JP7134019B2 - 脱硫装置、水素製造装置、脱硫方法及び水素製造方法 - Google Patents
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Description
水蒸気改質プロセスの原燃料として、天然ガス、液化石油ガス(LPG)やこれらを原料とする都市ガスのような軽質炭化水素を主成分とする原燃料がある。これらの原燃料は、炭素析出を引き起こしやすい重質炭化水素をほとんど含まず、硫黄分も少ないので、原燃料として特に好適である。しかし、天然ガス、液化石油ガス(LPG)にも、通常は微量の硫黄化合物が含まれる。また、実質的に硫黄分を含まない液化天然ガス(LNG)を主原料として製造される都市ガスであっても、輸送時の安全性確保のため、微量の付臭剤が添加されている。
付臭剤として一般的に用いられているのは、ターシャリーブチルメルカプタン(TBM)、テトラヒドロチオフェン(THT)、ジメチルサルファイド(DMS)等の有機硫黄化合物である。
水素化脱硫は、Co-Mo系あるいはNi-Mo系触媒を用いて炭化水素原料中の有機硫黄化合物を水素と反応させて水素化分解した後、生成した硫化水素を酸化亜鉛に吸着させて除去する方法である(非特許文献1、2)。水素化脱硫は、石油精製における燃料油の脱硫プロセスとしても用いられるなど、幅広く実用に供されている。しかし、硫化水素の酸化亜鉛への吸着が平衡反応となることもあり、微量の硫黄分の残存が避けられない。また、数十ppbの硫黄分が水蒸気改質触媒にリークするとされている(非特許文献2)。
吸着脱硫法は、常温で脱硫が行えることが利点である。また、水素の添加が不要である点が利点である。しかし、単位体積当たりの脱硫能力が小さく、多量の脱硫剤を要するという課題がある。また、ガス中に水分が含まれると吸着性能がさらに低下するという課題がある。さらに、比較的水分に強いAgは特に高価であるなどの課題がある。
この方法では、処理後の硫黄分の濃度は1ppb以下に低減できるため、水蒸気改質触媒の被毒を長期にわたって防ぐことができる。しかし、水素化脱硫と同様に300℃以下で十分な脱硫性能を得るには、多量の脱硫剤を要する点は課題といえる。
そこで、本発明は、単位時間当たりの炭化水素原燃料の流量が変動する場合であっても、安定して脱硫を行える技術を提供することを目的とする。
炭化水素原燃料が処理され、前記炭化水素原燃料に含まれる硫黄分を脱硫する、主成分として銅、亜鉛及びニッケルを含む脱硫剤が充填されている脱硫器と、
前記炭化水素原燃料に水素を添加する水素添加器と、
前記脱硫器において脱硫処理される前記炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量が多いほど、前記水素添加器から前記炭化水素原燃料に添加する水素の量を多く制御する制御手段と、を備え、
単位時間当たりにおける、前記炭化水素原燃料に対する前記水素の体積比(水素/炭化水素原燃料)を、0.1%以上11%以下の変動範囲において、前記炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量に応じて変動させる点にある。
前記炭化水素原燃料は、軽質炭化水素原燃料である点にある。
前記炭化水素原燃料の処理量を測定する流量計をさらに備える点にある。
上記の脱硫器を備える脱硫装置と、
前記脱硫器で脱硫された前記炭化水素原燃料を水蒸気と反応させて水蒸気改質反応により水素を生成する改質器と、
を備える点にある。
前記改質器で生成された水素の少なくとも一部を前記水素添加器に導入し、前記脱硫器の上流側において、前記炭化水素原燃料に、前記水素添加器からの水素を合流させる返送路をさらに備える点にある。
主成分として銅、亜鉛及びニッケルを含む脱硫剤が充填されている脱硫器に、炭化水素原燃料及び水素を投入し、前記炭化水素原燃料に含まれる硫黄分を脱硫するステップと、
前記脱硫器において脱硫処理される炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量に応じて、前記炭化水素原燃料に対する前記水素の体積比(水素/炭化水素原燃料)を、0.1%以上11%以下の変動範囲において制御する形態で、前記脱硫器において脱硫処理される炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量が多いほど、前記炭化水素原燃料に添加する水素の量を多く制御するステップと、
