以下、本発明の繊維成形物および繊維成形物の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の繊維成形物の製造方法を実施するための製造装置および製造工程の第1実施形態を示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。このことは、図2~図5についても同様である。
まず、繊維成形物製造装置10を用いて製造された繊維成形物3について説明する。
繊維成形物3は、凹部31を有する有底筒状の第1構造体3Aを有する。凹部31は、平均の絞り深さ(図1中の「D」)が10mm以上、150mm以下とされる。
凹部31の容積は、特に限定されないが、例えば、1cm3、以上1000cm3以下であるのが好ましく、5cm3以上、500cm3以下であるのがより好ましい。これにより、物品を十分に収納、保護することができる。
この第1構造体3Aは、例えば、梱包材、緩衝材、緩衝材等を充填する容器として用いることができる。第1構造体3Aは、繊維と、繊維同士を結着させるバインダーとを含む材料で構成されている。
繊維としては、植物由来の繊維や、羊毛等の動物由来の繊維や、ポリアミド、テトロン、レーヨン、キュプラ、アセテート、ビニロン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、アラミド等の樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合したものが挙げられる。
中でも、繊維としては、植物由来の繊維であるのが好ましい。
植物由来の繊維としては、例えば、セルロース繊維、綿、リンター、カボック、亜麻、大麻、ラミー、絹等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、このなかでも、セルロース繊維を主とするのが好ましい。セルロース繊維は入手が容易で、第1構造体3Aへの成形性に優れる。
セルロース繊維としては、木質系パルプに由来するものが好ましい。木質系パルプとしては、バージンパルプ、クラフトパルプ、晒ケミサーモメカニカルパルプ、合成パルプ、古紙や再生紙に由来するパルプ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロース、すなわち狭義のセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、狭義のセルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものが該当する。
繊維の平均繊維長さは、特に限定されないが、0.5mm以上、2.0mm以下であるのが好ましく、0.7mm以上、1.8mm以下であるのがより好ましい。これにより、後述するバインダーでの結着が良好になされ、成形性に優れ、成形後に適度な剛性が得られる。
繊維の平均繊維幅は、特に限定されないが、5μm以上、50μm以下であるのが好ましく、7μm以上、40μm以下であるのがより好ましい。これにより、後述するバインダーでの結着が良好になされ、成形性に優れ、成形後に適度な剛性が得られる。
また、同様の理由から、植物由来の繊維の平均アスペクト比、すなわち平均幅に対する平均長さの比率は、3以上、600以下であるのが好ましく、10以上、400以下であるのがより好ましい。
第1構造体3Aの構成材料中の繊維の含有量は、特に限定されないが、50重量%以上、80重量%以下であるのが好ましく、60重量%以上、75重量%以下であるのがより好ましい。このような含有量であると、有底筒状への成形性に優れ、軽量でかつ十分な剛性の第1構造体3Aが得られる。
また、第1構造体3Aの構成材料において、繊維全体中の植物由来の繊維、特にセルロース繊維の含有量は、特に限定されないが、60重量%以上、100重量%以下であるのが好ましく、75重量%以上、100重量%以下であるのがより好ましい。
繊維同士を結着させるバインダー、すなわち結着樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂のいずれをも用いることができるが、主に、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66等のポリアミド(ナイロン:登録商標)、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に好ましいものは、ポリエステルまたはこれを含む樹脂である。また、ポリ乳酸、ポリカプロラクタン、変性でんぷん、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等のバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックを含んでいてもよい。これにより、環境適合性が向上する。また、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を含んでいてもよい。
第1構造体3Aの構成材料に含有するバインダーの形態は、特に限定されないが、粒状で添加されたものであるのが好ましい。特に、バインダーは、平均粒径が1μm以上、500μm以下である粉体として添加されたものであるのが好ましく、平均粒径が3μm以上、400μm以下である粉体として添加されたものであるのがより好ましい。これにより、繊維に対し樹脂が均一に分散され易く、剛性にムラのない第1構造体3Aを得ることができる。
