本発明の音響通信システムについて、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、音響通信システムの第1実施形態を示す概要図である。図2は、図1の音響通信システムを水中移動体と音響通信を行う水上移動体に適用する場合の具体的構成を示す図である。図3は、音響通信システムの計算装置で行われる受信時処理のフローを示す図である。図4は、音響通信システムの計算装置で行われる送信時処理のフローを示す図である。図5は、水上移動体に生じる動揺を示す概要図である。図6(a)(b)は、音響通信システムの音響通信機で行うビームフォーミングについて説明する図である。
第1実施形態は、本開示の音響通信システムを、図1、図2に示すように、音響通信機3を備えて水上に配置される通信局としての水上移動体2に適用する場合の例を示すものである。また、本実施形態は、水上移動体2の音響通信による通信対象を、音響通信機5を備えた水中移動体4とした例を示す。
本実施形態の通信システムの基本的な構成は、図1に符号1で示すもので、水上に配置される通信局としての水上移動体2と、水上移動体2に装備された音響通信機3と、水上移動体2の位置情報を取得する位置情報取得装置6と、水上移動体2の姿勢を検出する姿勢検出装置7と、通信対象としての水中移動体4の位置を推定する推定装置8と、計算装置9と、を備えた構成とされている。
次に、本実施形態の音響通信システム1を適用した水上移動体2の具体的な構成について説明する。
水上移動体2は、本実施形態では、図2に示すように、水面Wの数メートル下方の水中を航走する機体10と、機体10の上側に取り付けられて上端側が水面上に突出するストラット11と、ストラット11の上端側に取り付けられて気中に保持される基台12と、を備えた構成の半没型の水上移動体2とされている。
機体10には、下方に向く姿勢で、音響通信機3が設けられている。これは、水上移動体2と水中移動体4の運用時には、通常、水上移動体2が水中移動体4よりも上方、すなわち、より浅い深度に配置されるためである。
また、機体10には、位置情報取得装置6、姿勢検出装置7、推定装置8、計算装置9が装備されている。
音響通信機3は、図示しない電気音響変換器のアレイを備えた構成とされ、計算装置9より受け取る指令C1に基づきビームフォーミングを実施する機能を備えている。なお、音響通信機3は、後述するように計算装置9で設定されるビームフォーミングのビーム方向とビーム幅を実現可能であれば、アレイにおける電気音響変換器の数や配置は任意の設定でよいことは勿論である。
位置情報取得装置6は、本実施形態では、基台12に設置されたGPSなどの全地球航法衛星システム(GNSS)の信号受信用のアンテナ13に接続された構成を備えている。これにより、位置情報取得装置6は、アンテナ13で受信されるGNSS信号を基に、水上移動体2の位置の情報を、たとえば、緯度と経度のような地球に固定された座標の情報として取得することができる。この地球に固定された座標系は、以下、地球固定座標系という。
更に、位置情報取得装置6は、取得した水上移動体2の位置の情報を、推定装置8と、計算装置9と、後述する制御装置17へ送る機能を備えている。
姿勢検出装置7は、水上移動体2の姿勢として、水上移動体2の前後軸、左右軸、上下軸が、それぞれ地球固定座標系にて、どの方向に配置されているかを検出する機能を備えている。更に、姿勢検出装置7は、水上移動体2の前後軸、左右軸、上下軸の方向の時間経過に伴う変化を基に、水上移動体2のピッチ、ヨー、ロールの回転の動揺を検出する機能を備えている。
姿勢検出装置7は、たとえば、MEMSジャイロ、光ファイバジャイロなどのジャイロ方式の姿勢センサを用いてもよいし、あるいは、慣性航法装置を用いるようにしてもよい。更に、姿勢検出装置7は、水上移動体2の前記所定の姿勢および動揺を検出することができれば、任意の形式、任意の検出方式の姿勢検出装置7を用いてもよいことは勿論である。
更に、姿勢検出装置7は、水上移動体2の姿勢および動揺の検出結果を、計算装置9と、後述する制御装置17へ送る機能を備えている。
推定装置8は、本実施形態では、水上移動体2の機体10に備えた音響測位装置14に接続されている。
音響測位装置14は、測位信号Daを送信する機能と、水中移動体4に備えたトランスポンダ15が測位信号Daに応答して発する応答信号Dbを受信する機能とを備えている。
また、音響測位装置14は、測位信号Daを送信してから応答信号Dbを受信するまでにかかる時間と、測位信号Daおよび応答信号Dbの速度である水中での音速と、応答信号Dbが到来する方向とを基に、音響測位装置14を備えた水上移動体2の位置を基準として、トランスポンダ15を備えた水中移動体4の方向と距離、すなわち、水上移動体2の位置を基準とする水中移動体4の相対位置を検出する機能を備えている。
更に、音響測位装置14は、水上移動体2の位置を基準とする水中移動体4の相対位置の検出結果を、推定装置8へ送る機能を備えている。
