JP7117737B2 - 建造物損傷状況推定システム及び建造物損傷状況推定方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻空間・環境デザイン工学専修2017年度修士論文発表資料集「多層ニューラルネットワークを用いた鋼構造骨組の損傷ブレース位置の非学習パターンを考慮した判定」渡邊 健太、小檜山 雅之、平成30年3月27日 [刊行物等]数値震動台研究開発プロジェクト成果発表会公開資料「建築構造シミュレーションの利活用研究-AIを用いた構造ヘルスモニタリング-」小檜山 雅之、平成30年3月29日 [刊行物等]一般社団法人日本計算工学会計算工学講演論文集Vol.23「深層学習を用いた鋼構造骨組の損傷ブレース部材の推定」山下 拓三、小檜山 雅之、渡邊 健太、松崎 和敏、森 悠史、平成30年6月6日 [刊行物等]第23回(平成30年度)計算工学講演会公開資料「深層学習を用いた鋼構造骨組の損傷ブレース部材の推定」山下 拓三、小檜山 雅之、渡邊 健太、松崎 和敏、森 悠史、平成30年6月6日 [刊行物等]13th World Congress on Computational Mechanics (WCCM XIII) and 2nd Pan American Congress on Computational Mechanics「A FUNDAMENTAL STUDY ON DAMAGE DETECTION BASED ON DEEP LEARNING USING DATA OBTAINED FROM SHAKE TABLE TESTS OF A STEEL FRAME」岡 一也、渡邊 健太、小檜山 雅之、山下 拓三、松崎 和敏、森 悠史、平成30年7月22日 [刊行物等]13th World Congress on Computational Mechanics (WCCM XIII) and 2nd Pan American Congress on Computational Mechanics公開資料「A Fundamental Study on Damage Detection Based on Deep Learning Using Data Obtained from Shake Table Tests of a Steel Frame」岡 一也、渡邊 健太、小檜山 雅之、山下 拓三、松崎 和敏、森 悠史、平成30年7月26日 [刊行物等]一
本発明は、ビルディングなどの建造物の地震発生後において、当該建造物の健全性評価を行うために損傷状況を推定する建造物損傷状況推定システム及び建造物損傷状況推定方法に関する。
従来、建造物の地震後の損傷検知、健全性評価を行う構造ヘルスモニタリングでは、建造物に数点程度設置した加速度センサーで取得される情報から地震時応答の最大値や累積値を推定して、評価対象建造物の設計クライテリア等と比較をすることで、評価対象建造物の健全性を判定するのが主流であった。
また、評価対象建造物の固有振動数のような、建造物全体の振動特性の変化を利用する構造ヘルスモニタリング手法も従来から研究されている。
従来のこれらの手法は、少ないセンサー数で、評価対象となる建造物の健全性を簡易的に評価はできるが、それらの特徴量(最大値、累積値、固有振動数)と損傷との対応関係は経験則的であり明確な根拠はなく、また、建造物のどこに損傷が発生しているかといった情報は取得できない、という問題があった。
そこで、評価対象建造物における局所的な損傷推定手法として、部分構造の出力誤差を用いる方法が提案されている。このような手法では、柱、梁、柱梁接合部からなる部分構造に対して、柱梁の複数のセンサーの観測値を入力、接合部のセンサーの観測地を出力に分けて、その入出力関係を、ARXモデルによりモデル化する。そして、無損傷時のモデルのパラメーターを事前に同定しておき、地震時に観測されたセンサーの情報から計算した出力誤差により、部分構造の損傷の有無を判定する。
例えば、特許文献1(特開2015-4526号公報)においては、構造物の損傷を検出する方法であって、 前記構造物の構造フレームを形成する複数の構造部材の接合部に振動センサーを設置し、 前記接合部と該接合部を構成する複数の構造部材を部分構造として分割し、前記接合部に接合した各構造部材の一端部の反対側の他端部が接合する他の接合部に設置した振動センサーの検出情報を入力、前記接合部の振動センサーを出力として、各部分構造の動特性の入出力関係をシステム同定し、 時刻的に前後の前記部分構造のシステムを比較し、 前記部分構造を構成する前記構造部材の損傷の有無及び損傷の程度を検出するようにした構造物の損傷検出方法が提案されている。
特開2015-4526号公報
特許文献1記載の従来技術においては、部分構造内での入出力をモデル化したものであり、着目する部分構造とは別の箇所が損傷した場合、当該部分構造内の入出力データが予期せぬ影響を受けて損傷状況の推定精度が低下してしまう、という問題があった。
このため、着目部分構造とは別の箇所の損傷の影響を考慮して、より高精度な推定を行うためには、部分構造内に限定せず広範囲の観測データを入力とし、各位置での損傷の判断に用いられる量を出力としてモデル化を行う必要があるが、従来そのようなモデル化が行われておらず、前記のように損傷状況の推定精度が低下していた。
要は特許文献1記載のような従来技術では、線形モデルを用いているため、構造物の非線形応答の考慮が不十分であり、損傷が生じた個別の部材の位置を推定する精度が高くない、といった課題を内包している。本発明で解決しようとしている課題は、構造物が地震動を受けたときに生じる非線形応答の特徴を適切に考慮して、損傷が生じた箇所の位置を特定することなどにある。
この発明は、上記のような課題を解決するものであり、本発明に建造物損傷状況推定システムは、建造物に設置される物理センサーと、前記物理センサーによって取得される応答データが入力されると共に、各種データ処理が実行され、各種データを記憶する記憶部を有するデータ処理装置と、を有する建造物損傷状況推定システムであって、前記データ処理装置が、前記物理センサーによって、地震に基づく実際の実応答を取得する実応答取得工程と、応答を入力とし損傷パターンを出力とする機械学習により得られた学習済みモデルにより、実応答を入力として、建造物の損傷状況を推定する推定工程と、前記建造物の予め選定された損傷パターンを考慮したシミュレーションモデルに模擬的振動を入力したときにおける前記物理センサー設置箇所における模擬応答をシミュレーションするシミュレーション工程と、選定された損傷パターンでの模擬応答を損傷パターンと紐付けて前記記憶部に記憶する記憶工程と、前記シミュレーション工程と前記記憶工程とを繰り返し、前記記憶部における記憶データ数を増やすことで、学習データベースを作成する学習データベース作成工程と、を実行し、前記学習データベースが予め選定された一つまたは複数の損傷候補箇所から複数の損傷パターンを想定し、損傷パターンのそれぞれに対応した模擬応答をシミュレーションすることにより、各損傷パターンでの模擬応答を損傷パターンと紐付けて記憶することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システムは、前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行う多クラス分類によるものであり、前記データ処理装置が、前記多クラス分類におけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システムは、前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行うニューラルネットワークモデルによるものであり、前記データ処理装置が、前記ニューラルネットワークモデルにおけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システムは、前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行う特徴量抽出と分類器とからなるモデルによるものであり、前記データ処理装置が、当該モデルにおけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システムは、前記推定工程の前段に、入力された実応答が学習工程で学習済みであるか否かを判定する判定工程をさらに有し、前記データ処理装置が、前記判定工程による判定結果が真であると、前記推定工程を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システムは、前記データ処理装置が、前記判定工程による判定結果が偽であると、入力された実応答に起因して発生する損傷パターンをシミュレーションする実シミュレーション工程を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定方法は、建造物に設置された物理センサーによって、地震に基づく実際の実応答を取得する実応答取得工程と、応答を入力とし損傷パターンを出力とする機械学習により得られた学習済みモデルにより、実応答を入力として、建造物の損傷状況を推定する推定工程と、前記建造物の予め選定された損傷パターンを考慮したシミュレーションモデルに模擬的振動を入力したときにおける物理センサー設置箇所における模擬応答をシミュレーションするシミュレーション工程と、選定された損傷パターンでの模擬応答を損傷パターンと紐付けて記憶する記憶工程と、前記シミュレーション工程と前記記憶工程とを繰り返し、記憶データ数を増やすことで、学習データベースを作成する学習データベース作成工程と、を有し、前記学習データベースが予め選定された一つまたは複数の損傷候補箇所から複数の損傷パターンを想定し、損傷パターンのそれぞれに対応した模擬応答をシミュレーションすることにより、各損傷パターンでの模擬応答を損傷パターンと紐付けて記憶することを特徴とする