なお、粒子の平均粒径としては、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した体積平均の粒度MVD(Mean Volume Diameter)を用いることできる。レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置、すなわち、レーザー回折式粒度分布測定装置では、粒度分布を体積基準で測定することができる。
第1構造体3Aの構成材料中のバインダーの含有量は、本発明では、20重量%以上、40重量%以下とされる。これにより、平均の絞り深さが10mm以上、150mm以下の凹部31を有する有底筒状の第1構造体3Aを製造する際の成形性に優れる。すなわち、繊維同士をムラなく良好に結着しつつ、成形時に生じる皺や破れを防止することができる。また、得られた第1構造体3Aは、十分な強度および適度な剛性を有する。
第1構造体3Aの構成材料中のバインダーの含有量が少なすぎると、繊維同士の結着が不十分となり、成形時に生じる皺や破れを防止することができない。一方、第1構造体3Aの構成材料中のバインダーの含有量が多すぎると、バインダーの種類にもよるが、剛性が高くなり過ぎて、比較的深い凹部31を成形しようとしたときに皺や破れが生じる。
第1構造体3Aでは、バインダーの含有量が上記数値範囲内であれば、平均の絞り深さが10mm以上、150mm以下の凹部31を有する有底筒状の第1構造体3Aを製造する際の成形性に優れるが、第1構造体3Aの構成材料中のバインダーの含有量は、25重量%以上、35重量%以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果がより確実に得られる。
また、第1構造体3Aの構成材料中、繊維は、ランダムに配置されていること、すなわちランダム配向となっているのが好ましい。ここで、ランダム配向とは、配向度が低いことと同義である。例えば、湿式(ウエット方式)の抄紙方法で製造されたシートを後述するような方法で成形すると、繊維の配向の向きによっては、成形時に生じる皺や破れが生じる可能性が出てくるが、繊維がランダムに配向されていることにより、さらに確実に成形時に皺や破れが生じるのを防止することができる。
第1構造体3Aの構成材料中、繊維をランダム配向とするには、後述する製造方法のように、乾式で、すなわちドライファイバーテクノロジーで第1構造体3Aを製造するのが好ましい。すなわち、乾式で解繊された解繊物に基づく繊維であるのが好ましい。
第1構造体3Aの構成材料中には、前記繊維およびバインダー以外の成分が含まれていてもよい。例えば、以下のような添加剤が挙げられる。添加剤としては、例えば、中和剤、定着剤、粘剤、サイズ剤、紙力増強剤、消泡剤、保水剤、耐水化剤、繊維の凝集や樹脂の凝集を抑制するための凝集抑制剤、カーボンブラック、白色顔料等の着色剤、難燃剤等が挙げられる。
このような第1構造体3Aにおける構成材料の密度は、0.5g/cm3以上、2.0g/cm3以下であるのが好ましく、0.7g/cm3以上、1.8g/cm3以下であるのがより好ましい。これにより、第1構造体3Aの成形時に皺や破れが生じるのを効果的に防止することができるとともに、得られた第1構造体3Aは、十分な強度を有し、かつ、適度な衝撃吸収性を有し、緩衝材としても優れる。
第1構造体3Aの平均厚さは、特に限定されないが、0.15mm以上、2.0mm以下であるのが好ましく、0.2mm以上、1.7mm以下であるのがより好ましい。これにより、繊維成形物3は、十分な剛性を有する。
なお、繊維成形物3の厚さは、繊維成形物3全体に渡って均一である場合に限らず、厚さが異なっている部分や、厚さが徐々に変化している部分があってもよい。例えば、底部は、側壁部よりも厚くてもよい。
また、繊維成形物3の底部、すなわち、凹部31と反対側から見た形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、それ以上の多角形、星形等の異形等であってもよい。また、繊維成形物3の底部が角部を有する形状であった場合、角部は、丸みを帯びていてもよい。
また、凹部31の底面の平面視の形状は、特に限定されず、前述したような形状とすることができる。また、繊維成形物3の底部よりも上側、すなわち、筒状部の形状も特に限定されず、前述したような形状と対応する形状することができる。
以上述べたように、繊維成形物3は、繊維と、繊維同士を結着させるバインダーとを含む材料で構成され、平均の絞り深さが10mm以上150mm以下の凹部31を有する形状をなす第1構造体3Aを有し、構成材料中のバインダーの含有量は、20重量%以上40重量%以下である。これにより、繊維同士をムラなく良好に結着しつつ、第1構造体3Aの成形時に生じる皺や破れを防止することができる。また、得られた第1構造体3Aは、十分な強度および適度な剛性を有する。
次に、本発明の繊維成形物の製造方法を実行する繊維成形物製造装置10について説明する。
図1に示す繊維成形物製造装置10は、原料供給部11と、粗砕部12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、ほぐし部18と、第2ウェブ形成部19と、シート形成部20と、第1成形部21と、を備えている。また、繊維成形物製造装置10は、加湿部251と、加湿部252と、加湿部253と、加湿部254と、加湿部255と、加湿部256と、ブロアー261と、ブロアー262と、ブロアー263とを備えている。
