JP7128478B2 - 化成処理装置、及び化成処理鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
鋼板搬送中に、鋼板表面に対しノズルから化成処理液を噴霧して化成皮膜を形成する従来技術としては、例えば特許文献1に記載の方法がある。
ここで、通常、各ノズルから鋼板表面への噴霧領域(鋼板表面への化成処理液が噴霧される領域)は、鋼板幅方向で隣り合うノズルの噴霧領域が重なるように設定することで、鋼板幅方向全面に化成処理液が付着させる。
ここで、通常、各ノズルから鋼板表面への噴霧領域(鋼板表面への化成処理液が噴霧される領域)は、鋼板幅方向で隣り合うノズル同士の噴霧領域が重なるように板幅方向に細長くなるように設計する。これによって鋼板幅方向全面に対し化成処理液が付着するようにする。このために、従来にあっては、上記の噴霧領域は、鋼板幅方向に延びたような形状、例えば扇状の噴射形態(以下、扇形状とも記載する)となるように設定している。
ここでいう処理ムラとは、鋼板の通板方向にスジ状に発生する化成皮膜の処理ムラのことであり、そのスジの細さは1~10mm程度である。化成処理液の当たり方によりムラが発生するため、板幅方向では全幅で発生することが多い。
本発明は、上記のような点に着目したもので、化成処理の設備構成を複雑化することなく、通板速度が遅い場合であっても、化成処理による処理ムラ発生を抑制可能とすることを目的としている。
従来、特許文献1のように、通板方向に沿って複数のノズルヘッダが配列し、各ノズルヘッダのノズルから噴霧される化成処理液は、同一のノズルヘッダ内では、隣り合う噴霧領域に重なりが設定されているが、通板方向で隣り合うノズル同士の噴霧領域を重ねる必要性が認識されていなかった。
そして、発明者は、鋼板幅方向での噴霧領域の重なりだけでなく、鋼板通板方向で隣り合うノズルの噴霧領域に重なるように噴霧領域を広げることで、ノズルヘッダ間での乾燥による処理ムラの発生を抑制できるとの知見を得た。
本実施形態では、亜鉛めっき鋼板を化成処理する鋼板とし、化成処理液としてリン酸亜鉛処理液を用いて化成処理を施して鋼板表面に化成皮膜を形成する場合を例に説明する。但し、本発明は、これに限定されない。スプレー法で化成処理液を鋼板表面に噴霧して鋼板表面に化成処理膜を形成する設備や製造方法であれば、本発明を適用可能である。
化成処理装置は、化成皮膜形成設備1の前段に表面調整設備を有してしても良い。表面調整設備は、例えば化成処理液の種類等によって調整が必要な場合に設置される。この場合、公知の手法で冷延鋼板上に亜鉛めっきを施した後、表面調整設備において表面調整液を鋼板表面に吹き掛けて化成処理皮膜中結晶(リン酸亜鉛結晶等)の核となる物質を鋼板表面に散布する。
ここで、上側ノズルヘッダ11及び下側ノズルヘッダ12は、通板方向に沿って複数配置されていれば良く、通板方向で隣り合うノズルヘッダが互いに平行に配置されていなくても良い。また、各ノズルヘッダに設ける複数のノズルのピッチ等は、各ノズルヘッダによって異なっていても良い。複数のノズルが搬送方向に沿って配置されるとは、例えば、複数のノズルが搬送方向に沿って千鳥状に配置されたような状態も含む。また、一のノズルヘッダに設ける各ノズルの噴霧方向も同一方向に揃っていなくても良い。
本実施形態の下側ノズルヘッダ12に設けられた複数のノズル12aは、図2示すように、任意のノズルによる鋼板2表面への化成処理液が噴霧される領域と、そのノズルと通板方向に交差する方向(ノズルヘッダの延在方向、以下単に板幅方向と記載する)、例えば板の幅方向で隣り合う第2のノズルによる鋼板2表面への上記化成処理液が噴霧される領域とに重なりLp2を有するように設定されている。
ここで、噴射領域ARAの外周輪郭形状が円形とは、真円に限定されず、アスペクト比(長径/短径)が2未満の真円に近い楕円形状など、歪んだ円形状も含まれる。
なお、ノズル11a、12aの噴射口が多角形に設定され、各ノズル12aから多角錐状の化成処理液が噴射される。各ノズル11a、12aによる鋼板2表面への噴射領域ARAが四角形形状の場合の例を図4に示す。
また、搬送方向での噴射領域ARAの重なりLAPの領域と、板幅方向での噴射領域ARAの重なりLAPの領域とが重なっていない方が好ましい。この点からは、噴射領域ARAは四角形状よりも円形形状の方が使用しやすい。図5では、噴射領域ARAが四角形状の場合を例示しているが、菱形形状として、搬送方向での噴射領域ARAの重なりLAPの領域と、板幅方向での噴射領域ARAの重なりLAPの領域とが重なりを有しないようにしても良い。
搬送方向で隣り合う2つの噴射領域ARAの重なり量Lp1は10mm以上であることが好ましい。
また、各ノズル11a、12aからの板幅方向の噴角αは、60度以上70度以下が、通板方向への噴角βは、80度以上85度以下が好ましい。
また、各ノズル11a、12aからの液の噴射流量は、15L/min以上17L/min以下が好ましい。
このとき、通板速度が例えば40mpm以下と遅い場合であっても、本実施形態では、鋼板2の搬送方向(長手方向)において化成処理液と鋼板2とが接する面積を増やすことができる。この結果、搬送方向に沿ったノズル12a間での化成処理液の乾燥が抑制されて、鋼板2下面側での化成処理ムラを改善できる。
同様な構成を鋼板2上面側に適用することで、鋼板2上面側でも化成処理ムラを改善できる。
以上のことから、化成処理後の化成処理鋼板2の外観改善が可能となる。