また、本発明に係る建造物損傷状況推定方法は、前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行う多クラス分類によるものであり、前記多クラス分類におけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定方法は、前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行うニューラルネットワークモデルによるものであり、前記ニューラルネットワークモデルにおけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定方法は、前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行う特徴量抽出と分類器とからなるモデルによるものであり、当該モデルにおけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定方法は、前記推定工程の前段に、入力された実応答が学習工程で学習済みであるか否かを判定する判定工程をさらに有し、前記判定工程による判定結果が真であると、前記推定工程が実行されることを特徴とする。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定方法は、前記判定工程による判定結果が偽であると、入力された実応答に起因して発生する損傷パターンをシミュレーションする実シミュレーション工程を有することを特徴とする。
本発明に係る建造物損傷状況推定システム及び建造物損傷状況推定方法は、実応答を入力として、機械学習により、建造物の損傷状況を推定する工程を有しており、このような本発明に係る建造物損傷状況推定システム及び建造物損傷状況推定方法によれば、物理センサーから広範囲の観測データ(実応答)が入力され、想定箇所における損傷の有無が出力されるモデル化がなされているので、損傷状況の推定精度を向上させることができる。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システム及び建造物損傷状況推定方法は、多数の非線形時刻歴応答解析のシミュレーション結果を学習データとして、多層ニューラルネットワークの教師あり学習(或いは教師なし学習)を行うことで、大きな損傷が生じたときに特有の非線形応答の特徴量を自動探索し、想定されている箇所のうち損傷位置を適切に特定することができる。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システム及び建造物損傷状況推定方法は、物理センサーによる観測データ(実応答)が学習工程で学習済みであるか否かを判定する判定工程を有しており、このような判定工程が実行されることで、既学習の損傷パターンに対しては、例えば、ニューラルネットワークを用いた損傷状況の推定を行い、未学習の損傷パターンに対しては、改めてシミュレーションを行うようにしているので、損傷状況の推定精度をさらに向上させることが可能となる。
なお、本発明に係る建造物損傷状況推定システム及び建造物損傷状況推定方法においては、基本的には、模擬的振動に起因して発生する損傷パターンを、コンピューターや模型などによってシミュレーションすることで、学習データベースを蓄積するようにしているが、建造物の実使用中の地震によって観測されたデータを、学習データベースに蓄積して、学習データベースを更新していくようにすることもできる。このような学習データベースの蓄積・更新により、損傷状況の推定精度をさらに向上させることが可能となる。
本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1が設置された建造物の例を示す図である。 本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1の概要構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1の準備手順を説明する図である。 損傷候補箇所のそれぞれについて損傷有り又は損傷無しで場合分けされた損傷パターン例を示す図である。 本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における学習データベース作成処理のフローチャートを説明する図である。 学習データベース作成処理のフローチャートの実行により得られるデータセットの構造例を説明する図である。 本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1で設定されるニューラルネットワークモデルの一例を示す図である。 ニューラルネットワークモデルの構造を説明する図である。 ニューラルネットワークモデルの構造を説明する図である。 本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における学習処理(パラメータ算定処理)のフローチャートを示す図である。 本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における損害状況推定処理のフローチャートを示す図である。 本発明の他の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における損害状況推定処理のフローチャートを示す図である。 本発明に係る建造物損傷状況推定システム1の検証に用いた試験体を示す図である。 本発明に係る造物損傷状況推定システム1の検証における損傷パターンを示す図である。 本発明に係る造物損傷状況推定システム1の検証で用いた加振波の例を示す図である。 本発明に係る造物損傷状況推定システム1の検証でのセンサー設置位置を示す図である。 本発明に係る造物損傷状況推定システム1の検証で用いたディープニューラルネットワークモデルを示す図である。 勾配計算で用いたフローチャートを示す図である。 異なる中間層タイプでの正解率の比較を示す図である。 異なるサンプル長での正解率の比較を示す図である。 異なる自由度成分での正解率の比較を示す図である。 ノード数比と正解率の関係を示す図である。 本発明の他の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における考え方を説明する図である。 本発明の他の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における考え方を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明に係る建造物損傷状況推定システム1は、ビルディングなどの建造物に設置され、地震発生後における当該建造物の損傷状況を推定し、もって当該建造物の健全性評価を行うシステムである。また、本発明には、建造物の健全性評価を行うために、地震発生後における当該建造物の損傷状況を推定するための建造物損傷状況推定方法もその範疇に含まれる。
図1は本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1が設置された建造物の例を示す図である。また、図2は本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1の概要構成を示す図である。
