図1は、本実施形態の画像形成装置の構成例を示した図である。画像形成装置は、画像を読み取り、画像形成を行うことができる装置であればいかなる装置であってもよい。画像形成装置としては、印刷機能、コピー機能、ファックス機能、スキャナ機能等の複数の機能を有する複合機、コピー機、ファックス装置等を一例として挙げることができる。以下、画像形成装置に複合機を用いるものとして説明する。
画像形成装置は、自動原稿送り装置(ADF)10と、画像読取部11と、画像形成部12と、制御部と、給紙トレイ13と、排紙トレイ14、操作部15とを含んで構成される。自動原稿送り装置10は、原稿を読み取るために画像読取部11へ自動搬送する。画像読取部11は、光源および原稿に反射した光を電気信号に変換する撮像素子を有し、原稿画像を読み取り、画像データを出力する。
画像形成部12は、感光体ドラム20と、帯電装置21と、レーザ光学系22と、現像装置23と、中間転写ベルト24と、一次転写ローラ25と、二次転写ローラ26と、定着装置27とを含んで構成される。図1では、感光体ドラム20、帯電装置21、現像装置23は、1つずつしか示されていないが、カラー印刷可能なカラー画像形成装置の場合、カラー印刷で使用する色の数だけ、これらの部品を設けることができる。
感光体ドラム20は、一定方向に回転し、帯電装置21により帯電され、レーザ光学系22から照射されるレーザ光により表面に静電潜像が形成される。現像装置23は、現像ローラを有し、現像ローラによって感光体ドラム20の表面に現像剤としてのトナーを付着させ、トナー像を形成させる。トナー像は、一次転写ローラ25によって中間転写ベルト24に転写され、二次転写ローラ26によって給紙トレイ13から搬送ローラ28によって搬送された紙に転写される。紙は、給紙トレイ13に限らず、両面トレイ16や給紙バンク17にも収納されており、設定されたトレイから給紙される。紙は、トナー像が転写された後、定着装置27へ送られる。定着装置27は、定着ローラおよび加圧ローラを有し、定着ローラによって熱を加え、加圧ローラによって加圧して、トナー像を紙に定着させる。定着装置27は、トナー像が定着された紙を排紙トレイ14に排紙する。
画像形成部12は、各種センサを有し、センサとして、光学センサ30a~30cと、電位センサ31と、定着サーモパイル32と、温湿度センサ33と、トルクセンサ34とを有する。光学センサ30a~30cは、感光体ドラム20上や中間転写ベルト24上に付着したトナーの量を、トナーへの反射光量に基づいて検出する。電位センサ31は、感光体ドラム20の表面の電位を検出する。定着サーモパイル32は、定着ローラの表面温度を検出する。温湿度センサ33は、画像形成装置内部の温湿度を検出する。トルクセンサ34は、現像ローラ、一次転写ローラ25、二次転写ローラ26、定着ローラ、搬送ローラ28等の各ローラの回転トルクを計測する。
制御部は、コントローラ40と、ROM(Read Only Memory)41と、RAM(Random Access Memory)42と、インタフェースI/O43と、駆動制御部44と、センサ制御部45と、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置46と、記憶装置制御部47と、通信制御部48とを含んで構成される。
コントローラ40は、画像形成装置全体を制御し、画像読取部11から出力された画像データに対する画像処理等を実行する。ROM41は、ブートプログラムやファームウェア等を格納し、RAM42は、コントローラ40に対して作業領域を提供する。インタフェースI/O43は、コントローラ40と、各制御部や操作部15とを接続し、信号のやりとりを可能にする。
駆動制御部44は、レーザ光学系22、現像装置23、中間転写ベルト24等を駆動する駆動回路に対して制御信号を送り、それら駆動回路を制御する。センサ制御部45は、各センサが検出し、出力した信号を処理する。具体的には、センサ制御部45は、光学センサ30a~30cにより検出されたトナー量、すなわち診断用画像としてのテストパターンのトナー像におけるトナー付着量と地肌部におけるトナー付着量との比率を求め、その比率を基準値と比較して画像濃度の変動を検知し、各色のトナー濃度センサの制御値を補正する。
記憶装置46は、画像データ、OS(Operating System)、画像読取部11や画像形成部12を動作させるためのアプリケーション・プログラム等を格納する。記憶装置制御部47は、記憶装置46に対するデータ等の読み出し、および書き込みを制御する。通信制御部48は、インターネットやイントラネット(登録商標)等のネットワークと接続し、ネットワークを介した通信を制御する。
操作部15は、ユーザが入力するための入力ボタン等の入力部、ユーザに対して処理の状況等を表示するディスプレイ等の表示部を備える。操作部15は、例えばタッチパネルを搭載した操作パネルとすることができる。
画像形成装置の構成は、図1に示す通りであるが、その主要な構成を図2に各ブロックとして示し、各ブロックが行う処理について説明する。画像形成装置は、スキャナ50と、画像メモリ51と、IPU(画像処理ユニット)52、プロッタ53と、コントローラ54とから構成される。
スキャナ50は、原稿画像としてのテストチャート(テストパターン)を読み取る。IPU52は、スキャナ50が読み取ったテストパターンに対し、画像処理を行う。プロッタ53は、IPU52が画像処理した後の画像データを印刷し、印刷物を生成する。
コントローラ54は、装置全体の制御を行い、各ブロック間の画像データのやりとりを行い、ネットワーク経由でサーバやPC等に接続し、画像データや各センサの検出値等を送受信する。画像メモリ51は、図1に示すRAM42や記憶装置46等から構成され、各ブロックが処理するための画像データを一時的に保管し、後日使用するために恒久的に保管する。
