以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
[ワックスの製造方法]
本実施形態のワックスの製造方法は、10%容量留出温度が300℃以上の炭化水素油に低温流動性向上剤を添加し、5~40℃の温度条件にて第一の固形物を析出させる第一の析出工程と、第一の固形物を、固液分離方法により第一の非透過分として回収する第一の分離工程と、第一の固形物を、40℃以上のノルマルペンタン及びノルマルヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種を80容量%以上含む溶剤に溶解して分離膜に供給し、第二の透過分を回収する第二の分離工程と、第二の透過分に、2-プロパノール、2-ブタノン及びアセトンからなる群より選択される少なくとも一種を80容量%以上含む溶剤を添加し、第二の固形物を析出させる第二の析出工程と、第二の固形物を、固液分離方法により第三の非透過分として回収する第三の分離工程と、を備える。
図1は、一実施形態のワックスの製造方法を示すフロー図である。例えば同フロー図には、原料を混合して混合油(析出物を含む)を調製するミキサー10と、ミキサー10から供給される混合油から第一の透過分(ろ液)及び第一の非透過分(固形物)を分離する固液分離器11と、固液分離器11で分離された第一の非透過分から第二の透過分及び第二の非透過分を分離する分離膜(分離膜A)12と、分離膜12で分離された第二の透過分を溶剤と混合して混合油(析出物を含む)を調製するミキサー13と、ミキサー13から供給される混合油から第三の透過分及び第三の非透過分を分離する固液分離器14と、固液分離器14から供給される第三の透過分から軽質留分及び重質留分を分離する蒸発塔15と、蒸発塔15から供給される軽質留分を第四の透過分及び第四の非透過分に分離するゼオライト膜を含む分離膜(分離膜B)16と、が示されている。また、同図には、混合油を固液分離器11に供給する流路L0と、固液分離器11で分離された第一の透過分を抜き出す流路L10及び第一の非透過分を抜き出す流路L11と、分離膜12で分離された第二の透過分を抜き出す流路L20及び第二の非透過分を抜き出す流路L21と、混合油を固液分離器14に供給する流路L30と、固液分離器14で分離された第三の透過分を抜き出す流路L40及び第三の非透過分を抜き出す流路L41と、蒸発塔15で分離された軽質留分を抜き出す流路L50及び重質留分を抜き出す流路L51と、分離膜16で分離された第四の透過分を抜き出す流路L60及び第四の非透過分を抜き出す流路L61と、が示されている。
<第一の析出工程>
第一の析出工程では、炭化水素油に低温流動性向上剤を添加して混合油を調製し、5~40℃の温度条件にて第一の固形物を析出させる。炭化水素油の10%容量留出温度は300℃以上であるが、好ましくは320℃以上である。なお、炭化水素油の90容量%留出温度は、好ましくは480℃以下であり、より好ましく460℃以下である。炭化水素油の留出温度はJIS(日本工業規格)K2254(石油製品-蒸留試験方法)により求めることができる。炭化水素油は、例えば、重質軽油に由来するものであってよい。このような炭化水素油を用いることで、潤滑油基油工程で用いるワックスを安価に必要量確保することができる。なお、本実施形態において、析出工程は溶剤の不存在下で実施される。
炭化水素油はノルマルパラフィンを含有する。ここで、ノルマルパラフィンとは直鎖状飽和炭化水素をいう。炭化水素油におけるノルマルパラフィンの含有比率は、特に限定されないが、例えば5容量%以上であってよく、好ましくは7容量%以上であり、より好ましくは10容量%以上である。また、炭化水素油におけるノルマルパラフィンの含有比率は、例えば20容量%以下であってよく、好ましくは17容量%以下であり、より好ましくは15容量%以下である。ノルマルパラフィン含有量は、無極性カラムとFID(水素炎イオン化検出器)を装着し、所定の温度プログラムで作動させたガスクロマトグラフより定量した含有量であり、またガスクロマトグラフとは、試料中の各組成物の物性(沸点、極性等)を利用して各組成物を分離・定量分析する分析手法のことである。例えば、以下のようにして求めることができる。まず、ガスクロマトグラフによって試料中のノルマルパラフィン分を各炭素数ごとにそれぞれのピークとして分離測定する。得られた各炭素数のノルマルパラフィンの面積をノルマルパラフィン以外の成分を含めた全成分の、ただし溶剤に希釈や溶解して分析した場合はその溶剤のピーク面積を除いた総面積で除し、各炭素数のノルマルパラフィンの含有量を面積%で求め、この値を容量%とする。
炭化水素油において、ノルマルパラフィンの平均炭素数は、23以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましい。また、炭化水素油において、ノルマルパラフィンの平均炭素数は、28以下であることが好ましく、27以下であることがより好ましい。
炭化水素油において、炭素数20以上のノルマルパラフィンの含有比率は、特に限定されないが、例えば7容量%以上であってよく、好ましくは8容量%以上であり、より好ましくは9容量%以上である。また、炭化水素油における炭素数25以上のノルマルパラフィンの含有比率は、例えば3容量%以上であってよく、好ましくは4容量%以上であり、より好ましくは5容量%以上である。
炭化水素油は、ノルマルパラフィン以外の他の炭化水素化合物を更に含有していてよい。他の成分としては、例えば、イソパラフィン、シクロパラフィン、芳香族分等が挙げられる。
炭化水素油は、硫黄分を含有していてもよい。硫黄分の含有量は、例えば5質量%以下であってよく、好ましくは3質量%以下である。また、硫黄分の含有量は、0であってもよいが、例えば0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。硫黄分はJIS(日本工業規格)K2541-6(原油及び石油製品-硫黄分試験方法:紫外蛍光法)により求めることができる。