振動センサー50は、建造物に取り付けられ、取り付けられた箇所における振動データを取得するものである。各振動センサー50によって検知される振動データは、データ処理装置100に送信され、データ処理装置100で各種データ処理に供される。
振動センサー50は、本発明による損傷状況の推定対象となる建造物に設置されることが前提とされている。振動センサー50を設置する数は任意である。なお、2つ以上設置される振動センサー50は、一箇所に集中的に設置されるものではなく、建造物全体に係る振動データが適切に取得できるように、それぞれの間の距離が適切に確保された上で設置されることが好ましい。
本明細書では、振動センサー50は、地震などによる建造物の振動を検知する検知手段のうち最も広義であるものとして定義する。本発明で用い得る振動センサー50には、加速度センサー、速度センサー、角加速度センサー、歪みゲージなどが含まれる。さらに、建造物の振動に起因して発生する熱や音を検出する温度センサーや音声センサーなども本発明に用い得る可能性がある。本明細書では、振動センサー50や温度センサーや音声センサーなどを包括する本発明に用い得るセンサーを「物理センサー」として定義する。ただし、以下、本実施形態では、振動センサー50を1つ建造物に設置する例に基づいて説明を行うが、振動センサー50の数をこれに限定したことは説明を簡単とするためであって、建造物に係る振動データを取得する上では、振動センサー50の数はより多い方が好ましい。
本発明に係る建造物損傷状況推定システム1で用いられるデータ処理装置100としては、演算を実行する演算処理部(不図示)、各種データを記憶可能する記憶部110、ディスプレイ、キーボード、マウスなどのユーザーインターフェイス部(不図示)、他の外部機器などとデータ通信する通信部(不図示)などを有する汎用のパーソナルコンピューターやサーバーなどコンピューターを用いることができる。このようなデータ処理装置100の記憶部110には、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1を動作させるプログラムがインストールされると共に、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1において、建造物の損傷状況を推定する際に参照される学習済みモデル(機械学習を終えた上で得られる各パラメーター)などが格納されている。
なお、学習済みモデル自体の作成は、建造物損傷状況推定システム1で用いられるデータ処理装置100自体で作成しても良いし、他のコンピューターで作成しても良い。また、本実施形態は、学習済みモデルが記憶部110に格納されている例に基づいて説明を行うが、学習済みモデルは通信部(不図示)を介して取得するような構成としてもよい。また、本実施形態は、学習済みモデルを記憶部110に格納する例で説明を行うが、学習済みモデルを作成するためのデータベースである学習データベースを格納しておき、必要時に学習済みモデルを作成するようにしてもよい。
報知装置200は、データ処理装置100で推定された建造物の損傷状況などを、表示により報知するディスプレイや、音声などにより報知するスピーカーなどの報知手段である。このような報知装置200は、上位装置であるデータ処理装置100からの指令に基づいて報知動作を行うようになっている。報知装置200として、ここではディスプレイやスピーカーを例に挙げたが、他の装置も適宜利用することができる。例えば、データ処理装置100からのデータ通信を無線により受信することができるタブレット型情報処理端末なども報知装置200として用いることができる。例えば、このようなタブレット型情報処理端末を報知装置200として用いれば、建造物を遠隔から管理することが可能となる。
次に、以上のように構成される建造物損傷状況推定システム1の動作・処理について説明する。まず、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1を動作・処理させるための準備について説明する。このような準備は、初期設定のような作業であり人為的になされるものである。図3は本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1の準備手順を説明する図である。
図3の準備手順において、ステップS100で準備を開始すると、続くステップS101では、建造物におけるN個の損傷候補箇所を選定する。このステップS101の手順における「損傷候補箇所」とは、着目している建造物において、地震による振動で損傷の可能性が比較的高いことが予想される箇所である。本発明に係る建造物損傷状況推定システム1では、このように予め選定された損傷候補箇所における損傷発生の確率を、地震発生前の平時に機械学習しておき、当該学習に基づく予測・推定を実際の地震発生時に行うようにしているものである。
なお、上記のようなN個の損傷候補箇所を選定する上においては、例えば、損傷シミュレーションによってこれを行うことができる。損傷シミュレーションは、着目している箇所が、模擬的振動に起因して損傷するか否かについての判定を行うものであり、当該箇所の模擬応答が所定の閾値を越えるか否かによって行うことができる。一方、上記のようなN個の損傷候補箇所を絞り込む方法は、損傷シミュレーションのみに限定される必要はない。
また、損傷シミュレーションのための解析手法としては、例えば、詳細3次元FEM(Finite Element Method)による構造物の解析に基づいてこれを行うことができる。なお、詳細3次元FEMについては、例えば、発明者によるTomoshi MIYAMURA, Takuzo YAMASHITA, Hiroshi AKIBA and Makoto OHSAKI, Dynamic FE simulation of four-story steel frame modeled by solid elements and its validation using results of full-scale shake-table test, EARTHQUAKE ENGINEERING AND STRUCTURAL DYNAMICS, Vol. 44, (2015), pp. 1449-1469.に記載された技術を用いることができる。
また、本明細書で言う「損傷候補箇所」には、着目している建造物において、地震による振動で同時に損傷する可能性が比較的高いことが予想される箇所の集合(例えば、同一階にある同じ向きの筋かい部材をまとめた集合)も含まれる概念として定義される。
図1及び図2に示す実施形態では、上記のような損傷候補箇所として、A及びBの2点を選定している。すなわち、本実施形態においては、N=2である。本実施形態では、説明を単純化するためにN=2としているが、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1では、Nは任意の自然数をとることができる。ただし、損傷候補箇所の数が増えると、後述するように損傷パターンが2のN乗で増えるため、システムの負荷などを勘案してNの数を決定するとよい。
次のステップS102においては、N個の損傷候補箇所のそれぞれについて損傷有り又は損傷無しで計2N通りの損傷パターンに場合分けを行う。図4は本実施形態に係るA、Bの損傷候補箇所のそれぞれについて損傷有り又は損傷無しで場合分けされた損傷パターン例を示す図である。
N=2の場合の本実施形態では、22で4通りの損傷パターンの場合分けが発生する。すなわち、本実施形態ではステップS102では、図4に示すように、損傷パターン(1)乃至損傷パターン(4)の4通りに場合分けを行う。
損傷パターン(1)は「損傷候補箇所(A)=損傷無し、損傷候補箇所(B)=損傷無し」となるパターンであり、損傷パターン(2)は「損傷候補箇所(A)=損傷有り、損傷候補箇所(B)=損傷無し」となるパターンであり、損傷パターン(3)は「損傷候補箇所(A)=損傷無し、損傷候補箇所(B)=損傷有り」となるパターンであり、損傷パターン(4)は「損傷候補箇所(A)=損傷有り、損傷候補箇所(B)=損傷有り」となるパターンである。
ステップS102で上記のような損傷パターンの場合分けをおこない、ステップS103で準備の手順を終了する。
なお、以下、本実施形態においては、N個の損傷候補箇所のそれぞれについて損傷有り又は損傷無しの計2N通りの損傷パターンに場合分けを行う例で説明を行うが、本発明がこれに限定されるものではない。すなわち、損傷パターンについては、損傷パターンの場合分け数は、2N通りより小さい数であってもよい。
また、本実施形態においては、N個の損傷候補箇所のそれぞれについて「損傷有り」又は「損傷無し」の、「1」又は「0」的な2通りの場合分けを行う例で説明を行うが、本発明がこれに限定されるものでもない。すなわち、本発明では、「損傷有り」又は「損傷無し」の間の損傷レベルを何段階か規定しておくようにすることも可能である。
