JP7135768B2 - 非線形計画問題の演算装置、方法及びプログラム - Google Patents
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Description
例えば製鉄業におけるコークスや焼結鉱の製造プロセスでは、各工場が保有する複数の原材料を配合して、製品を製造する。この場合に、目標となる製品の特性値や生産量を満たすように配合計画を立案しなければならない。また、製造プロセスにおける操業条件を満たすように配合計画を立案しなければならない。
このように目標となる製品の特性値や生産量、操業条件を満たすようにするための制約条件は、数学的に最適解を求めることが難しい関数を含む場合が多い。例えばコークスの品質を予測する推定式には、コークス強度等の構造的特性を表わす式が含まれるが、この推定式には、実験や理論に基づいた非線形関数が使用される。このように製造プロセスにおける数理計画問題の多くは、複雑な非線形計画問題となるため、実用時間内に精度の高い最適解を得ることが難しかった。
例えば特許文献1には、複数種の配合原材料を混合する配合計画を作成するためのシミュレータと、配合原材料の需給バランス制約を表す数式モデル、及び、混合後の性状制約を表す数式モデルを構築するモデル構築部と、モデル構築部により構築された数式モデルを用い、所定の目的関数に基づいて最適化計算を行い、シミュレータに対する指示を算出する計画部とを備え、混合後の性状制約を表す数式モデルが非線形の数式を含む場合、前記非線形の数式に代えて線形の数式を導入して数式モデルを定式化し、その線形の数式を含む数式モデルを用いた計画部による求解結果が前記非線形の数式を含む数式モデルを満たすか否かを確認する手法が開示されている。
[1] 線形制約条件と非線形制約条件とを含む制約条件の下で目的関数を最小化又は最大化する非線形計画問題を求解するための非線形計画問題の演算装置であって、
前記非線形制約条件を表わす非線形関数に中間変数を導入して分離可能関数に変換した上で区分線形近似して、制約条件を設定する設定手段と、
前記設定手段で設定した制約条件の下で前記非線形計画問題を求解する求解手段とを備え、
前記設定手段は、ランダムサンプリングにより、前記非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数のサンプルを複数生成し、前記サンプルを用いることにより、前記中間変数の上下限値を設定して、当該上下限値の範囲で、前記分離可能関数を構成する関数を区分線形近似することを特徴とする非線形計画問題の演算装置。
[2] 前記設定手段は、前記非線形制約条件に準じた条件を満たすように、前記非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数のサンプルを複数生成することを特徴とする[1]に記載の非線形計画問題の演算装置。
[3] 前記設定手段は、前記非線形関数を、前記中間変数を導入して一変数関数の和の形で表現することを特徴とする[1]又は[2]に記載の非線形計画問題の演算装置。
[4] 前記非線形計画問題は、複数の原材料を配合して製品を製造する製造プロセスにおいて、配合割合を決定変数とする配合計画問題であり、
前記設定手段は、ランダムサンプリングにより、配合割合をランダムに生成し、配合割合のサンプルを複数生成することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の非線形計画問題の演算装置。
[5] 前記設定手段は、前記分離可能関数を構成する各関数に対して、前記中間変数の上下限値の設定、及び区分線形近似を繰り返すことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の非線形計画問題の演算装置。
[6] 線形制約条件と非線形制約条件とを含む制約条件の下で目的関数を最小化又は最大化する非線形計画問題を求解するための、演算装置が実行する非線形計画問題の演算方法であって、
前記非線形制約条件を表わす非線形関数に中間変数を導入して分離可能関数に変換した上で区分線形近似して、制約条件を設定する設定ステップと、
前記設定ステップで設定した制約条件の下で前記非線形計画問題を求解する求解ステップとを有し、