を備える点にある。
主成分として銅、亜鉛及びニッケルを含む脱硫剤が充填されている脱硫器に、炭化水素原燃料及び水素を投入し、前記炭化水素原燃料に含まれる硫黄分を脱硫するステップと、
前記脱硫器において脱硫処理される炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量に応じて、前記炭化水素原燃料に対する前記水素の体積比(水素/炭化水素原燃料)を、0.1%以上11%以下の変動範囲において制御する形態で、前記脱硫器において脱硫処理される炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量が多いほど、前記炭化水素原燃料に添加する水素の量を多く制御するステップと、
前記脱硫器で脱硫された前記炭化水素原燃料を水蒸気と反応させて水蒸気改質反応により水素を生成するステップと、
を備える点にある。
以下に、本発明の実施形態にかかる脱硫装置、水素製造装置、脱硫方法及び水素製造方法を説明する。
(1)水素製造装置の構成
まず、本発明の実施形態にかかる水素製造装置の構成例を、図1に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る水素製造装置の概略構成図である。水素製造装置100は、供給された原燃料ガス(炭化水素原燃料)G1を脱硫し、さらに水蒸気改質して、水素を含有する改質燃料ガスG3を得る反応システムである。水素製造装置100は、主として、原燃料ガスG1を脱硫する脱硫器1と、脱硫器1を経た脱硫剤出口ガスG2の水蒸気改質を行う改質器2と、脱硫器1に投入される原燃料ガスG1の量を測定する流量計3と、改質器2で生成された水素を脱硫器1の上流側に送るリサイクルポンプ(水素添加器)4と、リサイクルポンプ4により供給する水素の量を制御する制御器(制御手段)5と、を備えている。脱硫器1には脱硫剤が封入されている。また、改質器2には、改質触媒が封入されている。
また、脱硫器1、リサイクルポンプ4、流量計3及び制御器5は、原燃料ガスG1に適切な量の水素を添加し、原燃料ガスG1の脱硫を行う脱硫装置10を構成している。
脱硫器1の入口には、供給路11が接続されており、供給路11を介して、原燃料ガスG1が脱硫器1に供給される。また、供給路11には、後述の第2返送路14bが接続されており、後述のリサイクルポンプ(水素供給器)4から水素を含むリサイクルガスが供給される。つまり、水素は、脱硫器1の上流側の原燃料ガスG1に添加される。よって、供給路11において、原燃料ガスG1と、水素を含むリサイクルガスとが混合され、混合された原燃料ガスG1と水素を含むリサイクルガスとが脱硫器1に供給される。そして、脱硫器1に封入された後述の脱硫剤によって、原燃料ガスG1が脱硫されて、脱硫剤出口ガスG2として排出される。
また、脱硫器1へは、脱硫器1での脱硫の処理能力を考慮して原燃料ガスG1が投入されており、脱硫器1での処理量と、脱硫器1への投入量とは概ね同一である。
水素製造装置100に導入される原燃料ガスG1は、例えば天然ガス、液化石油ガス(LPG)、天然ガス及び液化石油ガス等を原料とする都市ガスのような軽質炭化水素を主成分とする原燃料ガスG1である。
軽質炭化水素を主成分とする原燃料ガスG1は、炭素析出を引き起こしやすい重質炭化水素をほとんど含まないため、硫黄の含有量が少なく、原燃料として好適である。よって、少量の脱硫剤により軽質炭化水素原燃料の脱硫を行うことができる。
脱硫器1に封入される脱硫剤は、銅、亜鉛およびニッケルを主成分とする脱硫剤である。
この脱硫剤は、例えば、次のように製造される。まず、銅化合物、亜鉛化合物を含む混合物とアルカリ物質の水溶液とを混合して沈殿を生じさせる。次に、得られた沈殿を焼成し、酸化銅-酸化亜鉛混合物成型体を得た後、この成型物にニッケルを含浸させ、さらに焼成する。焼成により得られた酸化物焼成体を水素還元して前記脱硫剤が製造される。
ニッケルは、有機硫黄化合物の分解において高い触媒作用を持つ。そのため、脱硫剤中のニッケルの含有量が少ないと、脱硫性能が得られない。上記のように、脱硫剤中にNiが約1.0質量%から約10質量%含有されているため、脱硫剤表面に適度な量のニッケルを付着及び存在させ、脱硫に関与しない脱硫剤内部のニッケル量を減らして効率的な脱硫を行うことができる。
ZnOは硫黄をZnSとして固定するための必須成分である。脱硫剤中のZnOの含有量が、少なすぎると脱硫容量が少なくなる。よって、脱硫剤中の含有量として、ZnOが約30質量%から約70質量%含まれているのが好ましい。