本明細書においては損傷パターンとは、対象とする建造物のどこ(損傷箇所)が、どの程度(損傷のレベル)損傷するかに係る場合分けを具体的に示したものと言うことができる。例えば、損傷箇所がN箇所、損傷レベルの程度がM段階ある場合、損傷パターン数はMのN乗となる。
次に、以上のような準備を終えた上で、学習データベースを作成する処理が実行される。ここで、学習データベースは、着目する建造物に対してシミュレーション上の振動(模擬的振動)を与えて、その振動により、損傷パターンに応じて、振動センサー50でどのような応答(模擬応答)が得られるのかをコンピューターによるシミュレーションベースで取得したデータセットの集合体のデータである。当該データセットは、少なくとも[振動センサー50での応答(模擬応答)の波形データ,N個の損傷候補箇所それぞれの損傷有無(損傷パターン)]の構造を有するものである。
上記の学習データベースは、後述するニューラルネットワークモデルにおいて各パラメーターを算定・調整する上での、教師あり学習のためのデータとして利用される。一方、学習データベースにより、機械学習を終えた上で得られる各パラメーターについては、本明細書では「学習済みモデル」として定義する。
なお、実際の建造物の一部を損傷させた上で、さらに実際の振動を入力して、実際の応答を得ることは基本的に不可能であるので、上記のような学習データベースを作成する際には、本実施形態ではシミュレーションとしてコンピューター上のシミュレーションを用いるようにしている。ただし、コンピューター上のシミュレーションではなく、着目する建造物の模型に振動を入力することによりデータを取得して、学習データベースを作成することも可能である。また、建造物の実使用中の地震によって観測されるデータを、学習データベースに蓄積していくようにすることもできる。本明細書における「シミュレーション」には、上記のような模型に基づくデータ取得、建造物の実使用中のデータ取得も含まれるものと定義する。
上記のような学習データベースを作成する処理の基本的なアルゴリズムについて説明する。図5は本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における学習データベース作成処理のフローチャートを説明する図であり、図5(a)はフローチャート自体を示しており、図5(b)はフローチャートの処理イメージを説明する図である。なお、本発明においては、学習データベースを作成する処理のアルゴリズムが、図5に示すフローチャートに限定されるものではない。
図5において、ステップS200で、学習データベース作成の処理が開始されると、続いてステップS201に進み、図5(b)に示すシミュレーション上の建造物に対して、損傷パターン(1)乃至損傷パターン(4)の損傷パターンのうちのいずれかを設定する。図5(b)では、損傷候補箇所(A)が損傷し、損傷候補箇所(B)が損傷していない損傷パターン(2)が設定された例が示されている。
続いてステップS202では、建造物に模擬的振動を入力する。このような模擬的振動については、過去に発生した実際の地震が参考にされ、振動の特性(振幅、振動数等)が決定される。
次のステップS203では、振動センサー50が設置された箇所における模擬応答をシミュレーションする。なお、模擬応答については、より詳しく、模擬応答の波形データWなどと称することがある。
次のステップS204では、ステップS202で得られた模擬応答と、損傷パターンとを対応付けたデータを1つのデータセットとして、データベースに記憶する。
続くステップS205では、予め設定された規定回数に達したか否かが判定される。ステップS205の判定結果がFALSEであるときには、ステップS206に進み、模擬的振動の特性を、先回の模擬的振動の振動特性とは異なった振動特性に変更して、再び、ステップS201に戻りループする。ここで、このようなループにより、ステップS202乃至ステップS204を繰り返すことで、複数のデータセットが記憶部110に蓄積されていくことで、学習データが作成されることとなる。
ステップS205の判定結果がTRUEであるときには、ステップS207に進み、学習データベース作成処理が終了する。
図6は、上記の学習データベース作成処理のフローチャートの実行により得られるデータセットの構造例を説明する図である。図5(b)の例で作成されたデータセットは、図6に示すような[模擬応答の波形データW,損傷パターン(2)]となる。一般化すると、データセットは、少なくとも[振動センサー50での応答(模擬応答)の波形データ,N個の損傷候補箇所それぞれの損傷有無(損傷パターン)]の構造を有するものであると定義することができる。
なお、上記のようなデータセットの集合体である学習データベースに基づいた機械学習においては、本実施形態では、模擬応答の波形データWのうち、予め設定された時間長さ(4Δt)の間に取得される、4つのタイムスロット中の波形データが用いられる。このタイムスロットの数は、後述する入力層のノード数と一致する。
次に、以上のような学習データベースに基づいたニューラルネットワークモデルにおける学習処理を行う。図7は本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1で設定されるニューラルネットワークモデルの一例を示す図である。また、図8及び図9は、ニューラルネットワークモデルの構造を説明する図であり、図7の一部を抜き出して示した図である。
図7乃至図9において、○はノードを示しており、矢印はエッジを示している。ノードのうち、N1乃至N4は入力層を構成するものであり、N5乃至N12は中間層(隠れ層ともいう)を構成するものであり、N13乃至N16は出力層を構成するものである。
入力層には原因に係る要素(本発明では、模擬応答の波形データ、又は実応答)が入力され、出力層からは結果に係る要素(本発明では、損傷パターンの発生確率。本明細書では、それぞれの損傷パターンの発生確率を算出することは、損傷パターンを推定することと同義とする。)が出力される。出力層を構成する全てのノードから得られる値を足し合わせると1となるようになっている。
ニューラルネットワークモデルにおいては、左側のノードから右側のノードへと順々に信号(値)が、ノード間のエッジの重みが乗ぜられながら伝達されていくものである。
また、斜線が入った○であるB1乃至B3はバイアスを示している。バイアスも所定の値を有している。それぞれのバイアスからは次の層を構成するノードに当該バイアスの信号(値)が入力されるようになっている。本実施形態では、ニューラルネットワークモデルにバイアスを用いるようにしているが、このようなバイアスは必ずしも必須の構成要件ではない。
中間層が複数存在するニューラルネットワークは特にディープニューラルネットワークとされるが、本発明ではディープニューラルネットワークのモデルを用いることは必須ではない。また、本実施形態では、中間層の各層を構成するノードの数が4つであるが、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1では、中間層の各層を構成するノードの数がこれに限定されるものではない。また、本実施形態では、ニューラルネットワークに基づいた機械学習を例に挙げ説明を行うが、本発明においては、他の機械学習手法を用いることもできる。詳細については後述する。
また、入力層を構成するノードの数は、振動センサー50の数、及び振動センサー50が事前に設定した時間長さの間に取得するデータの数に依存する。すなわち、入力層を構成するノードの数は、(T/Δt)×nsである。ここでTは時間長さであり、Δtはデータ取得時間ステップ幅であり、nsは振動センサー数である。本実施形態に基づけば、入力層を構成するノード数は4であるが、本発明が入力層のノード数に限定されるものではない。
また、出力層を構成するノードの数は、損傷パターンのパターン数と同じである。これまで説明してきた実施形態に基づけば、出力層を構成するノード数も4である。本発明は、この出力層のノード数にも限定されるものではない。
入力層を構成する各ノードには、各振動センサー50の設置箇所における模擬応答が入力される。一方、出力層を構成する各ノードからは、それぞれの損傷パターンが発生する確率が出力される。
本実施形態では、振動センサー50のデータ取得時間ステップ幅をΔtとすると、入力層を構成するノードN1には振動センサー50の時刻tのときの模擬応答が、ノードN2には振動センサー50の時刻t+Δtのときの模擬応答が、ノードN3には振動センサー50の時刻t+2Δtのときの模擬応答が、ノードN4には振動センサー50の時刻t+3Δtのときの模擬応答がそれぞれ入力される。
