以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(及びその変形例)に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
また、以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、電極体が有する一対のタブ束の並び方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。また、容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、容器の厚さ方向、または、電極体の極板の積層方向をY軸方向と定義する。また、電極端子と集電体と電極体との並び方向、蓄電素子の容器本体と蓋との並び方向、容器の短側面の長手方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。また、以下の説明において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
(実施の形態)
[1 蓄電素子の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る蓄電素子10を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、スノーモービル、農業機械、建設機械等の移動体の駆動用またはエンジン始動用のバッテリ等として用いられる。
なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、直方体形状以外の多角柱形状、円柱形状、長円柱形状等であってもよいし、ラミネート型の蓄電素子とすることもできる。
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子210と、正極上部ガスケット300と、負極上部ガスケット310とを備えている。また、図2に示すように、容器100内方には、正極下部ガスケット400、負極下部ガスケット500、正極集電体600、負極集電体610、及び、電極体700が収容されている。また、容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、省略して図示している。なお、当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。また、上記の構成要素の他、電極体700の側方や上方等に配置されるスペーサ、または、電極体700等を包み込む絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
容器100は、矩形筒状で底を備える容器本体110と、容器本体110の開口を閉塞する板状部材である蓋体120とで構成された直方体形状(箱型)のケースである。また、容器100は、電極体700等を内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等されることにより、内部を密封することができる構成となっている。なお、容器100の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
また、蓋体120の正極端子200側には、容器100内部に電解液を注入するための円形状の貫通孔(注液口)である液口121が形成され、蓋体120の液口121の位置には、液口121を塞ぐ液栓130が配置されている。さらに、蓋体120には、容器100の内圧が上昇したときに容器100内部のガスを排出するガス排出弁122が配置されている。
電極体700は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる平板状かつ矩形状の正極集電箔と、正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを有している。負極板は、銅または銅合金等からなる平板状かつ矩形状の負極集電箔と、負極集電箔の表面に形成された負極活物質層とを有している。なお、正極活物質層及び負極活物質層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
また、正極集電箔及び負極集電箔は、ともに、上方(Z軸方向プラス側)に突出する矩形状のタブを有している。そして、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを挟んで積層されることにより、正極板及び負極板ともに複数のタブが積層される。その結果、電極体700には、正極側のタブ束710と負極側のタブ束720とが形成されている。
