以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る放送受信装置及びテレビジョン受像機の構成について図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る放送受信装置30及びテレビジョン受像機20の機能構成を示すブロック図である。なお、図1には、アンテナ11と、増幅器12と、分配器13と、他の放送受信装置30a及び30bとが併せて示されている。
アンテナ11は、自由空間を伝播する放送信号を受信する受信器である。本実施の形態では、アンテナ11は、放送信号として約12GHz帯域の衛星デジタル放送信号を受信する。アンテナ11は、例えば、パラボラアンテナである。アンテナ11は、受信した放送信号を1GHz以上4GHz以下程度の中間周波数(Intermediate Frequency:IF)帯域のIF信号に変換する周波数変換回路を備える。アンテナ11は、当該IF信号を出力する。なお、このIF信号は、放送信号の一形態であり、本開示では、このIF信号を放送信号と呼ぶ場合がある。
増幅器12は、アンテナ11から出力された放送信号を増幅する機器であり、ブースタとも呼ばれる。増幅器12は、IF信号に変換された放送信号を増幅する。
分配器13は、入力された放送信号を複数の装置に分配する機器である。図1に示される例では、分配器13は、増幅器12から出力された放送信号をテレビジョン受像機20、放送受信装置30a及び30bに分配する。本実施の形態では、分配器13は、分配する複数の放送信号の強度がほぼ等しくなるように、入力された放送信号を分波して出力する。
放送受信装置30a及び30bは、本実施の形態に係る放送受信装置30と同様の装置である。放送受信装置30a及び30bは、例えば、テレビジョン受像機、録画機、セットトップボックスなどに備えられていてもよい。
テレビジョン受像機20は、放送信号を受信して、当該放送信号に対応する映像を表示する装置である。テレビジョン受像機20は、図1に示されるように、放送受信装置30と、放送受信装置30から出力された映像信号に対応する映像を表示する映像表示部24とを備える。映像表示部24は、例えば、液晶表示パネル、有機EL表示パネルなどの表示パネルである。本実施の形態では、テレビジョン受像機20は、放送受信装置30から出力された音声信号に対応する音声を出力する音声出力部22をさらに備える。音声出力部22は、例えば、スピーカなどである。音声出力部22は、音声信号を増幅するアンプを備えてもよい。
放送受信装置30は、振幅位相変調された放送信号を、当該放送信号を増幅する増幅器12を介して受信し、かつ、復調する装置である。放送受信装置30は、図1に示されるように、チューナ部31と、復調部40と、多重信号分離部32と、映像音声復号部33と、映像合成部34と、制御部35と、参照値記憶部36とを備える。
ここで、本実施の形態に係る放送受信装置30が受信する振幅位相変調された放送信号について図面を用いて説明する。図2は、変調方式として振幅位相変調を用いた場合の複素平面(つまり、IQ平面)における信号点配置を示す図である。図2においては、振幅位相変調の一例として16APSKを用いた場合の信号点配置が示されている。図2に示されるように、16APSKにおいては、放送信号に含まれる伝送データは、半径の異なる二つの円周上に配置される0000から1111までの16個のシンボルで構成される。複素平面において、0000から1011までのシンボルは、大きい半径R2を有する円周上に配置され、1100から1111までのシンボルは、小さい半径R1を有する円周上に配置される。
チューナ部31は、放送信号が入力されて、放送信号に含まれる一部の周波数帯を選択し、その周波数帯の放送信号に対して周波数の変換などの処理を行う回路である。チューナ部31が選択する周波数帯は、例えばユーザによって指定されたチャンネルに対応する。チューナ部31は、選択した周波数帯の放送信号を、当該周波数帯の中心周波数でベースバンド信号に変換する。チューナ部31は、さらに、出力する信号の強度を調整してもよい。
復調部40は、チューナ部31から出力された放送信号を復調することによって復号データを生成し、その復号データを多重信号分離部32に出力する回路である。また、復調部40は、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円の半径を算出し、複数の円の半径情報を制御部35に出力する。復調部40は、図1に示されるように、搬送波同期回路41と、復号回路42と、誤り訂正回路43と、算出回路44と、基準信号点記憶部45と、半径情報記憶部46とを備える。
搬送波同期回路41は、位相誤差の分散が最小となるように搬送波の周波数及び位相に対する放送信号の同期処理を行う回路である。搬送波同期回路41は、放送信号に対して同期処理を行うことで生成される同期検波信号を出力する。なお、この同期検波信号は、放送信号の一形態であり、本開示では、この同期検波信号を放送信号と呼ぶ場合がある。搬送波同期回路41は、例えば、デジタルPLL(Phase Locked Loop)回路を備える。