また、本実施形態では、出力層を構成するノードN13からは損傷パターン1が発生する確率が、ノードN14からは損傷パターン2が発生する確率が、ノードN15からは損傷パターン3が発生する確率が、ノードN16からは損傷パターン4が発生する確率がそれぞれ出力される。
図9を参照して1つの中間層を構成する1つのノードに着目する。ノードにおいて、ノードに入力される全ての和が、どのように活性化されて出力されるかを表す指標として、活性化関数が定義されている。着目するノードに入力される全ての和をΣ、当該ノードからの出力をyとすると、活性化関数fは、y=f(Σ)の関係を有する。
中間層を構成するノードにおける活性化関数として、出力層の前段のノードにおける活性化関数と、当該前段のノード以外の中間層中のノードにおける活性化関数とは、それぞれ異なる種類の活性化関数を用いることが好ましい。前者についてはソフトマックス関数を用い、また、後者についてはrectified linear unitを用いると、より建造物の損傷状況の推定精度を向上させることができる。
本発明に係る建造物損傷状況推定システム1において機械学習する、ということは、上記のように設定されているニューラルネットワークモデルにおけるエッジの重みやバイアスの値を、学習データベースに基づいて、最適な値に調整していくように求めていくことを意味している。
本発明に係る建造物損傷状況推定システム1において、上記のようにエッジの重みやバイアスの値を調整する場合においては、バックプロパゲーション(逆誤差伝搬法)などのアルゴリズムによって、それらの値を適宜調整することが含まれることが好ましい。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1においては、基本的には、学習データベースに基づいて、上記のようなエッジの重みやバイアスの値を調整するが、エッジの重みやバイアスの初期値については、場合によっては、学習データベースによらない値が予め設定される。これは、事前学習の一種と考えられる。本発明に係る建造物損傷状況推定システム1では、このような初期値を設定する際に用いられる手法としては、オートエンコーダー(自己符号化器)があり、特に、本発明では、多層オートエンコーダー(多層自己符号化器)を採用することで推定精度を高めるようにしている。
以上のような、ニューラルネットワークモデルにおける学習処理について説明する。図10は本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における学習処理(パラメータ算定処理)のフローチャートを示す図である。なお、本発明は、学習処理(パラメータ算定処理)のアルゴリズムが、このフローチャートのそれに限定されるものではない。
なお、このような学習処理のフローチャートが実行される前段には、上記のような事前学習が予め完了していることを前提とする。
図10において、ステップS300で、学習処理(パラメーター算定処理)が開始されると、続いて、ステップS301においては、学習データベースからデータセットを1つ取得する。
続く、ステップS302では、ニューラルネットワークのモデルにおけるエッジの重みやバイアスに係るパラメーターを算定(正解との誤差が小さくなるようにこのパラメーターの値を調整)する。
ステップS303では、予め規定されている回数の学習が完了したか否かが判定される。ステップS303における判定がFALSEである場合には、ステップS304に進み、学習データベースの中から他の異なるデータセットを取得し、ステップS302に戻りループする。
なお、ステップS303における学習する回数を決定する上では、過学習とならないような回数が設定されることが好ましい。
一方、ステップS303における判定がTRUEである場合には、ステップS305に進み、学習処理(パラメーター算定処理)を終了する。
さて、以上のような学習処理(パラメータ算定処理)は、地震が発生前の平時に行っておくことで、ニューラルネットワークのモデルにおけるエッジの重みやバイアスの値が予めフィクスされることとなる。そして、実際に地震が発生したときに、ニューラルネットワークモデルの入力層におけるノードに対して、模擬応答ではなく振動センサー50で検出される振動データ(実応答)が入力されることで、出力層のノードからは、それぞれの損傷パターンが発生する確率を得ることができる。次に、このような実応答を用いた建造物の損傷状況の推定処理について説明する。
図11は本発明の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における損害状況推定処理のフローチャートを示す図である。
ステップS400の損害状況推定処理は、振動センサー50で地震が検知されることをトリガーとして開始される。
ステップS400に続くステップS401では、振動センサー50から発生した地震に基づく、実際の振動データである実応答を取得する。
次のステップS402では、当該実応答をニューラルネットワークモデルの入力層として入力する。
次のステップS403では、出力層から2N通りの損傷パターンそれぞれの発生確率を取得する。このような、損傷パターンそれぞれの発生確率により、建造物の損傷状況を推定することが可能となる。
次のステップS404では、得られた損傷パターンのうち、最も高い発生確率を有する損傷パターンを取得して、当該損傷パターンに基づく箇所が損傷箇所であるものとして特定する。
次のステップS405では、報知装置200によって、上記のような建造物の損傷状況と、特定された損傷パターンに基づく箇所が損傷箇所をユーザーに対して報知する動作を実行して、続くステップS406では、損害状況推定の処理を終了する。
以上、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1及び建造物損傷状況推定方法は、実応答を入力として、機械学習により、建造物の損傷状況を推定する工程を有しており、このような本発明に係る建造物損傷状況推定システム及び建造物損傷状況推定方法によれば、振動センサー50などの物理センサーから広範囲の観測データ(実応答)が入力され、想定箇所における損傷の有無が出力されるモデル化がなされているので、損傷状況の推定精度を向上させることができる。
また、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1及び建造物損傷状況推定方法は、多数の非線形時刻歴応答解析のシミュレーション結果を学習データとして、多層ニューラルネットワークの教師あり学習を行うことで、大きな損傷が生じたときに特有の非線形応答の特徴量を自動探索し、想定されている箇所のうち損傷位置を適切に特定することができる。
なお、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1及び建造物損傷状況推定方法においては、基本的には、模擬的振動に起因して発生する損傷パターンを、コンピューターや模型などによってシミュレーションすることで、学習データベースを蓄積するようにしているが、建造物の実使用中の地震によって観測されたデータを、学習データベースに蓄積して、学習データベースを更新していくようにすることもできる。このような学習データベースの蓄積・更新により、損傷状況の推定精度をさらに向上させることが可能となる。
次に本発明の他の実施形態について説明する。これまで説明してきた実施形態においては、複数の振動センサー50による実応答を入力層として、ニューラルネットワークモデルにより、2N通りの損傷パターンそれぞれの発生確率が算出されることで建造物の損傷状況を推定される構成となっていた。ところで、先の実施形態に係る発明においては、複数の振動センサー50によって取得された実応答が、平時において学習していなかった未学習或いは未学習に近似した応答の場合、ニューラルネットワークモデルの出力層から得られる損傷パターンの解答が、正解のものから大きく外れてしまう可能性がある、という問題を内包していた。
そこで、本実施形態においては、地震発生時、複数の振動センサー50からの実応答が未学習或いは未学習に近似した応答であるか否かを判定することで、上記のような問題の解決を図るものである。
図12は本発明の他の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における損害状況推定処理のフローチャートを示す図である。
他の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1においても、ステップS500の損害状況推定処理は、振動センサー50で地震が検知されることをトリガーとして開始される。