なお、正極板及び負極板は、矩形状を有していることとしたが、正極板及び負極板の形状は、矩形状には限定されず、矩形状以外の多角形状、長楕円形状、長円形状等でもよい。また、正極板及び負極板のタブについても、矩形状には限定されず、矩形状以外の多角形状、半円形状、半長円形状、半楕円形状等、どのような形状でもかまわない。また、積層された正極板及び負極板は、例えば、電極体700の周囲またはX軸方向両側に絶縁テープが配置されて、積層方向(Y軸方向)に挟まれることで、固定されていることにしてもよい。または、ヒートプレス等によって、当該正極板及び負極板が積層方向に固定されていることにしてもよい。
正極端子200は、正極集電体600を介して、電極体700の正極板に電気的に接続される電極端子である。負極端子210は、負極集電体610を介して、電極体700の負極板に電気的に接続される電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子210は、電極体700に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体700に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。正極端子200及び負極端子210は、かしめ等によって、正極集電体600及び負極集電体610に接続され、かつ、蓋体120に取り付けられている。
具体的には、正極端子200は、下方(Z軸方向マイナス側)に延びる円柱形状の軸部201(リベット部)を有している。そして、軸部201が、正極上部ガスケット300の円形状の貫通孔301と、蓋体120の円形状の貫通孔123と、正極下部ガスケット400の円形状の貫通孔401と、正極集電体600の円形状の貫通孔601とに挿入されて、かしめられる。これにより、正極端子200は、正極上部ガスケット300、正極下部ガスケット400及び正極集電体600とともに、蓋体120に固定される。負極側についても同様である。なお、正極端子200及び負極端子210は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等で形成されている。
正極集電体600は、電極体700の正極板と正極端子200とを電気的に接続する平板状の導電部材である。負極集電体610は、電極体700の負極板と負極端子210とを電気的に接続する平板状の導電部材である。具体的には、正極集電体600は、電極体700の正極側のタブ束710と溶接等により接合されるとともに、上述の通り、正極端子200とかしめ等により接合される。負極集電体610は、電極体700の負極側のタブ束720と溶接等により接合されるとともに、上述の通り、負極端子210とかしめ等により接合される。正極集電体600は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極集電体610は、銅または銅合金等で形成されている。
さらに具体的には、電極体700の正極側のタブ束710が図2に示すY軸方向に束ねられて、タブ束710のY軸方向マイナス側の面と負極集電体610のZ軸方向マイナス側の面とが当接した状態で、タブ束710が負極集電体610に溶接等により接合される。そして、タブ束710の図2に示すY軸方向マイナス側の面がZ軸方向プラス側に向いた状態(つまり、正極集電体600が図2に示す姿勢になった状態)で、正極集電体600が正極端子200とかしめ等により接合される。負極側についても、同様である。
なお、正極集電体600と正極端子200とを接続(接合)する手法は、かしめ接合には限定されず、超音波接合、レーザ溶接、抵抗溶接等の溶接、または、ねじ締結等のかしめ以外の機械的接合等が用いられてもよい。また、正極集電体600とタブ束710とを接続(接合)する手法は、超音波接合、レーザ溶接、抵抗溶接等、どのような溶接が用いられてもよいし、かしめ接合やねじ締結等の機械的接合等が用いられてもよい。負極集電体610側についても、同様である。
また、正極集電体600及び負極集電体610は、電極体700と容器100の蓋体120との間に配置される。具体的には、正極集電体600は、電極体700の正極側のタブ束710と正極下部ガスケット400との間に配置され、負極集電体610は、電極体700の負極側のタブ束720と負極下部ガスケット500との間に配置される。つまり、正極集電体600は、蓋体120とで正極下部ガスケット400を挟む位置に配置され、負極集電体610は、蓋体120とで負極下部ガスケット500を挟む位置に配置される。
正極上部ガスケット300は、容器100の蓋体120と正極端子200との間に配置された、平板状の絶縁性の封止部材である。負極上部ガスケット310は、容器100の蓋体120と負極端子210との間に配置された、平板状の絶縁性の封止部材である。具体的には、正極上部ガスケット300は、正極端子200の下部及び側部を覆うように形成され、負極上部ガスケット310は、負極端子210の下部及び側部を覆うように形成されている。