画像形成装置は、感光体ドラム20、帯電装置21、現像装置23、中間転写ベルト24、定着装置27等の部品の経時劣化や環境変動、使用する紙の種類や画像形成条件の不一致等により、形成される画像には、異常画像が形成される場合がある。環境変動は、画像形成装置内部の温度や湿度等の変動である。画像形成条件の不一致とは、トナー濃度、帯電電位、レーザ光量、定着温度等の設定値に、各センサの検出値が一致しないこと等を意味する。異常画像が形成された場合、いずれかの部品に何らかの異常があることを示すため、異常箇所を特定し、対処方法を決定する必要がある。
そこで、画像形成装置は、診断システムを実装し、診断システムにより画像形成装置の異常を診断する。図3は、診断システムの機能構成の一例を示した図である。画像形成装置は、図2に示したコントローラ54がプログラムを実行することにより、画像形成装置を各機能手段として機能させる。診断システムは、機能手段として、読取手段60と、取得手段61と、分類手段62とを少なくとも含む。
診断システムは、その他の手段として、印刷要求手段63と、分割手段64と、変換手段65と、判定手段66と、推定手段67とを含むことができる。ここでは、これらの手段を含む診断システムを画像形成装置が備えるものとして説明するが、一部または全部の手段が1以上の他の機器に存在していてもよい。
印刷要求手段63は、ユーザからの指示を受けて、画像形成装置に対してテストパターンを印刷するように要求する。ユーザは、画像形成装置が印刷したテストパターンの印刷物をADF10に載置し、印刷物の読み取りの開始を指示する。読取手段60は、ユーザからの指示を受けて、テストパターンを読み取り、画像データを生成し、出力する。
変換手段65は、読取手段60から出力された画像データからトナー個数の測度を求める。具体的には、変換手段65は、画像データの読取値をトナー個数の測度に変換する。トナー個数の測度とは、数学で使用される用語で、1次元の長さ、2次元の面積、3次元の体積等の概念の拡張として、一般の集合の部分集合に対して定義される量である。ここでは、トナー個数の測度は、画像の色の成分を、光の三原色である赤(R)、青(B)、緑(G)とした場合の各成分に対して定義される量であって、厳密なトナー個数ではなく、トナー個数を識別する番号のような位置付けとして扱う。
分割手段64は、画像データの画像を、所定のサイズの領域に分割する。基準となる領域のサイズは、検出対象とする異常画像の大きさや読み取り解像度等に応じて決定される。
取得手段61は、分割された領域毎に、該領域内の画像の複雑さを示す複雑度を求める。判定手段66は、得られた複雑度に基づき、異常箇所の有無を判定する。分類手段62は、異常があると判定された領域を、得られた複雑度に応じて分類する。推定手段67は、分類結果に基づき、異常原因を推定する。
図4および図5を参照して、印刷されるテストパターンについて説明する。図4に示すテストパターンは、例えばマゼンタトナーによる全面均一な濃度の中間調とされている。白スジを検出するためには、濃い色の方が良いが、濃い色だと、汚れを検出することが困難になるため、両者を検出することが可能な中間調としている。
濃度の濃淡を示す階調が255である場合、中間調は100程度の値とされる。ここでは、マゼンタトナーによるテストパターンのみを示しているが、カラートナーの全色であるシアントナー、イエロートナー、黒トナーのテストパターンも、同様の中間調とされ、印刷される。
全面均一な濃度のパターンとしては、コピー用やプリンタ印刷用の階調処理(ディザ処理や誤差拡散処理)済みの均一な濃度のパターンであってもよい。また、主走査2画素×副走査2画素の4画素(ドット)が独立し、繰り返されるパターンであってもよい。
矩形のテストパターンには、四隅に十字形の印(トンボ)80、向かって左右の側と下端に長さを示す印(目盛り)81と、上端にADF10等に載置する際の、印刷媒体としての紙の方向を示す矢印82を含めることができる。トンボ80は、テストパターンを印刷する印刷媒体としての紙の伸び量を検出しやすくするために設けられ、目盛り81は、周期性のある異常に対し、サービスマンが目視で確認しやすくするために設けられる。トンボ80や目盛り81は、必要に応じて設けることができる。
図5に示すテストパターンは、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの中間調と地肌(白色部分)の格子柄(チェッカーフラグ状)とされている。これにより、1枚の印刷で、全色の異常画像の有無を判定することができる。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの中間調と地肌をもつ画像であれば、上記の格子柄に限定されるものではない。
このパターンにおいても、上記のトンボ80や目盛り81を設けることができる。なお、このパターンでは、向かって左上の隅に、黒色の矩形83がADF10等に載置する際の紙の方向を示す印として設けられている。
図6を参照して、診断システムが実行する画像形成装置の異常を診断する処理について詳細に説明する。ユーザがテストパターンの印刷を指示したことを受けて、ステップ600から処理を開始する。ステップ601では、印刷要求手段63が印刷を指示し、画像形成装置が備える印刷手段としてのプロッタ53がテストパターンを印刷する。テストパターンは、図4または図5に示したものである。
印刷が完了すると、ユーザは、テストパターンが印刷された印刷物をADF10に載置し、テストパターンの読み取りを指示する。この指示を受けて、ステップ602で読取手段60がテストパターンを読み取り、テストパターンの画像データを生成し、出力する。
ステップ603では、変換手段65が画像データからトナー個数の測度を求める。画像データ(紙の印刷された部分)の読取値A[col](col=R,G,B)は、原稿の明るい画素では大きく、原稿の暗い画素では小さい。階調が256段階である場合、読取値の最大は255であり、最小は0である。以下、画像の階調を256段階として説明する。
変換手段65は、画像データの読取値をトナー個数の測度に変換するが、その変換にあたって、次の式1を使用する。式1中、M[col]はトナー個数の測度、A(sheet)[col]は紙の何も印刷していない部分(地肌)の読取値である。