推定装置8は、音響測位装置14より水上移動体2の位置を基準とする水中移動体4の相対位置の検出結果を受け取ると、その検出結果と、位置情報取得装置6より受け取る地球固定座標系における水上移動体2の位置の情報とを基に、地球固定座標系における水中移動体4の位置を、たとえば、緯度と経度と深度の情報として推定する機能を備えている。
なお、音響測位装置14は、応答信号Dbの到来方向を、音響測位装置14自体の姿勢を基準とする相対的な方向として検出している。水上移動体2にピッチ、ヨー、ロールのうちの少なくとも1つの回転の動揺が生じている場合は、水上移動体2の動揺による姿勢変化に伴い、音響測位装置14にも姿勢変化が生じる。したがって、この場合は、音響測位装置14の姿勢変化により、音響測位装置14が検出する相対的な応答信号Dbの到来方向にも変化が生じる。
そこで、推定装置8は、水上移動体2が動揺している状況下でも水中移動体4の位置を推定可能とするための手法として、たとえば、音響測位装置14より、水上移動体2の位置を基準とする水中移動体4の相対位置の検出結果を、設定された或る期間継続して受け取り、その期間における検出結果の平均を用いて、地球固定座標系における水中移動体4の位置を推定するようにすればよい。
また、水上移動体2における音響測位装置14の設置姿勢は、設計事項や、実機の構造を基に、予め分かる。そのため、音響測位装置14で水中移動体4の測位が行われた時点での水上移動体2の姿勢が分かれば、その時点での音響測位装置14の姿勢を求めることができる。よって、推定装置8は、音響測位装置14より、水上移動体2の位置を基準とする水中移動体4の相対位置の検出結果を受け取ると共に、姿勢検出装置7より、音響測位装置14で水中移動体4の測位が行われた時点での水上移動体2の姿勢に関する情報を取得して、音響測位装置14の姿勢変化分を補正しながら、地球固定座標系における水中移動体4の位置を推定するようにしてもよい。
更に、推定装置8は、地球固定座標系における水中移動体4の位置の推定結果を、計算装置9へ送る機能を備えている。
計算装置9の機能の詳細については、後述する。
水上移動体2は、更に、機体10に、移動装置16と、水上移動体2の移動の制御を行う制御装置17と、を備えた構成とされている。
移動装置16は、制御装置17から受け取る指令C2に従い、水上移動体2の推進や操舵を伴う移動を行う装置である。
本実施形態では、一例として、移動装置16は、図2に示すように、機体10の後部にメインスラスタ16aと、舵16bとを備えた構成を示してある。しかし、移動装置16は、制御装置17から受け取る指令C2に従って、水上移動体2を移動させることができれば、推進手段および操舵手段の形式は特に限定されない。更に、移動装置16は、たとえば、機体10の左右方向に推進力を生じる図示しないスラスタを備えていてもよい。したがって、移動装置16は、水上移動体2の移動を行わせるために望まれる運動性能などを考慮して、自在に選定してよい。
制御装置17は、水上移動体2の移動に関する航走計画あるいは目標位置が設定される機能を備えている。
更に、制御装置17は、位置情報取得装置6より受け取る水上移動体2の位置情報と、姿勢検出装置7より受け取る水上移動体2の姿勢の検出結果とを基に、自機を設定された航走計画に従って移動させるため、あるいは、自機の位置を設定された目標位置まで移動させるために必要とされる移動装置16の操作量を求める機能と、求めた操作量を、指令C2として移動装置16へ送る機能とを備えている。
これにより、水上移動体2は、移動装置16が、制御装置17より受け取る指令C2に応じて制御されるため、制御装置17に設定された航走計画に従う航走、あるいは、設定された目標位置への移動を行うことができる。
次いで、水中移動体4の構成について説明する。
水中移動体4は、機体18に、水中移動体4の位置情報を取得する位置情報取得装置19と、水中移動体4の姿勢を検出する姿勢検出装置20と、移動装置21と、水中移動体4の移動の制御を行う制御装置22とを備え、更に、音響通信機5と、トランスポンダ15を備えた構成とされている。
位置情報取得装置19は、たとえば、慣性航法装置(INS)、または、慣性航法装置にドップラーログ(DVL)を組み合わせた装置と、深度計とを備えた構成とすればよい。これにより、位置情報取得装置19は、水中移動体4の位置の情報を、水上移動体2と同様の地球固定座標系における緯度と経度と深度のような情報として取得することができる。
なお、水中移動体4に備える位置情報取得装置19は、水中移動体4が水面付近に浮上した状態のときに、GNSS信号を図示しないアンテナで受信して、水中移動体4の自機の位置について、緯度と経度のような絶対位置を取得する機能を備えるようにしてもよい。
更に、位置情報取得装置19は、取得した水中移動体4の位置の情報を、制御装置22へ送る機能を備えている。
なお、位置情報取得装置19は、水中移動体4の位置の情報を取得することができれば、水中移動体4の位置の情報を求める手法として、前記した以外の手法を用いるものであってもよいことは勿論である。たとえば、図示しないが、位置情報取得装置19は、水上移動体2の推定装置8で推定された水中移動体4の位置の推定結果を、音響通信機3と音響通信機5との音響通信を介して取得するようにしてもよい。
