次に、本発明の充填方法で用いる2液吐出容器を図面に基づいて詳細に説明する。2液吐出容器1は、図1に示すように、容器本体10と、容器本体10内を、2つの原液収容室(第1原液収容室12、第2原液収容室13)と、加圧剤収容室14とに区画するピストン部材20と、容器本体10に取り付けられ、第1原液収容室12と第2原液収容室13とにそれぞれ連通するバルブアッセンブリ30とを備えている。従って、2液吐出容器1は、2つの原液(第1原液C1、第2原液C2)と加圧剤Pとをそれぞれ別々に収容することができる。また、この2液吐出容器1は、バルブアッセンブリ30を介して各原液収容室12、13と容器外(2液吐出容器1の外側:外気)とを連通する、互いに独立した2つの原液通路(第1原液通路P1、第2原液通路P2)を備えている。そして、第1原液C1は、第1原液通路P1を介して第1原液収容室12に充填され、第2原液C2は、第2原液通路P2を介して第2原液収容室13に充填される。また、ピストン部材20は、加圧剤収容室14に収容された加圧剤Pの圧力によって容器本体10内を摺動し、第1原液収容室12と第2原液収容室13とを加圧する。従って、この2液吐出容器1は、第1原液C1と第2原液C2とを終始定められた比率で吐出することができる。なお、2液吐出容器1に対して第1原液C1と、第2原液C2と、加圧剤Pとを収容したものが2液吐出製品2となる。以下、各構成部品について詳細に説明する。
容器本体10は、図1Aに示すように概略円筒状であって、高さ方向の略中央から上方に位置する上筒部10aと、下方に位置する下筒部10bと、上端の開口部10cとを備えている。上筒部10aの内径は下筒部10bの内径より小さく、また上筒部10aの外径も下筒部10bの外径より小さい。そのため、上筒部10aと下筒部10bとの間には、上筒部10aの下端と下筒部10bの上端とを繋ぐようにして拡径段部10dが形成されている。そして上筒部10aと、下筒部10bと、拡径段部10dとで胴部10eを構成している。胴部10eの上端(すなわち上筒部10aの上端)には、径内方向に縮径するテーパ状とされた肩部10fが設けられている。また、その肩部10fの上端には、円筒状の首部10gが設けられている。開口部10cは、首部10gの上端で開口している。胴部10eの下端(すなわち下筒部10bの下端)には、底蓋11が取り付けられており、これにより、底部を有する容器が形成されている。底蓋11は、加圧剤収容室14への加圧剤Pの充填を行うためのガス充填弁11aと、胴部10eの下端に内嵌される外筒11bと、ガス充填弁11aの外周を囲む内筒11cとを備えている。
この容器本体10は合成樹脂製である。具体的には、第1原液C1や第2原液C2によって浸食されないもの、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマーなどの熱可塑性樹脂から製造されている。合成樹脂材料として透光性を有するものを用い、各原液C1、C2の残量、状態などを目視できるようにしても良い。また、各原液C1、C2のいずれか一方若しくは双方を紫外線から保護するために、前記熱可塑性樹脂に紫外線吸収材を添加して容器本体10を成形してもよく、容器本体10の内部または外面に炭素、アルミナ、シリカなどのコート材を設けても良い。
製造方法としては、耐圧性を付与するために、2軸延伸ブロー成形などのブロー成形によって製造することが好ましい。この場合、例えば射出成形、押出成形などで形成したパリソンを加熱し、軸方向に延伸させながら金型内で膨らませて所定の形状に成形する。首部10gおよび開口部10cは、通常はパリソンと共通であり、膨らませないので厚肉である。なお、ブロー成形の場合、底部が形成されるが、底部は切除し、切除により生じた開口を底蓋11によって塞ぐ。底蓋11は、例えば溶着(レーザー溶着、超音波溶着等)や接着によって胴部10eに取り付けられる。特に、容器本体10の底蓋11を除いた部分(筒状体)が無色透明で、底蓋11が筒状体と同じ材質から構成され黒色等の有色である場合、筒状体の側面から透過させたレーザーによって底蓋11を溶着することができる。
