以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の電力制御システム100の概略構成を説明する図である。
図示のように、電力制御システム100は、電力生成装置としてのSOFC(固体酸化物形燃料電池:solid oxide fuel cell)10と、SOFC10が生成(発電)する電力、又は外部から供給される電力で充電される高電圧バッテリ12と、SOFC10と高電圧バッテリ12の間に配置された電力変換器としてのFC絶縁コンバータ14と、を備え、FC絶縁コンバータ14の高電圧側と高電圧バッテリ12とが高電圧ライン16により接続され、FC絶縁コンバータ14の低電圧側とSOFC10とが低電圧ライン22に接続されたものである。
また、電力制御システム100は、高電圧ライン16に第1モータインバータ18を介して接続され高電圧バッテリ12から供給される電力で駆動する第1外部負荷としての第1走行モータ20と、低電圧ライン22に第2モータインバータ24を介して接続されSOFC10から供給される電力で駆動する第2外部負荷としての第2走行モータ26(第2外部負荷)と、を備える。ここで、第2外部負荷は、第2走行モータ26以外に、SOFC10を駆動させる燃料系補機及び空気系補機や、電動車両用の補機(エアコン、ヘッドライト等)を適用することもできる。
SOFC10は、セラミック等の固体酸化物で形成された電解質層を、アノード(燃料極)とカソード(空気極)により挟み込んで得られるセルを積層してなるSOFCスタックとして構成される。SOFC10は、燃料極に燃料ガス(水素)の供給を受けるとともに、空気極に酸化ガス(酸素)の供給を受けることで発電する。
本実施形態におけるSOFC10は、例えば高電圧バッテリ12の充電電力が要求に対して不足している場合などに、FC絶縁コンバータ14により要求電力に応じた所定の電流の出力(発電)が行われる。また、SOFC10は、第2走行モータ26からの電力要求に基づき、第2走行モータ26に適宜電力を供給する。
なお、SOFC10を構成する各単位セルは、1.0V程度の出力電圧となる。したがって、単位セルの積層数を適宜調節することで、SOFC10の出力電圧を任意に調節することができる。
本実施形態では、より安全性を高める観点からSOFC10の電圧をできるだけ低くするように、単位セルの積層数を調節する。特に、SOFC10の最大出力電圧が60V未満となるように、単位セルの積層数を調節する。なお、SOFC10は、さらに燃料系補機及び空気系補機を含む燃料電池システムとして構成されていても良い。
SOFC10の起動時及び通常発電時にSOFC10を駆動させるための燃料系補機(燃料ポンプ、インジェクタ等)及び空気系補機(コンプレッサ等)に電力を供給する必要がある。起動時においては、例えば、高電圧バッテリ12から燃料系補機及び空気系補機に電力を供給することができ、通常発電時においては、例えば、高電圧バッテリ12又はSOFC10から燃料系補機及び空気系補機に電力を供給することができる。
高電圧バッテリ12は、例えば、リチウムイオンバッテリー等の二次電池で構成される。また、高電圧バッテリ12は、FC絶縁コンバータ14により調節されたSOFC10の発電電力、若しくは外部電力によって充電される。また、高電圧バッテリ12は、第1走行モータ20からの電力要求に基づき、第1走行モータ20に適宜電力を供給する。
FC絶縁コンバータ14は、SOFC10の発電電力(又は第2走行モータ26で発生した回生電力)を第1走行モータ20に供給すべく、又は当該発電電力等を高電圧バッテリ12に充電すべく、SOFC10の出力電圧を調節する絶縁型のDCDCコンバータにより構成される。FC絶縁コンバータ14は、SOFC10側の低電圧ライン22に接続する低圧側スイッチング部14aと、高電圧バッテリ12及び第1走行モータ20に結線される高電圧ライン16に接続する高圧側スイッチング部14bと、低圧側スイッチング部14aと高圧側スイッチング部14bの間を接続する絶縁トランス14cを有する。
FC絶縁コンバータ14において、低圧側スイッチング部14aと高圧側スイッチング部14bは、電気的に絶縁しているが、絶縁トランス14cにより磁気的に結合している。低圧側スイッチング部14aは、SOFC10が出力する直流電圧を交流電圧に変換して絶縁トランス14cの一次側コイルに出力する。また、高圧側スイッチング部14bは絶縁トランス14cの二次側コイルが出力する交流電圧を直流電圧に変換して高電圧ライン出力する。
絶縁トランス14cは、入力側の低電圧ライン22の電圧を所定の昇圧比で昇圧して高電圧ライン16に出力できるように、当該昇圧比に対応する一次側コイルと二次側コイルとの巻数比が設定されている。以下では、絶縁トランス14cの巻数比に応じて定まる昇圧比を「基本昇圧比」とも称する。よって、低圧側スイッチング部14aが出力する交流電圧が絶縁トランス14cの一次側コイルに供給されて磁束が発生し、当該磁束により絶縁トランス14cの二次側に誘導起電力が発生し、これが「基本昇圧比」により定まる交流電圧となって高圧側スイッチング部14bに入力される。
さらに、図1には示していないが、FC絶縁コンバータ14は、絶縁トランス14cの巻数比に応じた基本昇圧比を微調節するためのコンデンサ又はリアクトル等で構成される共振回路を含んでいる。
上記構成により、本実施形態の電力制御システム100では、FC絶縁コンバータ14の低圧側スイッチング部14a又は高圧側スイッチング部14bに対して所定のスイッチング制御を行うによって、第1走行モータ20の要求電力、又は高電圧バッテリ12に充電要求に応じて当該高電圧バッテリ12にSOFC10の発電電力を供給することができるように、SOFC10の出力電圧(低電圧ライン22の電圧)を調節することができる。
そして、特に、FC絶縁コンバータ14が絶縁トランス14cを有していることで、当該FC絶縁コンバータ14を挟んだ低電圧ライン22(SOFC10側)と高電圧ライン16(高電圧バッテリ12側)を電気的に絶縁しつつも、SOFC10から高電圧バッテリ12への電力供給が可能となっている。
第1走行モータ20は、三相交流モータで構成されている。第1走行モータ20は、高電圧バッテリ12から供給される電力によって駆動され、さらにFC絶縁コンバータ14を介してSOFC10から供給される補助電力によって駆動の補助がなされる。また、第1走行モータ20には、高電圧バッテリ12から供給される直流電力を交流電力に変換する第1モータインバータ18が設けられている。第1走行モータ20は、例えば電動車両の前輪を駆動させるものとして用いられる。なお、第1モータインバータ18は、第1走行モータ20が交流の回生電力を発生している場合にこれを直流の回生電力に変換して高電圧ライン16に供給する。
第2走行モータ26は、第1走行モータ20同様に三相交流モータで構成されている。第2走行モータ26は、SOFC10から供給される電力によって駆動される。また、第2走行モータ26には、高電圧バッテリ12から供給される直流電力を交流電力に変換する第2モータインバータ24が設けられている。第2走行モータ26は、例えば電動車両の後輪を駆動させるものとして用いられる。なお、第2モータインバータ24は、第2走行モータ26が交流の回生電力を発生している場合にこれを直流の回生電力に変換して低電圧ライン22に供給する。
コントローラ9は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータ、特にマイクロコンピュータで構成される。そして、コントローラ9は、本実施形態の処理を実行可能にプログラムされている。なお、コントローラ9は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態の各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていても良い。
