呼ぶ)を、25℃~250℃の範囲で変更した試料を作製し、VOx膜の比抵抗[Ω・cm]を調べた。
図2及び図3から、以下の点が明らかとなった。
(A1)VOx膜の抵抗値は成膜温度に強く依存する。成膜温度の増加に伴い、抵抗値が急減する。
(A2)目標とする抵抗値分布(直径8inchの基板において±3%以内)を達成するには、基板面内における温度分布をΔ7℃以下にする必要がある。
(A3)膜厚分布や組成分布を考慮すると、基板面内における温度分布をΔ5℃以下を達成する必要がある。
(B1)VOx膜の特徴として、成膜温度が25℃(RT)~200℃までは、酸素流量比に対して抵抗値が一定の領域が存在する。このため、酸素に対するプロセスマージンは十分あり、成膜温度が25℃(RT)~200℃の間では、成膜温度を変えることにより所望の抵抗値が得られる。
(B2)これに対して、成膜温度が250℃、350℃の場合は、酸素流量比に対して抵抗値が一定の領域が存在しない。
図4の結果から、プロセスガスを構成する、酸素の流量をF1[sccm]、アルゴンの流量をF2[sccm]と定義した場合、前記プロセスガスの導入手段は、8.75≦{F1/(F1+F2)}≦11.5 の条件を満たすように、前記プロセスガスの流量比を制御することにより、VOx膜の抵抗値が一定の領域を得ることができる。
図5から、以下の点が明らかとなった。
(C1)抵抗値Rsが大きいほど電気伝導の活性化エネルギーが大きいため、TCRも大きくなる傾向を示す。この傾向は、3種類の膜(VOx膜、TiOx膜、MoOx膜)とも同一であった。
(C2)2種類の膜(VOx膜、TiOx膜)では、抵抗値[Ω・cm]が0.5~4.0の範囲(網掛け領域)において、TCRの値が2.0を超えることが確認された。
図6から、以下の点が明らかとなった。
(D1)アモルファスである2種類の膜(○印、◇印)では、抵抗値[Ω・cm]が10において、TCRの値は2.5%程度が限界である。
(D2)これに対して、結晶化したVO2膜[2種類の混合膜(△印、□印)]では、抵抗値[Ω・cm]が10において、TCRが3.7~5.2に急増することが確認された。しかしながら、相転移による抵抗値の急激な変化を伴うため、ボロメーター用途には不向きである。
上記(D1)と(D2)より、膜全体が結晶化したVO2膜にならずに、アモルファスのマトリクス中にVO2の微結晶が点在するような構造が得られるならば、0.5~4.0の抵抗値[Ω・cm]と2.5%を超えるTCRの値とが、両立する可能性があることが分かった。
図7において、抵抗値の欄に示した、「center」はウェハ中心付近、「middle」はウェハ中心から半径1/2付近、「eddge」はウェハ外縁付近、における測定値であることを表している。抵抗率分布は、「center」と「middle」と「eddge」の抵抗値のばらつきである。
(E1)VOx膜を成膜した後に、成膜温度以上でアニール処理を行うと、アニール処理時の雰囲気に依存せず、VOx膜の抵抗値は低下した。
(E2)3種類の雰囲気のうち、酸素雰囲気の場合が、最も抵抗値の低下が大きく、かつ、抵抗分布も最大であった。
図8において、横軸は「VOx膜(酸化バナジウム膜)において異なる酸素量の組成」を表しており、左側から右側へ順に、酸素量の比率が増える組成を表している。縦軸は抵抗値[Ω・cm]である。
(F1)VO2膜の半導体状態(室温:300K)における抵抗値を決める要因は、組成と結晶性である。VO2膜より酸素が少ない組成はV9O17(VO1.89に相当)であり、VO2膜より酸素が多い組成はV6O13であるが、何れの組成でも抵抗値がVO2膜の千分の一以下である。
(F2)一般的な2元酸化物の抵抗値は、酸素空孔濃度によって決定される。酸素空孔によるキャリア導入により、酸素欠損したVO2膜では、抵抗値が減少する。後述するように、XRDにより単相が確認された試料においても、抵抗値は酸素量に敏感である。
(F3)また一般的に、結晶の粒界抵抗も抵抗値の増加の要因となる。
(G1)酸素流量比の増加と共に、非晶質の膜から結晶相を有する膜に変化する。すなわち、酸素流量比の増加により、非晶質膜→VO2膜→V6O13膜→(V6O13+V2O5)膜が生成する。
(G2)1MΩ/□(=1E+6Ω/□)以上のシート抵抗を有するVO2膜が得られる酸素流量比の領域は、極めて狭い範囲である。
(G3)酸素流量比の増加により、V6O13が生成しているにも関わらず、VOx膜の抵抗値が減少する。
(H1)VO2とV6~13の境界(試料SB、試料SC)では、粗大な粒が観測された。これに比較して、試料SAと試料SDは粒が細かく、表面プロファイルが平坦であった。
(H2)試料SAと試料SDは、80℃前後において、急激な抵抗変化が生じる。これに対して、試料SBと試料SCでは、試料SAや試料SDのような、急激な抵抗変化が生じない。
この結果から、試料SBと試料SCでは、相転移する温度を過ぎても、抵抗値の温度に対する傾きが変わらないのは、粒界抵抗の影響であると考えられる。
(I1)成膜温度が350℃~550℃の範囲では、抵抗値とChange rateは、何れもほぼ一定となる。
(I2)成膜パワーが750W~1500Wの範囲では、抵抗値とChange rateは、何れもほぼ一定となる。
(J1)成膜温度が200℃の場合に比べて350℃、500℃では結晶性が改善している。
(J2)成膜パワーが750W~1500Wの範囲では結晶性の改善は殆ど見られない。
この結果から、検討した成膜温度の範囲内、成膜パワーの範囲内では、VOx膜の結晶性に変化がないことが確認された。