上記式1から、紙の地肌より明るい画素については、トナー個数の測度M[col]は0で、紙の地肌より暗い画素については、地肌の読取値A(sheet)[col]よりもその読取値A[col]が小さくなるほど、トナー個数の測度M[col]が大きくなる。
これを図に示すと、図7に示すようなものとなる。図7は、col=R、G、Bのそれぞれにつき、地肌の読取値A(sheet)[col]を同一のE0h=240とした場合の例である。横軸は、画像データの読取値A[col]であり、縦軸は、トナー個数の測度M[col]である。地肌の読取値240のとき、測度は00h=0であり、読取値が240より小さくなるにつれて測度が大きくなっている。
地肌の読取値A(sheet)[col]は、テストパターンの印刷に使用した紙の種類により異なる。例えば、再生紙は、B成分が高めで、見た目に黄色っぽく見える。このような場合、イエロートナー個数の測度が、実際のトナー個数(あるいはトナー付着量)より多く見積もられることになる。これは、イエローを構成するR、Gの成分の読取値がB成分の読取値より低いことを示している。
そこで、高めとなるB成分の地肌の読取値A(sheet)[col](col=B)を240より小さい値に調整する。例えば、B成分の地肌の読取値A(sheet)[col](col=B)を224とすることができる。図8は、B成分の地肌の読取値A(sheet)[col](col=B)をC0h=224とし、R、G成分の地肌の読取値A(sheet)[col](col=R,G)については240とした場合の例である。
海外で使用される紙には、青みがかかって見える紙がある。この紙は、B成分の地肌の読取値A(sheet)[col](col=B)が大きい。このような紙に対しては、上記と同様の調整方法を使用することはできない。そこで、B成分の読取値A(sheet)[col](col=B)を、より255に近い値に調整する。このような調整を行うことで、適切にトナー個数の測度を求めることができる。B成分の読取値は、小さい値ほど青味が強くなり、大きい値ほど青味が弱くなるからである。
読取手段60の特性によっては、読取手段60が読み取る方向(主走査方向)の両端部(左右の端部)の照度が、その中央部に比べて低い場合がある。すなわち、左右の端部の画像が暗く、中央部の画像が明るい場合である。この場合は、地肌の読取値A(sheet)[col](col=R,G,B)を、主走査方向の位置に応じて調整することができる。具体的には、中央部で読取値A(sheet)[col](col=R,G,B)を大きく、両端部で読取値A(sheet)[col](col=R,G,B)を小さくなるように調整する。
また、テストパターンが印刷された紙は、湿度等により皺等が発生する場合がある。これでは、正確な地肌の読取値A(sheet)[col](col=R,G,B)を取得することが困難である。そこで、所定の閾値以下の測度が得られた領域は除外する等の処理を行うことができる。
再び図6を参照して、ステップ604では、分割手段64が画像データの画像を所定サイズの領域に分割する。基準となる領域のサイズは、例えば一辺の長さを画素数の2のべき乗とした正方形とすることができる。具体的には、解像度を600dpiとして読み取った場合、一辺を256(28)画素(約10.8mm)とし、300dpiで読み取った場合、128(27)画素(約10.8mm)とし、200dpiで読み取った場合、64(26)画素(約8.1mm)もしくは128(27)画素(約16.3mm)等とする。
一辺の画素数を多くとると、大きな異常を検出しやすい。これは、分割する領域のサイズが大きくなるからである。この例では、領域を正方形としたが、これに限られるものではなく、長方形等であってもよい。
ステップ605では、取得手段61が分割された領域毎に画像の複雑度を求める。画像の複雑度は、例えばフラクタル次元により表すことができる。
フラクタル次元について簡単に説明する。例えば、正方形の一辺の長さを2倍すると、当該正方形を縦に2つ、横に2つ並べた計4つの正方形ができる。すなわち、一辺の長さをk倍してN個の図形ができるとき、次の式2が成立する。
上記式2が成立するときのrがフラクタル次元であり、k倍してできる図形が自己相似な図形(フラクタル図形)である。
ステップ606では、判定手段66が、得られた複雑度に基づき、各領域につき異常箇所の有無を判定する。いずれの領域にも異常箇所がない場合、ステップ609へ進み、この処理を終了する。一方、いずれかの領域あるいは全部の領域に異常箇所が存在する場合、ステップ607へ進む。
ステップ607では、分類手段62が、異常箇所が存在すると判定された領域を、取得された複雑度に応じて分類する。クリーニング不良等の異常画像は、複数の領域に連続していたり、飛び飛びの領域に発生していたりするため、それら複数の領域を、複雑度に応じて同一のグループに分類する。ステップ608では、推定手段67が、分類結果から異常原因を推定し、ステップ609で処理を終了する。
図6のステップ605の複雑度を求める方法を、図9を参照して説明する。ここでは、複雑度を画像データから取得したフラクタル次元で表し、複雑度をフラクタル次元により定量化する方法について説明する。これまでに画像データの画像からフラクタル次元を求める方法はいくつか知られている。ここでは、トナーの異常画像の分類を目的とするため、上記のトナー個数の測度を利用し、画像からフラクタル次元を求めるためのボックスカウント法と呼ばれる方法について説明する。
図9(a)は、画像データの画像内の任意の領域Sを示し、図9(b)~(d)はそれぞれ、領域Sを、一辺の長さを2のべき乗である256画素、64画素、16画素とした正方形の領域に互いに重ならないように分割した例を示した図である。以下、各正方形の領域を、一辺の長さLのセルもしくは単にセルと呼ぶものとする。
図9(a)に示す領域Sには、全面がイエローのパターンの中央部に、クリーニング不良の黒スジ(異常画像)84が存在し、左右の側にも、薄い黒スジ84が存在している。領域Sの画像は、主走査方向256画素×副走査方向256画素のサイズの画像である。
