以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
(全体構成)
本実施の形態に係る走行装置の一例である乗り物について、図1~図5を用いて説明する。図1は、乗り物1の構成を示す側面図であり、図2は、正面図である。図3は、乗り物1の構成を示す斜視図であり、図4は、側面断面図である。図5は、搭乗席3とカバー8との構成を簡略化して示す斜視図である。なお、図5では、背もたれ5などの構成を省略している。乗り物1は、例えば、バッテリ及び電動モータ等で動作する電動車椅子となっている。
図1~図5では、XYZ直交座標系を用いて説明する。+X方向が乗り物1の前方になり、-X方向が乗り物1の後方になっている。また、+Y方向が乗り物1の左方向となり、-Y方向が乗り物1の右方向となっている。+Z方向が鉛直上方となり、-Z方向が鉛直下方となっている。
乗り物1は、搭乗席3と、フットレスト4と、背もたれ5と、カバー8と、入力部74(図1~4では省略)と、前輪11と、中輪12と、後輪13と、可変機構20と、を備えている。なお、乗り物1の主要部は、左右対称な構成を有しており、フットレスト4、前輪11、中輪12、及び後輪13は、それぞれ左右両側に設けられている。
したがって、図2~図4では、乗り物1の左側(+Y側)に配置されたフットレスト4、前輪11、中輪12、後輪13をそれぞれフットレスト4L、前輪11L、中輪12L、後輪13Lとして示している。同様に、図2~図4では、乗り物1の右側(-Y側)に配置されたフットレスト4、前輪11、中輪12をそれぞれフットレスト4R、前輪11R、中輪12Rとして示している。図2、及び図3において、後輪13Rは、他の構成要素に隠れているが、後輪13Lと左右対称に配置されている。なお、以下の説明において、左右の構成を特に区別しない場合は、L、Rを付さずに説明を行う。また、可変機構20も左右対称な構造を有している。
X方向において、前輪11と後輪13との間に、中輪12が配置されている。すなわち、前輪11は中輪12及び後輪13の前側(+X側)に配置され、後輪13は、中輪12及び前輪11よりも後ろ側(-X側)に配置されている。XZ平面において、前輪11Lの車軸と前輪11Rの車軸は同じ位置になっている。XZ平面において、中輪12Lの車軸と中輪12Rの車軸は同じ位置になっており、後輪13Lの車軸と後輪13Rの車軸は同じ位置になっている。
中輪12と後輪13は駆動輪であり、モータ等の駆動によって回転する。中輪12Lと中輪12Rは異なるモータに接続されて、独立に回転する。例えば、中輪12Rには、モータ121Rが接続され、中輪12Lにはモータ121Lが接続されている。つまり、モータ121Rが中輪12Rを回転駆動する。モータ121Lが中輪12Lを回転駆動する。モータ121R,121Lはそれぞれ中輪12R、12L内に設けられたインホイールモータである。
さらに、モータ121Lの駆動力は伝達機構122Lを介して、後輪13Lに伝達される。伝達機構122Lは、ベルトやチェーンなどを有している。さらに、伝達機構122Lは、ベルトなどを張設するためのプーリなどを備えていてもよい。モータ121Lの駆動力が後輪13Lに伝達する。これにより、中輪12Lと後輪13Lとが、一つのモータ121Lにより、前後方向に離れた車軸で回転する。なお、中輪12Lと後輪13Lは同じ方向に回転する。また、中輪12Rのモータ121Rの駆動力も、同様に伝達機構122Rを介して、後輪13Rに伝達される。また、後輪13L、13Rは全方位車輪となっている。
また、図1に示すように、伝達機構122としてのベルトに張力(テンション)を与えるテンショナ123が第2のリンク25には設けられている。テンショナ123は、伝達機構122のベルトの下側に設けることが好ましい。このようにすることで、段差の昇降時にベルトが段差に接触することを防ぐことができる。また、伝達機構122をカバーなどで覆うようにしてもよい。
前輪11は、従動輪となっており、乗り物1の移動に応じて回転する。すなわち、中輪12、及び後輪13が駆動して、乗り物1が移動すると、乗り物1の移動に追従して前輪11が回転する。このように、乗り物1は、4輪駆動の6輪車となっている。
