JP7128051B2 - インク収納容器及びインクカートリッジ - Google Patents
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Description
インクを収納する容器には、例えば、可撓性容器が用いられる。可撓性容器は、内部のインクの残量にあわせて変形可能であるため、容器からインクを排出した後に容器中のインク残量を減らすことができる。この可撓性容器は、段ボール製等の外装材に内包されて、インクカートリッジとして提供される。
特許文献1には、一対の可撓性フィルムの外周縁どうしを熱溶着した可撓性袋体と、一対の可撓性フィルムの外周縁間に配置され、可撓性袋体の内部と外部を連通する導出口が貫設された筒状の導出部材とを有する液体収納容器が開示されている。特許文献1では、導出部材が配置される周囲の一対の可撓性フィルムを直接溶着する補強溶着部を形成することで、可撓性袋体に外力が加わっても可撓性袋体に損傷や座屈を生じにくくすることが提案されている。
可撓性容器に収納されるインク全体に対して可撓性容器の内壁が接触する影響は少ない。しかし、可撓性容器が折り畳まれる等して可撓性容器の内壁間の距離が短くなって、少量のインクが可撓性容器の内壁によって挟まれる部分では、局所的にインクが可撓性容器によって変質することが問題になる。
インクが変質することで、インクに凝集物が発生すること、インクの粘度が変化すること等が問題になる。さらに、インクに発生した凝集物は、印刷機構において印刷不良の原因になる。
本発明の他の実施形態としては、上記インク収納容器を備える、インクカートリッジである。
以下、少なくとも1つの側鎖を有し、1分子中の側鎖の炭素数の合計が4以上である脂肪酸エステル系溶剤を脂肪酸エステル系溶剤Eとも記す。
可撓性容器にインクを収納する場合に、可撓性容器の材料とインクの溶剤とが分子構造上似ていると、可撓性容器に溶剤がより吸収されやすくなる。可撓性容器の材料としては、適度な可撓性を備えるため、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の樹脂を好ましく用いることができる。しかし、これらの樹脂は、インクの溶剤と親和性が比較的に高いため、これらの樹脂製の容器は特にインクの溶剤を吸収しやすい性質がある。
シリコーンオイルは、比較的に低表面張力であるため、可撓性容器の表面をコーティングする性質を備える一方で、可撓性容器の材料とは構造が異なるため、可撓性容器に吸収されにくい性質を備える。そのため、シリコーンオイルを配合することで、シリコーンオイル自体とともに、その他のインク成分が可撓性容器に吸収されないように作用すると考えられる。
脂肪酸エステル系溶剤Eは、分子構造上嵩高くなっているため、可撓性容器に吸収されにくい性質を備える。このため、その他のインク成分が容器に吸収されたとしても、脂肪酸エステル系溶剤Eは吸収されないで残るため、顔料等の固形物が一定以上の濃度になることを防ぎ、異物の発生を抑えることができる。
インクは、色材を含むことができる。色材としては、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
顔料は、インク収納容器内で顔料濃度が高くなると、凝集物となることがある。染料は、インク収納容器内で染料濃度が高くなると、インク全体の粘性が高くなり、さらには粘稠体となることがある。このような問題に対して、シリコーンオイル及び/又は脂肪酸エステル系溶剤Eをインクに好ましく配合することができる。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、4~10質量%であることが一層好ましい。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、4~10質量%であることが一層好ましい。
シリコーンオイルとしては、シリル基を有する化合物、シリルオキシ基を有する化合物、シロキサン結合を有する化合物等を用いることができ、特にポリシロキサン化合物を好ましく用いることができる。
鎖状シリコーンオイルは、ケイ素数が2~30の鎖状ポリシロキサンであることが好ましくい。鎖状シリコーンオイルのケイ素数は、より好ましくは2~20であり、さらに好ましくは3~10である。
鎖状シリコーンオイルとしては、例えば、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン、ドコサメチルデカシロキサン等の直鎖ジメチルシリコーンオイル、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン等の分岐ジメチルシリコーンオイル等が挙げられる。
環状シリコーンオイルとしては、ケイ素数が5~9の環状ポリシロキサンであることが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン、オクタデカメチルシクロノナシロキサン等の環状ジメチルシリコーンオイルを好ましく用いることができる。
