JP7138923B2 - 機能性組成物および温度可逆性接着剤 - Google Patents

機能性組成物および温度可逆性接着剤 Download PDF

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Description

本発明は、機能性組成物および接着剤に係り、特に温度により接着力が可逆的に変化する機能性組成物および接着剤に関する。
環境温度により接着力が生じたり失ったりできて、何度も再使用可能な温度可逆性接着剤の需要が高まっている。
このような温度可逆接着剤を可能にする化学反応としてDA(Diels-Alder)反応があり、例えば非特許文献1から3に開示がある。
特に、非特許文献1は、エポキシ骨格にフランを組み込み、可逆重合剤としてマレイミドを用いてDA反応により温度可逆性接着剤を作製した例を報告しており、この温度可逆接着剤で接着力(Lap shear bonding strength)4.09±0.39MPaを得ている。
また、特許文献1では、共役ジエン構造とジエノフィル構造からDA反応によって形成されるDA反応付加部と、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、アルコキシル基およびエポキシ基からなる群より選択される官能基を有した温度可逆性接着剤が開示されている。
特開2003-183348号公報
J.H.Aubert,J.Adhesion,vol.79,pp.609-616(2003) E.Doici,G.Michaud,F.Simon,B.Boutevin,S.Fouquay and S.Caillol,Polym.Chem.,vol.6,pp.7851-7861(2015) D.H.Tukenburg,H.v.Bracht,B.Funke,M.Schmider,D.Janke,H.R.Fisher,vol.134,pp.44972-44982(2017) X.Kuang,G.Liu,X.Dong,D.Wang,Mater.Chem.Front.,vol.1,pp.111-118(2017)
従来のDA反応を用いた機能性組成物である温度可逆接着剤は接着力が約4MPaと不足している問題があり、この接着力不足により適用用途が限られるという問題があった。
本発明は、4MPaを超える高い接着力を有するDA反応を用いた温度可逆接着剤(機能性組成物)を提供することにある。
なお、本発明は、接着剤用途ばかりでなく、温度可逆で粘着性を変えて、かつ再生利用可能な粘着面形成用用途、固さを変える柔軟制御用途など多面的な用途に展開できる機能性組成物である。
本発明の構成を下記に示す。
(構成1)
ポリ(メタ)アクリレートの側鎖の末端基の一部がフランに置換された第1剤、およびマレイミド骨格を2以上有するポリマレイミドからなる第2剤を有する、機能性組成物。
(構成2)
前記ポリ(メタ)アクリレートはヘキシルメタクリレート鎖を有する、構成1記載の機能性組成物。
(構成3)
前記第1剤は、ポリ(2-(((フラン-2-イルメチル)カルバモイル)オキシ)エチルメタクリレート-コ-ヘキシルメタクリレート)である、構成1または2記載の機能性組成物。
(構成4)
前記ポリマレイミドは1,1′-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、トルエン-2,4-ビスマレイミド、ビス(マレイミド)メチルエーテルおよびビス(マレイミド)ジエチレングリコールの群から選ばれる少なくとも1以上である、構成1から3の何れか1記載の機能性組成物。
(構成5)
前記ポリマレイミドはビスマレイミドである、構成1から3の何れか1記載の機能性組成物。
(構成6)
前記第1剤のフラン1モルに対する前記ポリマレイミドのモル比は、0.6以上4.5以下である、構成1から5の何れか1記載の機能性組成物。
(構成7)
前記第1剤のフラン1モルに対する前記ポリマレイミドのモル比は、1以上3以下である、構成1から5の何れか1記載の機能性組成物。