コントローラ9は、後述のように、電動車両側から送信される目標出力の大きさを読み取り、当該目標出力に対する応答が高出力状態(図2)、通常出力状態(図1)、中出力状態(図3)、低出力状態(図4)のいずれかになるかを判断する。また、コントローラ9は、ブレーキ操作があった場合には回生電力発生状態(図5)であると判断する。そして、コントローラ9は、各状態に応じて、SOFC10、高電圧バッテリ12、FC絶縁コンバータ14、第1モータインバータ18(第1走行モータ20)、第2モータインバータ24(第2走行モータ26)の駆動制御を行う。
本実施形態では、通常出力状態(図1)、又は高出力状態(図2)において、第1走行モータ20を高電圧バッテリ12の電力とFC絶縁コンバータ14を介して供給されたSOFC10からの補助電力により駆動させ、第2走行モータ26をSOFC10からの電力により駆動させている。また、中出力状態(図3)において、FC絶縁コンバータ14を停止させ、第1走行モータ20を高電圧バッテリ12の電力により駆動させ、第2走行モータ26をSOFC10からの電力により駆動させている。さらに、低出力状態(図4)において、FC絶縁コンバータ14を停止させ且つ第1走行モータ20への電力供給を停止し、第2走行モータ26をSOFC10からの電力により駆動させている。
すなわち、本実施形態では、通常出力状態(図1)及び高出力状態(図2)では第1走行モータ20に接続した前輪(後輪でも良い)が電動車両を主として駆動させる駆動輪となっており、低出力状態では第2走行モータ26に接続した後輪(前輪でも良い)が電動車両を主として駆動させる駆動輪になっている。
ここで、第1走行モータ20の定格出力は、第2走行モータ26よりも大きく設計することが好適である。これにより、定格出力の大きい第1走行モータ20に高電圧バッテリ12(SOFC10よりも出力が大きい)がFC絶縁コンバータ14を介さずに直接接続される。したがって、通常出力状態(図1)及び高出力状態(図2)において、SOFC10からFC絶縁コンバータ14を介して高電圧ライン16に供給する電力は高電圧バッテリ12の出力を一定量補助する程度で済み、FC絶縁コンバータ14の高出力化を回避している。
なお、電力制御システム100には、必要に応じて、SOFC10の停止中などにおいて、高電圧バッテリ12とSOFC10の接続を物理的に遮断するためのリレーを、低電圧ライン22などに設けても良い。
上記構成の電力制御システム100によれば、FC絶縁コンバータ14により、高電圧側の高電圧バッテリ12及び第1走行モータ20と、低電圧側のSOFC10及び第2走行モータ26を電気的に絶縁しつつ、SOFC10の発電電力を第1走行モータ20に供給し、又は当該発電電力を高電圧バッテリ12に充電することができる。
[第1実施形態の動作]
図6は、第1実施形態の電力制御システム100の比較例を説明する図である。第1実施家形態の電力制御システム100の動作を図6に示す比較例と比較しつつ説明する。
図6に示すように、本実施形態の電力制御システム100の比較例では、低電圧ライン22に第2走行モータ26が取り付けられておらず、第1走行モータ20のみにより電動車両の駆動制御が行われる。そして、第1走行モータ20(第1モータインバータ18)からの要求により高電圧バッテリ12及びSOFC10から電力が供給されるようになっており、高電圧バッテリ12の負担を軽減することで電動車両の航続距離を伸ばす構成となっている。
ところで、電動車両におけるSOFC10のレイアウト自由度の向上の観点から、高電圧安全要求対象部品の対象外となるように出力電圧が60Vよりも低い電圧(図6では30V)となるように設計し、且つSOFC10と高電圧バッテリ12が電気的に互いに絶縁したシステムを構築とすることが提案されている。
そこで、図6に示すように、例えば電動車両から要求される第1走行モータ20の目標出力が80kWである場合に、高電圧バッテリ12から第1走行モータ20に50kW出力し、SOFC10からの出力(30kW)を昇圧比の高いFC絶縁コンバータ14を介して第1走行モータ20に出力することで目標出力を満たす制御を行うことが考えられる。
当該制御を行うには、FC絶縁コンバータ14の出力が30kW要求されることになる。しかし、このような高出力のFC絶縁コンバータ14を構築するには絶縁トランス14c等の大型化・重量化が避けられず、電動車両に搭載することが困難となる。
そこで、本実施形態では、図1(通常出力状態)に示すように、低電圧ライン22に第2モータインバータ24を介して第2走行モータ26を接続し、電力制御システム100全体の目標出力を第1走行モータ20と第2走行モータ26に分散させている。そして、第2走行モータ26がFC絶縁コンバータ14を介さずにSOFC10から電力供給を受ける構成としている。
これにより、FC絶縁コンバータ14は、第1走行モータ20に高出力の電力を供給する必要はなくなり、FC絶縁コンバータ14を車載可能な状態で電動車両に搭載することができる。
ここで、第2モータインバータ24(第1モータインバータ18も同様)は、トランスやコイルなどの磁気部品は不要であり、主にパワー素子キャパシタだけで構成されるため、大電流の回路構成が可能である。また、必要に応じてFC絶縁コンバータ14との電力分担を図ることができる。
よって、FC絶縁コンバータ14は、SOFC10が発電した電力の一部を高電圧ライン16に供給することができる。これにより、第1走行モータ20の目標出力の一部をFC絶縁コンバータ14から供給することが可能となり、高電圧バッテリ12の負担を軽減することができる。
図1に示す通常出力状態において、コントローラ9は、SOFC10、高電圧バッテリ12、FC絶縁コンバータ14、第1モータインバータ18(第1走行モータ20)、第2モータインバータ24(第2走行モータ26)を駆動させている。そして、例えば、図1に示すように、電動車両から要求される電力制御システム100の目標出力が80kWである場合に、当該目標出力を第1走行モータ20に56kW、第2走行モータ26に24kWに分散させている。
例えば、SOFC10においては、30kW(30V×1000A)の電力が発電できるように設計されている。発電電力のうち、24kWを第2走行モータ26に供給し、6kWをFC絶縁コンバータ14に供給している。よって、第2走行モータ26は24kW(30V×800A)の出力により駆動する。
一方、第1走行モータ20において、割り当てられた目標出力56kWのうち6kW(30V×200A)分はFC絶縁コンバータ14から供給され、50kW分は高電圧バッテリ12から供給される。したがって、本実施形態においても、SOFC10(FC絶縁コンバータ14)が第1走行モータ20の目標出力の一部を賄うことで、高電圧バッテリ12の負担を軽減することができる。
図2は、第1実施形態の電力制御システム100において高出力状態を説明する図である。第1実施形態の電力制御システム100は、図6に示す比較例よりも高い出力を無理なく発生させることができる。図2に示す高出力状態において、コントローラ9は、SOFC10、高電圧バッテリ12、FC絶縁コンバータ14、第1モータインバータ18(第1走行モータ20)、第2モータインバータ24(第2走行モータ26)を駆動させている。そして、図2に示すように、高電圧バッテリ12の出力を74kWに引き上げることにより、第1走行モータ20で80kW、第2走行モータ26で24kW、トータル104kWの駆動力を出力することができる。このような高出力状態においても、FC絶縁コンバータ14の出力は6kWとなっているので、FC絶縁コンバータ14に対する負担が増加することはない。
図3は、第1実施形態の電力制御システム100においてFC絶縁コンバータ14の駆動を停止させた状態を説明する図である。図3では、電動車両から要求される電力制御システム100の目標出力が80kW(通常出力状態)よりも低い中出力状態(SOFC10の出力よりも大きい出力と定義できる)であるときの動作を示している。図3に示す中出力状態において、コントローラ9は、SOFC10、高電圧バッテリ12、第1モータインバータ18(第1走行モータ20)、第2モータインバータ24(第2走行モータ26)を駆動させ、FC絶縁コンバータ14の駆動を停止させている。すなわち、中出力状態では、FC絶縁コンバータ14の駆動を停止させ、第1走行モータ20を高電圧バッテリ12からの電力により駆動させ第2走行モータ26をSOFC10からの電力により駆動させる。このように目標出力が中出力状態に該当するときは、FC絶縁コンバータ14の駆動を停止させることができるので、FC絶縁コンバータ14における電力ロスを回避することができる。
