JP7107355B2 - 無加圧接合用銅ペースト、接合体、及び半導体装置 - Google Patents

無加圧接合用銅ペースト、接合体、及び半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、無加圧接合用銅ペースト、並びにそれを用いた接合体、及び半導体装置に関する。
半導体装置を製造する際、半導体素子とリードフレーム等(支持部材)とを接合させるため、さまざまな接合材が用いられている。半導体装置の中でも、150℃以上の高温で動作させるパワー半導体、LSI等の接合には、接合材として高融点鉛はんだが用いられてきた。近年、半導体素子の高容量化及び省スペース化により動作温度が高融点鉛はんだの融点近くまで上昇しており、接続信頼性を確保することが難しくなってきている。一方で、RoHS規制強化に伴い、鉛を含有しない接合材が求められている。
これまでにも、鉛はんだ以外の材料を用いた半導体素子の接合が検討されている。例えば、下記特許文献1には、銀ナノ粒子を焼結させ、焼結銀層を形成する技術が提案されている。このような焼結銀はパワーサイクルに対する接続信頼性が高いことが知られている(非特許文献1)。
更に別の材料として、銅粒子を焼結させ、焼結銅層を形成する技術も提案されている。例えば、下記特許文献2には、銅ナノ粒子と、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子、あるいはそれら両方を含む接合材が開示されており、この接合材が無加圧で部材を接合できることも記載されている。
特許第4247800号 特開2014-167145号公報
R. Khazaka, L. Mendizabal, D. Henry: J. ElecTron. Mater, 43(7), 2014, 2459-2466
上記特許文献1に記載の方法は、高い接続信頼性を得るには焼結銀層の緻密化が必須であるため、加圧を伴う熱圧着プロセスが必要となる。加圧を伴う熱圧着プロセスを行う場合、生産効率の低下、歩留まりの低下等の課題がある。更に、銀ナノ粒子を用いる場合、銀による材料コストの著しい増加等が問題となる。
上記特許文献2に記載の方法は、無加圧で焼結を行っているが、以下の点で実用に供するには未だ充分ではない。すなわち、銅ナノ粒子は酸化抑制及び分散性の向上のために保護剤で表面を修飾する必要があるが、銅ナノ粒子は比表面積が大きいため、銅ナノ粒子を主成分とする接合材においては表面保護剤の配合量が増える傾向にある。また、分散性を確保するために分散媒の配合量が増える傾向にある。そのため、上記特許文献2に記載の接合材は、保管又は塗工等の供給安定性のため、表面保護剤又は分散媒の割合を多くしており、焼結時の体積収縮が大きくなりやすく、また焼結後の緻密度が低下しやすい傾向にあり焼結体強度の確保が難しい。
また、接合材を用いた無加圧での接合は、接合される部材同士の材質が等しいか近い場合には良好に行われるが、接合される部材同士の材質が異なる場合には接合力が大きく低下しやすい。本発明者らの検討によると、例えば、被着面に銅を有する銅板と、被着面にニッケルを有する銅ブロックとを接合する場合と、被着面に銅を有する銅板と、被着面にニッケルを有するシリコンチップとを接合する場合とでは、無加圧の焼結条件において接合用銅ペーストの組成によっては後者の接合強度が大きく低下する場合のあることが判明した。すなわち、銅ブロックとシリコンチップのように、熱膨張率の異なる部材同士を無化圧で接合する場合において接合不良が生じることがある。
本発明は、熱膨張率の異なる部材同士を無加圧で接合する場合であっても、充分な接合強度を得ることができる無加圧接合用銅ペーストを提供することを目的とする。本発明は更に、無加圧接合用銅ペーストを用いる接合体及び半導体装置、並びにこれらの製造方法を提供することも目的とする。
上記課題を解決するために本発明者らは以下の検討を行った。まず、接合用銅ペーストによる接合では、接合時の乾燥工程、又は焼結工程における昇温時に、分散媒が揮発した後、乾燥した銅系粒子の堆積物が残されることになる。乾燥した銅系粒子の堆積物は、粒子間に分散媒の凝集力等の結合力が無く、非常に脆弱な状態にある。この際、接合される部材同士の材質が異なる場合には、室温と乾燥工程温度の温度差、又は室温と焼結工程温度の温度差により、接合される部材間に熱膨張率差による剪断力が働き、銅系粒子の堆積物層は剥離しやすくなることが考えられる。焼結工程において部材に積極的に加圧を行っていれば、剥離は潰されて銅系粒子の堆積物の焼結物と部材とが接合されることになるが、無加圧の場合には剥離したままとなる可能性がある。このような剥離を抑制する観点から、昇温時の堆積物の状態を制御する検討行った結果、分散媒として特定の溶媒を特定の割合で用いることにより、熱膨張率の異なる部材同士を無加圧で接合する場合であっても、充分な接合強度を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、金属粒子と、分散媒と、を含む無加圧接合用銅ペーストであって、金属粒子が、体積平均粒径が0.01μm以上0.8μm以下のサブマイクロ銅粒子と、体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下のマイクロ銅粒子とを含み、分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を含み、300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として、2質量%以上である、無加圧接合用銅ペーストを提供する。
本明細書において、「無加圧」とは、接合する部材の自重、又はその自重に加え、0.01MPa以下の圧力を受けている状態を意味する。