上述のように銅及びニッケルが、微粒子としてZnO粒子表面上に極めて均一に混合及び分散しているので、銅及びニッケルとZnOとの化学的な相互作用により、脱硫剤は高活性状態になっている。これにより、ニッケル単独では生じやすいメタン化反応及び炭素析出などの副反応が抑制され、長期にわたり高活性な脱硫性能を維持できる。
以上の脱硫剤は、炭化水素原燃料である原燃料ガスG1の脱硫性能に極めて優れており、少量の使用により高度に脱硫された炭化水素原燃料を長時間にわたり安定して容易に得ることができる
改質器2に封入される水蒸気改質触媒は、NiあるいはRuを耐熱性の無機酸化物に担持した触媒である。耐熱性の無機酸化物としては、アルミナやジルコニア等が好適に用いられる。Niを用いる場合、水蒸気改質触媒に担持されているNiの担持量は質量比で約1~約60%、好ましくは約10~約30%程度である。Ruを用いる場合、水蒸気改質触媒に担持されているRuの担持量は質量比で約0.1~約10%、好ましくは約0.5~約4%程度である。
次に、本実施形態に係る水素製造装置100における水素製造方法について説明する。
供給路11から原燃料ガスG1が供給されると、流量計3は、水素製造装置100に送入される原燃料ガスG1の流量を計測する。制御器5は、この流量計測結果に基づいて、原燃料ガスG1に対して添加すべき水素の比率を計算し、算出した水素の比率に基づいてリサイクルポンプ4の出力を制御する。このとき、制御器5は、原燃料ガスG1の流量(脱硫器1での原燃料ガスG1の処理量に相当)が増加すると、原燃料ガスG1に対する水素の添加割合を増加する。
一方、原燃料ガスG1に対する水素の添加割合が多すぎると、結果的に脱硫剤上での原燃料ガスG1の滞留時間が短くなるため、脱硫性能が低下する恐れがある。さらに、第1及び第2返送路14(14a、14b)からリサイクルポンプ4を介して大量の水素のリサイクルすることは経済的にも不利となる場合がある。
従来は、原燃料ガスG1中の硫黄を脱硫剤で脱硫処理する場合において、原燃料ガスG1中の硫黄含有量が約ppmオーダーの量であるので、水素は、原燃料ガスG1に対してモル比で約1/10000~1/1000のオーダーで添加すればよいとされていた。しかし、発明者らは、原燃料ガスG1中の硫黄を脱硫剤で脱硫処理する場合において、原燃料ガスG1の硫黄が約ppmオーダーの量であっても、水素添加量を前述のオーダーよりも増加させた場合に脱硫剤の破過時間が顕著に延長されるという新規の知見を発見した。そして、この新規な知見に基づいて本実施形態を完成した。
特許文献4に記載の方法に従い、酸化銅-酸化亜鉛-酸化アルミニウム混合物成型体にニッケルを含浸させた直径1/8インチ×長さ1/8インチの酸化物成型体(還元前の酸化状態にある脱硫剤)を得た。この還元前の脱硫剤は、Ni6.5%、Cu35%、Zn25%、Al2.9%(いずれも酸化状態にある脱硫剤中の金属換算の質量%)を含んでいた。
そして、脱硫剤出口ガスG2中のDMS、TBMおよび硫化水素濃度をガスクロマトグラフで分析した。
原燃料ガスG1である13A都市ガスを毎時660リットルとし、これに水素を0.264リットル(0℃、1気圧の標準状態における体積)添加して脱硫剤が封入された脱硫器1に通じた他は試験例1と同様にして脱硫性能を評価した。原燃料ガスG1に対する水素の体積比は0.04%である。
原燃料ガスG1である13A都市ガスを毎時660リットルとし、原燃料ガスG1に対する水素の体積比を変えた他は試験例2と同様にして、脱硫剤出口ガスG2のDMS濃度が20ppbを超えるまでの時間を取得した。試験例3~8では、原燃料ガスG1に対する水素の体積比を、それぞれ0.1%、0.5%、1.0%、2.0%、4.2%、11%とした。
脱硫剤出口ガスG2のDMS濃度が20ppb破過時間は、試験例3~8それぞれについて、58時間、81時間、96時間、125時間、167時間、188時間となった。
試験例1の結果の通り、原燃料ガスG1に水素を添加しない場合は20ppb破過時間は約6時間であった。また、試験例2の結果の通り、原燃料ガスG1に体積比で0.04%の水素を添加すると20ppb破過時間は約21時間であった。
そして、試験例3~8では、原燃料ガスG1に対する水素の体積比を、それぞれ0.1%、0.5%、1.0%、2.0%、4.2%、11%とすると、20ppb破過時間はそれぞれ58時間、81時間、96時間、125時間、167時間、188時間となった。