ピストン部材20は、全体的な形状が軸対称な略凸字状(逆T字状)である。このピストン部材20は、上筒部10a内を摺動する第1ピストン21と、下筒部10b内を摺動する第2ピストン22と、第1ピストン21と第2ピストン22とを連結するピストンジョイント23とを一体的に組み合わせることにより構成されている。そして、ピストン部材20を容器本体10内に収容することで、バルブアッセンブリ30と第1ピストン21との間の上筒部10a内に第1原液収容室(上収納室)12が形成され、第1ピストン21と第2ピストン22との間の下筒部10b内に第2原液収容室(下収納室)13が形成され、第2ピストン22と底蓋11との間の下筒部10b内に加圧剤収容室14が形成されるようになっている。なお、ピストン部材20に加えて、容器本体10も軸対称な形状である。また、ピストン部材20の中心軸は、容器本体10の中心軸上に位置している。従って、第1原液収容室12、第2原液収容室13、加圧剤収容室14は互いに同心軸上に形成される。
第1ピストン21は、図2に示すように、底部21aを有する内筒21bと、内筒21bの上端から径外方向に延出された円板部21cと、円板部21cの外縁から下方に延びる外筒21dと、外筒21dの下端から径外方向に向かって突出する第1シール部21eとからなる。外筒21dの内周面には、後述するピストンジョイント23の嵌合溝23dと係合するための突起21d1が設けられている。底部21aの中心には、後述するチューブ40を挿通するための挿通孔21fが形成されている。また、挿通孔21fの外周を囲むようにして環状突起21gが設けられている。なお、この環状突起21gは、後述する保持部材60を第1ピストン21に取り付けるために使用する部位である。第1シール部21eは平面視環状であって、上筒部10aの内面の全周に亘って当接しており、第1原液収容室12と第2原液収容室13とを液密に区画する。その断面形状は、径内方向に膨出する円弧状であって、円弧の中央部分が外筒21dの下端外周と一体に連結されており、中央部分を軸として円弧の両端を上筒部10aの内面にそれぞれ弾力的に当接させることで、上筒部10aの内径のばらつきなどにより、摺動時に上筒部10aの内面との距離がある程度変化しても、液密にシールし続けることができるようになっている。
第2ピストン22は、上底22aを有する内筒22bと、内筒22bの上底22aの外縁から径外方向に延出された円板部22cと、円板部22cの外縁から下方に延びる外筒22dと、外筒22dの下端から径外方向に向かって突出する第2シール部22eとを備えている。第2シール部22eは、第1シール部21eと同様の構成であって、定常時は勿論のこと、摺動時においても第2原液収容室13と加圧剤収容室14とを気密に区画(シール)し続ける。また、内筒22bの上底22aの中心から上筒22fが延出され、さらに円板部22cの上面から嵌合筒22gが立ち上がっている。なお、内筒22bは、第2ピストン22の強度を高めるため、底蓋11の内筒11cと当接して加圧剤収容室14の上下方向の高さを確保するため、第2シール部22eの底蓋11の外筒11bへの接触を防ぎ、底蓋11を溶着する際に底蓋11からの熱伝導により変形しないようにするための部位である。また、嵌合筒22gは、第2ピストン22の強度を高くするため、ピストンジョイント23との嵌合に用いるための部位である。なお、上筒22fも第2ピストン22の強度を高くするための部位である。嵌合筒22gの内周面には、ピストンジョイント23の嵌合溝23dと係合するための突起22g1が設けられている。
上記構成の第2ピストン22には、加圧剤Pの第2原液収容室13への透過を抑制するため、上面および/または下面に炭素やシリカなどのコート剤を設けてガスバリア性を高くすることが好ましい。特に、第2シール部22eにもコート剤を設けることで、容器本体10内での摺動性が高くなる。なお、第1ピストン21については、ガス透過性であるかガス不透過性であるかを特に問わない。従って、第2ピストン22と同材質でも良いし、異なる材質であっても良い。また、摺動性を高くするために炭素やシリカなどのコート剤を設けてもよい。
