以下図面を参照して、蓄電装置を有するモータ駆動システムについて説明する。各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施をするための一つの例であり、図示された形態に限定されるものではない。また、「ドライブ用サーボモータの出力」には「ドライブ用サーボモータの消費電力」及び「ドライブ用サーボモータの回生電力」が含まれ、「バッファ用サーボモータの出力」には「バッファ用サーボモータの消費電力」及び「バッファ用サーボモータの回生電力」が含まれるものとする。また、それぞれ「消費電力」を正、「回生電力」を負とする。また、ドライブ用サーボモータ及びバッファ用サーボモータの回転角速度については単に「速度」と称する。また、「電力の値」は、「電流が単位時間あたりにする仕事」すなわち「仕事率」を意味し、単位は「W(ワット)」である。「エネルギーの値」とは、「電流がする仕事」すなわち「電力量」を意味し、単位は「J(ジュール)」である。したがって、「エネルギーの値[J]=電力の値[W]×時間[s]」の関係が成り立つ。
図1は、本開示の実施形態によるモータ駆動システムのブロック図である。ここでは、一例として、モータ駆動システム1により2個のドライブ用サーボモータ3を制御する場合について説明する。ただし、ドライブ用サーボモータ3の個数は本実施形態を特に限定するものではなく1個または3個以上であってもよい。また、交流電源2及びドライブ用サーボモータ3の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相交流であっても単相交流であってもよい。また、ドライブ用サーボモータ3の種類についても本実施形態を特に限定するものではなく、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。ここで、ドライブ用サーボモータ3が設けられる機械には、工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、各種電化製品、電車、自動車、航空機などが含まれる。また、交流電源2の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源、単相交流100V電源などがある。
まず、モータ駆動システム1の各回路構成要素について説明する。
図1に示すように、一実施形態によるモータ駆動システム1は、電源部11と、ドライブ用サーボアンプ12と、蓄電装置13と、保有エネルギー計算部14と、制限制御部15とを備える。また、モータ駆動システム1は、ドライブ用サーボモータ制御装置10と、消費電力計算部16と、蓄電装置制御部17とを備える。また、図示された実施形態では、一例として、保有エネルギー計算部14、制限制御部15、消費電力計算部16、蓄電装置制御部17、及びドライブ用サーボモータ制御装置10は、工作機械の数値制御装置1000に設けられている。なお、数値制御装置1000以外の演算処理装置内に、保有エネルギー計算部14、制限制御部15、消費電力計算部16、蓄電装置制御部17、及びドライブ用サーボモータ制御装置10を設けてもよい。
電源部11は、直流電力を直流リンク4へ供給する。図示された実施形態では、電源部11は、例えば交流電源2から供給された交流電力を直流電力に変換して直流リンク4へ出力する順変換器110で構成される。順変換器110は、交流電源2から三相交流が供給される場合は三相ブリッジ回路で構成され、交流電源2から単相交流が供給される場合は単相ブリッジ回路で構成される。順変換器110の例としては、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、及びPWMスイッチング制御方式の整流回路などがある。例えば、順変換器110がダイオード整流回路である場合は、交流電源2から供給された交流電流を整流し、直流リンク4に直流電流を出力する。また例えば、順変換器110がPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなり、例えば数値制御装置1000から受信した駆動指令に応じて各スイッチング素子がオンオフ制御されて交直双方向に電力変換を行う。スイッチング素子の例としては、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどがある。ただし、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
また、電源部11内の順変換器110については、交流電力から直流電力へ電力変換して直流リンク4へ供給可能な最大電力として、「最大供給電力」が規定されている。最大供給電力は、順変換器110の変換容量に関する諸元データとして一般的に規定されるものであり、例えば順変換器110の規格表や取扱説明書などに記載されている。なお、電源部11内の順変換器110が、PWMスイッチング制御方式の整流回路などのような交直双方向に電力変換が可能な装置で構成される場合は、直流リンク4における直流電力から交流電力へ電力変換して交流電源2側へ回生可能な最大電力として、「最大回生電力」が規定されている。最大回生電力は、交直双方向に電力変換が可能な順変換器110の変換容量に関する諸元データとして一般的に規定されるものであり、例えば順変換器110の規格表や取扱説明書などに記載されている。
なお、電源部11は、例えば1次電池、2次電池あるいは太陽電池で構成されてもよい。
図1に示すように電源部11が順変換器110で構成される場合は、一般的には直流リンク4に直流リンクコンデンサ(平滑コンデンサとも称する)が設けられるが、ここでは図示を省略している。直流リンクコンデンサは、直流リンク4において直流電力を蓄積する機能、及び電源部11内の順変換器110の直流出力の脈動分を抑える機能を有する。
電源部11には直流リンク4を介してドライブ用サーボアンプ12が接続される。ドライブ用サーボアンプ12は、直流リンク4における直流電力を用いてドライブ用サーボモータ3を駆動するためのものである。一般に、ドライブ用サーボモータ3には1巻線以上の巻線が設けられており、ドライブ用サーボモータ3を駆動するためには、当該ドライブ用サーボモータ3内の1巻線あたり1つのドライブ用サーボアンプ12が必要である。図1では、一例としてドライブ用サーボモータ3を1巻線タイプとしており、したがって、1つのドライブ用サーボモータ3に対して1つのドライブ用サーボアンプ12が接続される。
ドライブ用サーボアンプ12は、ドライブ用サーボモータ3を駆動するために、直流リンク4における直流電力を交流電力に変換し、ドライブ用サーボモータ3へ駆動電力として供給する。このため、ドライブ用サーボアンプ12は、例えば逆変換器120を有する。ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120は、ドライブ用サーボモータ制御装置10から受信した駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御されることにより、直流リンク4の直流電力とドライブ用サーボモータ3の駆動電力もしくは回生電力である交流電力との間で電力変換する。逆変換器120は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなり、例えば三角波比較方式のPWMスイッチング制御に基づいて各スイッチング素子がオンオフ制御される。逆変換器120は、ドライブ用サーボモータ3が三相モータである場合は三相ブリッジ回路で構成され、ドライブ用サーボモータ3が単相モータである場合は単相ブリッジ回路で構成される。スイッチング素子の例としては、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120は、後述するドライブ用サーボモータ制御装置10から受信した駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御されることにより、直流リンク4の直流電力とドライブ用サーボモータ3の駆動電力または回生電力である交流電力との間で電力変換する。より詳細には、逆変換器120は、ドライブ用サーボモータ制御装置10から受信した駆動指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、直流リンク4を介して電源部11から供給される直流電力を、ドライブ用サーボモータ3を駆動するための所望の電圧及び所望の周波数を有する交流電力に変換する(逆変換動作)。これにより、ドライブ用サーボモータ3は、例えば電圧可変及び周波数可変の交流電力に基づいて動作する。また、ドライブ用サーボモータ3の減速時には回生電力が発生することがあるが、ドライブ用サーボモータ制御装置10から受信した駆動指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、ドライブ用サーボモータ3で発生した交流の回生電力を直流電力へ変換して直流リンク4へ戻す(順変換動作)。