このようにすることで、走行性能を向上することができる。例えば、段差の手前に溝がある場合であっても、中輪12、又は後輪13が駆動しているため、乗り物1が段差により近づくことができる。つまり、前輪11が接地していない場合であっても、前進するための駆動力を確保することができる。よって、段差の手前に溝がある場合であっても、前輪11が溝を越えることができる。前輪11が段差により近づいた状態で、第1の直動機構22が前輪11を上下させることができる。段差上の適切な位置に前輪11を下ろすことができるため、様々な形状の段差に対応することができる。また、中輪12,又は後輪13が接地していない状態であっても、前進するための駆動力を確保することができる。
例えば、乗り物1が前方に直進する場合は、モータ121Lとモータ121Rが同じ回転速度で同じ回転方向に回転する。左右に曲がりながら進む場合は、モータ121Lとモータ121Rが異なる回転速度で同じ回転方向に回転する。その場で旋回したい場合は、モータ121Lとモータ121Rが同じ回転速度で反対方向に駆動する。このように、左の中輪12Lと右の中輪12Rとを異なるモータで駆動することで、乗り物1が所望の方向に所望の速度で移動する。
中輪12が前輪11及び後輪13よりも大きい直径を有している。前輪11が後輪13よりも小さい直径を有している。もちろん、前輪11,中輪12、後輪13の直径は、特に限定されるものではない。前輪11、及び中輪12には、回転を制限するためのブレーキがそれぞれ設けられている。例えば、前輪11L、前輪11R、中輪12L、中輪12Rには、それぞれ電磁ブレーキが設けられている。よって、それぞれのブレーキが、前輪11L、前輪11R、中輪12L、中輪12Rを独立してロックすることができる。
モータ121にインホイールモータを用いるとともに、モータ121の駆動力を伝達機構122が後輪13に伝達している。したがって、簡易な構成で中輪12、及び後輪13を駆動輪とすることができる。よって、中輪12、及び後輪13の一方が離地している状態であっても、乗り物1が前方への駆動力を得ることができる。
なお、図1~図4では、モータ121が中輪12に設けられたインホイールモータとしたが、モータ121はこの構成に限られるものではない。モータ121は、後輪13に設けられたインホイールモータであってもよい。この場合、伝達機構が、モータ121の駆動力を中輪12に伝達すればよい。あるいは。モータ121はインホイールモータ以外のモータでもよい。
搭乗席3は、搭乗者が搭乗する搭乗部である。搭乗者が搭乗席3に座った状態で乗り物1が移動する。搭乗席3には背もたれ5とフットレスト4が設けられている。フットレスト4は搭乗席3の前側下方に配置されている。搭乗席3に搭乗者が座った状態では、搭乗者の右足はフットレスト4Rに載り、左足はフットレスト4Lに載る。
さらに、搭乗席3は、座面3a、及び側板3bを有している。座面3aは搭乗者の臀部を支持する面(搭乗面)である。ここでは、座面3aは平面になっている。側板3bは座面3aの左右両端から上方(+Z)側に延在している。側板3bは、実質的にXZ平面に平行な平板となっていてもよい。搭乗者が搭乗席3に搭乗した状態において、側板3bは、搭乗者の臀部又は腰部の側面に対向する。座面3a、及び側板3bは樹脂などによって、一体的に形成されていてもよい。
搭乗席3の横には、カバー8が設けられている。カバー8は後述するガイド機構を介して搭乗席3に取り付けられる。カバー8は、後述する直動機構を覆うために設けられている。さらに、カバー8は、肘掛けとして機能する。つまり、搭乗席3に座った状態の搭乗者は前腕をカバー8の上に載せることができる。これにより、乗り心地を向上することができる。
カバー8の上面が前腕を乗せる載置面8aとなる。カバー8の載置面8aは、搭乗席3の座面3aよりも上側に配置されており、例えば、実質的に平坦になっている。搭乗席3の左側には、左腕用のカバー8Lが設けられ、搭乗席3の右側には、右腕用のカバー8Rが設けられている。
図5に示すように、カバー8の横には、入力部74(図1~図4では省略)が設けられている。より具体的には、右側のカバー8Rの-Y側には、入力部74が配置されている。入力部74は、キーボードやジョイパッド等であり、乗り物1の移動方向や姿勢に関する入力を受け付ける。例えば、搭乗者が入力部74を操作して、移動方向、移動速度、あるいは姿勢に関する入力を行う。なお、図示を省略するが、入力部74には、コントローラとなる制御用コンピュータやバッテリ等を有する制御ボックスが設けられていてもよい。もちろん、制御用コンピュータやバッテリ等の設置場所は、入力部74内に限られるものではない。例えば、制御用コンピュータやバッテリ等が搭乗席3の下や、背もたれ5の後ろ側に設置されていてもよい。
