以下、本開示に係るレンズメータを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
(実施例1)
[レンズメータの全体構成]
以下、図1に基づいて、実施例1のレンズメータ1の全体構成を説明する。図1に示す実施例1のレンズメータ1は、被検レンズLの光学特性を測定し、光学特性値を表示するとともに、光学測定値の分布をマッピング画像で表示するものである。このレンズメータ1は、装置本体2を有する。
装置本体2は、前面上部に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示部3が設けられている。この表示部3は、タッチパネル式の表示画面3aを有している。この表示画面3aには、被検レンズLの光学特性値(球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、プリズム基底方向等)の数値データ、被検レンズLの光学特性値の分布を示すマッピング画像、被検レンズLの被検レンズ画像(以下では、単にレンズ画像という)、マッピング画像にレンズ画像を重畳した重畳画像等の各種画像データが表示される。また、表示画面3aには、測定の開始や停止等の操作を行うための操作ボタン、測定モードを切り換えるためのモード切替ボタン、測定結果等を印字するための操作ボタン等がアイコンで示された操作部6が表示される。なお、この操作部6は、装置本体2に適宜設けたボタンやスイッチ等であってもよい。また、表示画面3aには、測定者の測定動作をガイドするコメント等からなるコメントバー7が表示される。
装置本体2の上部2aには投光光学系10(図2参照)が収容され、装置本体2の下部2bであって、投光光学系10の下方に対向する位置に受光光学系20(図2参照)が収容されている。なお、この投光光学系10及び受光光学系20により、被検レンズLの光学特性を測定する測定光学系Kが構成されている。
さらに、この装置本体2の上部2aには、被検レンズLの外観を撮像する撮像部30(図2参照)が収容されている。また、装置本体2の内部には、レンズメータ1の各部を統括的に制御する制御系(図4参照)が設けられている。
そして、装置本体2の中間部には、被検レンズLをセットするレンズセット空間2cが形成されている。このレンズセット空間2cの内側にレンズ保持機構4と、印点装置5とが設けられている。
レンズ保持機構4は、被検レンズLを置く円環状の載置面4aを有するレンズ受け4bと、レンズ受け4bに置かれた被検レンズLを上方から押えるレンズ押え4cと、レンズ受け4bの後方に位置し、レンズセット空間2c内での被検レンズLの位置決めを補助するレンズテーブル4dと、有している。実施例1では、レンズ受け4b及びレンズ押え4cは、一つずつ設けられている。レンズ受け4bに被検レンズLを載せ、被検レンズLをレンズテーブル4dに押し当てた状態で、レンズテーブルレバー4eを操作してレンズテーブル4dの前後方向の位置を調整することで、被検レンズLの前後方向でのセット位置(測定光学系Kの測定光軸Lmに対する被検レンズLの測定位置)を合せることができる。
本実施例のレンズメータ1では、被検レンズLとして、円形の未加工レンズや眼鏡用に研削加工された枠入れ前のレンズ、或いは眼鏡フレームに枠入れされたレンズ等を測定することができる。実施例1では、レンズテーブル4dの上縁部に、眼鏡の鼻当てを載せるためのスライダ4fが水平方向に移動可能に支持されている。被検レンズLが眼鏡フレームに枠入れされたレンズである場合、眼鏡の鼻当てをスライダ4fに掛けつつ眼鏡をスライダ4fとともに左右に移動させることで、所望のレンズをレンズ受け4b上に配置させることができるとともに、被検レンズLの左右方向のセット位置を合せることができる。
また、被検レンズLが眼鏡の鼻当てのない未加工レンズや枠入れ前のレンズの場合でも同様に、スライダ4fの端面に被検レンズLの外周縁を押し当てつつ被検レンズLをスライダ4fとともに左右に移動させることで、被検レンズLの左右方向のセット位置を合せることができる。なお、レンズメータ1に必ずしもスライダ4fを設ける必要はなく、実施例1の構成に限定されない。
また、レンズテーブル4dとスライダ4fには、それぞれポテンショメータ等の位置検出センサ4g,4hが設けられている(図4参照)。位置検出センサ4gは、レンズテーブル4dの前後方向(Y軸方向)の位置を検出する。位置検出センサ4hは、スライダ4fの左右方向(X軸方向)の位置を検出する。検出された各位置のデータは、制御系へと出力される。
印点装置5は、軸打ちレバー5aを操作することで上下方向に回動し、レンズ受け4bとレンズ押え4cの間に挟持された被検レンズLに印点を行う。
[測定光学系の詳細構成]
以下、図2及び図3に基づいて、実施例1のレンズメータ1の測定光学系Kの詳細構成を説明する。実施例1の測定光学系Kは、被検レンズLの光学特性値を測定するために用いられ、上述のように、投光光学系10と、受光光学系20とを有している。
投光光学系10は、被検レンズLに対して測定光を投光する光学系であって、図2に示すように、測定光を出射する光源11と、ハーフミラー12と、レンズ13とを有する。光源11は、実施例1ではLED素子(発光ダイオード)により構成されている。測定光学系Kの測定光軸Lmは、ハーフミラー12によって折り返され、レンズ受け4bの載置面4a(図1参照)の中心を通る。このような構成の投光光学系10では、光源11から出射された測定光は、ハーフミラー12、レンズ13を順に経ることで、所定口径の平行光に調光された後、レンズ受け4b上に配置された被検レンズLに投光される。
受光光学系20は、被検レンズLを通過した測定光を受光する光学系である。受光光学系20は、測定光軸Lm上に配置され、図2に示すように、フィルタ21と、パターンプレート22と、測定用受光素子23と、を有している。
パターンプレート22は、被検レンズLを通過した測定光を複数の分割測定光束に分離するパターン板である。このパターンプレート22には、図3に示すように、複数の円形の開口22aを規則正しく並べたパターンが形成されている。
測定用受光素子23は、パターンプレート22によって分離された複数の分割測定光束を受光し、電気信号(画像信号)に変換して出力する。この測定用受光素子23には、分割測定光束がパターン像として受光される。測定用受光素子23としては、例えばCCD(Charge Coupled Devise)を用いることができる。
[撮像部の詳細構成]