ピストンジョイント23は、その最外径が上筒部10aの内径と略等しくなるように成形された略円柱状の部品であり、上端の中心には、凹み部23bが設けられている。この凹み部23bは、第1ピストン21の内筒21bと嵌合するためのものである。また、外周面には、周方向に連続する環状の嵌合溝23dが設けられている。凹み部23bに第1ピストン21の内筒21bを挿入すると、突起21d1が嵌合溝23dに係合し、第1ピストン21の円板部21cと外筒21dがピストンジョイント23により支持される。その結果、ピストン部材20が摺動する際の、第1ピストン21の変形を抑えることができ、第1原液を均等に加圧することができる。なお、凹み部23bや嵌合溝23dは、下端側にも設けられている。ピストンジョイント23の下端に第2ピストン22を取り付けると、第2ピストン22の上筒22fが凹み部23bに収容され、突起22g1が嵌合溝23dと係合する。
ピストンジョイント23の軸方向の中心(中心軸上)には、上端側の凹み部23bから下端側の凹み部23bにかけて貫通する貫通孔23aが形成されている。この貫通孔23aは、下筒部10bに収容される第2原液C2をバルブアッセンブリ30まで供給するための通路であるとともに、同じく第2原液C2の通路として機能するチューブ40を収容するための収納部でもある。この貫通孔23aは、下側の凹み部23bから下面にかけて設けられた溝部23cを介してピストンジョイント23の外周側に繋がっている。そのため、ピストンジョイント23の下端に第2ピストン22を取り付けると、ピストンジョイント23の下面と第2ピストン22の上面との間に、第2原液収容室13と貫通孔23aとを連通する通路が形成される。溝部23cは、ピストンジョイント23の中心軸から放射状(例えばY字状やX字状、*状)に複数設けられるが、ピストン部材20を平面視した状態において、ピストン部材20の重心が中心軸からずれないように、互いに等間隔(等角度)となるように設けられる。これにより、第2原液収容室13内の第2原液C2は均等に導出され、第2ピストン22の傾きが防止され、ピストンジョイント23から外れにくくなる。上記構成のピストンジョイント23は、例えばポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂を用いて射出成形したもの、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどを発泡させて成形した硬質発泡樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニルコポリマーなどの粉体を焼結して成形した焼結体などから製造される。
バルブアッセンブリ30は、容器本体10の開口部10cを閉塞しつつ、第1原液収容室12と外気、第2原液収容室13と外気とをそれぞれ独立した状態で連通するものであって、図1A及び図1Bに示すように、2つのエアゾールバルブ31、32と、これらエアゾールバルブ31、32を保持するバルブホルダー33と、2つのエアゾールバルブ31、32とバルブホルダー33とを容器本体10に固着するカバーキャップ34とを備えている。
2つのエアゾールバルブは、第1バルブ31と第2バルブ32とから構成されている。これら第1、第2バルブ31、32は、図3Aに示すように、有底筒状のハウジング31aと、そのハウジング31aの内部に上下移動自在に収容されたステム31bと、ステム31bのステム孔31cをシールするステムラバー31dと、ステム31bを上向きに付勢するバネ31eと、ステム31b及びバネ31eをハウジング31aに固定するカバー部材31fとからなり、ステム31bを押し下げることで開放する従来公知のものである。