変性シリコーンオイルとしては、ケイ素数が2~20であることが好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましく、2~6が一層好ましい。
(A)炭素数4以上のアルキル基。
(B)炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基。
(C)炭素数6以上の芳香環含有基。
(D)炭素数4以上のアルキレン基。
変性シリコーンオイルSの1分子中に炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基が2個以上含まれる場合は、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基の炭素数及び酸素数の合計は、2個以上の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基の炭素数及び酸素数の合計である。
好ましくは、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基である。
より好ましくは、一般式(X)において、R1が酸素原子であり、R2は、それぞれ独立的に、メチル基、又は炭素数4以上のアルキル基であり、R2のうち少なくとも1個は、炭素数4以上のアルキル基であり、1分子中の炭素数4以上のアルキル基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4~20である。
例えば、シロキサン原料と、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基とともに反応性基を有する反応性化合物とを、有機溶媒中で反応させることで、変性シリコーンオイルSを得ることができる。シロキサン原料と反応性化合物とは、シロキサン原料の反応性基と反応性化合物の反応性基とがモル比で1:1~1:1.5で反応させることが好ましい。また、反応に際し、0価白金のオレフィン錯体、0価白金のビニルシロキサン錯体、2価白金のオレフィン錯体ハロゲン化物、塩化白金酸等の白金触媒等の触媒を好ましく用いることができる。
変性シリコーンオイルSにアルキル基を導入するためには、反応性化合物として、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン等の炭素数が4以上であるアルケン等を用いることができる。
また、アルケンの他にも、ビニルシクロヘキサン等のエチレン性不飽和2重結合を有する脂環式炭化水素基を用いることができる。
R1-COO-R2 一般式(1)
一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立的にアルキル基であり、R1及びR2のうち少なくとも一方のアルキル基は少なくとも1つの側鎖を有する分岐アルキル基であり、1分子中の側鎖の炭素数の合計が4以上である。
R1及びR2のうち一方が直鎖アルキル基であり、R1及びR2のうち他方が分岐アルキル基であってもよい。また、R1及びR2の両方が分岐アルキル基であってもよい。
また、R1及びR2において、それぞれエステル結合部に結合する炭素原子から数えて最も炭素数が多くなる炭素鎖が複数存在し、複数の炭素鎖に含まれる側鎖の炭素数が同じである場合、側鎖の数が最も少なくなるものを主鎖とする。
1分子中には、側鎖が1つ又は2つ以上含まれてもよい。1分子中に2つ以上の側鎖が含まれる場合は、1分子中の側鎖の炭素数の合計は、2つ以上の側鎖の炭素数の合計になる。
また、1つの側鎖は、特に制限されず、炭素数12以下であってよく、炭素数10以下が好ましく、炭素数8以下がより好ましい。
1つの側鎖は、さらに分岐し側鎖を有していてもよい。
好ましくは、n-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基であり、より好ましくはn-ブチル基、ヘキシル基である。
分岐アルキル基の主鎖の炭素数は、それぞれ独立的に、13以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
分岐アルキル基の全体の炭素数は、4~30が好ましく、6~20がより好ましく、8~18がさらに好ましい。
R1及びR2のうち一方が直鎖アルキル基である場合、直鎖アルキル基の全体の炭素数は、1~30が好ましく、6~20がより好ましく、8~18がさらに好ましい。
R1及びR2の側鎖の炭素数及び主鎖の炭素数は、互いの主鎖の長さ、側鎖の炭素数、脂肪酸エステル系溶剤全体の炭素数に応じて調節されるものである。