以下、図2に基づいて、実施例1のレンズメータ1の撮像部30の詳細構成を説明する。撮像部30は、レンズ13からハーフミラー12を透過した直線上に配置され、ハーフミラー12によって折り返された測定光軸Lmに沿って、レンズ受け4bに置かれた被検レンズLを撮像する。ここでは、レンズ受け4b上の水平面と平行な面に沿って、測定光軸Lmを中心としつつ一辺が100mmとなる正方形状の領域を撮像可能な位置に取り付けられている。この撮像部30は、例えば単眼式のデジタルカメラであり、撮像光学系31と、撮像素子32と、を有している。
撮像光学系31は、複数のレンズから構成され、投光光学系10のレンズ13と協働して、レンズ受け4b上に置かれた被検レンズLの被写体像を撮像素子32上に形成する。撮像素子32は、撮像光学系31が形成する被写体像を電気信号(画像信号)に変換して出力する。撮像部30で、測定光軸Lmを中心とした正方形の領域を撮影していることから、測定光軸Lmの撮像素子32上の位置は、撮像素子32の中心と合致する。
[制御系の詳細構成]
以下、図4に基づいて、実施例1のレンズメータ1の制御系の詳細構成を説明する。レンズメータ1は、図4に示すように、制御系として制御部40と記憶部41と、を有している。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)や内部メモリ40a等を備えて構成される。制御部40には、表示部3、位置検出センサ4g,4h、操作部6、投光光学系10の光源11、受光光学系20の測定用受光素子23、撮像部30の撮像素子32、記憶部41等が接続されている。
制御部40は、表示部3への画像の表示、操作部6での操作の制御、位置検出センサ4g,4hでの位置情報の取得の制御、光源11の点灯及び消灯動作の制御、測定用受光素子23での画像信号の取得動作の制御、撮像素子32での撮像信号の取得動作の制御等を行うとともに、記憶部41への各種情報の記憶処理並びに読出処理等の制御を行う。
実施例1では、内部メモリ40aは、RAM(Random Access Memory)等から構成される。記憶部41は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等から構成される。内部メモリ40a及び記憶部41には、必要な制御プログラムが格納されているとともに、各種情報が記憶される。
制御部40は、記憶部41のROM等に格納された制御プログラムを、例えば内部メモリ40aのRAM上に展開することにより、レンズメータ1の各部の動作制御や各種演算処理などを実行する。また制御部40は、この制御プログラムにしたがって、レンズ画像取得部42、レンズ画像データ取得部43、光学特性算出部44、座標データ取得部45、マッピング形成部46、画像生成部47、表示制御部48としても機能する。
レンズ画像取得部42は、撮像部30の撮像素子32から入力される撮像信号、つまり、撮像素子32によって光電変換された被写体像から、撮像部30によって撮像されたレンズ画像を取得する。すなわち、このレンズ画像取得部42は、撮像部30によって撮影された画像に対して、必要な画像処理や加工(例えば、座標変換、コントラスト調整、色変換(半透明やセピアカラーとする等)、明るさ調整、フィルタ処理等)を実施し、所望のレンズ画像を取得する。
レンズ画像取得部42は、実施例1では、レンズ画像の明るさを抑えたり薄い表示(例えば、半透明やセピアカラーとする)としたりすることで、オブジェクト画像やマッピング画像よりも目立たないようにレンズ画像を生成する。取得したレンズ画像の画像データは、レンズ画像データ取得部43、画像生成部47へと適宜出力される。なお、実施例1では、レンズ画像として動画像を取得する。また、レンズ画像には、実際はレンズ受け4bやレンズ押え4cが写り込むが、理解容易のために、図5~図7のレンズ画像では、これらを省略して示している。
レンズ画像データ取得部43は、レンズ画像取得部42にて取得されたレンズ画像から、公知の技術(例えば、コントラスト調整や形状マッチング等によりエッジ(輪郭)やコーナーや点等の特徴を検出する)により、被検レンズLの像を抽出する。実施例1では、被検レンズLの像を抽出するため、レンズ画像から被検レンズLの外周縁を抽出する。さらに、この外周縁のレンズ画像上での座標データ(位置情報)、つまり撮像素子32の座標系(以下、「撮像座標系」という。)での座標データを検出している。この外周縁の内側が、被検レンズLが存在するレンズ領域である。外周縁として、眼鏡フレームを取得してもよいし、縁なしメガネの場合は被検レンズL自体の外周縁を取得してもよい。抽出された外周縁の撮像座標系での座標データは、座標データ取得部45、画像生成部47へと出力される。
また、レンズ画像データ取得部43は、被検レンズLに指標が設けられている場合は、この指標を抽出し、この指標の撮像座標系での座標データを検出する。抽出された指標の画像及び撮像座標系での座標データは、座標データ取得部45、画像生成部47へと出力される。
なお、「指標」とは、被検レンズLに直接描かれたり、刻印されたり、貼付されたりした目印であり、印点インクによる印点マークや、アイポイントを示すマジック印、ペイント印、シール、隠しマーク等が挙げられる。また、被検レンズLが未加工レンズの場合、図9に示すように、指標として遠用度数測定位置マーク7a、加入度数測定位置マーク7b、遠用アイポイントマーク7c、近用アイポイントマーク7d、プリズム測定点7eがインクによって印刷・印点されている。マジックやインクで付された指標は、レンズを加工し枠入れ後に消去される。
また、マジックやインクで指標が付されていない場合でも、例えば、マッピング画像から検出された遠用度数測定位置(F点)や近用度数測定位置(N点)、隠しマーク等に基づいて、メーカやレンズの種類を特定し、データベース等から被検レンズLに設けられる指標の種類や指標が設けられた位置を取得することもできる。
光学特性算出部44は、測定用受光素子23から入力される画像信号、つまり、測定用受光素子23に結像されたパターン像に基づいて、被検レンズLの所定の測定位置おける球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、プリズム基底方向等の光学特性値を算出する。算出された光学特性値の数値データは、座標データ取得部45へと出力される。なお、「被検レンズLの測定位置」とは、投光光学系10から出射された測定光が入射するときの被検レンズL上での測定光軸Lmの位置である。