本発明はまた、金属粒子と、分散媒と、を含む無加圧接合用銅ペーストであって、金属粒子が、体積平均粒径が0.01μm以上0.8μm以下のサブマイクロ銅粒子と、体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下のマイクロ銅粒子とを含み、分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を含み、300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、無加圧接合用銅ペーストの全容量を基準として、8体積%以上である、無加圧接合用銅ペーストを提供する。
本発明の無加圧接合用銅ペーストによれば、熱膨張率が異なる部材同士を無化圧で接合する場合であっても、充分な接合強度を得ることができる。このような効果が得られる理由について本発明者らは以下のとおり推察する。すなわち、分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を特定量含むことで、接合時の昇温過程で所定量の300℃以上の沸点を有する溶媒が部材間にある銅ペースト中に残ることができると考えられる。この残留溶媒が銅ペーストに可撓性及び付着姓を与えることにより、熱膨張率差による剪断力が働いた場合であっても部材間にある銅ペーストが変形・追随可能となり、それぞれの部材に剥離無く接合できたものと考えられる。
本発明において、上記300℃以上の沸点を有する溶媒が、ヒドロキシ基、エーテル基、及びエステル基からなる群から選択された少なくとも一種の基を有していてもよい。無加圧接合用銅ペーストがこのような溶媒を含む場合、有機酸、有機アミン、ヒドロキシル基含有ポリマー、ポリビニルピロリドン等といったハンセン溶解度パラメータが近い表面処理剤を用いることができる。
本発明の無加圧接合用銅ペーストは、2つの部材間に存在する無加圧接合用銅ペーストを250℃以上350℃未満の温度で加熱したときに、マイクロ銅粒子及びサブマイクロ銅粒子が焼結して金属結合を形成し、2つの部材間がダイシェア強度10MPa以上、熱伝導率100W/(m・K)以上で接合されるものであってもよい。このような無加圧接合用銅ペーストであれば、熱膨張率が異なる部材同士の接合時に、充分な接合強度が得られやすい。
本発明の無加圧接合用銅ペーストは、25℃から300℃まで昇温させたときに残存する300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、300℃まで昇温させたときの無加圧接合用銅ペーストの質量を基準として、1質量%以上であってもよい。この場合、無加圧接合用銅ペースト組成物の可撓性を維持しやすく、熱膨張率の異なる部材同士を接合する場合に、無加圧接合用銅ペーストが部材に対して変形・追随しやすくなるため、接合強度を向上させることが容易となる傾向にある。
本発明はまた、第一の部材と、第一の部材とは異なる熱膨張率を有する第二の部材と、第一の部材と第二の部材とを接合する上記無加圧接合用銅ペーストの焼結体と、を備える、接合体を提供する。
本発明の接合体によれば、上記無加圧接合用銅ペーストの焼結体によって接合されていることにより、異なる熱膨張率を有する部材同士であっても、部材同士が充分な接合強度で接合された接合体となり得る。
本発明はまた、第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、上記無加圧接合用銅ペースト、及び第一の部材とは異なる熱膨張率を有する第二の部材がこの順に積層されている積層体を用意し、無加圧接合用銅ペーストを、第一の部材の自重、又は前記第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える接合体の製造方法を提供する。
本発明の接合体の製造方法によれば、上記本発明の無加圧接合用銅ペーストを用いることにより、異なる熱膨張率を有する部材同士であっても、部材同士が充分な接合力で接合され、接続信頼性に優れた接合体を製造することができる。
本発明はまた、第一の部材と、第一の部材とは異なる熱膨張率を有する第二の部材と、第一の部材と第二の部材とを接合する上記無加圧接合用銅ペーストの焼結体と、を備え、第一の部材及び第二の部材の少なくとも一方が半導体素子である、半導体装置を提供する。
本発明の半導体装置の製造方法によれば、上記本発明の無加圧接合用銅ペーストを用いることにより、半導体装置を構成する部材が異なる熱膨張率を有する場合であっても、部材同士が充分な接合力で接合され、接続信頼性に優れた半導体装置を製造することができる。
本発明は、熱膨張率の異なる部材同士を無加圧で接合する場合であっても、充分な接合強度を得ることができる無加圧接合用銅ペーストを提供することができる。本発明は更に、無加圧接合用銅ペーストを用いる接合体及び半導体装置、並びにこれらの製造方法を提供することができる。
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを用いて製造される接合体の一例を示す模式断面図である。 本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを用いて製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。 実施例1の接合サンプルの断面のSEM像を示す図である。 比較例1の接合サンプルの断面のSEM像を示す図である。 300℃以上の沸点を有する溶媒が無加圧接合用銅ペーストに占める割合とダイシェア強度との関係について示す図である。 分散媒の沸点とダイシェア強度との関係について示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