バルブホルダー33は、図3Bに示すように、第1、第2バルブ31、32を保持する保持部33aと、容器本体10の開口部10cに挿入され、開口部10cを塞ぐ栓部33bとから構成されている。保持部33aには、上下方向に貫通するホルダー部(貫通孔)33cが2つ設けられている。貫通孔33cの内面には、後述するバルブジョイント70の掛止部70a1と掛止する掛止段部33c1が設けられている。また、その掛止段部33c1の直上にも段部33c2が設けられている。この段部33c2は、貫通孔33cに上から挿入される(具体的には嵌入される)第1、第2バルブ31、32の下方への過度な入り込みを規制するためのものである(図1A参照)。第1、第2バルブ31、32のハウジング31aの外周にはOリング51が設けられており、ホルダー部33cに嵌入されることで、ホルダー部33cの内面とハウジング31aの外面との間にシールが形成されるようになっている。また、栓部33bの外周にもOリング52が設けられている。そのため、栓部33bを開口部10cに挿入すれば、栓部33bの外面と開口部10cの内面との間にシールが形成されることになる。バルブホルダー33の下端面(栓部33bの下端面)の一部は、後述するバルブジョイント70の当接面72aと当接するための当接面33dとされている。この当接面33dは、下から見上げると、2つのホルダー部33cを内包する環状とされている。また、全周にわたって高低差が無く、水平面とされている。なお、バルブジョイント70の当接面72aについても高低差が無く、水平面とされている。
カバーキャップ34は、図1A及び図1Bに示すように、アルミニウムなどの金属薄板をカップ状にプレス加工したものであり、第1バルブ31と第2バルブ32とをバルブホルダー33に押し付けつつ、バルブホルダー33を容器本体10の開口部10cに押し付けた状態で、下端の外周を首部10gにカシメ付けて(塑性変形させて)固着している。
上記構成のバルブアッセンブリ30には、図1Aに示すようにチューブ40が接続されている。なお、チューブ40は、後述するバルブジョイント70を介してバルブアッセンブリ30の第2バルブ32と連通している。チューブ40は、例えばステンレス等の金属製の真っ直ぐなパイプからなる。ただ、剛性を確保できるのであれば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製であっても良い。このチューブ40の上端は、バルブジョイント70に嵌入、固定されている。下端は、第1ピストン21の挿通孔21fを介してピストンジョイント23の貫通孔23aと連通している(図1A、図2参照)。チューブ40と挿通孔21fとの間は、チューブ40の外周に取り付けられるOリング50によってシールされている。このOリング50は、ピストン部材20の摺動に合わせてチューブ40上を摺動できるように、保持部材60によって保持されている。
保持部材60は円筒状であって、下端側のみが二重筒状となっている。そして、外側の一端60aが第1ピストン21の内筒21bと環状突起21gとの間に嵌合されて、第1ピストン21に固定されている。そして内側の一端60bが、内筒21bの上面との間でOリング50を保持している。
バルブジョイント70は、図3Cおよび図3Dに示すように、略円板状の基部71と、基部71から上方に延出された2つの接続筒(第1接続筒70a、第2接続筒70b)と、基部71の外周端から上方に延出された筒状の外周壁72とを備えている。各接続筒70a、70bの先端外周には、掛止部70a1が設けられており、全体としては略鏃(やじり)状となっている。図4に示すように、掛止部70a1の外径D1は、掛止段部33c1の内径D4よりも大である。また、各接続筒70a、70bには、各接続筒70a、70bの軸心から放射状に切れ込み部70a2が設けられており、接続筒70a、70bの先端部分が複数(図では4つ)の小片に分割されている。そのため、掛止段部33c1内に接続筒70a、70bを挿入すると、各小片が弾性的に撓んで接続筒70a、70bが縮径する。その状態でさらに押し込めば、掛止部70a1が掛止段部33c1を乗り越え、窄んでいた各小片が径外方向に開き、掛止部70a1をそれぞれ掛止段部33c1に掛止させることができる。なお、掛止部70a1が先端に向かって尖るテーパ面70a3を有していることから、挿入(押し込み)は簡単である。一方で、抜き方向には掛止部70a1が「返し」のように作用し、簡単には抜けない。