算出回路44は、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円の半径を算出する回路である。算出回路44は、搬送波同期回路41が出力する同期検波信号に基づいて、放送信号に含まれる各シンボルの複素平面における配置、つまり、振幅及び位相を検出する。放送信号が振幅位相変調されている場合には、放送信号に含まれるシンボルは、複素平面上の複数の円の周上に配置される。算出回路44は、これらの複数の円の半径を算出し、半径情報記憶部46に出力する。本実施の形態では、放送信号は、複素平面における各信号点の配置を示す配置信号が予め設定された順序で伝送されるパイロット信号を含み、算出回路44は、当該パイロット信号に基づいて信号点が配置される複数の円の半径を算出する。放送信号は、例えば、フレーム構造を有し、各フレームに含まれる複数のスロットの各々の先頭にパイロット信号が配置される。このようなパイロット信号は、伝送信号点配置信号とも呼ばれる。このようなパイロット信号を用いることで、各配置信号の位相及び振幅が偏移している場合にも、当該配置信号に対応するシンボルを特定できる。したがって、放送信号に大きな非線形歪みが発生している場合にも、各配置信号が配置されるべき複素平面上の位置を特定できる。上記複数の円の半径を算出する際に、一組のパイロット信号だけを用いて算出してもよいし、複数組のパイロット信号を用いてもよい。具体的には、上記複数の円の半径を、上記複数の円の各々に対応する配置信号の振幅の平均値として算出できる。
算出回路44は、さらに、信号点毎に振幅及び位相の平均値を基準信号点配置情報として算出し、基準信号点記憶部45に出力する。
基準信号点記憶部45は、算出回路44によって算出された基準信号点配置情報を記憶するメモリである。基準信号点記憶部45に記憶された基準信号点配置情報は、搬送波同期回路41において、放送信号に含まれる信号の位相、及び、振幅を調整するために使用される。また、基準信号点配置情報は、復号回路42において、放送信号の復号において使用される。
半径情報記憶部46は、算出回路44によって算出された複数の円の半径情報を記憶するメモリである。半径情報記憶部46に記憶された複数の円の半径情報は、制御部35において用いられる。なお、複数の円の半径情報は、算出回路44から制御部35に直接出力されてもよい。
復号回路42は、基準信号点記憶部45から出力された基準信号点配置情報に基づいて放送信号に含まれるシンボルを特定し、放送信号をシンボルの配列に復号する回路である。
誤り訂正回路43は、復号回路42において復号されたシンボルの配列に対して誤り訂正符号の復号を行い、復号データを出力する回路である。放送信号においては、例えば、LDPC(Low Density Parity Check)符号が採用されており、誤り訂正回路43においては、LDPC符号の復号が行われる。
多重信号分離部32は、多重化された復号データを分離する処理部である。多重信号分離部32は、復号データを番組データ、制御データなどに分離し、番組データから符号化映像信号及び符号化音声信号を抽出する。多重信号分離部32において分離された符号化映像信号及び符号化音声信号は、映像音声復号部33に出力される。
映像音声復号部33は、符号化映像信号及び符号化音声信号をそれぞれ復号する処理部である。符号化映像信号を復号することによって得られる映像信号は、映像合成部34に出力され、符号化音声信号を復号することによって得られる音声信号は放送受信装置30の外部に出力される。本実施の形態では、音声信号は、テレビジョン受像機20の音声出力部22に出力される。
制御部35は、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円に含まれる二つの円の半径の比を算出し、当該比と予め設定された参照値との比較結果に基づいて放送信号における非線形歪みの程度を示す歪み信号を出力する処理部である。本実施の形態では、制御部35は、上記比として、複数の円の半径のうち最小の半径に対する最大の半径の比を算出する。複数の円の半径のうち、最大の半径は、最も振幅が大きい信号点に対応するため、非線形歪みを最も受けやすい。一方、最小の半径は、最も振幅が小さい信号点に対応するため、非線形歪みの影響を最も受けにくい。このような二つの半径の比は、非線形歪みの発生に起因して比較的大きく変化するため、放送信号における非線形歪みの程度をより高い精度で推定できる。なお、放送信号における非線形歪みについては、後述する。