ドライブ用サーボモータ制御装置10は、ドライブ用サーボアンプ12に接続されたドライブ用サーボモータ3を所定の動作パターンにて動作(すなわち回転)するよう制御する。ドライブ用サーボモータ3が設けられた機械の動作内容に応じて、加速、減速、一定速及び停止が適宜組み合わされることでドライブ用サーボモータ3の動作パターンが構成される。ドライブ用サーボモータ3の動作パターンは、ドライブ用サーボモータ3に対する動作プログラムによって規定される。例えばドライブ用サーボモータ3が工作機械に設けられる場合、工作機械のための加工プログラムのうちの1つとして、ドライブ用サーボモータ3に対する動作プログラムが規定される。
なお、ドライブ用サーボモータ3は、ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120から供給される例えば電圧可変及び周波数可変の交流電力に基づいて、速度、トルクまたは回転子の位置が制御されるので、結局のところ、ドライブ用サーボモータ制御装置10によるドライブ用サーボモータ3の制御は、ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120の電力変換動作を制御することで実現される。つまり、ドライブ用サーボモータ制御装置10は、予め規定された動作プログラムに従い、ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120の電力変換を制御することで、ドライブ用サーボモータ3が所定の動作パターンに従って動作するよう制御する。より具体的には次の通りである。ドライブ用サーボモータ制御装置10は、速度検出器(図示せず)によって検出されたドライブ用サーボモータ3の速度(速度フィードバック)、ドライブ用サーボモータ3の巻線に流れる電流(電流フィードバック)、所定のトルク指令、及びドライブ用サーボモータ3の動作プログラムなどに基づいて、ドライブ用サーボモータ3の速度、トルク、または回転子の位置を制御するための駆動指令を生成する。ドライブ用サーボモータ制御装置10によって作成された駆動指令に基づいて、ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120による電力変換動作が制御される。なお、ここで定義したドライブ用サーボモータ制御装置10の構成はあくまでも一例であって、例えば、位置指令作成部、トルク指令作成部、及びスイッチング指令作成部などの用語を含めてドライブ用サーボモータ制御装置10の構成を規定してもよい。
電源部11内の順変換器110の最大供給電力を超えた出力でドライブ用サーボモータ3を駆動することできるようにするために、モータ駆動システム1には、電源部11を補助する蓄電装置13が設けられる。
蓄電装置13は、直流リンク4から直流電力を蓄積し(蓄電動作)、直流リンク4へ直流電力を供給する(給電動作)。蓄電装置13の蓄電動作及び給電動作は、蓄電装置制御部17により制御される。蓄電装置13が保有すべきエネルギーの基準値(目標値)として、「ベース保有エネルギー」が規定される。蓄電装置制御部17の制御により、蓄電装置13は、その保有エネルギーがその目標値であるベース保有エネルギーになるように蓄電される。例えばドライブ用サーボモータ3が動作しておらず、蓄電装置13による電力の出し入れを特段必要としない間は、蓄電装置13の保有エネルギーはベース保有エネルギーに維持される。蓄電装置13の給電動作が行われると、蓄電装置13の保有エネルギーは低下してベース保有エネルギーよりも小さい値になるが、蓄電装置13の蓄電動作が行われると、ベース保有エネルギーを目標値に蓄電装置13の保有エネルギーが上昇し、回復する。なお、モータ駆動システム1によるドライブ用サーボモータ3の駆動状況によっては、蓄電装置13の保有エネルギーがベース保有エネルギーまで回復する前に、蓄電装置13の給電動作が行われることがある。
蓄電装置13には、例えば図2に示すようなフライホイール型と図3に示すようなコンデンサ型とがある。
図2は、フライホイール型の蓄電装置を有する一実施形態によるモータ駆動システムのブロック図である。フライホイール型の蓄電装置13は、フライホイール132と、バッファ用サーボモータ131と、バッファ用サーボアンプ130とを備える。
フライホイール132は、回転エネルギーを蓄積し得るものであり、イナーシャとも称される。
バッファ用サーボモータ131は、フライホイール132を回転させるためのものであり、バッファ用サーボモータ131の回転軸にフライホイール132が接続される。バッファ用サーボモータ131を回転させることによってフライホイール132に回転エネルギーを蓄積することができる。バッファ用サーボモータ131の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相交流であっても単相交流であってもよい。バッファ用サーボモータ131には速度検出器(図示せず)が設けられており、速度検出器によって検出されたバッファ用サーボモータ131の(回転子の)速度は、蓄電装置制御部17による蓄電装置13の制御に用いられる。
バッファ用サーボアンプ130は、蓄電装置制御部17から受信した蓄電指令及び給電指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御されることにより、直流リンク4における直流電力とバッファ用サーボモータ131の駆動電力または回生電力である交流電力との間で電力変換を行う。このため、バッファ用サーボアンプ130は、例えば逆変換器330を有する。バッファ用サーボアンプ130内の逆変換器330は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。逆変換器330は、バッファ用サーボモータ131が三相モータである場合は三相ブリッジ回路で構成され、バッファ用サーボモータ131が単相モータである場合は単相ブリッジ回路で構成される。スイッチング素子の例としては、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。例えば、受信した駆動指令を三角波搬送波(キャリア)と比較することで得られるPWMスイッチング信号に基づいて、バッファ用サーボアンプ130内の逆変換器330に設けられた各スイッチング素子がオンオフ制御される。
蓄電装置制御部17によりバッファ用サーボアンプ130内の逆変換器330の電力変換が制御されることで、フライホイール132が接続されたバッファ用サーボモータ131が加速もしくは減速しながら回転しまたは一定速度で回転し、その結果、蓄電装置13が蓄電または給電すべき直流電力量(蓄電装置13が直流リンク4に対して出し入れする直流電力量)が調整される。より詳細には次の通りである。
蓄電装置13が蓄電動作を行う場合、バッファ用サーボアンプ130内の逆変換器330は、蓄電装置制御部17から受信した蓄電指令に基づき、直流リンク4における直流電力を交流電力へ変換する逆変換動作を行う。これにより、直流リンク4からの電気エネルギーがバッファ用サーボモータ131側へ取り込まれ、この電気エネルギーにより、フライホイール132が接続されたバッファ用サーボモータ131が回転する。このようにフライホイール型の蓄電装置13では、直流リンク4から流入した電気エネルギーがフライホイール132の回転エネルギーに変換されて蓄積される。
また、蓄電装置13が給電動作を行う場合、バッファ用サーボアンプ130内の逆変換器330は、蓄電装置制御部17から受信した給電指令に基づき、フライホイール132が接続されたバッファ用サーボモータ131を減速させて交流の回生電力を発生させ、この交流電力を直流電力へ変換する順変換動作を行う。これにより、フライホイール132に蓄積された回転エネルギーは電気エネルギーに変換されて直流リンク4へ供給される。