原料炭化水素油としては、潤滑油基油原料となるワックス分を選択的に析出させ、かつワックス析出後の炭化水素油の流動性を維持するという観点から、硫黄分2質量%以下かつ、炭素数23~27のノルマルパラフィン含有量から求めた線形回帰直線の傾き(Y)が0.03以上、0.08以下であるものを用いることが好ましい。上記線形回帰直線の傾き(Y)は、炭素数23~27のノルマルパラフィン含有量から求めたものである。ここで、ノルマルパラフィン含有量は、無極性カラムとFID(水素炎イオン化検出器)を装着し、所定の温度プログラムで作動させたガスクロマトグラフより定量した含有量であり、またガスクロマトグラフとは、試料中の各組成物の物性(沸点、極性等)を利用して各組成物を分離・定量分析する分析手法のことである。例えば、ある基材の線形回帰直線の傾きは、以下のようにして求めることができる。まず、ガスクロマトグラフによって試料中のノルマルパラフィン分を炭素数23~27それぞれのピークとして分離測定する。得られた各炭素数のノルマルパラフィンの面積をノルマルパラフィン以外の成分を含めた全成分の総面積で除し、各炭素数のノルマルパラフィンの含有量を容量%で求める。次いでこれらの各含有量をY軸に、X軸には炭素数23を4、炭素数24を3、炭素数25を2、炭素数26を1、炭素数27を0としてプロットし、これらのプロットに対する線形回帰直線を求めることにより、その基材の線形回帰直線の傾きYを特定することができる。
低温流動性向上剤としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアルキルメタクリレート、アルケニルコハク酸イミド、ポリアルキレンオキシド脂肪酸エステル、ポリアルキルアクリレート、アルキルナフタレン、オレフィンコポリマー、スチレンジエンコポリマー、デンドリマー等が挙げられる。これらのうち、油分含有量の少ないワックス分を析出させ、第一の分離工程で高収率で回収するという観点からは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアルキルメタクリレート及びポリアルキレンオキシド脂肪酸エステル(いずれも軽油用の低温流動性向上剤)が好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
炭化水素油に対する低温流動性向上剤の添加量は、ワックス回収率と炭化水素油の流動性向上という観点から、炭化水素油100重量部に対し0.01重量部以上であることが好ましく、0.025重量部以上であることがより好ましい。また、得られたワックス中のノルマルパラフィン以外の不純物濃度を下げるという観点からは、炭化水素油100重量部に対し0.06重量部以下であることが好ましく、0.05重量部以下であることがより好ましい。
炭化水素油に低温流動性向上剤を添加した後、5~40℃の温度条件にて放置することで、第一の固形物が析出する。第一の固形分を析出させる際、必要に応じミキサーやガラス棒等による撹拌を行ってもよい。なお、温度条件は、炭化水素油の流動性を維持し、析出した固形物の粒径を揃えるという観点から、15~25℃であることがより好ましい。
<第一の分離工程>
第一の析出工程により炭化水素油中に析出した第一の固形物を、固液分離方法により第一の非透過分として回収する。固液分離方法としては、0℃超の温度条件にて孔径2μm以上の固液分離器を用いたろ過、又は遠心分離により実施する方法が挙げられる。前者の場合、ろ材として布、網、充填層、多孔性物質等を用いることができ、フィルタープレス、重力ろ過、加圧ろ過、真空ろ過、遠心ろ過等により固形物を分離することができる。布を構成する素材としては合成繊維、天然繊維、ガラス繊維等を用いることができ、具体的にはポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、綿布等が挙げられる。網としては金属網を用いることができ、構成素材としては、具体的には炭素鋼、ステンレス鋼、モネルメタル、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。充填層を構成する素材としては砂、白土、活性炭等を用いることができる。多孔性物質としては焼結金属、多孔性グラファイト、無機膜(無機材料から形成される膜)等を含む分離膜を用いることができ、具体的にはステンレス鋼焼結体、シリカ膜、アルミナ膜、ゼオライト膜等を含む分離膜やガラスフィルターなどが挙げられる。孔径は光学顕微鏡など物理的測定法によって求めても良いし、保持粒子径(JIS(日本工業規格)Z8901で規定された7種粉体分散水を自然濾過した時、90%以上を保持できる粒子径)を用いても良い。後者の場合、分離板型、円筒型、デカンター型等の分離機により固形物を分離することができる。
第一の分離工程により、ワックス分の含有比率の高い第一の非透過分と、ワックス分の含有比率の低い第一の透過分と、をそれぞれ得ることができる。第一の固形物は炭素数18以上のノルマルパラフィンを含有する。第一の固形物における炭素数18以上のノルマルパラフィンの含有比率は、特に限定されないが、例えば40容量%以上であることが好ましく、60容量%以上であることがより好ましい。一方、第一の固形物における炭素数18以上のノルマルパラフィンの含有比率は、例えば80容量%以下であってもよく、60容量%以下であってもよい。
第一の透過分(炭化水素油)からは第一の固形物に含まれるワックス分(炭素数18以上のノルマルパラフィン等)が除かれているため、第一の透過分の流動点は低下する。第一の分離工程により分離される第一の透過分の流動点は、原料として用いた炭化水素油(原料炭化水素油)の流動点より5℃以上低下してもよく、10℃以上低下してもよい。流動点はJIS(日本工業規格)K2269(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)により求めることができる。