ここで、画像信号には、受光した複数の分割測定光束のそれぞれについての受光位置及び受光像の形状を示す情報が含まれている。この受光位置の情報は、測定用受光素子23の画素上の位置(座標データ)として表現される。各分割測定光束は、測定用受光素子23上での受光位置が被検レンズLの光学特性値に応じて変位されるので、測定用受光素子23上に形成される投影パターンの形状が縮小または拡大されたり歪んだりする。光学特性算出部44では、この複数の分割測定光束の投影パターンを解析することで、被検レンズLの光学特性値を求める。
座標データ取得部45は、被検レンズLの測定位置の位置情報としての座標データを取得する。撮像部30が測定光学系Kの測定光軸Lm上に設けられ、撮像素子32の中心、つまりレンズ画像の中心と測定光軸Lmとが合致することから、測定位置の座標データは、レンズ画像と測定光軸Lmとの位置関係に基づいて取得することができる。以下、図8を用いて測定位置の座標データの取得手順を説明する。
図8は、レンズ画像と測定光軸Lmとの位置関係を説明するための説明図であり、撮像素子32の座標のイメージと、撮像素子32で撮影されたレンズ画像のイメージを示している。図8のGが、撮像素子32の中心(以下、「撮像中心G」という)であり、測定光軸Lmの位置を示している。この撮像中心Gを、撮像座標系の原点とする。また、図8に示すLaは、被検レンズLの外周縁であり、この外周縁Laよりも内側が、実際に被検レンズLが存在するレンズ領域となっている。
座標データ取得部45は、レンズ画像データ取得部43で取得された被検レンズLの外周縁Laの撮像座標系での座標データに基づいて、被検レンズLの像の中心(以下、「レンズ中心O」という)を検出する。そのために、まず図8に示すように、外周縁Laの最下端、最下端、最左端、最右端の延長線の交点n1,n2,n3,n4を抽出する。最上端及び最下端の2等分線と、最左端及び最右端との二等分線との交点がレンズ中心Oであり、交点n1~n4の座標データから、レンズ中心Oの撮像座標系での座標データを算出することができる。なお、被検レンズLの傾き等を考慮して、上記交点n1~n4の他に、所定の1点又は複数点で取得した座標データをレンズ中心Oの座標データの取得に用いてもよい。
算出されたレンズ中心Oの座標データと、撮像中心Gの座標データ(原点(0,0))に基づいて、被検レンズL(レンズ領域)上での測定位置(撮像中心G)の座標データを算出する。つまり、測定位置(撮像中心G)の撮像座標系の座標データを、レンズ中心Oを原点とした座標系(以下、「レンズ座標系」という)の座標データに変換する。このように、レンズ座標系を用いることで、レンズ画像内(撮像素子32内)で、被検レンズLの像がいずれの位置に移動しても、被検レンズL上における測定位置を確実に特定することができる。なお、座標データ取得部45では、同様の手順で、レンズ画像データ取得部43で抽出された指標のレンズ座標系での座標データを取得する。
また、実施例1では、位置検出センサ4gから出力されるレンズテーブル4dのY軸方向の位置情報と、位置検出センサ4gから出力されるスライダ4fのX軸位置情報とに基づいて、測定光軸Lmに対する被検レンズLの位置情報を機械的に特定することができる。実施例1では、座標データ取得部45は、レンズ画像に基づいて測定位置の座標データを取得するときに、この機械的に特定した被検レンズLの位置情報を補助的に用いている。これにより、測定位置の座標データを、より精度よく、またエラー処理等に活用することができる。算出された測定位置の座標データは、光学特性値と関連付けられて、内部メモリ40aに蓄積され、マッピング形成部46と画像生成部47へと出力される。
マッピング形成部46は、被検レンズLの光学特性値の分布を表すマッピング画像を形成する。このマッピング形成部46には、座標データ取得部45から、各測定位置の光学特性値と、測定位置の座標データとが関連付けられて入力される。マッピング形成部46は、各測定位置での光学特性値のうち、光学特性値が等しい測定位置を、等高線のように等度数線によって結んだり、色分けしたりすることで、被検レンズLの光学特性値の分布を表すマッピング画像を形成する。なお、光学特性値と座標データに基づいて、光学特性を測定していない位置の光学特性値を推定して、等高線間にさらに等高線を挿入してより細密なマッピング画像を形成したり、等高線がより滑らかで高画質なマッピング画像を形成したりしてもよい。マッピング画像としては、例えば、球面度数の分布を示すもの、円柱度数の分布を示すもの、球面度数及び円柱度数の分布を示すもの、プリズム度数の分布を示すもの等が挙げられる。形成するマッピング画像は、予め決められていてもよいし、測定者が操作部6を操作して形成するマッピング画像を指定してもよい。形成されたマッピング画像の画像データは、画像生成部47へと出力される。
さらに実施例1では、マッピング形成部46は、光学特性値及び測定位置の座標データを解析することで、被検レンズLの光学的な特徴ポイント(特徴点)を検出するとともに、この特徴ポイントのマッピング画像上(つまりレンズ座標系)での座標データを検出する。なお、「被検レンズLの特徴ポイント(特徴点)」とは、被検レンズLにおいて光学的に特徴のある部分であり、被検レンズLの遠用度数測定位置(F点)や近用度数測定位置(N点)、累進帯の中心線、累進帯長等が挙げられる。検出された特徴ポイントの座標データは、特徴ポイントの種類と関連付けられて画像生成部47へと出力される。
なお、マッピング画像から検出されたF点、N点に関連して、アイポイント(例えば、遠用アイポイント、近用アイポイント)を算出することもできる。例えば、予め記憶部41に、メーカごとの様々な被検レンズLのF点及びN点の値と、アイポイントの位置の座標データとを対応づけて記憶しておく。そして、マッピング画像から検出されたF点、N点に基づいて、記憶部41から対応するアイポイントの座標データを抽出する。この座標データもアイポイントと関連付けられて画像生成部47へと出力される。
画像生成部47は、被検レンズLの光学特性の測定中に表示画面3aに表示する第1重畳画像I1(図5等参照)と、被検レンズLの測定終了後に表示画面3aに表示する第2重畳画像I2(図7参照)とを生成する。
画像生成部47は、光学特性の測定を補助するための記号や測定された光学特性値等のオブジェクト画像と、レンズ画像取得部42によって取得されたレンズ画像とを重畳して、第1重畳画像I1を生成する。
