以下では、本発明の第一実施形態に係る杭基礎の設計システム100について説明する。まず、図1及び図2に示す、当該設計システム100による設計の対象となる杭基礎20を有した建物1について説明する。
本実施形態に係る建物1は、所定の敷地に建てられる住宅である。本実施形態では、建物1を2階建ての戸建て住宅としている。なお、建物1は、2階建てに限られず適宜の階数を採用可能である。また、建物1は、戸建て住宅に限られず集合住宅としてもよい。建物1は、主として建物本体10と、杭基礎20と、を具備する。
図1に示す建物本体10は、建物1の居住空間を構成する上部構造である。建物本体10は、柱や梁、床、壁、天井等を具備する。建物本体10は、木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造等、種々の構造を採用可能である。
図1及び図2に示す杭基礎20は、建物本体10(上部構造)の荷重を支持する下部構造である。杭基礎20は、主として基礎梁30及び杭40を具備する。
基礎梁30は、杭基礎20における基礎部(建物本体10に接続される部分)を構成する水平部材である。上記基礎部は、複数本の基礎梁30の長手方向の端部同士を接続して構成されている。なお、以下では、複数本の基礎梁30による交点(接続点)間の部分を、1本の基礎梁30として説明する。
基礎梁30は、図1に示すように、断面視矩形状とされた基礎梁本体の下端部において、短手方向両側に突出するフーチング部が形成されている。これにより、基礎梁30は、断面視逆T字形状とされている。なお、図2以降においては、基礎梁30のフーチング部を省略し、基礎梁本体のみを示している。
基礎梁30は、鉄筋コンクリート造とされている。基礎梁30は、上端部が敷地内の表層の地盤(表層地盤G1)から突出しており、当該上端部に建物本体10の柱が接続される。また、基礎梁30には、建物本体10の荷重を受けることで、曲げモーメントやせん断力等の応力が作用する。従って、基礎梁30は、上記応力に対する耐力を満足するように設計される必要がある。
杭40は、建物本体10及び基礎梁30の荷重を支持するものである。図1では、杭40を、建物本体10及び基礎梁30の荷重を表層地盤G1よりも深く、硬い地盤である支持地盤G2に伝える支持杭とした例を示している。杭40は、略円柱状とされている。杭40は、下端部が支持地盤G2に達すると共に、上端部が基礎梁30に接続される。杭40は、図2に示すように、基礎梁30に対して複数の位置に配置される。なお、杭40は、上述したような下端部が支持地盤G2に達する支持杭に限られない。例えば、杭40を、表層地盤G1との摩擦力で、上記建物本体10及び基礎梁30の荷重を支持する摩擦杭としてもよい。
杭40は、予め製造されたものを敷地に埋め込むように設置する既製杭や、敷地内に設けた穴に、コンクリートやセメント等を流し込んで形成する場所打ち杭を採用可能である。また、杭40は、金属材料で形成された鋼管杭や鉄筋コンクリートで形成されたコンクリート杭、地盤の土とセメントとによって形成した柱状改良杭等を採用可能である。杭40は、建物本体10及び基礎梁30の荷重に対する耐力を満足するように設計される必要がある。
次に、図3に示す杭基礎20の設計システム100について説明する。杭基礎20の設計システム100は、上記基礎梁30の設計情報を基に、当該杭基礎20の設計を行うものである。ここで、基礎梁30の設計情報とは、建物1における基礎梁30の平面図の図面データに相当する情報である。
杭基礎20の設計システム100は、主として記憶部101、制御部102、表示部103及び入力部104を具備する。
記憶部101は、各種のプログラムやデータ等が記憶されるものである。記憶部101は、HDD、RAM、ROM等により構成される。
制御部102は、記憶部101に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部102は、CPUにより構成される。
表示部103は、各種の情報を表示するものである。表示部103は、液晶ディスプレイ等により構成される。
入力部104は、各種の情報を入力するためのものである。入力部104は、キーボード、マウス等により構成される。
このように、杭基礎20の設計システム100としては、一般的なパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
杭基礎20の設計システム100は、杭基礎自動設計処理を実行可能である。杭基礎自動設計処理は、基礎梁30に要求される耐力及び杭40に要求される耐力を満足した杭基礎20を自動で設計するものである。杭基礎自動設計処理は、基礎梁30の図面データを基に、所定の入力値に基づいて行われる。
上記所定の入力値は、杭基礎自動設計処理を実行する前に、入力部104を介して入力される。ここで、所定の入力値とは、杭40の種類や杭の工法、杭径等が挙げられる。また、上記入力値は、入力部104を介して直接入力してもよく、記憶部101に記憶された所定のパターンを、入力部104を介して適宜選択して入力してもよい。
上記基礎梁30の図面データは、杭基礎自動設計処理を実行する前に取得される。本実施形態では、上記基礎梁30の図面データは、事前に記憶部101に記憶されている。また、上記基礎梁30の図面データは、図面上における座標を示す所定のグリッドを基準として作成される。ここで、上記基礎梁30の図面データは、図2に示す、後述する杭基礎20の図面データ(杭基礎20の設計情報)から、杭40を除いたものに相当する。以下では、上記グリッドについて、図2を参照して説明する。
図2では、上記グリッドを二点鎖線で示している。図2に示す図例においては、上記グリッドのX軸方向又はY軸方向の直線に、基礎梁30の中心線が位置するように配置される。また、図2に示す図例においては、上記グリッドの交点に、杭40の中心点が位置するように配置される。本実施形態では、上記グリッドの最小単位を、0.5Pとして説明する。なお、図2に示す図例においては、グリッドの一部を省略しており、グリッドの1マス分が1Pに相当する。なお、本実施形態では、1Pは、910mmを示すものとする。
上記図面データ上に位置するグリッドの交点には、基礎梁30に対する杭40の配置に関する点の種別が規定されている。上記点の種別としては、杭配置必須点、杭配置不可能点、杭配置注意点、杭配置原則点が挙げられる。
杭配置必須点は、基礎梁30において必ず杭40が配置される点である。本実施形態では、2つの基礎梁30がL字に交差する交点を杭配置必須点としている。
また、杭基礎20において、長手方向の一端が、他の基礎梁30に接続されていない基礎梁30(半島基礎)を具備する場合、上記半島基礎の先端となる点を杭配置必須点としている。また、建物1の2階平面の梁(ラーメン梁)の両端が位置する点を、杭配置必須点としている。
また、杭基礎20において、建物1の2階平面の梁(ラーメン梁)の両端から、それぞれ1P分内側に位置する点を、杭配置必須点としている。
また、図2において、破線で囲った範囲Zのように、杭基礎20の一部を杭40に対して張り出させるように形成する場合、上記張り出させた部分(以下では「キャンチ指定範囲」と称する)を片持ち支持する複数の基礎梁30(以下では「片持ち支持梁31」と称する)の基部となる部分(以下では「片持ち支持部32」と称する)を、杭配置必須点としている。また、図例では、上記複数の片持ち支持梁31において、張り出させた側の端部同士を、上記キャンチ指定範囲の右端部を構成する基礎梁30(以下では「片持ち接続梁33」と称する)によって接続した例を示している。
杭配置不可能点は、基礎梁30において杭40の配置を禁止する点である。本実施形態では、杭基礎20が、深基礎(他の基礎よりも下端が深い位置に形成される基礎)を構成する基礎梁30を含む場合、上記深基礎と他の基礎梁30との接続点(直線的に接続するものやL字又はT字に交差して接続するものを含む)を、杭配置不可能点としている。なお、上記杭配置不可能点が、杭配置必須点と同位置に存在する場合は、杭40の配置は行わない。
また、杭基礎20において、図2に示すようなキャンチ指定範囲(片持ち支持部32を除く)を、杭配置不可能点としている。また、上記片持ち接続梁33を構成する領域を、杭配置不可能点としている。なお、片持ち接続梁33の端部であっても、キャンチ指定範囲に含まれない点においては、杭40を配置可能である。なお、片持ち接続梁33が、杭配置必須点と同位置に存在する場合は、杭40の配置は行わない。
杭配置注意点は、基礎梁30に対して、原則、杭40を配置可能であるが、基礎梁30の耐力や杭40の耐力の観点から、注意が必要な点である。本実施形態では、基礎梁30に、短手方向に貫通する孔(人通孔)が形成されている場合、基礎梁30において、上記人通孔が形成された部位に位置する点を、杭配置注意点としている。
杭配置原則点は、基礎梁30に対して、原則、杭40を配置する点であるが、所定条件のもと、当該点から所定距離、離れた箇所に杭40を配置することが許可された点である。本実施形態では、基礎梁30において、L字以外の交点(T字や十字等)を、杭配置原則点としている。また、基礎梁30において、建物1の内部柱の直下の点を、杭配置原則点としている。
また、杭基礎自動設計処理においては、複数の杭40の間隔の上限値(以下では「最大杭間隔」と称する)が設定されている。最大杭間隔は、基礎梁30及び杭40の態様に基づいて設定される。最大杭間隔は、例えば、2P~4Pとすることができる。