本実施例では、鋼板として純亜鉛電気亜鉛めっき鋼板を採用し、化成処理液として、日本パーカライジング株式会社製パルボンド3312(PB-3312)を使用した。
そして、搬送中の鋼板にスプレー法にて上記化成処理壁を噴霧して化成処理を施した。
表1に、各例の条件と、その評価を示す。なお、いずれの例(No.1~3)も、鋼板までの距離を300(mm)、スプレー圧力を0.1(Mpa)、1ノズルあたりの流量を15.7(L/min)の条件で実施した。
No.2も、比較例であり、No.3と同様に、噴射領域を円形形状(円錐状の噴射形態)に設定したものである。但しmNo.2では、搬送方向で噴霧領域に重なりが無いように、噴角を小さく設定したものである。
No.3は、発明例であり、噴射領域を円形形状(円錐状の噴射形態)に設定し、通板方向に重なりがあるように設定したものである。
評価基準は、次の通りである、
×:処理ムラ(鋼板2の通板方向にスジ状に発生するムラのことであり、そのスジの細さは1~10mm程度)が板幅方向幅で発生。
△:処理ムラは、上記×で発生した処理ムラと比較し、3/4以下程度のスジ数であるが、ムラは残っている状態。
○:処理ムラ混入なし
ここで、搬送方向で隣り合う噴霧領域で重なりがない状態でも、搬送方向での隣り合う噴霧領域間の距離が近いほど処理ムラが発生しにくいと考えられるが、ノズル間での鋼2の乾燥を防ぐには、搬送方向での隣り合う噴霧領域での搬送方向での重なり量が10mm以上とすることが望ましいと考えられる。
2 鋼板
10 処理槽
11 上側ノズルヘッダ
11a ノズル
12 下側ノズルヘッダ
12a ノズル
ARA 噴射領域
Lp1 搬送方向での重なり量
α、β 噴角
Claims (12)
- 搬送中の鋼板表面に化成処理液をノズルから噴霧して鋼板表面に化成皮膜を形成する化成処理装置であって、
上記ノズルとして、少なくとも鋼板の下面に向けて化成処理液を噴霧可能な複数の下側ノズルを備え、
上記複数の下側ノズルは、少なくとも上記鋼板の搬送方向に沿って複数配置され、
上記複数の下側ノズルのうち、少なくとも一つのノズルによる上記鋼板表面への上記化成処理液が噴霧される領域と、そのノズルと上記搬送方向で隣り合う第2のノズルによる上記鋼板表面への上記化成処理液が噴霧される領域とに重なりを有することを特徴とする化成処理装置。 - 上記ノズルとして、鋼板の上面に向けて化成処理液を噴霧可能な複数の上側ノズルを備え、
上記複数の上側ノズルは、少なくとも上記鋼板の搬送方向に沿って複数配置され、
上記搬送方向に沿って配置された複数の上側ノズルのうち、少なくとも一つのノズルによる上記鋼板表面への上記化成処理液が噴霧される領域と、そのノズルと上記搬送方向で隣り合う第2のノズルによる上記鋼板表面への上記化成処理液が噴霧される領域とに重なりを有することを特徴とする請求項1に記載した化成処理装置。 - 上記化成処理液が噴霧される鋼板は亜鉛めっき鋼板であり、上記化成処理液はリン酸亜鉛処理液であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化成処理装置。
- 上記化成処理液が噴霧される領域の外周輪郭形状が円形若しくは多角形であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した化成処理装置。
- 上記搬送方向で隣り合う2つのノズルによる上記化成処理液が噴霧される領域の重なりは、上記鋼板の搬送方向に10mm以上有することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載した化成処理装置。
- 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の化成処理装置を備えた化成処理鋼板の製造設備。
- 搬送中の鋼板表面に化成処理液を噴霧する化成処理工程を備え、
上記化成処理工程は、少なくとも上記鋼板の搬送方向に沿って配置した複数の下側ノズルから搬送中の鋼板下面に化成処理液を噴霧し、
上記複数の下側ノズルのうち、少なくとも一つのノズルによる上記鋼板表面への上記化成処理液が噴霧される領域と、そのノズルと上記搬送方向で隣り合う第2のノズルによる上記鋼板表面への上記化成処理液が噴霧される領域とが重なりを有することを特徴とする化成処理鋼板の製造方法。 - 上記化成処理工程は、少なくとも上記鋼板の搬送方向に沿って配置した複数の上側ノズルから搬送中の鋼板上面に化成処理液を噴霧し、
上記複数の上側ノズルのうち、少なくとも一つのノズルによる上記鋼板表面への上記化成処理液が噴霧される領域と、そのノズルと上記搬送方向で隣り合う第2のノズルによる上記鋼板表面への上記化成処理液が噴霧される領域とが重なりを有することを特徴とする請求項7に記載した化成処理鋼板の製造方法。 - 上記化成処理液が噴霧される鋼板が亜鉛めっき鋼板であり、上記化成処理液はリン酸亜鉛処理液である請求項7又は請求項8に記載した化成処理鋼板の製造方法。
- 上記搬送方向で隣り合う2つのノズルによる上記化成処理液が噴霧される領域の重なりは、上記搬送方向に10mm以上有することを特徴とする請求項7~請求項9のいずれか1項に記載した化成処理鋼板の製造方法。
- 上記通板速度が40mpm未満であることを特徴とする請求項7~請求項10のいずれか1項に記載した化成処理鋼板の製造方法。
- 上記化成処理液が噴霧される領域の外周輪郭形状が円形若しくは多角形であることを特徴とする請求項7~請求項11のいずれか1項に記載した化成処理鋼板の製造方法。
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