この第1重畳画像I1を生成するときに、画像生成部47は、オブジェクト画像としての、測定光学系Kの測定光軸Lmの位置を示す測定光軸記号Ooと、被検レンズLのレンズ光軸Llの位置を示すレンズ光軸記号Olと、プリズム量を段階的に示すプリズムサークル記号Op(以下では、Pサークル記号Opという)とを生成し、レンズ画像に重畳する(図5、図6参照)。測定光軸記号Ooは、レンズメータ1(測定光学系K)の光軸中心位置、すなわち測定光学系Kにおいて被検レンズLがないものとすると測定光軸Lmが存在する位置(パターンプレート22により形成されるパターンの重心位置)を示すもので、実施例1ではPサークル記号Opの中心として示される。レンズ光軸記号Olは、被検レンズLのレンズ光軸Llの位置を示すもので、実施例1では十字の記号で表されている。レンズ光軸Llは、被検レンズLにおける光学的な中心位置であり、入射した光を屈折させずに通過させる位置(プリズム量が0の位置)である。レンズ光軸記号Olは、このレンズ光軸Llの位置を示すことで、被検レンズLの位置を示すレンズ位置記号として機能する。Pサークル記号Opは、測定光軸Lmを中心として、被検レンズLの測定光軸Lmに位置する箇所のプリズム量を段階的に示す。Pサークル記号Opは、実施例1では測定光軸Lmの位置を中心として等しいプリズム値を円形に結びつつプリズム値が大きくなるほど外側に位置するように、同心状の複数の円の記号で表される。
また、画像生成部47は、光学特性算出部44で算出した被検レンズLの光学特性値を表す測定値表示Ovを生成してレンズ画像の右側に重畳させる。この測定値表示Ovとして、実施例1では、「S、C、A」の記号の右側に「球面度数」、「円柱度数」、「軸角度」の数値データを表示させ、「ΔP、ΔB」の記号の右側に、「プリズム度数」、「プリズム基底方向」の数値データを表示させる。また、累進焦点レンズの場合は、「ADD」の記号の右側に「加入度数」の数値データを表示させる。その他にも、瞳孔間距離(光学中心間距離)等を表示させてもよいし、左右いずれのレンズを測定しているか識別できるように、「R」(右)、「L」(左)等の記号を表示させてもよい。
また、画像生成部47は、被検レンズLの移動によって測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが近付いたとき、図6に示すように、測定光軸Lmの位置(測定光軸記号Oo)を強調するように4分割した太い枠状で囲む合致記号Omを重畳した第1重畳画像I1’を生成してもよい。合致記号Omは、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとの距離に応じて緑色や桃色等で色付けして重畳してもよい。
また、画像生成部47は、必要に応じてコメントバー7のオブジェクト画像を生成し、これを重畳して第1重畳画像I1,I1’を生成する。例えば、レンズメータ1が被検レンズLを非球面レンズと認識したときに、図6に示すように「非球面レンズ」の文字列が点滅するオブジェクト画像を生成する。このようなオブジェクト画像をコメントバー7として表示することで、測定者に対してマッピング画像取得のために、被検レンズLを移動させて複数箇所で光学特性を測定するように促すことができる。
なお、画像生成部47は、レンズ画像データ取得部43にて検出されたレンズ画像内の被検レンズLの外周縁の座標データに基づいて、生成した第1重畳画像I1,I1’を、被検レンズLの外周縁の少なくとも一部が含まれる画像に調整してもよい。すなわち、レンズ画像及びオブジェクト画像の表示範囲の調整を行うことで、被検レンズLの外周縁の少なくとも一部が、第1重畳画像I1,I1’に写るようにする。これにより、測定者が被検レンズLのレンズ領域を明確に把握することができ、光学特性の測定動作を補助して、被検レンズLの所望の測定位置での測定が容易となる。
また、画像生成部47は、マッピング形成部46によって形成されたマッピング画像と、レンズ画像取得部42によって取得されたレンズ画像とを重畳して、第2重畳画像I2を生成する。
この場合も、画像生成部47は、レンズ画像及びマッピング画像の表示範囲の調整を行うことで、被検レンズLの外周縁の少なくとも一部が、第2重畳画像I2に写るようにしてもよい。これにより、被検レンズLのレンズ領域が明確となり、測定者が光学特性値の分布と被検レンズLとの位置関係をより明確に把握とすることができる。この場合、レンズ領域をより明確にするため、外周縁等を強調するオブジェクト画像を重畳してもよい。
また、実施例1では、画像生成部47は、被検レンズLの特徴ポイントのマッピング画像上での位置を示すオブジェクト画像と、被検レンズLに設けられた指標のレンズ画像上での位置を示すオブジェクト画像とをレンズ画像及びマッピング画像に重ね合わせて第2重畳画像I2を生成する。このとき、座標データ取得部45で取得した各特徴ポイント、各指標のレンズ画像上での座標データに基づいて、各オブジェクト画像をレンズ画像上に重畳する。また、測定値表示Ovのオブジェクト画像を重畳してもよいし、コメントを表示する際には、コメントバー7のオブジェクト画像を重畳してもよい。
また、生成された第2重畳画像I2は、測定を終了するときに破棄してもよいし、記憶部41に記憶してもよい。また、この第2重畳画像I2と対応させて、各測定位置の光学特性値や座標データを記憶部41に記憶してもよい。このような記憶部41への記憶によって、必要に応じて第2重畳画像I2や光学特性値等を表示画面3aに再表示することができる。
図7に、被検レンズLが累進焦点レンズである場合の第2重畳画像I2の一例を示す。図7に示す第2重畳画像I2では、レンズ画像上に、累進帯部Aのレンズの加入度数(球面度数)の変化や累進帯部Aの左右の領域Bの歪み状態を等度数線又は色分け(カラーマップ)で表したマッピング画像が重畳されている。また、この図7の第2重畳画像I2には、オブジェクト画像として測定値表示Ovが重畳されている。
また、図7に示す第2重畳画像I2では、遠用度数測定位置(F点)の位置を示すオブジェクト画像O2として「F」の記号が重畳され、近用度数測定位置(N点)の位置を示すオブジェクト画像O1として「N」の記号が重畳され、累進帯中心線の位置を示すオブジェクト画像O3として「点線」が重畳されている。
