以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、半導体材料としてSiCを用いたSiC半導体装置を例に挙げて説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、半導体素子として、図1および図2に示すトレンチゲート構造の反転型の縦型MOSFETが形成されたものである。これらの図に示す縦型MOSFETは、SiC半導体装置のうちのセル領域に形成されており、そのセル領域を囲むように外周耐圧構造が形成されることでSiC半導体装置が構成されているが、ここでは縦型MOSFETのみ図示してある。なお、以下では、図1および図2に示すように、縦型MOSFETの幅方向をX方向、X方向に対して交差する縦型MOSFETの奥行方向をY方向、縦型MOSFETの厚み方向もしくは深さ方向、つまりXY平面に対する法線方向をZ方向として説明する。
図1および図2に示されるように、SiC半導体装置には、SiCからなるn+型基板1が半導体基板として用いられている。n+型基板1の主表面上にSiCからなるn-型層2が形成されている。n+型基板1は、表面が(0001)Si面とされ、例えばn型不純物濃度が5.9×1018/cm3とされ、厚さが100μmとされている。n-型層2は、例えばn型不純物濃度が7.0×1015~1.0×1016/cm3とされ、厚さが8.0μmとされている。
n-型層2の上には、SiCからなるJFET部3と電界ブロック層4が形成されており、n-型層2は、n+型基板1から離れた位置においてJFET部3と連結されている。
JFET部3と電界ブロック層4は、飽和電流抑制層を構成するものであり、共に、X方向に延設され、Y方向において交互に繰り返し並べられて配置された線状部分を有している。つまり、n+型基板1の主表面に対する法線方向から見て、JFET部3の少なくとも一部と電界ブロック層4は、それぞれ複数の短冊状、つまりストライプ状とされ、それぞれが交互に並べられたレイアウトとされている。
なお、本実施形態の場合、JFET部3が電界ブロック層4よりも下方まで形成されたものとされている。このため、JFET部3のうちストライプ状とされている部分は電界ブロック層4の下方において連結した状態になっており、JFET部3のうちストライプ状とされている各部はそれぞれ複数の電界ブロック層4の間に配置された状態となっている。
JFET部3のうちストライプ状とされている部分の各部、つまり各短冊状の部分は、幅が例えば0.25μm、形成間隔となるピッチが例えば0.6~2.0μmとされている。また、JFET部3の厚みは、例えば1.5μmとされており、n型不純物濃度は、n-型層2よりも高くされていて、例えば5.0×1017~2.0×1018/cm3とされている。
電界ブロック層4は、電界緩和層の一部となる下部を構成する部分であり、p型不純物層によって構成されている。上記したように、電界ブロック層4は、ストライプ状とされている。このストライプ状とされた電界ブロック層4の各短冊状の部分は、MOSFETのオンオフ切替えの際などにドレイン電圧Vdが高電圧となっても完全空乏化しないように幅や深さおよびp型不純物濃度が設定されている。たとえば、電界ブロック層4の各短冊状の部分は、幅が0.15μm、厚みが1.4μm、p型不純物濃度が3.0×1017~1.0×1018/cm3とされている。本実施形態の場合、電界ブロック層4は、深さ方向においてp型不純物濃度が一定とされている。また、電界ブロック層4は、n-型層2と反対側の表面がJFET部3の表面と同一平面とされている。
さらに、JFET部3および電界ブロック層4の上には、SiCからなるn型電流分散層5が形成されている。n型電流分散層5は、後述するようにチャネルを通じて流れる電流がX方向に拡散できるようにする層であり、例えば、n-型層2よりもn型不純物濃度が高くされている。本実施形態では、n型電流分散層5は、Y方向を長手方向として延設されており、n型不純物濃度がJFET部3と同じかそれよりも高くされ、例えば厚みが0.3~2.0μmとされている。また、n型電流分散層5は、n型不純物濃度が2.0×1016/cm3以上、ここでは2.0×1016~5.0×1017/cm3とされている。n型電流分散層5のn型不純物濃度および厚みは、後述するように逆導通時に内蔵FWDに流れる電流を制限させるためのパラメータとなるものである。
なお、ここでは、ドリフト層を、便宜的にn-型層2、JFET部3およびn型電流分散層5に分けて説明しているが、これらは共にドリフト層を構成する部分であり、互いに連結されている。
n型電流分散層5の上にはSiCからなるp型ベース領域6が形成されている。また、p型ベース領域6の下方において、具体的にはJFET部3と電界ブロック層4の表面からp型ベース領域6の間であって、n型電流分散層5が形成されていない部分に、p型ディープ層7が形成されている。p型ディープ層7は、電界緩和層のうち一部となる上部を構成する部分である。本実施形態では、p型ディープ層7は、JFET部3のうちのストライプ状の部分や電界ブロック層4の長手方向に対して交差する方向、ここではY方向を長手方向として延設され、X方向においてn型電流分散層5と交互に複数本並べられたレイアウトとされている。このp型ディープ層7を通じて、p型ベース領域6や電界ブロック層4が電気的に接続されている。n型電流分散層5やp型ディープ層7の形成ピッチは、後述するトレンチゲート構造の形成ピッチに合わせてある。
さらに、p型ベース領域6の上にはn型ソース領域8が形成されている。n型ソース領域8は、p型ベース領域6のうち後述するトレンチゲート構造と対応する部分に形成されており、トレンチゲート構造の両側それぞれに形成されている。