前記設定ステップでは、ランダムサンプリングにより、前記非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数のサンプルを複数生成し、前記サンプルを用いることにより、前記中間変数の上下限値を設定して、当該上下限値の範囲で、前記分離可能関数を構成する関数を区分線形近似することを特徴とする非線形計画問題の演算方法。
[7] 線形制約条件と非線形制約条件とを含む制約条件の下で目的関数を最小化又は最大化する非線形計画問題を求解するためのプログラムであって、
前記非線形制約条件を表わす非線形関数に中間変数を導入して分離可能関数に変換した上で区分線形近似して、制約条件を設定する設定手段と、
前記設定手段で設定した制約条件の下で前記非線形計画問題を求解する求解手段としてコンピュータを機能させ、
前記設定手段は、ランダムサンプリングにより、前記非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数のサンプルを複数生成し、前記サンプルを用いることにより、前記中間変数の上下限値を設定して、当該上下限値の範囲で、前記分離可能関数を構成する関数を区分線形近似することを特徴とするプログラム。
線形制約条件(以下、単に線形制約と呼ぶ)と非線形制約条件(以下、単に非線形制約と呼ぶ)とを含む制約条件の下で目的関数を最小化又は最大化する非線形計画問題を求解する際に、非線形制約を表わす非線形関数が多変数関数である場合、この非線形関数を、中間変数を導入して一変数関数の和の形で表現することで、分離可能関数に変換することが考えられる。これにより、非線形関数の次元を減らし、区分線形近似に必要な変数を減らすことができる。
図1に、実施形態に係る配合計画立案装置100の機能構成を示す。配合計画立案装置100は、本発明を適用した非線形計画問題の演算装置として機能し、複数の異なる性質を持つ銘柄を配合して製品を製造する製造プロセスにおいて、配合割合を決定変数とし、目標となる製品の特性値や生産量、操業条件を満たし、かつ、製造に係るコストを最小化する配合計画を立案する。つまり、最適な配合割合を求める。本実施形態で取り扱う配合計画問題では、制約条件の少なくとも一部が、非線形関数で表わされる非線形制約となっている。
ここで、制約条件設定部103は、関数変換部103aと、上下限値設定部103bとを備える。
関数変換部103aは、非線形制約を表わす非線形関数が、分離可能関数であるか否かを判断する。分離可能関数とは、n次元のユークリッド空間の任意のx=(x1,x2,・・・,xn)Tに対して、関数fが下記のかたちで表わされる関数である。非線形関数が分離可能関数でない場合には、非線形関数に中間変数を導入して分離可能関数に変換し、一変数関数の和の形で表現する。
そこで、上下限値設定部103bは、ランダムサンプリングにより、非線形制約に準じた条件を満たすように、非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数(例えば決定変数である配合割合)のサンプルを複数生成し、これらサンプルを用いることにより、中間変数の上下限値を設定する。
そして、制約条件設定部103は、関数変換部103aで変換した分離可能関数を構成する関数(本実施形態では一変数関数)が非線形関数である場合には、上下限値設定部103bで設定した上下限値の範囲で、当該一変数関数を区分線形近似して、制約条件を設定する。
求解結果の妥当性を判定する仕組みとして、求解部105で得られた配合割合を、制約条件設定部103による区分線形近似後の関数に代入して得られた計算値と、元の非線形制約に代入して得られた理論計算値とを比較する。そして、計算値と理論計算値との差が所定の条件を満たすまで、分割数設定部102で分割数を変更して、制約条件設定部103、目的関数設定部104及び求解部105による配合計画問題の設定及び求解を繰り返す。
出力装置110は、出力部107から送信された求解結果を出力するディスプレイ等の表示装置、音声情報を出力するスピーカ等の音声出力装置等であってもよい。また、出力装置110は、出力部107から送信された求解結果を不図示の記憶領域に保存、登録する記憶装置等であってもよい。
図2は、実施形態に係る配合計画立案装置100による配合計画の立案方法の処理を示すフローチャートである。