本実施の形態では、制御部35は、このように算出された比と、参照値記憶部36に記憶された参照値とを比較し、比が参照値より小さい場合に、非線形歪みの程度を示す歪み信号を出力し、参照値以上である場合に歪み信号を出力しない。これにより、制御部35は、顕著な非線形歪みが発生している場合にだけ、歪み信号を出力できる。なお、制御部35は、非線形歪みが発生していない場合にも非線形歪みが発生していないことを示す歪み信号を出力してもよい。ここで、参照値は、送信される際の放送信号に含まれるシンボルが示す二つの半径の比、つまり、放送信号において非線形歪みが発生していない理想的な場合の比に基づいて定められる値である。図2に示される16APSKを用いる場合には、アンテナ11によって受信される際の放送信号に含まれるシンボルが示す二つの半径の比(R2/R1)は、例えば、2.87である。この比として規格によって定められた値を用いてもよい。参照値は、例えば、この比より10%程度小さい値に設定される。制御部35は、二つの円の半径の比と参照値とを比較し、当該比が参照値より小さいことを検知することで、放送信号において非線形歪みが発生していることを推定できる。
歪み信号は、非線形歪みの程度を示す信号であり、例えば、制御部35で算出された比を示す信号である。なお、歪み信号は、制御部35で算出された比を示す信号に限定されない。例えば、制御部35で算出された比と、理想的な場合の比との差異を示す信号であってもよいし、歪みの程度を説明するメッセージ、イラストなどに対応する信号であってもよい。また、歪み信号には、歪みの解消方法を説明するメッセージ、イラストなどに対応する信号などが含まれてもよい。
参照値記憶部36は、制御部35において非線形歪みの発生の有無を推定するために用いられる参照値を記憶するメモリである。上述のとおり、参照値は、予め設定されており、参照値記憶部36に記憶されている。なお、参照値は、外部から変更可能であってもよい。
映像合成部34は、映像音声復号部33から出力された映像信号と、制御部35から出力された歪み信号に対応する映像信号とを合成して、新たな映像信号を生成する処理部である。例えば、歪み信号に制御部35で算出された比が含まれる場合には、映像音声復号部33から出力された映像信号が示す映像に、この比を含む文字などを重ねるように合成した映像信号が、映像合成部34において生成される。これにより、ユーザらは、歪み信号によって示される非線形歪みの程度を、映像を通じて確認できる。このような映像については、後述する。
[非線形歪み]
次に、増幅器12において発生する非線形歪みについて図面を用いて説明する。図3は、非線形歪みが生じない場合の増幅器12における入力レベルと出力レベルとの関係の一例を示すグラフである。図4は、非線形歪みが生じる場合の増幅器12における入力レベルと出力レベルとの関係の一例を示すグラフである。なお、図3及び図4には、増幅器12の入出力特性の一例として、市販されている増幅器の一般的な入出力特性が示されているに過ぎず、増幅器12の入出力特性は、図3及び図4に示される例に限定されない。また、図4においては、当該グラフが実線で示されており、線形に増幅される場合の入力レベルと出力レベルとの関係を示すグラフが破線で示されている。図5は、増幅器12において非線形歪みが発生した場合の複素平面における信号点配置を示すグラフである。
図3に示されるように、16APSKを用いた場合の放送信号を増幅器12において増幅する際に、放送信号の信号レベルが低い場合には、放送信号の振幅はほぼ線形に増幅される。ここで、増幅器12によって増幅される前の放送信号において、複素平面における大きい半径の円周上に配置される信号点の振幅がR2iで、小さい半径の円周上に配置される信号点の振幅がR1iであると仮定する。また、増幅器12によって増幅された後の放送信号において、複素平面において大きい半径の円周上に配置される信号点の振幅がR2で、小さい半径の円周上に配置される信号点の振幅がR1であると仮定する。なお、図3には、振幅R1i、R2i、R1及びR2に対応する信号レベルの位置が示されている。この場合、図3に示されるように、増幅後における振幅R2の振幅R1に対する比R2/R1は、増幅前における振幅R2iの振幅R1iに対する比R2i/R1iとほぼ等しい。
一方、図4に示されるように、放送信号の信号レベルが大きく、増幅前の振幅がR2iである場合、増幅後の振幅R2dは、線形に増幅された場合の振幅R2より小さい。なお、図4についても、図3と同様に振幅R1i、R2i、R1、R2d及びR2に対応する信号レベルの位置が示されている。図5を用いて説明すると、増幅前の振幅がR2iである信号は、非線形歪みが発生しなければ、増幅後の振幅がR2となり、図5に示される半径R2上に配置される信号点に対応する。しかしながら、非線形歪みが発生することで、この信号の増幅後の振幅がR2より小さいR2dとなり、図5に示される半径R2d上に配置される信号点に対応する。