p型ベース領域6は、電界ブロック層4よりも厚みが薄く、かつ、p型不純物濃度が低くされており、p型不純物濃度が0.5×1017~4.0×1017/cm3以下、例えば3×1017/cm3とされ、厚さが0.3~0.8μmとされている。このp型ベース領域6のp型不純物濃度および厚みも、後述するように逆導通時に内蔵FWDに流れる電流を制限させるためのパラメータとなるものである。
p型ディープ層7は、厚みがn型電流分散層5と等しくされており、p型不純物濃度は任意であるが、例えば電界ブロック層4と等しくされている。n型ソース領域8は、後述するソース電極15とのコンタクトを取るための領域であり、n-型層2よりもn型不純物が高濃度とされている。n型ソース領域8は、例えばn型不純物濃度が1.0×1018~5.0×1019/cm3とされ、厚みが0.3~0.7μmとされている。
さらに、p型ベース領域6上のうちp型ディープ層7と対応する位置、換言すればn型ソース領域8と異なる位置であってn型ソース領域8を挟んでトレンチゲート構造と反対側の位置に、p型連結層10が形成されている。p型連結層10は、p型ベース領域6と後述するソース電極15とを連結することで電気的に接続するための層である。
p型連結層10は、コンタクト領域としてソース電極15に接触させられる部分である。例えば、p型連結層10は、p型不純物濃度が2.0×1018~1.0×1020/cm3と高濃度に設定され、厚みが0.2~0.3μmとされている。
さらに、n型ソース領域8およびp型ベース領域6を貫通してn型電流分散層5に達するように、例えば幅が0.4μm、深さがp型ベース領域6とn型ソース領域8の合計膜厚よりも0.2~0.4μm深くされたゲートトレンチ11が形成されている。このゲートトレンチ11の側面と接するように上述したp型ベース領域6およびn型ソース領域8が配置されている。ゲートトレンチ11は、図2のX方向を幅方向、JFET部3や電界ブロック層4の長手方向と交差する方向、ここではY方向を長手方向、Z方向を深さ方向とする短冊状のレイアウトで形成されている。そして、ゲートトレンチ11は、複数本がX方向に等間隔に配置されたストライプ状とされており、それぞれの間にp型ベース領域6およびn型ソース領域8が配置されている。また、各ゲートトレンチ11の中間位置に、p型ディープ層7やp型連結層10が配置されている。
このゲートトレンチ11の側面の位置において、p型ベース領域6は、縦型MOSFETの作動時にn型ソース領域8とn型電流分散層5との間を繋ぐチャネル領域を形成する。このチャネル領域を含むゲートトレンチ11の内壁面は、ゲート絶縁膜12で覆われている。ゲート絶縁膜12の表面にはドープドPoly-Siにて構成されたゲート電極13が形成されており、これらゲート絶縁膜12およびゲート電極13によってゲートトレンチ11内が埋め尽くされ、トレンチゲート構造が構成されている。
また、n型ソース領域8の表面やゲート電極13の表面には、層間絶縁膜14を介してソース電極15や図示しないゲート配線層などが形成されている。ソース電極15やゲート配線層は、複数の金属、例えばNi/Al等にて構成されている。そして、複数の金属のうち少なくともn型SiC、具体的にはn型ソース領域8と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうち少なくともp型SiC、具体的にはp型連結層10と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、ソース電極15は、層間絶縁膜14上に形成されることでSiC部分と電気的に絶縁されているが、層間絶縁膜14に形成されたコンタクトホールを通じて、n型ソース領域8およびp型連結層10と電気的に接触させられている。そして、p型連結層10を通じてp型ベース領域6やp型ディープ層7および電界ブロック層4が接続されていることから、これらがすべてソース電位とされるようになっている。
一方、n+型基板1の裏面側にはn+型基板1と電気的に接続されたドレイン電極16が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETが構成されている。このような縦型MOSFETが複数セル配置されることでセル領域が構成されている。そして、このような縦型MOSFETが形成されたセル領域を囲むように図示しないガードリングなどによる外周耐圧構造が構成されることでSiC半導体装置が構成されている。
このように構成される縦型MOSFETを有するSiC半導体装置は、例えば、ソース電圧Vsを0V、ドレイン電圧Vdを2Vとした状態で、ゲート電極13に対して20Vのゲート電圧Vgを印加することで動作させられる。すなわち、縦型MOSFETは、ゲート電圧Vgが印加されることにより、ゲートトレンチ11に接する部分のp型ベース領域6にチャネル領域を形成する。これにより、n型ソース領域8とn型電流分散層5との間が導通する。したがって、縦型MOSFETがオンし、n+型基板1より、n-型層2とJFET部3およびn型電流分散層5にて構成されるドリフト層を通じ、さらにチャネル領域からn型ソース領域8を通じて、ドレイン-ソース間に電流を流すという動作を行う。また、ゲート電圧Vgへの印加を停止することでチャネル領域が無くなり、n型ソース領域8とn型電流分散層5との間が非導通となって、縦型MOSFETがオフされ、ドレイン-ソース間への電流の流れが停止される。
このような半導体装置における縦型MOSFETを上アームと下アームそれぞれに配置したインバータ回路等に適用すると、典型的には、縦型MOSFETに内蔵される内蔵FWDが還流FWDとして働く。すなわち、n-型層2などドリフト層を構成するn型層と電界ブロック層4やp型ベース領域6もしくはp型ディープ層7を含むp型層とによるPN接合によって内蔵FWDが構成され、これが還流FWDとして働く。