図4は、第1実施形態の電力制御システム100においてFC絶縁コンバータ14及び第1走行モータ20の駆動を停止させた状態を説明する図である。図4では、電動車両から要求される電力制御システム100の目標出力がSOFC10の最大出力(例えば、30kW)よりも低い低出力状態の動作を示している。低出力状態において、コントローラ9は、SOFC10、第2モータインバータ24(第2走行モータ26)を駆動させ、高電圧バッテリ12、第1モータインバータ18(第1走行モータ20)、FC絶縁コンバータ14の駆動を停止させている。すなわち、低出力状態では、第2走行モータ26が第2モータインバータ24を介してSOFC10から電力が供給され駆動するのみとなっており、高電圧バッテリ12、第1走行モータ20、FC絶縁コンバータ14の駆動は停止している。
このように目標出力が低いときは、FC絶縁コンバータ14の駆動を停止させることができるので、FC絶縁コンバータ14における電力ロスを回避することができる。さらに高電圧バッテリ12(及び第1走行モータ20)の駆動も停止させることができるので、高電圧バッテリ12のSOC(充電率)を維持することができる。
また、この場合、FC絶縁コンバータ14を駆動させて、SOFC10が発電した電力の一部を高電圧ライン16に供給することで、高電圧バッテリ12を充電することもできる。
図5は、第1実施形態の電力制御システム100において回生電力が発生した状態を説明する図である。電動車両の走行中においてドライバーがブレーキ操作を行うと、第1走行モータ20及び第2走行モータ26において回生ブレーキが発生して電動車両の速度が低下する。このとき、コントローラ9は、高電圧バッテリ12の出力を停止させる。また、コントローラ9は、SOFC10の出力を停止、若しくはSOFC10の燃料系補機及び空気系補機の駆動電力を賄う程度までに低下させる。
一方、第1走行モータ20及び第2走行モータ26において、回生ブレーキに伴う回生電力が発生する(回生電力発生状態)。このため、コントローラ9は、一次側が第1走行モータ20となり二次側が高電圧ライン16となるように第1モータインバータ18を駆動させる。これにより、第1走行モータ20で発生した回生電力を高電圧バッテリ12に充電することができる。また、コントローラ9は、FC絶縁コンバータ14を駆動させ、一次側が第2走行モータ26となり二次側が低電圧ライン22となるように第2モータインバータ24を駆動させる。これにより、第2走行モータ26で発生した回生電力をFC絶縁コンバータ14の最大出力(例えば6kW(30V×200A))以下となる条件でFC絶縁コンバータ14を介して高電圧バッテリ12に充電することができる。
[第1実施形態の効果]
第1実施形態の電力制御システム100は、低電圧の電力を生成するSOFC10(電力生成装置)と、SOFC10により生成される電力で充電される高電圧バッテリ12と、高電圧バッテリ12から電力の供給を受ける第1走行モータ20(第1外部負荷)と、SOFC10と高電圧バッテリ12の間に接続されたFC絶縁コンバータ14(電力変換器)と、SOFC10から電力の供給を受ける第2走行モータ26(第2外部負荷)と、を備え、FC絶縁コンバータ14が、絶縁型電力変換器を含む。
上記構成によれば、電力変換器(FC絶縁コンバータ14)として絶縁型電力変換器を用いたので、高電圧バッテリ12に比べて電圧が低いSOFC10(電力生成装置)を用いることができ電気的安全性を確保することができる。よって、SOFC10に不都合が発生した際であっても、SOFC10の電圧が高いことにより生じるリスクを低減できる。
絶縁型電力変換器(FC絶縁コンバータ14)は磁気部品を使用するため大電流化するとサイズが増大する。しかし、上記態様であれば、FC絶縁コンバータ14を介することなくSOFC10の出力を直接第2走行モータ26に供給するため当該絶縁型電力変換器の通過電流の増大を回避することができる。よって、例えば、レイアウト要求が厳しい電動車両においても出力の大きいFC絶縁コンバータ14を車載可能なサイズで搭載することがき、SOFC10が供給する電力により電動車両の航続距離を延長させるレンジエクステンダシステムを実現することができる。さらに、当該絶縁型電力変換器の通過電流の増大を回避することで当該絶縁型電力変換器での損失を回避でき、システム効率を向上させることができる。
第1実施形態において、高電圧バッテリ12から第1走行モータ20へ電力の供給を行い、SOFC10から第2走行モータ26へ電力の供給を行い、SOFC10で発電した電力を、FC絶縁コンバータ14を介して第1走行モータ20へ補助する電力として供給する。
上記構成により、FC絶縁コンバータ14は、SOFC10から第1走行モータ20へ補助する電力に対応できる程度に設計すれば済むので、SOFC10の全電力を、FC絶縁コンバータ14を介して第1走行モータ20に供給する場合と比較して、FC絶縁コンバータ14の小型化・低コスト化を図ることが可能となる。また、FC絶縁コンバータ14における電力損失を低減することができる。
第1実施形態において、高電圧バッテリ12から第1走行モータ20へ電力の供給を行い、SOFC10から第2走行モータ26へ電力の供給を行い、FC絶縁コンバータ14は停止させる。
上記構成により、FC絶縁コンバータ14における電力損失を回避することができる。
第1実施形態において、SOFC10から第2走行モータ26へ電力の供給を行い、FC絶縁コンバータ14は停止させる。
上記構成により、電力制御システム100の目標出力が、第2走行モータ26のみで賄える場合は、SOFC10から第2走行モータ26へ直接電力を供給することにより、FC絶縁コンバータ14を介することなく、SOFC10の電力で電動車両を駆動できることから、FC絶縁コンバータ14での電力損失を回避することができ、システム効率の向上を図ることができる。
第1実施形態において、第2走行モータ26から回生電力が生じている場合は、FC絶縁コンバータ14を介して高電圧バッテリ12を充電する電力として供給する。
上記構成により、高電圧バッテリ12のSOC(充電率)を高め、システム効率を向上させることができる。
以上、説明した第1実施形態の電力制御システム100においては、種々の変更が可能である。例えば、SOFC10の出力電圧を電力制御システム100が搭載される装置の要求等に応じて適宜設定することが可能である。
上記のように、SOFC10は、電力制御システム100が搭載される装置(自動車及び鉄道車両等)において所定の安全要求が課される高電圧安全要求対象部品と判断される基準となる所定電圧未満の最大出力電圧をとるように構成されても良い。
すなわち、電力制御システム100が搭載される装置によっては、人体等に対する電気的安全性を確保する観点から、当該装置内における配置位置や所定の絶縁処理を施す等のより厳しい安全対策が要求される高電圧安全要求対象部品が法規等によって定められている場合がある。そして、ある部品がこのような高電圧安全要求対象部品であるか否かの判断は、通常、当該部品の動作電圧の大きさを基準として行われる。
このような事情に鑑みて、電力制御システム100が搭載される装置に応じて高電圧安全要求対象部品であると判断される基準となる電圧を上記所定電圧とすることで、SOFC10の最大出力電圧を高電圧安全要求対象部品と判断される電圧未満とすることができる。
これにより、SOFC10を電力制御システム100が搭載される装置の電気的安全性の観点から定められる高電圧安全要求対象部品から外すことができ、SOFC10のレイアウト自由度、即ち電動車両全体のレイアウト自由度を向上させることができる。