(構成8)
構成1から7の何れか1に記載の機能性組成物を有する、温度可逆性接着剤。
本発明により、4MPaを超える高い接着力を有するDA反応を利用した温度可逆性接着剤、温度可逆性機能性材料を提供することが可能になる。
本発明の作用メカニズムを示す説明図である。 本発明の機能性組成物の構造的変化を化学式で示した説明図である。 本発明の材料合成過程を示す化学反応式である。 本発明の材料合成過程を示す化学反応式である。 FTIRスペクトルである。 本実施例で用いた材料のH NMRスペクトルである。 本実施例で用いた材料のH NMRスペクトルである。 本実施例で用いた材料のH NMRスペクトルである。 実施例1の機能性組成物のガラス転移温度と接着力の関係を示した特性図である。 架橋/非架橋接着力比のHMA/HEMA依存性を示した特性図である。 実施例1の機能性組成物のマレイミド比率と接着力の関係を示した特性図である。 各種状態における伸びと荷重の関係を示した特性図である。 再生回数に対する接着特性を示した特性図である。 剪断応力G/Gの放置時間依存性を示した特性図である。
<機能性組成物の組成と特徴>
本発明の機能性組成物は、骨格を形成するポリ(メタ)アクリレート樹脂の側鎖の末端基の一部がフランに置換された第1剤(下記式(A1)参照)と、マレイミド骨格を2以上有するポリマレイミドからなる第2剤からなり、温度可逆性接着機能をもつ組成物である。ここで、第1剤が主剤で、第2剤は架橋剤の役割を担う。
この機能性組成物は、温度可逆性接着機能をもつことから接着剤、特に温度可逆性で再使用可能な接着剤として使用することができる。例えば、仮留め用途の接着剤として使用でき、環境温度を制御することによって、物の接着状態を解消すること、および再び接着状態とすること、それを繰り返し行うことが可能である。
この機能性組成物は温度領域により3つの形態をもつ。第1の温度域は、50℃未満で、第1剤と第2剤の間で架橋を行っていない状態で、主に液相である。第2の温度領域は、50℃以上120℃未満で、第1剤と第2剤とで架橋した状態で、主に固相である。第3の温度域は、120℃以上で、第1剤と第2剤の間で架橋を行っていない状態で、主に液相である。なお、200℃以上では第1剤の分解が始まる。
ここで、0.01℃/sというような遅い速度で温度が変化してこれらの温度領域をまたがると各温度域に応じた架橋状態にあるが、10℃/sというような速い速度で温度が変化してこれらの温度領域をまたがると温度域をまたがる前の架橋状態を維持するという特性をもつ。
Figure 0007138923000001
この機能性組成物の反応メカニズムはDA反応、逆DA反応である。
図1に示すように、第1剤のポリマーの側鎖の末端のフラン基と第2剤のポリマレイミドがばらばらに存在する状態から、例えば80℃温度環境を与えると、フラン基とポリマレイミド基がDA反応により架橋し、強い接着力を生じる。そして、その状態から、例えば160℃温度環境を与えると、フラン基とポリマレイミド基との架橋が逆DA反応により解消し、接着力を失う。そして、その状態から、例えば環境温度を80℃にすると、再びDA反応を起こしてフラン基とポリマレイミド基がDA反応により架橋し、強い接着力を生じる。
このDA反応と逆DA反応は何度でも繰り返し行うことが可能な可逆反応であるため、この機能性組成物は繰り返し使用可能な温度可逆性組成物、温度可逆性接着剤になる。
発明者は、4MPaを超えるような強い接着力を生むDA反応、逆DA反応に基づく温度可逆性機能性組成物の研究を、試行錯誤を繰り返しながら、鋭意行った。その膨大な研究の中なら、第1剤として、ポリ(メタ)アクリレート樹脂の側鎖の末端基の一部がフランに置換された第1剤と、マレイミド骨格を2以上有するポリマレイミドからなる第2剤からなる組成物がその目的に適するものであることを見出した。
