以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、機能が同じ構成要素及び処理には全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する。
<第1実施形態>
図1は、本実施の形態に係る作業管理システム100の構成例を示す図である。図1に示すように、作業管理システム100は、作業管理装置10、製品を製造する生産ラインの生産工程で用いられる設備20、及び品質管理装置30を含む。作業管理装置10、設備20、及び品質管理装置30は、それぞれ通信回線2で接続されている。
作業管理装置10は、生産ラインの生産工程で作業を行う作業員を識別する識別情報を取得装置18で受け付ける。また、作業管理装置10は、設備20の稼働状態、設備20で製造される製品の検査結果、設備20で製造される製品のトレーサビリティ、設備20の稼働時間等、製品及び設備20に関する各種情報(以降、「生産情報」という)を設備20から受信する。また、作業管理装置10は、生産情報に基づいて製品の製造状況を把握し、設備20における製品の製造が停止せず、かつ、設備20で製造される製品の品質が予め定めた基準品質を下回らないように設備20を制御する。
また、作業管理装置10は、生産情報のうち、例えば製品のトレーサビリティ及び製品の点検結果といった製品の品質に関する情報(以降、「品質情報」という)を品質管理装置30に転送する。
作業管理装置10は、例えば設備20を見通せる程度に設備20に近接して設置するエッジコンピューティングの形態が用いられる。作業管理装置10を設備20に近接して設置することで、例えばクラウドコンピューティングを利用して作業管理装置10を設備20が設置される建物とは異なる建物に設置する場合と比較して、生産情報を受信してから設備20を制御するまでに要する時間が短縮されることになる。
設備20は、例えば複数の設備機器20-1~20-N(Nは整数)を含む製品の生産設備である。生産設備には、例えば製品を組み立てる組み立て装置、製品の品質を検査する検査装置、並びに、部品や製品を搬送する搬送装置等が含まれる。すなわち、設備20は、生産ラインの生産工程で用いられる複数の設備機器20-1~20-Nによって構成される。なお、生産ラインは複数の生産工程からなり、設備20は、少なくとも1つの生産工程に配置(設置)される。
作業員は設備20を用いた生産ラインでの作業に取り掛かる前に、作業員を一意に識別するための作業員ID(Identification)が記憶されたIDカードを取得装置18に読み取らせると共に、担当する生産工程を入力する。これにより作業員の作業開始時間が取得される。また、作業員は設備20が配置された生産ラインでの作業を終了した後、再びIDカードを取得装置18に読み取らせる。これにより作業員の作業終了時間が取得される。なお、作業員の識別情報の入力方法はIDカードの読み取りに限られず、例えば取得装置18のボタンを押下して作業員IDを入力する方法や、カメラを用いた画像認識で作業員を特定するようにしてもよい。
品質管理装置30は、品質情報を作業管理装置10から受け付け、受け付けた品質情報を分析して、設備20を用いた生産ラインで製造された製品の品質状況を把握すると共に、製品の品質情報や分析結果等を、製品の品質を管理する担当者等に通知する。
なお、通信回線2は有線であっても無線であってもよく、また、特定のユーザだけが利用する専用回線であっても、不特定多数のユーザが同じ回線を共有して利用する公衆回線であってもよい。
図2は、作業管理装置10における機能ブロックの一例を示す図である。作業管理装置10は、通信部12及び制御部14の各機能部と、生産情報DB16を含み、制御部14には取得装置18が接続される。
通常「DB」は、予め定めた主キーと関連付けてデータを管理する「データベース(Database)」を意味する略号である。しかしながら、本実施の形態における「DB」とは商用及び非商用の各種データベースアプリケーションを指すものでなく、データを記憶する記憶領域のことを表している。なお、言うまでもなく、作業管理装置10はデータを記憶する記憶領域の管理にデータベースアプリケーションを利用してもよい。
通信部12は、通信回線2を介して設備20から生産情報を受信する。そして、通信部12は、設備20から受け付けた生産情報等を制御部14に通知(送信)する。
また、通信部12は、制御部14の指示によって通信回線2を介して設備20を制御する制御電文(制御信号)を設備20に送信すると共に、設備20で製造された製品の品質情報を品質管理装置30に送信する。
取得装置18は、作業員を識別する識別情報、及び作業員が担当する生産工程を受け付け、制御部14に通知する。識別情報、及び生産情報等を受け付ける通信部12及び取得装置18は、本実施の形態に係る受付部の一例である。