ステップS500に続くステップS501では、振動センサー50から発生した地震に基づく、実際の振動データである実応答を取得する。
次のステップS502では、振動センサー50から取得された実応答が、これまで学習データベースに基づいて既に学習したものであるか否かが判定される。
なお、ステップS502において、実応答が既学習のものであるか否かを判定する方法は種々考えられるが、1つの方法としては以下の方法を挙げることができる。出力層ユニットの入力値uの空間において、まず有意水準αを設定しておき、学習済みの損傷パターンに対して毎にマハラノビス距離が遠い方からα分位点のデータセットを探索し、そのマハラノビス距離を未学習の損傷パターンの判定の閾値とする。得られた実応答が、どの学習済みパターンにも属していないのであれば、実応答が既学習でないものと判定する。
さて、ステップS502における判定がFALSEである場合は、ステップS507に進み、実応答に起因して発生する損傷パターンを、シミュレーションして、ステップS506で、報知装置200によって、シミュレーションに基づく建造物の損傷状況と、特定された損傷パターンに基づく箇所が損傷箇所をユーザーに対して報知する動作を実行して、続くステップS508では、損害状況推定の処理を終了する。
一方、ステップS502における判定がTRUEである場合は、ステップS503に進む。ステップS503では、当該実応答をニューラルネットワークモデルの入力層として入力する。
次のステップS504では、出力層から2N通りの損傷パターンそれぞれの発生確率を取得する。このような、損傷パターンそれぞれの発生確率により、建造物の損傷状況を推定することが可能となる。
次のステップS505では、得られた損傷パターンのうち、最も高い発生確率を有する損傷パターンを取得して、当該損傷パターンに基づく箇所が損傷箇所であるものとして特定する。
次のステップS506では、報知装置200によって、上記のような建造物の損傷状況と、特定された損傷パターンに基づく箇所が損傷箇所をユーザーに対して報知する動作を実行して、続くステップS508では、損害状況推定の処理を終了する。
以上のような他の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1及び建造物損傷状況推定方法は、複数の振動センサー50による観測データ(実応答)が学習工程で学習済みであるか否かを判定する判定工程を有しており、このような判定工程が実行されることで、既学習の損傷パターンに対しては、ニューラルネットワークを用いた損傷状況の推定を行い、未学習の損傷パターンに対しては、改めてシミュレーションを行うようにしているので、損傷状況の推定精度をさらに向上させることが可能となる。
次に、本発明に係る建造物損傷状況推定システム1及び建造物損傷状況推定方法が実際に正しく機能することを検証したので、以下、検証結果について説明する。以下の検証では、シミュレーションとしては、コンピューター上のそれではなく振動台実験を行い、本発明で言う学習データベースを得るようにして、この学習データベースに基づくディープニューラルネットワーク(DNN)により、損傷したブレース部材を推定することを行った。
振動台実験
鋼構造骨組のブレース損傷箇所を推定するシステム(損傷推定AIシステムという)の学習およびテストデータの取得を目的に、防災科研つくば本所の大型耐震実験施設の1軸振動台で振動台実験を実施した。対象とする試験体を図13に示す。試験体は短辺6m、長辺方向12m、高さ14m(階高3、5m)の4層の鋼構造骨組を1/3に縮小したモデルであり、スラブおよび3層目、4層目は重量のみを考慮している。図13に示すように試験体の2層目にブレースを4本設置している。ブレースはターンバックルを伸ばすことにより、塑性変形による損傷を模擬している。想定するブレースの損傷パターンを図14に示す。損傷パターンD1とD2は4本とも損傷しているがD1が2mm、D2が1mm伸びており、損傷の度合いが異なる損傷パターンを意図している。D2以外の損傷ブレースの伸びは2mmであり、D3は損傷なし、D5、D6は損傷したブレースの本数が1本、D4、D7、D8は損傷したブレースの本数が2本である。
本検証実験では、多数の学習データを取得するために、様々な種類の加振波が必要となる。そこで、告示波の模擬地震波作成法を参考に加速度スペクトルと時刻歴波形を段階的に増加させて多数の模擬地震波を作成した。振動台の連続加振時間として最大で10分間の制約があったため、入力レベルの小さい波形から順に3秒程度のインターバルを置いて合成し、10分未満で最も長くなる加振波を作成した。図15に加振波の例として、最小レベルの加振波(上)と最大レベルの加振波(下)を示す。それぞれの損傷パターンに対して、合計11種類の加振波に対して試験体長辺方向の水平1方向の加振実験を行った。
試験体には6自由度の小型慣性計測ユニットのMEMSセンサー(SEIKO EPSON製M-G550-PC)を設置して、サンプリング周波数500Hzで加速度3成分、角速度3成分の計測を行った。実験においては合計44個のセンサーでの計測を行っているが、ここでは図16に示すように白丸で示す箇所のセンサーデータを用いる「センサー数3」のケースと、白丸および黒丸で示す箇所のセンサーデータを用いる「センサー数5」のケースで検証することとする。また、用いる自由度成分について、x方向加速度成分のみ用いる「1成分」のケースとx方向加速度成分およびy軸周り角速度成分を用いる「2成分」のケースで検証する。
DNNによる損傷パターンの多クラス分類
以下、「多クラス分類」とは、「損傷パターンの場合分け」と同義とする。
図14のD1~D8に対応する損傷パターンのクラスの集合をD = [ D 1,D 2, … ,D 8]として、センサーデータx∈ RK0が与えられた時の損傷パターンの事後確率ρ(Di|x) (i =1,2,… ,8)を図17に示す5層のDNNでモデル化することにより、損傷推定AIシステムを構築する。ここで、Klはl層(l = 0,1,2,3,4)のノード数である。以降、一般的な表記のため出力層の層の番号をL(= 4)とし、出力層のノード数は損傷パターンの数と同じなので、損傷パターンのクラスの数をKL(= 8)とする。
入力として、ここではセンサーデータの時刻歴波形を用い、1学習データのサンプル長として「1秒」のケースと「2秒」のケースについて検証する。表1に示すように各検証ケースでの入力層のノード数は1500~6000の範囲にある。
Figure 0007117737000001
l層の各ノードへの入力u(l) ∈RKlは、ニューラルネットワークにおいて次式(1)でモデル化される。
Figure 0007117737000002
ここに、w(l) = (wij (l)|i = 1,2,… ,Kl; j = 1,2,… , Kl-1)においてwij (l)はl - 1層のj番目のノードとl層のi番目のノードの結合の重みで図17の実線の矢印に対応している。また、b(l) ∈RKlはl層のバイアス項でこれは図17の点線の矢印に対応している。式からわかるように、u(l)はl - 1層の値を用いて導出されるため入力層から出力層に向かって情報が伝播することになる。
u(l)は活性化関数f によりz(l)としてl層のノードから出力される。ここでは、入力層では活性化関数を用いず、中間層では活性化関数としてrectified linear unit (ReLU)を用いる。すなわち、入力をxとした時、ReLUによる活性化関数は次式(2)で表される。
Figure 0007117737000003
出力層の各ノードの値は損傷パターンの事後分布、すなわちyi= Zi (L)= ρ(Di|x) (x = 1,2,… ,KL)であり、活性化関数としてソフトマックス関数を用いて次式(3)で表される。
Figure 0007117737000004
この時、Σ (和はi=1~Kまで)yi=1 = 1の条件を満たすこととなる。最終的なネットワークの出力d= (d i |i = 1,2,… , KL)は次式(4)で表現される。
Figure 0007117737000005
上式からわかるように、dは正解クラスに対応する成分のみ1をとり、残りの成分は0になるベクトルである。
ネットワークの重みw、バイアスbは誤差関数を最小化することにより更新される。ここでは誤差関数として交差エントロピーを用いる。まず交差エントロピーの導出を以下に示す。事後分布は次式(5)で表すことができる。
Figure 0007117737000006
ここで、学習データ[(xn, dn)](n= 1,2,… ,N)に対するw,bの尤度は式(5)を用いて次式(6)で表される。
Figure 0007117737000007