また、脂肪酸エステル系溶剤の1分子中の炭素数は、40以下であることが好ましく、30以下がより好ましく、25以下がさらに好ましく、23以下が一層好ましい。高炭素数になると高粘度となることがあるため、脂肪酸エステル系溶剤の炭素数がこの範囲であることで、インクを低粘度化して、吐出性能をより改善することができる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂肪酸エステル系溶剤Eは、脂肪酸とアルコールとを反応させて得ることができる。原料の脂肪酸及びアルコールのうち少なくとも一方に側鎖を有するものを用いる。また、脂肪酸エステル系溶剤Eのアルコール部分に側鎖を導入するために、炭素数3以上の2級アルコールを用いることができる。
反応温度は、脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80~230℃の範囲で調節することができる。反応時間は、脂肪酸及びアルコールの種類や、原料の使用量に応じて1~48時間の範囲で調節することができる。エステル化反応に際して生成する水分を除去することが好ましい。
脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1で反応させることが好ましい。
反応に際して、濃硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒を適量で用いてもよい。
原料となる直鎖脂肪酸としては、例えば、酢酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸等を挙げることができる。
原料となる2級アルコールとしては、例えば、5-デカノール、7-テトラデカノール等を挙げることができる。
原料となる直鎖アルコールとしては、例えば、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール等を挙げることができる。
さらに、シリコーンオイル及び脂肪酸エステル系溶剤Eの合計量は、インク全量に対して、50質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。これらの溶剤は高価であるためその配合量を制限してもよいが、多量に含まれる場合でも上記の効果を得ることができる。
シリコーンオイル及び脂肪酸エステル系溶剤Eの合計量は、特に制限されないが、その他の成分との配合割合から、インク全量に対して、98質量%以下であってもよく、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
シリコーンオイル及び脂肪酸エステル系溶剤Eを併用する場合は、シリコーンオイル及び脂肪酸エステル系溶剤Eの合計量がインク全量に対して10質量%以上となる範囲で、シリコーンオイル及び脂肪酸エステル系溶剤Eのうち少なくとも一方は、インク全量に対して1質量%以上であってよく、3質量%以上であってもよく、好ましくは5質量%以上である。
その他の非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、一実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンN-15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製);モレスコホワイトP-40、モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-350P(いずれも株式会社MORESCO製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが一層好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
その他の脂肪酸エステル系溶剤としては、例えば、全体の炭素数が12以上、好ましくは16~30であって、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸ヘキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、大豆油メチル、トール油メチル等の直鎖アルキル基を有する溶剤;イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、オレイン酸イソプロピル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸イソオクチル、大豆油イソブチル、トール油イソブチル、パルミチン酸イソステアリル(炭素数34)等の1分子中の側鎖の炭素数が3以下である溶剤等が挙げられる。
高級脂肪酸系溶剤としては、例えば、ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14~20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
シリコーンオイル及び脂肪酸エステル系溶剤Eの他に、その他の非水系溶剤を用いる場合は、その他の非水系溶剤はインク全量に対して80質量%以下で配合することが好ましく、より好ましくは70質量%以下である。