また、繊維成形物製造装置10が備える各部、例えば、原料供給部11、粗砕部12、解繊部13、選別部14、第1ウェブ形成部15、細分部16、混合部17、ほぐし部18、第2ウェブ形成部19、シート形成部20、第1成形部21等は、それぞれ、制御部28と電気的に接続されている。そして、これら各部の作動は、制御部28によって制御される。制御部28は、CPU(Central Processing Unit)281と、記憶部282とを有している。CPU281は、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。記憶部282には、例えば、繊維成形物の成形までのプログラム等の、各種プログラムが記憶されている。また、この制御部28は、繊維成形物製造装置10に内蔵されていてもよいし、外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。また、外部機器は、例えば、繊維成形物製造装置10とケーブル等を介して通信される場合、無線通信される場合、繊維成形物製造装置10と例えばインターネットのようなネットワークを介して接続されている場合等がある。またCPU281と、記憶部282とは、例えば、一体化されて、1つのユニットとして構成されていてもよいし、CPU281が繊維成形物製造装置10に内蔵され、記憶部282が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよし、記憶部282が繊維成形物製造装置10に内蔵され、CPU281が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。
また、繊維成形物製造装置10では、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、ほぐし工程と、第2ウェブ形成工程と、シート加圧形成工程と、切断工程と、第1成形工程とがこの順に実行される。
以下、各部の構成について説明する。
原料供給部11は、粗砕部12に原料M1(基材)を供給する原料供給工程を行なう部分である。この原料M1としては、前述した植物由来の繊維、すなわちセルロース繊維を含むシート状材料であるのが好ましい。また、原料M1は、織布、不織布等、形態は問わない。また、原料M1は、例えば、古紙を解繊して製造されたリサイクルペーパー(再生紙)や、ユポ紙(登録商標)に代表される合成紙であってもよい。
粗砕部12は、原料供給部11から供給された原料M1を大気中(空気中)等の気中で粗砕する粗砕工程を行なう部分である。粗砕部12は、通常は、シュレッダーで構成されており、一対の粗砕刃121と、シュート(ホッパー)122とを有している。
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1を粗砕して、すなわち、裁断して、短冊状の小片である粗砕片M2(シュレッダー片)にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上、70mm以下の小片であるのがより好ましい。
シュート122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、シュート122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
また、シュート122の上方には、加湿部251が一対の粗砕刃121に隣り合って配置されている。加湿部251は、シュート122内の粗砕片M2を加湿するものである。この加湿部251は、水分を含む図示しないフィルターを有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を粗砕片M2に供給する気化式、あるいは温風気化式の加湿器で構成されている。加湿空気が粗砕片M2に供給されることにより、粗砕片M2が静電気によってシュート122等に付着するのを抑制することができる。
シュート122は、流路を構成する管241を介して、解繊部13に接続されている。シュート122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行なう部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、ローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。
また、解繊部13は、ローターの回転により、粗砕部12から選別部14へ向かう気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の移送が促進される。
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行なう部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1における繊維は、その後のシートSの製造、さらには繊維成形物3の製造に適したサイズのものとなっている。この値は、前述した通りである。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、管242より解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。そして、第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側(下流側)が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