制御部14は、作業員の識別情報を受け付けた場合、識別情報によって表される作業員の習熟度情報及び当該作業員における作業員の履歴情報を生産情報DB16から取得する。
ここで、作業員の習熟度情報とは、設備20を用いた生産ラインにおける生産工程で行われる作業に対する作業員の習熟度を示す情報であり、生産情報DB16に予め記憶されている。設備20を用いた生産ラインにおける製品の製造には複数の生産工程が存在するため、作業員の習熟度情報は生産工程毎に設定される。
図3は、作業員の習熟度情報の一例を示す図である。図3に示すように、作業員の習熟度情報には作業員の識別情報の一例である作業員IDと、生産工程毎の習熟度が設定されている。説明の便宜上、本実施の形態における設備20を用いた生産ラインの生産工程は工程A-1、工程A-2、工程A-3、工程B-1、及び工程B-2を含むものとするが、設備20における生産工程の数は一例であり、上述した5つの工程に限定されるものではない。
作業員の習熟度は、例えば「0」~「4」の5段階に分類される。習熟度「0」は該当する生産工程の作業に関して作業員が研修中であることを表す。研修中の作業員が当該生産工程の作業を行う場合には予め定めた基準レベル以上の習熟度を有する指導者と共に作業する必要がある。初めて該当する生産工程の作業を行う作業員には制御部14によって習熟度「0」が設定される。
習熟度「1」以上は研修を終了し、単独での作業が許可された作業員であることを表し、習熟度の値が大きくなるに従って、該当する生産工程の作業を予め定められた規定通りに遂行するための遂行能力(「力量」ともいう)が高いことを表す。制御部14は、例えば該当する生産工程の作業に対する累積作業時間が長くなるに従って、作業員の習熟度が高くなるように作業員の習熟度情報を設定する。
なお、作業員の習熟度の分類は5段階に限定されず、作業員の習熟度を5段階より細分化しても、5段階未満に統合してもよいことは言うまでもない。また、作業員の習熟度情報は、作業に対する作業員の力量の変化によって適宜更新される。
一方、作業員の履歴情報とは、過去に設備20を用いて作業員が行った作業を記録した情報であり、作業員毎に生産情報DB16に記憶される。
図4は特定の作業員、例えば「001」の作業員IDが割り当てられた作業員の履歴情報の一例を示す図である。図4に示すように、作業員の履歴情報には作業した作業日、担当した生産工程、作業の開始時間、及び作業の終了時間が含まれる。なお、作業員の履歴情報に含まれる項目は図4に示した項目に限られず、例えば作業期間中に処理した製品数等、作業員の作業状況を表す他の項目を含むようにしてもよい。
また、生産情報DB16には、設備20を用いた生産ラインで製造された各々の製品の検査データが記憶される。
図5は製品の検査データの一例を示す図である。図5に示すように、検査データには製造した製品の製造番号及び検査結果が含まれる。検査結果には、例えば製品の寸法や消費電力のように、製造した製品が有する特性を計測した計測値が示される種類の検査結果(図5における計測値A、計測値B)と、実施した検査に対する良否が示される種類の検査結果(図5における検査結果1~検査結果3)が含まれる。なお、図5に示した製品の検査データの項目は一例であり、検査データの内容に制約はない。
この他、生産情報DB16には、設備20を構成する設備機器毎の稼働時間を含む設備情報が記憶される。
制御部14は、取得した作業員の習熟度情報及び作業員の履歴情報に基づいて設備20の稼働状態を制御する。また、制御部14は、作業員の習熟度情報及び作業員の履歴情報に加えて、他の生産情報等に基づいて設備20の稼働状態を制御する。なお、制御部14における設備20の稼働状態の具体的な制御方法については後ほど説明する。制御部14は設備20の稼働状態を制御する制御電文を生成し、通信部12に通知する。
また、制御部14は、受け付けた生産情報から製品の検査データ、及び設備情報を抽出して生産情報DB16に記憶する。
次に、図6を用いて作業管理装置10における電気系統の要部構成例について説明する。作業管理装置10は、例えばコンピュータ40を用いて構成される。
コンピュータ40は、図2に示した作業管理装置10の各機能部を担うCPU(Central Processing Unit)41、プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)42、CPU41の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)43、生産情報DB16が構築される不揮発性メモリ44、及び入出力インターフェース(I/O)45を備える。そして、CPU41、ROM42、RAM43、不揮発性メモリ44、及びI/O45がバス46を介して各々接続されている。