図3は、コンデンサ型の蓄電装置を有する一実施形態によるモータ駆動システムのブロック図である。コンデンサ型の蓄電装置13は、例えば、コンデンサ134と、直流リンク4における直流電力とコンデンサ134に蓄積される直流電力との間で電力変換を行うDCDCコンバータ133とを備える。
DCDCコンバータ133は、例えば昇降圧直流チョッパ回路などがある。蓄電装置制御部17によりDCDCコンバータ133の昇圧動作及び降圧動作が制御されることで、蓄電装置13が蓄電または給電すべき直流電力量(蓄電装置13が直流リンク4に対して出し入れする直流電力量)が調整される。より詳細には次の通りである。
蓄電装置13が蓄電動作を行う場合、DCDCコンバータ133は、蓄電装置制御部17から受信した蓄電指令に基づき、蓄電装置制御部17により直流リンク4側の直流電圧に対してコンデンサ134側の直流電圧が低くなるよう制御される。これにより、直流リンク4からの電気エネルギーがコンデンサ134へ流れ込み、蓄電装置13の蓄電が行われる。
また、蓄電装置13が給電動作を行う場合、DCDCコンバータ133は、蓄電装置制御部17から受信した給電指令に基づき、蓄電装置制御部17により直流リンク4側の直流電圧に対してコンデンサ134側の直流電圧が高くなるよう制御される。これにより、コンデンサ134からの電気エネルギーが直流リンク4へ流れ込み、蓄電装置13の給電が行われる。
モータ駆動システム1では、ドライブ用サーボモータ3の例えば加速時に、電源部11から供給されるエネルギーに加えて蓄電装置13に蓄積されたエネルギーがドライブ用サーボモータ3に供給され、ドライブ用サーボモータ3の加速のための動力として利用される。図4は、本開示の実施形態によるモータ駆動システム内の蓄電装置から直流リンクへ供給される直流電力と電源部から直流リンクへ供給される直流電力の関係を例示する図である。電源部11から直流リンク4へ供給される電力は、ドライブ用サーボモータ3の駆動電力(すなわちドライブ用サーボモータ3の出力が対応)として消費されるほかに、ドライブ用サーボモータ3における巻線損失と電源部11における損失とドライブ用サーボアンプ12における損失として消費される。ここで、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和を「総消費電力」と称し、これを図4では実線で示す。一点鎖線は、電源部11の最大供給電力を示す。図4に示すように、総消費電力のうちの電源部11の最大供給電力を超える分(図中、斜線で示す領域)については、蓄電装置13から直流リンク4へ供給される直流電力によって補われる。
モータ駆動システム1では、ドライブ用サーボモータ3の例えば減速時に、ドライブ用サーボモータ3から回生されたエネルギーが蓄電装置13に蓄積される。蓄電装置13に蓄積されたエネルギーは、電源部11が供給する電力と併せてドライブ用サーボモータ3の駆動に利用されるので、電源部11の最大供給電力を超えた出力でドライブ用サーボモータ3を駆動することでき、電力ピークを低減することができる。電力ピークの低減により、電源容量やモータ駆動システム1の運用コストを抑えることができ、また、交流電源2側の停電やフリッカを回避することができる。
図1に説明を戻すと、保有エネルギー計算部14は、蓄電装置13の保有エネルギーの値を計算する。蓄電装置13の保有エネルギーとは、すなわち蓄電装置13に蓄積されているエネルギーである。
図2に示すフライホイール型の蓄電装置13の場合、蓄電装置13の保有エネルギーは、例えばバッファ用サーボモータ131の出力が対応する。速度検出器(図示せず)により検出されたバッファ用サーボモータ131の回転速度(角速度)をω[rad/s]、バッファ用サーボモータ131の慣性モーメント(イナーシャ)をI[kg・m2]としたとき、保有エネルギー計算部14は、例えば下記式1に基づいて、バッファ用サーボモータ131の出力である蓄電装置13の保有エネルギーの値[J]を計算する。
蓄電装置の保有エネルギー[J]=(1/2)×I×ω2 ・・・(1)
図3に示すコンデンサ型の蓄電装置13の場合、蓄電装置13の保有エネルギーの値は、例えばコンデンサ134に蓄積された直流電力量が対応する。コンデンサ134の容量をC[F]、コンデンサ134の電圧をV[V]としたとき、保有エネルギー計算部14は、例えば下記式2に基づいて、コンデンサ134に蓄積された直流電力量である蓄電装置13の保有エネルギーの値[J]を算出する。
蓄電装置の保有エネルギー[J]=(1/2)×C×V2 ・・・(2)
蓄電装置制御部17は、図2に示すフライホイール型の蓄電装置13の場合は蓄電装置13内のバッファ用サーボアンプ130内の逆変換器330の電力変換動作を制御し、図3に示すコンデンサ型の蓄電装置13の場合は、蓄電装置13内のDCDCコンバータ133の昇降圧動作を制御することで、蓄電装置13の蓄電及び給電を制御する。蓄電装置制御部17による蓄電装置13の蓄電及び給電の制御は、例えば、消費電力計算部16及び蓄電給電電力計算部23の計算結果を用いて行われる。
消費電力計算部16は、ドライブ用サーボモータ3の出力とドライブ用サーボモータ3における巻線損失と電源部11における損失とドライブ用サーボアンプ12における損失との和として得られる総消費電力を計算する。ここで、ドライブ用サーボモータ3の出力は、速度検出器(図示せず)により検出されたドライブ用サーボモータ3の回転速度とドライブ用サーボモータ3のトルクとの乗算により得られる。ドライブ用サーボモータ3が加速する際は、ドライブ用サーボモータ3は、ドライブ用インバータ12から供給された交流電力を消費するが、この電力消費時のドライブ用サーボモータ3の出力を「正」とする。したがって、ドライブ用サーボモータ3が減速することにより電力が回生されることきは、ドライブ用サーボモータ3の出力は「負」となる。通常は、ドライブ用サーボモータ3における巻線損失、電源部11における損失及びドライブ用サーボアンプ12における損失は、ドライブ用サーボモータ3の出力の絶対値に比べて小さいので、ドライブ用サーボモータ3の出力の影響が総消費電力に対して支配的である。したがって、ドライブ用サーボモータ3の出力の正負(消費または回生)は、総消費電力の正負にほぼ対応する。なお、図1に例示するように、ドライブ用サーボアンプ12及びドライブ用サーボモータ3がそれぞれ複数存在する場合は、消費電力計算部16は、複数のドライブ用サーボモータ3の出力と複数のドライブ用サーボモータ3における巻線損失と電源部11における損失と複数のドライブ用サーボアンプ12における損失との総和とを、総消費電力として計算する。
なお、蓄電装置13としてのバッファ用サーボアンプ130及びDCDCコンバータ133にも損失が存在することから、消費電力計算部16は、ドライブ用サーボモータ3の出力とドライブ用サーボモータ3における巻線損失と電源部11における損失とドライブ用サーボアンプ12における損失との和に、さらにバッファ用サーボアンプ130及びDCDCコンバータ133における損失を加算したものを、総消費電力として算出してもよい。また、バッファ用サーボアンプ130及びDCDCコンバータ133がそれぞれ複数存在する場合は、ドライブ用サーボモータ3の出力とドライブ用サーボモータ3における巻線損失と電源部11における損失とドライブ用サーボアンプ12における損失との和に、さらに複数のバッファ用サーボアンプ130及び複数のDCDCコンバータ133における損失の総和を加算したものを、総消費電力として算出してもよい。