搭乗席3の下部には、可変機構20が設けられている。可変機構20は、搭乗席3を支持する脚機構である。可変機構20には、前輪11、中輪12、後輪13が回転可能に取り付けられている。可変機構20は、伸縮可能なアーム機構を備えており、地面に対する搭乗席3の姿勢を変える。車輪と搭乗席3との間に設けられたアーム機構が伸縮することで、搭乗席3の座面の高さや傾きが変化する。可変機構20のアクチュエータ(第1の直動機構22、及び第2の直動機構23)が、搭乗席3に対する車輪(前輪11、中輪12、後輪13)の相対位置を変化させる。
(可変機構20)
可変機構20の詳細な構成について説明する。なお、以下に説明する可変機構20は、車体の一例であり、本実施の形態は以下の構成に限定されるものではない。例えば、特許文献1の可変機構を用いてもよい。あるいは、可変機構20は、リンクを回転駆動する回転関節等を有していてもよい。
可変機構20は、フレーム21と、第1の直動機構22、第2の直動機構23、第1のリンク24、第2のリンク25、第3の直動機構26、第3のリンク27等を備えている。可変機構20は実質的に左右対称な構成を有している。上記と同様に、左右対称の構成については、符号にL又はRを付す。例えば、可変機構20は、2つの第1の直動機構22L、22Rを備えている。そして、第1の直動機構22Lと第1の直動機構22Rとは左右対称に配置される。
第2の直動機構23、第1のリンク24、第2のリンク25、第3のリンク27についても同様に左右対称に配置されており、図2~図4では、左右対称な構成要素にそれぞれL、又はRを付している。
フレーム21は、乗り物1の車体を構成する。したがって、フレーム21には、上述の搭乗席3、フットレスト4、及び入力部74等が取り付けられる。例えば、搭乗席3は、フレーム21の上に取り付けられている。フットレスト4は、フレーム21の前方斜め下側に取り付けられている。
フレーム21の上に、搭乗席3が取り付けられることで、搭乗部が構成される。フレーム21の姿勢が搭乗席3の姿勢に対応することになる。フレーム21の高さが変わると、搭乗席3の高さが変わり、フレーム21の角度が変わると搭乗席3の角度が変わる。フレーム21が前傾すると、搭乗席3も前傾する。フレーム21は、矩形枠状の骨組みを有している。さらに、フレーム21は、搭乗席3を回転可能に支持している。後述するように、第3の直動機構26の動作によって、搭乗席3の前傾姿勢を調整することができる。
フレーム21の前側の左右両端には、第1の直動機構22L、22Rが取り付けられている。第1の直動機構22L、22Rには、第1のリンク24L、24Rがそれぞれ取り付けられている。上記の通り、第1の直動機構22L、22R及び第1のリンク24L、24に関する構成は、左右対称であるため、以下の説明では、符号にL、Rを付けずに説明する。第1の直動機構22、及び第1のリンク24が前脚となるアーム機構を構成する。
第1の直動機構22は、フレーム21に対して取り付けられている。例えば、第1の直動機構22は、フレーム21の前端に配置されている。第1の直動機構22は、フレーム21に回転可能に保持されている。例えば、第1の直動機構22は、トラニオンなどを介して、フレーム21に取り付けられている。第1の直動機構22は、フレーム21から斜め前方下方に延びている。第1の直動機構22の先端は、第1のリンク24に取り付けられている。第1の直動機構22は、フレーム21と第1のリンク24とを連結している。第1の直動機構22は、例えば、伸縮可能なアーム機構であり、モータ等のアクチュエータによって動作する。第1の直動機構22の長さは可変となっている。
第1のリンク24の前端には、前輪11が取り付けられている。つまり、第1のリンク24は、前輪11を回転可能に保持している。前輪11は、車体となるフレーム21の前方に配置されている。ここで、フレーム21の前方とは、フレーム21よりも前側であってもよく。フレーム21の前端の周辺であってもよい。