姿勢検出装置20は、水中移動体4の姿勢として、水中移動体4の前後軸、左右軸、上下軸が、それぞれ地球固定座標系にて、どの方向に配置されているかを検出する機能を備えている。
姿勢検出装置20は、たとえば、MEMSジャイロ、光ファイバジャイロなどのジャイロ方式の姿勢センサを用いてもよいし、あるいは、慣性航法装置を用いるようにしてもよい。更に、姿勢検出装置20は、水中移動体4の前記所定の姿勢を検出することができれば、任意の形式、任意の検出方式の姿勢検出装置20を用いてもよいことは勿論である。また、姿勢検出装置20は、位置情報取得装置19と統合された装置とされていてもよい。
更に、姿勢検出装置20は、水中移動体4の姿勢の検出結果を、制御装置22へ送る機能を備えている。
移動装置21は、制御装置22から受け取る指令C3に従い、水中移動体4の推進や操舵を伴う移動を行う装置である。
図2では、一例として、移動装置21が、機体18の後部に配置されたメインスラスタ21a、および、舵21bと、機体18の内部に配置された浮力調整装置21cとを備えた構成を示してある。なお、移動装置21は、制御装置22から受け取る指令C3に従って、水中移動体4を移動させることができれば、推進手段、操舵手段および浮沈の手段の形式は特に限定されない。更に、移動装置21は、たとえば、機体18の上下方向や左右方向に推進力を生じる図示しないスラスタを備えていてもよい。したがって、移動装置21は、水中移動体4の移動を行わせるために望まれる運動性能などを考慮して、自在に選定してよい。
制御装置22は、水中移動体4の移動に関する航走計画あるいは目標位置が設定される機能を備えている。
更に、制御装置22は、位置情報取得装置19より受け取る水中移動体4の位置情報と、姿勢検出装置20より受け取る水中移動体4の姿勢の検出結果とを基に、自機を設定された航走計画に従って移動させるため、あるいは、自機の位置を設定された目標位置まで移動させるために必要とされる移動装置21の操作量を求める機能と、求めた操作量を、指令C3として移動装置21へ送る機能とを備えている。
これにより、水中移動体4は、移動装置21が、制御装置22より受け取る指令C3に応じて制御されるため、制御装置22に設定された航走計画に従う航走、あるいは、設定された目標位置への移動を行うことができる。
また、水中移動体4は、図示しないが、水中の情報収集に使用する、カメラ、サイドスキャンソーナー、マルチビームソーナーなどの観測装置を備えた構成としてもよい。
更に、水中移動体4は、これらの観測装置が取得した観測データ、および、水中移動体4のステータスの情報を、音響通信機5から、水上移動体2の音響通信機3へ音響通信により送信する機能を備えている。
次いで、水上移動体2に備えた計算装置9の機能について説明する。
計算装置9は、水上移動体2の音響通信機3が、水中移動体4の音響通信機5より音響信号を受信する場合には、図3に示す受信時処理を行い、水上移動体2の音響通信機3が、水中移動体4の音響通信機5に向けて音響信号を送信する場合には、図4に示す送信時処理を行う。
先ず、図3の計算装置9の受信時処理について説明する。
水上移動体2の音響通信機3が、水中移動体4の音響通信機5より送信された音響信号を受信すると(ステップSa1)、その時点で、計算装置9は、方向推定処理を行う(ステップSa2)。
方向推定処理では、計算装置9は、位置情報取得装置6より、水上移動体2の地球固定座標系における位置の情報を受け取る。また、計算装置9は、姿勢検出装置7より、水上移動体2の姿勢の検出結果、すなわち、水上移動体2の前後軸、左右軸、上下軸の地球固定座標系における方向の情報を受け取る。更に、計算装置9は、推定装置8より、受け取る水中移動体4の地球固定座標系における位置の推定結果を受け取る。その後、計算装置9は、受け取った各情報および推定結果を基に、水上移動体2に対する通信対象の水中移動体4の相対的な位置情報を求める。
次に、計算装置9は、ビームフォーミング計算処理を行う(ステップSa3)。
ここで、水上移動体2の計算装置9が、ビームフォーミング計算処理で設定するビーム方向(メインローブの方向)とビーム幅を導出する手法について説明する。
図5に示すように、水上移動体2には、前後軸(ロール軸)をx軸、左右軸(ピッチ軸)をy軸、上下軸(ヨー軸)をz軸で示す機体固定座標系を設定する。なお、図5では、図示する便宜上、水上移動体2は、ストラット11(図1参照)を省略し、構成を簡略化して示してある。
一例として、水上移動体2の通信対象となる水中移動体4が、x軸とz軸を含む平面内で、水上移動体2の前方の斜め下方位置となる点Pに存在している状態を仮定する。なお、水上移動体2の機体固定座標系における水中移動体4の位置は、水中移動体の4の位置の座標を地球固定座標系から機体固定座標系へ座標変換を行うことで求めることができる。
また、この状態で、水上移動体2に、y軸を中心とするピッチの回転の動揺が角度αで生じ、z軸を中心とするヨーの回転の動揺が角度βで生じ、x軸を中心とするロールの回転の動揺が角度γで生じた状況を想定する。