蓄電装置制御部17内の蓄電給電電力計算部23は、消費電力計算部16によって計算された総消費電力と電源部11の最大供給電力とに基づいて、蓄電装置13が直流リンク4から蓄電または直流リンク4へ供給する直流電力を計算する。より詳細には、蓄電給電電力計算部23は、電源部11の最大供給電力と消費電力計算部16によって計算された総消費電力との差(すなわち最大供給電力から総消費電力を減算した値)を計算する。電源部11の最大供給電力と消費電力計算部16によって計算された総消費電力との差は、蓄電装置13が直流リンク4から蓄電または直流リンク4へ供給する直流電力に対応する。例えば、電源部11の最大供給電力と消費電力計算部16によって計算された総消費電力との差が負のときは、総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えており、電源部11が交流電源2側から直流リンク4へ取り込む電力では総消費電力の全てを賄いきれないので、その不足する電力が、蓄電装置13から直流リンク4へ供給される直流電力によって補われるべきである。蓄電給電電力計算部23は、不足する電力に係る情報を、「給電電力」として設定する。また例えば、特に電源部11内の順変換器110が交直双方向に電力変換可能なPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、電源部11内の順変換器110の逆変換動作についての最大供給電力(すなわち直流電力を交流電力に変換するときの最大電力)の絶対値と消費電力計算部16によって計算された総消費電力の絶対値との差が負のときは、総消費電力が電源部11内の順変換器110の逆変換時の最大回生電力を超えているので、その超過する電力が、蓄電装置13に蓄電されるべきである。蓄電給電電力計算部23は、超過する電力に係る情報を、「蓄電電力」として設定する。
蓄電装置制御部17は、蓄電給電電力計算部23により給電電力量が設定された場合、蓄電装置13に対し、当該給電電力量に対応する直流電力が直流リンク4へ給電されるよう制御するための給電指令を出力する。また、蓄電装置制御部17は、蓄電給電電力計算部23により蓄電電力量が設定された場合、蓄電装置13に対し、当該蓄電電力量に対応する直流電力が直流リンク4から蓄電されるよう制御するための蓄電指令を出力する。蓄電装置13は、蓄電装置制御部17から給電指令を受信した場合は蓄電動作を行い、蓄電装置制御部17から蓄電指令を受信した場合は蓄電動作を行う。
なお、蓄電装置制御部17による蓄電装置13の蓄電及び給電の制御は、上述した消費電力計算部16及び蓄電給電電力計算部23の計算結果を用いる以外にも、例えば、消費電力計算部16により計算された総消費電力の値と予め規定された供給用閾値及び蓄電用閾値との比較結果を用いて行ってもよい。この場合、蓄電装置制御部17は、消費電力計算部16により計算された総消費電力の値と予め規定された供給用閾値及び蓄電用閾値とを比較し、比較の結果、総消費電力の値が供給用閾値を上回ったと判定した場合は蓄電装置13を制御して直流リンク4へ直流電力を供給させる。また、蓄電装置制御部17は、消費電力計算部16により計算された総消費電力の値と供給用閾値及び蓄電用閾値との比較の結果、総消費電力の値が蓄電用閾値を下回ったと判定した場合は蓄電装置13を制御して蓄電装置13の保有エネルギーがベース保有エネルギーになるよう直流リンク4からの直流電力を蓄電させる。ここで、供給用閾値は、総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えたことにより蓄電装置13から直流リンク4へ直流電力が供給されるべき状況にあるか否かを判断するための基準値として設定される。また、蓄電用閾値は、特に電源部11内の順変換器110が交直双方向に電力変換可能なPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合において、総消費電力が電源部11内の順変換器110の逆変換時の最大供給電力を超えたことにより直流リンク4からの直流電力を蓄電装置13へ蓄電すべき状況にあるか否かを判断するための基準値として設定される。
制限制御部15は、保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値と蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力の値とに応じて、ドライブ用サーボモータ3の出力が、予め規定されていた出力よりも小さい値に制限されるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御する。より詳しくは、制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値に制限されるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御する。この変形例として、制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値に制限しながら、ドライブ用サーボモータ3を停止させるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御してもよい。
また、図1示すように、ドライブ用サーボアンプ12及びドライブ用サーボモータ3がそれぞれ複数存在する場合は、制限制御部15は、例えば、全てのドライブ用サーボアンプ12を制御することにより全てのドライブ用サーボモータ3の出力を予め規定されていた出力よりも小さい値に制限する。この変形例として、制限制御部15は、例えば、複数のドライブ用サーボアンプ12のうちの少なくとも1つのドライブ用サーボアンプ12を制御することにより、当該制御されるドライブ用サーボアンプ12に対応するドライブ用サーボモータ3の出力を、予め規定されていた出力よりも小さい値に制限してもよい。
このように制限制御部15は、ドライブ用サーボモータ3の出力を制限するので、ドライブ用サーボモータ制御装置10内に設けられるのが好ましい。
制限制御部15は、予測時間計算部21と判定部22とを有する。
制限制御部15内の予測時間計算部21は、保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値を、蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力の絶対値で除算し、これにより得られる値を、「エネルギー不足予測時間」として出力する。ドライブ用サーボモータ3の動作状態に応じて消費電力計算部16が計算する総消費電力は時々刻々と変化するので、蓄電装置13が直流リンク4へ直流電力を供給する期間中における蓄電装置13の保有エネルギー及び蓄電装置13から直流リンク4へ供給される直流電力(給電電力)も変化する。蓄電装置13から直流リンク4へ直流電力の供給が続くと、蓄電装置13の保有エネルギーがゼロになる(枯渇する)可能性がある。「ある時点」において蓄電装置13から直流リンク4への直流電力の供給がこのまま続いたと仮定した場合、蓄電装置13の保有エネルギーがゼロになると予測される時間(すなわち「ある時点」から蓄電装置13の保有エネルギーがゼロになるまでに要する時間)は、「ある時点」における蓄電装置13の保有エネルギーの値を、当該時点における蓄電装置13の供給電力の絶対値で除算することで、求めることができる。本開示の実施形態では、予測時間計算部21は、これをエネルギー不足予測時間として算出する。蓄電装置13の給電動作中、保有エネルギー計算部14による蓄電装置13の保有エネルギーの値の算出処理、及び予測時間計算部21によるエネルギー不足予測時間の算出処理は、繰り返し実行される。
なお、予測時間計算部21による計算処理の際に直流リンク4へ供給する直流電力の「絶対値」をとる理由は、蓄電装置13の給電動作中は、給電電力は「負」となるからである。したがって、逆に蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力を「正」と規定した場合は、蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力の絶対値をとる必要はなく、単に保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値を、蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力の値で除算すれば、「エネルギー不足予測時間」を得ることができる。ただし、蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力を「正」と規定した場合において、保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値を、蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力の「絶対値」で除算したとしても、同様に「エネルギー不足予測時間」を得ることができる。