第1のリンク24は、前輪11から斜め後方上方に延びている。第1のリンク24の後端には、揺動軸40が設けられている。つまり、第1のリンク24は、前輪11と揺動軸40とを連結している。第1のリンク24は、揺動軸40を介してフレーム21に連結されている。第1のリンク24は、揺動軸40を介してフレーム21と連結されているため、揺動軸40周りに回転する。つまり、フレーム21は、揺動軸40を介して、第1のリンク24を回転可能に保持している。図2に示すように、揺動軸40は、Y方向と平行に配置されている。
第1のリンク24の途中には、第1の直動機構22が取り付けられている。第1のリンク24の長手方向において、第1のリンク24の中央よりも前輪11側に第1の直動機構22が取り付けられている。第1の直動機構22が伸縮することで、第1のリンク24が揺動軸40周りに回転する(図1、図4の矢印A)。具体的には、第1の直動機構22が伸びることで、図1において、第1のリンク24が時計回りに回転する。つまり、第1の直動機構22が伸びることで、第1のリンク24がより前傾する。また、第1の直動機構22が縮むことで、図1においては、第1のリンク24が反時計周りに回転する。
このように、第1の直動機構22が動作することで、フレーム21に対する第1のリンク24の角度が変わる。X方向及びZ方向において、フレーム21に対する前輪11の相対的な位置が変化する。第1の直動機構22が伸びることで、前輪11が下降する。第1の直動機構22が縮むことで、前輪11が上昇する。前輪11が離地又は接地するように、第1の直動機構22は前輪11を上下させる。前輪11が段差を乗り越えることができる。また、第1のリンク24は、伸縮可能なアーム機構となっていてもよい。
フレーム21の後ろ側の左右両端には、第2の直動機構23L、23Rが取り付けられている。第2の直動機構23L、23Rには、第2のリンク25L、25Rがそれぞれ取り付けられている。第2のリンク25L、25Rは、それぞれ、第3のリンク27L、27Rを介して、フレーム21に取り付けられている。第2の直動機構23L、23R、第2のリンク25L、25、第3のリンク27L、27Rに関する構成は、左右対称であるため、以下の説明では、符号にL、Rを付けずに説明する。第2の直動機構23L、23R、第2のリンク25L、25、第3のリンク27L、27Rが後脚となるアーム機構を構成する。
第2の直動機構23は、フレーム21に取り付けられている。第2の直動機構23は、フレーム21に回転可能に保持されている。例えば、第2の直動機構23は、トラニオンなどを介して、フレーム21に取り付けられている。第2の直動機構23は、フレーム21から斜め下方に延びている。第2の直動機構23の先端には、第2のリンク25が取り付けられている。第2の直動機構23は、フレーム21と第2のリンク25とを連結している。第2の直動機構23は、例えば、伸縮可能なアーム機構であり、モータ等のアクチュエータによって動作する。第2の直動機構23の長さは可変となっている。
第2のリンク25の前端には、中輪12が取り付けられている。第2のリンク25の後端には、後輪13が取り付けられている。第2のリンク25は、中輪12と後輪13とを連結している。したがって、X方向において、中輪12と後輪13とが間隔を隔てて配置される。第2の直動機構23は、中輪12の近傍において、第2のリンク25と連結されている。
第2のリンク25の途中には、第3のリンク27が連結されている。図1に示すように、第3のリンク27は、フレーム21から斜め前方下方に延びている。第3のリンク27の上端には、フレーム21が連結され、下端には第2のリンク25が回転可能に連結されている。第3のリンク27は、回転軸41を介して、第2のリンク25と連結されている。つまり、第3のリンク27は、第2のリンク25を回転可能に保持している。第2のリンク25は回転軸41周りに回転する。回転軸41は、Y方向と平行に配置されている。回転軸41は、中輪12と後輪13との間に配置されている。回転軸41は、第2のリンク25に対する第2の直動機構23の連結位置よりも後輪13側となっている。
第2の直動機構23が伸縮することで、第2のリンク25が回転軸41周りに回転する。第2の直動機構23が縮むことで、図1においては、第2のリンク25が反時計回りに回転する。例えば、第2の直動機構23が縮むことで、後輪13に対して、中輪12が相対的に上昇する方向に第2のリンク25が回転する。第2の直動機構23が伸びることで、図1において、第2のリンク25が時計回りに回転する。例えば、第2の直動機構23が伸びることで、後輪13に対して、中輪12が相対的に下降する方向に第2のリンク25が回転する。したがって、フレーム21に対する第2のリンク25の角度が変わる。X方向及びZ方向において、フレーム21に対する中輪12、及び後輪13の相対的な位置が変化する。中輪12と後輪13が離地又は接地するように、第2の直動機構23は中輪12、及び後輪13を上下させることができる。中輪12、及び後輪13が段差を乗り越えることができる。