この状況について、水上移動体2の姿勢を基準とした場合の点Pの相対的な変位を考える。水上移動体2がピッチの回転の動揺を角度αで生じると、図6(a)に示すように、点Pは、y軸を中心とする円周上を、角度αに対応する中心角で相対的に変位する。また、水上移動体2がヨーの回転の動揺を角度βで生じると、図6(b)に示すように、点Pは、z軸を中心とする円周上を、角度βに対応する中心角で相対的に変位する。よって、水上移動体2のピッチの回転の動揺と、ヨーの回転の動揺によって点Pが相対的に変位する可能性がある範囲は、図6(b)に示す、略矩形の領域Qとなる。
更に、水上移動体2がロールの回転の動揺を角度γで生じると、点Pが相対的に変位する可能性がある範囲は、図6(b)に示すように、領域Qを、x軸を中心とする円周に沿い、角度γに対応する中心角で動かした領域Rとなる。
なお、ここでは、説明の便宜上、先ず、ピッチとヨーの動揺を基に領域Qを規定し、次いで、ロールの動揺を加えることで領域Rを求める手順を示した。これに対し、水上移動体2では、水上移動体2の機体固定座標系にて水中移動体4の相対的な配置を示す点Pの座標と、水上移動体2のピッチとヨーとロールのそれぞれの動揺の角度α、角度β、角度γが決まれば、領域Rは、幾何学的な計算で求めることができる。よって、領域Rを求める計算は、前記したように領域Qを一旦求める手順以外の手順で行ってもよいことは勿論である。
このように求めた領域Rは、水上移動体2がピッチ、ヨー、ロールの各回転の動揺を、それぞれ角度α、角度β、角度γで生じる場合に、通信対象である水中移動体4が相対的に変位する可能性のある範囲である。よって、水上移動体2では、この領域Rをカバーするように、図6(b)に二点鎖線で示す如き範囲Sを設定して、音響通信機3と範囲Sの中央とを結ぶ方向を、音響通信機3より送信する音響信号のビーム方向とし、音響通信機3と範囲Sの周縁とを結ぶ線によって形成される内側の角度を、ビーム幅に設定することで、領域Rを含む範囲Sに向けて、音響通信機3から音響信号のビーム(メインローブ)を送信することができることになる。
なお、図6(b)では、範囲Sを楕円で示したが、範囲Sの形状は、音響通信機3で形成可能な音響信号のビーム(メインローブ)の断面形状に対応した形状に設定すればよい。
したがって、領域Rが決まれば、範囲Sは、幾何学的な計算で設定することができ、更に、前記したビーム方向と、ビーム幅も幾何学的な計算で求めることができる。
そこで、計算装置9は、ステップSa3では、ビームフォーミング計算処理として、前記した領域Rを求めた後、範囲Sを設定し、更に、ビーム方向およびビーム幅を求める計算を行う。
なお、水上移動体2の機体固定座標系における水中移動体4の位置が異なると、水上移動体2のピッチ、ヨー、ロールの各回転の動揺に応じて、通信対象である水中移動体4が相対的に変位する可能性のある範囲としての領域Rの形状や配置は変化する。しかし、この場合であっても、計算装置9は、幾何学的な計算により領域Rを求めることができるため、更に、範囲Sを設定し、ビーム方向およびビーム幅を求める計算を行うことができる。
次いで、計算装置9は、ステップSa4に進み、前記ステップSa3で求めたビーム方向およびビーム幅をデジタルビームフォーミングで実現するために必要とされるパラメータを推定するパラメータ推定処理を行う。
このパラメータ推定処理では、計算装置9は、音響通信機3における電気音響変換器のアレイの構成や、音響通信機3で受信する音響信号の周波数などの情報を基に、位相や振幅の重みづけの要求量の計算を行う。
その後、計算装置9は、前記ステップSa4のパラメータ推定処理で推定したパラメータを、指令C1として音響通信機3へ与える処理を行う。
これにより、音響通信機3は、ステップSa1で水中移動体4の音響通信機5より受信した音響信号に対して、計算装置9より受け取る指令C1に基づくビームフォーミング処理を行い(ステップSa5)、次いで、復調の処理を行うことで(ステップSa6)、水中移動体4から送られた情報を取得する。
このように、本実施形態の音響通信システム1によれば、水上移動体2の音響通信機3が受信側となる場合には、水上移動体2がピッチ、ヨー、ロールの回転の動揺を生じるときには、その動揺によって通信対象である水中移動体4が相対的に変位する可能性のある範囲をカバーするようにビーム方向とビーム幅を定めたビームフォーミングを行うことができる。また、このビームフォーミングでは、水上移動体2の動揺の大きさに対応して、ビーム幅を調整することができる。そのため、音響通信機3で受信する音響信号について、SN比の低下を抑制することができる。よって、水上移動体2が水中移動体4より受け取る音響信号の伝送効率の向上化を図ることができる。
次に、図4の計算装置9の送信時処理について説明する。
送信時には、水上移動体2の音響通信機3は、水中移動体4へ送る情報について、音響信号への変調を行う(ステップSb1)。
送信時処理では、計算装置9は、方向推定処理(ステップSb2)と、ビームフォーミング計算処理(ステップSb3)を行う。