ドラム部141の網の目開きを選択することにより、ドラム部141を通過する第1選別物M4-1中の繊維のサイズを所定の範囲に設定することができる。また、後述するメッシュベルト151の目開きを選択することにより、メッシュベルト151を通過する第1選別物M4-1中の繊維のサイズを所定の範囲に設定することができる。これらの選択を行うことで、繊維成形物3の構成材料中の繊維のサイズ、特に繊維の平均繊維長さを前述したような適正な値にすることができる。
また、ドラム部141を通過した第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部(分離部)15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行なう部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト(分離ベルト)151と、3つの張架ローラー152と、吸引部(サクション機構)153とを有している。
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、その上部に第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152は、モーター等の駆動源、変速機等を有する図示しない駆動部に連結されており、この駆動部の駆動により回転駆動し、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5を形成する。
また、第1選別物M4-1には、異物CM、すなわち、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。異物CMは、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような異物CMは、後述する回収部27に回収されることとなる。
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引することができる。これにより、メッシュベルト151を通過した異物CMを空気ごと吸引することができる。
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された異物CMは、回収部27に回収される。
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、異物CMが除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
ハウジング部142には、加湿部252が接続されている。加湿部252は、加湿部251と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
選別部14の下流側には、加湿部255が配置されている。加湿部255は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調節される。この調節により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
加湿部255の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行なう部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
ハウジング部162には、加湿部253が接続されている。加湿部253は、加湿部251と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と樹脂Pとを混合する混合工程を行なう部分である。この混合部17は、樹脂供給部171と、管172と、ブロアー173とを有している。
管172は、細分部16とほぐし部18とを接続しており、細分体M6と樹脂Pとの混合物M7が通過する流路である。
管172の途中には、樹脂供給部171が接続されている。樹脂供給部171は、スクリューフィーダー174を有している。このスクリューフィーダー174が回転駆動することにより、樹脂Pを粉体または粒子として管172に供給することができる。管172に供給された樹脂Pは、細分体M6と混合されて混合物M7となる。ここで、樹脂Pは、後工程で繊維同士を結着させるバインダーであり、その含有量、組成および粒径は、前述した通りである。
なお、樹脂供給部171から供給されるものとしては、樹脂Pの他に、前述した添加剤が必要に応じ含まれていてもよい。この添加剤は、樹脂Pとは別に供給しても、予め樹脂Pに含ませた(複合化した)ものとして樹脂供給部171から供給してもよい。
また、管172の途中には、樹脂供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173が有する羽根等の回転部の作用により、細分体M6と樹脂Pとが混合される。また、ブロアー173は、次工程を行うほぐし部18へ向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と樹脂Pとを撹拌、混合することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と樹脂Pとが均一に分散した状態で、ほぐし部18に流入することができる。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