特に、SOFC10は、最大出力電圧が60V未満となるように構成されても良い。このようにSOFC10の最大出力電圧を設定することで、本実施形態の電力制御システム100が特に自動車に搭載される場合において、当該SOFC10をより確実に高電圧安全要求対象部品から外すことができ、SOFC10のレイアウト自由度、即ち電動車両全体のレイアウト自由度を向上させることができる。
ここで、自動車においては、衝突時に比較的大きく損傷することが想定される車両の前方領域や後方領域(以下、単に「衝突領域」とも記載する)においては、安全上の観点から高電圧安全要求対象部品を配置しないことが要求されている。そして、高電圧安全要求対象部品と判断される基準となる電圧は、概ね60Vと定められている。
このような状況に対して、SOFC10をその最大出力電圧が60V未満となるように構成して高電圧安全要求対象部品の対象から外していることで、高電圧安全要求対象部品であれば配置が想定されない車両の前方領域や後方領域においてもSOFC10を配置することができる。
さらに、このようにSOFC10の最大出力電圧を60V未満としても、SOFC10を高電圧バッテリ12等の高電圧系統と直接電気的に接続させると、高電圧バッテリ12とともにSOFC10が高電圧安全要求対象部品に該当することとなる。
しかし、本実施形態の電力制御システム100では、既に説明したように、FC絶縁コンバータ14によって、SOFC10と高電圧バッテリ12及び第1走行モータ20の間が相互に電気的に絶縁されている。これにより、SOFC10が高電圧バッテリ12を含む高電圧系統から独立した部品とすることができる。したがって、FC絶縁コンバータ14によりSOFC10をより確実に高電圧安全要求対象部品から外すことができる。結果として、SOFC10を、自動車の衝突領域を含めた任意の領域に配置することができるので、車両全体のレイアウト自由度を向上させることができる。
ところで、本願発明に関連する先行技術として特開2008-199802号公報が挙げられる。当該先行技術では、DC-DCコンバータの一方側に燃料電池が接続され、DC-DCコンバータの他方側にバッテリが接続され、燃料電池とDC-DCコンバータとを接続する接続線に第一モータが電気的に接続され、バッテリとDC-DCコンバータとを接続する接続線に第二モータが電気的に接続された構成が開示されている(先行技術図1)。そして、第一モータに供給すべき電力が燃料電池によって発電可能な電力を超えるときのみ、DC-DCコンバータを介してバッテリから第一モータへの電力供給を許可するとしている(先行技術段落[0039])。
しかし、先行技術では、第一モータの定格連続出力が第二モータよりも高く、第一モータが主駆動輪を駆動させるシステムとなっており(先行技術段落[0034])、バッテリは第一モータにDC-DCコンバータを介して接続されている。したがって、バッテリから定格連続出力の大きい第一モータに電力を供給するためには、DC-DCコンバータとしては高出力なものを適用する必要がある。さらに、前記のように、燃料電池を高電圧安全要求対象部品からはずすためには、DC-DCコンバータとしては絶縁型のものを適用する必要がある。しかし、絶縁型のDC-DCコンバータであって高出力なものを車載可能なサイズで実現することは困難であり、仮に車載可能であったとしてもコストアップやDC-DCコンバータの変換効率の低下の問題を引き起こす。
しかし、本実施形態では、前記のように、第1走行モータ20の定格出力が、第2走行モータ26の定格出力よりも大きく設計されている。これにより、定格出力の大きい第1走行モータ20に高電圧バッテリ12(SOFC10よりも出力が大きい)がFC絶縁コンバータ14を介さずに直接接続される。したがって、通常出力状態(図1)及び高出力状態(図2)において、SOFC10からFC絶縁コンバータ14を介して高電圧ライン16に供給する電力は高電圧バッテリ12の出力を一定量補助する程度で済み、FC絶縁コンバータ14の高出力化を回避している。
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。なお、以後の説明において、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、必要な場合を除いてその説明は省略する。図7は、第2実施形態の電力制御システム100の構成を説明する図である。
第2実施形態の電力制御システム100は、第2走行モータ26と並列に接続された第3走行モータ30(第3外部負荷)を備え、SOFC10は、第2走行モータ26及び第3走行モータ30に電力を供給する構成となっている。
第3走行モータ30は、低電圧ライン22に第3モータインバータ28を介して低電圧ライン22に電気的に接続されている。第3走行モータ30は、第2走行モータ26同様に電動車両の後輪の駆動力として用いることが可能である。第3モータインバータ28は、第2モータインバータ24と同様に低電圧ライン22に接続され、SOFC10から出力される直流電圧を交流電圧に変換して第3走行モータ30に出力するものである。なお、第3モータインバータ28は、第3走行モータ30が交流の回生電力を発生している場合にこれを直流の回生電力に変換して低電圧ライン22に供給する。
なお、第3外部負荷としては、第3走行モータ30のほかに、SOFC10を駆動させる燃料系補機及び空気系補機や、電動車両用の補機(エアコン、ヘッドライト等)に適用することができる。なお、第3外部負荷は低電圧ライン22に複数接続してもよい。
コントローラ9は、第1実施形態と同様に、高出力状態(図2)、通常出力状態(図1)、中出力状態(図3)、低出力状態(図4)、回生電力発生状態(図5)の各状態に応じて、SOFC10、高電圧バッテリ12、FC絶縁コンバータ14、第1モータインバータ18(第1走行モータ20)、第2モータインバータ24(第2走行モータ26)、第3モータインバータ28(第3走行モータ30)の駆動制御を行う。
図1に示すように、電動車両から要求される第1実施形態の電力制御システム100の目標出力が80kWである場合、第1実施形態の第2走行モータ26に対して24kWの目標出力が割り当てられる。
一方、図7に示すように、電動車両から要求される第2実施形態の電力制御システム100の目標出力が80kWである場合、第2実施形態の第2走行モータ26に対して12kWの目標出力が割り当てられ、第2実施形態の第3走行モータ30に対して12kWの目標出力が割り当てられる。
このように、低電圧ライン22側の目標出力を第2走行モータ26と第3走行モータ30に割り当てることにより、第2モータインバータ24及び第3モータインバータ28に対する負担を軽減することができる。
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の電力制御システム100の構成を説明する図である。第3実施形態の電力制御システム100は、高電圧ライン16に対してFC絶縁コンバータ14-1とFC絶縁コンバータ14-2が並列に接続されている。そして、FC絶縁コンバータ14-1にSOFC10-1が低電圧ライン22-1を介して接続され、低電圧ライン22-1に第2モータインバータ24-1を介して第2走行モータ26-1が接続されている。同様に、FC絶縁コンバータ14-2にSOFC10-2が低電圧ライン22-2を介して接続され、低電圧ライン22-2に第2モータインバータ24-2を介して第2走行モータ26-2が接続されている。ここで、例えば、SOFC10-1及びSOFC10-2は、SOFC10と同様のものであり、同様の符号が表記された他の構成要素も同様に取り扱うものとする。
本実施形態において、2つのSOFC10-1,10-2を配置した背景の一つについて説明する。ただし、以下で説明する背景は本実施形態の構成を限定するものではない。
前記のように、出力電圧の小さいSOFC10を構成すれば、当該SOFC10の電気的安全性が向上することとなる。一方で、出力電圧の小さいSOFC10の場合、例えば高電圧バッテリ12の要求充電量が比較的大きい場合等のSOFC10に対する要求発電電力が大きい場合においては、当該要求発電電力を確保すべくSOFC10からの取り出し電流を増大させる必要がある。しかし、単体のSOFC10から取り出すことのできる電流の大きさには限度がある。