そして、本発明者らは、前述の水素添加量を増加させると、脱硫剤の破過時間が顕著に延びるという新規の知見と、脱硫器1における原燃料ガスG1の処理量の増加により脱硫反応箇所である反応帯が広がり、脱硫器1の下流側に移動するという知見とに基づいて、原燃料ガスG1の処理量の増加に応じて水素添加量を増加させ、原燃料ガスG1の脱硫反応を促進させて、反応帯の下流側への移動を抑制することとした。逆に、脱硫器1における原燃料ガスG1の処理量が少ない場合は、脱硫器1において十分に脱硫反応が生じるため、水素添加量を減らすこととした。つまり、脱硫器1において処理される原燃料ガスG1の単位時間当たりの処理量が多いほど、原燃料ガスG1に添加する水素の量を多くするとの新たな知見を見出した。
試験例1と同様にして脱硫剤を得て、脱硫器1を構成した。そして、恒温器の温度を250℃にした他は試験例1と同様にして脱硫剤の還元処理を行った。
還元処理後、恒温器の温度を250℃に保ったまま、原燃料ガスG1としての13A都市ガスを毎時440リットル(0℃、1気圧の標準状態における体積)とし、これに水素を9リットル(0℃、1気圧の標準状態における体積)添加して、脱硫剤が封入された脱硫器1に流通した。原燃料ガスG1、および水素を含む全流通ガスに対する水素の体積比は2%である。
さらに4時間後、13A都市ガスの流量を毎時330リットルに変更し、全流通ガスに対する水素の体積比が1.2%となるよう、水素添加量を変更し、さらに20時間流通を続けた。
以降は、13A都市ガスの流量が毎時660リットルで、全流通ガスに対する水素の体積比が4%での条件での4時間のガス流通と、13A都市ガスの流量が毎時330リットルで、全流通ガスに対する水素の体積比が1.2%での条件での20時間のガス流通を交互に繰り返し行った。
実施例1での原燃料ガスG1の流量及び水素添加量(水素流量)の経時変化を図4に示す。
なお、脱硫剤出口ガスG2からDMSが検出された時間においては、すべて、原燃料ガスG1の流量が大きい場合(毎時660リットル)であった。
原燃料ガスG1に対する水素の体積比が常に2%になるように固定した他は、実施例1と同様にして、原燃料ガスの流量を変動させて脱硫剤の脱硫性能を評価した。
比較例1での原燃料ガスG1の流量及び水素添加量(水素流量)の経時変化を実施例1とともに図4に示す。
このときも、原燃料ガスG1の流量が毎時660リットル(原燃料ガスG1の流量が大きい場合)のときにだけ脱硫剤出口ガスG2からDMSが検出された。脱硫剤出口ガスG2のDMS濃度は、原燃料ガスG1流通開始から88時間、110時間、112時間、134時間、136時間、158時間、160時間経過後でそれぞれ、14.1ppb、17.4ppb、20.4ppb、29.6ppb、34.1ppb、44.9ppb、50.3ppbであった。
脱硫剤出口ガスG2のDMS濃度について、全体的に実施例1の値の方が比較例1の値よりも低い。このことから、本発明で見出した、原燃料ガスの流量が多いほど、原燃料ガスに添加する水素の体積比が大きくなるよう水素の添加量を変動させるという運転方法によって、脱硫剤の脱硫性能が向上することは明らかである。
試験例1と同様にして脱硫剤を得て、脱硫器1を構成した。そして、恒温器の温度を250℃にした他は試験例1と同様にして脱硫剤の還元処理を行った。
還元処理後、恒温器の温度を250℃に保ったまま、原燃料ガスG1としての13A都市ガスを毎時400リットル(0℃、1気圧の標準状態における体積)とし、これに水素を4リットル(0℃、1気圧の標準状態における体積)添加して、脱硫剤が封入された脱硫器1に流通した。原燃料ガスG1、および水素を含む全流通ガスに対する水素の体積比は1%である。
さらに9時間後、13A都市ガスの流量を毎時300リットルに変更し、全流通ガスに対する水素の体積比が1%となるよう、水素添加量を変更し、さらに15時間流通を続けた。
その後、13A都市ガスの流量が毎時600リットルで、全流通ガスに対する水素の体積比が4%での条件での9時間のガス流通と、13A都市ガスの流量が毎時300リットルで、全流通ガスに対する水素の体積比が1%での条件での15時間のガス流通を行ったあと、13A都市ガスの流量を毎時400リットルに変更し、全流通ガスに対する水素の体積比が1%となるよう水素添加量を変更した。
実施例2での原燃料ガスG1の流量及び水素添加量(水素流量)の経時変化を図5に示す。