インバータ回路等は、直流電源を用いつつ交流モータ等の負荷に対して交流電流を供給する際に用いられる。例えば、インバータ回路等は、直流電源に対して上アームと下アームを直列接続したブリッジ回路を複数個並列接続し、各ブリッジ回路の上アームと下アームを交互に繰り返しオンオフさせることで、これらの間に接続される負荷に対して交流電流を供給する。
具体的には、インバータ回路等の各ブリッジ回路では、上アームの縦型MOSFETをオン、下アームの縦型MOSFETをオフすることで負荷に対して電流供給を行う。そして、その後に、上アームの縦型MOSFETをオフ、下アームの縦型MOSFETをオンして電流供給を停止する。各アームの縦型MOSFETのオンオフの切り替えの際には、オフされる側の縦型MOSFETに備えられる内蔵FWDが還流FWDとして働き、還流電流をソース-ドレイン間に流すという逆導通時の動作を行う。このようにして、インバータ回路等による負荷の交流駆動が行われる。
ただし、本実施形態のSiC半導体装置では、逆導通時に内蔵FWDが還流FWDとして機能させられるが、それと並行して、寄生npnトランジスタが作動させられるようになっている。寄生npnトランジスタは、n型ソース領域8がエミッタ、p型ベース領域6がベース、n型電流分散層5がコレクタとして機能するnpnトランジスタである。この寄生npnトランジスタが逆導通時に作動されられることで、寄生npnトランジスタ側に逆導通時の電流が流されるようにでき、内蔵FWDに流れる電流を少なくできる。これにより、少数キャリアとなる正孔の注入が抑制され、n-型層2に辿り着く正孔が減少するため、n-型層2中において正孔と電子が再結合して発生する再結合エネルギーを減少させられる。したがって、BPDが拡大してSSSFという積層欠陥が発生することを抑制することが可能となり、縦型MOSFETの動作に及ぼす影響を抑制することができる。
具体的には、上記したように、n型電流分散層5のn型不純物濃度および厚みと、p型ベース領域6のp型不純物濃度および厚みを調整することで、寄生npnトランジスタが作動させられるようにしている。
一般的に、図3Aの回路図で表されるnpnトランジスタの動作領域については、図3Bのように表される。すなわち、縦軸をベース-エミッタ間電圧VBE、横軸をベース-コレクタ間電圧VBCとしたXY座標によってnpnトランジスタの動作領域が区画されている。VBE>0、VBC<0の場合は通常動作領域、VBE>0、VBC>0の場合はサチュレーション領域、VBE<0、VBC<0の場合はカットオフ領域、VBE<0、VBC>0の場合は逆導通動作領域となっている。
本実施形態の縦型MOSFETにおいては、上記したように、p型ベース領域6がベース、n型ソース領域8がエミッタ、n型電流分散層5がコレクタにそれぞれ相当する。
本実施形態の縦型MOSFETは、オンさせられる際には、ソース電圧Vsを0V、ドレイン電圧Vdを2Vとした状態で、ゲート電極13に対して20Vのゲート電圧Vgを印加している。ここで、ベースおよびエミッタがソース電圧Vs、コレクタがドレイン電圧Vdに相当する。このため、この状態においては、VBE=0、VBC<0となり、寄生npnトランジスタは動作せず、ゲート電圧Vgの印加によってトレンチゲート構造の側面に位置するp型ベース領域6に形成されるチャネル領域を通じて電流が流れる。
一方、縦型MOSFETがオンからオフに切り替えられると、ソース電圧Vsが0V、ドレイン電圧Vdが-5Vに切り替わる。また、p型ベース領域6はソース電圧Vsに設定されることになるが、実際にはp型ベース領域6の内部抵抗やソース電極15とのコンタクト抵抗の影響による電圧降下により、-1~-3V程度が印加されることになる。このため、この状態においては、VBE=VB-VE=(-1~-3V)-0V=-1~-3V<0、VBC=VB-VC=(-1~-3V)-(-5V)=2~4V>0となる。したがって、VBE<0、VBC>0となり、逆導通動作領域において寄生npnトランジスタが作動させられる。
このように、縦型MOSFETがオンからオフに切り替えられると、寄生npnトランジスタを作動させることが可能となる。したがって、内蔵FWDに加えて寄生npnトランジスタ側にも電流が流れるようにできることから、内蔵FWDに流れる電流を少なくでき、上記効果を得ることが可能となる。
ここで、このように寄生npnトランジスタを作動させるためには、寄生npnトランジスタが作動し易くなるように、n型電流分散層5のn型不純物濃度および厚みと、p型ベース領域6のp型不純物濃度および厚みを調整することが必要である。そして、逆導通動作時の電流増幅率βRは通常動作時と比較して小さな値になるが、寄生npnトランジスタを動作させ易くするためには、逆導通動作時の電流増幅率βRをできるだけ大きな値となるようにして電子電流を増加させることが必要である。逆導通動作時の電流増幅率βRは、以下のようにして導出される。
まず、エミッタ電流IEは、数式1のように表される。この数式1において、ISは、逆方向飽和電流を意味しており、数式2で表される。VBCは、ベース-コレクタ間電圧、Vthは、室温を26℃程度と想定した場合の熱電圧である。ただし、Vth=q/kTであり、qは素電荷、kはボルツマン係数、Tは絶対温度である。
数式1は、コレクタに相当するn型電流分散層5側からベースに相当するp型ベース領域6、エミッタに相当するn型ソース領域8へ注入された電子がエミッタ側へ吐き出される量、つまりエミッタ電流I
Eのベース-コレクタ間電圧依存性を示している。逆方向飽和電流I
Sは、PN接合が逆バイアスされた際に流れる電流であり、エミッタ電流I
Eは、逆方向飽和電流I
Sに対して指数関数e
[VBC/Vth]を掛けた値として算出される。なお、数式2中において、A
Cは、PN接合部において電流が流れる部分の有効断面積、n
PB0は、p型ベース領域6に注入された電子密度、D
nは、p型ベース領域6での少数キャリアとなる電子の拡散係数、W
Bはp型ベース領域6の厚さである。