図2に示すフライホイール型の蓄電装置13の場合、保有エネルギー計算部14により保有エネルギーは式1に従って計算されるので、予測時間計算部21は、保有エネルギー[J]を当該保有エネルギーの計算時点における蓄電装置13による給電電力の絶対値[W]で除算した値をエネルギー不足予測時間[s]として出力する(下記式3)。
エネルギー不足予測時間[s]=(1/2)×I×ω2 [J]÷フライホイール型蓄電装置による給電電力の絶対値[W]・・・(3)
図3に示すコンデンサ型の蓄電装置13の場合、保有エネルギー計算部14により保有エネルギーは式2に従って計算されるので、予測時間計算部21は、保有エネルギー[J]を当該保有エネルギーの計算時点における蓄電装置13による給電電力の絶対値[W]で除算した値をエネルギー不足予測時間[s]として出力する(下記式4)。
エネルギー不足予測時間[s]=(1/2)×C×V2 [J]÷コンデンサ型蓄電装置による給電電力の絶対値[W]・・・(4)
なお、複数の蓄電装置13が存在する場合は、予測時間計算部21は、複数の蓄電装置13について保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値の総和を、蓄電装置13のそれぞれが直流リンク4へ供給する直流電力の絶対値の総和で除算し、これにより得られる値を、「エネルギー不足予測時間」として出力する。
制限制御部15内の判定部22は、予測時間計算部21により計算されたエネルギー不足予測時間に基づいて、ドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきか否かを判定する。上述したように、蓄電装置13の給電動作中は、保有エネルギー計算部14による蓄電装置13の保有エネルギーの値の算出処理、及び予測時間計算部21によるエネルギー不足予測時間の算出処理は、繰り返し実行され、判定部22による判定処理は、予測時間計算部21によりエネルギー不足予測時間が算出されるごとに実行される。すなわち、蓄電装置13の給電動作中は、保有エネルギー計算部14による蓄電装置13の保有エネルギーの値の算出処理、予測時間計算部21によるエネルギー不足予測時間の算出処理、及び判定部22による判定処理は、一連の処理として実行される。
制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を、予め規定されていた出力よりも小さい値に制限する。より詳しくは、制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を制限する。このように本実施形態によれば、電源設備の電力ピークを低減するために設けられた蓄電装置を有するモータ駆動システムにおいて、蓄電装置に蓄積されるエネルギーを適正量に保ちながらドライブ用サーボモータを効率的に駆動しかつ安全を確保することができる。なお、上記「予め規定されていた出力」が、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力よりも大きい場合は、制限制御部15による制御処理は行う必要はない。制限制御部15によるドライブ用サーボモータ3の出力の制限例については後述する。
続いて、判定部22によるドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきか否かの判定処理の例について列記する。
まず、判定部22による判定処理の第1の形態について説明する。第1の形態では、判定部22は、蓄電装置13が直流リンク4へ直流電力の供給を開始してから予測時間計算部21により計算されたエネルギー不足予測時間が経過した場合に、ドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定する。第1の形態によれば、蓄電装置13による給電開始時点からエネルギー不足予測時間だけ経過した時点を、蓄電装置13から直流リンク4へ供給される直流電力がゼロになった時点とみなし、制限制御部15は、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を、予め規定されていた出力よりも小さい値に制限する。
図5は、本開示の実施形態によるモータ駆動システムにおける判定部による判定処理の第1の形態を説明するフローチャートである。
ドライブ用モータ制御装置10は、ドライブ用サーボモータ3を所定の動作パターンにて動作するよう制御する(S101)。この間、蓄電装置制御部17は、蓄電給電電力計算部23の計算結果に応じて蓄電装置13の蓄電動作及び給電動作の制御を行う。蓄電装置制御部17による蓄電装置13の蓄電動作及び給電動作の制御については既に説明した通りである。
ステップS102において、判定部22は、蓄電装置13が給電動作を開始したか否かを判定する。給電動作を開始したか否かは、例えば、蓄電装置制御部17から出力される蓄電指令及び給電指令に基づき判定すればよく、あるいは、蓄電装置制御部17内の蓄電給電電力計算部23による計算結果に基づいて判定してもよい。ステップS102において蓄電装置13が給電動作を開始したと判定された場合は、ステップS103へ進む。ステップS102において蓄電装置13が給電動作を開始したと判定されなかった場合は、ステップS101へ戻る。
ステップS103において、保有エネルギー計算部14は、蓄電装置13の保有エネルギーの値を計算する。
次いでステップS104において、予測時間計算部21は、保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値を、蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力の絶対値で除算し、これにより得られた値をエネルギー不足予測時間として出力する。
ステップS105において、判定部22は、予測時間計算部21により計算されたエネルギー不足予測時間がゼロとなったか否かを判定する。ステップS105においてエネルギー不足予測時間がゼロとなったと判定された場合はステップS106へ進み、エネルギー不足予測時間がゼロとなったと判定されなかった場合はステップS109へ進む。
ステップS106において、制限制御部15は、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を制限する。
次いでステップS107において、判定部22は、蓄電装置13が給電動作を終了したか否かを判定する。給電動作を終了したか否かは、例えば、蓄電装置制御部17から出力される蓄電指令及び給電指令に基づき判定すればよく、あるいは、蓄電装置制御部17内の蓄電給電電力計算部23による計算結果に基づいて判定してもよい。ステップS107において給電動作が終了したと判定された場合は、ステップS108へ進み、給電動作が終了したと判定されなかった場合(すなわち給電動作が終了していない場合)は、ステップS106へ戻る。
ステップS108では、制限制御部15は、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力の制限を解除する。その後、ステップS101へ戻る。
ステップS105においてエネルギー不足予測時間がゼロとなったと判定されなかった場合は、ステップS109において、制限制御部15内の判定部22は、蓄電装置13が給電動作を終了したか否かを判定する。ステップS109において給電動作が終了したと判定された場合は、ステップS101へ戻る。ステップ101~S105を経てステップS101へ戻る処理が行われた場合は、蓄電装置13による給電動作開始後、蓄電装置13の保有エネルギーがゼロになることなく(枯渇することなく)給電動作が終了したことを意味する。一方、ステップS109において給電動作が終了したと判定されなかった場合(すなわち給電動作が終了していない場合)は、ステップS103へ戻る。ステップ101~S105及びS109を経て再びステップS103へ戻る処理が行われた場合は、給電動作中である蓄電装置13の保有エネルギーがまだゼロになっていない(枯渇していない)ことを意味する。