<無加圧接合用銅ペースト>
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストは、金属粒子と、分散媒と、を含む無加圧接合用銅ペーストであって、金属粒子がサブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子を含む。
(金属粒子)
本実施形態に係る金属粒子としては、サブマイクロ銅粒子、マイクロ銅粒子、これらの銅粒子以外のその他の金属粒子等が挙げられる。
(サブマイクロ銅粒子)
サブマイクロ銅粒子としては、250℃以上350℃以下の温度範囲で焼結性を有する銅粒子であればよい。サブマイクロ銅粒子としては、粒径が0.01μm以上0.8μm以下の銅粒子を含むものが挙げられ、例えば、体積平均粒径が0.01μm以上0.8μm以下の銅粒子の銅粒子を用いることができる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.01μm以上であれば、サブマイクロ銅粒子の合成コストの抑制、良好な分散性、表面処理剤の使用量の抑制といった効果が得られやすくなる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.8μm以下であれば、サブマイクロ銅粒子の焼結性が優れるという効果が得られやすくなる。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径の上限は、0.6μm以下であってもよく、0.5μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。また、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径の下限は、0.02μm以上であってもよく、0.05μm以上であってもよく、0.1μm以上であってもよい。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径としては、例えば、0.01μm以上0.5μm以下であってもよく、0.12μm以上0.8μm以下であってもよく、0.15μm以上0.8μm以下であってもよく、0.15μm以上0.6μm以下であってもよく、0.2μm以上0.5μm以下であってもよく、0.3μm以上0.45μm以下であってもよい。
なお、本願明細書において体積平均粒径とは、50%体積平均粒径を意味する。銅粒子の体積平均粒径を求める場合、原料となる銅粒子、又は無加圧接合用銅ペーストから揮発成分を除去した乾燥銅粒子を、分散剤を用いて分散媒に分散させたものを光散乱法粒度分布測定装置(例えば、島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nano,株式会社島津製作所製))で測定する方法等により求めることができる。光散乱法粒度分布測定装置を用いる場合、分散媒としては、ヘキサン、トルエン、α-テルピネオール、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン等を用いることができる。
サブマイクロ銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、20質量%以上90質量%以下であってもよく、30質量%以上90質量%以下であってもよく、35質量%以上85質量%以下であってもよく、40質量%以上80質量%以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であれば、無加圧接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びマイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、20質量%以上90質量%以下であることが好ましい。サブマイクロ銅粒子の上記含有量が20質量%以上であれば、マイクロ銅粒子の間を充分に充填することができ、無加圧接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。サブマイクロ銅粒子の含有量が90質量%以下であれば、無加圧接合用銅ペーストを焼結した時の体積収縮を充分に抑制できるため、無加圧接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びマイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、30質量%以上85質量%以下であってもよく、35質量%以上85質量%以下であってもよく、40質量%以上80質量%以下であってもよい。
サブマイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。サブマイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状及びこれらの凝集体が挙げられる。分散性及び充填性の観点から、サブマイクロ銅粒子の形状は、球状、略球状、フレーク状であってもよく、燃焼性、分散性、フレーク状マイクロ粒子との混合性等の観点から、球状又は略球状であってもよい。本明細書において、「フレーク状」とは、板状、鱗片状等の平板状の形状を包含する。
サブマイクロ銅粒子は、分散性、充填性、及びフレーク状マイクロ粒子との混合性の観点から、アスペクト比が5以下であってもよく、3以下であってもよい。本明細書において、「アスペクト比」とは、粒子の長辺/厚みを示す。粒子の長辺及び厚みの測定は、例えば、粒子のSEM像から求めることができる。