また、ベース電流IBは、数式3のように表される。この数式3は、電流増幅率βR[無次元単位]を含む式である。また、逆方向飽和電流ISおよび電流増幅率βRと各パラメータとの関係は、数式4のように表される。なお、数式4において、PnC0は、コレクタに相当するn型電流分散層5に注入されたホール密度であり、DPは、n型電流分散層5での小数キャリアとなるホールの拡散係数、WCは、n型電流分散層5の厚さである。
そして、コレクタ電流I
Cは、エミッタ電流I
Eとベース電流I
Bとを合わせた値となることから、数式1~数式4に基づいて、次の数式5が導出される。
そして、数式5を電流増幅率β
Rの式に直すと、電流増幅率β
Rと各パラメータとの関係を表す数式6が導出される。なお、数式6において、N
dCは、n型電流分散層5のn型不純物濃度、N
aBは、p型ベース領域6のp型不純物濃度である。数式6の等式で表される各辺を左から第1辺、第2辺、第3辺、第4辺と呼ぶとすると、第3辺から第4辺への式の変形は、熱平衡状態においてpn積が一定になるという法則を使用している。
そして、典型的には、逆導通動作時の電流増幅率β
Rは、通常動作時の電流増幅率β
Fと比較して十分に小さく、5以下の値となるが、BPDの拡大を抑制するためには、ある程度大きな値に設定される必要がある。具体的に、シミュレーションにより、n
+型基板1へ達するホール密度と電流増幅率β
RからDn、Dpを除いた数の関係について調べた。図4は、その結果を示している。Dn、Dpは拡散係数と呼ばれ、主にベース層内の電子のライフタイム、電流分散層中のホールのライフタイムで決定されるが、それぞれの層をエピ成長で形成している場合はそれぞれのライフタイムが長く、Dn、Dpはシミュレータの欠陥がない場合の係数と同様になる。そのため、Dn、Dpはシミュレータで標準的に使用されているバルク移動度(電子、正孔)×Vthという関係を利用して計算されており、その分を除外した電流増幅率β
Rを記載している。
この図に示されるように、電流増幅率βRが低くなるほどn+型基板1へ達するホール密度が高くなる。BPDの拡大は、ホール密度が1×1017cm-3を閾値として発生し、ホール密度が高くなるほど拡大が大きくなる。このため、ホール密度が閾値を超えないようにすることが好ましく、そのようなホール密度とするために、電流増幅率βRが0.01以上になることが好ましい。
そして、電流増幅率βRを高く、換言すればホール密度を低くするには、n型電流分散層5のn型不純物濃度および厚みと、p型ベース領域6のp型不純物濃度および厚みを調整すれば良い。シミュレーションにより、ホール密度について、n型電流分散層5のn型不純物濃度および厚みと、p型ベース領域6のp型不純物濃度および厚みそれぞれに対する依存性を調べた。
図5Aは、n型電流分散層5の厚みに対する依存性、図5Bは、n型電流分散層5のn型不純物濃度に対する依存性を調べた結果を示している。また、図6Aは、p型ベース領域6のp型不純物濃度に対する依存性、図6Bは、p型ベース領域6の厚みに対する依存性を調べた結果を示している。
図5Aについては、n型電流分散層5の厚さを0.6μm、p型ベース領域6のp型不純物濃度を2.5×1017cm-3、厚さを0.6μmとし、n型電流分散層5のn型不純物濃度を変化させてシミュレーションを行っている。図5Bについては、n型電流分散層5のn型不純物濃度を2×1017cm-3、p型ベース領域6のp型不純物濃度を2.5×1017cm-3、厚さを0.6μmとし、n型電流分散層5の厚さを変えてシミュレーションを行っている。図6Aについては、n型電流分散層5のn型不純物濃度を2×1017cm-3、厚さを0.6μm、p型ベース領域6のp型不純物濃度を2.5×1017cm-3とし、p型ベース領域6の厚さを変えてシミュレーションを行っている。図6Bについては、n型電流分散層5のn型不純物濃度を2×1017cm-3、厚さを0.6μm、p型ベース領域6の厚さを0.6μmとし、p型ベース領域6のp型不純物濃度を変えてシミュレーションを行っている。なお、いずれの場合についても、他の部分のパラメータについては、縦型MOSFETの構成の説明において記載した範囲内のものとしてある。
これらの図に示されるように、ホール密度は、n型電流分散層5のn型不純物濃度および厚みと、p型ベース領域6のp型不純物濃度および厚みに応じて変化することから、これらに対して依存性を有している。具体的には、n型電流分散層5の厚みが厚くなるほど、もしくは、n型不純物濃度が高くなるほどホール密度が低くなる。また、p型ベース領域6の厚みが薄くなるほど、もしくは、p型不純物濃度が高くなるほどホール密度が低くなる。したがって、ホール密度を小さくできるように、n型電流分散層5のn型不純物濃度を低く、厚みを厚く、もしくはp型ベース領域6のp型不純物濃度を低く、厚みを薄くというように、これらの条件の少なくとも1つを調整する。これにより、ホール密度を小さくすることが可能となり、電流増幅率βRを高くできて、寄生npnトランジスタを作動させ易くすることができる。
したがって、本実施形態では、n型電流分散層5のn型不純物濃度および厚みと、p型ベース領域6のp型不純物濃度および厚みを調整し、上記した数式6を満たしつつ、電流増幅率βR≧0.01が得られるようにしている。具体的には、n型電流分散層5については、n型不純物濃度が2.0×1016/cm3以上、厚みが0.5μm以上となるようにしてある。また、p型ベース領域6については、p型不純物濃度が4.0×1017/cm3以下、厚さが0.6μm以下とされている。これにより、寄生npnトランジスタを作動させ易くすることが可能となり、内蔵FWDに流れる電流を減少させられ、上記効果を得ることが可能となる。