その後、96.5時間後から110.5時間後まではDMSが検出されず、111.5時間後には23.2ppb、112.5時間後には24.1ppb、130.5時間後には35.9ppbとなった。
なお、脱硫剤出口ガスG2からDMSが検出された時間においては、すべて、原燃料ガスG1の流量が大きい場合(毎時600リットル、または毎時400リットル)であった。
原燃料ガスG1に対する水素の体積比が常に1%になるように固定した他は、実施例2と同様にして、原燃料ガスの流量を変動させて脱硫剤の脱硫性能を評価した。
比較例2での原燃料ガスG1の流量及び水素添加量(水素流量)の経時変化を実施例2とともに図5に示す。
このときも、原燃料ガスG1の流量が毎時600リットル、または毎時400リットル(原燃料ガスG1の流量が大きい場合)のときにだけ脱硫剤出口ガスG2からDMSが検出された。脱硫剤出口ガスG2のDMS濃度は、原燃料ガスG1流通開始から63時間、64時間、71時間、87時間、95時間、111時間、112時間、130時間経過後でそれぞれ、31.7ppb、36.8ppb、51.7ppb、62.7ppb、86.3ppb、30.5ppb、31.4ppb、44.1ppbであった。
脱硫剤出口ガスG2のDMS濃度について、全体的に実施例2の値の方が比較例2の値よりも低い。このことから、本発明で見出した、原燃料ガスの流量が多いほど、原燃料ガスに添加する水素の体積比が大きくなるよう水素の添加量を変動させるという運転方法によって、脱硫剤の脱硫性能が向上することは明らかである。
(1)
比較例1では、原燃料ガスG1の流量に関係なく水素の体積比が2%で一定となるように調整した。一方、実施例1では、原燃料ガスG1が多い場合(毎時660リットル)は、比較例1よりも大きくなるように水素の体積比を4%に調整し、原燃料ガスG1が少ない場合(毎時330リットル)は、比較例1よりも小さくなるように水素の体積比を1.2%に調整した。
上記のように水素の体積比を調整することで、実施例1と比較例1とにおいて、同時に実験を開始してから所定時間経過後の水素の総添加量が同じとなるように調整した。
上記のように水素の体積比を調整することで、実施例2と比較例2とにおいて、同時に実験を開始してから所定時間経過後では、実施例2の方が水素の総添加量が多くなった。
前述の通り、実施例1及び比較例1の結果から、原燃料ガスG1の流量が大きい場合(毎時660リットル)に脱硫器1の下流側から硫黄分が流出するものの、実施例1の方が比較例1よりも、脱硫器1の下流側から硫黄分が流出しにくいことが分かった。同様に、実施例2及び比較例2の結果から、原燃料ガスG1の流量が大きい場合(毎時600リットル、または毎時400リットル)に脱硫器1の下流側から硫黄分が流出するものの、実施例2の方が比較例2よりも、脱硫器1の下流側から硫黄分が流出しにくいことが分かった。これらの実施例1,2、比較例1,2の共通の結果からすると、原燃料ガスG1の流量が大きい場合に脱硫器1の下流側から硫黄分が流出するものの、本実施形態の運転方法を採用した実施例1及び実施例2の方が比較例1及び比較例2よりも、脱硫器1の下流側から硫黄分が流出しにくいことが分かった。
実施例1,2、比較例1,2においてDMSが検出されなった時間について検討する。実施例1及び比較例1では原燃料ガスG1の流量が小さく(毎時330リットル)、水素の体積比が実施例1では1.2%であり、比較例1では2%であった場合に、DMSが検出されなかった。また、実施例2及び比較例2では原燃料ガスG1の流量が小さく(毎時300リットル)、水素の体積比が実施例2及び比較例2で1%であった場合に、DMSが検出されなかった。よって、本実施形態の運転方法を採用することにより、原燃料ガスG1の流量が小さく、水素の体積比が小さい場合であっても、脱硫剤の脱硫性能が確保されていることが分かる。
(1)上記実施形態では、改質器2で水蒸気改質した改質燃料ガスG3の一部をリサイクルポンプ4を経て供給路11にリサイクルする。しかし、改質燃料ガスG3をさらにCOシフト反応器あるいはPSA(圧力スイング吸着)精製装置などに導入し、水素濃度をさらに高めたガスをリサイクルする構成としてもよい。
また、改質器2からの水素を含むリサイクルガスを供給路11に供給するのではなく、別途の水素のみを含むガスを貯蓄している水素タンクから、水素を供給路11に供給してもよい。つまり、原燃料ガスG1に、リサイクルガスの水素を添加するのではなく、純粋の水素を添加してもよい。