なお、細分部16から管172に流入する細分体M6に対する、樹脂供給部171からの樹脂Pの供給量を調整することにより、混合物M7中の繊維と樹脂Pとの配合比を設定することができる。この設定は、例えば、制御部28の制御により、スクリューフィーダー174の回転速度を調整して、単位時間当たりの樹脂Pの供給量を調整することで可能となる。このような設定を行うことで、繊維成形物3の構成材料中の繊維の含有量、または樹脂の含有量を前述したような適正な値にすることができる。
ほぐし部18は、混合物M7における、互いに絡み合った繊維同士をほぐすほぐし工程を行なう部分である。ほぐし部18は、ドラム部181と、ドラム部181を収納するハウジング部182とを有する。
ドラム部181は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部181には、混合物M7が流入してくる。そして、ドラム部181が回転することにより、混合物M7のうち、網の目開きよりも小さい繊維等が、ドラム部181を通過することができる。その際、混合物M7がほぐされることとなる。
なお、ドラム部181は、回転するドラム形状に限定されず、面内方向に振動する、目開きを有する篩いでもよく、スプレーのように混合物M7を噴射するような構成のものであってもよい。
そして、ドラム部181でほぐされた混合物M7は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部181の下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。従って、繊維が配向性の無い状態でランダムに堆積される。第2ウェブ形成部19は、混合物M7から第2ウェブM8を形成する第2ウェブ形成工程を行なう部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト(分離ベルト)191と、張架ローラー192と、吸引部(サクション機構)193とを有している。
メッシュベルト191は、無端ベルトであり、混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
また、張架ローラー192は、モーター等の駆動源、変速機等を有する図示しない駆動部に連結されており、この駆動部の作動によって、所定の回転速度で回転することができる。駆動部の作動は、制御部28により制御され、例えば、張架ローラー192の回転速度を可変とする、特に、回転速度を多段階または無段階に設定とすることもできる。
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引することができる。これにより、メッシュベルト191上の混合物M7、すなわち第2ウェブM8を下方へ向けて吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進されるとともに、後述する第2ウェブM8の厚さの調節を促進することができる。
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。ブロアー263の作動は、制御部28により制御されている。
吸引部193にて吸引した気流によりメッシュベルト191を通過した混合物M7の一部は、ブロアー263の気流によって図示しない上流の経路に戻され、例えば管241内やハウジング部162内に供給されることにより再利用することができる。
このように、繊維成形物製造装置10は、メッシュベルト191を介してメッシュベルト191上の第2ウェブM8(堆積物)を吸引する吸引部193を有する。これにより、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進されるとともに、後述する第2ウェブM8の厚さの調節を促進することができる。なお、メッシュベルト191上では、繊維のランダムな配向性、及び混合物M7の分散性は、概ね維持される。
メッシュベルト191の目開きを選択すること、および吸引部193の吸引の強さを調整すること等により、メッシュベルト191を通過する混合物M7中の繊維のサイズ、特に繊維の平均繊維長さをさらに適正な範囲に微調整することができる。これにより、繊維成形物3の構成材料中の繊維のサイズ、特に繊維の平均繊維長さを前述したような適正な値により近づけることができる。
ハウジング部182には、加湿部254が接続されている。加湿部254は、加湿部251と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部182内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング部182内を加湿することができ、よって、混合物M7がハウジング部182の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
ほぐし部18の下流側には、加湿部256が配置されている。加湿部256は、加湿部255と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調節される。この調節により、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
なお、加湿部251~加湿部256までに加えられる水分量(合計水分量)は、例えば、加湿前の材料100質量部に対して0.5質量部以上、20質量部以下であるのが好ましい。