ところで、掛止部70a1の外径D1は、段部33c2の内径D5より大とされている。また、接続筒70a、70bの外径D2は、掛止段部33c1の内径D4より大とされている。そのため、掛止部70a1が掛止段部33c1に掛止された状態において、掛止部70a1の外面は段部33c2の内面に接触し、また、接続筒70a、70bの外面は掛止段部33c1の内面に接触し、接続筒70a、70bの縮径状態を維持する(図4参照)。接続筒70a、70bの内径D3は、縮径されていない状態では、エアゾールバルブ31、32の連結筒31gの外径D6と略等しいが、接続筒70a、70bを貫通孔33cに挿入し縮径されると、連結筒31gの外径D6よりも小となる。そのため、連結筒31gを接続筒70a、70bに挿入(圧入)することで、接続筒70a、70bの内面と連結筒31gの外面とが強く密着することとなる。また、連結筒31gが挿入されると、接続筒70a、70bのそれ以上の縮径が規制されることから、掛止部70a1が掛止段部33c1を乗り越え、バルブジョイント70がバルブホルダー33から抜け落ちることもない。
また、掛止部70a1の下端面から外周壁72の上端面(当接面)72aまでの距離L1は、掛止段部33c1の上端面から栓部33bの下端面(当接面)33dまでの距離L2と同じ若しくは僅かに短い。そのため、バルブジョイント70をバルブホルダー33に装着した際には、外周壁72の水平な上端面(当接面72a)がバルブホルダー33の水平な下端面(当接面)33dと当接して、掛止部70a1と当接面72aとの間で掛止段部33c1を挟み込んだ状態となり、バルブジョイント70のがたつきや傾きを防止することができる。これにより、チューブ40の傾きを防止してピストン部材20が装着しやすくなるとともに、摺動させやすくなる。
図3Cに戻って、基部71の下面中央からは、筒状のチューブ連結部70cが延出されている。そしてバルブジョイント70の内部には、第2接続筒70bとチューブ連結部70cとを連通する通路70dが形成されている。通路70dは、第2接続筒70bから続く縦路70d1と、縦路70d1の下端から水平方向に延びる横路70d2とからなる。なお、第1接続筒70aの下方は切り欠かれており、第1接続筒70aは第1原液収容室12と直接連通している。70eは、通路70dの第1接続筒70a側の開口を塞ぐための栓部材である。
続いて、容器本体10に収容される原液Cおよび加圧剤Pについて説明する。原液Cは、第1原液収容室12に充填される第1原液C1と第2原液収容室13に充填される第2原液C2とに分かれる。第1原液C1と第2原液C2とは、互いに分離した状態で保管しておき、使用時に混合するものであることが好ましい。具体的には、酸化により発色する染料(パラフェニレンジアミンなど)を含有する第1剤と、染料を酸化させる酸化剤(過酸化水素)を含有する第2剤とからなる2液式染毛剤が挙げられる。なお、本発明の充填方法に適する第1原液C1と第2原液C2の粘度は、1~50,000(mPa・s)であり、100~30,000(mPa・s)であることが好ましい。
加圧剤Pとしては、窒素、二酸化炭素、空気などの圧縮ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィンなどの液化ガスがあげられるが、圧縮ガスとするのが好ましく、特に水への溶解度が小さく第2ピストン22を透過しにくい窒素を用いることが好ましい。