正極下部ガスケット400は、蓋体120と正極集電体600との間に配置された、平板状の絶縁性の封止部材である。負極下部ガスケット500は、蓋体120と負極集電体610との間に配置された、平板状の絶縁性の封止部材である。また、正極下部ガスケット400には、蓋体120の凸部124に対向する位置に、凸部402が形成されている。凸部124及び凸部402は、Z軸方向プラス側に突出し、かつ、Z軸方向マイナス側に凹部が形成された膨出状の部位である。これにより、凸部124に形成された当該凹部に凸部402が挿入されることで、正極下部ガスケット400が蓋体120に対して回転等移動するのが抑制される。なお、正極上部ガスケット300の凸部124に対向する位置にも凹部が形成されており、この凹部に凸部124が挿入されることで、正極上部ガスケット300についても蓋体120に対して回転等移動するのが抑制される。負極下部ガスケット500側についても同様である。
さらに、正極下部ガスケット400には、蓋体120の液口121と対向する位置に、円形状の貫通孔である第二開口部403が形成されている(図4参照)。つまり、正極下部ガスケット400は、液口121と対向する位置に配置される第一絶縁部材の一例である。これにより、液口121から第二開口部403を介して、容器100の内部に容易に電解液を注入することができる。なお、部品を共通化する等の観点から、負極下部ガスケット500にも第二開口部403と同様の開口部が形成されていてもよい。正極下部ガスケット400の構成の詳細な説明については、後述する。
なお、正極上部ガスケット300、負極上部ガスケット310、正極下部ガスケット400及び負極下部ガスケット500は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルサルフォン(PES)、及び、それらの複合材料等の樹脂等によって形成されている。
[2 正極下部ガスケットの構成の説明]
次に、正極下部ガスケット400の構成について、詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る正極下部ガスケット400の構成を示す斜視図である。具体的には、図3は、正極下部ガスケット400を斜め上方から見た場合の斜視図、つまり、図2に示した正極下部ガスケット400を拡大して示す拡大斜視図である。図4は、本実施の形態に係る蓋体120と正極下部ガスケット400と正極集電体600との位置関係を示す断面図である。具体的には、図4は、蓄電素子10における正極下部ガスケット400の第二開口部403及びその周辺を、XZ平面に平行な面で切断した場合の構成を拡大して示す拡大断面図である。
図3に示すように、正極下部ガスケット400は、ガスケット本体部410と、ガスケット突出部420とを有している。ガスケット本体部410は、正極下部ガスケット400の本体を構成する矩形状かつ板状の部位であり、上述の貫通孔401及び凸部402を有している。具体的には、ガスケット本体部410は、X軸方向マイナス側かつY軸方向中央位置に、貫通孔401を有しており、ガスケット本体部410のX軸方向略中央位置かつY軸方向中央位置に、凸部402を有している。
また、図4に示すように、ガスケット本体部410のZ軸方向マイナス側の面には、正極集電体600が配置(収容)されるガスケット本体凹部411が形成されている。つまり、ガスケット本体部410は、蓋体120と正極集電体600とに当接し、かつ、蓋体120と正極集電体600とに挟まれて、配置されている。これにより、ガスケット本体部410は、蓋体120と正極集電体600との間を絶縁し封止する。
ガスケット突出部420は、ガスケット本体部410のX軸方向プラス側かつZ軸方向マイナス側の端部から、X軸方向プラス側に突出する矩形状かつ平板状の部位である。つまり、ガスケット突出部420は、正極集電体600に接合された電極体700のタブ束710が、正極集電体600よりもX軸方向プラス側に突出して配置される場合に、蓋体120とタブ束710との間を絶縁する役割を担っている。また、ガスケット突出部420は、蓋体120の液口121からの電解液を通過させるために、上述の第二開口部403を有している。具体的には、ガスケット突出部420は、X軸方向プラス側かつY軸方向中央位置に、第二開口部403を有している。