さらに、本実施形態のSiC半導体装置には、JFET部3および電界ブロック層4を備えてある。このため、縦型MOSFETの動作時には、JFET部3および電界ブロック層4が飽和電流抑制層として機能し、飽和電流抑制効果を発揮することで低オン抵抗を図りつつ、低飽和電流を維持できる構造とすることが可能となる。具体的には、JFET部3のうちストライプ状とされた部分と電界ブロック層4とが交互に繰り返し形成された構造とされていることから、次に示すような作動を行う。
まず、ドレイン電圧Vdが例えば5Vのように通常作動時に印加される電圧である場合には、電界ブロック層4側からJFET部3へ伸びる空乏層は、JFET部3のうちストライプ状とされた部分の幅よりも小さい幅しか伸びない。このため、JFET部3内へ空乏層が伸びても電流経路が確保される。そして、JFET部3のn型不純物濃度がn-型層2よりも高くされていて、電流経路を低抵抗に構成できるため、低オン抵抗を図ることが可能となる。
また、負荷短絡などによってドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くなると、電界ブロック層4側からJFET部3へ伸びる空乏層がJFET部3のうちストライプ状とされた部分の幅よりも伸びる。そして、n型電流分散層5よりも先にJFET部3が即座にピンチオフされる。このとき、JFET部3のうちストライプ状とされた部分の幅およびn型不純物濃度に基づいてドレイン電圧Vdと空乏層の幅との関係が決まる。このため、通常作動時のドレイン電圧Vdよりも少し高い電圧となったときにJFET部3がピンチオフされるように、JFET部3のうちストライプ状とされた部分の幅およびn型不純物濃度を設定している。したがって、低いドレイン電圧VdでもJFET部3をピンチオフすることが可能となる。このように、ドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くなったときにJFET部3が即座にピンチオフされるようにすることで、低飽和電流を維持することができ、更に負荷短絡等によるSiC半導体装置の耐量を向上することが可能となる。
このように、JFET部3および電界ブロック層4が飽和電流抑制層として機能し、飽和電流抑制効果を発揮することで、更に低オン抵抗と低飽和電流を両立することができるSiC半導体装置とすることが可能となる。
さらに、JFET部3を挟み込むように電界ブロック層4を備えることで、JFET部3のうちストライプ状とされた部分と電界ブロック層4とが交互に繰り返し形成された構造とされている。このため、ドレイン電圧Vdが高電圧になったとしても、下方からn-型層2に伸びてくる空乏層の伸びが電界ブロック層4によって抑えられ、トレンチゲート構造に延伸することを防ぐことができる。したがって、ゲート絶縁膜12に掛かる電界を低下させる電界抑制効果を発揮させられ、ゲート絶縁膜12が破壊されることを抑制できるため、高耐圧化で信頼性の高い素子とすることが可能となる。そして、このようにトレンチゲート構造への空乏層の延伸を防げるため、ドリフト層の一部を構成するn-型層2やJFET部3のn型不純物濃度を比較的高くすることができ、低オン抵抗化を図ることが可能となる。
また、本実施形態のSiC半導体装置では、トレンチゲート構造に対して電界ブロック層4を構成する各短冊状の部分が交差するように配置されている。このため、n-型層2側から見て、電界ブロック層4によってトレンチゲート構造の一部が覆われて隠れるレイアウトになる。そして、電界ブロック層4はソース電位とされていることから、トレンチゲート構造のうち電界ブロック層4で覆われている部分については、底部もp型ベース領域6からの突出部の両側面も、両方共に、ゲート-ドレイン間容量Cgdに含まれなくなる。このため、ゲート-ドレイン間容量Cgdを低減できて、低帰還容量を実現することが可能となる。よって、スイッチング特性を良好にすることが可能となる。
以上説明したように、本実施形態では、逆導通時に、内蔵FWDに加えて寄生npnトランジスタが作動させられるようにしている。このため、寄生npnトランジスタ側に逆導通時の電流が流されるようにでき、内蔵FWDに流れる電流を少なくできる。これにより、少数キャリアとなる正孔の注入が抑制され、n-型層2に辿り着く正孔が減少するため、n-型層2中において正孔と電子が再結合して発生する再結合エネルギーを減少させられる。したがって、BPDが拡大してSSSFという積層欠陥が発生することを抑制することが可能となり、縦型MOSFETの動作に及ぼす影響を抑制することができる。
参考として、内蔵FWDが動作しない従来構造と、本実施形態のように内蔵FWDが動作する構造とについて、ドレイン-ソース間電流Idsを変化させたときのホール密度の変化を確認した。具体的には、n型電流分散層5から1μm下方位置でのホール密度を確認した。図7は、その結果を示している。BPDが拡大して積層欠陥となり得るホール密度は、上記したように1×1017cm-3である。
通常、逆導通動作時に流れ得るドレイン-ソース間電流Idsは、-1000~-700[A/cm2]程度であるが、本実施形態の構造の場合、-2000[A/cm2]まで閾値を超えないようにできる。これに対して、従来構造の場合、通常の逆導通動作時のようにソース-ドレイン間電流Ids-1000~-700[A/cm2]程度であっても閾値を超えていた。このように、本実施形態の構造によれば、ホール密度を低下させられ、上記効果が得られることが判る。
次に、本実施形態にかかるnチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETを備えたSiC半導体装置の製造方法について、図8A~図8Gに示す製造工程中の断面図を参照して説明する。
〔図8Aに示す工程〕
まず、半導体基板として、n+型基板1を用意する。そして、図示しないCVD(chemical vapor deposition)装置を用いたエピタキシャル成長により、n+型基板1の主表面上にSiCからなるn-型層2を形成する。このとき、n+型基板1の主表面上に予めn-型層2を成長させてある所謂エピ基板を用いても良い。そして、n-型層2の上にSiCからなるJFET部3をエピタキシャル成長させるか、もしくはn-型層2に対してn型不純物をイオン注入することでJFET部3を形成する。