<第二の分離工程>
第二の分離工程では、第一の固形物を、40℃以上のノルマルペンタン及びノルマルヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種を80容量%以上含む溶剤に溶解して分離膜(分離膜A)に供給する。分離膜としては無機膜を含む分離膜を用いることができ、具体的にはシリカ膜、アルミナ膜、ゼオライト膜等を含む分離膜が挙げられる。分離膜として、ポリイミド膜、ポリスルホン膜等の有機膜を含む分離膜を用いることもできる。分離膜の細孔径は0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。分離膜としては、MF(精密ろ過)膜又はUF(限外ろ過)膜として用いられるものであることが好ましい。分離条件は溶剤温度の40℃以上で行うことが好ましい。
第二の分離工程により、低温流動性向上剤の含有比率が低い第二の透過分と、低温流動性向上剤の含有比率が高い第二の非透過分とが得られる。第二の非透過分には低温流動性向上剤が多く含まれるため、第二の非透過分を低温流動性向上剤として第一の析出工程に供することで、低温流動性向上剤を再利用してもよい。なお、第二の非透過分における低温流動性向上剤の含有量は、0.01重量%以上とすることができる。
<第二の析出工程>
第二の分離工程により分離された第二の透過分を好ましくは40℃以下に冷却した後に、2-プロパノール、2-ブタノン及びアセトンからなる群より選択される少なくとも一種を80容量%以上含む溶剤を添加し、第二の固形物を析出させる。冷却温度は、より好ましくは5℃~40℃、さらに好ましくは15℃~25℃とすることができる。
<第三の分離工程>
析出した第二の固形物は、第一の分離工程と同様にして、固液分離方法により第三の非透過分として回収される。すなわち、第三の分離工程により、ワックス分の含有比率の高い第三の非透過分と、ワックス分の含有比率の低い第三の透過分と、をそれぞれ得ることができる。固液分離方法の好適な態様は、第一の分離工程と同様である。第二の固形物(ワックス)は、炭素数20以上のノルマルパラフィンを40容量%以上、より好ましくは60容量%以上含むことができる。
第三の分離工程により得られる第二の固形物(ワックス)を、潤滑油基油を得る基油製造工程に供することができる。ただし、潤滑油基油製造に好適なワックスを得るべく、第二の固形物に対し、さらに洗浄工程を実施してもよい。
<洗浄工程>
第三の分離工程により得られる第二の固形物を溶剤で洗浄してもよい。洗浄工程に用いられる溶剤としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、2-プロパノール、2-ブタノン、アセトン、トルエン等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。洗浄工程後の第二の固形物(ワックス)は、炭素数20~30のノルマルパラフィンを80容量%以上、より好ましくは90容量%以上含むことができる。
<蒸留工程>
第三の分離工程で得られる第三の透過分を蒸発塔に供給してもよい。蒸留工程では、蒸留塔により、塔頂側から第二の分離工程で用いた溶剤の含有比率が高く第二の析出工程で用いた溶剤の含有比率が低い軽質留分と、塔底側から第二の析出工程で用いた溶剤の含有比率が高く第二の分離工程で用いた溶剤の含有比率が低い重質留分と、を得ることができる。重質留分中に含まれる溶剤を回収して第二の析出工程に供することで、溶剤を再利用してもよい。
<第四の分離工程>
蒸留工程により得られた軽質留分をゼオライト膜を含む分離膜(分離膜B)に供給してもよい。軽質留分は液体として分離膜に供してよく、気体として分離膜に供してもよい。分離条件は特に限定されないが、分離温度は、例えば120℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。分離温度を高くすることで透過流束が増加する傾向がある。また、分離温度は、例えば350℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましい。分離温度を低くすることで炭化水素油に含まれる成分の熱分解が抑制され、後の工程にて潤滑油基油をより高収率で得られ易くなる。分離圧力(分離膜の供給面側の圧力)は特に限定されないが、透過面側の圧力以上であることが好ましく、具体的には透過流束を増加させるため、透過面側の圧力より0.1MPa以上高いことが好ましく、また表面が液体で被覆されることを防ぐため、0.6MPaG以下が好ましい。
ゼオライト膜を含む分離膜での膜分離により、ノルマルパラフィンの含有比率の高い第四の透過分と、ノルマルパラフィンの含有比率の低い第四の非透過分と、を得ることができる。第四の透過分を溶剤として回収して第二の分離工程に供することで、溶剤を再利用してもよい。同様に、第四の非透過分に含まれる溶剤を回収して第二の析出工程に供することで、溶剤を再利用してもよい。
ゼオライト膜は、ゼオライトで構成される膜であり、ゼオライト以外の成分を含んでいてもよい。ゼオライト以外の成分としては、例えば、シリカ、アルミナ等の無機バインダー、ポリマー等の有機物、ゼオライト表面を修飾するシリル化剤などが挙げられる。
ゼオライト膜の厚さは特に限定されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。ゼオライト膜の厚さを厚くすることで、膜強度が向上し、分離の選択性がより向上する傾向がある。また、ゼオライト膜の厚さは、通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは20μm以下である。ゼオライト膜の厚さを薄くすることで、透過量が増加する傾向がある。