図9(b)は、一辺の長さLを256画素として正方形に分割したもので、領域Sを覆う一辺の長さLのセル総数は1個である。ここで、一辺の長さLのセルの各々を識別するために識別情報としてインデックスiを使用し、i番目のセルをs(L)[i]と表記する。
図9(b)は、図9(a)に示す画像から上記の方法で求めたトナー個数の測度のG成分を示し、薄いグレーの画像部分は、クリーニング不良によるトナー個数が少なく、濃いグレーの画像部分は、クリーニング不良によるトナー個数が多いことを示している。このトナー個数の測度の値から、領域Sの画像の複雑度を表す特徴量として、フラクタル次元を求める。
図9(c)は、図9(b)に示す一辺の長さLを256画素とした正方形を、主走査方向および副走査方向にそれぞれ4分割し、一辺の長さLを64画素の正方形に分割したものである。セルは、主走査方向および副走査方向のそれぞれに4つずつあり、セル総数は16個である。
図9(d)は、図9(b)に示す一辺の長さLを256画素とした正方形を、主走査方向および副走査方向にそれぞれ16分割し、一辺の長さLを16画素の正方形に分割したものである。セルは、主走査方向および副走査方向のそれぞれに16個ずつあり、セル総数は256個である。
このように分割した場合に、セルを識別するインデックスiの取り得る値を、図10に示す。図10中、項目Eがiの取り得る値で、図9(b)のケースではセル総数が1個であるため、1のみを、図9(c)のケースではセル総数が16個であるため、1~16の値を、図9(d)のケースではセル総数が256個であるため、1~256の値を取り得る。また、項目Fは、セルに含まれる画素数で、図9(b)のケースでは1つのセルの主走査方向および副走査方向に並ぶ画素数がそれぞれ256個であるため、256×256個(216個)である。図9(c)のケースでは64×64個(212個)、図9(d)のケースでは16×16個(28個)である。
項目Gは、セルに含まれる画素を示すインデックスjの取り得る値で、図9(b)のケースでは1、2、3、・・・、216までの216個あり、同様に、図9(c)のケースでは1、2、3、・・・、212までの212個あり、図9(d)のケースでは1、2、3、・・・、28までの28個ある。
なお、項目Fの値は、領域Sの左右の側の周辺部と中央部とで異なることから、周辺部のセルに対しては、周辺部以外のセルの平均値を利用した補正等を行う。
ここで、一辺の長さLのi番目のセルのトナー個数の測度を、M(L)[i][col](col=R,G,B)とすると、M(L)[i][col](col=R,G,B)は、i番目のセルに含まれる画素のトナー個数の測度m(x,y)[col](col=R,G,B)の和として、次の式3により求められる。
上記式3中、(x,y)は画素の主走査方向および副走査方向の位置、すなわち座標を表し、この座標は、i番目のセルs(L)[i]に含まれることから、(x,y)∈s(L)[i]という関係を有する。
フラクタル次元の1つである相関次元D(2)(L)[col](col=R,G,B)は、セルの一辺の長さLと、上記式3により求められた一辺の長さLのi番目のセルのトナー個数の測度M(L)[i][col](col=R,G,B)とを用い、次の式4により求められる。
画像データにおいては、1画素の長さが一辺の長さLの最小値になり、画像から得られる相関次元が異なる場合があるため、Lを0にする極限を取る代わりに、一辺の長さLにおける相関次元D(2)(L)[col](col=R,G,B)を次の式5のように定義し、異常画像を分類するための特徴量として扱うことができる。
上記式5中、R(L)[col](col=R,G,B)は、一辺の長さLのi番目のセルのトナー個数の測度M(L)[i][col](col=R,G,B)を用い、次の式6により求められる。
上記式6は、画像の複雑度を表すフラクタル次元を計算する計算式の1つで、相関次元を求めるための式を、トナーを使用した電子写真の異常画像の複雑度を求めるために応用した式である。
上記式5のL、L+ΔLをそれぞれ、画素のサイズL0の2のn乗、n+1乗とした場合、L、L+ΔLは、次の式7、8のように表すことができる。すると、上記式5の分母は、次の式9に示す形となる。
上記式5に上記式9を適用し、Lをnの関数としてL(n)を用いて整理すると、次の式10のように表すことができる。
上記式10では、ΔLを0にする極限に代えて、計算を簡単にするため、ΔL=1と近似している。このような比較的簡単な計算式を用いることで、画像形成装置の計算負担を大幅に軽減し、画像の複雑度を特徴量として簡単に計算することができる。
領域Sの一辺は、256(28)画素であるため、上記式10を使用し、n=0、1、2、・・・、7の8通りの相関次元D(2)(L(n))[col]を取得することができる。
図11は、nと相関次元D(2)(L(n))[col]との関係を示した図である。相関次元D(2)(L(n))[col]の値は、均一にトナーが付着した場合の理想値を2とし、理想的な線については1、理想的な点については0としている。図11には、理想値を破線で、画像の正常な領域から取得した結果(正常画像の結果)を丸で、クリーニング不良を含む領域SのG成分の結果(クリーニング不良の結果)を四角で、他の異常画像の例として、白スジが存在する領域のG成分の結果(白スジの結果)を三角で示している。
白スジが存在する領域は、全面がイエローのパターンの中央部に50~60画素程度の幅の白スジが存在する領域S1で、主走査方向および副走査方向の画素数が256のサイズである。
クリーニング不良の結果は、nが7より小さい場合に、相関次元D(2)(L(n))[G]が理想値2からのずれが見られ、正常画像の結果に対しても、nによって相関次元D(2)(L(n))[G]の値が変動している。これは、クリーニング不良の画像がn、すなわち一辺の長さLによって相関次元D(2)(L(n))[G]の値が変化する複雑な画像であることを示している。図11では、特にnが4~5、すなわち24~25画素の幅で、異常が顕著であることを示している。