このように、放送信号の振幅が大きい場合には、増幅器12において非線形歪みが発生し得る。例えば、図4に示される例では、増幅器12において増幅される前の放送信号の信号点の振幅が10dBm程度以上である場合に、増幅器12における非線形歪みが顕著となる。増幅器12において非線形歪みが発生する場合、増幅後における振幅R2dの振幅R1に対する比R2d/R1は、増幅前における振幅R2iの振幅R1iに対する比R2i/R1iより小さくなる。ここで、増幅前における振幅R2iの振幅R1iに対する比R2i/R1iは、規格などによって予め設定された値にほぼ等しく、一定である。このため、増幅後における振幅R2dの振幅R1に対する比R2d/R1と、当該予め設定された値とを比較することで、増幅器12において発生した非線形歪みの程度を推定できる。本実施の形態では、制御部35において、増幅前の比に基づいて定められた参照値と、増幅後の比とを比較することで、非線形歪みの発生を推定する。
[非線形歪みの推定方法]
次に、本実施の形態に係る非線形歪みの推定方法について図面を用いて説明する。図6は、本実施の形態に係る放送受信装置30の動作の流れを示すフローチャートである。
図6に示されるように、放送受信装置30は、まず、振幅位相変調され、かつ、増幅器12によって増幅された放送信号を受信する(S11)。
放送受信装置30によって受信された放送信号のうち、チューナ部31において一部の周波数帯域が選択される(S12)。また、チューナ部31において、選択された周波数帯域の放送信号に対して周波数の変換などの処理が行われる。
続いて、チューナ部31から出力された放送信号は、復調部40に入力される。復調部40に入力された放送信号は、搬送波同期回路41において同期処理が行われる(S13)。
続いて、算出回路44は、同期処理が行われた放送信号(つまり、同期検波信号)を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円の半径を算出する(S14)。算出された複数の円の半径情報は、半径情報記憶部46に記憶される。
続いて、制御部35は、半径情報記憶部46に記憶された半径情報を用いて、複数の円に含まれる二つの円の半径の比を算出し、この比と予め設定された参照値との比較結果に基づいて放送信号における非線形歪みの程度を推定する(S15)。本実施の形態では、制御部35は、上記比として、複数の円の半径のうち最小の半径に対する最大の半径の比を算出する。
続いて、制御部35は、算出した比と、参照値記憶部36に記憶された参照値とを比較する(S16)。例えば、参照値として、理想的な場合における比より10%程度低い値を用いる場合について説明する。算出した比が参照値以上である場合には(S16でNo)、制御部35は、非線形歪みが小さいと推定して、推定動作を終了する。
一方、算出した比が参照値より小さい場合には(S16でYes)、制御部35は、非線形歪みが大きいと推定して、映像合成部34に非線形歪みの程度を示す歪み信号を出力する。歪み信号が入力された映像合成部34は、映像音声復号部33から出力された映像信号と、制御部35から出力された歪み信号に対応する映像信号とを合成して、新たな映像信号を生成する(S17)。ここで、映像合成部34によって生成された映像信号に基づく映像例について図面を用いて説明する。図7~図9は、本実施の形態に係る映像合成部34によって生成された映像信号に基づく映像の例を示す模式図である。図7~図9に示されるように、映像合成部34によって生成された映像信号に基づいて、映像表示部24に映像が表示される。
例えば、制御部35において算出された比が参照値より大幅に小さい場合には、制御部35は、放送信号における非線形歪みの程度が大きいと推定し、「増幅器(ブースタ)を調整してください。信号が大きく歪んでいます。」などのメッセージに対応する歪み信号を映像合成部34に出力する。映像合成部34においては、この歪み信号に対応する映像信号と、映像音声復号部33から入力された映像信号とを合成することで、図7に示されるような映像に対応する映像信号を生成する。なお、図7に示される例では、非線形歪みが大きいため映像音声復号部33において放送信号を正しく復号できず、放送信号に対応する映像が表示されていない。このような場合には、図7に示されるようにメッセージを映像の中央に大きく表示することで、ユーザらへの注意を喚起してもよい。また、図7に示されるように、非線形歪みの程度をより詳細にユーザらに通知するために、制御部35によって算出された比(図7に示される信号半径比)が映像に表示されるように、歪み信号が生成されてもよい。さらに、理想的な場合における比である基準値が映像に表示されるように歪み信号が生成されてもよい。これにより、ユーザらが非線形歪みの程度をより正確に把握できる。
制御部35において算出された比が参照値より小さいものの、映像信号の大部分が、正常に復号できる場合にも、図7に示される例と同様に、制御部35は、「増幅器(ブースタ)を調整してください。信号が歪んでいます。」とのメッセージに対応する歪み信号を映像合成部34に出力してもよい。映像信号の大部分が、正常に復号できる場合としては、例えば、図8に示されるように、映像の一部にブロックノイズ24nが含まれる場合が考えられる。この場合、図7に示されるように、映像の中央に大きくメッセージが表示されると、視聴中のユーザが不快に感じ得るため、制御部35は、図8に示されるように、映像の端部付近に小さく表示されるメッセージに対応する歪み信号を出力してもよい。さらに、この場合にも、図7に示される例と同様に、制御部35によって算出された比、及び、基準値に対応する信号が歪み信号に含まれてもよい。