この計算装置9によるステップSb2の方向推定処理と、ステップSb3のビームフォーミング計算処理は、受信時処理におけるステップSa2の方向推定処理と、ステップSa3のビームフォーミング計算処理と同様である。
次に、計算装置9は、前記ステップSb3で求めたビーム方向およびビーム幅をデジタルビームフォーミングで実現するために必要とされるパラメータを推定するパラメータ推定処理を行う(ステップSb4)。
このパラメータ推定処理では、計算装置9は、音響通信機3における電気音響変換器のアレイの構成や、音響通信機3より送信する音響信号の周波数などの情報を基に、位相や振幅の重みづけの要求量の計算を行う。
その後、計算装置9は、前記ステップSb4のパラメータ推定処理で推定したパラメータを、指令C1として音響通信機3へ与える処理を行う。
これにより、音響通信機3は、ステップSb1で変調した音響信号に対して、計算装置9より受け取る指令C1に基づくビームフォーミング処理を行い(ステップSb5)、その後、送信の処理を行う(ステップSb6)。
このように、本実施形態の音響通信システム1によれば、水上移動体2の音響通信機3が送信側となる場合にも、水上移動体2がピッチ、ヨー、ロールの回転の動揺を生じるときには、その動揺によって通信対象である水中移動体4が相対的に変位する可能性のある範囲をカバーするようにビーム方向とビーム幅を定めたビームフォーミングを行うことができる。また、このビームフォーミングでは、水上移動体2の動揺の大きさに対応して、ビーム幅を調整することができる。そのため、音響通信機3で送信した後、水中移動体4の音響通信機5で受信される音響信号について、SN比の低下を抑制することができる。よって、水上移動体2から水中移動体4へ送信する音響信号の伝送効率の向上化を図ることができる。
更に、本実施形態の音響通信システム1は、水上移動体2に備えた音響通信機3でビームフォーミング処理を行うようにしてある。このため、たとえば、水上移動体2が、複数の水中移動体4から、観測データを収集する場合のように、水上移動体2が複数の水中移動体を通信対象とする場合には、水上移動体2の音響通信機3で、それぞれの水中移動体4の位置に応じたビーム方向とビーム幅の音響信号を形成するビームフォーミングを、順次切り替えて実施することができる。
したがって、本実施形態の音響通信システム1は、音響通信機3を備えた水上の通信局である水上移動体2が、複数の通信対象としての水中移動体4との通信を行う場合に好適なものとすることができる。この際、本実施形態の音響通信システム1は、水上移動体2に動揺が生じても、それぞれの水中移動体4に送信または受信する音響信号のSN比の低下を抑制することができる。
[第2実施形態]
前記第1実施形態では、水上移動体2の音響通信機3が受信する音響信号に対するビームフォーミング処理を、水上移動体2で行う場合の構成について示した。これに対し、水上移動体2の音響通信機3が受信する音響信号に対するビームフォーミング処理は、水上移動体2の外部に備えた計算装置で行うようにしてもよい。この場合の装置構成は、以下の第2実施形態のようにすればよい。
図7は、音響通信システムの第2実施形態を示す概要図である。
なお、図7において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の音響通信システム1は、図7に示すように、第1実施形態と同様の構成において、水上移動体2とは別の水上移動体23を備え、この水上移動体23に受信時処理用の計算装置24を備えた構成としたものである。
図7では、水上移動体23を船舶とする場合の例を図示してあるが、水上移動体23は、水上移動体2と同様の半没型の水上移動体としてもよいことは勿論である。また、水上移動体23は、水上移動体2や水中移動体4の母船であってもよい。
本実施形態では、水上移動体2と水上移動体23は、無線通信機25,26を備えて、相互通信が可能な構成とされている。
なお、水上移動体2に備える無線通信機25は、アンテナ25aを、水面Wの上方に配置される基台12上に備えた構成とすればよい。
本実施形態では、水上移動体2に備えた無線通信機25は、音響通信機3が受信した音響信号の情報と、水上移動体2の位置情報取得装置6より受け取る水上移動体2の位置の情報と、姿勢検出装置7より受け取る水上移動体2の姿勢の情報と、推定装置8より受け取る水中移動体4の位置の推定結果とを、それぞれ時間の情報と共に、水上移動体23の無線通信機26を通信対象として送信する機能を備えている。
水上移動体23の無線通信機26は、水上移動体2の無線通信機25から送信される音響信号の情報と、水上移動体2の位置の情報と、水上移動体2の姿勢の情報と、水中移動体4の位置の推定結果を、それぞれの時間の情報と共に受け取ると、それを計算装置24へ送る機能を備えている。
計算装置24は、記憶部27を備えた構成とされている。これにより、計算装置24は、無線通信機26より音響信号の情報と、水上移動体2の位置の情報と、水上移動体2の姿勢の情報と、水中移動体4の位置の推定結果を受け取ると、それを記憶部27に、時間の情報と共に、ログとして保存する機能を備えている。