上式の尤度の対数をとり、符号を反転させることにより、学習データnに対する交差エントロピーの以下の式(7)が導出される。
Figure 0007117737000008
上式の交差エントロピーを誤差関数として用いて、学習データxn, dnに対して、重みwおよびバイアスb(以降、パラメーター)は次式(8)、(9)のように更新される。
Figure 0007117737000009
ここに、
Figure 0007117737000010
であり、
Figure 0007117737000011
であり、上付きの(t)は学習回数(エポック数)を表している。 NwはDNNの重みの総数、NbはDNNのバイアスの総数、εは学習係数でありε= 0.01としている。パラメーターの更新方法として、サンプルの1つまたは一部を使って更新する確率的勾配降下法(Stochastic Gradient Descent; SGD)がある。サンプル1つずつに対して更新を行うと計算コストを要することから、ここでは、サンプルの集合毎にパラメーターを更新するミニバッチという手法を用いる。ここでは集合の要素数(バッチサイズ)として常に100を用いることとした。サンプルの集合をSとするとミニバッチにおける勾配は次式(10)で表される。
Figure 0007117737000012
パラメーターの更新には、Enのwおよびbに対する勾配∇wEn、∇bEnの計算が必要になる。まず、勾配は連鎖律を用いて次式(11)、(12)のように変形できる。
Figure 0007117737000013
なお、式(11)以降の式では下付きの添え字に対して総和規約を用いる。上式中のデルタδi (l)は次式(13)で定義している。
Figure 0007117737000014
0 < l ≦ L-1の場合、δi (l)は以下の(14)式のように求めることができる。
Figure 0007117737000015
上式はl層の値を更新するのに、l+ 1層の値を用いている。すなわち、出力層から入力層に向かって情報が逆伝播することになる。また、l =Lの場合、式(7)より
Figure 0007117737000016
となる。ここでは学習データの添え字nは見やすさのため省略している。上式の導出においてはソフトマックス関数の微分の性質
Figure 0007117737000017
及び、
Figure 0007117737000018
の関係式、
Figure 0007117737000019
を用いている。
以上の式により、学習データxn, dnに対する勾配が計算できる。図18に勾配計算のフローを示す。
DNNでは、上記で導入したデルタの発散や消失によりパラメーターの更新がうまくいかなくなる勾配消失問題が起こり得る。そこで、勾配消失問題を回避するため自己符号化器を用いた事前学習により初期パラメーターを求める。
ここでは中間層を出力層で折り返す多層自己符号化器を用いて事前学習を行う。
本手法のプログラムは、 プログラム言語としてPython3.5.2を用い、深層学習のフレームワークとしてChainer 1.20.0.1を用いて開発を行った。
検証例題
本節では、用いるセンサーの数や自由度成分、サンプリング長、各階層のノード数を検証パラメーターとして、交差検定による評価を行い、適切な設定を把握し、提案するAIシステムの適用性を検証する。「振動台実験」の説明の節で述べたように、センサー数は3または5とし、自由度成分はx方向加速度のみの1成分、または、x方向加速度とy軸周りの角速度の2成分とし、サンプリング長は1秒または2秒とする。各階層のノード数については表2に示す3ケースを扱う。
Figure 0007117737000020
サンプル長1秒のケースでは学習、テストに用いることができるサンプルは6600個であり、サンプル長2秒のケースでは3300個である。交差検定はサンプルを2分割して2通りの学習データセットとテストデートセットのペアに対して実施した。
図19に異なる中間層タイプでの正解率の比較を示す。中間層のノード数が少ないタイプ1では正解率が低く、特に入力層のノードが大きいセンサー数5では非常に低い正解率になっている。一方、中間層のノード数が多いタイプ2、タイプ3はセンサー数の数が変わっても大きな違いが見られず高い正解率となっている。
図20に異なるサンプル長での正解率の比較を示す。いずれのセンサー数、中間層タイプでもサンプル長が短いほうが、正解率が高い結果となっている。その理由として、サンプル長1秒のデータは学習データとして十分な情報量を保有しつつ、サンプル長2秒のケースに比べて2倍のサンプル数があるためだと考えられる。また、センサー数5のケースのほうがサンプル長増加による正解率の低下の度合いが大きくなっていることがわかる。
図21に異なる自由度成分での正解率の比較を示す。どのセンサー数、サンプル長、中間層タイプでも、用いる自由度成分数の違いによる正解率の大きな低下は見られない。また、図19、図20、図21からわかるように中間層タイプ2と3では正解率の違いはわずかである。
図22に中間層l=1と入力層のノード数比(以下、ノード数比)と正解率の関係を示す。図19で正解率が低かったタイプ1のケースはノード数比がいずれも0.1より小さいケースであった。一方、ノード数比が0.1より大きいケースでは77%以上の正解率を達成していることがわかる。
表3に最も正解率が良かったセンサー数3、センサー成分数1、サンプル長1秒、中間層タイプ2のケースでの損傷判別結果を示す。なお、表3及び後掲の表4において、正解の判定結果となるセルと正解率を示すセルは反転文字で、誤判定結果が合計値の2%から10%、10%から20%、20%以上となるセルはそれぞれ網掛け、斜線縞背景、縦縞背景としている。D1、D2の損傷パターンは他の損傷パターンに比べて正解率が低い。この2パターンは損傷箇所ではなく損傷の度合いが異なるパターンであり、D1とD2で誤判定する結果が多いことから正解率が低くなっている。また、損傷ブレースの本数が同じ2本であるD4、D7、D8で誤判定が多く見られ、損傷ブレースの本数が同じ1本であるD5、D6で誤判定が多く見られる。損傷ブレースが無いD3の損傷パターンが最も高い正解率となっている。なお、70%以上の正解率を得たケースでは本ケースと同様の傾向であることを確認している。
表4に2番目に正解率が低かったセンサー数3、自由度成分数1、サンプル長1秒、中間層タイプ1のケースでの損傷判別結果を示す。本ケースでも表3と同様の誤判定の特徴が見られるが順序が近い損傷パターン、例えばD4とD5で誤判定が多く見られる。これは、中間層のノード数が少な
過ぎてDNNのモデルとしての表現能力が劣るためと推察される。
Figure 0007117737000021
Figure 0007117737000022
検証結論
本発明に係る建造物損傷状況推定システム1及び建造物損傷状況推定方法の実現性検討として、学習データ、テストデータに振動台実験データを用いて、損傷ブレース部材の推定問題への深層学習によるディープニューラルネット(DNN)の適用性を検証した。異なるセンサー数、自由度成分数、サンプル長、中間層タイプのケースにおいて交差検定を実施し、以下の結論を得た。
(1) 中間層1 層目のノード数と入力層のノード数の比(以下、ノード数の比)が小さくなり過ぎると、正解率が急激に低下する。検証例題では、ノード数の比が0.1 以下の場合、正解率の大幅な低下が見られた。
(2) ノード数の比が0.1 以上のケースでは77%以上の高い正解率となり、最も高い値として87.9%の正解率を達成し、DNN の高い適用性を示した。
(3) ノード数の比が0.1 以上の場合の中間層タイプの違いや自由度成分数の違いが正解率に及ぼす影響はわずかであるが、サンプル長の違いが正解率に及ぼす影響は比較的大きく、サンプル長が2 秒のほうがサンプル長1 秒に比べて10%程度正解率が落ちるケースが見られた。
(4) それぞれの損傷パターンの判定結果から、損傷箇所が同じで損傷の度合い異なる損傷パターン間で誤判定が最も起きやすく、次いで、損傷ブレースの本数が同じ損傷パターン間で誤判定が起こりやすいことがわかった。
次に本発明の他の実施形態について説明する。図23、図24は本発明の他の実施形態に係る建造物損傷状況推定システム1における考え方を説明する図である。
本発明においては、図23に示すように、機械学習を通じて、入力ノード側に「振動波形」が入力され、出力ノード側から複数の「損傷パターンが発生する確率」が出力されるように構成することがその本質である。