また、杭基礎自動設計処理においては、複数の杭40の間隔の下限値(以下では「最小杭間隔」と称する)が設定されている。最小杭間隔は、杭40の態様に基づいて設定される。最小杭間隔は、例えば、杭40の杭径の1~2.5倍とすることができる。
杭基礎自動設計処理は、設計者(操作者)による操作を契機として実行される。以下では、図4のフローチャートを用いて、杭基礎自動設計処理において制御部102が行う処理について説明する。本実施形態に係る杭基礎自動設計処理においては、杭自動配置処理、耐力算出処理、杭基礎最適化処理が、上記した順番に行われる。
まず、制御部102は、杭自動配置処理(ステップS10)を行う。杭自動配置処理は、基礎梁30の図面データに対して、必要な場所に杭40を自動で配置する処理である。
制御部102は、杭自動配置処理において、複数の基礎梁30がT字または十字に交差する交点に、杭40を配置する。また、建物1の1階の内部柱の直下に位置する点に、杭40を配置する。また、上述した杭配置必須点に、杭40を配置する。
上記杭自動配置処理を行うことで、基礎梁30に対して杭40が配置された杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)を得ることができる。杭基礎20の図面データは、後述する杭基礎最適化処理の対象となる図面データである。なお、図2に示す例は、杭基礎20の図面データの一例を示したものである。
上述した杭自動配置処理(ステップS10)を行った後、制御部102は、耐力算出処理(ステップS11)を行う。耐力算出処理は、上記杭自動配置処理によって、基礎梁30に杭40が配置された状態の杭基礎20の図面データに対して、基礎梁30の耐力及び杭40の耐力をそれぞれ算出する処理である。
上述した耐力算出処理(ステップS11)を行った後、制御部102は、杭基礎最適化処理(ステップS12)を行う。杭基礎最適化処理は、上記杭自動配置処理が行われた杭基礎20の図面データに対して、基礎梁30及び杭40の耐力を、要求される耐力に対して満足させる処理である。また、杭基礎最適化処理は、基礎梁30及び杭40の耐力を、要求される耐力に対して満足させる範囲で、杭基礎20のコストダウン化を図る処理である。
ここで、杭基礎20において、基礎梁30の耐力及び杭40の耐力に寄与するものして、基礎梁30の仕様及び杭40の仕様が挙げられる。
基礎梁30の仕様とは、基礎梁30(基礎梁本体)の断面形状や配筋である。例えば、基礎梁30(基礎梁本体)の断面形状のうち、幅寸法を大きくすれば、当該基礎梁30の耐力は向上する。また、基礎梁30の鉄筋量を増やせば、当該基礎梁30の耐力は向上する。これにより、耐力が不足する基礎梁30について、耐力不足の解消を図ることができる。
また、杭40の仕様とは、杭40の杭径や本数、基礎梁30に対する配置である。例えば、杭40の杭径を拡大すれば、杭40の耐力は向上する。
また、基礎梁30に対する杭40の本数を増やしたり、基礎梁30に対する配置を変更することで、一本の杭40が負担する荷重を軽減させることができる。これにより、耐力が不足する杭40について、耐力不足の解消を図ることができる。
また、基礎梁30に対する杭40の本数を増やしたり、基礎梁30に対する配置を変更することで、基礎梁30において、杭40に対するスパンの関係で耐力が不足している部分について、上記スパンを改善することができる。これにより、基礎梁30の耐力不足の解消を図ることができる。
杭基礎最適化処理においては、図4に示すように、移動可能杭判定処理、移動可能距離取得処理、基礎梁耐力不足解消処理、杭耐力不足解消処理、杭削除処理、杭配置調整処理及び杭径縮小処理が、上記した順番に行われる。
制御部102は、まず、移動可能杭判定処理(ステップS13)を行う。移動可能杭判定処理は、上記杭自動配置処理において配置された杭40の全てについて、移動の可否を判定する処理である。本実施形態では、上述した杭配置原則点に配置された杭40であって、所定の条件を満足するものを、移動可能な杭41(以下では「移動可能杭41」と称する)であると判定する。
具体的には、制御部102は、基礎梁30において、L字以外の交点(T字や十字等)である杭配置原則点に配置されている杭40について、下記の緩和ルール1及び2に該当するものについては、移動可能杭41であると判定する(例えば、図8(a)~(d)に示す移動可能杭41a・41b参照)。ここで、緩和ルール1は、上記杭配置原則点の両側1P以内に杭40が配置されている場合である。また、緩和ルール2は、L字以外の交点と隣り合う複数の杭40に囲まれた区間に、建物1の1階の柱が含まれない場合で、かつ、上記隣り合う複数の杭40が、上記交点を挟んで2P以内に配置されている場合である。
また、制御部102は、基礎梁30において、建物1の一階の内部柱の直下の点に配置されている杭40について、上記緩和ルール1に該当するものについては、移動可能杭41であると判定する。
また、制御部102は、基礎梁30がL字状に交差する交点に配置された杭40等、杭配置必須点に配置された杭40については、移動不可能な杭42(以下では「移動不可杭42」と称する)であると判定する(例えば、図6(a)~(k)に示す移動不可杭42参照)。
以下の説明では、杭40について、必要に応じて、移動可能杭41又は移動不可杭42として説明し、特に必要のない場合は、単に杭40として説明する。
上述した移動可能杭判定処理(ステップS13)を行った後、制御部102は、移動可能距離取得処理(ステップS14)を行う。移動可能距離取得処理は、上記移動可能杭判定処理において、判定された移動可能杭41の全てについて、4方向(上下左右方向)の移動可能距離を取得する処理である。上記移動可能距離は、杭40の最大杭間隔や最小杭間隔が考慮される。なお、移動可能距離取得処理は、後述する基礎梁耐力不足解消処理(ステップS15)及び杭耐力不足解消処理(ステップS16)等によって杭の移動及び追加を行うたびに行われる。
上述した移動可能距離取得処理(ステップS14)を行った後、制御部102は、基礎梁耐力不足解消処理(ステップS15)を行う。基礎梁耐力不足解消処理は、上述した耐力算出処理において耐力が算出された基礎梁30のうち、要求される耐力を満足しない(耐力が不足する)基礎梁30について、耐力の不足を解消する処理である。
本実施形態においては、杭基礎20における杭40の仕様を変更することで、基礎梁30の耐力不足を解消する。具体的には、耐力が不足する基礎梁30の全てについて、当該基礎梁30に対して杭40の位置を移動させたり、杭40を追加することで、耐力の不足を解消する。
以下では、図5のフローチャートを用いて、基礎梁耐力不足解消処理について説明する。
ステップS20において、制御部102は、基礎梁耐力不足解消処理を実行する基礎梁30について、当該基礎梁30及び杭40の態様に応じたケースの区分を判定する。具体的には、本実施形態においては、基礎梁30及び杭40の態様を後述する3つのケースに分類しており、ステップS20において、耐力が不足する基礎梁30及び杭40が後述するケース1であるか否かを判定する。
本実施形態では、耐力が不足する基礎梁30の長手方向両端に、移動不可杭42が配置されている場合をケース1としている(例えば、図6参照)。また、耐力が不足する基礎梁30の長手方向一端に、移動可能杭41が配置されている場合をケース2としている(例えば、図7参照)。また、耐力が不足する基礎梁30の長手方向両端に、移動可能杭41が配置されている場合をケース3としている(例えば、図8参照)。
制御部102は、基礎梁耐力不足解消処理を実行する基礎梁30が、ケース1であると判断した場合(ステップS20:YES)には、ステップS21の処理へ移行する。一方、制御部102は、基礎梁耐力不足解消処理を実行する基礎梁30が、ケース1ではない(ケース2またはケース3である)と判断した場合(ステップS20:NO)には、ステップS26の処理へ移行する。
ステップS21において、制御部102は、基礎梁耐力不足解消処理を実行する基礎梁30に杭40を追加する。
ここで、基礎梁耐力不足解消処理においては、杭40を追加するにあたって所定のルール(第1杭追加ルール)が定められている。具体的には、基礎梁30の長手方向両端部が、T字又は十字の交点でない場合、当該基礎梁30の長手方向両端に配置された杭40間の中央位置に、杭40を追加する(第1杭追加ルール1(例えば、図6(a)、(b)参照))。上記第1杭追加ルール1において、上記中央位置が、グリッドの交点上に位置しない場合は、上記中央位置の近傍であって、座標の小さい方(X軸方向においては左方、Y軸方向においては下方)のグリッドの交点に、杭40を追加する。
また、基礎梁30の長手方向一端部が、T字又は十字の交点である場合、当該交点から、1P離れた位置に、杭40を追加する(第1杭追加ルール2)。上記第1杭追加ルール2において、基礎梁30の長手方向両端部が、T字又は十字の交点である場合、上記交点のうち、既に1P以内に配置されている杭40の本数が多い方の交点から1P離れた位置に、杭40を追加する(例えば、図9(h)、(i)参照)。制御部102は、ステップS21の処理が終了すれば、次にステップS22の処理へ移行する。
ステップS22において、制御部102は、上記杭40を追加した基礎梁30について耐力を算出すると共に、上記基礎梁30の耐力不足が解消しているか否かを判断する。制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消していると判断した場合(ステップS22:YES)には、ステップS25の処理へ移行する。一方、制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消していないと判断した場合(ステップS22:NO)には、ステップS23の処理へ移行する。