例えば、制御器5が外部信号に基づいて水素製造装置100に送入される原燃料ガスG1の流量を決定してもよい。そして、制御器5は、外部信号に基づいて、流量計3に代えて設置される原料ガスポンプ(図示せず)の出力を決定するとともに、リサイクルポンプ4の出力を決定してもよい。これにより、原燃料ガスG1に対して所定の比率の水素が添加される。
さらに別の態様では、返送路14を前記原料ガスポンプの入口側に接続し、リサイクルポンプ4に代えて、流量制御弁(図示せず)を設置してもよい。そして、制御器5が前記流量制御弁の開度を調節することにより、原燃料ガスG1の流量に対応する比率の水素が添加されるように構成してもよい。
2 改質器
3 流量計
4 リサイクルポンプ
5 制御器
10 脱硫装置
11 供給路
12 改質器流路
13 改質ガス流路
14 返送路
15 水蒸気供給路
G1 原燃料ガス
G2 脱硫剤出口ガス
G3 改質燃料ガス
G4 リサイクルガス
S 水蒸気
100 水素製造装置
Claims (7)
- 炭化水素原燃料が処理され、前記炭化水素原燃料に含まれる硫黄分を脱硫する、主成分として銅、亜鉛及びニッケルを含む脱硫剤が充填されている脱硫器と、
前記炭化水素原燃料に水素を添加する水素添加器と、
前記脱硫器において脱硫処理される前記炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量が多いほど、前記水素添加器から前記炭化水素原燃料に添加する水素の量を多く制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、単位時間当たりにおける、前記炭化水素原燃料に対する前記水素の体積比(水素/炭化水素原燃料)を、0.1%以上11%以下の変動範囲において、前記炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量に応じて変動させる、脱硫装置。 - 前記炭化水素原燃料は、軽質炭化水素原燃料である、請求項1に記載の脱硫装置。
- 前記炭化水素原燃料の処理量を測定する流量計をさらに備える、請求項1又は2に記載の脱硫装置。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の脱硫装置と、
前記脱硫器で脱硫された前記炭化水素原燃料を水蒸気と反応させて水蒸気改質反応により水素を生成する改質器と、
を備える水素製造装置。 - 前記改質器で生成された水素の少なくとも一部を前記水素添加器に導入し、前記脱硫器の上流側において、前記炭化水素原燃料に、前記水素添加器からの水素を合流させる返送路をさらに備える、請求項4に記載の水素製造装置。
- 主成分として銅、亜鉛及びニッケルを含む脱硫剤が充填されている脱硫器に、炭化水素原燃料及び水素を投入し、前記炭化水素原燃料に含まれる硫黄分を脱硫するステップと、
前記脱硫器において脱硫処理される炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量に応じて、前記炭化水素原燃料に対する前記水素の体積比(水素/炭化水素原燃料)を、0.1%以上11%以下の変動範囲において制御する形態で、前記脱硫器において脱硫処理される炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量が多いほど、前記炭化水素原燃料に添加する水素の量を多く制御するステップと、
を備える脱硫方法。 - 主成分として銅、亜鉛及びニッケルを含む脱硫剤が充填されている脱硫器に、炭化水素原燃料及び水素を投入し、前記炭化水素原燃料に含まれる硫黄分を脱硫するステップと、
前記脱硫器において脱硫処理される炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量に応じて、前記炭化水素原燃料に対する前記水素の体積比(水素/炭化水素原燃料)を、0.1%以上11%以下の変動範囲において制御する形態で、前記脱硫器において脱硫処理される炭化水素原燃料の単位時間当たりの処理量が多いほど、前記炭化水素原燃料に添加する水素の量を多く制御するステップと、
前記脱硫器で脱硫された前記炭化水素原燃料を水蒸気と反応させて水蒸気改質反応により水素を生成するステップと、
を備える水素製造方法。
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