これに対して、本実施形態の電力制御システム100では、出力電圧の小さいSOFC10を配置した場合であっても、より好適に要求発電電力を確保する観点から、2つのSOFC10-1,10-2を並列に配置している。
さらに、2つのSOFC10-1,10-2を並列に配置する場合においても、一台のFC絶縁コンバータ14によって2つのSOFC10-1,10-2からの取り出し電流をまとめて制御することが可能である。ただし、2つのSOFC10-1,10-2の個体差などの要因でこれらの出力特性(IV特性)がばらつくことが想定される。
このように出力特性がばらついた2つのSOFC10-1,10-2において、各SOFC10-1,10-2から同一の取り出し電流を取り出すと、それぞれの電圧の低下度合が異なるため、SOFC10-1,10-2の間の電圧がばらつくこととなる。特に、取り出し電流が大きくなると、出力特性の相違による電圧のばらつきが大きくなる(図10参照)。
したがって、一台のFC絶縁コンバータ14によって2つのSOFC10-1,10-2からの取り出し電流をまとめて制御する場合には、これらの内のより低い方の特性に合わせて電流の取り出しを行う必要がある。すなわち、2つのSOFC10-1,10-2の内の出力特性が低い方がボトルネックとなって、出力特性が高い方のパフォーマンスを十分に引き出せないという状況が想定される。
本発明者らは、このような状況に着目して、各SOFC10-1,10-2に個別にFC絶縁コンバータ14-1及びFC絶縁コンバータ14-2を接続することで、SOFC10-1,10-2のそれぞれの出力特性に応じた取り出し電流の制御を行うことに想到した。これにより、いずれのSOFC10-1,10-2からも出力特性に応じた個別の好適な電流の取り出しを実行することができる。
上記知見を踏まえ、図8に示すように、本実施形態の電力制御システム100は、上記構成に加え、SOFC10-1とFC絶縁コンバータ14-1の間の低電圧ライン22-1に配置された低圧側電流センサ32-1及び低圧側電圧センサ34-1と、SOFC10-2とFC絶縁コンバータ14-2の間の低電圧ライン22-2に配置された低圧側電流センサ32-2及び低圧側電圧センサ34-2と、FC絶縁コンバータ14-1及びFC絶縁コンバータ14-2の出力側の高電圧ライン16に配置された高圧側電圧センサ36と、を有している。
低圧側電流センサ32-1は、SOFC10-1の取り出し電流に相当する低電圧ライン22-1の電流(以下では、単に「第1低圧側電流Ilow1」とも称する)を検出する。また、低圧側電圧センサ34-1は、SOFC10-1の出力電圧(FC絶縁コンバータ14-1の入力電圧)に相当する電圧(以下では、単に「第1低圧側電圧Vlow1」とも称する)を検出する。
さらに、低圧側電流センサ32-2は、SOFC10-2の取り出し電流に相当する低電圧ライン22-2の電流(以下では、単に「第2低圧側電流Ilow2」とも称する)を検出する。また、低圧側電圧センサ34-2は、SOFC10-2の出力電圧(FC絶縁コンバータ14-2の入力電圧)に相当する電圧(以下では、単に「第2低圧側電圧Vlow2」とも称する)を検出する。
また、高圧側電圧センサ36は、FC絶縁コンバータ14-1及びFC絶縁コンバータ14-2の出力電圧に相当する高電圧ライン16の電圧(以下では、単に「高圧側電圧Vhigh」とも記載する)を検出する。
さらに、電力制御システム100は、FC絶縁コンバータ14-1及びFC絶縁コンバータ14-2を制御する変圧器個別制御ユニットとしてのコントローラ90を備えている。
コントローラ90は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータ、特にマイクロコンピュータで構成される。そして、コントローラ90は、本実施形態の処理を実行可能にプログラムされている。なお、コントローラ90は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態の各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていても良い。
そして、本実施形態においてコントローラ90は、低圧側電流センサ32-1で検出される第1低圧側電流検出値Ilow1d、低圧側電圧センサ34-1で検出される第1低圧側電圧検出値Vlow1d、低圧側電流センサ32-2で検出される第2低圧側電流検出値Ilow2d、低圧側電圧センサ34-2で検出される第2低圧側電圧検出値Vlow2d、及び高圧側電圧センサ36で検出される高圧側電圧検出値Vhighdに基づいてFC絶縁コンバータ14-1及びFC絶縁コンバータ14-2のそれぞれをスイッチング制御して昇圧比を制御する。以下、コントローラ90による制御をより詳細に説明する。
図9は、第3実施形態の電力制御システム100の制御態様を説明するフローチャートである。なお、本フローチャートで示す各ステップは必ずしも以下で説明する順番に限定されるものではなく、可能な範囲で各ステップの入れ替えが可能である。
図示のように、ステップS110において、コントローラ90は、例えば図示しない充電量(SOC)センサの検出値、又は第1走行モータ20に供給する補助電力の値に基づいて高電圧ライン16に出力する電力(要求電力)を演算する。
ステップS120において、コントローラ190は、演算した要求電力からSOFC10-1及びSOFC10-2のトータルの要求発電電力を演算する。
ステップS130において、コントローラ90は、第1低圧側電流目標値Ilow1t及び第2低圧側電流目標値Ilow2tを演算する。具体的に、コントローラ90は、演算した要求発電電力を満たしつつ、取得した第1低圧側電圧検出値Vlow1dと第2低圧側電圧検出値Vlow2dの偏差が許容値ΔV以下となるように第1低圧側電流目標値Ilow1t及び第2低圧側電流目標値Ilow2tを演算する。
すなわち、コントローラ90は、高電圧ライン16側の要求電力を満たしつつ、第1低圧側電圧Vlow1(SOFC10-1の電圧)と第2低圧側電圧Vlow2(SOFC10-2の電圧)のばらつきを抑制する観点から、第1低圧側電流目標値Ilow1t(SOFC10-1の取り出し電流目標値)及び第2低圧側電流目標値Ilow2t(SOFC10-2の取り出し電流目標値)を演算する。
図10は、相互に出力特性が異なる2つのSOFC10-1及びSOFC10-2のそれぞれのIV曲線の概要を示す図である。なお、図においては、SOFC10-1のIV曲線を実線で示し、SOFC10-2のIV曲線を破線で示す。すなわち、本実施形態では、SOFC10-1の出力特性がSOFC10-2の出力特性よりも高いと仮定する。
図から理解されるように、相互に出力特性が異なるSOFC10-1及びSOFC10-2の場合には、同じ電流を取り出しでもそれに応じた出力電圧が相違することとなる。特に、取り出し電流が大きくなる領域では、第1低圧側電圧Vlow1と第2低圧側電圧Vlow2の差は大きくなる。したがって、本実施形態では、第1低圧側電圧Vlow1と第2低圧側電圧Vlow2の差を小さくする観点から、各SOFC10-1,10-2からの取り出し電流の目標値である第1低圧側電流目標値Ilow1t及び第2低圧側電流目標値Ilow2tをそれぞれの出力特性に応じて設定する。
例えば、コントローラ90は、図10の点線で示す第1低圧側電流Ilow1の値を第1低圧側電流目標値Ilow1tに設定した場合、当該第1低圧側電流目標値Ilow1tに相当する電流をSOFC10-1から取り出した場合の第1低圧側電圧検出値Vlow1dに対して、SOFC10-2の出力電圧に相当する第2低圧側電圧検出値Vlow2dが上記許容値ΔV以下の範囲に収まる領域(図5のハッチングされた領域)から、上記トータルの要求発電電力を考慮した第2低圧側電流目標値Ilow2tを選択する。
そして、ステップS140において、コントローラ90は、第1低圧側電流検出値Ilow1d及び第2低圧側電流検出値Ilow2dが、それぞれステップS130で演算した第1低圧側電流目標値Ilow1t及び第2低圧側電流目標値Ilow2tに近づくように、FC絶縁コンバータ14-1及びFC絶縁コンバータ14-2のそれぞれの昇圧比を制御する。