サブマイクロ銅粒子は、特定の表面処理剤で処理されていてもよい。特定の表面処理剤としては、例えば、炭素数2~18の有機酸が挙げられる。炭素数2~18の有機酸としては、例えば、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、メチルヘプタン酸、エチルヘキサン酸、プロピルペンタン酸、ペラルゴン酸、メチルオクタン酸、エチルヘプタン酸、プロピルヘキサン酸、カプリン酸、メチルノナン酸、エチルオクタン酸、プロピルヘプタン酸、ブチルヘキサン酸、ウンデカン酸、メチルデカン酸、エチルノナン酸、プロピルオクタン酸、ブチルヘプタン酸、ラウリン酸、メチルウンデカン酸、エチルデカン酸、プロピルノナン酸、ブチルオクタン酸、ペンチルヘプタン酸、トリデカン酸、メチルドデカン酸、エチルウンデカン酸、プロピルデカン酸、ブチルノナン酸、ペンチルオクタン酸、ミリスチン酸、メチルトリデカン酸、エチルドデカン酸、プロピルウンデカン酸、ブチルデカン酸、ペンチルノナン酸、ヘキシルオクタン酸、ペンタデカン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、パルミチン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、エチルシクロヘキサンカルボン酸、プロピルシクロヘキサンカルボン酸、ブチルシクロヘキサンカルボン酸、ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、ヘプチルシクロヘキサンカルボン酸、オクチルシクロヘキサンカルボン酸、ノニルシクロヘキサンカルボン酸等の飽和脂肪酸;オクテン酸、ノネン酸、メチルノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、サビエン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、ペンチル安息香酸、ヘキシル安息香酸、ヘプチル安息香酸、オクチル安息香酸、ノニル安息香酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。有機酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。このような有機酸と上記サブマイクロ銅粒子とを組み合わせることで、サブマイクロ銅粒子の分散性と焼結時における有機酸の脱離性を両立できる傾向にある。
表面処理剤の処理量は、サブマイクロ銅粒子の表面に一分子層~三分子層付着する量であってもよい。この量は、サブマイクロ銅粒子の表面に付着した分子層数(n)、サブマイクロ銅粒子の比表面積(A)(単位m2/g)と、表面処理剤の分子量(M)(単位g/mol)と、表面処理剤の最小被覆面積(S)(単位m/個)と、アボガドロ数(N)(6.02×1023個)から算出できる。具体的には、表面処理剤の処理量は、表面処理剤の処理量(質量%)={(n・A・M)/(S・N+n・A・M)}×100%の式に従って算出される。
サブマイクロ銅粒子の比表面積は、乾燥させたサブマイクロ銅粒子をBET比表面積測定法で測定することで算出できる。表面処理剤の最小被覆面積は、表面処理剤が直鎖飽和脂肪酸の場合、2.05×10-19/1分子である。それ以外の表面処理剤の場合には、例えば、分子モデルからの計算、又は「化学と教育」(上江田捷博、稲福純夫、森巌、40(2),1992,p114-117)に記載の方法で測定できる。表面処理剤の定量方法の一例を示す。表面処理剤は、無加圧接合用銅ペーストから分散媒を除去した乾燥粉の熱脱離ガス・ガスクロマトグラフ質量分析計により同定でき、これにより表面処理剤の炭素数及び分子量を決定できる。表面処理剤の炭素分割合は、炭素分分析により分析できる。炭素分分析法としては、例えば、高周波誘導加熱炉燃焼/赤外線吸収法が挙げられる。同定された表面処理剤の炭素数、分子量及び炭素分割合から上記式により表面処理剤量を算出できる。
表面処理剤の上記処理量は、0.07質量%以上2.1質量%以下であってもよく、0.10質量%以上1.6質量%以下であってもよく、0.2質量%以上1.1質量%以下であってもよい。
上記サブマイクロ銅粒子は良好な焼結性を有するため、銅ナノ粒子を主に用いた接合材にみられる高価な合成コスト、良好でない分散性、焼結後の体積収縮の低下等の課題を低減することができる。
本実施形態に係るサブマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているサブマイクロ粒子としては、例えば、CH-0200(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.36μm)、HT-14(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.41μm)、CT-500(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.72μm)、Tn-Cu100(太陽日産社製、体積平均粒径0.12μm)が挙げられる。
(マイクロ銅粒子)
マイクロ銅粒子としては、粒径が2.0μm以上50μm以下の銅粒子を用いることができ、例えば、体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下の銅粒子を用いることができる。マイクロ銅粒子の体積平均粒径が上記範囲内であれば、無加圧接合用銅ペーストを焼結した際の体積収縮、ボイドの発生等を十分に低減でき、無加圧接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、2μm以上20μm以下であってもよく、2μm以上10μm以下であってもよく、3μm以上20μm以下であってもよく、3μm以上10μm以下であってもよい。