第2ウェブ形成部19の下流側には、シート形成部20が配置されている。シート形成部20は、第2ウェブM8からシートSを形成するシート形成工程を行なう部分である。このシート形成部20は、シートSの加圧成形を行う加圧部201および加熱部202と、所望のサイズに切断してシートSとする切断部205とを有している。
加圧部201は、第2ウェブM8の搬送経路を挟んで上下にそれぞれ配置された一対のカレンダーローラー203を有し、これらのカレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加圧する。この場合、第2ウェブM8を加熱せずに、すなわち含まれる樹脂Pを溶融することなく加圧する。これにより、第2ウェブM8は厚さ方向に圧縮され、密度が高められる。そして、加圧部201を経た第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
加熱部202は、第2ウェブM8の搬送経路を挟んで上下にそれぞれ配置された一対の加熱ローラー204を有し、これらの加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧する。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、樹脂Pが溶融し、この溶融した樹脂Pを介して繊維同士が結着する。これにより、シートSが形成される。シートSは、第2ウェブM8に比べ、より形状保持性の高いものであればよい。従って、第2ウェブM8内の樹脂Pは、完全に溶融固化して繊維同士を結着する場合の他、樹脂Pの全部または一部が半溶融状態で、繊維を完全に結着していない状態であってもよい。以下、この状態を「仮結着状態」と言う。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
加熱部202を経て得られたシートSは、下流側に配置された切断部205に向けて搬送される。
切断部205は、シートSを所定の長さ(サイズ)に切断する切断工程を行なう部分である。この切断部205は、シートSの搬送経路を挟んで上下にそれぞれ配置された一対の切断刃206を有する。両切断刃206は、接近、離間するように作動して、シートSをその搬送方向と交差する方向、特に直交する方向に切断する。両切断刃206は、シートSの搬送速度に対応した所定のタイミングで作動し、シートSを所望に長さに切断する。なお、図示しないが、シートSに対しては、搬送方向と平行な方向に切断を行って、シートSの幅を所望の長さに調整してもよい。この場合、シートSの幅方向の一端部と他端部とを切断除去して、シートSを所望の幅に調整する。以上のようにして、シート形成部20によりシートSが成形される。
このような繊維成形物製造装置10では、切断部205およびその下流側の各部位が、シートを形成する工程を行う。
切断部205の下流側には、第1成形部21が配置されている。第1成形部21は、シートSから繊維成形物3を成形する工程を行なう部分である。
切断部205にて所望に大きさに調整されたシートSは、第1成形部21へ搬送される。第1成形部21は、下型215と、上型216とを有する。下型215には、製造する繊維成形物3の形状に対応した凹形状のキャビティーが形成され、上型216には、前記キャビティーに対応した凸形状が形成されている。下型215および上型216は、例えば金属材料で構成されている。また、下型215および上型216には、リング状のヒーター217が内蔵され、成形時に加熱可能となっている。加熱する場合、加熱温度は、シートS中に含まれる樹脂P、すなわち、バインダーの軟化点または融点以上の温度とされ、例えば、60℃以上、180℃以下程度とされる。
下型215と上型216との間にシートSを挿入し、樹脂Pの融点以上の温度に加熱しつつ下型215と上型216とでシートSを加熱加圧することにより、凹部31を有する第1構造体3Aが成形される。
加熱しながら成形することにより、バインダーが溶融して変形するため、繊維の変形に追従することができる、よって、成形時に生じる皺や破れをより効果的に防止することができる。
また、前述したように、シートSの構成材料中のバインダーの含有量が、20重量%以上、40重量%以下であるため、繊維同士をムラなく良好に結着しつつ、成形時に生じる皺や破れを防止することができる。また、得られた第1構造体3Aは、十分な強度および適度な剛性を有する。
また、成形時の下型215の押圧力、すなわち、成形荷重は、100kgf以上、20000kgf以下であるのが好ましく、300kgf以上、10000kgfであるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより確実に得ることができる。
また、成形時にシートSに加わる圧力、すなわち、成形圧力は、0.1kgf/cm2以上、100kgf/cm2以下であるのが好ましく、0.1kgf/cm2以上、100kgf/cm2以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより確実に得ることができる。
なお、成形圧力は、繊維成形物3の全体にわたって一定であってもよく、部分的に異なっていてもよい。例えば、底部等、比較的高い剛性が要求される部分の圧力を部分的に高めてもよい。
なお、本工程を経た後に、第1構造体3Aは、下型215および上型216から離型され、冷却される。