不揮発性メモリ44は、不揮発性メモリ44に供給される電力が遮断されても、記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるが、ハードディスクを用いてもよい。
I/O45には、例えば通信ユニット47、入力ユニット48、及び表示ユニット49が接続される。
通信ユニット47は通信回線2に接続され、設備20及び品質管理装置30と電文(信号)を送受信する通信プロトコルを備える。通信部12は、通信ユニット47を含んで構成される。
入力ユニット48は、ユーザからの指示を受け付けてCPU41に通知する入力装置であり、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、及びマウス等が用いられる。
表示ユニット49は、CPU41によって処理された情報を画像として表示する表示装置であり、例えば液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が用いられる。
なお、作業管理装置10のI/O45に接続されるユニットは図6に例示したユニットに限定されない。例えば、ユーザの声を認識する音声認識ユニット等を接続してもよい。この場合、作業管理装置10はユーザの指示を声で受け付け、受け付けた指示に応じた処理を実行してもよい。
次に、図7を用いて、作業管理装置10の動作について詳細に説明を行う。
図7は、作業管理装置10が起動した場合、又はユーザから指示を受け付けた場合に、制御部14の一部を構成するCPU41によって実行される作業管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
作業管理処理を規定する作業管理プログラムは、例えば作業管理装置10のROM42に予め記憶されている。作業管理装置10のCPU41は、ROM42に記憶される作業管理プログラムを読み込み、作業管理処理を実行する。
なお、不揮発性メモリ44には図3に示した作業員毎の習熟度情報、及び図4に示した作業員毎の履歴情報が予め記憶されているものとする。また、設備20を用いた生産ラインを構成する各々の生産工程には作業員が割り当てられておらず、設備20は停止しているものとする。
ステップS10において、CPU41は、取得装置18から作業を開始しようとする作業員の識別情報と作業員が担当する生産工程の情報を取得する。作業員の識別情報と担当する生産工程の情報を取得していない場合にはステップS10の処理を繰り返し実行して、取得装置18での情報の取得を監視する。
一方、作業員の識別情報と作業員が担当する生産工程の情報を取得した場合には、ステップS20に移行する。
ステップS20において、CPU41は、ステップS10で取得した識別情報に該当する(よって表される)作業員(以降、「対象作業員」という)が、設備20での作業に携わる者として予め登録されている登録作業員か否かを判定する。具体的には、CPU41は、生産情報DB16(不揮発性メモリ44)に記憶される作業員の習熟度情報の作業員IDの中に、取得した識別情報に含まれる作業員IDと同じ作業員IDが存在する場合、対象作業員は登録作業員であると判定する。
したがって、作業員の習熟度情報に、ステップS10で取得した識別情報に含まれる作業員IDが存在しない場合、対象作業員は登録作業員ではないと判定し、ステップS60に移行する。
ステップS60において、CPU41は、ステップS60に処理を移行する理由となった判定結果に応じた警告を表示するように表示ユニット49を制御する。具体的には、対象作業員が登録作業員ではない場合、当該対象作業員は設備20の何れの生産工程における作業の研修も受講していないため、当該対象作業員を設備20の作業に割り当てることは許されない。したがって、CPU41は、登録作業員と異なる作業員が生産工程に割り当てられたことを通知する警告を表示ユニット49に表示すると共に、設備20を用いた生産ラインでの作業が許可されていないことを設備20に含まれる図示しない表示装置に表示させる制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信する。このとき、CPU41は、設備20(全ての設備機器20-1~20-N)を停止させる(稼働させない)制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信してもよい。なお、ステップS60の処理終了後は、後述するステップS70に移行する。
一方、ステップS20の判定処理で、対象作業員が登録作業員であると判定された場合、ステップS30に移行する。