一方、白スジの結果は、正常画像の結果に対してnが4~6で相関次元D(2)(L(n))[G]が小さくなっており、特にn=6で小さいことから、26画素程度のスジ状(1次元)の異常が存在していることを示している。n=2、3で正常画像の結果とほぼ同じ値を示すことから、点状の異常ではなく、線状の異常であることを示す。
この例で使用したクリーニング不良を含む領域の画像および白スジが存在する領域の画像は、ディザ処理を行って出力した画像ではないが、ディザ処理を行うと、n=0、1の1画素、8画素に相当するサイズのセルから求められた相関次元D(2)(L)[col](col=R,G,B)の値が大きく変動する。このため、nが2以上の値を使用して異常画像を識別するための量として使用するのが適切である。
このようにして、セルの一辺の長さLの対数に対応する相関次元D(2)(L)[col](col=R,G,B)の値により、異常画像の複雑度や大きさを分類することができる。また、他の異常画像についても、同様に分類することができる。
ところで、フラクタル次元の数値は、どのような現象を表す数値を利用するか、どのような方法でフラクタル次元を求めるかによって変わってくる。上記の例では、均一なテストパターン画像は平面の次元と同じ2次元という数値となる。一方、クリーニング不良等のスジ状の異常画像のフラクタル次元は、1.9等のように線の次元である1次元に近づいていく。このため、2より小さい数値の領域が、複雑度が高い領域となるので、この領域を高解像度の画像として送信することで、異常箇所の詳細を受信側で見ることができる。したがって、診断システムは、複雑度に応じて画像の解像度を変更して送信する送信手段を備えることができる。
異常画像を含む領域のみ解像度を変更して送信することで、遠隔診断時の故障原因の診断精度を低下させることなく、送信データを削減したり、診断精度の向上のために診断送信データ量を必要以上に増加させないように送信画像データ量を最適化することができる。
再度図11を参照して、異常画像データを送信する際の解像度を決定する方法について説明する。クリーニング不良の結果は、nが0、1、2、4において、正常画像との差が大きい。セルの一辺の長さLはそれぞれ、1画素、2画素、4画素、16画素で、600dpi、300dpi、150dpi、37.5dpi程度の送信画像で、異常の有無を画像情報として送信することができることを示唆する。図12に、様々な解像度のクリーニング不良の画像を例示する。
しかしながら、37.5dpiのような解像度の画像からは、図12(e)に示すように、幅が最も広い異常の場所がわかる程度の情報しか得られない。クリーニング不良の結果は、異常画像が複雑であることを示すので、図12(a)~図12(c)に示すような、より高解像度である150~600dpi程度の解像度で送信することが望ましい。
一方、白スジの結果は、nが4~6に対し、正常画像の結果との差がほぼ一定であることから、形状がシンプルな異常画像であることを示す。このため、送信時の解像度は、図11に示す値を参考にし、セルの一辺の長さLが64画素の約10dpi程度の解像度でも、異常画像が情報として残ることを示唆している。
図13に、様々な解像度の白スジ画像を例示する。実際に、図13(e)を参照しても、一辺の長さLが16画素のセルでも、1/4の4画素程度の幅の白スジ85が残っている。したがって、10dpiの解像度の画像で送信しても、充分に白スジであること、その位置の情報を得ることができる。ただし、白スジの正確な幅の情報が必要な場合は、10dpiより高い解像度で送信することが必要である。
上記の説明は、クリーニング不良を含む領域Sの画像と、白スジが存在する領域の画像S1とを別個に送る場合についてのものであるが、両方の領域を含む画像を送る場合、高い方の解像度で送ることが望ましい。
次に、図14を参照して、異常画像の識別について説明する。図14は、縦軸が図11の縦軸と同じ相関次元D(2)(L(n))[G]であり、横軸がセルの一辺の長さLを256画素とした場合の主走査方向へ何番目のセルかを示している。図14では、11~26番目のセルの結果を示している。なお、図14に示すグラフ2~7は、図11に示すn=2~7に相当するグラフである。
矢印Aで示す白スジ(横軸12)と、矢印Bで示すクリーニング不良(横軸25)とが示すセルは、異常画像を含むセルの結果で、それ以外のセル(横軸13~24)は、正常画像のセルの結果である。図14からも、異常画像を含むセルの結果は、グラフ4~6の値を正常画像の値と比較すると、異なった値を示している。このことから、グラフn=4~6の値を正常画像の値と比較することで、異常画像を含むセルであるか、正常画像のセルであるかを識別することができる。
また、異常画像のセルでも、異常画像の種類によって、グラフn=4~6の相関次元D(2)(L(n))[G]の値が異なるので、相関次元D(2)(L(n))[G]の値によっても、異常画像の識別が可能である。
なお、異常画像の幅が、上記のクリーニング不良や白スジの幅より広い場合、グラフn=7においても、正常画像のセルの結果と、異常画像を含むセルの結果とに差が生じる。一方で、その幅が狭い場合、グラフn=2~3においても、正常画像のセルの結果と、異常画像を含むセルの結果とに差が生じる。このことから、グラフn=4~6だけではなく、グラフn=2~7の結果を使用することが望ましい。
これまでG成分のみを使用して説明してきたが、この結果は、対象とするトナーの色味(YCMK)によって異なり、トナーの色により適切な色成分(RGB)が異なるので、RGBそれぞれについて、相関次元D(2)(L(n))[col](col=R,G,B)を取得する。
以上のようにして、複雑度を求めることができるが、診断を行う上で、どの程度の時間がかかるかが重要である。