また、ガスケット突出部420は、さらに、第一開口部404及び405を有している。ここで、上述の通り、ガスケット本体部410の貫通孔401は、正極端子200の軸部201が挿入されて、正極集電体600等とともに正極端子200に接続される部分である。つまり、貫通孔401は、正極下部ガスケット400以外の他の部材(正極端子200)との接続部分に形成された開口部である。また、第二開口部403は、蓋体120の液口121と対向する位置に配置された開口部である。このため、第一開口部404及び405は、液口121と対向しない位置、かつ、他の部材との接続部分とは異なる位置に形成された、正極下部ガスケット400のガスケット突出部420を厚み方向に貫通する開口部である。
なお、正極下部ガスケット400に、正極端子200以外の部材(例えば、正極集電体600、蓋体120、スペーサ等)が挿入されて当該部材と接続される開口部が形成されている場合には、当該開口部は、他の部材との接続部分に形成された開口部となる。つまり、第一開口部404及び405は、液口121と対向する第二開口部403以外の、内方に他の部材が配置(挿入)されない開口部である。
また、第一開口部404及び405は、第二開口部403と隣り合う位置に配置されている。本実施の形態では、第二開口部403を囲うように、複数の第一開口部404及び405が配置されている。具体的には、第二開口部403の周囲に、複数の第一開口部404及び405(本実施の形態では、3つの第一開口部404及び2つの第一開口部405)が環状に配置されている。
つまり、第一開口部404は、第二開口部403のX軸方向マイナス側及びY軸方向両側に、第二開口部403に沿って形成された円弧形状の貫通孔(スリット)である。また、第一開口部405は、ガスケット突出部420のX軸方向プラス側の端縁からX軸方向マイナス側に切り欠いた切り欠き(凹部)である。このように、複数の第一開口部404と複数の第一開口部405とが、第二開口部403の周囲の全周を囲うように配置されている。
また、図4に示すように、正極下部ガスケット400は、第一開口部404及び405が形成された部位が、容器100から離間して配置されている。つまり、ガスケット突出部420は、蓋体120から離間して配置されている。また、蓋体120のZ軸方向マイナス側の面における液口121の周囲には、蓋体凹部125が形成されている。蓋体凹部125は、ガスケット突出部420の第二開口部403、第一開口部404及び405の全体を覆うように設けられた円形状の凹部である。これにより、ガスケット突出部420の第二開口部403、第一開口部404及び405が形成された部位は、蓋体120からさらに離間して配置されている。なお、蓋体凹部125に代えて、または、蓋体凹部125に加えて、ガスケット突出部420の第二開口部403、第一開口部404及び405が形成された部位の上面に凹部が形成されることで、当該部位が蓋体120からさらに離間して配置されることにしてもよい。
さらに、正極集電体600は、第一開口部404及び405の少なくとも一部を露出させた状態で配置されている。本実施の形態では、正極集電体600は、ガスケット本体部410のガスケット本体凹部411に配置されているため、Z軸方向においてガスケット突出部420とは重なっていない。このため、正極集電体600は、ガスケット突出部420の第二開口部403、第一開口部404及び405の全部を露出させた状態で配置されている。
また、本実施の形態では、正極集電体600に接合された電極体700のタブ束710は、正極集電体600の位置からX軸方向プラス側に突出し、液口121の全部または一部の直下(Z軸方向マイナス側)に配置される。つまり、タブ束710は、ガスケット突出部420の第二開口部403、第一開口部404及び405の全部または一部の直下(Z軸方向マイナス側)に、当該全部または一部を覆うように配置される。
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、容器100の液口121に対向し容器100と正極集電体600とで挟まれた正極下部ガスケット400(第一絶縁部材)が、液口121と対向しない位置、かつ、他の部材との接続部分とは異なる位置に第一開口部404及び405を有している。このように、正極下部ガスケット400に、電解液の液口121と対向する第二開口部403でもなく、他の部材との接続部分の開口部(貫通孔401等)でもない第一開口部404及び405を設ける。これにより、電解液の注液時に、電解液が第一開口部404及び405を通過することができれば、電解液を容器100内にスムーズに注入することができるため、電解液の注液性を向上させることができる。