ステップS30において、CPU41は、生産情報DB16から対象作業員の習熟度情報を取得して、担当する生産工程における対象作業員の習熟度が、生産工程毎に予め定められている基準レベル以上か否かを判定する。生産工程毎に予め定められている基準レベルは、例えば不揮発性メモリ44に予め記憶される。
例えば工程A-1の基準レベルが「2」で、図3において作業員IDが「001」で表される作業員が工程A-1を担当しようとした場合、当該作業員の工程A-1における習熟度は「3」であり、基準レベル以上であることから工程A-1の作業が許可される。
しかしながら、例えば工程A-2の基準レベルが「4」で、図3において作業員IDが「001」で表される作業員が工程A-2を担当しようとする場合、当該作業員の工程A-2における習熟度は「3」であるため、工程A-2の作業は許可されない。
したがって、対象作業員の習熟度が生産工程毎に予め定められている基準レベル未満の場合、ステップS60に移行する。この場合、ステップS60において、CPU41は、作業の習熟度が基準レベル未満の作業員が生産工程に割り当てられたことを通知する警告を表示ユニット49に表示すると共に、該当する生産工程では対象作業員に作業を許可しないことを設備20に含まれる図示しない表示装置に表示させる制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信する。このとき、CPU41は、設備20(全ての設備機器20-1~20-N)を停止させる(稼働させない)制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信してもよい。
一方、ステップS30の判定処理で、対象作業員の習熟度が担当予定の生産工程に予め定められている基準レベルを超えていると判定された場合、ステップS40に移行する。
ステップS40において、CPU41は、生産情報DB16から対象作業員の履歴情報を取得し、前回の作業日からステップS10で対象作業員の識別情報を受け付けた時点までの作業間隔が基準期間を超えるか否かを判定する。
ここで「基準期間」とは、作業員が作業に従事しなかったことにより、製造される製品の品質に影響が発生する程度に作業員の習熟度の低下が始まる期間を表す予め定めた期間の一例である。基準期間は、生産工程毎(生産工程の作業毎)に予め設定されており、例えば不揮発性メモリ44に予め記憶される。基準期間は日単位及び時間単位の何れで設定してもよいが、ここでは一例として日単位で設定されているものとする。
前回の作業日からの作業間隔が基準期間を超える作業員に作業を行わせた場合、製品の品質が製品に要求される基準品質を下回る場合が考えられるため、予防保全として当該作業員に作業を担当させないことが好ましい。
したがって、前回の作業日からの作業間隔が基準期間を超える場合にはステップS60に移行する。この場合、ステップS60において、CPU41は、前回の作業日からの作業間隔が基準期間を超える作業員が生産工程に割り当てられたことを通知する警告を表示ユニット49に表示すると共に、該当する生産工程では対象作業員に作業を許可しないことを設備20に含まれる図示しない表示装置に表示させる制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信する。このとき、制御部14の一部を構成するCPU41は、設備20(全ての設備機器20-1~20-N)を停止させる(稼働させない)制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信する。CPU41は、設備20を停止させる制御電文を設備20に対して送信し続けるため、当該送信が停止するまでは、設備20を稼働させることができない。つまり、設備20を用いた生産ラインは、物理的に製品の製造をすることができなくなる。
これにより、担当予定の生産工程における作業の習熟度が基準レベル以上の作業員であっても、前回の作業日からの作業間隔が基準期間を超えるような久しぶりに作業を行う作業員は、設備20を用いた生産ラインでの作業を行うことができない。このため、誤作業により設備20を用いた生産ラインで製造される製品の品質が基準品質より低下することが未然に抑制される。なお、前回の作業日からの作業間隔が基準期間を超える作業員は、例えば指導者と共に作業を行うことで設備20を用いた生産ラインでの作業が認められ、かつ、作業履歴として記録される。
上述したステップS60は作業員が設備20を用いた生産ラインでの作業が認められないことを示す警告を表示したが、CPU41は、設備20での作業条件を満たす代わりの作業員候補を表示ユニット49に表示するようにしてもよい。