ゼオライト膜を構成するゼオライトの粒子径は特に限定されない。ゼオライトの粒子径は、例えば、30nm以上であってよく、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上である。ゼオライトの粒子径が大きいと、結晶粒界の存在割合が小さくなる傾向があり、結晶粒界に起因する分離係数の低下が抑制される。ゼオライトの粒子径の上限は特に限定されず、ゼオライト膜の厚さ以下であればよく、例えば100μm以下である。ゼオライトの粒子径は、ゼオライト膜と同じ厚さであってもよい。
ゼオライト膜を構成するゼオライトの種類は特に限定されないが、Si/Al比が高いゼオライトが好ましい。Si/Al比は好ましくは10以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上、とくに好ましくは200以上、さらにとくに好ましくは1000以上である。膜分離の条件によってはAlが酸点として作用し重合などの副反応やコーキングなどを発生させる恐れがあるが、Si/Al比が高い場合、この可能性を低減できる。
ゼオライトの構造は、特に限定はされない。12員環の構造を有するゼオライトとしては、FAU、BEA、MORの構造を有するゼオライトが好適に挙げられる。10員環の構造を有するゼオライトとしては、MFI、FERの構造を有するゼオライトが好適に挙げられる。8員環の構造を有するゼオライトとしては、CHA、LTAの構造を有するゼオライトが好適に挙げられる。これらのうち、10員環の構造を有するゼオライトが好ましい。
ゼオライトとしては、上述の効果がより顕著に奏される観点からは、MFI型ゼオライトが好ましい。また、MFI型ゼオライトとしては、シリカライト-1(silicalite-1、結晶骨格内にAlを含まないMFI型ゼオライト)を特に好適に用いることができる。シリカライト-1は、結晶骨格内のSi/Al比が非常に高い(不純物としてごく微量に混入するAlしか含まない)。
分離膜は、ゼオライト膜以外の構成を更に含んでいてよい。例えば、分離膜は、ゼオライト膜を支持する多孔質支持体を更に含んでいてよい。多孔質支持体は、その表面等にゼオライトを膜状に結晶化できるものであればよく、例えば、多孔質の無機材料から構成される支持体であってよい。多孔質支持体を構成する無機材料としては、例えば、シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックス焼結体、鉄、ブロンズ、ステンレス等の焼結金属、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
多孔質支持体の形状は、ゼオライト膜により炭化水素化合物を有効に分離できる形状であれば、特に制限されない。多孔質支持体の形状は、例えば、平板状、管状等であってよい。また、多孔質支持体の形状は、ハニカム状、モノリス状等であってもよい。多孔質支持体が有する細孔の形状も特に限定されず、例えば、円筒状、円柱状、角柱状等であってよい。
多孔質支持体の平均細孔径は特に制限されず、例えば0.02μm以上であってよく、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。多孔質支持体の平均細孔径を大きくすることで、十分な透過量が確保されやすくなる。また、多孔質支持体の平均細孔径は、例えば20μm以下であってよく、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。多孔質支持体の平均細孔径を小さくすることで、多孔質支持体の強度が向上するとともに、緻密なゼオライト膜を形成しやすくなる。
多孔質支持体の気孔率は特に制限されない。多孔質支持体の気孔率は、例えば20%以上60%以下であってよい。気孔率を大きくすることで、十分な透過量が確保されやすくなる。また、気孔率を小さくすることで、多孔質支持体の強度が向上するとともに、緻密なゼオライト膜を形成しやすくなる。
分離膜は、多孔質支持体上にゼオライト膜を成膜したものであってよい。ゼオライト膜の成膜方法は特に限定されず、例えば、水熱合成による成膜であってよい。
分離膜の形状は、炭化水素化合物を有効に分離できる形状であれば、特に制限されない。分離膜としては、例えば、平板状、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型等のあらゆる形状を採用できる。また、分離膜の大きさも特に限定されず、分離方法の具体的な形態に応じて適宜変更してよい。
<ワックス>
本実施形態のワックスの製造方法により、固形物としてワックスを得ることができる。得られたワックスには、原料として用いた炭化水素油に添加した低温流動性向上剤が含まれ得る。ワックスに含まれる低温流動性向上剤の含有量は、当初の添加量及び製造工程次第で変動するため特に制限されないが、5質量%未満とすることができる。当該含有量の下限は0.1質量%とすることができる。
[潤滑油基油の製造方法]
本実施形態の潤滑油基油の製造方法は、上述したワックスの製造方法により製造されたワックスから、潤滑油基油を得る基油製造工程を備える。
<基油製造工程>
基油製造工程では、例えば、スラックワックスを原料油とした潤滑油基油の製造方法と同様の方法で、ワックスから、潤滑油基油を製造することができる。
基油製造工程は、例えば、水素化異性化触媒を用いてノルマルパラフィンを異性化する異性化脱蝋を行う工程(異性化脱蝋工程)を含んでいてよい。
水素化異性化触媒としては、異性化脱蝋に用いられる公知の水素化異性化触媒を特に制限なく用いることができる。また、異性化脱蝋の条件は、例えば、公知の異性化脱蝋の条件と同様の条件であってよい。
異性化脱蝋工程では、透過分を含む原料油を異性化脱蝋する工程であってよく、原料油を後述の水素化処理工程に供して得られた被処理物を異性化脱蝋する工程であってもよい。
異性化脱蝋工程の好適な一態様を以下に示すが、異性化脱蝋工程は以下の態様に限定されるものではない。