そこで、図15を参照して、診断に要する時間(診断予定時間)を予測する方法について説明する。この処理を実行するために、予測手段をさらに備えることができる。診断予定時間の予測は、ステップ1500から開始し、ステップ1501では、図14に示したように、グラフn=2~7の相関次元D(2)(L(n))[col](col=R,G,B)の値を、正常画像のセルの相関次元D(2)(L(n))[col](col=R,G,B)の値と比較し、異常画像を含むセルを検出する。なお、正常画像のセルの相関次元D(2)(L(n))[col](col=R,G,B)は、実測値(テストパターンから取得した値)であっても、予め決められた値であってもよい。
ステップ1502では、検出したセルの1つを選択する。そして、ステップ1503で、グラフn=2~7の相関次元D(2)(L(n))[col](col=R,G,B)の値が、正常画像のセルの相関次元D(2)(L(n))[col](col=R,G,B)の値との差ΔD(2)(L(n))[col](col=R,G,B)が大きいグラフn=2~7のいずれかであるかにより、異常画像の大きさと、異常の程度の軽重を推定する。
グラフ2の相関次元D(2)(2)[col]では、異常画像は小さく、すなわち、正常画像のセルの相関次元D(2)(L(n))[col]の値と、異常画像を含むセルの相関次元D(2)(L(n))[col]の値との差が大きい場合には、異常の程度が重い、もしくは悪いと推定する。
ステップ1503では、異常画像を含むセルについて、n=2~7に対する正常画像との相関次元の差ΔD(2)(L(n))[col](col=R,G,B)から、異常画像の複雑さF(2)[col](col=R,G,B)を算出する。
異常画像の複雑さF(2)[col](col=R,G,B)は、図16に示すnと相関次元の差ΔD(2)(L(n))[G]との関係から求めることができる。クリーニング不良のグラフは、nに対する変動が、n=0、1を除き、E(n=2~6)の範囲で変動し、また、縦軸の値0を基準として、矢線Cに示すように大きい。
これに対し、白スジのグラフnに対する変動は、同様にn=0、1を除き、D(n=4~6)の範囲で変動し、これは、上記のクリーニング不良に比べて狭く、かつ相関次元の差ΔD(2)(L(n))[G]の変動も、上記のクリーニング不良に比べて小さい。
このように、相関次元の差ΔD(2)(L(n))[G]の変動幅が大きく、かつnの幅が広い画像が、より複雑な画像であると判断することができる。このことから、異常画像の複雑さF(2)[col](col=R,G,B)は、正常画像と異常画像との相関次元の差ΔD(2)(L(n))[col](col=R,G,B)を用いて、次の式11のように表すことができる。
上記式11中、|ΔD(2)(L(n))[col]|は、ΔD(2)(L(n))[col]の絶対値であり、w(L(n))は、セルの一辺の長さLに対応した重みである。なお、L(n)とnの関係は、上記式7で表される。
一辺の長さLが小さい場合、例えばn=2~4で、ΔD(2)(L(n))[col]が小さい場合、傷等の点状の異常であり、セルの一辺の長さLに対して単調に増加する値とする。また、Lが小さい場合は、異常画像の画素数が少なく、診断のための解析に必要な時間が少なくて済むことから、経験的に求める。
再び図15を参照して、ステップ1504では、1つのセルの診断時間Tdを予測する。診断時間Tdは、異常画像の複雑さF(2)[col](col=R,G,B)の値が大きいほど長くなると判断する。なお、異常画像の複雑さが大きい場合に、単一の異常が原因の場合と、複数の異常画像が原因の場合とがあり得るため、原因が1つである複雑さが低い異常画像に対して、原因の解析に時間が必要である。
ステップ1505では、ステップ1504で予測した診断時間Tdを加算し、ステップ1506で、全ての異常画像を含むセルについて診断時間Tdを加算したかどうかを確認する。まだ加算していないセルが残っている場合、ステップ1502へ戻り、診断時間Tdを予測し、加算する。一方、全ての異常画像を含むセルについて診断時間Tdを加算した場合、ステップ1507へ進み、全ての異常画像を含むセルについて加算した診断時間を診断予定時間として決定し、ステップ1508で処理を終了する。
診断予定時間は、短縮することが可能であり、診断予定時間を短縮するために、複数の領域にわたる異常である等の程度が重い異常画像等の優先して対応すべき異常画像について診断時間を求めることができる。
図17を参照して、図6のステップ607の異常画像の検知領域の分類について説明する。図17は、nと相関次元D(2)(L(n))[col]との関係を示した図で、図14のクリーニング不良の位置を通る副走査方向の結果を示したものである。図17の副走査方向のセル16の位置で、図14に示した主走査方向のセル25の位置と交差する。
図17中、グラフn(n=4~7)が、図14に示した矢線Aと矢線Bとの間の正常画像の相関次元D(2)(L(n))[G]の値(ほぼ2.000000)に比べて低い値が連続しており、副走査方向にクリーニング不良が連続していることを示している。このような形状を示すことから、主走査方向の位置が25で、副走査方向の位置が13、14、15、16のセルは、同一のグループとして分類される。
図6のステップ608の異常原因の推定について、図17を参照して詳細に説明する。図18は、正常画像と異常画像との相関次元の差ΔD(2)(L(n))[col](col=R,G,B)から予測される異常原因の一例を示した図である。図18では、異常画像の形状として、小さな傷から不定形までのいくつかを例示し、それぞれの形状の場合の、正常画像と異常画像との相関次元の差ΔD(2)(L(n))[col](col=R,G,B)が、nに対してどのように変化するかを、その度合いに応じて3段階の小、中、大で示している。また、図18では、各異常画像の形状に予測される異常原因が対応付けられている。
このことから、異常画像を含む領域を、例えば形状により分類した後、分類結果に応じて、図18を参照し、異常原因を推定することができる。
異常画像の幅等は、異常原因の進行が進むと、広がる(nの値が大きくなる)、または悪化する(ΔD(2)(L(n))[col]の値が大きくなる)ため、図18に示したnに対するΔD(2)(L(n))[col]と予測される異常原因との関係は、適宜見直すことが望ましい。また、2以上の異常原因が1つのセル内に発生している場合もあるので、各々の異常原因がどのようにΔD(2)(L(n))[col]に奇与しているかを考慮する必要がある。