例えば対象作業員の作業間隔が基準期間を超えることによって設備20を用いた生産ラインでの作業が認められなかった場合、CPU41は、作業員の習熟度情報及び作業員の履歴情報を参照して、対象作業員が担当する予定であった生産工程に設けられている基準レベル以上の習熟度を有し、かつ、前回の作業日からの作業間隔が基準期間以下の作業員を検索して、表示ユニット49に表示する。作業管理装置10のユーザは、表示ユニット49に表示される作業員に連絡を取り、対象作業員の代わりに対象作業員が担当する予定であった生産工程の作業に割り当てればよい。
一方、ステップS40の判定処理で、前回の作業日からの作業間隔が基準期間以下であると判定された場合、ステップS50に移行する。
ステップS50において、CPU41は、対象作業員をステップS10で取得した生産工程の作業に従事する作業員として割り当て、対象作業員の履歴情報に作業日、従事する生産工程、作業の開始時間を記録する。
ステップS70において、CPU41は、生産工程の各々に対して作業員の割り当てが完了したか否かを判定する。各々の生産工程のうち作業員が割り当てられていない工程が1つでも存在する場合には製品の製造が行えないため、ステップS10に移行して次の作業員の識別情報と担当する生産工程の情報を取得する。
ステップS10~S70を繰り返し実行することで、設備20を用いた生産ラインを構成する各々の生産工程に習熟度が基準レベル以上で、かつ、作業間隔が基準期間以内の作業員が割り当てられることになる。したがって、ステップS70の判定処理で、生産工程の各々に対して作業員の割り当てが完了したと判定された場合にはステップS80に移行し、ステップS80において、CPU41は、設備20に対して設備20の稼働を開始させる制御電文を送信する。これにより、設備20が稼働する。以上により、図7に示す作業管理処理を終了する。
このように、本実施の形態に係る作業管理システム100によれば、作業管理装置10で各々の生産工程に習熟度が基準レベル以上で、かつ、作業間隔が基準期間以内の作業員が割り当てられたことが確認されるまでは設備20を停止する。
なお、上述した作業管理処理では、前回の作業日からの作業間隔を予め設定された基準期間と比較したが、基準期間を作業員の習熟度に応じて変化させてもよい。
例えば、習熟度の高い作業員ほど、製造される製品の品質に影響が発生する程度に習熟度が低下するまでの期間は長くなる。したがって、作業管理装置10のCPU41は、作業員の習熟度が高くなるに従って基準期間が長くなるように設定する制御を行う。これにより、一律に設定された期間と作業員の作業間隔を比較する場合と比較して、習熟度の高い作業員が割り当てられる可能性が向上するため、作業員の割り当て時間を短縮することができる。
反対に、習熟度の低い作業員ほど、製造される製品の品質に影響が発生する程度に習熟度が低下するまでの期間は短くなる。したがって、作業管理装置10のCPU41は、作業員の習熟度が低くなるに従って基準期間が短くなるように設定する制御を行う。これにより、一律に設定された期間と作業員の作業間隔を比較する場合と比較して、習熟度の低い作業員が割り当てられる可能性が低下するため、作業員の誤作業を更に抑制することができる。
具体的には、例えば工程A-1において、習熟度が「3」の作業員に対する基準期間が30日に設定されている場合、習熟度が「4」の作業員に対する基準期間を35日に設定する一方、習熟度が「2」の作業員に対する基準期間は25日、習熟度が「1」の作業員に対する基準期間は20日に設定する。
このように、作業員の習熟度は前回の作業日からの作業間隔に影響を受けるが、作業員による前回の作業日における作業時間が、作業員の力量が維持される程度の作業時間に満たない場合、たとえ前回の作業日からの作業間隔が基準期間以下であったとしても、製造される製品の品質に影響が発生する程度に作業員の習熟度が低下していることがある。
したがって、作業管理装置10のCPU41は、図7のステップS40で作業員の履歴情報に基づいて作業員の作業間隔を算出する場合、作業員の作業時間が予め定めた時間(以降、「規定時間」という)以上の日を前回の作業日に設定する。ここで規定時間は、作業員の力量が維持される程度の長さに設定される。
例えば、規定時間が4時間に設定されており、作業員IDが「001」で表される作業員が工程A-1を担当しようとした場合、図4に示した当該作業員の履歴情報によれば、前回の作業日は1時間しか作業していない2018年4月5日ではなく、8時間作業している2018年4月2日に設定される。
なお、習熟度の高い作業員ほど、より短い作業時間で作業の力量が維持される傾向が見られ、習熟度の低い作業員ほど、力量を維持するために要する作業時間が長くなる傾向が見られる。したがって、作業管理装置10のCPU41は、作業員の習熟度が高くなるに従って規定時間が短くなるように設定し、作業員の習熟度が低くなるに従って規定時間が長くなるように設定してもよい。これにより、作業員の習熟度に関係なく規定時間を一律に設定する場合と比較して、習熟度の高い作業員が割り当てられる可能性が向上するため、作業員の割り当て時間を短縮することができる。また、作業員の習熟度に関係なく規定時間を一律に設定する場合と比較して、習熟度の低い作業員が割り当てられる可能性が低下するため、作業員の誤作業を更に抑制することができる。