また、正極下部ガスケット400に第一開口部404及び405が設けられることで、容器100内の空間が増えるため、容器100内を真空引きした後に電解液を注入する場合に、効果的に真空引きを行うことができ、電解液の注液性を向上させることができる。つまり、一般的に、蓄電素子10の容器100に電解液を注入する際に、容器100内を真空引きした後に電解液を注入することが行われているが、蓄電素子10は、エネルギー密度を向上させるために、容器100内の空間を少なく形成している。そして、容器100内の空間の体積が小さいと、十分に真空引きを行うことができず、電解液を効果的に注入することができない場合がある。このため、正極下部ガスケット400に第一開口部404及び405を設けることで、容器100内の空間の体積を増やすことができるため、より真空引きを行うことができ、電解液の注液性を向上させることができる。
また、正極下部ガスケット400には、液口121と対向する位置に第二開口部403が形成され、第一開口部404及び405は、第二開口部403と隣り合う位置に配置されている。このように、正極下部ガスケット400において、液口121と対向する第二開口部403と隣り合う位置に第一開口部404及び405を配置することで、第一開口部404及び405が液口121の近くに配置される。これにより、電解液の注液時に、液口121から注入された電解液が、第一開口部404及び405を通過しやすくなる。電解液が第二開口部403に加えて第一開口部404及び405も通過することができれば、電解液を容器100内にスムーズに注入することができるため、電解液の注液性を向上させることができる。また、電解液の注液時に液口121から真空引きを行う場合には、液口121の近くの第一開口部404及び405内の空気を真空引きしやすいため、電解液の注液性を向上させることができる。
また、正極下部ガスケット400には、第二開口部403を囲うように複数の第一開口部404及び405が配置されている。これにより、複数の第一開口部404及び405が液口121の近くに配置されることとなるため、電解液の注液時に、液口121から注入された電解液が、当該複数の第一開口部404及び405も通過しやすくなる。電解液が第二開口部403に加えて当該複数の第一開口部404及び405も通過することができれば、電解液を第二開口部403の周囲に広がるように拡散させることができるため、電解液の注液性を向上させることができる。また、電解液の注液時に液口121から真空引きを行う場合には、当該複数の第一開口部404及び405内の空気を真空引きすることができるため、電解液の注液性を向上させることができる。
また、液口121と対向する位置に大きな第二開口部403を形成すると、容器100と他の部材との絶縁性が低下するそれがある。特に、本実施の形態では、電極体700のタブ束710が、液口121の全部または一部の直下に配置されているため、液口121から真空引きを行う場合に、タブ束710が第二開口部403からZ軸方向プラス側に引っ張られて、蓋体120に接触するおそれがある。このため、第二開口部403と隣り合う位置に第一開口部404及び405を配置(第二開口部403を囲うように複数の第一開口部404及び405を配置)する。これにより、第二開口部403の大きさを小さく抑えることができるため、蓋体120とタブ束710との絶縁性を確保することができる。また、この場合、液口121の直下にタブ束710を配置することができるため、タブ束710の幅を大きくとることができる。また、正極下部ガスケット400に、第二開口部403とは別に第一開口部404及び405を設けることで、正極下部ガスケット400の軽量化を図りつつ、正極下部ガスケット400の強度確保を図ることもできる。
また、正極下部ガスケット400の第一開口部404及び405が形成された部位が、容器100から離間して配置されている。これにより、電解液の注液時に、液口121から注入された電解液が、容器100と正極下部ガスケット400との隙間を通って、第一開口部404及び405まで到達しやすくなる。電解液が第一開口部404及び405まで到達できれば、電解液が第一開口部404及び405を通過することができるため、電解液の注液性を向上させることができる。また、電解液の注液時に液口121から真空引きを行う場合には、容器100と正極下部ガスケット400とを離間させることで形成された空間の空気を真空引きすることができるため、電解液の注液性を向上させることができる。
また、容器100と正極下部ガスケット400とを離間させることで、正極下部ガスケット400を挟む容器100と他の部材との間の沿面距離を長くすることができるため、容器100と当該他の部材との間の絶縁性を向上させることができる。さらに、液口121から真空引きを行う場合に、タブ束710が第二開口部403からZ軸方向プラス側に引っ張られても、タブ束710が蓋体120に接触するのを抑制することができる。