すなわち、そのような事項を実現することができれば、点線の囲み部内で用いる機械学習手法にはどのようなものを用いても構わない。本発明で用い得る機械学習手法としては、図24(A)に示すような「振動波形」の特徴量を抽出し、複数の「損傷パターンが発生する確率」へ多クラス分類することを学習できるもの(多クラス分類器)、或いは、図24(B)に示すような、特徴量抽出を省き、複数の「損傷パターンが発生する確率」へ多クラス分類することを学習できるもの(多クラス分類器)である、ということができる。
これまで説明した実施形態では、図24(A)に示すものであり、特徴量抽出手法には、Auto Regressive(AR)モデルを用い、多クラス分類するための手法として、Feedforward Neural Network(FFNN)を用いた教師あり学習を用いた。また、事前学習には、Auto Encoder(AE)法を用いた。
一方、特徴量の抽出手法については、他にAuto Regressive with exogenous input(ARX)モデル、Bag of Features(BoF)などの手法を用いることもできる。特に、Bag of Features(BoF)法は、大局的に特徴量を抽出することが可能であり、本発明において採用する際の有望な候補の1つとなり得る。
また、本発明において、Feedforward Neural Network(FFNN)法に代わる学習手法としては、Recurrent Neural Network(RNN)法、Convolutional Neural Network(CNN)法、Long Short-Term Memory(LSTM)法、Support Vector Machine(SVM)法、Random Forest法、Principal Component Analysis( PCA )法、K-Means法を挙げることができる。
なお、Principal Component Analysis( PCA )法、K-Means法については、教師なし学習に分類される手法であるが、本発明においても利用し得る可能性がある。
また、本発明において、事前学習手法における代替手法としては、Deep Belief Network(DBN)法、Restricted Boltzmann Machine(RBM)法を挙げることができる。
1・・・建造物損傷状況推定システム
50・・・振動センサー
100・・・データ処理装置
110・・・記憶部
200・・・報知装置

Claims (12)

  1. 建造物に設置される物理センサーと、
    前記物理センサーによって取得される応答データが入力されると共に、各種データ処理が実行され、各種データを記憶する記憶部を有するデータ処理装置と、を有する建造物損傷状況推定システムであって、
    前記データ処理装置が、
    前記物理センサーによって、地震に基づく実際の実応答を取得する実応答取得工程と、
    応答を入力とし損傷パターンを出力とする機械学習により得られた学習済みモデルにより、実応答を入力として、建造物の損傷状況を推定する推定工程と、
    前記建造物の予め選定された損傷パターンを考慮したシミュレーションモデルに模擬的振動を入力したときにおける前記物理センサー設置箇所における模擬応答をシミュレーションするシミュレーション工程と、
    選定された損傷パターンでの模擬応答を損傷パターンと紐付けて前記記憶部に記憶する記憶工程と、
    前記シミュレーション工程と前記記憶工程とを繰り返し、前記記憶部における記憶データ数を増やすことで、学習データベースを作成する学習データベース作成工程と、を実行し、
    前記学習データベースが
    予め選定された一つまたは複数の損傷候補箇所から複数の損傷パターンを想定し、損傷パターンのそれぞれに対応した模擬応答をシミュレーションすることにより、各損傷パターンでの模擬応答を損傷パターンと紐付けて記憶することを特徴とする建造物損傷状況推定システム。
  2. 前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行う多クラス分類によるものであり、
    前記データ処理装置が、
    前記多クラス分類におけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の建造物損傷状況推定システム。
  3. 前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行うニューラルネットワークモデルによるものであり、
    前記データ処理装置が、
    前記ニューラルネットワークモデルにおけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の建造物損傷状況推定システム。
  4. 前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行う特徴量抽出と分類器とからなるモデルによるものであり、
    前記データ処理装置が、
    当該モデルにおけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の建造物損傷状況推定システム。
  5. 前記推定工程の前段に、入力された実応答が学習工程で学習済みであるか否かを判定する判定工程をさらに有し、
    前記データ処理装置が、
    前記判定工程による判定結果が真であると、前記推定工程を実行することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の建造物損傷状況推定システム。
  6. 前記データ処理装置が、
    前記判定工程による判定結果が偽であると、入力された実応答に起因して発生する損傷パターンをシミュレーションする実シミュレーション工程を実行することを特徴とする請求項5に記載の建造物損傷状況推定システム。
  7. 建造物に設置された物理センサーによって、地震に基づく実際の実応答を取得する実応答取得工程と、
    応答を入力とし損傷パターンを出力とする機械学習により得られた学習済みモデルにより、実応答を入力として、建造物の損傷状況を推定する推定工程と、
    前記建造物の予め選定された損傷パターンを考慮したシミュレーションモデルに模擬的振動を入力したときにおける物理センサー設置箇所における模擬応答をシミュレーションするシミュレーション工程と、
    選定された損傷パターンでの模擬応答を損傷パターンと紐付けて記憶する記憶工程と、
    前記シミュレーション工程と前記記憶工程とを繰り返し、記憶データ数を増やすことで、学習データベースを作成する学習データベース作成工程と、を有し、
    前記学習データベースが
    予め選定された一つまたは複数の損傷候補箇所から複数の損傷パターンを想定し、損傷パターンのそれぞれに対応した模擬応答をシミュレーションすることにより、各損傷パターンでの模擬応答を損傷パターンと紐付けて記憶することを特徴とする建造物損傷状況推定方法。
  8. 前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行う多クラス分類によるものであり、
    前記多クラス分類におけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする請求項7に記載の建造物損傷状況推定方法。
  9. 前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行うニューラルネットワークモデルによるものであり、
    前記ニューラルネットワークモデルにおけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする請求項7に記載の建造物損傷状況推定方法。
  10. 前記機械学習は、前記物理センサー設置箇所における模擬応答に応じた損傷パターンの推定を行う特徴量抽出と分類器とからなるモデルによるものであり、
    当該モデルにおけるパラメーターを、前記学習データベースに基づいて算定する学習工程を実行することを特徴とする請求項7に記載の建造物損傷状況推定方法。
  11. 前記推定工程の前段に、入力された実応答が学習工程で学習済みであるか否かを判定する判定工程をさらに有し、
    前記判定工程による判定結果が真であると、前記推定工程が実行されることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の建造物損傷状況推定方法。
  12. 前記判定工程による判定結果が偽であると、入力された実応答に起因して発生する損傷パターンをシミュレーションする実シミュレーション工程を有することを特徴とする請求項11に記載の建造物損傷状況推定方法。
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