第3の直動機構26は、左右共通となっている。すなわち、第3の直動機構26は、第1の直動機構22、第2の直動機構23等とは異なり、左右それぞれに設けられていない。図2に示すように、1つの第3の直動機構26は、Y方向における乗り物1の中央部に設けられている。
第3の直動機構26は、第3のリンク27L、27Rに取り付けられている。第3の直動機構26は、第3のリンク27に回転可能に保持されている。例えば、第3の直動機構26は、トラニオンなどを介して、第3のリンク27に取り付けられている。第3の直動機構26の先端は、搭乗席3に取り付けられている。第3の直動機構26は、搭乗席3と第3のリンク27とを連結している。第3の直動機構26は、例えば、伸縮可能なアーム機構であり、モータなどのアクチュエータによって動作する。第3の直動機構26の長さは可変となっている。第3の直動機構26の伸縮により、フレーム21に対する搭乗席3の角度が変化する。これにより、搭乗席3の前傾姿勢を調整することができる。よって、段差の昇降時において、搭乗席3の角度の変化を抑制することができ、乗り心地を向上することができる。
上記のように、可変機構20は、第1の直動機構22R、22L、第2の直動機構23R、23L、及び第3の直動機構26を備えている。したがって、可変機構20は、5軸の直動関節によって構成されている。すなわち、5つのアクチュエータで姿勢を変化させることができる。第1の直動機構22は前脚である第1のリンク24を回転揺動させ、第2の直動機構23は後脚である第2のリンク25を回転揺動させる。
第1の直動機構22、第2の直動機構23、第3の直動機構26はそれぞれ、伸縮可能に設けられたリンク機構である。直動機構22、23、26のそれぞれは、モータ、ブレーキ、及びエンコーダを有する駆動部と、駆動部によって伸縮するリンクと、を備えている。なお、直動機構は、公知のリニアアクチュエータを用いることができる。例えば、直動機構はサーボモータの回転方向の力をボールねじにより伸縮方向の力に変換する。ボールねじのリードを小さくすることで、小さな力で直線方向に大きな力を得ることができる。これにより、搭乗者の体重で押されて直動機構が縮んでしまうようなことがなく、姿勢を保つことができる。本実施の形態では、リニアアクチュエータを用いているため、構成を簡素化することができる。
さらに、直動機構にガスばねを併用することで、モータの負荷を低減することができる。また、直動機構は、モータ式アクチュエータに限らず、油圧や空気圧の方式のリニアアクチュエータでもよい。
第1の直動機構22の直動により、第1のリンク24を回転揺動させることができる。これにより、様々な段差に対応することが可能となる。例えば、第1の直動機構22の直動可能距離(ストローク)よりも高い段差の上に、前輪11を上昇させることが可能となる。つまり、短いストロークの第1の直動機構22を用いることができるため、搭乗者の搭乗するスペースに第1の直動機構22が干渉することを防ぐことができる。つまり、第1の直動機構22の上側の突出量を小さくすることができるため、搭乗スペースを確保することが可能となる。第1の直動機構22が第1のリンク24を揺動回転することで、前輪11が上下する。このように、第1の直動機構22のストロークに比して、前輪11の上下の移動量を大きくすることができる。よって、第1の直動機構22のストロークよりも、高い段差に対応することができる。簡易な構成で走行性能の高い走行装置を実現することができる。
なお、可変機構20は、上記の構成に限定されるものではない。可変機構20は、2つ以上のアクチュエータを有する構成であればよい。搭乗席3に対する車輪の相対位置を変化させるように、可変機構20に複数のアクチュエータ(例えば、第1の直動機構22、及び第2の直動機構23)が設けられていればよい。また、車輪の数も、左右3輪ずつの6輪構成限られるものではない。つまり、乗り物1は、1つ以上の車輪で走行可能な走行装置であればよい。
