JP7128675B2 - 津波バリア - Google Patents
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Description
端部支柱および中間支柱は、変形等により津波や高潮などによる漂流物の衝突エネルギーを吸収し、ワイヤロープは、伸びることにより衝撃エネルギーを吸収する。津波バリアの設置位置は、防護対象と支柱およびワイヤロープとの間隔、支柱の変形や、ワイヤロープの伸びを考慮して決定される。
例えば、ワイヤロープの変位量を小さくするために、中間支柱の本数を増やして、支柱間の間隔を狭めたり、ワイヤロープの直径を大きくしたりすることが考えられる。しかし、中間支柱の本数を増した場合には津波バリアの施工性が低下し、工期が延び、コストが増加する。また、ワイヤロープの直径を大きくした場合には、重量の増加に伴って施工性が低下し、コストが増加する。
図1は、防護対象を囲む津波バリアの斜視図である。図2は、津波バリアの構成を概略的に示す平面図である。
図1に示す津波バリア1は、沿岸地域または海辺に近い地域に建設された、例えば、送電鉄塔等の防護対象Tを取り囲んでいる。防護対象Tは、例えば、周囲を道路、田畑、河川、当該防護対象Tの所有者以外の第三者の土地等により囲まれた用地に建設しなければならない場合がある。このため、津波バリア1は、防護対象Tに近接して設置する必要がある。
各支柱2は、地面に埋設された基礎に立設されている。図2に示すように、支柱2は、直線上に並ぶように地面に立設されており、その途中で並び方向が変えられている。すなわち、並び方向が変わる箇所が津波バリア1のコーナ部Cとなる。津波バリア1は、平面視方形状に形成されているため、4つのコーナ部Cを有するように支柱2の並び方向が4箇所で変えられている。
複数の支柱2には、スクリーン3の端部が係止される係止支柱21と、スクリーン3が支持される支持支柱22とがあり、それぞれ鋼管により形成されている。
津波バリア1の各コーナ部Cに係止支柱21が設置されており、各係止支柱21の間に所定の間隔をあけて支持支柱22が設けられている。
係止支柱21は、当該係止支柱21に衝突した漂流物等の衝突エネルギーを支柱が局部変形する(凹む)ことによって吸収するように設計されている。つまり、係止支柱21は、津波や高潮によって流されてきた漂流物が、係止支柱21に衝突した場合であっても局部変形しつつも破壊されることなく漂流物を捕捉する。
スクリーン3は、例えば、津波や高潮の発生時に、海から陸に押し寄せる押し波による漂流物が防護対象Tに衝突して、当該防護対象Tの破損または倒壊を防止するために漂流物を捕捉する捕捉体となるものである。
スクリーン3は、例えば、並べられた各支柱21,22に、その高さ方向において複数箇所で通される複数のスクリーン材を有する。スクリーン材は、ワイヤロープ31であり、各支柱21,22の軸線方向に直交する水平方向に沿うように各支柱21,22に挿通されている。各ワイヤロープ31は、その延在方向が互いに平行となるように架設されており、津波バリア1のコーナ部Cに設置された係止支柱21の間に架け渡されており、ワイヤロープ31の両端部は、各係止支柱21に係止されている。
使用するワイヤロープ31の直径(φ)は、津波バリア1と防護対象Tとの間の間隔に応じて適宜選択される。
以下に、津波バリア1に架け渡すワイヤロープ31の選択について説明する。
津波バリア1を防護対象Tに近接して設置しなければならない場合、支柱2およびスクリーン3と防護対象Tとの間には限られた狭いスペースしか確保されていない。ここで「近接」とは、特に限定されない。津波バリアTと防護対象Tとの間隔は、津波バリア1を実際に設置する場所の設計条件として、設置場所に応じて適宜選択される。
防護対象Tに近接して津波バリア1を設置しなければならない場合、使用するワイヤロープ31については、当該ワイヤロープ31の変位量(mm)および津波バリア1において要求される吸収エネルギー(kJ)を考慮して選択する。つまり、津波バリア1の設計上、要求される最大の(所定の)吸収エネルギーに対して、どの程度ワイヤロープ31が変位するかを考慮して使用するワイヤロープ31を選択する。
これにより、防護対象Tに対して近接して設置される津波バリア1においては、プレテンション加工が施されたワイヤロープ31を選択することが好ましい。
図3乃至図6における試算条件は、2本の係止支柱21の間隔を50mとして、各支柱2(係止支柱21および支持支柱22)の間隔を10mとした。つまり、2本の係止支柱21の間には、4本の支持支柱22が等間隔で設置されている。