本態様において、水素化異性化触媒は、結晶質又は非晶質のいずれの材料を含んでもよい。結晶質材料としては、例えば、アルミノシリケート(ゼオライト)又はシリコアルミノホスフェート(SAPO)を主成分とする、10又は12員環通路を有するモレキュラーシーブが挙げられる。ゼオライトの具体例としては、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-57、フェリエライト、ITQ-13、MCM-68、MCM-71等が挙げられる。また、アルミノホスフェートの例としては、ECR-42が挙げられる。モレキュラーシーブの例としては、ゼオライトベータ、MCM-68等が挙げられる。これらの中でも、ZSM-48、ZSM-22及びZSM-23から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましく、ZSM-48が特に好ましい。モレキュラーシーブは好ましくは水素形にある。水素化異性化触媒の還元は、異性化脱蝋の際にその場で起こり得るが、予め還元処理が施された水素化異性化触媒を異性化脱蝋工程に供してもよい。
また、水素化異性化触媒の非晶質材料としては、3族金属でドープされたアルミナ、フッ化物化アルミナ、シリカ-アルミナ、フッ化物化シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ等が挙げられる。
水素化異性化触媒の好ましい態様としては、二官能性、すなわち、少なくとも1つの6族金属、少なくとも1つの8~10族金属、又はそれらの混合物である金属水素添加成分が装着されたものが挙げられる。好ましい金属は、Pt、Pd又はそれらの混合物などの9~10族貴金属である。これらの金属の装着量は、触媒全量を基準として好ましくは0.1~30質量%である。触媒調製及び金属装着方法としては、例えば分解性金属塩を用いるイオン交換法及び含浸法が挙げられる。
なお、モレキュラーシーブを用いる場合、異性化脱蝋条件下での耐熱性を有するバインダー材料と複合化してもよく、又は、バインダーなし(自己結合)であってもよい。バインダー材料としては、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカとチタニア、マグネシア、トリア、ジルコニア等の他の金属酸化物との二成分の組合せ、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-マグネシア等の酸化物の三成分の組合せなどの無機酸化物が挙げられる。水素化異性化触媒中のモレキュラーシーブの量は、触媒全量を基準として、好ましくは10~100質量%、より好ましくは35~100質量%である。水素化異性化触媒は、噴霧乾燥、押出等の方法によって形成される。水素化異性化触媒は、硫化物化または非硫化物化した態様で使用することができ、硫化物化した態様が好ましい。
異性化脱蝋条件に関し、温度は好ましくは250~400℃、より好ましくは275~350℃であり、水素分圧は好ましくは791~20786kPa(100~3000psig)、より好ましくは1480~17339kPa(200~2500psig)であり、液空間速度は好ましくは0.1~10hr-1、より好ましくは0.1~5hr-1であり、水素/油比は好ましくは45~1780m3/m3(250~10000scf/B)、より好ましくは89~890m3/m3(500~5000scf/B)である。なお、上記の条件は一例であり、異性化脱蝋条件は、原料油、触媒、装置等の相違に応じて適宜選定することが好ましい。
異性化脱蝋工程では、ノルマルパラフィンが異性化された脱蝋油が得られる。本実施形態では、脱蝋油を蒸留等により所定の成分を分離して、潤滑油基油を得ることができる。また、脱蝋油を後述の水素化精製工程に供して、水素化精製工程を経た精製油から、潤滑油基油を得ることもできる。
すなわち、基油製造工程は、異性化脱蝋工程により得られた被処理物(脱蝋油)について、水素化精製触媒を用いて水素化精製を行う工程(水素化精製工程)を更に含んでいてよい。
水素化精製工程で行われる水素化精製は、残留ヘテロ原子及び色相体の除去に加えて、オレフィン及び芳香族分を水素化により飽和することを目的とする、マイルドな水素化処理の一形態ということができる。水素化精製触媒としては、水素化精製に用いられる公知の水素化精製触媒を特に制限なく用いることができる。また、水素化精製の条件は、例えば、公知の水素化精製の条件と同様の条件であってよい。水素化精製工程は、例えば、異性化脱蝋工程とカスケード式で実施してよい。
水素化精製工程の好適な一態様を以下に示すが、水素化精製工程は以下の態様に限定されるものではない。
本態様において、水素化精製触媒は、6族金属、8~10族金属又はそれらの混合物を金属酸化物担体に担持させたものであることが好ましい。好ましい金属としては、貴金属、特に白金、パラジウム及びそれらの混合物が挙げられる。金属の混合物を用いる場合、金属の量が触媒を基準にして30質量%もしくはそれ以上であるバルク金属触媒として存在してもよい。触媒の金属含有率は、非貴金属については20質量%以下、貴金属については1質量%以下が好ましい。また、金属酸化物担体としては、非晶質又は結晶質酸化物のいずれであってもよい。具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ又はチタニアのような低酸性酸化物が挙げられ、アルミナが好ましい。芳香族化合物の飽和の観点からは、多孔質担体上に比較的強い水素添加機能を有する金属が担持された水素化精製触媒を用いることが好ましい。