マイクロ銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、10質量%以上90質量%以下であってもよく、15質量%以上65質量%以下であってもよく、20質量%以上60質量%以下であってもよい。マイクロ銅粒子の含有量が、上記範囲内であれば、無加圧接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、80質量%以上とすることができる。サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計が上記範囲内であれば、無加圧接合用銅ペーストを焼結した際の体積収縮を十分に低減でき、無加圧接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
マイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。マイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状、及びこれらの凝集体が挙げられる。マイクロ銅粒子の形状は、中でも、フレーク状が好ましい。フレーク状のマイクロ銅粒子を用いることで、無加圧接合用銅ペースト内のマイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向することにより、無加圧接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、無加圧接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、フレーク状のマイクロ銅粒子としては、中でも、アスペクト比が4以上であってもよく、6以上であってもよい。
マイクロ銅粒子において、表面処理剤の処理の有無は特に限定されるものではない。分散安定性及び耐酸化性の観点から、マイクロ銅粒子は表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤は、接合時に除去されるものであってもよい。このような表面処理剤としては、例えば、ドデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、テトラエチレングリコール等の脂肪族アルコール;p-フェニルフェノール等の芳香族アルコール;オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミン;ステアロニトリル、デカニトリル等の脂肪族ニトリル;アルキルアルコキシシラン等のシランカップリング剤;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーンオリゴマー等の高分子処理材等が挙げられる。表面処理剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面処理剤の処理量は、粒子表面に一分子層以上の量であってもよい。このような表面処理剤の処理量は、マイクロ銅粒子の比表面積、表面処理剤の分子量、及び表面処理剤の最小被覆面積により変化する。表面処理剤の処理量は、通常0.001質量%以上である。マイクロ銅粒子の比表面積、表面処理剤の分子量、及び表面処理剤の最小被覆面積については、上述した方法により算出することができる。
上記サブマイクロ銅粒子のみから無加圧接合用銅ペーストを調製する場合、分散媒の乾燥に伴う体積収縮及び焼結収縮が大きいため、接合用銅ペーストの焼結時に被着面より剥離しやすくなり、半導体素子などの接合においては充分なダイシェア強度及び接続信頼性が得られにくい。上記マイクロ銅粒子のみから無加圧接合用銅ペーストを調製する場合、焼結温度が高温化し、400℃以上の焼結工程を必要とする傾向にある。サブマイクロ銅粒子とマイクロ銅粒子とを併用することで、無加圧接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮が抑制され、接合体は充分な接合強度を有することができる。無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示すという効果が得られる。
本実施形態に係るマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているマイクロ粒子としては、例えば、MA-C025KFD(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径7.5μm)、3L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径8.0μm)、1110F(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径3.8μm)、HWQ3.0μm(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径3.0μm)が挙げられる。
(上記の銅粒子以外のその他の金属粒子)
金属粒子としては、サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子以外のその他の金属粒子を含んでいてもよく、例えば、銅ナノ粒子、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金等の粒子を含んでいてもよい。銅粒子以外のその他の金属粒子は、体積平均粒径が0.01μm以上10μm以下であってもよく、0.01μm以上5μm以下であってもよく、0.05μm以上3μm以下であってもよい。その他の金属粒子を含んでいる場合、その含有量は、充分な接合性を得るという観点から、金属粒子の全質量を基準として、20質量%未満であってもよく、10質量%以下であってもよい。その他の金属粒子は、含まれなくてもよい。その他の金属粒子の形状は、特に限定されるものではない。