一実施形態によるインク収納容器は、油性インクと、油性インクを収納する可撓性容器を備える。可撓性容器には、インクを充填又は排出するための導出口を設けることができる。
このインク収納容器は、段ボール製や樹脂製等の外装部材に内包されて、インクカートリッジとして提供することができる。インクカートリッジは、印刷装置に着脱可能に装着されて、インク収納容器から印刷装置のインク搬送経路へとインクを導出することができる。
これによって、可撓性容器がインク成分、特に溶剤を吸収することを抑制して、可撓性容器内で顔料成分等の固形物が凝集しないようにし、固形物の発生を防止することができる。この現象は、可撓性容器の隅で可撓性容器が変形して可撓性容器の内壁の距離が短くなった箇所にインクが溜まることでより発生しやくなり、問題になる。インク収納容器内で発生した固形物は、インクカートリッジからインクジェットノズルまでの搬送経路や、インクジェットノズル部分で目詰まりし、問題になる。
δ(SP値)=(ΣEcoh/ΣV)1/2・・・(1)
(「溶解性パラメーター適用事例集」(メカニズムと溶解性の評価・計算例等を踏まえて)、97~100頁、(株)情報機構、2007年3月15日発行参照)
図1は、印刷装置の一例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図1において、印刷装置100は、インクジェット方式のラインカラープリンタである。印刷装置100は、不図示であるが、装置本体1内に多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の印刷用紙上に画像を形成することができる。
カートリッジ取付機構30の上方を覆うように上面装置350が配設される。インクカートリッジ200の装着は、この上面装置350の下面と装置本体1の上面との間に水平方向に挿入することにより行われる。この上面装置350には、例えば、シートフィーダー(不図示)や操作パネル340などが配設される。
印刷装置100の内部には、演算処理装置330が備えられている。この演算処理装置330によって、上述したインクヘッドによる印刷処理や、搬送機構の駆動制御の他、インクカートリッジからのインク供給に関する制御が行われる。
図2において、インク収納容器220は、帯状の可撓性容器221と、可撓性容器の長手方向一方端側に取り付けられた導出部材230とを有する。
可撓性容器221は、2枚の可撓性フィルム220a、220bの外周縁が密閉された袋体である。2枚の可撓性フィルム220a、220bの外周縁は、熱溶着によって密封することができる。
導出部材230は、可撓性容器221の内部と外部を連通する導出口231を貫設した筒状の樹脂成型品である。導出部材230は、インク残量に応じた可撓性容器221の膨らみ具合に関係なく導出口231の形状が確保される剛性を備えることが好ましい。導出部材230は、導出口231を外部に出した状態で2枚の可撓性フィルム220a,220bによって挟み込まれ、導出部材230の外周面と2枚の可撓性フィルム220a,220bとは図3に示す幅Waの部分で熱溶着によって密閉されている。
インク収納容器220内のインク残量が減っていくと、導出部材230の取付部分に可撓性容器221が押し付けられるようになることで、剛性のある導出部材230によって可撓性容器221が破損する可能性があり、また、可撓性容器221が折り込まれてインクが折り込み部分に残留する可能性がある。補強溶着部220g、220hを設けることで、導出部材230の取付部分への可撓性容器220の押し付けの応力を分散することができ、上記の問題を解決することができる。
合成した脂肪酸エステルの処方を表1に示す。
表1に示す処方にしたがって、脂肪酸とアルコールを四つ口フラスコに入れて混合撹拌し均一な溶液を得た。四つ口フラスコにディーンスターク装置を装着し、仕込んだ原材料が反応して水が発生したら取り除けるようにした。均一な溶液が入っている四つ口フラスコにさらに触媒として硫酸を適量加え、系全体を加熱した。加熱温度は脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80℃~230℃に設定した。加熱反応時間は1~48時間に設定した。反応後、未反応の原材料や不純物を取り除くため、得られた溶液を減圧蒸留し、脂肪酸エステルを得た。
脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1となるように混合した。
脂肪酸及びアルコールは、東京化成工業株式会社及びSIGMA-ALDRICH社から入手することができる。
ラウリン酸ヘキシル:1分子のC数:18、側鎖の合計C数:0、高級アルコール工業「KAK HL」。
パルミチン酸イソオクチル:1分子のC数:24,側鎖の合計C数:2、高級アルコール工業株式会社製「IOP」。
インクの処方を表2、表3に示す。脂肪酸エステルについて、1分子の炭素数(C数)、側鎖の合計の炭素数(C数)を各表にそれぞれ示す。