図6は、本開示の実施形態によるモータ駆動システムにおいて、図5に示す第1の形態による判定部による判定処理を実行した場合における、総消費電力と電源部の出力と蓄電装置の保有エネルギーとの関係を例示する図である。図6において、上段の波形図は消費電力計算部16によって計算された総消費電力[W]を例示しており、一点鎖線は電源部11の最大供給電力及び最大回生電力である。また、図6において、中段の波形図は電源部11の出力(電源部11から直流リンク4へ供給される電力)[W]を例示しており、一点鎖線は電源部11の最大供給電力及び最大回生電力である。また、図6において、下段の波形図は蓄電装置13の保有エネルギー[J]を例示しており、一点鎖線は、蓄電装置13の「ベース保有エネルギー」である。ここでは、一例として、図6の上段の波形図に示すようにモータ駆動システム1によりドライブ用サーボモータ3を加速及び減速させて総消費電力が変化した例を示す。ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120は、ドライブ用サーボモータ3の動作状態(力行または回生)に応じて、直流リンク4の直流電力を交流に変換してドライブ用サーボモータ3側へ出力する逆変換動作、またはドライブ用サーボモータ3で改正された交流電力を直流電力に変換して直流リンク4へ戻す順変換動作を行うが、以下では逆変換器120についての逆変換動作及び順変換動作の説明については省略している。例えば、「直流リンク4の直流電力がドライブ用サーボモータ3で消費される」とは、ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120により、直流リンク4の直流電力が交流電力に変換されてドライブ用サーボモータ3側に出力され、ドライブ用サーボモータ3で消費されることを意味する。また、「ドライブ用サーボモータ3で回生された交流電力が直流リンク4へ戻される」とは、ドライブ用サーボアンプ12内の逆変換器120により、ドライブ用サーボモータ3で回生された交流電力が直流電力に変換されて直流リンク4側に出力されることを意味する。
図6の例では、ドライブ用サーボモータ3が回生状態にある時刻0から時刻t3までの間は、消費電力計算部16により計算される総消費電力は負になり、電源部11により直流リンク4の直流電力は交流電源2側へ回生されている。ただし、時刻0から時刻t2までの間は、総消費電力が電源部11の最大回生電力を超えているので、当該最大回生電力を超える直流電力については、蓄電装置制御部17の蓄電制御により蓄電装置13に蓄電され、電源部11の回生電力はピークカットされる。したがって、時刻0から時刻t2までの間は、蓄電装置13の保有エネルギーは徐々に増加することになる。ドライブ用サーボモータ3が回生状態から力行状態に切り換わると、総消費電力は正に転じる。時刻t2以降、総消費電力は電源部11の最大回生電力の範囲内に収まるが、蓄電装置13の保有エネルギーはベース保有エネルギーを大きく超えているので、蓄電装置13の保有エネルギーがベース保有エネルギーまで下がる(時刻t3)まで、蓄電装置13からも直流リンク4へ直流電力が供給され続ける。この蓄電装置13から直流リンク4へ供給された直流電力は、ドライブ用サーボモータ3の力行に利用される。したがって、時刻t2から時刻t3までの間は、蓄電装置13の保有エネルギーは徐々に減少することになる。時刻t3にて蓄電装置13の保有エネルギーがベース保有エネルギーまで戻るので、時刻t3からしばらくの間は蓄電装置13からは直流リンク4へは直流電力は給電されない。時刻t4で総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えると、蓄電装置制御部17の給電制御により、蓄電装置13は、当該最大供給電力を超える分だけの直流電力を直流リンク4へ供給する。すなわち、時刻t4からしばらくの間は、総消費電力は、「電源部11から出力される最大供給電力」のみならず「蓄電装置13から供給される直流電力」からも提供されるので、電源部11の供給電力はピークカットされる。したがって、時刻t4からしばらくの間は、蓄電装置13の保有エネルギーは徐々に減少し、ベース保有エネルギーを下回った値となる。時刻t4の時点で蓄電装置13は給電動作を開始するので、図5を参照して説明したように、保有エネルギー計算部14は蓄電装置13の保有エネルギーの値を計算し(ステップS103)、予測時間計算部21は保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーに基づきエネルギー不足予測時間を計算し(ステップS104)、判定部22はエネルギー不足予測時間がゼロになったか否かを判定し(ステップS106)、判定部22は蓄電装置13が給電動作を終了したか否かを判定する(ステップS109)。蓄電装置13の給電動作中は、ステップS103~S105及びS109の処理が繰り返し実行される。判定部22が、「時刻t5の時点で予測時間計算部21により計算されたエネルギー不足予測時間」がゼロになったことを検知すると、制限制御部15は、時刻t5からしばらくの間、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を制限する。ドライブ用サーボモータ3のトルクや速度が低下することにより総消費電力が低下して時刻t6で総消費電力が電源部11の最大供給電力の範囲内に収まると、電源部11から直流リンク4へ給電される直流電力の一部により、蓄電装置13は蓄電される。この結果、蓄電装置13の保有エネルギーは徐々に増加する。蓄電装置13の保有エネルギーがベース保有エネルギーまで回復すると(時刻t7)、蓄電装置13は蓄電動作を終了する。
上述の判定部22による判定処理の第1の形態の変形例として、制限制御部15内の予測時間計算部21を省略し、判定部22は、保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値がゼロになった場合に、ドライブ用サーボモータの出力を制限すべきと判定するようにしてもよい。図7は、本開示の実施形態によるモータ駆動システムにおける判定部による判定処理の第1の形態の変形例を説明するフローチャートである。図7において、ステップS101~S103の処理は図5を参照して説明したとおりであるので説明は省略する。本変形例では、ステップS103に続くステップS110において、判定部22は、保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値がゼロになったか否かを判定する。ステップS110において保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値がゼロとなったと判定された場合はステップS106へ進み、保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値がゼロとなったと判定されなかった場合はステップS109へ進む。ステップS106~S109の処理は図5を参照して説明したとおりであるので説明は省略する。
続いて、判定部22による判定処理の第2の形態について説明する。第2の形態では、判定部22は、予測時間計算部21により計算されたエネルギー不足予測時間が予め規定された閾値を下回った場合に、ドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定する。ここで、閾値は、蓄電装置13の特性などから想定して所望の値に設定すればよい。設定される閾値の値が大きいほど、制限制御部15によるドライブ用サーボモータ3の出力制限が行われる頻度が高くなるので、蓄電装置13の保有エネルギーの減少を抑制させることができ、蓄電装置13の負担を軽減することができる。第2の形態によれば、蓄電装置13による給電開始時点からエネルギー不足予測時間経過するよりも前に、制限制御部15は、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を制限する。図8は、本開示の実施形態によるモータ駆動システムにおける判定部による判定処理の第2の形態を説明するフローチャートである。
ドライブ用モータ制御装置10は、ドライブ用サーボモータ3を所定の動作パターンにて動作するよう制御する(S201)。この間、蓄電装置制御部17は、蓄電給電電力計算部23の計算結果に応じて蓄電装置13の蓄電動作及び給電動作の制御を行う。
ステップS202において、判定部22は、蓄電装置13が給電動作を開始したか否かを判定する。給電動作を開始したか否かは、例えば、蓄電装置制御部17から出力される蓄電指令及び給電指令に基づき判定すればよく、あるいは、蓄電装置制御部17内の蓄電給電電力計算部23による計算結果に基づいて判定してもよい。ステップS102において蓄電装置13が給電動作を開始したと判定された場合は、ステップS203へ進む。ステップS202において蓄電装置13が給電動作を開始したと判定されなかった場合は、ステップS201へ戻る。