なお、エピタキシャル成長については、SiCの原料ガスとなるシランやプロパンに加えて、n型ドーパントとなるガス、例えば窒素ガスを導入することで行っている。
〔図8Bに示す工程〕
JFET部3の表面に、マスク17を配置したのち、マスク17をパターニングして電界ブロック層4の形成予定領域を開口させる。そして、p型不純物をイオン注入することで、電界ブロック層4を形成する。その後、マスク17を除去する。
なお、ここでは、電界ブロック層4をイオン注入によって形成しているが、イオン注入以外の方法によって電界ブロック層4を形成しても良い。例えば、JFET部3を選択的に異方性エッチングすることで電界ブロック層4と対応する位置に凹部を形成し、この上にp型不純物層をエピタキシャル成長させた後、JFET部3の上に位置する部分においてp型不純物層を平坦化して電界ブロック層4を形成する。このように、電界ブロック層4をエピタキシャル成長によって形成することもできる。p型SiCをエピタキシャル成長させる場合、SiCの原料ガスに加えて、p型ドーパントとなるガス、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)を導入すれば良い。
〔図8Cに示す工程〕
引き続き、JFET部3および電界ブロック層4の上にn型SiCをエピタキシャル成長させることで、n型電流分散層5を形成する。そして、n型電流分散層5の上に、p型ディープ層7の形成予定領域が開口する図示しないマスクを配置する。その後、マスクの上からp型不純物をイオン注入することでp型ディープ層7を形成する。
なお、ここではn型電流分散層5をエピタキシャル成長によって形成しているが、イオン注入によって形成することもできる。ただし、エピタキシャル成長によってn型電流分散層5を形成すると、イオン注入によって形成した場合と比較して、n型電流分散層5中の電子の注入効率を大きくできる。これにより、より寄生npnトランジスタが作動し易くなるにできる。
また、p型ディープ層7についてもイオン注入によって形成する例を示したが、イオン注入以外の方法によって形成することもできる。例えば、電界ブロック層4と同様に、n型電流分散層5に対して凹部を形成したのち、p型不純物層をエピタキシャル成長させ、さらにp型不純物層の平坦化を行うことで、p型ディープ層7を形成するようにしても良い。また、p型ディープ層7を形成してからイオン注入等によってn型電流分散層5を形成しても良い。
〔図8Dに示す工程〕
図示しないCVD装置を用いて、n型電流分散層5およびp型ディープ層7の上にp型ベース領域6およびn型ソース領域8を順にエピタキシャル成長させる。例えば、同じCVD装置内において、まずはp型ドーパントとなるガスを導入したエピタキシャル成長によってp型ディープ層7を形成する。続いて、p型ドーパントとなるガスの導入を停止したのち、今度はn型ドーパントとなるガスを導入したエピタキシャル成長によってn型ソース領域8を形成する。
なお、ここではp型ベース領域6をエピタキシャル成長によって形成しているが、イオン注入によって形成することもできる。ただし、エピタキシャル成長によってp型ベース領域6を形成すると、イオン注入によって形成した場合と比較して、p型ベース領域6中のライフタイムを長くできる。これにより、より寄生npnトランジスタが作動し易くなるにできる。
〔図8Eに示す工程〕
n型ソース領域8の上にp型連結層10の形成予定位置を開口させた図示しないマスクを配置する。そして、マスクの上からp型不純物をイオン注入したのち、活性化のために1500℃以上の熱処理を行う。イオン注入する元素としては、ボロン(B)とアルミニウム(Al)のいずれか一方もしくは両方を用いている。これにより、n型ソース領域8をp型不純物のイオン注入によって打ち返してp型連結層10を形成することができる。
〔図8Fに示す工程〕
n型ソース領域8などの上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうちのゲートトレンチ11の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIE(Reactive Ion Etching)等の異方性エッチングを行うことで、ゲートトレンチ11を形成する。
〔図8Gに示す工程〕
その後、マスクを除去してから例えば熱酸化を行うことによって、ゲート絶縁膜12を形成し、ゲート絶縁膜12によってゲートトレンチ11の内壁面上およびn型ソース領域8の表面上を覆う。そして、p型不純物もしくはn型不純物がドープされたPoly-Siをデポジションした後、これをエッチバックし、少なくともゲートトレンチ11内にPoly-Siを残すことでゲート電極13を形成する。これにより、トレンチゲート構造が完成する。
この後の工程については図示しないが、以下のような工程を行う。すなわち、ゲート電極13およびゲート絶縁膜12の表面を覆うように、例えば酸化膜などによって構成される層間絶縁膜14を形成する。また、図示しないマスクを用いて層間絶縁膜14にn型ソース領域8およびp型ディープ層7を露出させるコンタクトホールを形成する。そして、層間絶縁膜14の表面上に例えば複数の金属の積層構造により構成される電極材料を形成したのち、電極材料をパターニングすることでソース電極15やゲート配線層を形成する。さらに、n+型基板1の裏面側にドレイン電極16を形成する。このようにして、本実施形態にかかるSiC半導体装置が完成する。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してn型電流分散層5およびp型ディープ層7の構成を異ならせたものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