ステップS23において、制御部102は、基礎梁30について、上記ステップS21において追加した杭40を移動させる。
ここで、基礎梁耐力不足解消処理においては、杭40を移動させるにあたって所定のルールが定められている。具体的には、上記耐力が不足している基礎梁30について、可能な限り杭40の本数は増やさずに、杭40を、0.5P間隔で移動させる(杭移動ルール1(例えば、図6(d)、(e)参照))。
また、移動可能距離まで移動させても基礎梁30の耐力不足が解消されない場合は、移動させた杭40を元の位置(移動させる前の位置)に戻す(杭移動ルール2(例えば、図7(b)、(c)参照))。この場合、上記基礎梁30や他の杭40の状況に応じて、上記移動させた杭40を移動の直前の状態に戻す(0.5P戻す)ようにしてもよく、上記杭40を移動させた距離の全てを戻す(初期位置に戻す)ようにしてもよい。
また、2本以上の耐力が不足している基礎梁30に対して接続する杭40は移動させない(杭移動ルール3)。制御部102は、ステップS23の処理が終了すれば、ステップS24の処理へ移行する。
ステップS24において、制御部102は、上記ステップS22と同様、上記杭40を移動させた基礎梁30について耐力を算出すると共に、上記基礎梁30の耐力不足が解消しているか否かを判断する。制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消していると判断した場合(ステップS24:YES)には、ステップS25の処理へ移行する。一方、制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消していないと判断した場合(ステップS24:NO)には、再度、ステップS21の処理へ移行する。
ステップS25において、制御部102は、全ての基礎梁30について耐力不足が解消したか否かを判断する。制御部102は、全ての基礎梁30について耐力不足が解消したと判断した場合(ステップS25:YES)には、基礎梁耐力不足解消処理を終了する。一方、制御部102は、耐力不足が解消していない基礎梁30があると判断した場合(ステップS25:NO)には、他の耐力不足が解消していない基礎梁30について、ステップS20の処理を行う。
以下では、図6を参照して、ケース1における杭40の追加及び杭40の移動(ステップS21~ステップS25)の一例について説明する。
図6(a)は、耐力が不足する基礎梁30の長手方向両端において、他の基礎梁30とのL字の交点に移動不可杭42が配置されている例を示している。なお、図例では、グリッドを二点鎖線で示している。上記グリッドの1マス分は、0.5Pに相当する。また、図例では、基礎梁30をグリッド上の実線により模式的に示している。また、耐力が不足する基礎梁30を太線で示している。また、杭40を、基礎梁30を示す線上に配置された円で示している。
図6(a)に示した例においては、基礎梁30の長手方向両端部は、T字又は十字の交点でないので、制御部102は、上述した第1杭追加ルール1に基づいて杭40を追加する(ステップS21)。具体的には、制御部102は、図6(b)に示すように、基礎梁30の長手方向両端に配置された移動不可杭42間の中央位置に杭40(移動可能杭41)を追加する。図6(b)に示した例では、上記杭40の追加により、基礎梁30の耐力不足は解消している(ステップS22:YES)。
次に、上述した例とは異なるケース1の一例について説明する。図6(c)に示した例は、上記図6(a)に示した例と同様である。図6(d)は、上記図6(b)と同様、基礎梁30の長手方向両端の移動不可杭42間の中央位置に移動可能杭41を追加した(ステップS21)例を示している。当該図6(d)に示した例では、基礎梁30において、移動可能杭41よりも右側部分の耐力不足は解消している一方、移動可能杭41よりも左側部分の耐力は不足している。すなわち、上記移動可能杭41を追加しても、基礎梁30の耐力不足は解消していない(ステップS22:NO)。
この場合、制御部102は、図6(e)に示すように、杭移動ルール1に基づいて上記追加した移動可能杭41を、左方へ0.5P移動させる(ステップS23)。図6(e)に示した例では、上記移動可能杭41を移動させたことで、基礎梁30の耐力不足が解消している(ステップS24:YES)。
次に、上述した例とは異なるケース1の一例について説明する。図6(f)に示した例は、上記図6(a)に示した例と同様である。図6(g)は、上記図6(b)と同様、基礎梁30の長手方向両端の移動不可杭42間の中央位置に移動可能杭41aを追加した(ステップS21)例を示している。当該図6(g)に示した例では、基礎梁30において、移動可能杭41aの両側部分の耐力は不足している。
このように、追加した杭40(移動可能杭41a)の両側部分の耐力が不足する場合は、上記移動可能杭41aを移動したとしても基礎梁30の耐力不足は解消されない。従って、更に杭40を追加する必要がある。そこで、制御部102は、図6(h)に示すように、上記移動可能杭41aと、基礎梁30の左端に配置された移動不可杭42と、の間の中央位置に、更に移動可能杭41bを追加する(ステップS21)。当該図6(h)に示した例では、基礎梁30において、移動可能杭41aよりも左側部分の耐力不足は解消している一方、移動可能杭41aよりも右側部分の耐力は不足している。すなわち、移動可能杭41a・41bを追加しても、基礎梁30の耐力不足は解消していない(ステップS22:NO)。
この場合、制御部102は、図6(i)に示すように、上記移動可能杭41aを、右方へ0.5P移動させる(ステップS23)。この状態では、上記移動可能杭41aの両側において、基礎梁30の耐力が不足している。すなわち、上記移動可能杭41aを移動しても、基礎梁30の耐力不足が解消されない。この場合、制御部102は、杭移動ルール2に基づいて、図6(j)に示すように、移動した移動可能杭41aを移動させる前の位置に戻す。また、この状態では、基礎梁30の耐力不足は解消していない(ステップS24:NO)。
この場合、制御部102は、図6(k)に示すように、上記移動可能杭41aと、基礎梁30の右端に配置された移動不可杭42と、の間の中央位置に、更に移動可能杭41cを追加する(ステップS21)。図6(k)に示した例では、上記移動可能杭41cを追加したことで、基礎梁30の耐力不足が解消している(ステップS22:YES)。
また、上述の如くステップS20において、基礎梁30が、ケース1ではない(ケース2またはケース3である)と判断された場合(ステップS20:NO)に移行するステップS26においては、制御部102は、基礎梁30に配置された杭40を移動させる。当該ステップS26においても、上述した杭移動ルール1~3に基づいて、杭40を移動させる。制御部102は、ステップS26の処理が終了すれば、次にステップS27の処理へ移行する。
ステップS27において、制御部102は、上記杭40を移動させた基礎梁30について耐力を算出すると共に、上記基礎梁30の耐力不足が解消しているか否かを判断する。制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消していると判断した場合(ステップS27:YES)には、ステップS25の処理へ移行する。一方、制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消していないと判断した場合(ステップS27:NO)には、ステップS28の処理へ移行する。
ステップS28において、制御部102は、基礎梁30に杭40を追加する。当該ステップS28においても、上述した第1杭追加ルール1~2に基づいて、杭40を追加する。制御部102は、ステップS28の処理が終了すれば、次にステップS29の処理へ移行する。
ステップS29において、制御部102は、上記ステップS27と同様、上記杭40を追加した基礎梁30について耐力を算出すると共に、上記基礎梁30の耐力不足が解消しているか否かを判断する。制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消していると判断した場合(ステップS29:YES)には、ステップS25の処理へ移行する。一方、制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消していないと判断した場合(ステップS29:NO)には、再度、ステップS26の処理へ移行する。
以下では、図7を参照して、ケース2における杭40の追加及び杭40の移動(ステップS26~ステップS29)の一例について説明する。
図7(a)は、耐力が不足する基礎梁30の長手方向一方(下方)に、移動可能杭41aが配置され、長手方向他端(上端)において、他の基礎梁30とのL字の交点に移動不可杭42が配置されている例を示している。
この場合、制御部102は、杭移動ルール1に基づき、図7(b)に示すように、上記移動可能杭41aを上方へ0.5P間隔で移動させる(ステップS26)。この際に、上記移動可能杭41aを0.5P移動させても、上記同様、基礎梁30の耐力が不足する場合、更に移動可能杭41aを移動させてもよい。図例では、上記移動可能杭41aを、移動可能距離まで移動させた例を示している。この状態では、上記移動可能杭41aの下側において、基礎梁30の耐力が不足している。すなわち、上記移動可能杭41aを移動しても、基礎梁30の耐力不足は解消されない。この場合、制御部102は、杭移動ルール2に基づき、図7(c)に示すように、移動した移動可能杭41aを移動させる前の位置に戻す。