具体的には、第1剤として、下記式(A2)で示されるFMPH(ポリ(2-(((フラン-2-イルメチル)カルバモイル)オキシ)エチルメタクリレート-コ-ヘキシルメタクリレート))、FMPB((ポリ(2-(((フラン-2-イルメチル)カルバモイル)オキシ)エチルメタクリレート-コ-ブチルメタクリレート)))、FMPD((ポリ(2-(((フラン-2-イルメチル)カルバモイル)オキシ)エチルメタクリレート-コ-ドデシルメタクリレート)))を挙げることができる。この中でも、特に、FMPHは高い接着力が得られるので好ましい。なお、これらのポリマーは、単独で使用されても、複数種類のものが混合されて使用されても構わない。
Figure 0007138923000002
第2剤は、マレイミド骨格を2以上有するポリマレイミドである。マレイミド骨格が2以上あれば、フラン基とのDA反応により、三次元架橋できる。このようなマレイミド骨格を2以上有するポリマレイミドは特に限定されないが、ビスマレイミド、トリマレイミドが挙げられ、特に入手のしやすさ、品質、価格の面から、第2剤として、ビスマレイミドを好んで用いることができる。
第2剤として用いるビスマレイミドとしては、下記式(A3)に示される1,1′-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド、式(A4)に示されるビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、式(A5)に示されるトルエン-2,4-ビスマレイミド、式(A6)に示されるビス(マレイミド)メチルエーテルおよび式(A7)に示されるビス(マレイミド)ジエチレングリコールを挙げることができる。
また、ビスマレイミドの中でも、1,1′-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミドは品質安定性も高く、安価であるため特に好んで用いることができる。
Figure 0007138923000003
第1剤と第2剤の比率は、高い接着力を得る観点から、その比率を第1剤のフラン基1モルに対する第2剤のポリマレイミドのモル比で表して、0.6以上4.5以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1.2がさらに一層好ましい。
本発明の機能性組成物は、第1剤と第2剤のみからなる固相状あるいは液相状の様態に加え、溶媒を加えた液体状で供給することができる。溶媒を加えて液状とした場合は、塗布形成が容易になって、接着剤として用いる場合に使用しやすいという特徴が生まれる。ここで、溶媒としては、例えば、CHCl、THF、DCMなどを挙げることができる。接着面に本発明の機能性組成物を含む溶媒を塗布後に溶媒を揮発させて使用することができる。
<製造方法>
本発明の第1剤は以下に示す2段階の工程を経て合成される。
第1段階は、図3に示すように、メタクリル酸ヘキシル(HMA)などのメタクリル酸エステルとメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)をフリーラジカル重合法(FRP法)により共重合させる工程である。ここで、フリーラジカル重合法は、特に限定はないが、例えば図3に示されているように、75℃というような加温中でAIBN(2,2′-アゾビス(イソブチルニトリル))とDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)を触媒として用いた方法を挙げることができる。なお、図3中のpが2のときがメタクリル酸ブチル(BMA)、4のときがHMA、8のときがメタクリル酸デシル(DMA)である。
第2段階は、第1段階で作製されたポリマーの側鎖の末端がフラン基に置換されるように、共重合ポリマー化後修飾(PPM:Post Polymerization Modification)を行う。これは、イソシアネート基を含むフラン環の反応性が高いため、ポリマー側鎖の末端をフラン基とする所望の構造以外のものができるのを防ぐためである。共重合ポリマーが作製される以前でフラン基を導入しようとすると、主鎖の一部など好ましくない場所にフラン基が導入されやすい。