上記第1実施形態に対して、本実施形態では、図9に示すようにp型ディープ層7の幅が小さくなるようにしている。つまり、トレンチゲート構造の側面に対してn型ソース領域8とp型連結層10との境界位置よりもn型電流分散層5とp型ディープ層7との境界位置の方が第1実施形態の構造よりも離れた位置とされている。そして、本実施形態の方が第1実施形態よりもトレンチゲート構造の側面からp型ディープ層7までの距離が離れるようにしている。
このように、p型ディープ層7の幅を狭くし、n型電流分散層5の幅が広くなるようにすると、電子注入を増加させることが可能となる。したがって、より寄生npnトランジスタ側に逆導通時の電流が流されるようにでき、内蔵FWDに流れる電流を少なくできる。これにより、さらにBPDが拡大してSSSFという積層欠陥が発生することを抑制することが可能となり、縦型MOSFETの動作に及ぼす影響を抑制することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してn型ソース領域8およびp型連結層10の構成を異ならせたものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
上記第1実施形態では、n型ソース領域8とp型連結層10との境界位置の方がn型電流分散層5とp型ディープ層7との境界位置よりもトレンチゲート構造の側面に近い位置となるようにしている。つまり、基板法線方向から見て、n型ソース領域8がn型電流分散層5の内側に位置するような構造としてある。これに対して、本実施形態では、図10に示すようにn型ソース領域8とp型連結層10との境界位置の方がn型電流分散層5とp型ディープ層7との境界位置よりもトレンチゲート構造から離れた場所に位置するようにしている。つまり、基板法線方向から見て、n型ソース領域8がn型電流分散層5の外側にはみ出すような構造となり、第1実施形態と比較してn型ソース領域8が幅広となるようにしている。
このように、n型ソース領域8が幅広となるようにしても、単位セル当たりのn型ソース領域8の面積を広げることができ、単位面積当たりの寄生npnトランジスタの形成面積を増やすことができるため、電子注入を増加させることが可能となる。したがって、より寄生npnトランジスタ側に逆導通時の電流が流されるようにでき、内蔵FWDに流れる電流を少なくできる。これにより、さらにBPDが拡大してSSSFという積層欠陥が発生することを抑制することが可能となり、縦型MOSFETの動作に及ぼす影響を抑制することができる。
図11は、n型ソース領域8の形成割合を変化させて電流密度と正孔密度との関係を調べた結果を示している。この図に示されるように、n型ソース領域8の形成割合を大きくした場合の方が小さくした場合と比較して、同じ電流密度となるときの正孔密度が低くなっていることが判る。この結果からも、n型ソース領域8の形成割合を高くすることで、電子注入を増加させられて正孔注入が抑制され、内蔵FWDに流れる電流を少なくできていると言える。
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1~第3実施形態に対してp型連結層10の構成を異ならせたものであり、その他については第1~第3実施形態と同様であるため、第1~第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図12に示すように、本実施形態では、n型ソース領域8を貫通するトレンチ20を形成し、そのトレンチ20の底部において、p型ベース領域6よりもp型不純物濃度を高くしたp型連結層10を形成している。つまり、p型連結層10をトレンチ底部に形成することで、ソース電極15がp型連結層10とトレンチコンタクトとなるようにしている。
このように、トレンチコンタクトとしてソース電極15とp型連結層10との電気的接続が図れるようにしてあっても良い。なお、このようなp型連結層10については、n型ソース領域8を形成した後に図示しないマスクを用いてトレンチ20を形成したのち、そのマスクをそのまま用いてp型不純物をイオン注入することによって形成することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1~第4実施形態に対してn型電流分散層5の構成を異ならせたものであり、その他については第1~第4実施形態と同様であるため、第1~第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図13に示すように、本実施形態では、n型電流分散層5のうちの表面部5aが、それよりも下方に位置している下部5bよりもn型不純物濃度が高くなるようにしている。すなわち、下部5bについては、第1実施形態で説明した不純物濃度としてあり、表面部5aがそれよりもn型不純物濃度が高くなっている。
このように、表面部5aにおいてn型不純物濃度を高くすると、n型電流分散層5中の電子の注入効率を高くすることができ、さらに寄生npnトランジスタが作動し易くなる。したがって、より積層欠陥の発生を抑制することが可能となり、縦型MOSFETの動作に及ぼす影響を抑制することができる。
なお、このようなn型電流分散層5については、n型電流分散層5を形成する際のエピタキシャル成長中におけるn型不純物の導入量を変化させるだけで良い。また、n型電流分散層5を全体的に下部5bのn型不純物濃度で形成した後に、n型不純物をイオン注入することで、表面部5aを形成しても良い。ただし、イオン注入によって表面部5aを形成する場合、活性化率が低く注入効率が小さくなることから、表面部5aについてもエピタキシャル成長中にn型不純物が高濃度に導入されるようにして形成すると好ましい。
(第5実施形態の変形例)