上記図7(c)に示す状態では、上記基礎梁30の耐力不足は解消していない(ステップS27:NO)。従って、制御部102は、杭追加ルール1に基づき、図7(d)に示すように、基礎梁30の上端の移動不可杭42と、移動可能杭41aと、の間の中央位置に移動可能杭41bを追加する(ステップS28)。図7(d)に示した例では、上記移動可能杭41bを追加したことで、基礎梁30の耐力不足が解消している(ステップS29:YES)。
次に、上述した例とは異なるケース2の一例について説明する。図7(e)に示した例は、上記図7(a)に示した例と同様である。図7(f)は、杭移動ルール1に基づき、移動可能杭41aを上方へ0.5P移動させたが(ステップS26)、上記移動により、当該移動可能杭41aの両側において、基礎梁30の耐力が不足している例を示している。この場合、制御部102は、杭移動ルール2に基づき、図7(g)に示すように、移動した移動可能杭41aを移動させる前の位置に戻す。
上記図7(g)に示す状態では、上記基礎梁30の耐力不足は解消していない(ステップS27:NO)。従って、制御部102は、杭追加ルール1に基づき、図7(h)に示すように、基礎梁30の上端の移動不可杭42と、移動可能杭41aと、の間の中央位置に移動可能杭41bを追加する(ステップS28)。
図7(h)に示す例では、基礎梁30において、移動可能杭41bよりも下側部分の耐力不足は解消している一方、移動可能杭41bよりも上側部分の耐力は不足している。すなわち、上記移動可能杭41bを追加しても、基礎梁30の耐力不足は解消していない(ステップS29:NO)。従って、制御部102は、杭移動ルール1に基づき、図7(i)に示すように、上記追加した移動可能杭41bを上方へ0.5P移動させる(ステップS26)。図7(i)に示した例では、上記移動可能杭41bを移動させたことで、基礎梁30の耐力不足が解消している(ステップS27:YES)。
また、以下では、図8を参照して、ケース3における杭40の追加及び杭40の移動(ステップS26~ステップS29)の一例について説明する。
図8(a)は、耐力が不足する基礎梁30の長手方向一端(左端)のT字の交点に移動可能杭41aが配置され、長手方向他端(右端)のT字の交点に移動可能杭41bが配置されている例を示している。また、上記移動可能杭41a・41bの上下方向両側には、それぞれ杭40が1P以内に配置されている。
この場合、制御部102は、杭移動ルール1に基づき、図8(b)に示すように、耐力が不足する基礎梁30の左端の移動可能杭41aを、右方に0.5P移動させる(ステップS26)。この状態では、上記移動可能杭41a・41bの間の耐力の不足は解消されていない。
この場合、制御部102は、基礎梁30の右端の移動可能杭41bを、杭移動ルール1に基づき、図8(c)に示すように、左方に0.5P移動させる(ステップS26)。この状態でも、上記移動可能杭41a・41bの間の基礎梁30の耐力の不足は解消されていない。この場合、制御部102は、図8(d)に示すように、上記移動可能杭41aを、更に右方に0.5P移動させる(ステップS26)。図8(d)に示した例では、上記移動可能杭41a・41bを移動させたことで、基礎梁30の耐力不足が解消している(ステップS27:YES)。
次に、上述した例とは異なるケース3の一例について説明する。図9(a)に示した例は、上記図8(a)に示した例と同様である。図9(b)は、図8(b)と同様、基礎梁30の左端の移動可能杭41aを、右方に0.5P移動させた(ステップS26)例を示している。また、図9(c)は、図8(c)と同様、基礎梁30の右端の移動可能杭41bを、左方に0.5P移動させた(ステップS26)例を示している。また、図9(d)は、図8(d)と同様、基礎梁30の左端の移動可能杭41aを、更に右方に0.5P移動させた(ステップS26)例を示している。
上記図9(d)に示す状態では、上記移動可能杭41aの両側において、基礎梁30の耐力が不足している例を示している。この場合、制御部102は、杭移動ルール2に基づき、図9(e)に示すように、移動した移動可能杭41aを移動させる前の位置に戻す。
この状態では、上記移動可能杭41a・41bの間の基礎梁30の耐力の不足は解消されていない。この場合、制御部102は、図9(f)に示すように、上記移動可能杭41bを、更に左方に0.5P移動させる(ステップS26)。
この状態でも、上記移動可能杭41a・41bの間の基礎梁30の耐力の不足は解消されていない。この場合、制御部102は、図9(g)に示すように、上記移動可能杭41bを、更に左方に0.5P移動させる(ステップS26)。
この状態では、図9(g)に示すように、基礎梁30において、上記移動可能杭41bの両側の耐力が不足している。すなわち、上記移動可能杭41a・41bを移動しても、基礎梁30の耐力不足は解消されない。この場合、制御部102は、杭移動ルール2に基づき、図9(h)に示すように、移動可能杭41a・41bを移動させる前の位置に戻す。
上記図9(h)に示す状態では、上記基礎梁30の耐力不足は解消していない(ステップS27:NO)。従って、制御部102は、杭追加ルール2に基づき、図9(i)に示すように、上記基礎梁30の左端のT字の交点から1P離れた位置に、移動可能杭41cを追加する(ステップS28)。
上記図9(i)に示す状態では、上記基礎梁30の耐力不足は解消していない(ステップS29:NO)。従って、制御部102は、図10(a)に示すように、上記追加した移動可能杭41cを右方に0.5P移動させる(ステップS26)。
この状態では、図10(a)に示すように、基礎梁30において、上記移動可能杭41cの両側の耐力が不足している。すなわち、上記移動可能杭41cを移動しても、基礎梁30の耐力不足は解消されない。この場合、制御部102は、杭移動ルール2に基づき、図10(b)に示すように、上記移動可能杭41cを移動させる前の位置に戻す。
上記図10(b)に示す状態では、上記基礎梁30の耐力不足は解消されない。この場合、制御部102は、杭移動ルール1に基づき、図10(c)に示すように、移動可能杭41dを左方に0.5P移動させる(ステップS26)。
上記図10(c)に示す状態では、上記基礎梁30の耐力不足は解消されない。この場合、制御部102は、杭移動ルール1に基づき、図10(d)に示すように、移動可能杭41dを更に左方に0.5P移動させる(ステップS26)。図10(d)に示した例では、上記移動可能杭41bを移動させたことで、基礎梁30の耐力不足が解消している(ステップS27:YES)。
制御部102は、図4に示すように、上述した基礎梁耐力不足解消処理(ステップS15)を行った後、杭耐力不足解消処理(ステップS16)を行う。杭耐力不足解消処理は、上述した基礎梁耐力不足解消処理を行ったことで、基礎梁30の耐力不足を解消した杭基礎20について、要求される耐力を満足しない(耐力が不足する)杭40について、耐力の不足を解消する処理である。
本実施形態においては、杭基礎20における杭40の仕様を変更することで、杭40の耐力不足を解消する。具体的には、耐力が不足する杭40について、当該杭40の位置を移動させたり、新たに杭40を追加することで、耐力の不足を解消する。
杭耐力不足解消処理においては、制御部102は、耐力が不足する杭40の全てについて、所定の優先順位を設定する。本実施形態では、杭40について、後述する条件のもと、優先順位1~3までを設定する。
本実施形態では、建物1において、耐力壁に接続される柱直下の杭40であって、加力方向(地震時において水平方向の力が加わる方向)に移動可能な杭40を、優先順位1とする。また、建物1において、柱直下の杭40を、優先順位2とする(優先順位1の杭40を除く)。また、上記優先順位1及び優先順位2以外の杭40を、優先順位3とする。上記優先順位1~3が設定された杭40においては、優先順位1の杭40から杭耐力不足解消処理が行われ、次いで、優先順位2、優先順位3の順番に杭耐力不足解消処理が行われる。
以下では、図11のフローチャートを用いて、杭耐力不足解消処理について説明する。
ステップS30において、制御部102は、杭耐力不足解消処理を行う杭40について、優先順位の区分を判定する。制御部102は、杭耐力不足解消処理を行う杭40が、優先順位1に設定されたものである場合には、ステップS31の処理へ移行する。また、制御部102は、杭耐力不足解消処理を行う杭40が、優先順位2に設定されたものである場合には、ステップS33の処理へ移行する。制御部102は、杭耐力不足解消処理を行う杭40が、優先順位3に設定されたものである場合には、ステップS35の処理へ移行する。
ステップS31において、制御部102は、優先順位1に設定された杭40を移動させる。なお、上記移動させる杭40は、移動可能な杭40(移動可能杭41)である。
ここで、ステップS31においては、優先順位1に設定された移動可能杭41を移動させるにあたって所定のルール(優先順位1杭移動ルール)が定められている。具体的には、優先順位1に設定された移動可能杭41を移動させる場合、まず、上記移動可能杭41を、加力方向に、1P移動させる(優先順位1杭移動ルール1(例えば、図12(a)、(b)参照))。この場合、上記移動によって、上記移動可能杭41が接続する基礎梁30の耐力が不足するか、新たに耐力が不足する杭40が発生した場合には、上記移動させた移動可能杭41を移動前の状態に戻す(優先順位1杭移動ルール2)。