<第1実施形態の変形例1>
第1実施形態に係る作業管理装置10は、各々の生産工程に習熟度が基準レベル以上で、かつ、作業間隔が基準期間以内の作業員が割り当てられた場合に設備20を稼働した。
しかしながら、作業員の習熟度情報における習熟度が基準レベル以上であったとしても、例えば風邪をひいた等の理由により作業員の体調が優れない日も存在する。体調が優れない場合には、通常の体調であれば規定通りに行える作業も規定通りに行えないことがある。
したがって、本変形例では作業員の体温を示す温度情報を用いて作業員の体調を判定し、製品の品質管理を行う作業管理装置10について説明を行う。
図8は、作業管理装置10が起動した場合、又はユーザから指示を受け付けた場合に、CPU41によって実行される作業管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8に示す作業管理装置のフローチャートが図7に示したフローチャートと異なる点は、ステップS25が追加された点であり、その他の処理は同じであるため、ここではステップS25の処理について説明する。
なお、作業の開始時及び終了時に作業員のIDカードを読み取る取得装置18には、例えば赤外線カメラが備えられており、図8に示す作業管理処理のステップS10では、作業員の識別情報及び作業員が担当する生産工程の情報の他、赤外線カメラで撮影された作業員の温度画像を取得するものとする。
図8において、ステップS20の判定処理で対象作業員が登録作業員と判定された場合、ステップS25に移行する。
ステップS25において、CPU41は、取得した対象作業員の温度画像から対象作業員の体温を推定し、対象作業員の体温が予め定めた温度(以降、「基準温度」という)を超えるか否かを判定する。なお、CPU41は推定した体温を対象作業員と対応付け、対象作業員の作業履歴に記録する。
基準温度は、体温がこの温度を超えた場合に作業員の体調が通常よりも悪いと推定される温度であり、作業員毎に設定される。具体的には、基準温度は対象作業員の作業履歴に記録された対象作業員の過去の体温から設定される。対象作業員の過去の体温から基準温度を設定する場合、基準温度は例えば対象作業員の過去の体温の平均値、中央値、又は最頻値といった作業員の通常の体温を示す代表値に、予め定めたマージン値(例えば1℃)を加えて設定される。設定された基準温度は、例えば対象作業員の作業履歴に記録される。
対象作業員の体温が基準温度を超える場合、ステップS60に移行する。この場合、ステップS60において、CPU41は、体調が優れない作業員が生産工程に割り当てられたことを通知する警告を表示ユニット49に表示すると共に、該当する生産工程では対象作業員に作業を許可しないことを設備20に含まれる図示しない表示装置に表示させる制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信する。このとき、CPU41は、設備20を停止させる(稼働させない)制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信する。
これにより、登録作業員であっても体調に問題があると推定される作業員が作業に取り掛かろうとしても設備20は稼働しないため、設備20で製造される製品の品質が基準品質より低下することが未然に抑制される。
なお、CPU41は基準温度を設定する場合、対象作業員の履歴情報に記録された過去の各々の体温のうち、それぞれの体温の推定時に設定された基準温度を超える体温を、作業員の通常の体温を示す代表値の算出に用いないようにすることが好ましい。
また、作業員の体温は温度画像を撮影した場所の気温に応じて変化することがある。例えば温度画像を撮影した場所の気温が高くなるに従って、作業員の体温が高くなる傾向を示す。この場合、作業員の体調に問題がなくても気温の上昇によって作業員の体温が通常より高く推定され、基準温度を超えてしまうことが考えられる。
したがって、CPU41は、温度画像が撮影された場所の気温を、取得した温度画像から推定し、温度画像を撮影した場所の気温が高くなるに従ってマージン値を大きくすることで、基準温度が高くなるように設定する。また、CPU41は、温度画像を撮影した場所の気温が低くなるに従ってマージン値を小さくすることで、基準温度が低くなるように設定する。
<第1実施形態の変形例2>
第1実施形態に係る作業管理装置10は、各々の生産工程に習熟度が基準レベル以上で、かつ、作業間隔が基準期間以内の作業員が割り当てられた場合に設備20を稼働した。