第1の直動機構22、及び第2の直動機構23の一部分は、座面3aよりも上側の位置まで延在している。第1の直動機構22、及び第2の直動機構23は、座面3aよりも高い位置で動作する。そのため、カバー8は第1の直動機構22及び第2の直動機構23を覆うことで、第1の直動機構22、及び第2の直動機構23の可動部分が搭乗者と接触することを防ぐことができる。カバー8Lは、複数のアクチュエータ(第1の直動機構22L、及び第2の直動機構23L)に対して一体的に設けられている。カバー8Rは、複数のアクチュエータ(第1の直動機構22R、及び第2の直動機構23R)に対して一体的に設けられている。
具体的には、左側のカバー8Lは、第1の直動機構22Lと第2の直動機構23Lとを一体的に覆っている。右側のカバー8Rは第1の直動機構22Rと第2の直動機構23Rとを一体的に覆っている。カバー8は、アクチュエータ(第1の直動機構22、及び第2の直動機構23)の搭乗席の座面3aよりも上側にある可動部分を覆っている。
なお、カバー8Lは、第1の直動機構22Lと第2の直動機構23Lとの一部分を覆うっていればよい。具体的には、カバー8Lは、第1の直動機構22Lと第2の直動機構23Lの座面3aよりも上にある部分を覆っていればよい。同様にカバー8Rは、第1の直動機構22Rと第2の直動機構23Rの座面3aよりも上にある部分を覆っていればよい。カバー8は、2つの第1の直動機構22、第2の直動機構23の上方に突出した部分を覆っている。このようにすることで、第1の直動機構22、及び第2の直動機構23が搭乗者に接触することを防ぐことができ、より安全性を向上することができる。なお、カバー8は、アクチュエータの搭乗席の座面よりも上側にある部分を完全に覆う構成に限らず、少なくとも座面3aよりも上側にある部分の少なくとも一部を覆う構成であってもよい。
さらに、1つのカバー8が2つの直動機構22,23を一体的に覆っている。つまり、第1の直動機構22、及び第2の直動機構23に対して個別のカバーを設けるのではなく、1つのカバー8が第1の直動機構22、及び第2の直動機構23の両方を包み込むように覆っている。これにより、アクチュエータの可動部分に通じる隙間を確実に覆うことができる。よって、少ない部品点数で、効果的に安全性を向上することができる。さらに、アクチュエータの動作音に対する遮音性を向上することができる。
(搭乗席3とカバー8との接続)
図1~図5とともに、図6を用いて、カバー8と搭乗席3との接続構成について説明する。図6は、カバー8と搭乗席3との接続を説明するための図である。具体的には、図6の上段には、側面図(XZ平面図)が示され、中段には正面図(XY平面図)が示されている。図6の下段の図は、カバー8Rと搭乗席3との接続部分を模式的に示す正面断面図である。なお、図6では、説明のため、適宜構成が簡略されている。
カバー8はガイド機構8bを介して搭乗席3に取り付けられている。より具体的には、側板3bとカバー8との間に、ガイド機構8bが設けられている。側板3bはガイド機構8bを保持するガイド保持プレートとなる。ガイド機構8bは、搭乗席3に対するカバー8の移動をガイドする。ガイド機構8bとしては、公知のリニアガイド機構を用いることができる。カバー8は、ガイド機構8bによって直動可能に保持されている。カバー8はガイド機構8bに沿って移動する。
さらに、第1の直動機構22、及び第2の直動機構23の少なくとも一方の動作によって、側板3bに対してカバー8が相対移動する。例えば、図6の正面断面図に示すように、第1の直動機構22Rの上端がカバー8Rに当接している。第1の直動機構22Rの動作によって、カバー8Rが上下に移動する。
具体的には、第1の直動機構22Rの上端が+Z側に移動するように、第1の直動機構22Rが動作することで、カバー8Rが上方に押される(図6の白抜き矢印)。これにより、搭乗席3に対して、カバー8Rが上方に移動する。反対に、第1の直動機構22の上端が-Z側に移動するように、第1の直動機構22が動作することで、カバー8Rが下方に移動する。カバー8Rが下がらないように、第1の直動機構22R、及び第2の直動機構23Rがカバー8と当接している。