また、優先順位1杭移動ルールにおいては、次いで、上記移動可能杭41を、加力方向に、0.5P移動させる(優先順位1杭移動ルール3)。この場合、上記移動によって、上記移動可能杭41が接続する基礎梁30の耐力が不足するか、新たに耐力が不足する杭40が発生した場合には、上記移動させた移動可能杭41を移動前の状態に戻す(優先順位1杭移動ルール4)。
ここで、上記優先順位1杭移動ルールにおいて、耐力が不足する移動可能杭41を、まず1P移動させ(優先順位1杭移動ルール1)、次いで0.5P移動させる(優先順位1杭移動ルール3)ことで、移動可能杭41の耐力不足を解消し易いものとすることができる。すなわち、耐力が不足する移動可能杭41を、まず1P移動させる場合、当該移動可能杭41の耐力不足を解消し易い反面、基礎梁30の耐力不足が発生し易くなる。一方、耐力が不足する移動可能杭41を、まず0.5P移動させる場合、当該移動可能杭41の耐力不足を解消し難い反面、基礎梁30の耐力不足が発生し難くなる。
制御部102は、ステップS31の処理が終了すれば、次にステップS32の処理へ移行する。
ステップS32において、制御部102は、上記耐力が不足していた移動可能杭41について、耐力を算出すると共に、上記移動可能杭41の耐力不足が解消しているか否かを判断する。制御部102は、上記移動可能杭41の耐力不足が解消していると判断した場合(ステップS32:YES)には、杭耐力不足解消処理を終了する。一方、制御部102は、上記移動可能杭41の耐力不足が解消していないと判断した場合(ステップS32:NO)には、ステップS33の処理へ移行する。
以下では、図12を参照して、優先順位1杭移動ルールにおける移動可能杭41の移動(ステップS31~ステップS32)の一例について説明する。
図12(a)は、杭基礎20において、建物1の耐力壁に接続される柱直下に配置される(優先順位1に設定される)移動可能杭41が、耐力不足である例を示している。なお、図例では、耐力が不足する杭40を、中塗り(黒塗り)の円で示している。また、図例では、上記移動可能杭41の左方に隣り合う杭40についても耐力が不足している例を示している。また、図例において、加力方向は右方向としている。
この場合、制御部102は、優先順位1杭移動ルール1に基づき、図12(b)に示すように、耐力が不足する移動可能杭41を、右方に1P移動させる(ステップS31)。図12(b)に示した例では、上記移動可能杭41の移動により、当該移動可能杭41及び左方に隣り合う杭40の耐力不足は解消している(ステップS32:YES)。
ステップS33において、制御部102は、優先順位2に設定された移動可能杭41又は、上記優先順位1杭移動ルールに基づいた移動によっては耐力不足が解消されなかった移動可能杭41を移動させる。
ここで、ステップS33においては、上記移動可能杭41を移動させるにあたって所定のルール(優先順位2杭移動ルール)が定められている。具体的には、上記移動可能杭41を移動させる場合、まず、上記移動可能杭41が移動可能な方向であって、当該移動可能杭41と隣り合う杭40のうち、杭間距離が最も大きい杭40に対して近づける方向に、移動可能杭41を1P移動させる(優先順位2杭移動ルール1(例えば、図12(c)、(d)参照))。この場合、上記移動によって、上記移動可能杭41が接続する基礎梁30の耐力が不足するか、新たに耐力が不足する杭40が発生した場合には、上記移動させた移動可能杭41を移動させる前の状態に戻す(優先順位2杭移動ルール2(例えば、図12(d)、(e)参照))。
また、優先順位2杭移動ルールにおいては、次いで、上記移動可能杭41が移動可能な方向であって、杭間距離が最も大きい杭40に対して近づける方向に、移動可能杭41を0.5P移動させる(優先順位2杭移動ルール3(例えば、図12(e)、(f)参照))。この場合、上記移動によって、上記杭40が接続する基礎梁30の耐力が不足するか、新たに耐力が不足する杭40が発生した場合には、上記移動させた杭40を移動させる前の状態に戻す(優先順位2杭移動ルール4)。
ここで、上記優先順位2杭移動ルールにおいても、上記優先順位1杭移動ルールと同様、耐力が不足する杭40を、まず1P移動させ(優先順位2杭移動ルール1)、次いで0.5P移動させる(優先順位2杭移動ルール3)ことで、基礎梁30の耐力不足の解消に優先させて、杭40の耐力不足を、解消することができる。
制御部102は、ステップS33の処理が終了すれば、次にステップS34の処理へ移行する。
ステップS34において、制御部102は、上記耐力が不足していた杭40について、耐力を算出すると共に、上記杭40の耐力不足が解消しているか否かを判断する。制御部102は、上記杭40の耐力不足が解消していると判断した場合(ステップS34:YES)には、杭耐力不足解消処理を終了する。一方、制御部102は、上記杭40の耐力不足が解消していないと判断した場合(ステップS34:NO)には、ステップS35の処理へ移行する。
以下では、図12を参照して、優先順位2杭移動ルールにおける移動可能杭41の移動(ステップS33~ステップS34)の一例について説明する。
図12(c)は、杭基礎20において、建物1の柱直下に配置される(優先順位2に設定される)移動可能杭41が、耐力不足である例を示している。
この場合、制御部102は、優先順位2杭移動ルール1に基づき、図12(d)に示すように、耐力が不足する移動可能杭41を、杭間距離が最も大きい杭40に対して近づける方向に、1P移動させる(ステップS33)。図例では、耐力が不足する移動可能杭41と隣り合う4つの杭40との杭間距離のうち、上方に隣り合う杭40との杭間距離と、下方に隣り合う杭40との杭間距離と、が同じ距離であると共に最も杭間距離が大きい例を示している。本実施形態では、座標が小さい、下方に隣り合う杭40に対して近づける方向に、移動可能杭41を1P移動させた例を示している。
この状態では、図12(d)に示すように、上記移動可能杭41の右方に位置する杭40の耐力が不足している。すなわち、新たに耐力が不足する杭40が発生している。この場合、制御部102は、優先順位2杭移動ルール2に基づき、図12(e)に示すように、上記移動可能杭41を移動させる前の位置に戻す。
次いで、制御部102は、優先順位2杭移動ルール3に基づき、図12(f)に示すように、耐力が不足する移動可能杭41を、下方に隣り合う杭40(杭間距離が最も大きい杭40)に対して近づける方向に、0.5P移動させる。図12(f)に示した例では、上記移動可能杭41の移動により、当該移動可能杭41の耐力不足は解消している(ステップS34:YES)。
ステップS35において、制御部102は、優先順位3に設定された杭40と隣り合う移動可能杭41又は、上記優先順位2杭移動ルールに基づいた移動によっては耐力不足が解消されなかった杭40と隣り合う移動可能杭41を移動させる。
ここで、ステップS35においては、移動可能杭41を移動させるにあたって所定のルール(優先順位3杭移動ルール)が定められている。具体的には、まず、耐力が不足する杭40と隣り合う杭40のうち杭間距離が最も大きい杭40であって、移動可能な杭41(移動可能杭41)を、上記耐力が不足する杭40に近づける方向に0.5P移動させる(優先順位3杭移動ルール1(例えば、図13(a)、(b)参照))。この場合、上記移動によっても上記杭40の耐力が不足する場合には、上記移動可能杭41を、更に0.5P移動させる。この場合、上記移動によって、上記杭40が接続する基礎梁30の耐力が不足するか、新たに耐力が不足する杭40が発生した場合には、上記移動可能杭41を、1つ(0.5P)移動する前の状態に戻すと共に、当該移動可能杭41を、移動不可杭42とする(優先順位3杭移動ルール2(例えば、図13(c)参照))。
また、優先順位3杭移動ルールにおいては、次いで、上述した優先順位3杭移動ルール1及び優先順位3杭移動ルール2を繰り返し行う(優先順位3杭移動ルール3)。この場合、上記耐力が不足する杭40と隣り合う全ての移動可能杭41が、移動不可杭42となった場合であって、上記耐力が不足する杭40の耐力不足が解消されない場合は、当該ステップS35において行った杭40の移動を元に戻す(優先順位3杭移動ルール4)。
制御部102は、ステップS35の処理が終了すれば、次にステップS36の処理へ移行する。
ステップS36において、制御部102は、上記耐力が不足していた杭40について、耐力を算出すると共に、上記杭40の耐力不足が解消しているか否かを判断する。制御部102は、上記杭40の耐力不足が解消していると判断した場合(ステップS36:YES)には、杭耐力不足解消処理を終了する。一方、制御部102は、上記杭40の耐力不足が解消していないと判断した場合(ステップS36:NO)には、ステップS37の処理へ移行する。
以下では、図13を参照して、優先順位3杭移動ルールにおける杭40の移動(ステップS35~ステップS36)の一例について説明する。
図13(a)は、杭基礎20において、優先順位3に設定される杭40が、耐力不足である例を示している。また、図例では、上記耐力が不足する杭40と隣り合う3つのうち、下方及び右方の杭40が移動可能杭41である例を示している。
この場合、制御部102は、優先順位3杭移動ルール1に基づき、図13(b)に示すように、耐力が不足する杭40と隣り合う移動可能杭41のうち杭間距離が最も大きい、右方に隣り合う移動可能杭41を、左方に0.5P移動させる(ステップS35)。