銅粒子以外の金属粒子を含む場合、複数種の金属が固溶又は分散した焼結体を得ることができるため、焼結体の降伏応力、疲労強度等の機械的な特性が改善され、接続信頼性が向上しやすい。また、複数種の金属粒子を添加することで、無加圧接合用銅ペーストの焼結体は、特定の被着体に対して充分な接合強度を有することができる。無加圧接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置のダイシェア強度及び接続信頼性が向上しやすい。
(分散媒)
分散媒は、300℃以上の沸点を有する溶媒を含む。無加圧接合用銅ペーストの焼結時において、焼結及び緻密化を妨げず、接合温度に達した際に速やかに蒸発・除去されるという観点から、300℃以上の沸点を有する溶媒の沸点としては、300℃以上450℃以下であってもよく、305℃以上400℃以下であってもよく、310℃以上380℃以上であってもよい。
300℃以上の沸点を有する溶媒は、含まれる金属粒子の分散性を向上させるため、金属粒子表面と親和性の高い構造を選ぶことが好ましい。金属粒子がアルキル基を含む表面処理剤で表面処理されている場合には、アルキル基を有する溶媒を選ぶことが好ましい。このような300℃以上の沸点を有する溶媒としては、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH、日本テルペン社製)、ステアリン酸ブチル、エキセパールBS(花王社製)、ステアリン酸ステアリル、エキセパールSS(花王社製)、ステアリン酸2-エチルヘキシル、エキセパールEH-S(花王社製)、ステアリン酸イソトリデシル、エキセパールTD-S(花王社製)、イソオクタデカノール、ファインオキソコール180(日産化学社製)、ファインオキソコール180T(日産化学社製)、2-ヘキシルデカノール、ファインオキソコール1600(日産化学社製)、トリブチリン、テトラエチレングリコール、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、メチルヘプタデカン、トリデシルシクロヘキサン、テトラデシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼン、ヘプタデシルベンゼン、ノニルナフタレン、ジフェニルプロパン、オクタン酸オクチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサン酸)、クエン酸トリブチル、ペンチルフェノール、セバシン酸ジブチル、オレイルアルコール、セチルアルコール、メトキシフェネチルアルコール、ベンジルフェノール、ヘキサデカニトリル、ヘプタデカニトリル、安息香酸ベンジル、シンメチリン等が挙げられる。
300℃以上の沸点を有する溶媒としては、分散性向上という観点から、表面処理剤とのハンセン溶解度パラメータが近いものを選ぶことが好ましい。表面処理剤として、有機酸、有機アミン、ヒドロキシル基含有ポリマー、ポリビニルピロリドン等が扱いやすいことから、300℃以上の沸点を有する溶媒は、ヒドロキシ基、エーテル基、及びエステル基からなる群から少なくとも1種の基を有していることが好ましい。ハンセン溶解度パラメータは、例えば、下記公開文献の巻末データベースから検索する、又は、データベース及びシミュレーション統合ソフトウエアHSPiPで検索/計算することができる。
公開文献:「HANSEN SOLUBILITY PARAMETERS:A USER’S HANDBOOK」(CRC Press,1999)
300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量は、無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として、2質量%以上とすることができる。300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量は、無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として、2.2質量%以上であってもよく、2.4質量%以上であってもよい。300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、上記範囲であれば、本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを焼結する際に、一定量の溶媒が無加圧接合用銅ペースト中に残留することができ、部材間の銅ペーストの可撓性及び付着性が維持されやすく、接合に用いる部材同士が異なる熱膨張率を有している場合でも、剥離なく接合できる傾向にある。300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量の上限は、特に限定されるものではない。焼結温度で分散媒が除去されるまでの時間を抑え、焼結時間を短くすることができるという観点から、無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として、9質量%以下であってもよい。