ステップS203において、保有エネルギー計算部14は、蓄電装置13の保有エネルギーの値を計算する。
次いでステップS204において、予測時間計算部21は、保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーの値を、蓄電装置13が直流リンク4へ供給する直流電力の絶対値で除算し、これにより得られた値をエネルギー不足予測時間として出力する。
ステップS205において、判定部22は、予測時間計算部21により計算されたエネルギー不足予測時間が予め規定された閾値を下回ったか否かを判定する。ステップS205においてエネルギー不足予測時間が閾値を下回ったと判定された場合はステップS206へ進み、エネルギー不足予測時間が閾値を下回ったと判定されなかった場合はステップS209へ進む。
ステップS206において、制限制御部15は、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を制限する。
次いでステップS207において、判定部22は、蓄電装置13が給電動作を終了したか否かを判定する。給電動作を終了したか否かは、例えば、蓄電装置制御部17から出力される蓄電指令及び給電指令に基づき判定すればよく、あるいは、蓄電装置制御部17内の蓄電給電電力計算部23による計算結果に基づいて判定してもよい。ステップS207において給電動作が終了したと判定された場合は、ステップS208へ進み、給電動作が終了したと判定されなかった場合(すなわち給電動作が終了していない場合)は、ステップS206へ戻る。
ステップS208では、制限制御部15は、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力の制限を解除する。その後、ステップS201へ戻る。
ステップS205においてエネルギー不足予測時間が閾値を下回ったと判定されなかった場合は、ステップS209において、制限制御部15内の判定部22は、蓄電装置13が給電動作を終了したか否かを判定する。ステップS209において給電動作が終了したと判定された場合は、ステップS201へ戻る。ステップ201~S205を経てステップS201へ戻る処理が行われた場合は、蓄電装置13による給電動作開始後、蓄電装置13の保有エネルギーがゼロになることなく(枯渇することなく)給電動作が終了したことを意味する。一方、ステップS209において給電動作が終了したと判定されなかった場合(すなわち給電動作が終了していない場合)は、ステップS203へ戻る。ステップ201~S205及びS209を経て再びステップS203へ戻る処理が行われた場合は、給電動作中である蓄電装置13の保有エネルギーがまだゼロになっていない(枯渇していない)ことを意味する。
図9は、本開示の実施形態によるモータ駆動システムにおいて、図8に示す第2の形態による判定部による判定処理を実行した場合における、総消費電力と電源部の出力と蓄電装置の保有エネルギーとの関係を例示する図である。図9において、上段の波形図は消費電力計算部16によって計算された総消費電力[W]を例示しており、一点鎖線は電源部11の最大供給電力及び最大回生電力である。また、図9において、中段の波形図は電源部11の出力(電源部11から直流リンク4へ供給される電力)[W]を例示しており、一点鎖線は電源部11の最大供給電力及び最大回生電力である。また、図9において、下段は蓄電装置13の保有エネルギー[J]を例示しており、一点鎖線は、蓄電装置13の「ベース保有エネルギー」である。ここでは、一例として、図9の上段の波形図に示すようにモータ駆動システム1によりドライブ用サーボモータ3を加速及び減速させて総消費電力が変化した例を示す。
図9の例では、ドライブ用サーボモータ3が回生状態にある時刻0から時刻t3までの間は、消費電力計算部16により計算される総消費電力は負になり、電源部11により直流リンク4の直流電力は交流電源2側へ回生されている。ただし、時刻0から時刻t2までの間は、総消費電力が電源部11の最大回生電力を超えているので、当該最大回生電力を超える直流電力については、蓄電装置制御部17の蓄電制御により蓄電装置13に蓄電され、電源部11の回生電力はピークカットされる。したがって、時刻0から時刻t2までの間は、蓄電装置13の保有エネルギーは徐々に増加することになる。ドライブ用サーボモータ3が回生状態から力行状態に切り換わると、総消費電力は正に転じる。時刻t2以降、総消費電力は電源部11の最大回生電力の範囲内に収まるが、蓄電装置13の保有エネルギーはベース保有エネルギーを大きく超えているので、蓄電装置13の保有エネルギーがベース保有エネルギーまで下がる(時刻t3)まで、蓄電装置13からも直流リンク4へ直流電力が給電され続ける。この蓄電装置13から直流リンク4へ供給された直流電力は、ドライブ用サーボモータ3の力行に利用される。したがって、時刻t2から時刻t3までの間は、蓄電装置13の保有エネルギーは徐々に減少することになる。時刻t3にて蓄電装置13の保有エネルギーがベース保有エネルギーまで戻るので、時刻t3からしばらくの間は蓄電装置13からは直流リンク4へは直流電力は給電されない。時刻t4で総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えると、蓄電装置制御部17の給電制御により、蓄電装置13は、当該最大供給電力を超える分だけの直流電力を直流リンク4へ供給する。すなわち、時刻t4からしばらくの間は、総消費電力は、「電源部13から出力される最大供給電力」のみならず「蓄電装置13から供給される直流電力」からも提供されるので、電源部11の供給電力はピークカットされる。したがって、時刻t4からしばらくの間は、蓄電装置13の保有エネルギーは徐々に減少し、ベース保有エネルギーを下回った値となる。時刻t4の時点で蓄電装置13は給電動作を開始するので、図8を参照して説明したように、保有エネルギー計算部14は蓄電装置13の保有エネルギーの値を計算し(ステップS203)、予測時間計算部21は保有エネルギー計算部14により計算された保有エネルギーに基づきエネルギー不足予測時間を計算し(ステップS204)、判定部22はエネルギー不足予測時間が閾値Tthを下回ったかを判定し(ステップS205)、判定部22は蓄電装置13が給電動作を終了したか否かを判定する(ステップS209)。蓄電装置13の給電動作中は、ステップS103~S105及びS109の処理が繰り返し実行される。判定部22が、「時刻t5の時点で予測時間計算部21により計算されたエネルギー不足予測時間」が閾値Tthを下回ったことを検知すると、制限制御部15は、時刻t5からドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を徐々に下げ、時刻t6以降はドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御してドライブ用サーボモータ3の出力を制限する。その後、ドライブ用サーボモータ3のトルクや速度が低下することにより総消費電力が低下して時刻t7で総消費電力が電源部11の最大供給電力の範囲内に収まると、電源部11から直流リンク4へ給電される直流電力の一部により、蓄電装置13は蓄電される。この結果、蓄電装置13の保有エネルギーは徐々に増加する。蓄電装置13の保有エネルギーがベース保有エネルギーまで回復すると(時刻t8)、蓄電装置13は蓄電動作を終了する。
続いて、制限制御部15によるドライブ用サーボモータ3の出力を制限する処理の例について、いくつか列挙する。