この状態では、図13(b)に示すように、上記移動可能杭41の右方に位置する杭40の耐力が不足している。すなわち、新たに耐力が不足する杭40が発生している。この場合、制御部102は、優先順位3杭移動ルール2に基づき、図3(c)に示すように、上記移動可能杭41を1つ(0.5P)移動する前の状態に戻すと共に、当該移動可能杭41を、移動不可杭42とする。
次いで、制御部102は、優先順位3杭移動ルール3に基づき、図13(d)に示すように、上述した優先順位3杭移動ルール1及び優先順位3杭移動ルール2を繰り返し行う。すなわち、耐力が不足する杭40と隣り合う移動可能杭41のうち杭間距離が最も大きい、下方に隣り合う移動可能杭41を、上方に0.5P移動させる。なお、図例では、耐力が不足する杭40に対して上方に隣り合う移動可能杭41との杭間距離と、下方に隣り合う移動可能杭41との杭間距離と、が同じ距離であるが、本実施形態では、座標が小さい、下方に隣り合う移動可能杭41を移動させた例を示している。図13(d)に示した例では、上記移動可能杭41の移動により、耐力が不足する杭40の耐力不足は解消している(ステップS36:YES)。
ステップS37において、制御部102は、上記ステップS35の処理によって耐力不足を解消できなかった杭40の耐力不足を解消するために、杭40を追加する。
ここで、杭耐力不足解消処理においては、杭40を追加するにあたって所定のルール(第2杭追加ルール)が定められている。具体的には、杭耐力不足解消処理において杭40を追加する場合、まず、耐力が不足する杭40に対して隣り合う杭40であって、上記耐力が不足する杭40との杭間距離が最も大きい杭40を対象とし、当該対象とした杭40から、0.5P離れた位置であって、上記耐力が不足する杭40に近接する位置に、杭40を追加する(第2杭追加ルール1(例えば、図14(a)、(b)参照))。
上記第2杭追加ルール1に基づいた杭40の追加によって、エラーが発生した場合には、上記杭40の追加を取りやめると共に、上記対象とした杭40から、1P離れた位置に、杭40を追加する(第2杭追加ルール2(例えば、図14(b)、(c)参照))。上記エラーの一例としては、杭配置不可能点や杭配置注意点等、配置することが好ましくない位置に杭40を配置したことが挙げられる。
上記第2杭追加ルール2に基づいた杭40の追加によって、エラーが発生した場合には、上記杭40の追加を取りやめる(第2杭追加ルール3(例えば、図14(d)参照))。この場合、第2杭追加ルール1において、上記耐力が不足する杭40との杭間距離が最も大きいと判断した杭40の次に、上記耐力が不足する杭40との杭間距離が大きい杭40を対象として、上記第2杭追加ルール1~3の処理を行う(第2杭追加ルール4(例えば、図14(d)、(e)参照))。この場合でも、上記耐力の不足する杭40の耐力不足が解消されない場合は、上記第2杭追加ルール1~4の処理を繰り返し行う(第2杭追加ルール5)。
制御部102は、ステップS37の処理が終了すれば、次にステップS38の処理へ移行する。
ステップS38において、制御部102は、上記耐力が不足していた杭40について、耐力を算出すると共に、上記杭40の耐力不足が解消しているか否かを判断する。制御部102は、上記杭40の耐力不足が解消していると判断した場合(ステップS38:YES)には、杭耐力不足解消処理を終了する。一方、制御部102は、上記杭40の耐力不足が解消していないと判断した場合(ステップS38:NO)には、ステップS39の処理へ移行する。
以下では、図14を参照して、第2杭追加ルールにおける杭40の追加(ステップS37~ステップS38)の一例について説明する。
図14(a)は、杭基礎20において、耐力不足である杭40及び当該杭40と隣り合う3つの杭40を示している。
この場合、制御部102は、第2杭追加ルール1に基づき、図14(b)に示すように、耐力が不足する杭40に対して隣り合う杭40のうち、上記耐力が不足する杭40との杭間距離が最も大きい、右方に位置する杭40を対象とし、当該対象とした杭40から、左方に0.5P離れた位置に杭40を追加する(ステップS37)。
この状態では、図14(b)に示すように、上記杭40を追加したことでエラーが発生している。この場合、制御部102は、第2杭追加ルール2に基づき、図14(c)に示すように、上記杭40の追加を取りやめると共に、上記対象とした杭40から、左方に1P離れた位置に杭40を追加する。
この状態では、図14(c)に示すように、上記杭40を追加したことでエラーが発生している。この場合、制御部102は、第2杭追加ルール3に基づき、図14(d)に示すように、上記杭40の追加を取りやめる。
次いで、制御部102は、第2杭追加ルール4に基づき、図14(e)に示すように、上記耐力が不足する杭40に対して、当該耐力が不足する杭40の右方に位置する杭40の次に、杭間距離が大きい、下方に位置する杭40を対象とし、当該対象とした杭40から、上方に0.5P離れた位置に杭40を追加する(第2杭追加ルール1)。なお、図例では、上記下方に位置する杭40との杭間距離は、上記耐力が不足する杭40に対して上方に位置する杭40との杭間距離と同じ距離であるが、本実施形態では、座標の小さい、下方に位置する杭40を対象としている。
この状態では、図14(e)に示すように、上記杭40を追加したことでエラーが発生している。この場合、制御部102は、図14(f)に示すように、上記杭40の追加を取りやめると共に、上記対象とした杭40から、上方に1P離れた位置に杭40を追加する(第2杭追加ルール2)。図14(f)に示した例では、上記移動可能杭41の移動により、耐力が不足する杭40の耐力不足は解消している(ステップS38:YES)。
ステップS39において、制御部102は、エラーを出力する。すなわち、この場合は、杭基礎20において杭40の移動及び追加によっては、杭40の耐力不足を解消できないことを意味する。従って、この場合、制御部102は、上記杭40の耐力不足を解消するには、杭40の種類や工法、杭径の変更等を行うことが必要であるということをエラーの出力によって報知する。本実施形態では、制御部102は、表示部103にエラーを表示させる。
制御部102は、上記ステップS39が終了すれば、杭耐力不足解消処理を終了させる。
制御部102は、図4に示すように、上述した杭耐力不足解消処理(ステップS16)を行った後、杭削除処理(ステップS17)を行う。杭削除処理は、上述した各処理(基礎梁耐力不足解消処理及び杭耐力不足解消処理等)を行ったことで、基礎梁30及び杭40の耐力不足を解消した杭基礎20について、削除可能な杭40を削除する処理である。ここで、削除可能な杭40とは、削除したとしても、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生しない杭40である。
ここで、杭削除処理においては、杭40を削除するにあたり、所定のルール(杭削除ルール)が定められている。具体的には、杭基礎20において、T字又は十字に交差する基礎梁30の交点に配置された杭40であって、当該杭40の両側に配置された杭40が、上記交点に配置された杭40と1P以内の位置に配置されている場合、上記交点に配置された杭40を削除する(杭削除ルール1(例えば、図15(a)、(b)参照))。この場合、上記杭40を削除したことで、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生する場合には、上記削除を取り消す。一方、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生しなければ、制御部102は、上記削除を取り消すことなく、他の杭40に対して杭削除処理を継続して行うか、杭削除処理を終了する。
以下では、図15(a)~(b)を参照して、杭削除ルール1における杭40の削除の一例について説明する。
図15(a)は、T字に交差する基礎梁30の交点に、二重丸で示す杭40が配置された例を示している。上記杭40の上方において隣り合う杭40は、上記交点に配置された杭40に対して1P離れた距離に位置している。また、上記杭40の下方において隣り合う杭40は、上記交点に配置された杭40に対して0.5P離れた距離に位置している。すなわち、上記交点に配置された杭40に隣り合う杭40は、いずれも、上記交点に配置された杭40に対して1P以内の位置に配置されている。
この場合、制御部102は、杭削除ルール1に従い、図15(b)に示すように、上記交点に配置された杭40を削除する。図15(b)に示した例では、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生していないので、制御部102は、上記削除を取り消すことなく、他の杭40に対して杭削除処理を継続して行うか、杭削除処理を終了する。
また、建物1において、内部柱の直下に位置する杭40であって、当該杭40の両側に配置された杭40が、上記交点に配置された杭40と1P以内の位置に配置されている場合、上記交点に配置された杭40を削除する(杭削除ルール2)。この場合、上記杭40を削除したことで、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生する場合には、上記削除を取り消す。一方、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生しなければ、制御部102は、上記削除を取り消すことなく、他の杭40に対して杭削除処理を継続して行うか、杭削除処理を終了する。