なお、各図(b)において変位量(mm)の値は、ワイヤロープ31を係止支柱21に架け渡した場合の初期張力を考慮したものになっている。
具体的には、φ10、φ16、φ20、φ25のいずれのワイヤロープにおいても、伸び率0.01におけるプレテンション加工が施されたワイヤロープ31の吸収エネルギー(kJ)は、プレテンション加工が施されていないワイヤロープの吸収エネルギー(kJ)に比べて約1.3倍以上大きくなっている。
具体的には、φ10、φ16、φ20、φ25のいずれのワイヤロープにおいても、例えば、吸収エネルギー100kJにおけるプレテンション加工が施されたワイヤロープ31の変位量(mm)は、プレテンション加工が施されていないワイヤロープの変位量(mm)に比べて約0.9倍になっている。
これに対して、プレテンション加工が施されていないワイヤロープの場合、φ20の変位量は1218mmであるため、ワイヤロープが変位して防護対象Tに接触するおそれがある。そのため、プレテンション加工が施されていないワイヤロープの場合、設計上、要求される吸収エネルギーを100kJとした場合の変位量が1200mmを下回っているφ25(変位量1089mm)のワイヤロープを選択しなければならない。
ワイヤロープ31の直径(φ)については、ワイヤロープ31と防護対象Tとの間隔および設計上、要求される最大の吸収エネルギー(kJ)における変位量(mm)を比較して、当該変位量(mm)がワイヤロープ31と防護対象Tとの間隔よりも小さくなっているワイヤロープを選択すればよい。
つまり、防護対象Tと津波バリア1との間隔が近接している場合であっても、弾性係数が高いPC鋼より線を用いるのではなく、PC鋼より線の弾性係数よりも小さいがスクリーン3としての十分な弾性係数を確保しつつ、変位を抑制したワイヤロープ31が津波バリア1には用いられている。これにより、ワイヤロープ31を係止する係止支柱21の直径の拡大も抑えることができ、PC鋼より線をスクリーンに用いた津波バリアと比べて、全体として施工性が上がりコストを低く抑制して津波バリア1を設置することができる。
また、ワイヤロープ31には、プレテンション加工が施されているため、当該ワイヤロープ31を構成する素線等の配列状態が整えられており耐疲労耐性が向上している。
さらに、ワイヤロープは、PC鋼より線に比べて直径(φ)の選択肢が多く、防護対象Tと津波バリア1との間隔に応じた選択肢が大きい。
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、上記の実施の形態においては、津波バリア1は、全周にわたってスクリーン3が設けられていた。しかし、津波バリア1には防護対象Tの補修・点検等のために作業員や、作業機器を搬入させるためのゲートが設けられていてもよい。ゲートGは、津波バリア1の一辺において、コーナ部Cに配置された係止支柱21の間にさらに一対の係止支柱21を配置して当該一対の係止支柱21の間にスクリーン3を架け渡さないようにして形成されている。
2 支柱
21 係止支柱
22 支持支柱
3 スクリーン
31 ワイヤロープ
Claims (4)
- 鋼管により形成されており、基礎に所定の間隔をあけて立設された複数の支柱と、
前記複数の支柱の間に架け渡されて波の力により防護対象に対して流されてきた物体を捕捉するスクリーンと、を備え、
前記スクリーンは、プレテンション加工されたワイヤロープを有する
ことを特徴とする津波バリア。 - 前記ワイヤロープは、変形することにより前記物体の衝突エネルギーを吸収し、
前記支柱の間に架け渡される前記ワイヤロープは、所定の吸収エネルギーに基づく変位量が、前記ワイヤロープと防護対象との間隔より小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の津波バリア。 - 前記支柱は、前記ワイヤロープの降伏時の荷重によって降伏しないように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の津波バリア。
- 前記防護対象と前記ワイヤロープとの間隔が近接していることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の津波バリア。
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