各表に示す配合量にしたがって、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を混合し、ビーズミル「ダイノーミルKDL-A」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で、十分に顔料を分散した。続いて、メンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、インクを得た。
(顔料)
カーボンブラック「MA77」:三菱ケミカル株式会社製。
カーボンブラック「NEROX500」:エボニックジャパン株式会社製。
(顔料分散剤)
ソルスパース18000:日本ルーブリゾール株式会社製、有効成分100質量%。
ソルスパース13940:日本ルーブリゾール株式会社製、有効成分40質量%。
(シリコーンオイル)
ジメチルシリコーン「KF-96L-5CS」:信越化学工業株式会社製。
アルキル変性シリコーン「FZ-3196」:東レ・ダウコーニング株式会社製。
(炭化水素溶剤)
イソパラフィン系溶剤「アイソパーM」:エクソンモービル社製。
ナフテン系溶剤「エクソールD130」エクソンモービル社製。
各表に示す組み合わせで、下記インク収納容器に各インク1000mLを充填した。
インク収納容器には、図2及び図3に示す袋体形状の容器を用いた。このインク収納容器は、2枚のフィルムの外周部を熱溶着し、長手方向一方端にインク導出口を設けて作製した。インク収納前のインク収納容器の内周部は370mm×110mmであり、最大容積は1150mLであった。
フィルムの素材は、以下の通りである。
PE:可撓性あり、ポリエチレン樹脂、SP値:8.5cal/cm3。
PP:可撓性あり、ポリプロピレン樹脂、SP値:8.0cal/cm3。
PET:可撓性なし、ポリエチレンテレフタレート樹脂、SP値:10.7cal/cm3。
インクを充填したインク収納容器をインクカートリッジに設置した。このインク収納容器及びインクカートリッジは、後述するインクジェットプリンターに適用できるものである。
上記実施例及び比較例のインクについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表2、表3に示す。
上記した各インクカートリッジをライン式インクジェットプリンター「オルフィスFW5230」(理想科学工業株式会社製)に装填し、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、ベタ画像を1000枚連続して片面印刷して、印刷物を得た。
なお、「オルフィスFW5230」は、ライン型インクジェットヘッドを使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印刷を行うシステムである。
A:不吐出による画質不良が0枚~2枚であった。
B:不吐出による画質不良が3枚以上であった。
上記吐出性能と同様に印刷をして、インク残量が減少してインクが供給できなくなるまで印刷を繰り返した。インクが供給できなくなったときに、インクジェットプリンターからインク収納容器を取り出し、インク収納容器に残っていたインクの量を測定した。以下の基準でインク残量を評価した。
A:インク残量が20g未満であった。
C:インク残量が20g以上であった。
実施例6及び7では、その他の脂肪酸エステル系溶剤の種類を変更しており、結果が良好であった。
実施例8~13から、シリコーンオイル及び側鎖の合計炭素数が4以上である脂肪酸エステル系溶剤の合計量がインク全量に対し10質量%以上で良好な結果が得られることがわかる。また、その他の脂肪酸エステル、炭化水素溶剤を併用しても良好な結果が得られることがわかる。
実施例14から、各種顔料及び顔料分散剤において良好な結果が得られることがわかる。
実施例15~17では、PP製のインク収納容器を用いており、結果が良好であった。
比較例2及び3では、可撓性ではないPETを用いており、インク収納容器からのインクの排出性が低下した。
30 カートリッジ取付機構
100 印刷装置
200 インクカートリッジ
220 インク収納容器
220a、b 可塑性フィルム
220g、h 補強溶着部
221 可塑性容器
230 導出部材
231 導出口
350 上面装置
Claims (2)
- 油性インクと、前記油性インクを収納する可撓性容器とを備え、
前記油性インクは、シリコーンオイル、及び少なくとも1つの側鎖を有し、1分子中の側鎖の炭素数の合計が4以上である脂肪酸エステル系溶剤(E)のうち少なくとも一方と、色材とを含み、前記シリコーンオイル、及び前記脂肪酸エステル系溶剤(E)の合計量がインク全量に対して20質量%以上であり、
インク全量に対して前記脂肪酸エステル系溶剤(E)を除く脂肪酸エステル系溶剤:40.00質量%以上、及び石油系炭化水素溶剤:30.00質量%以上のうち少なくとも一方を含む、インク収納容器。 - 請求項1に記載のインク収納容器を備える、インクカートリッジ。
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