図7、図8に示されるような映像を表示することで、非線形歪みによって映像が乱れた場合に、ユーザは、映像の乱れの原因をより速やかに、かつ、より正確に推定できる。このため、増幅器12の増幅率を低下させるなどの対策を施すことによって、映像の乱れを解消できる。
また、図9に示されるように、放送信号に関する情報を示す映像に、歪み信号に対応する情報が含まれてもよい。図9に示される例では、受信されている放送信号、つまり、受信信号に関するデータを示す映像が示されている。図9に示される映像は、例えば、メニュー画面などから、ユーザが選択することで表示させることができる。図9に示される例では、制御部35によって算出された比、及び、基準値の他に、放送信号のレベルである信号レベルなどが表示されている。このような映像を表示することで、ユーザらが非線形歪みの程度を確認する必要がある場合に、非線形歪みの程度を示す情報を得られる。
以上のように、本実施の形態に係る非線形歪みの推定方法によれば、増幅器12に起因する放送信号における非線形歪みをより正確に推定できる。
[まとめ]
以上のように、本実施の形態に係る放送受信装置30は、振幅位相変調された放送信号を、当該放送信号を増幅する増幅器12を介して受信し、かつ、復調する。放送受信装置30は、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円の半径を算出する算出回路44と、複数の円に含まれる二つの円の半径の比を算出し、この比と予め設定された参照値との比較結果に基づいて放送信号における非線形歪みの程度を示す歪み信号を出力する制御部35とを備える。
このように、放送受信装置30は、非線形歪みの程度に対応する二つの半径の比を算出するため、非線形歪みの程度をより正確に推定できる。
また、放送受信装置30において、放送信号は、複素平面における各信号点の配置を示す配置信号が予め設定された順序で伝送されるパイロット信号を含み、算出回路44は、パイロット信号に基づいて複数の円の半径を算出する。
このようなパイロット信号を用いることで、パイロット信号に含まれる各配置信号の位相及び振幅が偏移している場合にも、当該配置信号に対応するシンボルを特定できる。したがって、放送信号に大きな非線形歪みが発生している場合にも、各配置信号が配置されるべき複素平面上の位置を特定できる。
また、放送受信装置30において、制御部35は、比として、複数の円の半径のうち最小の半径に対する最大の半径の比を算出する。
複数の円の半径のうち、最大の半径は、最も振幅が大きい信号点に対応するため、非線形歪みを最も受けやすい。一方、最小の半径は、最も振幅が小さい信号点に対応するため、非線形歪みの影響を最も受けにくい。このような二つの半径の比は、非線形歪みの発生に起因して比較的大きく変化するため、放送信号における非線形歪みの程度をより高い精度で推定できる。
また、放送受信装置30において、制御部35は、比が参照値より小さい場合に、非線形歪みの程度を示す歪み信号を出力し、参照値以上である場合に歪み信号を出力しない。
これにより、制御部35は、顕著な非線形歪みが発生している場合にだけ、歪み信号を出力できる。
また、放送受信装置30は、制御部35から出力される歪み信号に対応する映像信号と、放送信号を復調することによって得られる映像信号とを合成する映像合成部34をさらに備える。
これにより、ユーザらは、歪み信号によって示される非線形歪みの程度を、映像を通じて確認できる。
また、本実施の形態に係るテレビジョン受像機20は、放送受信装置30と、放送受信装置30から出力された映像信号に基づく映像を表示する映像表示部24とを備える。
このようなテレビジョン受像機20においては、上述した放送受信装置30と同様の効果が奏される。
また、本実施の形態に係る非線形歪みの推定方法は、振幅位相変調され、かつ、増幅器によって増幅された放送信号における非線形歪みの推定方法である。本推定方法は、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円の半径を算出するステップと、複数の円に含まれる二つの円の半径の比を算出し、この比と予め設定された参照値との比較結果に基づいて放送信号における非線形歪みの程度を推定するステップとを含む。
このような推定方法によれば、非線形歪みの程度に対応する二つの半径の比を算出するため、非線形歪みの程度をより正確に推定できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る放送受信装置について説明する。本実施の形態に係る放送受信装置は、主に、算出回路が復調部の外部に設けられる点において、実施の形態1に係る放送受信装置30と相違する。以下、本実施の形態に係る放送受信装置について、実施の形態1に係る放送受信装置30との相違点を中心に説明する。