以上説明したように、本実施形態では、2つのSOFC10-1,10-2のそれぞれの出力特性に応じた好適な取り出し電流の設定が可能となる各FC絶縁コンバータ14-1及びFC絶縁コンバータ14-2のスイッチング制御が実現される。
なお、上記制御において、SOFC10-1の第2走行モータ26-1(第2モータインバータ24-1)側への要求電流(要求電力)が発生している場合、Ilow1tは、当該Ilow1tから当該要求電流を差し引いた値を取り出し電流とすればよい。同様に、SOFC10-2の第2走行モータ26-2(第2モータインバータ24-2)側への要求電流(要求電力)が発生している場合、Ilow2tは、当該Ilow2tから当該要求電流を差し引いた値を取り出し電流とすればよい。また、SOFC10-1の第2走行モータ26-1側への要求電流の大きさと、SOFC10-2の第2走行モータ26-2側への要求電流の大きさと、を一致させ、第2走行モータ26-1の出力と第2走行モータ26-2の出力を一致させることも可能である。
SOFC10-1及びSOFC10-2の出力特性がほぼ同様である場合は、上記制御は不要であり、低圧側電流センサ32-1,32-2,低圧側電圧センサ34-1,34-2及び高圧側電圧センサ36を省略することができる。
[第4実施形態]
図11は、第4実施形態の電力制御システム100の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態の電力制御システム100の電力変換器は、第1実施形態で説明したFC絶縁コンバータ14に加えて、FC絶縁コンバータ14の出力電圧を所定の昇圧比で昇圧する補助昇圧器としての非絶縁型昇圧コンバータ44を有している。
非絶縁型昇圧コンバータ44は、スイッチング制御により一定範囲で昇圧比を設定し得るチャージポンプ方式等の昇圧コンバータとして構成される。そして、本実施形態において、非絶縁型昇圧コンバータ44は、FC絶縁コンバータ14と高電圧バッテリ12の間に接続されている。
以上の構成を有する本実施形態の電力制御システム100では、FC絶縁コンバータ14は、低電圧ライン22におけるSOFC10の出力電圧を基本昇圧比で昇圧して中電圧ライン38に出力する。そして、非絶縁型昇圧コンバータ44は、中電圧ライン38の電圧を所定の昇圧比(以下では、「補助昇圧比」とも称する)で昇圧して高電圧ライン16に出力する。
すなわち、本実施形態では、SOFC10の出力電圧が、FC絶縁コンバータ14及び非絶縁型昇圧コンバータ44の順で2段階昇圧された後に高電圧バッテリ12に供給されることとなる。
特に、本実施形態では、SOFC10の出力電圧を第1段目のFC絶縁コンバータ14の昇圧回路(絶縁トランス14c)で比較的大きい基本昇圧比で昇圧しつつ、第2段目の非絶縁型昇圧コンバータ44の制御によって補助昇圧比を高精度に調節することができる。結果として、高電圧バッテリ12の要求充電電力等に応じて、FC絶縁コンバータ14及び非絶縁型昇圧コンバータ44による実質的なSOFC10の出力電圧に対する昇圧比(基本昇圧比×補助昇圧比)を好適に調節することが可能となる。
より具体的には、本実施形態の電力制御システム100では、SOFC10の出力電圧が基本的にFC絶縁コンバータ14の基本昇圧によって、高電圧バッテリ12の要求充電電力に応じた所望の目標電圧付近まで昇圧される。
しかし、例えば、高電圧バッテリ12の要求電力の変動等に起因して、SOFC10の出力電圧の昇圧比を比較的短い時間で適宜調節する必要が生じることが想定される。本実施形態では、非絶縁型昇圧コンバータ44によって、比較的短時間の間におけるSOFC10の出力電圧の実質的な昇圧比の調節にも好適に対応することができる。
さらに、本実施形態では、前記のようにSOFC10の出力電圧を高電圧安全要求対象部品の対象となる電圧より低い電圧(60V未満)とし、且つ所定の電圧により高電圧ライン16に電力を供給するように、FC絶縁コンバータ14、及び非絶縁型昇圧コンバータ44の昇圧比をそれぞれ制御できるようになっている。
このため、本実施形態の電力制御システム100は、図11に示すように、低電圧ライン22に配置された低圧側電流センサ32及び低圧側電圧センサ34と、中電圧ライン38に配置された中電圧側電流センサ40及び中電圧側電圧センサ42と、高電圧ライン16に配置された高圧側電圧センサ36と、を有している。
低圧側電流センサ32は、SOFC10の出力電流に相当する低圧側電流Ilowを検出する。また、低圧側電圧センサ34は、低電圧ライン22の電圧である低圧側電圧Vlowを検出する。
また、中電圧側電流センサ40は、FC絶縁コンバータ14から非絶縁型昇圧コンバータ44への入力電流に相当する中電圧側電流Imedを検出する。また、中電圧側電圧センサ42は、中電圧ライン38の電圧である中電圧側電圧Vmedを検出する。
さらに、高圧側電圧センサ36は、高電圧ライン16の電圧(高電圧バッテリ12の電圧に相当)である高圧側電圧Vhighを検出する。
さらに、電力制御システム100は、FC絶縁コンバータ14及び非絶縁型昇圧コンバータ44を制御するコントローラ190を備えている。
コントローラ190は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータ、特にマイクロコンピュータで構成される。そして、コントローラ90は、本実施形態の処理を実行可能にプログラムされている。なお、コントローラ190は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態の各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていても良い。
そして、本実施形態においてコントローラ190は、低圧側電流センサ32で検出される低圧側電流検出値Ilowd、低圧側電圧センサ34で検出される低圧側電圧検出値Vlowd、中電圧側電流センサ40で検出される中電圧側電流検出値Imedd、中電圧側電圧センサ42で検出される中電圧側電圧検出値Vmedd、及び高圧側電圧センサ36で検出される高圧側電圧検出値Vhighdに基づいてFC絶縁コンバータ14及び非絶縁型昇圧コンバータ44を制御する。以下、本実施形態におけるコントローラ190による制御をより詳細に説明する。
図12は、第4実施形態の電力制御システム100の制御態様を説明するフローチャートである。なお、本フローチャートで示す各ステップは必ずしも以下で説明する順番に限定されるものではなく、可能な範囲で各ステップの入れ替えが可能である。
図示のように、ステップS210において、コントローラ190は、例えば図示しない充電量(SOC)センサにより検出される高電圧バッテリ12の充電量検出値(又は推定値)に基づいて、高電圧バッテリ12の受け入れ可能電力(要求充電電力)を演算する。
ステップS220において、コントローラ190は、演算した高電圧バッテリ12の要求充電電力からSOFC10に対する要求発電電力を演算する。このとき、第2走行モータ26からの要求電力がある場合には、当該要求発電電力に第2走行モータ26用の要求電力を加算する。
ステップS230において、コントローラ190は、演算した要求発電電力、及び低圧側電圧検出値Vlowdに基づいてSOFC10の取り出し電流補正目標値(以下では、「第1取り出し電流目標値」とも称する)を演算する。すなわち、第1取り出し電流目標値は、高電圧バッテリ12の充電電力の要求を満たしつつも、低電圧ライン22の電圧(低圧側電圧Vlow)が高電圧安全要求対象部品の対象となる、ある上限値を超えないように制限する観点から演算されるSOFC10の取り出し電流(低圧側電流Ilow)の目標値である。
具体的に、本実施形態において、コントローラ190は、先ず、演算した要求発電電力に基づいてSOFC10の基本取り出し電流目標値を演算する。そして、SOFC10の出力特性(IV特性)に基づいて低圧側電圧検出値Vlowdが所定の上限電圧Vlim(例えば60V)未満となるように基本取り出し電流目標値を補正した値を第1取り出し電流目標値として設定する。なお、前記のように、第2走行モータ26からの要求電力(要求電流)がある場合には、第1取り出し電流目標値は、当該第1取り出し電流目標値から当該要求電流を指し引いた値を適用する。