第1原液C1、第2原液C2、加圧剤Pを容器本体10内に充填する方法としては、先ず、容器本体10の開口部10cにバルブジョイント70を連結したバルブアッセンブリ30を固着する。すなわち、まず、バルブジョイント70の2つの接続筒70a、70bを下方からバルブホルダー33の貫通孔33cに挿入して掛止部70a1を掛止段部33c1に掛止し、一体化させる。次に、バルブジョイント70のチューブ連結部70cにガイド部材40を接続する。そして一体となったバルブホルダー33とバルブジョイント70とガイド部材40とを容器本体10の開口部10cに装着する。さらに第1バルブ31と第2バルブ32を上方から貫通孔33cに挿入する。このとき、連結筒31gは接続筒70a、70bを拡げながら接続筒70a、70b内に嵌入される。最後に、バルブホルダー33にカバーキャップ43を被せ、容器本体10と一体化させることで容器本体10へのバルブアッセンブリ30の固着が完了する。次いで、容器本体10内にピストン部材20を挿入して底蓋11を固着し、2液吐出容器1を形成する。次いで、第1バルブ31と第2バルブ32のステム31bを押し下げて各バルブ31、32を開放し、第1原液収容室12と第2原液収容室13内の空気を同時に吸引することでピストン部材20を上昇させる(図5のS1参照)。
次に、第1原液収容室12と第2原液収容室13とにそれぞれ原液Cを充填していく。充填に際しては、まず、第1原液収容室12と連通する第1バルブ31に、第1原液C1を供給する第1原液充填ノズルN1を接続し、第2原液収容室13と連通する第2バルブ32に、第2原液C2を供給する第2原液充填ノズルN2を接続する。なお、第1原液C1としては、例えば2液式染毛剤の第1剤が用いられ、第2原液C2としては、2液式染毛剤の第2剤が用いられる。そして、各バルブ31、32を開放した状態で、第2原液充填ノズルN2から第2原液C2を加圧充填していく。第2原液C2は、第2バルブ32と、バルブジョイント70の第2接続筒70bと、通路70dと、チューブ40と、貫通孔23aと、ピストンジョイント23と第2ピストン22との間の通路(溝部23c)とからなる第2原液通路P2を通って第2原液収容室13に充填されるが、第2原液通路P2には空間があるため、その空間を満たしながら第2原液通路P2を進むことになる。この際、ピストンジョイント70には、基部71の中心からずれた位置に、第2原液C2の充填圧力(下向きの力)が作用するが、掛止部70a1を掛止段部33c1に掛止しており、また当接面72a、33d同士を当接させていることから、ピストンジョイント70が傾くことはない。第2原液通路P2がある程度(もしくは完全に)、第2原液C2に満たされると、第2原液C2の充填圧力がピストン部材20に伝わり、ピストン部材20が下に向かって摺動しようとする(図5のS2参照)。その結果、第1原液収容室12が負圧となり、第1原液充填ノズルN1から、バルブジョイント70の第1接続筒70aと、第1バルブ31とからなる第1原液通路P1を通じて、第1原液収容室12に第1原液C1が吸引充填される(図5のS3参照)。第2原液収容室13への第2原液C2の充填は、例えば第2ピストン22の内筒22bの下端が底蓋11の内筒11cの上端に当接するまで行う(図5のS4参照)。
このように、第2原液収容室13に第2原液C2を加圧充填してピストン部材20を摺動させるとともに、ピストン部材20の摺動によって第1原液収容室12で生じる負圧を利用して、第1原液収容室12に第1原液C1を吸引充填すれば、充填圧力の管理や充填量の比率の管理が不要となり、充填作業が簡単になる。また、第1原液通路P1と第2原液通路P2のうち、通路長さの長い方、換言すれば通路内の容積が大きい第2原液通路P2と連通する第2原液収容室13に第2原液C2を加圧充填し、長さの短い(通路内の容積が小さい)第1原液通路P1と連通する第1原液収容室12に第1原液C1を吸引充填することで、ある程度(もしくは完全に)、第2原液通路P2に第2原液C2を満たした状態で、第1原液C1を充填し始めることができ、2つの原液C1、C2を同時に加圧充填する場合に比べて、第2原液収容室13内にガス溜まりを生じにくくすることができる。また、第1原液C1と第2原液C2に粘度差がある場合は、原液通路が長く加圧充填する側の粘度が、原液通路が短く吸引充填する側の粘度よりも低いことが好ましい。換言すれば、第2原液C2の粘度を第1原液C1の粘度よりも低くし、粘度の低い第2原液C2を、容量の大きい(通路長さの長い)方の第2原液通路P2と連通する第2原液収容室13に加圧充填し、粘度の高い第1原液C1を、容量の小さい(通路長さの短い)方の第1原液通路P1と連通する第1原液収容室12に吸引充填することが好ましい。この場合、第2原液通路P2が第1原液通路P1より長いにも関わらず、第2原液C2をスムーズに充填することができるため、自ずと第1原液C1の充填もスムーズになる。