制限制御部15によるドライブ用サーボモータ3の出力制限処理の第1の形態では、ドライブ用サーボモータ3の速度指令に対するオーバーライドを、予め規定されていたオーバーライドよりも小さい値に変更することで、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるよう、ドライブ用サーボモータ3の出力を制限する。一般に、数値制御装置1000においては、ドライブ用サーボモータ3に対する速度指令に対して「オーバーライド」と称される倍率をかけて速度(回転速度)を修正することができる。速度指令に対して例えば0~200%のオーバーライドを設定することができ、数値制御装置1000にはオーバーライドを設定するためのダイヤルが設けられているのが一般的である。ドライブ用サーボモータ3の出力制限処理の第1の形態では、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、ダイヤルの設定によらずに、制限制御部15が自動的にオーバーライドを予め規定されていたオーバーライドよりも小さい値に変更する。オーバーライドを下げると、ドライブ用サーボモータ3の回転速度が全体として低下する。また、オーバーライドを下げるとドライブ用サーボモータ3の目標回転速度が下がるので、目標回転速度に実際の回転速度が達するまでの加速度及び減速度も減少し、加速時及び減速時のトルクも低下する。この結果、ドライブ用サーボモータ3の出力(すなわちドライブ用サーボモータ3の駆動に必要な電力)も低下する。第1の形態では、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えなくなるような値を、ドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合に用いられるオーバーライドとして設定する。制限制御部15によるドライブ用サーボモータ3の出力制限に用いられるオーバーライドの設定の具体的なやり方としては、例えば、電源部11から供給される電力のみでドライブ用サーボモータ3を駆動する状態を模擬するためにモータ駆動システム1から蓄電装置13を取り外し、ドライブ用サーボモータ3を加速させてそのときのドライブ用サーボモータ3の出力を計測もしくは計算により求め、求められた出力が電源部11の最大供給電力を超えないようなオーバーライドを見つけ出す方法が考えられる。どの程度まで指令速度をオーバーライドさせれば電源部11の最大供給電力の範囲内で加工ができるかを予め実測しておき、当該実測したオーバーライドを用いれば、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えなくなるようにすすることができる。
図10は、本開示の実施形態によるモータ駆動システムにおけるドライブ用サーボモータの出力制限処理の第1の形態を説明する図であって、(A)は速度指令をステップ状に切り換える例を示し、(B)は速度指令を直線形時定数にて変化させながら切り換える例を示し、(C)は速度指令をベル形時定数にて変化させながら切り換える例を示し、(D)は速度指令を指数形時定数にて変化させながら切り換える例を示す。例えば、図10(A)に示すように、制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、正常動作時の速度指令をオーバーライドさせて出力制限時の速度指令にステップ状に切り換える。速度指令をステップ状に切り換えると、蓄電装置13の蓄電及び電力供給の応答性がより高まる。また例えば、図10(B)~図10(D)に示すように、制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、正常動作時の速度指令を徐々にオーバーライドさせて出力制限時の速度指令に切り替えてもよい。図10(B)~図10(D)に示すように、オーバーライドによる速度指令の切り換えをステップ状ではなく切れ目なく連続的に変化させると、速度指令が急激に変化しないので、ドライブ用サーボモータ3への負担が小さくなる利点がある。
制限制御部15によるドライブ用サーボモータ3の出力制限処理の第2の形態では、ドライブ用サーボモータ3に対するトルク指令を、予め規定されていたトルク指令よりも小さい値に変更することで、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるよう、ドライブ用サーボモータ3の出力を制限する。図11は、本開示の実施形態によるモータ駆動システムにおけるドライブ用サーボモータの出力制限処理の第2の形態を説明する図であって、(A)はトルク指令をステップ状に切り換える例を示し、(B)はトルク指令を直線形時定数にて変化させながら切り換える例を示し、(C)はトルク指令をベル形時定数にて変化させながら切り換える例を示し、(D)はトルク指令を指数形時定数にて変化させながら切り換える例を示す。「ドライブ用サーボモータ3の電力=ドライブ用サーボモータ3の速度(回転速度)×トルク」で表されることから、電源部11の最大供給電力とドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力との差分を、ドライブ用サーボモータ3の実速度で除算することで、ドライブ用サーボモータ3の出力を制限する際に用いられる「制限されたトルク指令(以下、「トルク制限指令」と称する)」を求めることができる。制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、正常動作時におけるトルク指令を、トルク制限指令に変更する。トルク制限指令にてドライブ用サーボモータ3を駆動すると、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力は、電源部11の最大供給電力以下となるので、蓄電装置13から電力の給電がなくても、ドライブ用サーボモータ3を駆動することができる。例えば、図11(A)に示すように、制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、ドライブ用サーボモータ3の出力が電源部11の最大供給電力以下の出力となるよう、トルク指令をステップ状に変化させる。また例えば、図11(B)~図11(D)に示すように、制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、ドライブ用サーボモータ3の出力が電源部11の最大供給電力以下の出力となるよう、トルク指令をステップ状ではなく切れ目なく連続的に変化させる。なお、トルク制限指令がトルク指令生成部で生成されたトルク指令を上回った状態となった場合は、総消費電力が電源部11の最大供給電力を下回ったことを示している。
制限制御部15によるドライブ用サーボモータ3の出力制限処理の第3の形態では、予め規定されていた加速度及び減速度よりも小さい値に制限された加速度及び減速度にてドライブ用サーボモータ3が加速及び減速するよう、ドライブ用サーボアンプ12を制御することで、ドライブ用サーボモータ3、ドライブ用サーボアンプ12及び電源部11で消費される電力の総和である総消費電力が電源部11の最大供給電力を超えない値になるようにする。ドライブ用サーボモータ3の加速度及び減速度を下げると、ドライブ用サーボモータ3の出力(すなわちドライブ用サーボモータ3の駆動に必要な電力)は低下する。第3形態では、制限制御部15は、判定部22によりドライブ用サーボモータ3の出力を制限すべきと判定された場合、ドライブ用サーボモータ3の加速度及び減速度を、ドライブ用サーボモータ3の出力が電源部11の最大供給電力を超えない程度の値に設定する。第3の形態におけるドライブ用サーボモータ3の出力と電源部11の最大供給電力との関係は図11に示した通りである。制限制御部15によるドライブ用サーボモータ3の出力制限に用いられるドライブ用サーボモータ3の加速度及び減速度の設定の具体的なやり方としては、例えば、電源部11から供給される電力のみでドライブ用サーボモータ3を駆動する状態を模擬するためにモータ駆動システム1から蓄電装置13を取り外し、ドライブ用サーボモータ3を様々な加速度及び減速度に基づいて動作させてそのときのドライブ用サーボモータ3の出力を計測もしくは計算により求め、求められた出力が電源部11の最大供給電力を超えないような加速度及び減速度を見つけ出す方法が考えられる。
上述の保有エネルギー計算部14、制限制御部15、消費電力計算部16、蓄電装置制御部17、及びドライブ用サーボモータ制御装置10は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ駆動システム1内にある演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、保有エネルギー計算部14、制限制御部15、消費電力計算部16、蓄電装置制御部17、及びドライブ用サーボモータ制御装置10を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。