また、レンズ画像データ取得部43によって抽出された指標であって実際のメガネ装用者の遠用アイポイントのマジック印を示すブジェクト画像O4として、「〇」印が重畳されている。また、レンズ画像データ取得部43によって、図9に示されるような指標が抽出されている場合は、これらの指標を示すオブジェクト画像を生成して、第2重畳画像I2に重畳してもよい。このような指標は、レンズ画像に写っていても不鮮明であったり、レンズ画像にマッピング画像を重畳することで視認できなくなったりすることがある。そのため、レンズ画像に指標を強調したオブジェクト画像を重畳することで、測定者が指標を明確に把握することができる。なお、実施例1では、このようにレンズ画像から指標を抽出して、オブジェクト画像を生成しているが、これに限定されない。マッピング画像を重畳しても指標を視認することができるように、レンズ画像とマッピング画像を共にハーフ透明とし、これらを重畳して第2重畳画像I2を生成してもよい。
表示制御部48は、画像生成部47にて生成された第1重畳画像I1,I1’や第2重畳画像I2の画像データを表示部3へと出力し、表示画面3aに表示させる。制御部40の制御によって、光学特性の測定中は表示画面3aに第1重畳画像I1,I1’を表示させ、測定終了後は表示画面3aに第2重畳画像I2を表示させる。
[画像制御処理]
以下、実施例1のレンズメータ1にて行われる画像制御処理の一例を、図10フローチャートを用いて具体的に説明する。画像制御処理は、レンズメータ1(制御部40)が被検レンズLを検出したとき(例えば、測定用受光素子23上の投影パターンの形状の変化等を検知したとき)に開始される。
画像制御処理が開始されると、ステップS1で、制御部40の制御の下、撮像部30による被検レンズLの画像の撮影を開始する。撮影された撮像データは、レンズ画像取得部42に逐次出力される。また、ステップS2では、測定光学系Kでの被検レンズLの光学特性の測定を開始する。被検レンズLの光学特性の測定は、制御部40の制御の下、投光光学系10の光源11から被検レンズLに向けて測定光を投光し、被検レンズLを通過した測定光の像を受光光学系20の測定用受光素子23で受光することで行う。
次にステップS3では、レンズ画像取得部42が、撮像部30から入力される撮像データに対して、必要な画像処理や加工を行ってレンズ画像を取得する。次いで、ステップS4で、レンズ画像データ取得部43が、ステップS3で取得したレンズ画像から被検レンズLの外周縁Laを抽出し、外周縁Laの撮像座標系での座標データを取得する。
次のステップS5では、光学特性算出部44が、被検レンズLの測定データ、つまり測定用受光素子23から入力される画像信号に基づいて、被検レンズLの測定位置における球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、プリズム基底方向等の光学特性値を算出する。
次のステップS6では、座標データ取得部45が、ステップS4で抽出された撮像座標系での外周縁Laの座標データに基づいて、交点n1,n2,n3,n4を抽出し、レンズ中心Oの座標データを算出する。このレンズ中心Oの座標データと撮像中心Gの座標データに基づいて、現在の光学特性の測定位置(撮像中心G)のレンズ座標系での座標データを算出する。この座標データは、光学測定値と関連付けられて内部メモリ40aに蓄積される。
そして、ステップS7で、画像生成部47が、測定光軸記号OoとPサークル記号Opと、被検レンズLの測定データに基づいたレンズ光軸記号Olと測定値表示Ovと、レンズ画像とを重畳して第1重畳画像I1を生成する。
ここで、画像生成部47は、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとの距離が、所定距離以下となったときに、合致記号Omを重畳して、第1重畳画像I1’を生成する。なお、被検レンズLを非球面レンズと認識したときは、画像生成部47は「非球面レンズ」の文字列が点滅するコメントバー7のオブジェクト画像を第1重畳画像I1,I1’に重畳する。
次いで、ステップS8では、表示制御部48が、ステップS7で生成された第1重畳画像I1または第1重畳画像I1’を表示画面3aに表示する。被検レンズLが移動する様子を示すレンズ画像と、その被検レンズLの位置に応じて移動するレンズ光軸記号Olとが、リアルタイムの動画像として表示画面3aに写し出される。したがって、測定者は、この表示画面3aで、測定光軸記号Oo、レンズ光軸記号Ol、Pサークル記号Opといった測定を補助する記号や文字列と、レンズ画像とを見比べながら、測定作業を容易に行うことができる。
また、第1重畳画像I1,I1’に「非球面レンズ」の文字列が点滅するコメントバー7が表示された場合、測定者は被検レンズLが非球面レンズであることを認識できる。そのため、測定者は、マッピング画像を生成するために、被検レンズLを適宜移動させて、レンズ面全体の光学特性を測定することができる。
次のステップS9では、被検レンズLの測定が終了したか否かを判断し、YESの場合はステップS10へ進む。NOの場合は、ステップS3へ戻り、ステップS3~S8の処理を繰り返して、他の測定位置の被検レンズLの光学特性の測定を行う。このステップS3~S8の処理を繰り返すことで、複数の測定位置での光学特性値の取得ができる。
測定が終了したか否かの判断は、例えば、操作部6から測定を終了させる旨の操作の信号を受けたときに終了したと判断し、それ以外の場合には終了していないと判断する。または、球面レンズと判別したときや、マッピング画像の生成に十分な複数の測定箇所での光学特性値の測定が終了したときに制御部40が測定を終了したと判断してもよい。さらには、測定した各光学特性値を、印字部で印字させたり測定データを外部に送信させたりする操作信号を操作部6から受けたときに測定が終了したと判断してもよい。なお、ステップS9で球面レンズと判別できた場合は、以降のステップS10~S13を適宜省略してもよい。
次いで、ステップS10では、光学特性の測定の終了を受けて、マッピング形成部46が、光学特性値の被検レンズL上での分布を表すマッピング画像を形成する。マッピング形成部46は、内部メモリ40aに記憶された複数の測定位置で測定された光学特性値と、各測定位置のレンズ座標系での座標データとに基づいて、光学特性値が等しい測定位置を等度数線によって結ぶことでマッピング画像を生成する。なお、各測定位置の座標データをレンズ座標系に変換しているため、マッピング画像の座標系も、レンズ座標系と合致している。
また、マッピング形成部46は、必要に応じて光学特性値及び測定位置の座標データを解析し、被検レンズLの特徴ポイント(遠用度数測定位置、近用度数測定位置、累進帯中心線等)を検出するとともに、この特徴ポイントのマッピング画像上での位置の座標データを検出する。