好ましい水素化精製触媒として、M41Sクラス又は系統の触媒に属するメソ細孔性材料を挙げることができる。M41S系統の触媒は、高いシリカ含有率を有するメソ細孔性材料であり、具体的には、MCM-41、MCM-48及びMCM-50が挙げられる。かかる水素化精製触媒は15~100Åの細孔径を有するものであり、MCM-41が特に好ましい。MCM-41は、一様なサイズの細孔の六方晶系配列を有する無機の多孔質非層化相である。MCM-41の物理構造は、ストローの開口部(細孔のセル径)が15~100Åの範囲であるストローの束のようなものである。MCM-48は、立方体対称を有し、MCM-50は、層状構造を有する。MCM-41は、メソ細孔性範囲の異なるサイズの細孔開口部で製造することができる。メソ細孔性材料は、8族、9族または10族金属の少なくとも1つである金属水素添加成分を有してもよく、金属水素添加成分としては、貴金属、特に10族貴金属が好ましく、Pt、Pdまたはそれらの混合物が最も好ましい。
水素化精製の条件に関し、温度は好ましくは150~350℃、より好ましくは180~250℃であり、全圧は好ましくは2859~20786kPa(約400~3000psig)であり、液空間速度は好ましくは0.1~5hr-1、より好ましくは0.5~3hr-1であり、水素/油比は好ましくは44.5~1780m3/m3(250~10,000scf/B)である。なお、上記の条件は一例であり、水素化精製工程における水素化精製条件は、原料、処理装置の相違等に応じて適宜選定することが好ましい。
水素化精製工程で得られた被処理物(精製油)は、必要に応じて、蒸留等により所定の成分を分離して、潤滑油基油を得ることができる。
本実施形態において、基油製造工程は、異性化脱蝋工程の前に、原料油を水素化処理する工程(水素化処理工程)を更に含んでいてよい。水素化処理は、水素化処理触媒を用いて行われ、水素化処理によって得られた被処理物は、異性化脱蝋工程に供される。
水素化処理工程は、異性化脱蝋工程に用いられる水素化異性化触媒の性能低下を避けるため、原料油から硫黄分及び窒素分を除去する工程であってよい。また、水素化処理工程は、原料油中のノルマルパラフィンの一部(例えば10質量%程度、好ましくは1~10質量%)を分解するために設けられたものであってもよい。
水素化処理触媒としては、水素化処理に用いられる公知の水素化処理触媒を特に制限なく用いることができる。また、水素化処理の条件は、例えば、公知の水素化処理の条件と同様の条件であってよい。
水素化処理工程の好適な一態様を以下に示すが、水素化処理工程は以下の態様に限定されるものではない。
水素化処理工程で用いられる水素化処理触媒としては、6族金属、8~10族金属、及びそれらの混合物を含有する触媒などが挙げられる。好ましい金属としては、ニッケル、タングステン、モリブデン、コバルト及びそれらの混合物が挙げられる。水素化処理触媒は、これらの金属を耐熱性金属酸化物担体上に担持した態様で用いることができ、通常、金属は担体上で酸化物又は硫化物として存在する。また、金属の混合物を用いる場合は、金属の量が触媒全量を基準として30質量%以上であるバルク金属触媒として存在してもよい。金属酸化物担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ又はチタニアなどの酸化物が挙げられ、中でもアルミナが好ましい。好ましいアルミナは、γ型又はβ型の多孔質アルミナである。金属の担持量は、触媒全量を基準として、0.5~35質量%の範囲であることが好ましい。また、9~10族金属と6族金属との混合物を用いる場合には、9族又は10族金属のいずれかが、触媒全量を基準として、0.1~5質量%の量で存在し、6族金属は5~30質量%の量で存在することが好ましい。金属の担持量は、原子吸収分光法、誘導結合プラズマ発光分光分析法または個々の金属について、ASTMで指定された他の方法によって測定されてもよい。
金属酸化物担体の酸性は、添加物の添加、金属酸化物担体の性質の制御(例えば、シリカ-アルミナ担体中へ組み入れられるシリカの量の制御)などによって制御することができる。添加物の例には、ハロゲン、特にフッ素、リン、ホウ素、イットリア、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類酸化物、及びマグネシアが挙げられる。ハロゲンのような助触媒は、一般に金属酸化物担体の酸性を高めるが、イットリア又はマグネシアのような弱塩基性添加物はかかる担体の酸性を弱くする傾向がある。
水素化処理条件に関し、処理温度は、好ましくは150~450℃、より好ましくは200~400℃であり、水素分圧は、好ましくは1400~20000kPa、より好ましくは2800~14000kPaであり、液空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1~10hr-1、より好ましく0.1~5hr-1であり、水素/油比は、好ましくは50~1780m3/m3、より好ましくは89~890m3/m3である。なお、上記の条件は一例であり、水素化処理条件は、原料油、触媒、装置等の相違に応じて適宜選定することが好ましい。
水素化処理工程で水素化処理された後の被処理物は、そのまま異性化脱蝋工程に供してもよいが、当該被処理物についてストリッピング又は蒸留を行い、被処理物(液状生成物)からガス生成物を分離除去する工程を、水素化処理工程と異性化脱蝋工程との間に設けることが好ましい。これにより、被処理物に含まれる窒素分及び硫黄分を、異性化脱蝋工程における水素化異性化触媒の長期使用に影響を及ぼさないレベルにまで、容易に減らすことができる。ストリッピング等による分離除去の対象は主として硫化水素及びアンモニアのようなガス異物であり、ストリッピングはフラッシュドラム、分留器などの通常の手段によって行うことができる。
また、水素化処理工程における水素化処理の条件がマイルドである場合には、使用する原料によって残存する多環芳香族分が通過する可能性があるが、これらの異物は、水素化精製工程における水素化精製により除去されてもよい。
本実施形態の製造方法によれば、軽質で低粘度の潤滑油基油を容易に得ることができる。本実施形態の製造方法により得られる潤滑油基油の好適な一態様について、以下に説明する。