また、正極集電体600は、正極下部ガスケット400の第一開口部404及び405の少なくとも一部を露出させた状態で配置されている。つまり、正極集電体600は、第一開口部404及び405の全部を塞がないように配置されている。これにより、電解液の注液時に、電解液が第一開口部404及び405まで到達した場合に、正極集電体600が、電解液が第一開口部404及び405を通過する際の妨げになるのを抑制することができるため、電解液の注液性を向上させることができる。また、電解液の注液時に液口121から真空引きを行う場合には、正極集電体600が第一開口部404及び405内の気体を真空引きする際の妨げになるのを抑制することができるため、電解液の注液性を向上させることができる。
[4 変形例の説明]
(変形例1)
次に、上記実施の形態の変形例1について、説明する。図5は、本実施の形態の変形例1に係る正極下部ガスケット400aの構成を示す斜視図である。具体的には、図5は、図3に対応する図である。
図5に示すように、本変形例における正極下部ガスケット400aは、上記実施の形態における正極下部ガスケット400のガスケット突出部420に代えて、ガスケット突出部420aを有している。ガスケット突出部420aは、ガスケット突出部420の第二開口部403、第一開口部404及び405に代えて、第二開口部403a及び第一開口部404aを有している。その他の構成については、上記実施の形態と同様である。
第二開口部403aは、蓋体120の液口121と対向する位置に形成された貫通孔である。具体的には、第二開口部403aは、ガスケット突出部420aのX軸方向中央位置及びY軸方向中央位置に配置された、X軸方向に延びる矩形状の貫通孔である。
第一開口部404aは、液口121と対向しない位置、かつ、他の部材との接続部分とは異なる位置に形成された開口部(貫通孔)であり、第二開口部403aと隣り合う位置に配置されている。具体的には、ガスケット突出部420aには、第二開口部403aとともに直線状に並ぶ複数の第一開口部404aが配置されている。本実施の形態では、ガスケット突出部420aのX軸方向中央位置に、8つのX軸方向に延びる矩形状の第一開口部404aが、第二開口部403aとともにY軸方向に並んで配置されている。つまり、第二開口部403aのY軸方向プラス側に、4つの第一開口部404aがY軸方向に並んで配置され、第二開口部403aのY軸方向マイナス側にも、4つの第一開口部404aがY軸方向に並んで配置されている。このように、第二開口部403a及び複数の第一開口部404aは、ガスケット突出部420aのY軸方向の一端から他端に亘って、ほぼ均等に配列されて配置されている。
なお、蓋体120には、上記実施の形態と同様の蓋体凹部125が形成されていてもよいが、Z軸方向から見て、第二開口部403aよりも大きい蓋体凹部125が形成されているのが好ましく、複数の第一開口部404aよりも大きい蓋体凹部125が形成されているのがさらに好ましい。つまり、Z軸方向から見て、第二開口部403a及び複数の第一開口部404aの全てを覆うように、Y軸方向の一端から他端までに亘って延びる蓋体凹部125が形成されているのが好ましい。または、ガスケット突出部420aの、第二開口部403a及び複数の第一開口部404aが形成された部位のZ軸方向プラス側の面に、凹部が形成されていてもよい。
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、正極下部ガスケット400aには、第二開口部403aとともに直線状に並ぶ複数の第一開口部404aが配置されている。これにより、複数の第一開口部404aが液口121の近くから直線状に配置されることとなるため、電解液の注液時に、液口121から注入された電解液が、当該複数の第一開口部404aも通過しやすくなる。電解液が第二開口部403aに加えて当該複数の第一開口部404aも通過することができれば、電解液を第二開口部403aから直線状に広がるように拡散させることができるため、電解液の注液性を向上させることができる。また、電解液の注液時に液口121から真空引きを行う場合には、当該複数の第一開口部404a内の空気を真空引きすることができるため、電解液の注液性を向上させることができる。
また、複数の第一開口部404aは、ガスケット突出部420aのY軸方向の一端から他端に亘って配置されているため、電極体700のタブ束710が液口121の直下に配置されても、いずれかの第一開口部404aがタブ束710の直下に位置しないように配置できる。このため、電解液の注液時に、第一開口部404aを電解液が通過しやすくすることができ、また、真空引きの際にも、第一開口部404aから真空引きしやすくすることができる。
さらに、第二開口部403aを大きくするのではなく第二開口部403aの他に複数の第一開口部404aを形成することで、第二開口部403aの大きさを小さく抑えて容器100と他の部材(電極体700のタブ束710等)との絶縁性を確保することができる。また、正極下部ガスケット400aに、第二開口部403aとは別に第一開口部404aを設けることで、正極下部ガスケット400aの軽量化を図りつつ、正極下部ガスケット400aの強度確保を図ることもできる。