しかしながら、設備20を用いた生産ラインで製造される製品の品質は作業員の力量だけでなく、設備20の整備状況によっても影響を受ける。例えば設備20に含まれる検査装置の不具合によって作業員の誤作業が生じる場合がある。
したがって、本変形例では設備20を稼動する前に実施が求められている点検(以降、「事前点検」という)が実施されたことを確認してから、設備20を稼働する作業管理装置10について説明を行う。
図9は、作業管理装置10が起動した場合、又はユーザから指示を受け付けた場合に、CPU41によって実行される作業管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9に示す作業管理装置のフローチャートが図7に示したフローチャートと異なる点は、ステップS71~S74の処理が追加された点であり、その他の処理は同じであるため、ここではステップS71~S74の処理について説明する。
なお、事前点検として規定されている点検項目は予め設定され、例えば不揮発性メモリ44に記憶されているものとする。当該点検項目は複数あってもよい。また、設備20は停止しているものとする。
図9において、ステップS70の判定処理で生産工程の各々に対して作業員の割り当てが完了したと判定された場合、ステップS71に移行する。
ステップS71において、CPU41は、事前点検で行う点検項目の点検結果を設備20から取得したか否かを判定する。点検結果を取得していない場合にはステップS71の処理を繰り返し実行して、設備20から送信される点検結果を監視する。一方、点検結果を取得した場合にはステップS72に移行する。
ステップS72において、CPU41は、ステップS71で取得した点検結果が正常であるか否かを判定する。点検結果が異常を示す場合にはステップS74に移行する。
ステップS74において、CPU41は、設備20に異常があることを通知する警告を表示ユニット49に表示し、図9に示した作業管理処理を終了する。
すなわち、作業管理装置10は事前点検に含まれる点検項目に1つでも異常が認められる場合には、設備20を稼働させないようにする。
一方、ステップS72の判定処理で、ステップS71で取得した点検結果が正常と判定された場合、ステップS73に移行する。
ステップS73において、CPU41は、事前点検として規定されている全ての点検項目の点検結果を取得したか否かを判定する。事前点検として規定されている点検項目のうち、まだ点検結果を取得していない点検項目が存在する場合にはステップS71に移行して、残りの点検項目の点検結果を取得する。
一方、事前点検として規定されている全ての点検項目の点検結果を取得した場合には、ステップS80に移行する。
この場合、事前点検として規定されている全ての点検項目が正常であることから、ステップS80において、CPU41は、設備20に対して設備20の稼働を開始させる制御電文を送信する。これにより、設備20が稼働する。
本変形例では、設備20は点検項目の点検結果が正常であっても異常であっても作業管理装置10に点検結果を送信する例について説明したが、設備20は点検結果が異常を示す場合、点検結果を作業管理装置10に送信しないようにしてもよい。この場合、図9に示したステップS73の判定処理が否定判定となるため、設備20は稼働しない。
なお、ステップS71~S74の各処理を、図8に示した作業管理処理のステップS70とステップS80の間に追加してもよいことは言うまでもない。
<第1実施形態の変形例3>
第1実施形態の変形例2に係る作業管理装置10では、設備20を稼働する前に事前点検を実施し、点検結果が異常を示す点検項目が1つでも存在する場合には設備20を稼働しないように制御した。
しかしながら、設備20の事前点検の段階では設備20に異常が認められない場合であっても、設備20の稼働中に設備20に異常が発生することも考えられる。異常が認められる設備20で作業員が作業を継続した場合、場合によっては作業員の誤作業につながる恐れがある。また、設備20を整備するため、設備20の稼働中に予定していない設備20の停止期間を設けた場合、製品の生産計画に影響を与えることになる。
したがって、本変形例では設備20の点検時期を通知する作業管理装置10について説明を行う。
図10は、作業管理装置10が起動した場合、又はユーザから指示を受け付けた場合に、CPU41によって実行される作業管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10に示す作業管理装置のフローチャートが図7に示したフローチャートと異なる点は、ステップS75~S77の処理が追加された点であり、その他の処理は同じであるため、ここではステップS75~S77の処理について説明する。なお、設備20は停止しているものとする。