また、杭基礎20に配置された杭40のうち、移動可能杭41について削除する(杭削除ルール3)。この場合、上記杭40を削除したことで、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生する場合には、上記削除を取り消す。一方、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生しなければ、制御部102は、上記削除を取り消すことなく、他の杭40に対して杭削除処理を継続して行うか、杭削除処理を終了する。
制御部102は、上記杭削除ルール1~3に基づいて、上記ルールの条件を満たす全ての杭40について杭削除処理を行えば、当該杭削除処理を終了する。
制御部102は、図4に示すように、上述した杭削除処理(ステップS17)を行った後、杭配置調整処理(ステップS18)を行う。杭配置調整処理は、上述した各処理(基礎梁耐力不足解消処理及び杭耐力不足解消処理等)を行ったことで、基礎梁30及び杭40の耐力不足を解消した杭基礎20について、基礎梁30に対する杭40の配置の調整を行う処理である。
ここで、杭配置調整処理においては、杭40の配置を調整するにあたり、所定のルール(杭配置調整ルール)が定められている。具体的には、基礎梁30の長手方向両端における他の基礎梁との交点に、それぞれ杭40が配置されている場合、上記交点間に配置された杭40の位置を、上記各交点に配置された杭40に対してそれぞれ均等間隔となるように(上記交点間の中央位置となるように)調整する(例えば、図15(c)、(d)参照)。上記杭配置調整ルールにおいて、上記中央位置が、グリッドの交点上に位置しない場合は、上記中央位置の近傍であって、座標の小さい方のグリッドの交点に、杭40の配置を調整する。
上記杭配置調整ルールに基づいて杭40の配置を調整したことで、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生する場合には、上記配置調整を取り消す。一方、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生しなければ、制御部102は、上記配置調整を取り消すことなく、他の杭40に対して杭配置調整処理を継続して行うか、杭配置調整処理を終了する。
以下では、図15(c)~(d)を参照して、杭配置調整ルールにおける杭40の配置調整の一例について説明する。
図15(c)は、基礎梁30の長手方向(左右方向)両端における他の基礎梁との交点に、それぞれ杭40が配置され、上記交点に配置された杭40の間に配置された杭40が、左方よりに位置している例を示している。図例では、上記交点間に配置された杭40は、左方の交点に配置された杭40に対して1.5Pの距離に位置し、右方の交点に配置された杭40に対して2.5Pの距離に位置している。
この場合、制御部102は、杭配置調整ルールに従い、図15(d)に示すように、上記交点間に配置された杭40の位置を、上記各交点に配置された杭40に対してそれぞれ均等間隔(2P間隔)となるように調整する。図15(d)に示した例では、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生していないので、制御部102は、上記削除を取り消すことなく、他の杭40に対して杭配置調整処理を継続して行うか、杭配置調整処理を終了する。
制御部102は、上記杭配置調整ルールに基づいて、上記ルールの条件を満たす全ての杭40について杭配置調整処理を行えば、当該杭配置調整処理を終了する。
制御部102は、図4に示すように、上述した杭配置調整処理(ステップS18)を行った後、杭径縮小処理(ステップS19)を行う。杭径縮小処理は、上述した各処理(基礎梁耐力不足解消処理及び杭耐力不足解消処理等)を行ったことで、基礎梁30及び杭40の耐力不足を解消した杭基礎20について、基礎梁30に対する杭40の杭径を、可能な限り縮小する処理である。
杭径縮小処理においては、杭基礎20における全ての杭40について、順番に杭径を1段階縮小する処理を行う。上記杭40の杭径は、杭40の種類や工法ごとにそれぞれ設定されている。例えば、杭40が柱状改良杭であれば、杭径は、600mmや500mmというように段階的に設定される。また、例えば、杭40が鋼管杭であれば、杭径は、139.8mmや114.3mm、101.6mm、89.1mmというように段階的に設定される。
上記杭径縮小処理により、杭40の杭径を縮小したことで、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生する場合には、上記杭径縮小処理を取り消す。一方、基礎梁30や杭40の耐力の不足が発生しなければ、制御部102は、上記杭径縮小処理を取り消すことなく、他の杭40に対して杭径縮小処理を継続して行う。また、制御部102は、杭径を1段階縮小した杭40について、杭径縮小処理を繰り返し行い、更に杭径を縮小可能な杭40について杭径を縮小する。
制御部102は、杭径を縮小可能な杭40の全てについて杭径縮小処理を行えば、杭径縮小処理を終了する。これにより、杭基礎自動設定処理が終了する。なお、上記杭基礎自動設定処理に加えて、設計者は、入力部104を介して、適宜、杭基礎20の設計を調整してもよい。例えば、適宜、杭40の杭長や杭径、配置を変更してもよく、杭40の追加をしてもよい。
上述した杭基礎最適化処理において、本実施形態では、杭基礎20における杭40の仕様を変更することで、基礎梁30の耐力不足を解消した後、杭基礎20における杭40の仕様を変更することで、杭40の耐力不足を解消している。すなわち、基礎梁30の仕様については、杭基礎最適化処理を行う前の段階で決定し、杭40の仕様の変更のみによって、杭基礎最適化処理(特に、基礎梁耐力不足解消処理及び杭耐力不足解消処理)を行っている。これにより、当該杭基礎最適化処理の内容の単純化を図ることができる。
また、本実施形態では、杭基礎20の図面データについて、基礎梁30の仕様(断面形状や配筋)を変更することなく、杭40の仕様の変更のみによって、杭基礎最適化処理(特に、基礎梁耐力不足解消処理及び杭耐力不足解消処理)を行うことができる。これにより、基礎梁30の仕様変更によるコスト(鉄筋の本数やコンクリートの量のコスト)の増大を抑制することができる。
また、本実施形態では、杭40の移動のみによって、基礎梁30の耐力不足の解消及び杭40の耐力不足の解消を図ることができた場合には、基礎梁30の仕様変更によるコストだけでなく、杭40の仕様変更によるコスト(杭40の追加や杭径の拡大によるコスト)の増大を抑制することができる。
また、本実施形態では、杭基礎最適化処理において、杭削除処理、杭配置調整処理及び杭径縮小処理を行う構成としている。これにより、基礎梁30及び杭40の耐力不足を解消した杭基礎20について、杭40の本数の削減や杭径の縮小を図ることで、杭40についてコストダウンを図ることや、杭40の配置のバランスを整えることができる。
以上のように、本実施形態に係る杭基礎20の設計システム100は、
建物1の杭基礎20における基礎梁30の仕様及び杭40の仕様を決定する杭基礎20の設計システムであって、
前記杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記杭40の仕様又は前記基礎梁30の仕様を変更することで、前記杭基礎20において要求される前記基礎梁30の耐力を満足させる処理(基礎梁耐力不足解消処理)と、
前記設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記杭40の仕様を変更することで、前記杭基礎20において要求される前記杭40の耐力を満足させる処理(杭耐力不足解消処理)と、
を含む杭基礎最適化処理を実行する制御手段(制御部102)を具備し、
前記制御手段(制御部102)は、
前記杭基礎最適化処理において、前記基礎梁30の耐力を満足させる処理(基礎梁耐力不足解消処理)と、前記杭40の耐力を満足させる処理(杭耐力不足解消処理)と、を別々に行うものである。
このような構成により、杭40の仕様及び基礎梁30の仕様を変更する最適化処理の内容の単純化を図ることができる。すなわち、杭基礎最適化処理における基礎梁耐力不足解消処理と、杭耐力不足解消処理と、別々に行う構成としているので、杭基礎20における基礎梁30の仕様及び杭40の仕様のうちの一方を決定した後、他方の仕様を変更することができる。これにより、杭基礎最適化処理の内容の単純化を図ることができる。
また、杭基礎20の設計システム100において、
前記制御手段(制御部102)は、
前記杭基礎最適化処理を行う前に、前記基礎梁30に対して前記杭40を配置した前記杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)を得る処理(杭自動配置処理)を行うものである。
このような構成により、杭基礎最適化処理の対象となる杭基礎20の図面データを、自動的に得ることができる。
また、杭基礎20の設計システム100において、
前記制御手段(制御部102)は、
前記杭基礎最適化処理において、前記基礎梁30の耐力を満足させる処理(基礎梁耐力不足解消処理)及び前記杭40の耐力を満足させる処理(杭耐力不足解消処理)を行った後、前記杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記基礎梁の耐力及び前記杭の耐力を満足させる範囲で、前記杭40を削除する処理(杭削除処理)を行うものである。
このような構成により、基礎梁30の耐力不足及び杭40の耐力不足を解消した状態の杭基礎20に対して、基礎梁30及び杭40に要求される耐力を満足させる範囲で、自動的に、杭40の本数を削減することによるコストダウンを図ることができる。