潤滑油基油には、優れた低温粘度特性が求められており、この特性は、粘度指数によって評価することができる。粘度指数が高いほど、低温粘度特性に優れているといえる。本実施形態の製造方法により得られる潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは110以上であり、より好ましくは115以上である。粘度指数の上限は特に限定されず、例えば140以下であってよく、好ましくは135以下である。
潤滑油基油の40℃における動粘度は、例えば15mm2/s以下であってよく、好ましくは13mm2/s以下、より好ましくは10mm2/s以下である。40℃における動粘度が低いと省燃費性が向上する傾向がある。また、潤滑油基油の40℃における動粘度は、例えば3mm2/s以上であってよく、好ましくは4mm2/s以上、より好ましくは5mm2/s以上である。40℃における動粘度が高いと耐蒸発性に優れる傾向がある。
潤滑油基油の100℃における動粘度は、例えば3.5mm2/s以下であってよく、好ましくは3.0mm2/s以下、より好ましくは2.8mm2/s以下である。100℃における動粘度が低いと省燃費性が高くなる傾向がある。また、潤滑油基油の100℃における動粘度は、例えば1.5mm2/s以上であってよく、好ましくは1.8mm2/s以上、より好ましくは2.0mm2/s以上である。100℃における動粘度が高いと引火点が高くなる傾向がある。
潤滑油基油の流動点は、例えば-20℃以下であってよく、好ましくは-25℃以下、より好ましくは-30℃以下である。流動点が低いと、低温始動性に優れる傾向がある。また、潤滑油基油の流動点の下限は特に限定されず、例えば-50℃以上であってよく、好ましくは-45℃以上である。
潤滑油基油の10容量%留出温度は、好ましくは300℃以上であり、より好ましく320℃以上である。また、潤滑油基油の90容量%留出温度は、好ましくは420℃以下であり、より好ましく400℃以下である。本実施形態の製造方法では、例えば、上述の異性化脱蝋工程で得られた脱蝋油又は水素化精製工程で得られた精製油から、減圧蒸留により、上述の蒸留性状を満たす留分を回収することで、潤滑油基油を得ることができる。
潤滑油基油は、ノルマルパラフィンの含有割合が十分に少ないことが好ましい。潤滑油基油におけるノルマルパラフィンの含有割合は、例えば2.0%以下であってよく、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下である。
潤滑油基油は、主にイソパラフィンから構成されていてよい。潤滑油基油におけるイソパラフィンの含有割合は、例えば90質量%以上であってよく、好ましくは93質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
潤滑油基油における尿素アダクト値は、4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以下であることが更に好ましい。このような尿素アダクト値を有する潤滑油基油は、低温粘度特性に特に優れる傾向がある。
なお、本明細書中、「尿素アダクト値」は、以下の方法により測定される値を示す。秤量した試料油(潤滑油基油)100gを丸底フラスコに入れ、尿素200g、トルエン360ml及びメタノール40mlを加えて室温で6時間攪拌する。これにより、反応液中に白色の粒状結晶が生成する。反応液を1ミクロンフィルターでろ過することにより、生成した白色粒状結晶を採取し、得られた結晶をトルエン50mlで6回洗浄する。回収した白色結晶をフラスコに入れ、純水300ml及びトルエン300mlを加えて80℃で1時間攪拌する。分液ロートで水相を分離除去し、トルエン相を純水300mlで3回洗浄する。トルエン相に乾燥剤(硫酸ナトリウム)を加えて脱水処理を行った後、トルエンを留去する。このようにして得られた炭化水素成分(尿素アダクト物)の試料油に対する割合(質量百分率)を尿素アダクト値と定義する。
尿素アダクト値の測定においては、尿素アダクト物として、イソパラフィンのうち低温粘度特性に悪影響を及ぼす成分、さらには潤滑油基油中にノルマルパラフィンが残存している場合の当該ノルマルパラフィンを精度よく且つ確実に捕集することができるため、尿素アダクト値は潤滑油基油の低温粘度特性の評価指標として優れている。なお、本発明者らは、GC及びNMRを用いた分析により、尿素アダクト物の主成分が、ノルマルパラフィン及び主鎖の末端から分岐位置までの炭素数が6以上であるイソパラフィンの尿素アダクト物であることを確認している。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
10容量%留出温度が324.9℃、90容量%留出温度が432.0℃、流動点22.5℃の炭化水素油300gを、500mL硼珪酸ガラスビーカー(コーニング社製)に移した。一方、エチレン-酢酸ビニル共重合体系の軽油用低温流動性向上剤MD336K(三洋化成工業株式会社製)0.09gを、200mLスクリュー管(マルエム製)に入れ、これをウォーターバス(アズワン製)にて60℃で1時間加熱した。このように準備した軽油用低温流動性向上剤を炭化水素油に添加し、ガラス棒にて攪拌混合して混合油を得た。
次に、この混合油150gを200mLスクリュー管(マルエム製)に入れ、これを15℃に設定した低温恒温水槽(アズワン製)に10分静置した。静置後の混合油に対し、ガラスフィルターグレードGF/D(Whatman製、保持粒子径:2.7μm)を取り付けた減圧濾過器KGS-47及び吸引瓶VT-500(いずれもADVANTEC製)を用いて、減圧濾過を行った。濾過条件は、減圧側圧力-0.95MPa、ろ過温度15℃、濾過時間20分間とした。これにより、ガラスフィルター上にワックスW1(固形物)5gと、流動点5℃のろ液(炭化水素油)を得た。表1は、得られたワックスW1中における各炭素数ノルマルパラフィン濃度を示す。