次のステップS11では、ステップS3で取得したレンズ画像を解析し、レンズ画像に写っている被検レンズLに、指標(アイポイントのマジック印、シール、遠用度数測定位置等のインクによる印刷・印点等)が設けられている場合は、その指標を抽出する。さらに、取得した指標の撮像座標系での座標データを取得する。この撮像座標系での座標データを、座標データ取得部45にてレンズ座標系での座標データに変換する。
なお、指標の抽出及び座標データの取得はステップS4にてレンズ画像から外周縁を抽出するときに行ってもよい。この場合は、ステップS4を繰り返すたびに指標の抽出を行う必要はなく、一度目のステップS4の実行時に行えばよい。また、第2重畳画像I2の作成までに指標が抽出できていれば、いずれのタイミングで行ってもよい。また、第2重畳画像I2に指標を重ねて表示する必要がなければ、ステップS11の処理をスキップすることもできる。
そして、ステップS12では、画像生成部47が、ステップS10にて生成したマッピング画像と、ステップS3にて取得したレンズ画像とを重畳して第2重畳画像I2を生成する。このとき、マッピング画像の座標系は、レンズ座標系と合致しているため、画像生成部47は、レンズ画像上での被検レンズLのレンズ中心Oを基準として、レンズ画像にマッピング画像を重ね合わせることで、容易に第2重畳画像I2を生成することができる。また、この第2重畳画像I2に対し、ステップS10にて検出した被検レンズLの特徴ポイントを示すオブジェクト画像と、ステップS11にて抽出した被検レンズLに設けられた指標を示すオブジェクト画像とを重ね合わせる。また、外周縁を強調するオブジェクト画像を重ね合わせてもよい。
なお、本実施例では、レンズ画像は動画であり、マッピング画像の座標系は、レンズ中心Oを原点としたレンズ座標系と合致させているので、レンズ画像に写された被検レンズLが動くと、マッピング画像と特徴ポイント、指標等のオブジェクト画像も追随して動くような第2重畳画像I2が生成される。
そして、ステップS13において、表示制御部48が、ステップS12にて生成した第2重畳画像I2の画像データを表示部3に対して出力し、表示部3の表示画面3aに第2重畳画像I2を表示する。このとき、被検レンズLの像が実際の被検レンズLと同じ大きさ(等倍)となるよう、第2重畳画像I2を表示してもよい。または拡大して表示してもよいし、縮小して表示してもよい。この第2重畳画像I2を視認することで、測定者は被検レンズLの光学特性の分布や、この分布と被検レンズLとの位置関係等を視覚的に把握することができる。実施例1ではレンズ画像が動画像であるため、測定者は、撮像部30が撮影している被検レンズLのレンズ画像とマッピング画像とをリアルタイムで確認することができる。また、操作部6からの操作等によって、表示画面3aに表示された第2重畳画像I2を、印字部で印字することができる。
そしてステップS14では、必要に応じて、第2重畳画像I2を記憶部41(不揮発メモリ)に記憶する。第2重畳画像I2と併せて、各測定位置の光学特性の測定データや座標データを記憶してもよい。これにより、必要に応じて記憶部41から第2重畳画像I2や光学特性値を読み出して表示画面3aに再表示することもできる。
その後、ステップS15へと進んで、制御部40の制御の下、撮像部30での撮影を終了し、画像制御処理を終了する。このステップS15の処理は、例えば、測定者が操作部6から終了操作を行い、その信号を制御部40が受信したときに行われる。
以上、図10のフローチャートを用いて画像制御処理の一例を説明したが、この例に限定されない。上記では、必要な光学特性の測定が終了した後にステップS10~S13の工程によってマッピング画像を形成し、第2重畳画像I2を生成して表示しているが、変形例として、光学特性を測定しながら第2重畳画像I2を同時に生成できる場合は、上記ステップS10~S13の工程を、ステップS3~S9のループ内で、ステップS7、ステップS8と並行して実行してもよい。つまり、第1重畳画像I1を表示して測定者に光学特性を測定させながら、取得した光学特性値に基づいて、リアルタイムでマッピング画像の形成と第2重畳画像I2の生成を行い、第1重畳画像I1を部分的に、第2重畳画像I2に入れ替えて表示してもよい。これにより、測定者は第1重畳画像I1だけでなく、マッピング画像が形成できた領域では第2重畳画像I2を視認しながら測定できるので、光学特性を測定すべき位置をより明確に把握することができ、不必要な箇所での測定を回避して、より円滑かつ効率的に光学特性を測定することができる。
次に、実施例1のレンズメータ1の動作の一例を説明する。以下では、実施例1では、被検レンズLとして、図5等に示すように、累進焦点レンズを用いた縁無しメガネ(ツーポイント)の一対の被検レンズLの光学特性を測定する場合について説明する。
実施例1のレンズメータ1では、被検レンズLを検出すると、図10に示すフローチャートにおいて、ステップS1→S2→S3→S4→S5→S6へと進んで、所定の測定位置での光学特性値及び座標データを取得する。次に、ステップS7→S8へと進んで、測定光軸記号Oo、Pサークル記号Op、レンズ光軸記号Ol及び測定値表示Ovからなるオブジェクト画像と、レンズ画像とを重畳し、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとの距離に応じて、図5、図6に示す第1重畳画像I1,I1’を生成して表示画面3aに表示する。
被検レンズLが累進焦点レンズであるため、「非球面レンズ」の文字列が点滅するコメントバー7のオブジェクト画像を、例えば図6に示す第1重畳画像I1’に重畳して表示画面3aに表示する。このコメントバー7を視認することで、測定者は、マッピング画像の生成のため、被検レンズLを移動させて、複数箇所での光学特性の測定を開始する。
したがって、次のステップS9の「測定が終了したか?」の判定がNOとなり、ステップS3に戻り、ステップS4→S5→S6へと進んで、異なる測定位置での光学特性値及び座標データを取得する。次に、ステップS7→S8へと進んで、第1重畳画像I1,I1’を生成し、表示画面3aに表示する。
以上のような測定動作を、被検レンズLの複数の測定位置で繰り返す。なお、これらの測定位置の特定は、被検レンズLの移動量に基づいて制御部40が自動で行ってもよいし、測定者が被検レンズLを移動して所望の測定位置が機械中心位置に到達したときに、操作部6を操作することによって手動で行ってもよい。