具体的には、図4に示すように、過剰量のフルフリルイソシアネートを加えて、55℃というような加温中で触媒反応を起こさせてフラン基に修飾する。触媒としては、例えば、DBTDA(ジブチルスズジアセテート)を挙げることができる。
なお、所望の第1剤が合成されたかは、例えば、H-NMR(Hydrogen Nuclear Magnetic Resonance)、FTIR(Fourier transform infrared spectrometer)、GPC(Gel Permeation Chromatography)測定により検証できる。
第2剤のポリマレイミドは汎用に市販されているので、それを使用すればよい。
<使用法>
本発明の機能性組成物は、接着させたり非接着にさせたり(剥がしたり)する対象の面に第1剤と第2剤を含む機能性組成物を被着させ、環境の温度を制御して使用する。前述のように、機能性組成物に溶媒を加えて対象の面に塗布して使用してもよい。
環境の温度制御は、温度のみに限らない。前述のように、昇温、降温の速度の制御によっても架橋の状態を制御できるので、昇温、降温の速度の制御によっても接着、非接着(剥離)の制御が可能になる。
<機能性材料作製方法>
最初に、本実施例で用いた機能性組成物の作製方法について述べる。
まず、2モル%のAIBNを準備し、アルゴンガスでパージしながら水凝縮器を備えた二口丸底フラスコに入れた。フラスコをアルゴンガスで2回充填した後、ミリモル当たり1.5mlの量で乾燥DMFをフラスコに注入し、15分間撹拌した。
次に、モノマーのHMA(和光純薬工業(株)製)およびHEMA(東京化成工業(株)製)を反応混合物に加え、反応混合物をアルゴンバブリングで1時間脱気した。ここで、HMAの量を2g(11.7mmol)とし、HEMAの量を、HMA:HEMAのモル比が1:1、2:1、3:1、4:1、10:1および20:1になるようにした合計6種類準備した。反応はアルゴン雰囲気下で、75℃、8時間行った。所定の時間経過後に反応混合物を冷却し、溶媒であるDMFを減圧下で除去した。
その後、固体の(粘着性の)残留物を少量のTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し、次いで過剰の水に沈殿させた。固体ポリマーを単離し、THFに再溶解させて過剰の水に再沈殿させ、ポリマー中に閉じ込められた痕跡量のモノマーを除去した。
しかる後、固体生成物を60℃で一晩真空乾燥し、白色固体を第1段階の最終生成物として得た。
水冷却器を備えた丸底二口フラスコに、アルゴンガスパージ下で、上記作製の試料であるランダム共重合体1gを入れ、アルゴンで2回充填した。
次に、乾燥DMFをフラスコに注入し、30分間撹拌し、アルゴンガスパージを継続した。
次いで、過剰量のフルフリルイソシアネート(Sigma Aldrich製)をシリンジによって反応混合物に注入した。
その後、DBTDAを混合物に加え、連続的に撹拌しながら、55℃で2時間反応させた。
しかる後、反応混合物を室温で冷却させ、その後溶媒であるDMFを減圧下で除去した。
次に、褐色の粘着性物質を少量のTHFに溶解させ、その後、過剰の水に沈殿させた。
固体生成物を分離し、再びTHFに溶解させ、続いて過剰の水中で沈殿させて微量の未反応フルフリルイソシアネートを除去した。
次いで、固体生成物を50℃で3時間真空乾燥させ、次いで室温で一晩乾燥させた。そして、褐色固体を得た。
次いで、固体生成物を60℃で一晩真空乾燥し、最終的に白色固体を最終生成物として得て第1剤とした。
なお、HMAとHEMAの比率が振られた6種類の第1剤が作製されたが、モル比でHMA:HEMA=1:1のものをFMP1、2:1のものをFMP2、3:1のものをFMP3、4:1のものをFMP4、10:1のものをFMP5、そして20:1のものをFMP6と名付けることとする。
第2剤としては、1,1′(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド(以下、BMIと称す)を和光純薬工業(株)から入手して使用した。