更に、計算装置24は、記憶部27に保存された情報を取り出して、図3に示した受信時処理と同様の受信時処理を行う機能を備えている。
なお、計算装置24は、図3のステップSa1のように、水上移動体2がリアルタイムで受信した音響信号を処理するのではなく、記憶部27に保存された音響信号の情報を取り出して処理を行うことになる。そのため、計算装置24は、音響信号の情報を取り出すと、その音響信号を受信した時点の水上移動体2の位置の情報と、水上移動体2の姿勢の情報と、水中移動体4の位置の推定結果を、記憶部から取り出して、図3における、方向推定処理(ステップSa2)、ビームフォーミング計算処理(ステップSa3)、パラメータ推定処理(ステップSa4)を行う。
更に、本実施形態では、計算装置24が、水上移動体2の音響通信機3に代わり、音響信号に対して、図3に示したと同様のビームフォーミング処理(ステップSa5)と、次いで、復調の処理(ステップSa6)を行うことで、水中移動体4から送られた情報を取得するようにすればよい。
このように、本実施形態の音響通信システム1によれば、水上移動体2の音響通信機3が受信側となる場合には、音響通信機3で受信した音響信号の情報を別の水上移動体23に備えた計算装置24へ送り、計算装置24でビームフォーミング処理を行って、水中移動体4から送られた情報を取得することができる。よって、本実施形態の音響通信システム1によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
更に、本実施形態における計算装置24は、音響通信機3で受信した音響信号の情報を記憶部27に一旦保存してからビームフォーミング処理を行うことができるため、たとえば、或る時点で水上移動体2の音響通信機3が受信した音響信号に対して、異なるパラメータによるビームフォーミング処理を複数回行うことが可能になる。
したがって、たとえば、水上移動体2が複数の水中移動体を通信対象とする場合は、水上移動体2の音響通信機3が、複数の水中移動体4の音響通信機5から送信された音響信号を同時に受信した場合でも、それぞれの水中移動体4の位置にビーム方向を対応させたビームフォーミング処理を行うことができる。更には、ビーム方向を向ける水中移動体4以外の他の水中移動体4が存在する方向には、ヌルの方向を対応させるビームフォーミング処理を行うことも可能になる。
この際、複数の水中移動体4の音響通信機5が、それぞれ異なる周波数帯の音響信号を送信する機能を備えていれば、ビーム方向を対応させる水中移動体4の音響通信機5が送信する音響信号の周波数帯を選択的に抽出する処理を行うことも可能になる。
よって、本実施形態の音響通信システムは、音響通信機3を備えた水上の通信局である水上移動体2が、複数の通信対象としての水中移動体4との通信を、同時に行う可能性がある場合に好適なものとすることができる。
[第3実施形態]
図8は、音響通信システムの第3実施形態を示す概要図である。図9は、図8の音響通信システムを水上移動体と音響通信を行う水中移動体に適用する場合の具体的構成を示す図である。
なお、図8、図9において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
第3実施形態は、本開示の音響通信システムを、図8、図9に示すように、音響通信機5を備えて水中に配置される通信局としての水中移動体4に適用する場合の例を示すものである。また、本実施形態は、水中移動体4の音響通信による通信対象を、音響通信機3を備えた水上移動体2とした例を示す。
本実施形態の通信システムの基本的な構成は、図8に符号1Aで示すもので、水中に配置される通信局としての水中移動体4と、水中移動体4に装備された音響通信機5と、水中移動体4の位置情報を取得する位置情報取得装置19と、水中移動体4の姿勢を検出する姿勢検出装置20と、通信対象としての水上移動体2の位置を推定する推定装置28と、計算装置9Aと、を備えた構成とされている。
次に、本実施形態の音響通信システム1Aを適用した水中移動体4の具体的な構成について説明する。
水中移動体4は、第1実施形態と同様の構成に加えて、推定装置28と計算装置9Aとを備えた構成とされている。
本実施形態では、音響通信機5は、図示しない電気音響変換器のアレイを備えた構成とされ、計算装置9Aより受け取る指令C4に基づきビームフォーミングを実施する機能を備えている。なお、音響通信機5は、計算装置9Aで設定されるビームフォーミングのビーム方向とビーム幅を実現可能であれば、アレイにおける電気音響変換器の数や配置は任意の設定でよいことは勿論である。
推定装置28は、本実施形態では、水中移動体4の音響通信機5に接続されている。
一方、本実施形態では、水上移動体2に備えた音響通信機3は、水上移動体2の位置情報取得装置6より受け取る水上移動体2の位置の情報を、水中移動体4の音響通信機5を通信対象として送信する機能を備えている。
これにより、水中移動体4に備えた推定装置28は、水上移動体2の位置情報取得装置6が取得した水上移動体2の位置の情報を受け取って、地球固定座標系における水上移動体2の位置の情報を推定結果とする機能と、その推定結果を計算装置9Aへ送る機能とを備えている。