本実施の形態に係る放送受信装置及びテレビジョン受像機の構成について、図10を用いて説明する。図10は、本実施の形態に係る放送受信装置130及びテレビジョン受像機120の機能構成を示すブロック図である。
テレビジョン受像機120は、図10に示されるように、放送受信装置130と、放送受信装置130から出力された映像信号に対応する映像を表示する映像表示部24とを備える。本実施の形態では、テレビジョン受像機120は、放送受信装置130から出力された音声信号に対応する音声を出力する音声出力部22をさらに備える。
放送受信装置130は、実施の形態1に係る放送受信装置30と同様に、チューナ部31と、復調部140と、多重信号分離部32と、映像音声復号部33と、映像合成部34と、制御部135と、参照値記憶部36とを備える。本実施の形態では、放送受信装置130は、復調部140の外部に配置された算出回路144をさらに備える。
復調部140は、搬送波同期回路41と、復号回路42と、誤り訂正回路43と、読込回路147と、基準信号点記憶部45と、座標記憶部148と、変調情報記憶部149とを備える。このように、本実施の形態に係る復調部140は、算出回路を有さない。
読込回路147は、搬送波同期回路41が出力する同期検波信号に基づいて、放送信号に含まれる各シンボルの複素平面における配置、つまり、振幅及び位相を検出する。放送信号が振幅位相変調されている場合には、放送信号に含まれるシンボルは、複素平面上の複数の円の周上に配置される。読込回路147は、さらに、信号点毎に振幅及び位相の平均値を基準信号点配置情報として算出し、基準信号点記憶部45に出力する。
座標記憶部148は、搬送波同期回路41が出力する同期検波信号に基づいて、放送信号に含まれる各シンボルの複素平面における配置、つまり、振幅及び位相を検出し、少なくとも一時記憶する。座標記憶部148は、さらに、記憶した各シンボルの振幅及び位相を算出回路144に出力する。
変調情報記憶部149は、放送信号の変調に関する情報である変調情報を記憶する。変調情報記憶部149は、復号回路42から、変調情報を受信し、少なくとも一時記憶する。変調情報には、放送信号の変調方式、放送信号に混在する混在信号の有無、及び、混在信号の変調方式を示す情報が含まれる。混在信号としては、例えば、同期速度向上のためのBPSK変調された信号があり得る。また、放送信号が階層変調されている場合には、振幅位相変調されている放送信号に、BPSKなどの他の変調方式で変調されている信号が混在している。変調情報記憶部149は、変調情報を示す信号を算出回路144に出力する。
算出回路144は、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円の半径を算出する回路である。本実施の形態では、算出回路144は、放送信号に含まれる各シンボルの複素平面における配置、つまり、振幅及び位相を示す信号を座標記憶部148から受信する。放送信号が振幅位相変調されている場合には、放送信号に含まれるシンボルは、複素平面上の複数の円の周上に配置される。算出回路144は、これらの複数の円の半径を算出し、制御部135に出力する。なお、算出回路144には、変調情報記憶部149から変調情報を示す信号を受信する。算出回路144は、複数の円の半径を算出する際に、当該変調情報を利用する。本実施の形態に係る算出回路144における複数の円の半径の算出方法については後述する。
算出回路144において、必要に応じて半径算出精度改善方法を用いことができる。半径算出精度改善方法については後述する。
制御部135は、実施の形態1に係る制御部35と同様に、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円に含まれる二つの円の半径の比を算出し、当該比と予め設定された参照値との比較結果に基づいて放送信号における非線形歪みの程度を示す歪み信号を出力する処理部である。本実施の形態に係る制御部135は、複数の円の半径を算出回路144から取得する点において、実施の形態1に係る制御部35と相違し、その他の点において一致する。
[半径算出方法]
次に、本実施の形態に係る放送受信装置130の算出回路144における半径算出方法について説明する。
算出回路144は、まず、変調情報記憶部149から変調情報を示す信号を受信する。ここで、放送信号が振幅位相変調されていることを検知した場合に、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円の半径を算出する。また、算出回路144は、変調情報から振幅位相変調の種類(16APSK、32APSKなど)についても検知できる。