これまで、フラクタル次元として相関次元を取得し、画像データのRGB成分のそれぞれに対し、異常画像の複雑さ(複雑度)を定量化し、RGB成分の複雑さが近い異常箇所に対しては、同一の異常の種類、または同一の発生原因の異常と判断するものとして説明してきた。フラクタル次元には、情報次元やボックスカウント次元(容量次元)もあるが、実用上、相関次元とボックスカウント次元の2つが、実装が容易で広く使用されることから、以下、ボックスカウント次元を取得し、異常画像の複雑さを定量化する方法について説明する。
図19は、トナーのクリーニング不良の画像の一例を示した図である。図19(a)は、クリーニング不良の画像で、中央部に比較的濃く黒スジ84が発生し、左右の側に薄く黒スジ84が発生している。
この方法では、図19(b)の破線で示すように、中央部の黒スジ84が存在する部分を細分化するため、所定のサイズの正方形90で区切る。区切った正方形90には、図19(c)の斜線で示すように黒スジ84を構成する最小の黒色の点(黒ドット)を含む正方形91と、斜線のない、黒ドットを含まない正方形92とが存在するが、黒ドットを含む正方形91の数を数える。
また、この方法では、図19(d)に示すように、正方形90のサイズを変更し、上記と同様にして、黒ドットを含む正方形91の数を数える。
図19(c)の正方形のサイズと図19(d)のように変更した正方形のサイズの比と、正方形の個数の対数値との関係は、図20に示すようなものとなる。この例でも、G成分についての結果のみを示す。均一な画像では、傾きが-2で一定の値となるが、不均一な画像(複雑な画像)では、均一な画像より上側へずれが生じ、そのずれが大きくなる。このグラフの傾きがボックスカウント次元である。
この方法は、輝度(読取値)毎にカウントした数値を加算したもので、より輝度の変化を考慮した評価方法である。この評価方法についての詳細は、中元 淳、他著「MTFフラクタル次元による印刷濃度むらの定量評価法」、電子情報通信学会論文誌 D-II、2000年4月、vol.J83-D-II pp.1082-1089を参照されたい。
このようにして複雑さを評価することができるが、評価した複雑さに応じて異常画像の種類を分類するために、図21に示す表を用いることができる。図21は、異常画像の種類と複雑さとを対応付けた表である。これも、複雑さの度合いに応じて3段階の小、中、大で表している。
図22は、診断システムの機能構成の別の例を示した図である。画像形成装置は、図2に示したコントローラ54がプログラムを実行することにより、画像形成装置を各機能手段として機能させる。画像形成装置に実装される診断システムは、機能手段として、読取手段60と、取得手段61と、分類手段62とを少なくとも含む。
診断システムは、その他の手段として、印刷要求手段63と、検出手段68と、判定手段66と、推定手段67と、予測手段69と、通知手段70と、送信手段71とを含むことができる。ここでは、これらの手段を含む診断システムを画像形成装置が備えるものとして説明するが、一部または全部の手段が1以上の他の機器に存在していてもよい。なお、読取手段60、取得手段61、分類手段62、印刷要求手段63、判定手段66については、既に説明したので、機能に異なる部分がある場合のみ説明する。
検出手段68は、読取手段60から出力された画像データの画像に、異常画像が存在するか否かを検出し、存在する場合、異常画像が存在する領域を検出する。異常画像は、例えば原稿データ等と読み取った画像データとを比較し、異なる部分が存在するか否か、または均一の画像の場合の画像データの平均からのズレが許容値より大きい領域があるか否か等により検出することができる。
取得手段61は、検出された領域の各々につき、画像の複雑度を求め、取得する。予測手段69は、検出された領域の各々につき、複雑度を求め、分類し、異常原因を推定するという診断に必要とされる時間を診断予定時間として予測する。通知手段70は、ユーザに対して、予測手段69により予測された診断予定時間を通知する。診断予定時間は、操作パネルに表示する等して通知することができる。
分類手段62は、検出された異常画像の領域を、取得された複雑度に応じて分類する。送信手段71は、異常画像の領域を、必要に応じて解像度を変えて送信する。送信先は、画像形成装置から離れた場所にいるサービスマンが使用するPC、タブレット端末、スマートフォン等の通信機器である。
次に、図23を参照して、ボックスカウント次元を使用して異常を診断する処理について説明する。先に説明した相関次元を使用する方法と同様、ユーザがテストパターンの印刷を指示したことを受けて、ステップ2300から処理を開始する。ステップ2301では、印刷要求手段63が印刷を指示し、テストパターンを印刷する。テストパターンは、図4または図5に示したものである。
印刷が完了すると、ユーザは、テストパターンが印刷された印刷物をADF10に載置し、テストパターンの読み取りを指示する。この指示を受けて、ステップ2302で読取手段60がテストパターンを読み取り、テストパターンの画像データを生成し、出力する。
ステップ2303では、検出手段68が、出力された画像データの画像に対して、異常画像の有無と異常画像の領域を検出する。ステップ2304では、判定手段66が、検出結果に基づき、異常画像の有無を判定する。異常画像がない場合、ステップ2309へ進み、この処理を終了する。一方、異常画像がある場合、ステップ2305へ進む。
ステップ2305では、予測手段69が、診断に要する時間を診断予定時間として予測する。このとき、取得手段61が、検出された異常画像の領域毎に複雑度を求める。診断予定時間Tdsは、分類にかかる時間Tcl、分類された異常の数p、診断時間Tdを考慮して推定される。Tdsは、一領域当たりの複雑度を計算する時間Tco、異常画像の領域の数qとすると、次の式12で表される。式12中、「~」は近似を示す。