<構造評価>
作製された第1剤を、FTIRを用いて調べた。その一例を、乾燥させたFMP4を例にして図5に示す。同図中のP4は、FMP4作成中の第1段階(FRP)でのランダム共重合体を示す。なお、このFTIR測定では、KBrペレットを使用し、装置としてはJASCO製のFT-IR6100を使った。
その結果、FMP4では、イソシアネート基を示す波数2270cm-1のところにはピークは観測されず、フラン環を示す波数810,1010および1524cm-1のところにはピークが観測された。このことから、FMP4はフラン環がポリマーに結合していることが確認された。
次に、H-NMRを用いて、FMP4の構造をP4と比較して調べた。その結果を図6に示す。
ここで、各試料のHスペクトルは、JNM-ECX300(日本電子(株)製)を用い、25℃のDMSO-d(ジメチルスルホオキシド―重水素)溶液中で測定した。このDMSO-dは1%のTMS(テトラメチルシラン)を含む。また、化学シフト量は、TMSをリファレンスとしてppm表示で測定した。
なお、同図には、共鳴ピークの位置とそれに対応する分子式の部位がアルファベットで対応して示されている。
FMP4では認められずP4には認められる4.8~5.0ppmの共鳴ピークは、右側に示した分子式のaで示したところのプロトンによるものであり、FMP4ではその部分のOHが置換されていることがわかる。
また、7.6ppm、6.2~6.4ppm、6.5ppmおよび4.3ppmの共鳴ピークは、それぞれ「o」、「k+i」と「j」、「i」および「j」部位のプロトンによるものであり、FMP4では側鎖の末端にフラン基が形成されていることが確認された。
なお、同図中の*はDMF溶媒を、Xは水を示す。
また、第1剤のFMP4に第2剤のBMIを加えて熱処理を行ったときのH-NMR測定を行ったときの結果を図7および図8に示す。
80℃の熱処理を行うことで、同図中の化学式で示した「q+r」、「p」および「s+t」部位に対応する共鳴スペクトルの場所にピークが認められる。これらのピークは熱処理を与える前の初期および130℃で1時間加熱したときには認められない。80℃付近で、DA反応によりポリマーの架橋が起こっていることが確認された。また、この架橋は、80℃6時間ばかりでなく、80℃4時間でも、また80℃2時間の熱処理でも認められる。但し、80℃2時間の熱処理では、共鳴ピークの高さは4時間や6時間の場合より低くなっており、架橋の進行は少ないと考えられる。
<接着性評価>
この実施例における機能性組成物の接着性を重ね剪断接着試験により評価した。
具体的には、オートグラフAG-Xプラス((株)島津製作所製)を用い、10000Nのロードセルを使って接着力(引張剪断強度)の評価を行った。クロスヘッドの速度は2mm/minとし、接着面のオーバーラップ領域は25mm×10mmとした。試験方法の詳細はJISK6850に準拠している。
測定値は、各試験の標準誤差を伴う4回の測定の平均とした。 接合強度は最大荷重を面積で割った値として求めた。
測定の標準試料(被接着材)はアルミニウム(Al)とし、一部実験にはガラスと木を用いた。
金属基材であるアルミニウムは、ASTM D2651標準プロトコルに従って調製し、直ちに接着に使用した。金属基材の寸法は、8cm×2.5cm×0.1cmである。
ガラスの場合は、石鹸水で洗浄し、続いてエタノール、n-ヘキサンおよびアセトン中でそれぞれ2~3分間超音波処理した。これらの基材は室温(25℃)で乾燥され、直ちに使用した。
そして、上述の方法で作製された機能性組成物を40重量%のCHClに溶解させて、被接着材である双方の基材上に広げて滴下し、主溶媒であるCHClを蒸発させて除去した後に測定を行った。