具体的には、算出回路144は、座標記憶部148から放送信号に含まれる各シンボルの複素平面における振幅及び位相を受信する。例えば、振幅位相変調として、16APSKが用いられている場合、算出回路144が受信するシンボルの振幅及び位相について図11を用いて説明する。図11は、本実施の形態に係る算出回路144が受信するシンボルの振幅及び位相を示す図である。図11中の四角形のマークが各シンボルの振幅及び位相を示す。
図11に示されるように、各シンボルの振幅及び位相は分散している。このため、これらのシンボルの配置が示す複数の半径を例えば以下のように算出する。以下では、振幅位相変調として16APSKが用いられる場合について説明する。
まず、算出回路144は、受信したシンボルの振幅のうち、最大値Rmax及び最小値Rminを選択する。なお、複数の円の半径を算出するためには、シンボルの配置位置の個数の少なくとも2倍以上の振幅及び位相のデータを用いればよい。振幅位相変調として16APSKが用いられる場合には、32個以上のデータを用いればよい。
続いて、算出回路144は、32個以上の振幅データの中から選択された最大値Rmax及び最小値Rminを用いて、振幅閾値Rthを算出する。振幅閾値Rthは、例えば、最大値Rmax及び最小値Rminの平均値((Rmax+Rmin)/2)としてよい。
振幅閾値Rth未満の振幅は、内円上のシンボルの振幅と考えられる。したがって、算出回路144は、振幅閾値Rth未満の振幅の平均値を内円の半径R1aveとして算出する。
また、振幅閾値Rth以上の振幅は、外円上のシンボルの振幅と考えられる。したがって、算出回路144は、振幅閾値Rth以上の振幅の平均値を外円の半径R2aveとして算出する。
以上のように、振幅位相変調として16APSKが用いられる場合には、算出回路144は、二つの円の半径R1ave及びR2aveを算出して、制御部135に出力する。
次に、振幅位相変調として32APSKが用いられる場合について、図12を用いて説明する。図12は、32APSKにおけるシンボルの配置を示す図である。図12に示されるように、32APSKにおいては、シンボルは複素平面の三つの円上に配置される。
この場合も、まず、算出回路144は、受信したシンボルの振幅のうち、の最大値Rmax及び最小値Rminを選択する。なお、振幅位相変調として32APSKが用いられる場合には、64個以上のデータを用いればよい。
続いて、算出回路144は、64個以上の振幅データの中から選択された最大値Rmax及び最小値Rminを用いて、振幅閾値Rthを算出する。振幅閾値Rthは、16APSKの場合と同様に、最大値Rmax及び最小値Rminの平均値((Rmax+Rmin)/2)としてよい。続いて、算出回路144は、最小値Rminと振幅閾値Rthとの平均値((Rth+Rmin)/2)を第一閾値Rth1として算出し、最小値Rminと振幅閾値Rthとの平均値((Rth+Rmax)/2)を第二閾値Rth2として算出する。
ここで、第一閾値Rth1未満の振幅は、内円上のシンボルの振幅と考えられる。したがって、算出回路144は、第一閾値Rth1未満の振幅の平均値を内円の半径R1aveとして算出する。
また、第二閾値Rth2以上の振幅は、外円上のシンボルの振幅と考えられる。したがって、算出回路144は、第二閾値Rth2以上の振幅の平均値を外円の半径R2aveとして算出する。
以上のように、振幅位相変調として32APSKが用いられる場合には、算出回路144は、二つの円の半径R1ave及びR2aveを算出して、制御部135に出力する。
[半径算出精度改善方法]
次に、本実施の形態に係る算出回路144における半径算出精度改善方法について説明する。図11において、実線の円で囲まれた領域のデータのように、他のシンボルから離れた位置に配置されたデータが混在する場合がある。このようなデータは、放送信号が階層変調されている場合に含まれ得る。ここで階層変調とは、複数の変調方式が混在している変調方式である。また、階層変調が採用されていない場合にも、BPSKなどの変調方式の信号が同期速度向上のために常に混在している。以下、このような振幅位相変調で変調された放送信号と混在する信号であって、当該振幅位相変調と異なる変調方式で変調されている信号である混在信号について図13A及び図13Bを用いて説明する。
図13Aは、π/2シフトBPSK及びQPSKにおけるシンボルの配置を示す図である。図13Bは、8PSKにおけるシンボルの配置を示す図である。図13Aに示すようにπ/2シフトBPSK及びQPSKにおいては、I軸又はQ軸からの位相φがπ/4である四つの位置にシンボルが配置される。また、図13Bに示すように8PSKにおいては、I軸及びQ軸上の四つの位置、及び、I軸又はQ軸からの位相φがπ/4である四つの位置にそれぞれシンボルが配置される。図11において実線の円で囲まれた領域のデータは、π/2シフトBPSK又はQPSKで変調された信号のデータであると推測される。