ステップS1で、入力部101は、例えばデータベース108から配合計画を立案する上で必要になる各銘柄の性状情報、操業条件情報、コスト情報等のデータを取り込む。例えば表1に示すように、各銘柄の配合割合に関して上下限値の情報が取り込まれる。
本実施形態において制約条件は、式(1)のように線形関数で表わされる線形制約と、式(2)のように非線形関数で表わされる非線形制約とに分けられる。
式(2)のgi(x)は非線形関数であり、iは制約の種類を表わす。例えば非線形関数gi(x)は、製鉄業であればコークス強度等、非線形性が強い特性値を表わす。式(2)の非線形関数gi(x)は、多変数関数であったり、非凸関数であったり、微分不可能な関数であったりする。diは定数であり、gi(x)の下限値を表わす。
図4を参照して、ステップS303のランダムサンプリングの詳細を説明する。
ここで、drs iは、ランダムサンプリングを行うときの非線形関数gi(x)のしきい値である。しきい値drs iの条件が厳しい場合、本来最適化で解くべき実行可能領域をサンプリングによって損失する可能性が存在する。このため、通常、しきい値drs iの値は、元の非線形制約のしきい値diよりも緩和した値を与える。例えばしきい値diは500であるので、しきい値drs iは非線形制約を緩和する500以下の値を与えればよい。本実施形態では、しきい値di,drs iともに500とした。
中間変数vkの範囲を正確に定めるには、中間変数vkの範囲を主問題の制約条件式(1)、(2)から逸脱しないようにしなければならない。しかしながら、式(2)の非線形関数を考慮する必要があるため、計算が難しい。もし、変数の範囲が実操業範囲から大きく逸脱した場合は、配合銘柄の品質に係る非線形制約の関数自体が未定義となり、区分線形近似自体が行えない、といった事態を招く可能性がある。
そこで、本発明者は、中間変数vkの範囲を設定するにあたり、非線形関数を近似した制約条件を用いて範囲を限定すればよいと考えた。図5に、変数の範囲を決定するイメージを示す。非線形制約に対して、配合割合の乱数を発生させ、非線形制約に準じた条件を満たすサンプルを抽出し、サンプル結果を凸関数で近似することで、変数の範囲を決定できると考えた。
ステップS402で、表1の例のように与えられた各銘柄の配合割合の上下限値の範囲内で配合割合をランダムに生成する。
ステップS403で、ステップS402において生成した全銘柄の配合割合の合計値が計画値の100%であるか否かを判定し、100%である場合、ステップS406に移行し、そうでない場合、ステップS404に移行する。
ステップS404で、銘柄をランダムに選択する。
ステップS405で、ステップS404において選択した銘柄の配合量を、全銘柄の配合割合の合計値が計画値の100%に近づくように調整する。具体的には、選択した銘柄の配合量をx、調整後の配合量をx'、銘柄の配合割合の上下限値をそれぞれxmin、xmaxと置く。次に、全銘柄の配合割合の合計値が100%を超えていた場合、xminからxの間でランダムな値を生成し、生成した値をx'として採用する。また、全銘柄の配合割合の合計値が100%を下回っていた場合、xからxmaxの間でランダムな値を生成し、生成した値をx'として採用する。その後、ステップS403に移行し、再度、配合割合の合計値が100%であるか否かを判定する。以上の手順を繰り返すことで、全銘柄の配合割合の合計値が計画値の100%となるサンプルを得ることができる。
以上のステップS304~S306を繰り返すことにより、すべての中間変数に対して、変数同士の関係を数式モデル化し、さらにすべての中間変数に対して上下限値を設定することができる。
そして、ステップS307で、gi(x)≧diを数式モデルに追加すれば、非線形制約を含む制約条件を設定することができる。
以上が、ステップS3の制約条件の設定処理の詳細である。
求解結果の妥当性を判定する仕組みとして、ステップS5で得られた配合割合を、ステップS3での区分線形近似後の関数に代入して得られた計算値と、元の非線形制約に代入して得られた理論計算値とを比較する。そして、計算値と理論計算値との差が所定の条件を満たすまで、ステップS2で分割数Kを変更して、ステップS3~S5の非線形計画問題の設定及び求解を繰り返す。