なお、第1取り出し電流目標値は、要求発電電力を満たしつつも低圧側電圧検出値Vlowdを制限する観点から演算される目標値であるので、本来の第1取り出し電流目標値に基づいて定まる基本取り出し電流目標値以上の値に設定されることとなる。
ステップS240において、コントローラ190は、ステップS230で演算した第1取り出し電流目標値及び高圧側電圧検出値Vhighdに基づいて、FC絶縁コンバータ14及び非絶縁型昇圧コンバータ44を制御する。
具体的には、コントローラ190は、低圧側電流検出値Ilowdが第1取り出し電流目標値に近づくように、FC絶縁コンバータ14及び非絶縁型昇圧コンバータ44をスイッチング制御してトータルの昇圧比(基本昇圧比+補助昇圧比)を調節する。
したがって、本実施形態によれば、低圧側電圧Vlowを上限電圧Vlim未満(例えば、60V未満)に維持しつつ、高電圧バッテリ12に所望の電力を充電し得る各コンバータの制御の一態様が提供されることとなる。
ここで、本実施形態の電力制御システム100は、FC絶縁コンバータ14の絶縁トランス14cにより低電圧ライン22と中電圧ライン38の間が電気的に絶縁されている。したがって、低電圧ライン22の電圧である低圧側電圧Vlowが上限電圧Vlim未満に維持されると、FC絶縁コンバータ14の入力側の低電圧ライン22及びSOFC10の動作電圧を実質的に上限電圧Vlim未満とすることができる。すなわち、低電圧ライン22及びSOFC10の電気的安全性をより向上させることができる。
特に、本実施形態の電力制御システム100が自動車に搭載される場合であって、上限電圧Vlimを60V未満の値に設定すれば、低電圧ライン22及びSOFC10を実質的に動作電圧が60V未満の部品に設定できるので、これらを既に説明した高電圧安全要求対象部品から外すことができる。
結果として、本実施形態における電力制御システム100を自動車に搭載する際において、低電圧ライン22及びSOFC10の車両上の配置レイアウト自由度を向上させることができる。
なお、さらに、本実施形態の電力制御システム100において、SOFC10の実質的な最大出力電圧が60V未満となるように当該SOFC10を構成しても良い。これにより、上記の低圧側電圧Vlowが60V未満に維持される制御と相まってより確実に、SOFC10及び低電圧ライン22を含む低電圧系の部品を60V未満に維持することができるので、これら部品の電気的な安全性をより一層高めることができる。
[第5実施形態]
図13は、第5実施形態の電力制御システム100の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態では第4実施形態に係る電力制御システム100に対して、非絶縁型昇圧コンバータ44とFC絶縁コンバータ14の配置位置が入れ替わった構成をとっている。すなわち、本実施形態の電力制御システム100では、SOFC10とFC絶縁コンバータ14の間に非絶縁型昇圧コンバータ44が配置されている。なお、他の構成については第4実施形態に係る電力制御システム100と同様である。
以上の構成を有する本実施形態の電力制御システム100では、非絶縁型昇圧コンバータ44は、低電圧ライン22におけるSOFC10の出力電圧を昇圧して中電圧ライン38に出力する。そして、FC絶縁コンバータ14は、中電圧ライン38の電圧を昇圧して高電圧ライン16に出力する。すなわち、本実施形態においては、SOFC10の出力電圧が、非絶縁型昇圧コンバータ44及びFC絶縁コンバータ14の順で2段階昇圧された後に高電圧バッテリ12に供給されることとなる。
特に、本実施形態では、SOFC10の出力電圧を第1段目の非絶縁型昇圧コンバータ44の制御に応じて高電圧バッテリ12の要求に応じた補助昇圧比の調節を行いつつ、当該非絶縁型昇圧コンバータ44により昇圧された中電圧ライン38の電圧をさらに第2段目のFC絶縁コンバータ14によって昇圧することで、FC絶縁コンバータ14から高電圧ライン16への出力電圧を適切に調節することができる。
また、本実施形態においても、第4実施形態と同様に、高電圧バッテリ12の要求電力の変動等に応じた非絶縁型昇圧コンバータ44及びFC絶縁コンバータ14の2段昇圧におけるトータルの昇圧比(補助昇圧比×基本昇圧比)を、応答性の良い非絶縁型昇圧コンバータ44に対するスイッチング制御によって好適に調節することができる。
さらに、本実施形態の電力制御システム100では、非絶縁型昇圧コンバータ44の入力側にSOFC10が配置されている構成をとっているので、SOFC10の出力電力の大きさによってはSOFC10から非絶縁型昇圧コンバータ44へ入力される電流が比較的大きくなること状況が想定される。
このような状況に対して本実施形態では、非絶縁型昇圧コンバータ44の回路に絶縁トランス14cが用いられない非絶縁型コンバータとして構成されるので、SOFC10からの入力電流が大きくなることによる非絶縁型昇圧コンバータ44のサイズの大型化が抑制される。
より詳細に説明すると、絶縁トランス14cを有するFC絶縁コンバータ14にSOFC10から直接的に電流が入力される構成の場合、当該入力電流が大きくなるとそれを許容すべく絶縁トランス14cの構成部品(巻線及び鉄心等)が大型に構成されることとなり、FC絶縁コンバータ14全体のサイズアップに繋がる。
これに対して、非絶縁型昇圧コンバータ44は、主としてインダクタ又はコンデンサ等の回路素子で構成されるので、入力電流が大きくなってもこれら回路素子のサイズアップはFC絶縁コンバータ14と比べると限定的にすることができる。したがって、本実施形態のように非絶縁型昇圧コンバータ44をSOFC10とFC絶縁コンバータ14の間に配置することで、非絶縁型昇圧コンバータ44を含みシステム全体の大型化も抑制することができる。
結果として、本実施形態の電力制御システム100において出力の比較的大きいSOFC10を配置しても、出力が大きいことに起因する非絶縁型昇圧コンバータ44への入力電流の増大に対するシステムのサイズアップの度合いがより小さくなるので、システムの大型化を抑制しつつ、より出力の大きいSOFC10を採用することができる。
図14は、第5実施形態の電力制御システム100の制御態様を説明するフローチャートである。なお、本フローチャートで示す各ステップは必ずしも以下で説明する順番に限定されるものではなく、可能な範囲で各ステップの入れ替えが可能である。
図示のように、ステップS210において、コントローラ190は、第4実施形態と同様に、高電圧バッテリ12の充電量検出値(又は推定値)に基づいて、高電圧バッテリ12の要求充電電力を演算する。
ステップS320において、コントローラ190は、演算した高電圧バッテリ12の要求充電電力からSOFC10に対する要求発電電力を演算する。このとき、第2走行モータ26からの要求電力がある場合には、当該要求発電電力に第2走行モータ26用の要求電力を加算する。
ステップS330において、コントローラ190は、演算した要求発電電力、及び低圧側電圧検出値Vlowdに基づいてSOFC10の取り出し電流補正目標値(以下では、「第2取り出し電流目標値」とも称する)及び中電圧側電流目標値を演算する。
ここで、第2取り出し電流目標値は、高電圧バッテリ12の充電電力の要求を満たしつつも、低電圧ライン22の電圧(低圧側電圧Vlow)がある上限値を超えないように制限する観点から演算されるSOFC10の取り出し電流(低圧側電流Ilow)の目標値である。なお、前記のように、第2走行モータ26からの要求電力(要求電流)がある場合には、第2取り出し電流目標値は、当該第2取り出し電流目標値から当該要求電流を指し引いた値を適用する。
したがって、本実施形態において、コントローラ190は、第4実施形態で説明した第1取り出し電流目標値の演算と同様の演算によって、第2取り出し電流目標値を演算する。