このような混在信号が存在する場合には、算出回路144において算出される半径の精度が劣化する。そこで本実施の形態では、このような精度の劣化を抑制する方法、つまり、半径算出精度改善方法を採用する。以下、半径算出精度改善方法について、図14及び図15を用いて説明する。
図14は、混在信号としてπ/2シフトBPSK又はQPSKで変調された信号が混在する場合の半径算出精度改善方法を示す図である。図15は、混在信号として8PSKで変調された信号が混在する場合の半径算出精度改善方法を示す図である。
本実施の形態に係る半径算出精度改善方法では、混在信号を複素平面にプロットした信号点の少なくとも一部が含まれる位相範囲にある信号点配置を、複数の円のうち少なくとも一つの円の半径の算出において使用しない。本実施の形態のように、混在信号として、π/2シフトBPSK、QPSK又は8PSKで変調された信号が存在する場合には、混在信号を複素平面にプロットした信号点の少なくとも一部が含まれる位相範囲にある信号点配置を、複数の円のうち外円の半径の算出において使用しない。つまり、混在信号の信号点が含まれる位相範囲にある振幅データを外円の半径の算出において除外する。
例えば、図14及び図15に示されるように、混在信号のシンボルの配置位置の位相及びその位相から±θの位相範囲にある信号点配置を外円の半径の算出において使用しない。これにより、混在信号のデータが外円の半径の算出において使用されることを抑制できるため、半径の算出精度を改善できる。ここで、θとして、最外円に配置される振幅位相変調のシンボルの位相間隔の1/2程度の値を使用してもよい。例えば、振幅位相変調として16APSKを用いる場合には、π/6の1/2であるπ/12を用いてもよい。
本実施の形態に係る放送受信装置130では、放送信号に混在する混在信号を受信した場合には、算出回路144は、変調情報に基づいて混在信号の存在を検知する。算出回路144は、混在信号の存在を検知した場合には、上記半径算出精度改善方法を用いて半径を算出する。これにより、算出回路144は、精度よく半径を算出できる。なお、算出回路144は、混在信号の存在を検知しない場合には、上記半径算出精度改善方法を用いなくてもよい。
(他の実施の形態)
以上、本開示の放送受信装置などについて、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記各実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記各実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれてもよい。
例えば、上記実施の形態1では、放送受信装置30は、テレビジョン受像機20に備えられたが、放送受信装置30は、単体で用いられてもよいし、例えば、録画機、セットトップボックスなどの他の装置に備えられてもよい。
また、上記実施の形態1では、算出回路44は、パイロット信号を用いて複数の円の半径を算出したが、放送信号におけるパイロット信号以外の信号を用いて、複数の円の半径を算出してもよい。例えば、放送信号に対応する複数の信号点を複素平面にプロットし、プロットされた複数の信号点の分布に基づいて複数の円の半径を算出してもよい。具体的には、以下のように複数の円の半径を算出できる。複数の信号点の分布は、複数の円の近傍に集中するため、複数の円にそれぞれ対応する複数のグループに、複数の信号点をグループ分けできる。ここで、信号点の振幅の平均値をグループ毎に算出することで、上記複数の円の半径を算出できる。
また、上記実施の形態1では、振幅位相変調の方式として16APSKを用いる例を示したが、本開示において適用可能な振幅位相変調の方式は、これに限定されない。例えば、32APSKなどを用いてもよい。
また、上記実施の形態1では、放送信号を複素平面にプロットした信号点配置が示す複数の円に含まれる二つの円の半径の比として、最小の半径に対する最大の半径の比を用いたが、他の比を用いてもよい。例えば、複数の円に含まれる二つの円の半径として、最小及び最大の半径以外の半径を用いてもよい。
また、上記実施の形態1では、放送信号において非線形歪みが発生していない理想的な場合の比に基づいて定められる参照値として、この比より10%程度小さい値を用いる例を示したが、参照値は、これに限定されない。例えば、参照値として、この比の値そのものを用いてもよい。この場合、制御部35において、半径情報記憶部46に記憶されている比との差分を算出することなどによって、非線形歪みの程度を推定してもよい。
また、実施の形態2において用いた半径算出精度改善方法は、実施の形態1に係る放送受信装置30にも適用可能である。すなわち、実施の形態1に係る算出回路44において、例えば、復号回路42などから、混在信号の複素平面における位相に関する情報を取得し、実施の形態2に係る算出回路144と同様に半径を算出してもよい。
また、上記実施の形態2において、復調部140と算出回路144とが一つのIC回路で実現されてもよい。また、復調部140と算出回路144と制御部135とが一つのIC回路で実現されてもよい。