200mLスクリュー管(マルエム製)にノルマルヘキサン(富士フイルム和光純薬製、試薬特級)5gを加えウォーターバス(アズワン製)にて40℃に加熱保温し、上記で得られたワックスW15gを加え溶解した。この溶解液をシリカ膜(イーセップ製、eSep-nanoA)に供し40℃、0.1MPaGで分離し、透過液A9gと非透過液A1gを得た。非透過液Aは、実施例2に示されるように、再利用されて前工程に供給された。
得られた透過液Aに6gの2-プロパノール(富士フイルム和光純薬製、試薬特級)を加え、15℃まで冷却した後にガラスフィルターグレードGF/D(Whatman製、保持粒子径:2.7μm)を取り付けた減圧濾過器KGS-47及び吸引瓶VT-500(いずれもADVANTEC製)を用いて、減圧濾過を行った。濾過条件は、減圧側圧力-0.95MPa、ろ過温度15℃、濾過時間20分間とした。
減圧濾過により得られたガラスフィルター上のワックスに対し、2gの2-プロパノール(富士フイルム和光純薬製、試薬特級)を加え、上記と同様の条件でさらに減圧濾過を行った。これにより、ガラスフィルター上にワックスW2(固形物)2gと、ろ液B15gを得た。表2は、得られたワックスW2中における各炭素数ノルマルパラフィン濃度を示す。
次いで、ろ液Bの分離(第四の分離工程)に用いる分離膜を、以下の方法で作製した。水酸化ナトリウム、オルト珪酸テトラエチル(TEOS)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及び純水を混合してゲルを調製し、水熱合成を行うことでsilicalite-1種晶を得た。silicalite-1種晶を純水中に分散させたスラリーを用いて、多孔質のアルミナからなる円筒型の支持体(30mm×10mmφ、厚さ1mm)の外表面に種晶をディップコーティングにより担持することで種晶付多孔質支持体を得た。オルト珪酸テトラエチル(TEOS)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)、エタノール及び純水を混合して調製したゲル(組成は、SiO2:TPAOH:H2O:EtOH=1:0.12:66:8(モル比))に、上記種晶付多孔質支持体を浸漬して100℃で7日間、水熱合成を行い、その後焼成を行うことで、支持体上にゼオライト薄膜を形成し、ゼオライト膜を含む分離膜(ゼオライト分離膜)を得た。XRD測定におけるピークパターンから、当該分離膜の外表面のゼオライト薄膜はsilicalite-1であることが確認された。なお、ゼオライト膜のX線回折スペクトルは、下記条件で取得した。
装置:Rigaku Ultima IV
X線源:Cu-Kα
管電圧:40kV
管電流:40mA
スキャン速度:3°/min
上記ろ液B15g及びゼオライト分離膜用いて、以下の方法で分離工程を実施した。具体的には、図2に概略を示す分離試験を行った。供給液タンク23内のろ液Bをポンプ27により0.2MPaGに保持した分離セル25内に供給した。分離セル25は、ゼオライト分離膜1を備えている。また、分離セル25は、図示しないオーブン内に設置されており、分離試験中、330℃に加熱した。分離セル25は、ろ液が円筒型の分離膜の外側表面に供給され、内側表面から透過分を得る構造をとっている。なお、透過側にはキャリアガスとしてアルゴンガスを300mL/minの速度で流し、透過分を回収した。また、ガスクロマトグラフ29にて炭化水素油及び透過分の分析を行なった。なお、図中、31は透過分出口、33は非透過分出口、35はアルゴンガス供給配管、37はGC用キャリアガス供給配管を示す。
以上の分離工程において、透過液B4.5gと、非透過液B10.5gを得た。透過液B及び非透過液Bは、実施例2に示されるように、それぞれ再利用されて前工程に供給された。
(実施例2)
10容量%留出温度が326.3℃、90容量%留出温度が435.2℃、流動点22.5℃の炭化水素油100gが入った500mL硼珪酸ガラスビーカー(コーニング社製)に、実施例1の非透過液A1.0gを加えガラス棒にて攪拌混合して混合油を得た。これをウォーターバス(アズワン製)にて60℃で1時間加熱した。
次に、この混合油100gを200mLスクリュー管(マルエム製)に入れ、これを15℃に設定した低温恒温水槽(アズワン製)に10分静置した。静置後の混合油に対し、ガラスフィルターグレードGF/D(Whatman製、保持粒子径:2.7μm)を取り付けた減圧濾過器KGS-47及び吸引瓶VT-500(いずれもADVANTEC製)を用いて、減圧濾過を行った。濾過条件は、減圧側圧力-0.95MPa、ろ過温度15℃、濾過時間20分間とした。これにより、ガラスフィルター上にワックスW3(固形物)3.0gと、流動点5℃のろ液(炭化水素油)を得た。表3は、得られたワックスW3中における各炭素数ノルマルパラフィン濃度を示す。
200mLスクリュー管(マルエム製)に実施例1の透過液B2.0gとノルマルヘキサン(富士フイルム和光純薬製、試薬特級)1.0gを加えウォーターバス(アズワン製)にて40℃に加熱保温し、ワックスW33.0g加え溶解した。この溶解液をシリカ膜(イーセップ製、eSep-nanoA)に供し40℃、0.1MPaGで分離し、透過液C5.0gと非透過液C1.0gを得た。
得られた透過液Cに実施例1の非透過液B3.0gと2-プロパノール(富士フイルム和光純薬製、試薬特級)2.0gを加え、15℃まで冷却した後にガラスフィルターグレードGF/D(Whatman製、保持粒子径:2.7μm)を取り付けた減圧濾過器KGS-47及び吸引瓶VT-500(いずれもADVANTEC製)を用いて、減圧濾過を行った。濾過条件は、減圧側圧力-0.95MPa、ろ過温度15℃、濾過時間20分間とした。
減圧濾過により得られたガラスフィルター上のワックスに対し、2gの2-プロパノール(富士フイルム和光純薬製、試薬特級)を加え、上記と同様の条件でさらに減圧濾過を行った。これにより、ガラスフィルター上にワックスW4(固形物)2.0gを得た。表4は、得られたワックスW4中における各炭素数ノルマルパラフィン濃度を示す。