機能性組成物のガラス転移温度Tgと接着力の関係を図9に示す。同図には、熱処理を伴わない架橋前と熱処理を行ってポリマー架橋後とが併せて示されている。試料はFMP1からFMP6と、それぞれにフラン基のモル量と等量のBMIと熱処理を加えてそれぞれを架橋させた架橋FMP1から架橋FMP6である。ここで、熱処理は80℃2時間とした。ガラス転移温度TgはDSC-60装置((株)島津製作所)を用いて窒素雰囲気下で測定した。サンプルホルダーにはアルミパンを、リファレンスとしてはα-アルミナ(Al)を用いた。
この結果から、FMP6からFMP1に向かうほど、すなわち材料を合成するときのHEMAに対するHMA比率が低いほどガラス転移温度Tgと接着力はともに上がることがわかる。
また、架橋するとガラス転移温度Tgは上がるが、接着力は、架橋FMP6および架橋FMP5では架橋前とあまり差はないのに対し、架橋FMP4から架橋FMP1では架橋前より大幅に接着力が上がることがわかる。ここで、架橋FMP4から架橋FMP1の接着力は飽和していて、接着力に大きな差はない。
この結果、架橋前後での接着力の差が最も大きいのがFMP4であり、FMP4における架橋前後での接着力の差は約6倍となる。
したがって、架橋前後の接着力の差という観点では、FMP4、すなわちHMA:HEMA=4:1が、可逆接着剤として最も好ましいといえる。
なお、架橋FPMx(xは1から6)を作製するときのFMPxのフラン基のモル数は、添加する第2剤のBMIのモル数と同じにした。
図10は、架橋させることによる接着力の向上のHMA/HEMA比(モル比)依存性を示した図である。ここで、架橋させることによる接着力の向上は、非架橋時の接着力に対する架橋時の接着力の比で表し、図9に示したデータを基に作成した。
本機能性組成物を可逆接着剤として使用する場合は、この接着力の比が大きいことが求められる。
図10から、HMA/HEMA比が、2以上10以下で接着力向上が目立ち始め、3以上7以下で接着力の比は4を超え、5で最大の接着力向上となることがわかる。
図11は、架橋された機能性組成物の接着力の、第2剤であるマレイミド(BMI)の第1剤のフラン基に対する比率Imal/fur(マレイミド比率、モル比)依存性を示す図である。ここで、第1剤としてはFMP4を用いた。また、同図には架橋されていないFMP4のみのときの接着力も参考までに記載している。
その結果、マレイミド比率Imal/furが0.6以上4.5以下で4MPaを超える接着力が得られ、1以上3以下で接着力はほぼ飽和した高い値となり、1.2で最大の接着力が得られた。
次に、実施例1の機能性組成物の環境温度変化速度に対するDA,逆DA特性を調べた。
そこでは、機能性組成物の第1剤はFMP4、第2剤のマレイミドはBMI、マレイミド比率Imal/furは1として、環境の降温速度を変えてその接着力を評価した。
最初に、被接着基材であるアルミニウムにこの機能性組成物を被着させ、80℃2時間(第2の温度域)の熱処理を行って第1剤と第2剤が架橋した架橋FMP4でこの基材を接着させた。
次に、150℃15分(第3の温度域)の熱処理を行った後、一方の試料は、室温(25℃、第1の温度域)まで15秒で急冷させ、急冷後の接着力を測定した。また、他方の試料は、1℃/2分の降温速度で室温まで徐冷し、徐冷後の接着力を測定した。
その測定の生データを図12に示す。図12には、架橋FMP4と、FMP4のみのときのデータも参考までに載せている。
その結果、架橋FMP4状態である80℃2時間の熱処理を行った段階での接着力は7.9±1.1MPaであったが、急冷後の接着力は2.0±0.4MPaに小さくなった。一方で、徐冷の場合は、5.9±0.5MPaと高い値を維持していた。
この機能性組成物は、第3の温度域である150℃まで温度を上げると逆DA反応が起こって架橋が解ける。そしてその状態から一気に室温まで下げるとDA反応が進行する前に第1の温度域に達するため、架橋が進行せず、接着力は弱いものとなる。
一方、徐冷の場合は、150℃から室温に至る過程で、第2温度域を十分な時間をかけて跨るため、第2温度域にいるときに架橋が進行し、強い接着力が得られる。
次に、再利用、繰り返し特性について調べた。