本実施形態では、水中移動体4の位置情報取得装置19は、取得した水中移動体4の地球固定座標系における位置の情報を計算装置9Aへ送る機能を備えている。
また、本実施形態では、姿勢検出装置20は、第1実施形態と同様の機能に加えて、水上移動体2の前後軸、左右軸、上下軸の方向の時間経過に伴う変化を基に、水中移動体4のピッチ、ヨー、ロールの回転の動揺を検出する機能を備えている。更に、姿勢検出装置20は、水中移動体4の姿勢および動揺の検出結果を、計算装置9Aへ送る機能を備えている。
計算装置9Aの機能の詳細については、後述する。
本実施形態では、水上移動体2は、第1実施形態と同様の構成において、計算装置9と推定装置8と音響測位装置14を省いた構成とされている。なお、水上移動体2を音響測位装置14を省いた構成とすることに伴い、本実施形態の水中移動体4は、トランスポンダ15を省いた構成とされている。
次いで、水中移動体4に備えた計算装置9Aの機能について説明する。
計算装置9Aは、水中移動体4の音響通信機5が、水上移動体2の音響通信機3より音響信号を受信する場合には、受信時処理を行い、水中移動体4の音響通信機5が、水上移動体2の音響通信機3に向けて音響信号を送信する場合には送信時処理を行う。
先ず、計算装置9Aの受信時処理について説明する。
計算装置9Aは、水上移動体2の音響通信機3が、水中移動体4の音響通信機5より音響信号を受信する場合には、図3に示した第1実施形態の計算装置9と同様に、方向推定処理(ステップSa2)、ビームフォーミング計算処理(ステップSa3)、パラメータ推定処理(ステップSa4)と同様を行う。
この際、計算装置9Aが行う処理は、前述した第1実施形態の計算装置9による各処理の説明における水上移動体2、音響通信機3、位置情報取得装置6、姿勢検出装置7、推定装置8、計算装置9、指令C1と、水中移動体4、音響通信機5、位置情報取得装置19、姿勢検出装置20、推定装置28、計算装置9A、指令C4とをそれぞれ置き換えた処理を行うようにすればよい。
これにより、音響通信機5は、水上移動体2の音響通信機3より受信した音響信号に対して、計算装置9Aより受け取る指令C4に基づくビームフォーミング処理を行い、次いで、復調の処理を行うことで、水上移動体2から送られた情報を取得する。
このように、本実施形態の音響通信システム1Aによれば、水中移動体4の音響通信機5が受信側となる場合には、水中移動体4がピッチ、ヨー、ロールの回転の動揺を生じるときには、その動揺によって通信対象である水上移動体2が相対的に変位する可能性のある範囲をカバーするようにビーム方向とビーム幅を定めたビームフォーミングを行うことができる。また、このビームフォーミングでは、水中移動体4の動揺の大きさに対応して、ビーム幅を調整することができる。そのため、音響通信機5で受信する音響信号について、SN比の低下を抑制することができる。よって、水中移動体4が水上移動体2より受け取る音響信号の伝送効率の向上化を図ることができる。
次に、計算装置9Aの送信時処理について説明する。
送信時には、水中移動体4の音響通信機5は、水上移動体2へ送る情報について、音響信号への変調を行う。
送信時処理では、計算装置9Aは、図4に示した第1実施形態の計算装置9と同様に、方向推定処理(ステップSb2)、ビームフォーミング計算処理(ステップSb3)、パラメータ推定処理(ステップSb4)を行う。
この際、計算装置9Aが行う処理は、前述した第1実施形態の計算装置9による各処理の説明における水上移動体2、音響通信機3、位置情報取得装置6、姿勢検出装置7、推定装置8、計算装置9、指令C1と、水中移動体4、音響通信機5、位置情報取得装置19、姿勢検出装置20、推定装置28、計算装置9A、指令C4とをそれぞれ置き換えた処理を行うようにすればよい。
これにより、音響通信機5は、変調した音響信号に対して、計算装置9Aより受け取る指令C4に基づくビームフォーミング処理を行い、その後、送信の処理を行う。
このように、本実施形態の音響通信システム1Aによれば、水中移動体4の音響通信機5が送信側となる場合にも、水中移動体4がピッチ、ヨー、ロールの回転の動揺を生じるときには、その動揺によって通信対象である水上移動体2が相対的に変位する可能性のある範囲をカバーするようにビーム方向とビーム幅を定めたビームフォーミングを行うことができる。また、このビームフォーミングでは、水中移動体4の動揺の大きさに対応して、ビーム幅を調整することができる。そのため、音響通信機5で送信した後、水上移動体2の音響通信機3で受信される音響信号について、SN比の低下を抑制することができる。よって、水中移動体4から水上移動体2へ送信する音響信号の伝送効率の向上化を図ることができる。
[第1応用例]
第1実施形態および第2実施形態は、水中移動体4に、第3実施形態と同様の音響通信システム1Aを備えた構成としてもよい。この構成によれば、水上移動体2と水中移動体4の双方で、送受信する音響信号に対するビームフォーミングを行うことができる。