(変形例2)
次に、上記実施の形態の変形例2について、説明する。図6は、本実施の形態の変形例2に係る正極下部ガスケット400bの構成を示す斜視図である。具体的には、図6は、図3に対応する図である。図7Aは、本実施の形態の変形例2に係る蓋体120と正極下部ガスケット400bと正極集電体600との位置関係を示す斜視図である。具体的には、図7Aは、蓋体120と正極下部ガスケット400bと正極集電体600とが組み付けられた状態を、上下逆にして斜め上方から見た場合の斜視図である。図7Bは、本実施の形態の変形例2に係る蓋体120と正極下部ガスケット400bとの位置関係を示す斜視図である。具体的には、図7Bは、図7Aから正極集電体600を取り除いた状態での構成を示す斜視図である。
まず、図6に示すように、本変形例における正極下部ガスケット400bは、上記実施の形態における正極下部ガスケット400のガスケット本体部410及びガスケット突出部420に代えて、ガスケット本体部410b及びガスケット突出部420bを有している。ガスケット本体部410bは、ガスケット突出部420の第一開口部404及び405に代えて、第一開口部404b及び404cを有している。ガスケット突出部420bは、ガスケット突出部420の第二開口部403に代えて、第二開口部403bを有している。その他の構成については、上記実施の形態と同様である。
第二開口部403bは、ガスケット突出部420bの、蓋体120の液口121と対向する位置に形成された切り欠きである(図7A、図7B参照)。具体的には、第二開口部403bは、ガスケット突出部420bのX軸方向プラス側の端縁のY軸方向中央位置から、X軸方向マイナス側に切り欠いた半長円形状の切り欠き(凹部)である。なお、第二開口部403bの形状は特に限定されず、半楕円形状、半円形状、三角形状、矩形状、その他の多角形状等、どのような形状でもよい。
第一開口部404b及び404cは、液口121と対向しない位置、かつ、他の部材との接続部分とは異なる位置に形成された開口部(貫通孔)である。具体的には、ガスケット本体部410bのX軸方向プラス側及びY軸方向両側の凸部402を挟む位置には、X軸方向に延びる2つの矩形状の第一開口部404bが配置されている。また、ガスケット本体部410bのX軸方向マイナス側に突出した部位には、矩形状の第一開口部404cが配置されている。
また、図7Aに示すように、正極集電体600は、第一開口部404b及び404cの少なくとも一部を露出させた状態で配置されている。具体的には、正極集電体600は、第一開口部404bのX軸方向プラス側の端部に設けられたX軸方向に延びるスリット状の部位と、第一開口部404cの全部とを露出させた状態で配置されている。
また、図7Bに示すように、容器100と第一開口部404bとの間には、絶縁シート800が配置されている。絶縁シート800は、蓋体120とガスケット本体部410bとの間に、蓋体120とガスケット本体部410bとで挟まれて配置された絶縁性のシート状部材である。つまり、絶縁シート800は、第一開口部404bの蓋体120側の開口を塞ぐように配置されている。絶縁シート800は、例えば、PP、PE、PPS、PET、PEEK、PFA、PTFE、PBT、PES等の樹脂等によって形成されている。絶縁シート800は、容器100と第一開口部404bとの間に配置される第二絶縁部材の一例である。
また、蓋体120には、第一開口部404bに対向する位置に凹部が形成されていてもよく、この場合、Z軸方向から見て、第一開口部404bと同じか第一開口部404bよりも大きい凹部が形成されているのが好ましい。または、ガスケット本体部410bの、第一開口部404bが形成された部位のZ軸方向プラス側の面に、凹部が形成されていてもよい。
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、正極下部ガスケット400bは、ガスケット突出部420bではなく、ガスケット本体部410bに第一開口部404b及び404cを有している。そして、正極集電体600は、第一開口部404bの一部及び第一開口部404cの全部を露出させた状態で配置されている。これにより、電解液の注液時に液口121から真空引きを行う場合には、正極集電体600が第一開口部404b及び404c内の気体を真空引きする際の妨げになるのを抑制することができるため、電解液の注液性を向上させることができる。