また、第1成形部21での成形時に、加熱を省略してもよい。これにより、冷却する工程を省略することができ、生産性が高くなる。さらに、第1構造体3Aの内壁面の柔軟性を確保することができる。その結果、例えば、鏡面加工された物品を収納しても、目立つ程度の傷が付くのを防止することができる。この場合、下型215および上型216を、例えば、ケミカルウッドで構成することにより、上記効果をより顕著に発揮することができる。
このように繊維成形物の製造方法は、繊維と、繊維同士を結着させるバインダーとを含む材料で構成され、構成材料中のバインダーの含有量が、20重量%以上、40重量%以下である材料で構成されたウェブを加圧してシートを形成する工程と、シートを少なくとも1回加圧して、平均の絞り深さ10mm以上、150mm以下の凹部を有する形状の第1構造体を成形する工程と、を実行する。これにより、繊維同士をムラなく良好に結着しつつ、第1構造体3Aの成形時に生じる皺や破れを防止することができる。また、得られた第1構造体3Aは、十分な強度および適度な剛性を有する。
<第2実施形態>
図2は、本発明の繊維成形物の製造方法を実施するための製造装置および製造工程の第2実施形態を示す図である。以下、図2を参照しつつ第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態では、繊維成形物3は、前述した第1構造体3Aと、凹部31内に充填された第2構造体3Bとを有している。第2構造体3Bは、第1構造体3Aよりも密度が低い。これにより、第1構造体3Aよりも緩衝作用が高く、緩衝材として優れる。例えば、第2構造体3Bを押しつぶすように、凹部31内に物品を挿入することにより、物品と第2構造体3Bとが密着し、物品を保護することができる。
また、第2構造体3Bは、前述した第1構造体3Aの構成材料と同じ材料で構成されている。これにより、後述する充填工程を簡単に行うことができるとともに、装置構成を簡素にすることができる。
第2構造体3Bにおける構成材料の密度は、0.01g/cm3以上、0.3g/cm3以下であるのが好ましく、0.02g/cm3、以上0.2g/cm3以下であるのがより好ましい。これにより、前述した緩衝作用を十分に発揮することができる。
次に、本実施形態における繊維成形物製造装置10について説明する。
図2に示すように、繊維成形物製造装置10は、さらに、第1成形部21の下流側に設けられた堆積部22と、堆積部22の下流側に設けられた第2成形部23とを有している。
堆積部22は、堆積工程を行う部分であり、混合物M7を気中に分散させる機能を有している。堆積部22は、例えば、前記実施形態で説明したほぐし部18と同様の構成とすることができる。また、堆積部22は、管220によってほぐし部18のドラム部181と連通している。これにより、堆積部22には、第1構造体3Aの構成材料と同じ材料、すなわち、混合物M7が供給される。
下型215は、第1成形部21にて成形された第1構造体3Aを収納した状態で下流側、すなわち、堆積部22の下側に移動する。これにより、堆積部22から気中に分散された混合物M7が第1構造体3Aの凹部31内に堆積し、凹部31内に第3ウェブM9が形成される。
このように、堆積部22は、第1構造体3Aの構成材料と同じ材料で構成された第3ウェブM9を堆積させる堆積工程を行う。
第2成形部23は、上下に昇降可能な加熱プレート231を有している。加熱プレート231には、リング状のヒーター230が内蔵されている。加熱プレート231の加熱温度は、第3ウェブM9に含まれる樹脂P、すなわち、バインダーの軟化点または融点以上の温度とされ、例えば60℃以上、180℃以下程度とされる。
下型215は、堆積部22にて凹部31内に第3ウェブM9が堆積した状態の第1構造体3Aを収納した状態で、加熱プレート231の下方に移動する。そして、加熱プレート231が下降して第3ウェブM9の上面と接触する。これにより、第3ウェブM9の表面付近のバインダーが溶融し、繊維同士が結着する。よって、第3ウェブM9が部分的に凹部31からはみ出したり離脱してしまったりするのを防止することができる。さらに、第1構造体3Aの上端部のバインダーも溶融し、第3ウェブM9の繊維またはバインダーと結着する。これにより、第1構造体3Aと第3ウェブM9とが部分的に結着し、凹部31内から第3ウェブM9が離脱するのが防止される。なお、第1構造体3Aと部分的に結着した第3ウェブM9が、前記第2構造体3Bとなる。
このように、本実施形態の繊維成形物の製造方法は、第1構造体3Aの凹部31内に、第1構造体3Aの構成材料で構成された第3ウェブM9を堆積させる工程と、凹部31内の第3ウェブM9を加熱して形成する工程と、を有する。これにより、凹部31内に充填された第2構造体3Bを成形することができる。その結果、繊維成形物3は、特に、緩衝材として優れる。
<第3実施形態>
図3は、本発明の繊維成形物の製造方法を実施するための製造装置および製造工程の第3実施形態を示す図である。以下、図3を参照しつつ第3実施形態について説明するが、前述した第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、第2成形部の構成が異なること以外は、前記第2実施形態と同様である。
図3に示すように、本実施形態では、第2成形部23Aの加熱プレート232は、その下面の中央部に突出部233を有する。突出部233は、加熱プレート232の平面視で、凹部31よりも小さい。また、突出部233は、その下側の端部が丸みを帯びている。