ここでは、縁無しメガネの一対のレンズの光学特性を測定するため、一方の被検レンズLの測定から第2重畳画像I2の表示までを行った後に、他方の被検レンズLの測定から第2重畳画像I2の表示までを行うようにしている。しかし、この手順に限定されず、一方の被検レンズLの複数箇所での光学特性の測定に続けて、他方の被検レンズLの複数箇所での光学特性の測定を行い、その後に第2重畳画像I2の表示を行うものであってもよい。
必要な測定位置での光学特性値及び座標データの取得ができたら(ステップS9の判定がYES)、ステップS10へと進んで、取得された光学測定値及び座標データに基づいて、この被検レンズLの光学測定値の分布を示すマッピング画像を形成する。また、必要に応じて被検レンズLの光学特性値、座標データ及びマッピング画像に基づいて、被検レンズLの特徴ポイントを及びその座標データを検出する。ここでは、被検レンズLが累進レンズであるため、特徴ポイントとして、遠用度数測定位置(F点)、近用度数測定位置(N点)、累進帯中心線が検出された。
マッピング画像が形成されたら、ステップS11へと進み、レンズ画像を解析して、被検レンズLに設けられた指標を抽出するとともに、この指標の座標データを検出する。ここでは、指標として被検レンズLに設けられた実際のメガネ装用者の遠用アイポイントを示すマジック印が抽出された。
このようにマッピング画像を形成し、被検レンズLの特徴ポイントの座標データの検出、指標の座標データの抽出をしたら、ステップS12へと進んで、光学測定値の分布を示すマッピング画像をレンズ画像に重畳するとともに、被検レンズLの特徴ポイント(遠用度数測定位置、近用度数測定位置、累進帯中心線)の位置に、これらを示すオブジェクト画像を重畳し、被検レンズLに設けられた指標(アイポイントのマジック印)の位置に、これを示すオブジェクト画像を重畳した第2重畳画像I2を生成する(図7参照)。図7では、縁無しメガネの一方の被検レンズLの第2重畳画像I2を示しているが、一対の被検レンズLの光学特性の測定を続けて行った場合、縁無しメガネ全体が写ったレンズ画像に、一対の被検レンズLのそれぞれのマッピング画像を重畳して第2重畳画像I2を生成してもよい。
第2重畳画像I2を生成したら、ステップS13へと進んで、この第2重畳画像I2を表示画面3aに表示させる。その後、ステップS14へと進んで、第2重畳画像I2を記憶部41に記憶する。そして、測定者が操作部6を操作する等によって終了の指示信号を受信すると、ステップS15へと進んで、撮像部30での撮影を終了し、画像制御処理を終了する。
以上説明したように、実施例1のレンズメータ1では、光学特性値と、該光学特性値の測定位置の位置情報(座標データ)に基づいて、被検レンズLの光学特性値の分布を表すマッピング画像を生成し、該マッピング画像と、レンズ画像とを重畳した第2重畳画像I2を生成して表示部3に表示している。そのため、測定者は、表示部3を目視することで、被検レンズLの光学特性の分布と被検レンズLの外観とを同時に把握することができ、光学特性値の分布と実際の被検レンズLとの位置関係を容易に把握することができる。
また、実施例1では、レンズ画像から取得した被検レンズLの像のレンズ中心Oと、測定光軸Lmが位置する撮像中心Gとの位置関係に基づいて、レンズ領域における測定位置の座標データを取得し、マッピング画像を形成している。したがって、レンズ画像中で被検レンズLがいずれの位置に写っていても、被検レンズLの像にマッピング画像を重畳することができる。
また、この実施例1では、被検レンズLの光学特性値に基づいて被検レンズLの特徴ポイントを検出し、第2重畳画像I2に前記被検レンズの特徴ポイントを示すオブジェクト画像を重畳している。
これにより、被検レンズLの特徴ポイント(遠用度数測定位置、近用度数測定位置、累進帯中心線)が表示部3に強調して表示され、測定者は、被検レンズLのどの位置に遠用度数測定位置や近用度数測定位置、累進帯中心線が形成されているのかを容易に確認することができる。そのため、被検レンズLの特徴ポイントと被検レンズLとの位置関係を容易に把握することができる。
また、被検レンズLに指標(アイポイントのマジック印、シール、遠用度数測定位置等のインクによる印刷・印点等)が設けられている場合、レンズ画像とマッピング画像とを重畳すると、マッピング画像によって指標が隠れてしまうことがある。そこで、実施例1では、レンズ画像から指標を検出し、第2重畳画像I2に指標を示すオブジェクト画像を重畳している。
これにより、マッピング画像とレンズ画像を重畳しても、被検レンズLに設けられた指標の位置を明確に確認することができ、この指標と光学特性の分布と被検レンズLとの位置関係を明確に把握することができる。
また、第2重畳画像I2を表示画面3aに表示するときに、表示部3の表示画面3a上に被検レンズLを載せて、被検レンズの像と重ねられるように、制御部40(画像生成部47)は被検レンズの像が等倍(実寸大)となるよう第2重畳画像I2を生成し、表示画面3aに表示させてもよい。
等倍で被検レンズLの像を表示することで、例えば、次のような使用形態とすることができる。表示部3での第2重畳画像I2の確認が終わったら、測定者は被検レンズLを取り外し、被検レンズLの像に合わせて表示画面3a上に被検レンズLを載せて、マッピング画像と重ねる。これにより、被検レンズLの光学特性の分布と被検レンズLとの位置関係をよりリアルに把握することができる。また、表示画面3aに被検レンズLを載せた状態で、マッピング画像の等高線や、N点、F点、累進帯中心線、アイポイント等の特徴ポイント、指標等を直接に被検レンズLに書込むことができ、その後の被検レンズLの加工や眼鏡のフィッティング等の補助に用いることもできる。また、特徴ポイント等の被検レンズLへの書き込みにより、装用者の眼球移動との関係の確認も容易に行うことができる。
これに対して、第2重畳画像I2を拡大して表示してもよく、要部等の光学特性がより見易くなる。また、第2重畳画像I2を縮小して表示してもよく、より広い領域を表示して、被検レンズLの全体的な光学特性を把握することができる。
また、実施例1では、光学特性を測定するときに、撮像部30で取得したレンズ画像に、測定光軸の位置を示すオブジェクト画像(測定光軸記号Oo)と、被検レンズLのレンズ光軸の位置を示すオブジェクト画像(レンズ光軸記号Ol)とを重ねた第1重畳画像I1を、表示部3に表示させている。
これにより、測定者は、光学特性の測定中に、表示部3を視認するだけで、被検レンズLの姿勢や移動状態を把握することができる。そのため、不慣れな測定者であっても実際の被検レンズLを見ることなく、被検レンズLの位置を調整して、光学特性の測定を行うことができる。また、レンズ領域以外の箇所で光学特性を測定してしまうことがなく、レンズ領域内の所望の測定位置での測定が可能となる。そのため、測定作業が補助されて、マッピング画像の作成のための測定データを、より効率よく取得することができる。