同様に、第2の直動機構23Rの動作によって、搭乗席3に対してカバー8Rが相対移動してもよい。換言すると、第1の直動機構2及び第2の直動機構23の少なくとも一方の動作によって、搭乗席3に対してカバー8が相対移動すればよい。第1の直動機構2及び第2の直動機構23の少なくとも一方が、カバー8を相対移動させるための駆動源となっていればよい。これにより、アクチュエータを追加することなく、カバー8を移動させることが可能となる。第1の直動機構22、及び第2の直動機構23がカバー8を動作させているため、カバー8専用の駆動源を追加しなくてもよい。よって、簡易な構成で、安全性をより向上することができる。
ガイド機構8bは、第1の直動機構22、及び第2の直動機構23の少なくとも一つの動作に応じて搭乗席3に対してカバー8が相対移動可能なように、カバー8を搭乗席3に接続している。図6の側面図では、ガイド機構8bがZ方向に平行に設けられている、より具体的には、座面3a、又は載置面8aの平面と直交する方向がガイド機構8bのガイド方向となっている。もちろん、ガイド機構8bのガイド方向は特に限定されるものではない。座面3aに対する載置面8aの高さが変わるように、ガイド機構8bがカバー8の移動をガイドすればよい。また、可変機構20の姿勢に応じて、絶対的なガイド方向が変化してもよい。
(モード切替)
可変機構20は、乗り物1の動作モードを切り替えることができる。乗り物1は、チェアモード、ドライモード、又は、スタンドモードで走行することができる。図7は、チェアモードでの可変機構20を簡略化して示す側面図である。図8は、ドライブモードでの可変機構20を簡略化して示す側面図であり、図9はスタンドモードの可変機構20を簡略化して示す側面図である。モード毎に、乗り物1の車高、つまり床面Fからの座面3aの高さが異なっている。
チェアモードでは、前輪11、中輪12、後輪13が全て床面Fに接地した6輪接地となる。ドライブモードでは、前輪11が離地し、かつ、中輪12、及び後輪13が床面Fに接地した4輪接地状態となる。スタンドモードでは、前輪11、及び後輪13が床面Fに接地し、かつ、左右の中輪12が離地した4輪接地状態となっている。
チェアモードで座面3aが最も低くなり、スタンドモードで座面3aが最も高くなる。ドライブモードでは、座面3aの高さがチェアモードよりも高くなり、スタンドモードよりも低くなる。このように、床面Fからの座面3aの高さが変化する。
さらに、乗り物1が2段以上の段差を昇降できように、可変機構20が動作することができる。これにより、乗り物1がエスカレータに乗ったり、階段を昇降することができる。図10は上り階段又は上りエスカレータにおける可変機構20を簡略化して側面図である。図11は下り階段又は下りエスカレータでの可変機構20を簡略化して側面図である。図10、及び図11では、1段目の段差をD1、2段目の段差をD2、3段目の段差をD3として示している。
図10、又は図11に示すように、2段以上の段差に対応する場合、乗り物1は、左右の前輪11、及び後輪13が接地した状態となる。後輪13は、段差D1に接地し、前輪11は、後輪13よりも2段前の段差D3に接地している。なお、図10、図11では、左右の中輪12が離地した4輪接地状態となっている。もちろん、中輪12は、段差D2に接地していてもよく、離地していてもよい。
図8に示すように、ドライブモードにおける座面3aと載置面8aとの間隔を寸法Aとする。図9に示すように、スタンドモードにおける座面3aと載置面8aとの間隔を寸法Bとする。寸法Bは、寸法Aよりも大きくなっていることが好ましい。
また、前輪11が後輪13よりも2段上にある状態において、座面3aと載置面8aとの間隔を寸法Cとする。寸法Cは、寸法Bよりも大きくなっていることが好ましい。
このように、可変機構20の姿勢に応じて、座面3aに対する載置面8aの高さが変化する。つまり、第1の直動機構22又は第2の直動機構23の動作によって、座面3aに対する載置面8aの高さが変化する。肘掛けとなる載置面8aが上下に移動するため、搭乗者が第1の直動機構22、及び第2の直動機構23の動作を直感的に把握することができる。
例えば、載置面8aが上方向に相対移動すると、アクチュエータが伸びる方向に動作したことを搭乗者が認識する。載置面8aが下方向に相対移動すると、アクチュエータが縮む方向に動作したことを搭乗者が認識する。視力が弱い搭乗者や操作に不慣れな搭乗者であっても、可変機構20の姿勢を容易に把握することができる。よって、操作性、乗り心地を向上することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。