このような第2成形部23Aでは、加熱プレート232が下降して第3ウェブM9の上面と接触する際、突出部233が第3ウェブM9に入り込む。このため、第3ウェブM9の表面には、突出部233に対応する形状の窪み32が形成される。
このような繊維成形物3では、窪み32が、物品を収納する際の位置決め部として機能する。また、第2構造体3Bにおける構成材料の密度は、第1構造体3Aにおける構成材料の密度よりも低く、0.03g/cm3以上、0.4g/cm3以下であるのが好ましく、0.04g/cm3以上、0.3g/cm3以下であるのがより好ましい。これにより、前述した緩衝作用も十分に発揮することができる。
このように、本実施形態では、第3ウェブM9を加熱する工程では、凹部31内の第3ウェブM9に成形を施す、すなわち、加熱に加え加圧を行う。これにより、例えば、上述したような位置決め部のような機能部を第2構造体3Bに付与することができる。
<第4実施形態>
図4は、本発明の繊維成形物の製造方法を実施するための製造装置および製造工程の第4実施形態を示す図である。以下、図4を参照しつつ第4実施形態について説明するが、前述した第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、堆積部の構成が異なること以外は、前記第2実施形態と同様である。
図4に示すように、本実施形態では、第2成形部23Bの加熱プレート234は、その下面の中央部に一対のリブ235を有する。各リブ235の離間距離は、加熱プレート234の平面視で、凹部31の幅、すなわち、紙面左右方向の長さよりも小さい。
このような第2成形部23Bでは、加熱プレート234が下降して第3ウェブM9の上面と接触する際、一対のリブ235が第3ウェブM9に入り込む。このため、第3ウェブM9の表面には、一対のリブ235に対応する形状の一対のスリット33が形成される。
このような繊維成形物3では、第2構造体3Bのスリット33の間の部分が優先的に潰れやすくなる。これにより、緩衝材としての機能をさらに効果的に発揮することができる。
<第5実施形態>
図5は、本発明の繊維成形物の製造方法を実施するための製造装置および製造工程の第5実施形態を示す図である。以下、図5を参照しつつ第5実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、第2成形部の構成が異なること以外は、前記第2実施形態と同様である。
図5に示すように、本実施形態では、堆積部22は、混合物M7が、凹部31内および下型215の上面上にも堆積するように、混合物M7を分散させる。例えば、堆積部22のハウジングの開口や、ドラム部の径を下型215に対して相対的に大きくすることにより、混合物M7が、下型215の上面上にも堆積可能となる。
この状態で例えば第2実施形態と同様に第3ウェブM9を成形することにより、第2構造体3Bには、フランジ34が形成される。フランジ34は、凹部31の絞り深さ方向と交わる方向に突出形成された板状をなしている。
このフランジ34は、他の繊維成形物3との接続部、すなわち、接続しろとして機能することができる。また、例えば、フランジ34を折り曲げたりする加工をさらに行うことにより、収納する物品の位置決め部としても機能する。
以上、本発明の繊維成形物および繊維成形物の製造方法を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、繊維成形物を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。また、繊維成形物の製造方法についても、各工程の前後に任意の構成が付加されていてもよい。
また、繊維成形物および繊維成形物製造装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
[1]繊維成形物の製造
繊維としてのセルロースを含む古紙を、図1に示す繊維成形物製造装置10の原料供給部11に投入し第1構造体、すなわち、繊維成形物を得た。また、樹脂供給部171で供給した樹脂、すなわち、バインダーは、ポリエチレンであった。
また、第1成形部21では、加熱温度が150℃、成形圧力が20kgf/cm2であった。
この繊維成形物の構成材料中、繊維の含有量およびバインダーの含有量は、表1に示す通りであった。また、繊維の平均繊維長さは、1.1mmであり、繊維の平均繊維幅は、12μmであった。また、バインダーの粒子の平均粒径は、20μmであった。
また、得られた繊維成形物は、凹部31の平均深さが100mmであり、凹部31の容積が250cm3であり、平均厚さが0.5mmであり、構成材料の密度が1.2g/cm3であった。
(実施例2、3)
繊維の含有量およびバインダーの含有量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして繊維成形物を製造した。
(比較例1~3)
繊維の含有量およびバインダーの含有量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして繊維成形物を製造した。
[2]評価
2.成形性の評価
得られた繊維成形物を目視で確認して皺や破れが生じているかどうかを確認し、以下のように評価した。
A:皺および破れが生じていない
B:皺のみが若干生じていた。
C:皺および破れが若干生じていた。
D:皺および破れが目立つ。
これらの結果を表1にまとめて示す。
表1から明らかなように、本発明の各実施例の繊維成形物は、各比較例の繊維成形物に比べ成形性に優れる結果となった。