また、実施例1では、第2重畳画像I2と、光学特性値及び座標データとを記憶部41に記憶している。そのため、例えば、記憶部41から読み出した第2重畳画像I2を表示画面3aに再表示することで、光学特性値の分布、特徴ポイント等の最確認ができる。さらには枠入れ後に消去された指標等の確認を行うことができる。また、光学特性値の分布や特徴ポイントや指標等をレンズに書込んで、眼鏡のフィッティング等の補助に用いることもできる。
以上、本発明のレンズメータを実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1では、光学特性の測定中にも、レンズ画像と測定光軸記号Ooや測定値表示Ov等のオブジェクト画像とを重畳した第1重畳画像I1,I1’を表示画面3aに表示しているが、これに限定されない。例えば、光学特性の測定中は、レンズ画像を重畳することなく、測定光軸記号Ooや測定値表示Ov等のオブジェクト画像のみを表示する構成としてもよい。
また、実施例1では、レンズ画像として動画像を取得し、第1重畳画像I1,I1’、第2重畳画像I2を生成する例を示したが、これに限定されない。例えば、レンズ画像として静止画像を取得してもよい。そして、第1重畳画像I1,I1’を生成する際には、被検レンズLの移動に応じて、移動先での静止画像を取得し、この静止画像と測定光軸記号Oo等のオブジェクト画像と重畳してもよい。また、第2重畳画像I2を生成する際にも、被検レンズLの静止画像とマッピング画像とを重畳してもよい。
また、実施例1では、撮像部30を、一対の投光光学系10の間に配置された単眼式デジタルカメラによって構成する例を示したが、例えば複眼式のデジタルカメラによって撮像部30を構成してもよいし、複数の単眼式カメラで撮像部30を構成してもよい。さらに、複眼式カメラ又は複数の単眼式カメラを用いた場合では、撮影された画像を合成してレンズ画像を生成してもよい。眼式カメラ又は複数の単眼式カメラを用いることで、部品等で隠れて撮影しにくい箇所でも撮影することができ、被検レンズLの特徴ポイントや指標等をより検出し易くすること等ができる。
実施例1では、撮像部30を装置本体2の上部2aに内蔵し、測定光軸Lmを中心としつつ一辺が100mmとなる正方形状の領域を撮像可能な位置に取り付けられた例を示したが、これに限定されない。撮像部30は、例えば、レンズ押え4c(図1において30Bで示す位置)や、レンズテーブル4d(図1において30Aで示す位置)、装置本体2に形成されたレンズセット空間2cを区画する壁面の表面等に設けてもよい。また、撮像部30は、投光光学系10と受光光学系20の連結部に設けてもよいし、受光光学系20の下部に設け、受光光学系20の下側から上方を撮影する方式としてもよい。つまり、撮像部30の取り付け位置は、被検レンズLを撮像し、レンズ画像を取得可能な位置であれば任意に設定することができる。
また、レンズ押え4cやレンズ受け4bを、プラスチックよりも剛性の高い板金によって形成すると共に厚みや幅を薄くして、被検レンズLの撮像の邪魔にならないようにしてもよい。さらに、レンズ押え4c等を透明な樹脂によって形成することで、被検レンズLの撮像の邪魔にならないようにしてもよい。なお、レンズ押え4c等が写る領域が予め解っているので、レンズ画像取得部42が画像処理によりこれらを消してレンズ画像を生成してもよいし、他の構成でもよい。
また、実施例1では、被検レンズLが累進焦点レンズである場合の例を説明したが、被検レンズLが累進焦点レンズに限定されることはない。二重焦点レンズ、三重焦点レンズ、遠用レンズ、近用レンズ、中近レンズ等の多焦点レンズに適用することもできる。また、単焦点レンズにも適用することもできる。
また、素性の明らかでない被検レンズLであっても、被検レンズLの光学特性値の分布や特徴ポイントを知ることで、その素性を明らかにすることができる。また、光学特性値の分布や特性基準を、レンズの加工や枠入れ、フィッティング等をする際の参考情報として使用することもでき、これらの作業効率を向上させることができる。また、同じ未加工レンズを使用しても、枠入れする眼鏡フレームの形状や上下左右方向の長さに応じて加工したときに、被検レンズL上での光学特性値の分布や遠用度数測定位置等の特徴ポイントの位置が変わる場合がある。実施例1のレンズメータ1を用いることで、加工後や枠入れ後のレンズの光学特性の分布や特徴ポイントの位置を容易に把握することができる。
また、実施例1では、測定位置の座標データの取得を、レンズ画像に写った被検レンズLのレンズ中心Oと測定光軸Lm(撮像中心G)との位置関係、及び位置検出センサ4g,4hからのレンズテーブル4dとスライダ4fの位置情報の双方に基づいて行っているが、実施例1に限定されない。測定位置の座標データの取得を、いずれか一方のみに基づいて行ってもよい。
レンズ画像に写った被検レンズLのレンズ中心Oとレンズ画像の測定光軸Lm(撮像中心G)との位置関係にのみ基づいた場合でも、測定位置の座標データを高精度に取得することができるとともに、レンズテーブル4dとスライダ4fの位置情報を用いた演算処理の工程を省いて、座標データの取得時の演算速度を上げることができる。この場合、スライダ4fを設けていないレンズメータ1での実施に好適である。一方、レンズテーブル4dとスライダ4fの位置情報にのみ基づいて測定位置の座標データを取得した場合は、座標データの取得をより簡易に行うことができる。
また、実施例1では、図1に示すように表示部3は、装置本体2の前面上部に設けられ、レンズメータ1の一部であるような構成となっているが、実施例1の例に限定されない。例えば、表示部3が、レンズメータ1に有線又は無線で接続されたパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等、レンズメータ1とは別個の情報機器に設けられていてもよい。このような表示部3にも、レンズ画像とマッピング画像を重畳した第2重畳画像I2を表示することで、光学特性値の分布と被検レンズとの位置関係を容易に把握することができる。また、これらの情報機器は、処理能力が高く容量も大きいため、これらの情報機器に制御部40や記憶部41を設けてもよく、画像制御処理をより高速かつより高精度に行うことができ、より高精度な第2重畳画像I2等を生成して表示することができる。