図15より、VO2は熱力学的に生成しにくい物質であり、V6~O13は生成しやすい物質であることが分かる。
図16より、VO以外の組成(V2O3、V3O5、VO2、V6O13、V2O5)は、半導体-金属転移を示す材料である。V6O13は転移温度が150Kであるため、室温で金属的であり、VO2に比較して3桁以上小さい抵抗値を有する。
図17より、V6O13は融点が662℃であり、成膜温度を500℃とした場合は融点の約75%に達する。このため、粗大な粒構造となり易いと推定される。
図18より、Rsの平均値は158.2[kΩ/□]であり、Rsの一様性はWIW(同一基板内の均一性:Within Wafer)が±1.5%以内であった。この結果から、本発明によれば一様性に優れたVOx膜を形成できることが確認された。
図19より、TCR[@300K,%/K]とlinearity[R2]を求めた。その結果、CenterではTCR=-2.45、R2=0.998、middleではTCR=-2.46、R2=0.998、eddgeではTCR=-2.37、R2=0.996であった。この結果から、本発明によれば一様性に優れたVOx膜を形成できることが確認された。
図20より、Hysteresisとslopeを求めた。その結果、Hysteresisは0.7℃であり、Heating slopeは2.2089、Cooling slopeは2.2242であった。この結果から、本発明によれば一様性に優れたVOx膜を形成できることが確認された。
図21より、TCRの平均値とTCRの一様性を求めた。その結果、TCRの平均値は-2.40[%/K]であり、TCRの一様性はWIWが±3.1%以内であった。この結果から、本発明によれば一様性に優れたVOx膜を形成できることが確認された。
図22において、SSはセンサ、301はボロメータ膜、302(302A、302B)は画素配線、303はSiN支持膜、304はバイポーラトランジスタ、305は信号線、306はアドレス線である。
次のステップ(図23B:VOx膜の成膜)では、下部SiN膜300Mを覆うようにボロメータ膜(VOx膜)301をスパッタ法により形成する。
次のステップ(図23C:VOx膜の分離)では、ドライエッチグ法によりボロメータ膜(VOx膜)301を分離させる。これにより、下部SiN膜300M上にボロメータ膜301が局在し、ボロメータ膜301が除去された領域では、下部SiN膜300Mが露呈した状態とする。
次のステップ(図23E:上部SiN膜の成膜)では、ボロメータ膜301と電極302(302A、302B)を覆うように上部SiN膜312を、PECVD法やスパッタ法により形成する。
次のステップ(図23G:キャビティの形成)では、縦孔部312(312A、312B)を通じて、ウェットエッチング法によりキャビティ311を形成する。これにより、ダイアフラム構造を形成し、図22Aに示すようなセンサSSを得る。
Claims (4)
- 反応性スパッタリング法により、被処理体上に酸化バナジウムを主成分とする抵抗体膜を形成する成膜装置であって、
減圧可能なチャンバ内において、バナジウムのターゲットから飛翔したスパッタ粒子が、前記被処理体の被処理面に対して斜め入射するように、前記ターゲットと前記被処理体とが所定の離間距離で配置されており、
前記被処理体を載置する支持台は、前記斜め入射を保ちながら、前記被処理体の被処理面をその面内において回転させる機構、および、前記被処理体を上下動させて所定の高さ位置で前記被処理体を保持するための機構を備えると共に、
第一プロセスガスとしてアルゴンを導入する第一プロセスガス導入手段と、第二プロセスガスとして酸素とアルゴンからなる混合ガスを流す第二プロセスガス導入手段と、を備え、
前記第一プロセスガス導入手段によって前記ターゲットの近傍に前記第一プロセスガスを導入するとともに、前記第二プロセスガス導入手段によって前記被処理体の被処理面の上空を通過するように前記第二プロセスガスを流しながら、前記被処理面を覆うように所望の抵抗体膜を形成可能とする、
ことを特徴とする成膜装置。 - 前記第二プロセスガスを構成する、前記酸素の流量をF1[sccm]、前記アルゴンの流量をF2[sccm]と定義した場合、
前記第二プロセスガス導入手段は、8.75≦{F1/(F1+F2)}≦11.5 の条件を満たすように、前記第二プロセスガスの流量比を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。 - 前記支持台は前記被処理体の温度制御手段を備え、
前記温度制御手段は、成膜工程における前記被処理体の温度TSを、成膜の後工程として行われるアニール時の前記被処理体の温度TAより高い温度に保つ、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。 - 反応性スパッタリング法により、被処理体上に酸化バナジウムを主成分とする抵抗体膜を形成する成膜方法であって、
減圧可能なチャンバ内において、前記被処理体の被処理面に対して、バナジウムのターゲットから飛翔したスパッタ粒子を斜め入射させると共に、
プラズマを励起させるプロセスガスとして、第一プロセスガスを前記ターゲットの近傍に導入するとともに、第二プロセスガスを前記被処理体の被処理面の上空を通過するように流しながら、前記被処理面を覆うように所望の抵抗体膜を形成する際に、
前記第一プロセスガスとしてアルゴンを用いるとともに、前記第二プロセスガスとして酸素とアルゴンからなる混合ガスを用いる、
ことを特徴とする成膜方法。
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