これに対して、本手法を用いた場合は、上述したようにv4の範囲が7.74≦v4≦14.29と正の範囲に限定されており、関数は発散していない。したがって、本手法を用いることで、近似範囲を適切に決定し、高い近似精度の区分線形関数を構築できることが確認することができた。
また、本発明は、本発明の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
101:入力部
102:分割数設定部
103:制約条件設定部
104:目的関数設定部
105:求解部
106:判定部
107:出力部
Claims (7)
- 線形制約条件と非線形制約条件とを含む制約条件の下で目的関数を最小化又は最大化する非線形計画問題を求解するための非線形計画問題の演算装置であって、
前記非線形制約条件を表わす非線形関数に中間変数を導入して分離可能関数に変換した上で区分線形近似して、制約条件を設定する設定手段と、
前記設定手段で設定した制約条件の下で前記非線形計画問題を求解する求解手段とを備え、
前記設定手段は、ランダムサンプリングにより、前記非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数のサンプルを複数生成し、前記サンプルを用いることにより、前記中間変数の上下限値を設定して、当該上下限値の範囲で、前記分離可能関数を構成する関数を区分線形近似することを特徴とする非線形計画問題の演算装置。 - 前記設定手段は、前記非線形制約条件に準じた条件を満たすように、前記非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数のサンプルを複数生成することを特徴とする請求項1に記載の非線形計画問題の演算装置。
- 前記設定手段は、前記非線形関数を、前記中間変数を導入して一変数関数の和の形で表現することを特徴とする請求項1又は2に記載の非線形計画問題の演算装置。
- 前記非線形計画問題は、複数の原材料を配合して製品を製造する製造プロセスにおいて、配合割合を決定変数とする配合計画問題であり、
前記設定手段は、ランダムサンプリングにより、配合割合をランダムに生成して、配合割合のサンプルを複数生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非線形計画問題の演算装置。 - 前記設定手段は、前記分離可能関数を構成する各関数に対して、前記中間変数の上下限値の設定、及び区分線形近似を繰り返すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非線形計画問題の演算装置。
- 線形制約条件と非線形制約条件とを含む制約条件の下で目的関数を最小化又は最大化する非線形計画問題を求解するための、演算装置が実行する非線形計画問題の演算方法であって、
前記非線形制約条件を表わす非線形関数に中間変数を導入して分離可能関数に変換した上で区分線形近似して、制約条件を設定する設定ステップと、
前記設定ステップで設定した制約条件の下で前記非線形計画問題を求解する求解ステップとを有し、
前記設定ステップでは、ランダムサンプリングにより、前記非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数のサンプルを複数生成し、前記サンプルを用いることにより、前記中間変数の上下限値を設定して、当該上下限値の範囲で、前記分離可能関数を構成する関数を区分線形近似することを特徴とする非線形計画問題の演算方法。 - 線形制約条件と非線形制約条件とを含む制約条件の下で目的関数を最小化又は最大化する非線形計画問題を求解するためのプログラムであって、
前記非線形制約条件を表わす非線形関数に中間変数を導入して分離可能関数に変換した上で区分線形近似して、制約条件を設定する設定手段と、
前記設定手段で設定した制約条件の下で前記非線形計画問題を求解する求解手段としてコンピュータを機能させ、
前記設定手段は、ランダムサンプリングにより、前記非線形関数を構成する変数のうち中間変数を除いた独立変数のサンプルを複数生成し、前記サンプルを用いることにより、前記中間変数の上下限値を設定して、当該上下限値の範囲で、前記分離可能関数を構成する関数を区分線形近似することを特徴とするプログラム。
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