図10において、ステップS70の判定処理で生産工程の各々に対して作業員の割り当てが完了したと判定された場合、ステップS75に移行する。
ステップS75において、CPU41は、設備20の劣化情報を設備20から取得する。設備20の劣化情報とは、例えば設備20に用いられている部材の磨耗度合い、及び部材の振動の大きさ等、設備20の劣化度合いを定量的に表す情報を含む。なお、設備20が劣化した場合、例えば製品の寸法といった計測値や製品の検査結果に影響を与えることがあるため、例えば図5に示したような、設備20で製造された製品の検査データを設備20の劣化情報として取得してもよい。
設備20の劣化情報を取得していない場合にはステップS75の処理を繰り返し実行して、設備20から送信される劣化情報を監視する。一方、設備20の劣化情報を取得した場合にはステップS76に移行する。
ステップS76において、CPU41は、ステップS75で取得した劣化情報から設備20に対する次回の点検時期を設定する。
具体的には、例えば設備20の劣化情報を設備20に用いられている部材の磨耗度合いとして取得した場合、CPU41は取得した部材の磨耗度合いと予め定められた許容される磨耗度合いから次回の点検時期を設定する。また、例えば設備20の劣化情報を製品の検査データとして取得した場合、例えば特定の項目に対する計測値と当該項目における基準値との乖離状況が大きくなるに従って、次回の点検時期までの期間が短くなるように点検時期を設定する。
ステップS77において、CPU41は、ステップS76で設定した次回の点検時期を表示ユニット49に表示すると共に、当該点検時期を設備20に含まれる図示しない表示装置に表示させる制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信する。
なお、ステップS75~S77の各処理を図8に示した作業管理処理のステップS70とステップS80の間に追加してもよいし、図9に示した作業管理処理のステップS73とステップS80の間に追加してもよい。
以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよいし、生産管理DB16を作業管理装置10ではなく、通信回線2に接続された図示しない外部装置に記憶するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、一例として作業管理装置10における作業管理処理をソフトウエアで実現する形態について説明したが、図7~図10に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)に実装し、ハードウエアで処理させるようにしてもよい。この場合、作業管理処理をソフトウエアで実現した場合と比較して、処理の高速化が図られる。
また、上述した実施の形態では、作業管理プログラムがROM42にインストールされている形態について説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る作業管理プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば、本発明に係る作業管理プログラムを、CD(Compact Disc)-ROM、又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、本発明に係る作業管理プログラムを、USBメモリ及びフラッシュメモリ等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。更に、作業管理装置10は通信回線2に接続された図示しない外部装置から、本発明に係る作業管理プログラムを取得するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、CPU41が、設備20(全ての設備機器20-1~20-N)を停止させる(稼働させない)制御電文を、通信ユニット47を経由して設備20に送信する形態について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、設備20を構成する一部の設備機器のみ停止させてもよい。この場合は、制御部14の一部を構成するCPU41による設備20の停止制御を簡略化できる。具体的には、例えば生産ラインには上流から下流にかけて4つの設備機器20-1~20-4がこの順に並んでおり、その内の最上流の設備機器20-1及び最下流の設備機器20-4に対してのみ、停止させる制御電文をCPU41が送信する。この場合は、設備機器20-1を有する上流の生産工程は、製品の製造ができないため、生産ラインに製品の投入ができない。また、設備機器20-4を有する下流の生産工程は、製品の製造ができないため、生産ラインから製品を排出することができない。