さらに、ステップS340において、コントローラ190は、低圧側電圧検出値Vlowd、中電圧側電圧検出値Vmedd、及び演算した第2取り出し電流目標値に基づいて中電圧側電流目標値を演算する。
ここで、中電圧側電流目標値は、中電圧ライン38の電圧(中電圧側電圧Vmed)が、高電圧安全要求対象部品の対象となる、ある上限値を超えないように制限する観点から演算される中電圧側電流Imed(非絶縁型昇圧コンバータ44の出力電流に相当)の目標値である。
具体的に、コントローラ190は、低圧側電圧検出値Vlowdと演算された第2取り出し電流目標値を乗算して供給電力Pを演算する。そして、コントローラ190は、演算した供給電力Pに基づいて基本中電圧側電流目標値を演算する。さらに、コントローラ190は、中電圧側電圧検出値Vmeddが上限電圧Vlim未満となるように基本中電圧側電流目標値を補正した値を中電圧側電圧目標値として設定する。
そして、ステップS350において、コントローラ190は、演算した第2取り出し電流目標値及び中電圧側電流目標値に基づいて、非絶縁型昇圧コンバータ44及びFC絶縁コンバータ14を制御する。
具体的には、コントローラ190は、低圧側電流検出値Ilowd及び中電圧側電圧検出値Vmeddがそれぞれ第1取り出し電流目標値及び中電圧側電流目標値に近づくように、非絶縁型昇圧コンバータ44及びFC絶縁コンバータ14をスイッチング制御してトータルの昇圧比(基本昇圧比+補助昇圧比)を調節する。
したがって、本実施形態では、上記各ステップ、特にステップS330~ステップS350の処理によって、低圧側電圧Vlow及び中電圧側電圧Vmedはいずれも上限電圧Vlim未満に制御されることとなる。
ここで、本実施形態の電力制御システム100は、FC絶縁コンバータ14の絶縁トランス14cにより中電圧ライン38と高電圧ライン16の間が電気的に絶縁されている。したがって低圧側電圧Vlow及び中電圧側電圧Vmedの双方が上限電圧Vlim未満に維持されると、中電圧ライン38、非絶縁型昇圧コンバータ44、低電圧ライン22、及びSOFC10の動作電圧を実質的に上限電圧Vlim未満とすることができる。すなわち、これら各部品の電気的安全性をより向上させることができる。
特に、本実施形態の電力制御システム100が自動車に搭載される場合であって、上限電圧Vlimを60V未満の値に設定すれば、中電圧ライン38、非絶縁型昇圧コンバータ44、低電圧ライン22、及びSOFC10を実質的に動作電圧が60V未満の部品に設定できるので、これらを既に説明した高電圧安全要求対象部品から外すことができる。
結果として、本実施形態における電力制御システム100を自動車に搭載する際において、中電圧ライン38、非絶縁型昇圧コンバータ44、低電圧ライン22、及びSOFC10というより多くの種類の部品に対して、車両上の配置レイアウト自由度を向上させることができる。
なお、さらに、本実施形態の電力制御システム100において、SOFC10の実質的な最大出力電圧が60V未満となるように当該SOFC10を構成しても良い。これにより、上記の低圧側電圧Vlow及び中電圧側電圧Vmedが60V未満に維持される制御と相まってより確実に、SOFC10、低電圧ライン22を含む低電圧系の部品、及び中電圧ライン38を含む中電圧系の部品を60V未満に維持することができるので、これら部品の電気的な安全性をより一層高めることができる。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、上記各実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記各実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記のように説明したFC絶縁コンバータ14又は非絶縁型昇圧コンバータ44の制御態様はいずれも一例であり、種々変更が可能である。すなわち、第3実施形態のFC絶縁コンバータ14-1,14-2の制御においては、各SOFC10-1,10-2の出力特性に応じてそれぞれの出力電流を調節することが可能であるならば、FC絶縁コンバータ14-1,14-2の制御に用いた高圧側電圧Vhigh等のパラメータに代えて、又はこれとともに適宜任意のパラメータを用いても良い。
同様に、第4実施形態及び第5実施形態におけるFC絶縁コンバータ14又は非絶縁型昇圧コンバータ44の制御においても、高電圧バッテリ12にその要求充電電力に応じた電力を供給しつつ、低圧側電圧Vlow、又は低圧側電圧Vlow及び中電圧側電圧Vmedを上限電圧Vlim未満に制御することが可能であるならば、これら第4実施形態及び第5実施形態の制御に用いた各パラメータに代えて、又はこれとともに適宜任意のパラメータを用いても良い。
さらに、上記各実施形態では、絶縁型電力変換器を含むFC絶縁コンバータ14が、絶縁トランス14cにより絶縁機能を実現した例について説明した。
一方、上記各実施形態のFC絶縁コンバータ14に代えて、入出力の間で実質的な電気的絶縁を維持しながら、高電圧バッテリ12への供給すべき電力に相当するエネルギーを入力から出力へ伝達可能な任意の構成(回路素子等)を備えた絶縁型電力変換器を用いても良い。
すなわち、上記各実施形態で説明した絶縁トランス14cの機能を代替する回路素子等の任意の構成については、本出願の出願日以前に存在していた技術はもとより、出願日以降において新規に見出される技術であっても、既に説明した本発明で要求される絶縁トランス14cの機能を奏する範囲において本発明の技術的範囲から除外されるものではない。
また、第3実施形態において、2つのSOFC10-1,10-2を設け、それぞれに個別にFC絶縁コンバータ14-1,14-2を接続した例を説明した。これら実施形態に代えて、n個(n≧3)のSOFC10を配置し、これらn個のSOFC10に個別にn個のFC絶縁コンバータ14を接続するようにしても良い。これにより、n個のSOFC10の各出力特性に応じて、個別に取り出し電流を制御するようにしても良い。
さらに、n個のSOFC10の内の所定個数ごとのSOFC10のグループを形成し、当該グループに対して1つのFC絶縁コンバータ14を接続し、グループ単位でSOFC10の取り出し電流を制御するようにしても良い。
また、第1実施形態乃至第5実施形態の構成を任意に組み合わせても良い。例えば、第3実施形態に係る2つのSOFC10-1,10-2にそれぞれ個別にFC絶縁コンバータ14-1,14-2が接続された電力制御システム100において、非絶縁型昇圧コンバータ44を設けても良い。
より詳細には、第3実施形態における電力制御システム100において、SOFC10-1(10-2)とFC絶縁コンバータ14-1(14-2)の間又はFC絶縁コンバータ14-1(14-2)と高電圧バッテリ12の間に非絶縁型昇圧コンバータ44-1(44-2)(不図示、図8、図11参照)を設け、FC絶縁コンバータ14-1(14-2)及び非絶縁型昇圧コンバータ44-1(44-2)に対して第4実施形態及び第5実施形態で説明した制御を実行するようにしても良い。
また、第3実施形態乃至第5実施形態の制御を、第1実施形態、又は第2実施形態において、FC絶縁コンバータ14が駆動している場合に適用してもよい。
さらに、第4,第5実施形態においてFC絶縁コンバータ14の絶縁トランス14cを、電気的な絶縁機能のみに用いて巻数による昇圧を行わない構成としても良い。すなわち、絶縁トランス14cの一次側コイルの巻数と二次側コイルの巻数を等しくするなどして絶縁トランス14cによる昇圧比を1:1とした上で、FC絶縁コンバータ14における絶縁トランス14c以外の素子からなる昇圧回路、及び非絶縁型昇圧コンバータ44によってSOFC10の出力電圧の昇圧を行う構成としても良い。
また、上記各実施形態では、電力生成装置がSOFC10である例について説明したが、内燃機関及びオルタネーター等の他の電力生成装置を採用しても良い。さらに、上記各実施形態の電力制御システム100は、自動車以外の鉄道車両等の電力の供給を受けて駆動する外部負荷(モータ)を備えた任意の車両又はその他の電力で駆動される外部負荷を備えた装置に適用することができる。