また、正極下部ガスケット400bに第一開口部404bが形成されることで、正極下部ガスケット400bを挟む蓋体120と他の部材(正極集電体600)との間の絶縁性が低下するおそれがある。このため、蓋体120と第一開口部404bとの間に絶縁シート800を配置することで、蓋体120と当該他の部材との間の絶縁性を向上させることができる。
なお、上記変形例では、容器100と第一開口部404bとの間に配置される第二絶縁部材として、絶縁シート800を例示した。しかし、これには限定されず、第二絶縁部材として、例えば、絶縁テープ、スペーサ、絶縁塗料が塗布されて形成された絶縁部材等を例示することもできる。
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、正極下部ガスケットを、液口121と対向する位置に配置される第一絶縁部材の一例とした。しかし、第一絶縁部材は、正極下部ガスケットには限定されず、第一絶縁部材として、例えば、蓋体120と正極集電体600との間に配置されるスペーサ、絶縁シート、または、その他の絶縁部材等を例示することができる。また、液口121が、蓋体120の負極端子210側に配置されている場合には、負極側の部材(負極下部ガスケット500等)を、第一絶縁部材の一例として例示することもできる。この場合、上記実施の形態及びその変形例における正極側と負極側とが逆の構成となる。
また、上記実施の形態及びその変形例において、正極下部ガスケットに形成された第一開口部(第一開口部404等)は、正極下部ガスケットを厚み方向に貫通する開口部であれば、その個数及び形状は特に限定されない。例えば、上記実施の形態及びその変形例において、正極下部ガスケットには、図示された個数とは異なる個数(1個または複数個)の第一開口部が形成されていてもよい。また、貫通孔である第一開口部(第一開口部404等)が切り欠きであってもよいし、切り欠きである第一開口部(第一開口部405)が貫通孔であってもよい。例えば、変形例1における第一開口部404aが、ガスケット突出部420aの端縁(例えばX軸方向プラス側の端縁)から切り欠かれた切り欠き(凹部)であることにしてもよい。変形例2における第一開口部404bについても同様である。
また、上記実施の形態及びその変形例では、正極下部ガスケットには、液口121と対向する位置に第二開口部(第二開口部403等)が形成されていることとした。しかし、正極下部ガスケットには、当該第二開口部は形成されていないことにしてもよい。これによっても、正極下部ガスケットに形成された第一開口部(第一開口部404等)から、電解液を容器100内に注入することができる。
また、上記実施の形態及びその変形例では、正極下部ガスケットは、第一開口部(第一開口部404等)が形成された部位が、蓋体120から離間して配置されることとした。しかし、当該第一開口部が形成された部位は、蓋体120に当接して配置されていてもよい。この場合でも、当該第一開口部内の空気を真空引きすることができるため、電解液の注液性を向上させることができるとの効果を奏することができる。
また、上記実施の形態及びその変形例では、正極集電体600は、正極下部ガスケットの第一開口部(第一開口部404等)の少なくとも一部を露出させた状態で配置されることとした。しかし、正極集電体600は、正極下部ガスケットの当該第一開口部の全部を塞ぐように配置されていてもよい。この場合でも、当該第一開口部における正極集電体600とは反対側が塞がれていなければ、当該第一開口部内の空気を真空引きすることができるため、電解液の注液性を向上させることができるとの効果を奏することができる。
また、上記実施の形態及びその変形例において、正極下部ガスケットに形成される第二開口部(第二開口部403等)及び第一開口部(第一開口部404等)の種々の形態を例示したが、これら第二開口部及び第一開口部は、上記例示した以外でも種々の位置、形状及び個数で配置可能である。
また、上記実施の形態及びその変形例では、電極体700は、複数枚の平板状極板を積層したスタック型の電極体であることとした。しかし、電極体700の形状は特に限定されず、例えば、電極体700は、正極板と負極板との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成された巻回型の電極体であることにしてもよい。また、電極体700は、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体であることにしてもよい。また、電極体700の個数は1つには限定されず、2つ以上設けられていてもよい。
なお、上記実施の形態及び上記変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
また、本発明は、このような蓄電素子として実現することができるだけでなく、当該蓄電素子が備える第一絶縁部材(正極下部ガスケット)としても実現することができる。