図14に示すように、n型電流分散層5の表面部5aだけでなく、n型電流分散層5のうちトレンチゲート構造と反対側の端となる側面部5cについても、下部5bよりもn型不純物濃度が高くなるようにしても良い。このようにしても、第5実施形態と同様の効果が得られる。
なお、このような構造のn型電流分散層5については、n型電流分散層5を全体的に下部5bの不純物濃度で形成したのち、p型ディープ層7の形成予定位置にトレンチを形成し、さらにn型不純物をイオン注入することで形成できる。すなわち、トレンチを形成したのち、n型不純物を斜めイオン注入し、さらにトレンチ内が開口するマスクを用いて表面部分を除去するか、もしくはn型不純物がイオン注入される電界ブロック層4の導電型が変化しない程度のドーズ量でn型不純物を注入する。このようにすれば、表面部5aおよび側面部5cが形成されたn型電流分散層5を形成できる。
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第1~第5実施形態に対してp型ベース領域6の構成を異ならせたものであり、その他については第1~第5実施形態と同様であるため、第1~第5実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図15に示すように、本実施形態では、p型ベース領域6をp型不純物濃度が異なる第1領域6aと第2領域6bとによって構成している。第1領域6aは、トレンチゲート構造に接する部分であり、第2領域6bは、トレンチゲート構造から離れた位置の部分である。本実施形態の場合、第1領域6aは、n型ソース領域8の下方に位置する部分とされ、第2領域6bは、p型連結層10の下方に位置する部分とされている。第1領域6aの方が第2領域6bよりも、p型不純物濃度が低くされている。
このような構成とすれば、第2領域6bのp型不純物濃度を低くせずに、第1領域6aのp型不純物濃度を低くすることで寄生npnトランジスタが作動し易くなるようにできる。
なお、このようなp型ベース領域6については、例えばp型ベース領域6の全体を第1領域6aのp型不純物濃度でエピタキシャル成長させて形成しておいたのち、第2領域6bの部分のみにp型不純物をイオン注入することによって形成できる。
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。本実施形態も、第1~第5実施形態に対してp型ベース領域6の構成を異ならせたものであり、その他については第1~第5実施形態と同様であるため、第1~第5実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図16に示すように、本実施形態でも、p型ベース領域6をp型不純物濃度が異なる第1領域6cと第2領域6dとによって構成している。第1領域6cは、チャネル領域を形成する部分であり、第2領域6dは、チャネル領域よりもトレンチゲート構造から離れた位置の部分である。第1領域6cについては、閾値Vt調整のために、第2領域6dよりもp型不純物濃度が高くなっている。
このように、第1領域6cについて、閾値Vt調整のためにp型不純物濃度を高くし、第2領域6dについてはp型不純物濃度を低くした構造としても良い。このようにしても、第2領域6dのp型不純物濃度を低くしているため、寄生npnトランジスタが作動し易くなるようにできる。
なお、このようなp型ベース領域6については、例えばp型ベース領域6の全体を第2領域6dのp型不純物濃度でエピタキシャル成長させて形成しておいたのち、第1領域6cの部分のみにp型不純物をイオン注入することによって形成できる。
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。本実施形態は、第1~第7実施形態に対してソース電極15とのコンタクトとなるp型連結層10のレイアウトを変更したものであり、その他については第1~第7実施形態と同様であるため、第1~第7実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図17に示すように、本実施形態では、p型連結層10をドット状とし、ストライプ状とされた電界ブロック層4それぞれと対応する位置にp型連結層10が配置される構造としてある。
このように、p型連結層10のレイアウトについては、必ずしも直線状でなくても良い。また、レイアウトを変更したとしても、p型連結層10が電界ブロック層4と対応する位置に形成されるようにしてあれば良い。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
(1)例えば、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
(2)また、上記実施形態で示したSiC半導体装置を構成する各部の不純物濃度や厚み、幅等の各種寸法については一例を示したに過ぎない。
(3)また、上記実施形態において、p型連結層10とソース電極15とのコンタクト抵抗を高くすることで、内蔵FWDに流れる電流が抑制され、寄生npnトランジスタ側に電流が流れ易くなるようにしても良い。例えば、第1実施形態で説明したように、p型連結層10のp型不純物濃度を2.0×1018~1.0×1020/cm3と高濃度にしているが、コンタクト抵抗を高くするために、2.0×1018/cm3未満の不純物濃度としても良い。
(4)また、上記実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプの縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプの縦型MOSFETとしても良い。
(5)上記実施形態では、半導体材料としてSiCを用いた半導体装置について説明したが、SiC以外の半導体材料、例えばIV属半導体であるSiやGe、C等やGaN、AlNを用いた半導体装置に対しても本発明を適用可能である。