その後、加圧剤収容室14に、底蓋11のガス充填弁11aから加圧剤Pを充填する。なお、2液吐出容器1を組み立てた後、加圧剤Pを加圧剤収容室14に充填してから、第1原液収容室12と第2原液収容室13内の空気を排出し、第1原液C1と第2原液C2を充填してもよい。この場合は、加圧剤Pを充填した2液吐出容器(加圧容器)を別の工場に移送し、第1原液C1と第2原液C2を充填することもできる。
加圧剤収容室14に加圧剤Pが収容されると、第1ピストン21は第1原液収容室12を加圧し、第2ピストン22は第2原液収容室13を加圧する。従って、第1原液C1と第2原液C2とはそれぞれ加圧剤Pの充填圧力と略同程度の圧力で圧縮された状態となる。
上記構成の2液吐出製品2は、各原液C1、C2を吐出させるにあたって、2つのステム31b、31bを同時に押し下げる。第1バルブ31と第2バルブ32とを同時に開放することにより、第1原液C1および第2原液C2を同時に吐出させることができる。つまり、第1バルブ31と第2バルブ32とを開放することにより、加圧剤収容室14内の加圧剤Pがピストン部材20を上方に付勢し、ピストン部材20が上方に向かって容器本体10内を摺動することにより、第1原液収容室12および第2原液収容室13が収縮させられ、各原液C1、C2が吐出される。
この際、第1原液C1は、バルブジョイント70の第1接続筒70aを介して第1バルブ31へと供給され、第2原液C2は、ピストンジョイント23と第2ピストン22との間の通路、貫通孔23a、チューブ40内、バルブジョイント70の通路70d、第2接続筒70bを介して第2バルブ32へと供給され、それぞれのステム31bから外部へと吐出される。
吐出中、ピストン部材20はその外周にある第1シール部21eと第2シール部22eが容器本体10内を摺動しつつ、その内周がチューブ40の外周とも摺動するが、チューブ40がピストン部材20(容器本体10)の中心軸上に設けられているため、ピストン部材20の上下方向の摺動をガイドするガイド部材としての機能を発揮することとなり、ピストン部材20の傾きが抑制され、安定した摺動を実現することができる。吐出が完了すると、ピストン部材20の略全体が上筒部10a側に移動した状態となる。
なお、本発明の2液吐出容器1は、2つのステム31bを有しているが、第1原液収容室12と第2原液収容室13の収縮はピストン部材20で連動しているため、どちらか一方のステム31bだけを操作しても作動しない。そのため、誤った方法で操作されても片方の原液だけが吐出されることがなく、所定の比率(原液Cを加圧するピストンの面積比率)で2つの原液C1、C2を確実に吐出することができる。なお、2つのステム31bを同時に押すために、2つのステム31bに跨る押ボタンを取り付けることが好ましい。押ボタンとしては、2つのステム31bから吐出される原液同士を内部で混合して吐出できるものを採用しても良い。
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施形態では、第1原液C1を第1原液充填ノズルN1から吐出する際、特に第1原液C1に圧力を与えていなかったが、第1原液収容室12が負圧状態を維持できる範囲で、第1原液充填ノズルN1から圧力を持った状態で第1原液C1を吐出しても良い。第1原液収容室12が負圧であり続ける限り、第1原液C1は吸引充填されることとなるため、充填量や充填圧力の細かな管理が不要であり、また、ガス溜まりも生じにくくなる。