ステップ2306で、通知手段70が、診断予定時間を通知する。通知後、ステップ2307で、分類手段62が、異常画像の領域を、取得された複雑度に応じて分類する。そして、ステップ2308では、推定手段67が、分類結果から異常原因を推定し、ステップ2309で処理を終了する。異常原因を推定した後、送信手段71が、サービスマンが使用する通信機器に対して異常画像を送信することができる。
ステップ2307の異常画像の領域を分類する処理の詳細を、図24を参照して説明する。ステップ2400から分類を開始し、ステップ2401では、検出された異常画像の領域の広さが一定以上か否かを判断する。一定以上か否かは、画素数が一定以上の数であるか否かを判断する。一定以上であれば、領域が広いと判断し、一定未満であれば、領域が小さいと判断する。一定以上の場合、ステップ2402へ進み、一定未満の場合、ステップ2411へ進む。
ステップ2402では、異常画像の領域の各々につき、複雑度を算出する。ステップ2403では、複雑度が一定範囲内(近い)の異常画像の領域を、同一原因の異常としてグループ化する。そして、ステップ2404で、複雑度に対応する異常原因を関連付ける。例えば、図21に示す表を参照して、異常原因を関連付けることができる。
図21に示す表では、複雑度が同じ「中」には、線状のスジ、点状のポチの2つがあり、「大」には、クリーニング不良、トナー落ちの2つがある。そこで、いずれであるかを判別するために、ステップ2405では、主走査方向の座標が重なるか否かを判断する。重なる場合、ステップ2406へ進み、異常画像の領域の大きさを、画素数により大きいか小さいかを判断する。画素数が一定以上の場合、大きいと判断し、一定未満の場合、小さいと判断する。大きい場合、ステップ2407へ進み、小さい場合、ステップ2408へ進む。一方、ステップ2405で座標が重ならない場合、ステップ2409へ進む。
ステップ2407では、主走査方向の座標が重なり、その画素数が多いことから、主走査方向へ異常画像が伸びており、異常原因を縦スジとして関連付ける。ステップ2408では、主走査方向の座標は重なるが、その画素数が少ないことから、異常画像がポチであり、主走査方向へ異常画像が飛び飛びになっているものと考えられる。その飛び飛びの異常画像が周期性を有するかどうかを確認するため、周期の有無を検出する。ステップ2409では、主走査方向の座標が重ならないことから、同一原因の異常ではないので、異なる異常と分類する。
ステップ2410では、主走査方向の座標が重なる領域をグループ化する。そして、ステップ2411で、領域のサイズがほぼ同じであるか否かを判断する。すなわち、1つの領域のサイズを基準として、他の領域のサイズが一定の範囲内に収まるか否かを判断する。異なる場合は、ステップ2409へ進み、異なる異常と分類する。一方、ほぼ同じの場合は、ステップ2412へ進み、領域間の関連性の度合いを表す相関係数を算出する。
ステップ2413では、相関係数が1に近いか否かを判断する。すなわち、相関係数1を基準として一定の範囲内か否か、例えば0.9以上か否かを判断する。相関係数が1に近い、例えば0.9以上の場合、ステップ2414へ進み、相関係数が1から遠い、例えば0.9未満の場合、ステップ2409へ進む。相関係数が1から遠い場合、同一グループ内の領域でも、関連性が低いことから、同一原因の異常ではなく、異なる異常と分類する。
ステップ2414では、異常画像の領域は小さいが、サイズがほぼ同じで、領域間の関連性が高いことから、点状の画像が離間して存在していると推定される。このため、点状の画像の周期を算出する。
異常画像の周期は、回転体の故障等によるものと考えられ、回転体には、感光体ドラム、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ等が存在する。それぞれは径が異なることから、異常画像を形成する周期が回転体によって異なる。このため、上記の周期を算出することで、どの回転体、すなわち部品が該当するかを判別することができる。
ステップ2415では、算出された周期に基づき、該当する周期の部品を関連付ける。そして、ステップ2416でこの処理を終了する。
具体的な例をもって説明すると、図25(a)に示すクリーニング不良の画像の場合、ステップ2401で、図25(b)に示すように、領域1~6のいずれも広いと判断し、ステップ2402で複雑度を算出し、近い複雑度を有することから、ステップ2403で同一原因の異常としてグループ化される。
以上のようにして、画像データの複雑度により異常画像を分類することで、トナーのクリーニング不良等のどのように異常画像の形状が紙上の位置によって変わっても、適切に異常画像を分類し、精度良く異常の発生原因を推定することができる。また、複数枚のテストパターンの印刷で異常画像の形状が、印刷物毎に変化しても、適切に異常画像を分類し、精度良く発生原因を推定することができる。
これまで本発明を、診断システム、画像形成装置、診断方法およびプログラムとして上述した実施の形態をもって説明してきた。しかしながら、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができるものである。また、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
したがって、上記のプログラムが記録された記録媒体、上記のプログラムが格納され、ダウンロード要求を受けて提供するプログラム提供装置等を提供することもできるものである。
また、診断処理は、画像形成装置内のみで完結するものでなくてもよく、例えば外部機器としてのサーバ装置等との連携により実施することもできる。この場合、画像形成装置で採取されたデータをサーバ装置に送り、サーバ装置から画像形成装置に診断結果を返すことができる。このため、診断処理を行う診断システムとして構成し、診断システムを画像形成装置内に、もしくはサーバ装置内に、またはその両方に実装することができる。外部機器は、サーバ装置に限定されるものではなく、他の画像形成装置等であってもよく、1以上のネットワークに接続されたものであってもよい。