また、杭基礎20の設計システム100において、
前記制御手段(制御部102)は、
前記杭基礎最適化処理において、前記基礎梁30の耐力を満足させる処理(基礎梁耐力不足解消処理)及び前記杭40の耐力を満足させる処理(杭耐力不足解消処理)を行った後、前記杭基礎の設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記基礎梁30の耐力及び前記杭40の耐力を満足させる範囲で、前記杭40の配置を調整する処理(杭配置調整処理)を行うものである。
このような構成により、基礎梁30の耐力不足及び杭40の耐力不足を解消した状態の杭基礎20に対して、基礎梁30及び杭40に要求される耐力を満足させる範囲で、自動的に杭40をバランス良く配置することができる。
また、杭基礎20の設計システム100において、
前記制御手段(制御部102)は、
前記杭基礎最適化処理において、前記基礎梁30の耐力を満足させる処理(基礎梁耐力不足解消処理)及び前記杭40の耐力を満足させる処理(杭耐力不足解消処理)を行った後、前記杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記基礎梁30の耐力及び前記杭40の耐力を満足させる範囲で、前記杭40の杭径を縮小する処理(杭径縮小処理)を行うものである。
このような構成により、基礎梁30の耐力不足及び杭40の耐力不足を解消した状態の杭基礎20に対して、基礎梁30及び杭40に要求される耐力を満足させる範囲で、自動的に、杭40の杭径を縮小することによるコストダウンを図ることができる。
また、杭基礎20の設計システム100において、
前記制御手段(制御部102)は、
前記杭基礎最適化処理において、前記杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記杭40の仕様を変更することで、前記基礎梁30の耐力を満足させる処理(基礎梁耐力不足解消処理)を行った後、
前記杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記杭40の仕様を変更することで、前記杭40の耐力を満足させる処理(杭耐力不足解消処理)を行うものである。
このような構成により、杭基礎20の図面データにおける基礎梁30の仕様を決定した後、杭40の仕様を変更することで、基礎梁30の耐力不足の解消及び杭40の耐力不足の解消を図ることができる。すなわち、杭40の仕様を変更する前の段階で、杭基礎20の図面データにおける基礎梁30の仕様を決定し、当該基礎梁30の仕様を変更しないで、杭40の仕様変更のみによって、基礎梁30の耐力不足の解消及び杭40の耐力不足の解消を図ることができる。これにより、基礎梁30の仕様変更によるコスト(鉄筋の本数やコンクリートの量のコスト)の増大を抑制することができる。
また、杭基礎20の設計システム100において、
前記杭40の仕様の変更は、前記杭40の前記基礎梁30に対する移動及び前記杭40の追加の一方又は両方であるものである。
このような構成により、基礎梁30の仕様を変更しないで、基礎梁30に対する杭40の移動や杭40の追加を行うことで、基礎梁30の耐力不足の解消及び杭40の耐力不足の解消を図ることができる。また、例えば、杭40の移動のみによって、基礎梁30の耐力不足の解消及び杭40の耐力不足の解消を図ることができた場合には、基礎梁30の仕様変更によるコストだけでなく、杭40の仕様変更によるコスト(杭40の追加や杭径の拡大によるコスト)の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態における杭基礎20の図面データは、本発明における杭基礎20の設計情報の実施の一形態である。
また、本実施形態における制御部102は、本発明における制御手段の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、基礎梁耐力不足解消処理において、杭40の仕様を変更することで、基礎梁30の耐力不足を解消する構成としているが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、基礎梁耐力不足解消処理において、基礎梁30の仕様を変更することで、基礎梁30の耐力不足を解消する構成としてもよい。
また、例えば、本実施形態においては、杭基礎最適化処理において、基礎梁耐力不足解消処理の後、杭耐力不足解消処理を行う構成としているが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図16に示す第二実施形態のように、杭基礎最適化処理において、杭耐力不足解消処理の後、基礎梁耐力不足解消処理を行う構成とすることも可能である。
第二実施形態において、杭基礎自動設計処理における杭耐力不足解消処理及び基礎梁耐力不足解消処理以外の処理は、上記第一実施形態において説明した図4に示す処理と同様である。以下では、本実施形態に係る杭耐力不足解消処理及び基礎梁耐力不足解消処理について説明する。
図16に示すように、制御部102は、移動可能距離取得処理(ステップS14)が終了すれば、杭耐力不足解消処理(ステップS15A)を行う。本実施形態では、杭耐力不足解消処理の対象となる図面データは、杭自動配置処理が行われた杭基礎20の図面データである。制御部102は、上記図面データに対して、杭40の仕様を変更することで、杭40の耐力不足を解消する。なお、杭耐力不足解消処理の内容については、上記第一実施形態で説明した内容と同様である。すなわち、上記第一実施形態で説明したように、杭基礎20における杭40の仕様を変更することで、杭40の耐力不足を解消する。
制御部102は、杭耐力不足解消処理(ステップS15A)が終了すれば、上記図面データに対して、基礎梁耐力不足解消処理(ステップS16A)を行う。本実施形態では、基礎梁耐力不足解消処理において、杭基礎20における基礎梁30の仕様(基礎梁本体の断面形状や配筋)を変更することで、基礎梁30の耐力不足を解消する。
基礎梁耐力不足解消処理においては、制御部102は、所定のフローに基づいて、耐力が不足する基礎梁30の仕様を変更することが可能である。
例えば、制御部102は、耐力が不足する基礎梁30の仕様変更として、段階的に配筋量を増やすような処理を行うことが可能である。また、制御部102は、耐力が不足する基礎梁30の仕様変更として、段階的に基礎梁30(基礎梁本体)の幅寸法を大きくするような処理を行うことが可能である。
上述のように、基礎梁30の仕様変更した場合、制御部102は、上記仕様変更した基礎梁30について耐力を算出すると共に、上記基礎梁30の耐力不足が解消しているか否かを判断するような処理を行うことが可能である。この場合、制御部102は、上記基礎梁30の耐力不足が解消されていないと判断した場合、更に、基礎梁30の仕様を変更する処理を行うようにしてもよい。
本実施形態においては、基礎梁耐力不足解消処理を行う前の段階で、杭基礎20の図面データにおける杭40の仕様を決定し、当該杭40の仕様を変更しないで、基礎梁30の仕様変更のみによって、基礎梁30の耐力不足の解消を図ることができる。これにより、杭40の追加や杭径の拡大によるコストの増大を抑制することができる。
また、杭40の本数の増加を抑制することで、敷地(表層地盤G1及び支持地盤G2)に対する杭40の設置(杭工事)に伴う作業量の増大を抑制することができる。これにより、杭40の設置(杭工事)に伴う工期の短縮を図ることができる。
以上のように、本実施形態に係る杭基礎20の設計システムは、
前記制御手段(制御部102)は、
前記杭基礎最適化処理において、前記杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記杭40の仕様を変更することで、前記杭40の耐力を満足させる処理(基礎梁耐力不足解消処理)を行った後、
前記杭基礎20の設計情報(杭基礎20の図面データ)について、前記基礎梁30の仕様を変更することで、前記基礎梁30の耐力を満足させる処理(杭耐力不足解消処理)を行うものである。
このような構成により、杭基礎20の図面データにおける杭40の仕様を決定した後、基礎梁30の仕様を変更することで、基礎梁30の耐力不足の解消を図ることができる。すなわち、基礎梁30の仕様を変更する前の段階で、杭基礎20の図面データにおける杭40の仕様を決定し、当該杭40の仕様を変更しないで、基礎梁30の仕様変更のみによって、基礎梁30の耐力不足の解消を図ることができる。これにより、杭40の仕様変更によるコスト(杭40の追加や杭径の拡大によるコスト)の増大を抑制することができる。
また、杭基礎20の設計システム100において、
前記基礎梁30の仕様の変更は、前記基礎梁30の断面形状の変更及び前記基礎梁30の配筋の変更の一方又は両方であるものである。
このような構成により、杭40の仕様を変更しないで、基礎梁30の断面形状の変更や配筋の変更を行うことで、基礎梁30の耐力不足の解消を図ることができる。
なお、本発明は上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記各実施形態においては、制御部102は、杭基礎自動設計処理において、杭自動配置処理、耐力算出処理を実行する構成とされ、また、杭基礎最適化処理において、移動可能杭判定処理、移動可能距離取得処理、杭削除処理、杭配置調整処理及び杭径縮小処理を実行する構成とされているが、制御部102は、上述した処理の一部又は全てを実行しない構成としてもよい。この場合は、上記各処理の一部又は全てを手動で行うようにしてもよい。