[第2応用例]、
前記各実施形態では、計算装置9,9Aは、ビームフォーミング計算処理にて、ビーム幅を、水上移動体2の動揺により水中移動体4が相対的に変位する領域R、あるいは、水中移動体4の動揺により水上移動体2が相対的に変位する領域Rに対応する範囲に応じて設定する例を示した。
これに対し、水上移動体2と水中移動体4との距離が設定された距離よりも小さくなると、計算装置9,9Aは、ビーム幅をより広く設定する処理を行うようにしてもよい。
これは、水上移動体2と水中移動体4には、回転の振動以外に、サージ、スウェイ、ヒーブによる平行移動の振動も生じること、水上移動体2と水中移動体4との距離が近づくにつれて、水上移動体2が送受信する音響信号のビームが到達する範囲に対する水上移動体2の前記平行移動の振動の影響が大きくなること、同様に、水上移動体2と水中移動体4との距離が近づくにつれて、水中移動体4が送受信する音響信号のビームが到達する範囲に対する水中移動体4の前記平行移動の振動の影響が大きくなること、に対応できるようにするためである。
したがって、ビーム幅の設定の切り替えを行う距離と、ビーム幅を変化させる量は、水上移動体2と水中移動体4に生じる平行移動の振動の大きさを考慮して定めるようにすればよい。
なお、この手法では、ビーム幅を広げることに伴い音響信号の強度は減少するが、水上移動体2と水中移動体4との距離が近づくほど、伝送される音響信号の減衰量は小さくなるので、ビーム幅を広げることに起因する音響信号の強度不足の問題は生じない。
[第3応用例]
前記第1実施形態では、水上移動体2の推定装置8は、音響測位装置14による水上移動体2の位置を基準とする水中移動体4の相対位置の検出結果を基に、地球固定座標系における水中移動体4の位置を推定する機能を備えるものとして説明した。
これに対し、推定装置8は、地球固定座標系における水中移動体4の位置を推定する機能を実現することができれば、推定の手法は、前記以外の手法を採用してもよい。
たとえば、推定装置8は、水中移動体4の位置情報取得装置19で検出される水中移動体4の深度の情報を、音響通信を介して受け取り、その深度の情報と、水中移動体4のトランスポンダ15による応答信号Db(図2参照)の到来方向、または、音響通信のための音響信号の到来方向とを基に、地球固定座標系における水中移動体4の位置を推定するようにしてもよい。
また、推定装置8は、水中移動体4の位置情報取得装置19で取得される地球固定座標系における水中移動体4の位置を、音響通信を介して受け取るようにしてもよい。
更に、推定装置8は、予め水中移動体4の航走計画を、ウェイポイントファイルのような情報として記憶し、音響通信を行う時刻と、航走計画とを基に、地球固定座標系における水中移動体4の位置を推定するようにしてもよい。
[第4応用例]
前記第3実施形態では、水中移動体4の推定装置28は、水上移動体2の位置情報取得装置6が取得した水上移動体2の位置の情報を、音響通信を介して受け取るものとして説明した。
これに対し、推定装置28は、地球固定座標系における水上移動体2の位置を推定する機能を実現することができれば、推定の手法は、前記以外の手法を採用してもよい。
たとえば、推定装置28は、水中移動体4の位置情報取得装置19で取得される地球固定座標系における水中移動体4の深度の情報を含む位置の情報と、水上移動体2の音響測位装置14による測位信号Da(図2参照)の到来方向、または、音響通信のための音響信号の到来方向とを基に、地球固定座標系における水上移動体2の位置を推定するようにしてもよい。
なお、本開示の音響通信システムは、前記各実施形態および各応用例にのみ限定されるものではない。
水上移動体2、水中移動体4、水上移動体23の形状やサイズ、サイズの比は、図示するための便宜上のものであり、実際の形状やサイズ、サイズの比を反映したものではない。
第1実施形態および第2実施形態では、音響通信機を備えた水上の通信局が、水上移動体2である構成を示した。これに対し、本開示の音響システムにて、音響通信機を備える水上の通信局は、たとえば、水面に浮遊するブイのように航走機能を有していない水上浮遊体であってもよい。この場合は、水上浮遊体に前後軸、左右軸、上下軸を適宜設定し、各軸に関する動揺を検出して、音響通信機で送受信する音響信号のビーム方向とビーム幅を定めるビームフォーミングを行うようにすればよい。
第3実施形態では、音響通信機を備えた水上の通信局が、水上移動体2である構成を示した。これに対し、本開示の音響システムにて、音響通信機を備える水中の通信局は、たとえば、水底に係留された航走機能を有していない水中浮遊体であってもよい。この場合は、水中浮遊体に前後軸、左右軸、上下軸を適宜設定し、各軸に関する動揺を検出して、音響通信機で送受信する音響信号のビーム方向とビーム幅を定めるビームフォーミングを行うようにすればよい。
本開示の音響通信システムは、音響通信機を備えた水中の通信局が、水中移動体や水中浮遊体を通信対象として音響通信を行う構成に適用してもよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。