図13は、80℃2時間の熱処理を行って架橋させた状態(架橋FMP4)、その状態から一旦剥離し再度同じ熱処理を行った再生1回状態(1サイクル)、さらにもう一度剥離し再度同じ熱処理を行った再生2回状態(2サイクル)のときの接着力を示す。また、同図には、参考までに、架橋を行っていないFMP4のみの接着力も示した。
なお、このときの接着力は荷重/接着面積で求めた。
図13からわかるように、初期の架橋時の接着力7.9±1.1MPaに対し、再生1回を行ったときの接着力は初期のときの約88%である7.0±0.6MPaであり、再生2回を行ったときの接着力は初期のときの約95%である7.5±0.2MPaになった。
この結果から、繰り返し再利用しても、ほぼ同じ接着力が得られることが確認された。
次に、この機能性材料のストレス緩和特性について調べた。ストレス緩和時間τは、剪断応力G/Gの値が初期の値の1/eになる放置時間で定義される(非特許文献4参照)。ここで、Gは時刻tでの剪断応力であり、Gは初期(放置時間0)のGである。
架橋FMP4を用い、温度80℃、100℃、140℃の3水準で測定した規格化ストレスG/Gの放置時間依存性を図14に示す。
架橋解離の第3温度域にある140℃の熱処理を行ったときは、ストレス緩和時間τは約10秒となり、動的なDA、逆DA反応により急激にストレスが緩和されるのが確認された。
一方、架橋が起こる第2温度域にある80℃や100℃の熱処理を行ったときは、ストレス緩和時間τは4分以上と桁違いに長かった。
このことから、本願の機能性組成物は、粘弾性流体の性質をもち、その観点での適用にも道が開かれていることが確認された。
以上の実験は全て被接着基体としてアルミニウムを用いた結果である。ここでは、被接着材としてアルミニウム以外のものを用いたときの接着力、および異種材料間で接着したときの接着力を測定した。
その結果、上記と同じ機能性組成物と同じ熱処理条件(80℃2時間)を行ったときの接着力は、ガラス-ガラスが6.0MPa、木-木が5.2MPa、アルミニウム-木が8.2MPa、そしてアルミニウム-ガラスが6.4MPaとなり、何れの場合も4MPaを超える高い接着力を示した。本発明の機能性組成物は、アルミニウムのみならず様々な材料に対して4MPaを超える高い接着力を有することが確認された。
本発明により、4MPaを超える高い接着力を有するDA反応を利用した温度可逆性接着剤、温度可逆性機能性材料を提供することができる。本発明の温度可逆性接着剤、温度可逆性機能性材料により、環境の温度や昇温・降温速度を管理することで、物同士を、4MPaを超える接着力で接着させたり、剥がしたり(離したり)することが可能になる。すなわち、物同士を、4MPaを超える接着力で仮留めすることが可能になる。また、仮留め、剥離を薬剤を塗りなおすことなく繰り返し行うことが可能になるので、この作業の効率を大幅に高めることが可能になる。このため、幅広い産業での適用が期待される。

Claims (3)

  1. ポリ(メタ)アクリレートの側鎖の末端基の一部がフランに置換された第1剤、および架橋剤である第2剤を有し、
    前記第1剤は、2-(((フラン-2-イルメチル)カルバモイル)オキシ)エチルメタクリレートに対するヘキシルメタクリレートのモル比率が1以上4以下であるポリ(2-(((フラン-2-イルメチル)カルバモイル)オキシ)エチルメタクリレート-コ-ヘキシルメタクリレート)であり、
    前記第2剤は、1,1′-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミドであり、
    前記第1剤のフラン1モルに対する前記第2剤のビスマレイミドのモル比は、0.6以上4.5以下である、機能性組成物。
  2. 前記第1剤のフラン1モルに対する前記第2剤のビスマレイミドのモル比は、1以上3以下である、請求項記載の機能性組成物。
  3. 請求項1または2に記載の機能性組成物を有する、温度可逆性接着剤。
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