また、本実施形態の無加圧接合用銅ペーストにおいて、300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量は、無加圧接合用銅ペーストの全容量を基準として、8体積%以上であってもよく、17体積%以上であってもよく、23体積%以上であってもよい。300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、上記範囲であれば、本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを焼結する際に、一定量の溶媒が無加圧接合用銅ペースト中に残留することができ、部材間の銅ペーストの可撓性及び付着性が維持されやすく、接合に用いる部材同士が異なる熱膨張率を有している場合でも、剥離なく接合できる傾向にある。300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量の上限は、特に限定されるものではない。焼結温度で分散媒が除去されるまでの時間を抑え、焼結時間を短くすることができるという観点から、無加圧接合用銅ペーストの全容量を基準として、60体積%以下であってもよい。
分散媒は、300℃未満の沸点を有する溶媒を含んでいてもよい。300℃未満の沸点を有する溶媒としては、α-テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。300℃未満の沸点を有する溶媒は、焼結工程より前の乾燥工程又は昇温過程で容易に除去できる。分散媒は、300℃以上の沸点を有する溶媒及び300℃未満の沸点を有する溶媒から、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
分散媒の含有量は、金属粒子の全質量を100質量部として、5~50質量部であってもよい。分散媒の含有量が上記範囲内であれば、無加圧接合用銅ペーストをより適切な粘度に調整でき、また、銅粒子の焼結を阻害しにくい。
分散媒における300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量は、分散媒の全質量を基準として、20質量%以上100質量%以下であればよい。分散媒における300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が上記範囲内であれば、無加圧接合用銅ペーストの全質量に対する300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量を確保しやすい。
無加圧接合用銅ペースト組成物に含まれる分散媒の種類は、例えば、高温脱離ガスのガスクロマトグラフ-質量分析法、及びTOF-SIMSで分析できる。その他の分析方法としては、遠心分離により粒子成分を分離して得られる上澄みを通常の有機分析、例えば、FT-IR、NMR、液体クロマトグラフ及びこれらの組み合わせで同定しても良い。分散媒の種類の比率は、液体クロマトグラフ、NMR等で定量できる。
(添加剤)
無加圧接合用銅ペーストには、必要に応じて、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤等を適宜添加してもよい。
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストは、ペーストを25℃から300℃まで昇温させたときに残存する300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、300℃まで昇温させたときの無加圧接合用銅ペーストの質量を基準として、1質量%以上であることが好ましい。昇温速度は、9.2(℃/分)とすることができる。この場合、部材間の銅ペーストの可撓性を維持させることが容易となり、熱膨張率の異なる部材同士を接合するときに熱膨張率差による剪断力が働いた場合であっても、銅ペーストが部材に対して変形・追随できるため、強固に接合することができる傾向にある。ペーストを25℃から300℃まで昇温させたときに残存する300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量の上限は特に限定されるものではなく、焼結温度で分散媒が除去されるまでの時間を抑え、焼結時間を短くすることができるという観点から、9質量%以下であってもよい。
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストは、接合時に十分な可撓性を有することができるため、2つの部材間に存在する無加圧接合用銅ペーストを250℃以上350℃未満の温度で加熱したときに、マイクロ銅粒子及びサブマイクロ銅粒子が焼結して金属結合を形成し、2つの部材間をダイシェア強度10MPa以上、熱伝導率100W/(m・K)以上で接合することができる。
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストの一態様としては、上記金属粒子が、体積平均粒径が0.01μm以上0.8μm以下であるサブマイクロ銅粒子と、体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下であるマイクロ銅粒子を含み、分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を含み、300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として、2質量%以上である、無加圧接合用銅ペーストが挙げられる。
上記無加圧接合用銅ペーストとしては、体積平均粒径が0.01μm以上0.8μm以下であるサブマイクロ銅粒子と、体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下であるマイクロ銅粒子と、300℃以上の沸点を有する溶媒を含む分散媒と、必要に応じてその他の上記成分を配合してなり、300℃以上の沸点を有する溶媒の配合量が、無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として、2質量%以上であるものが挙げられる。
焼結性を有するサブマイクロ銅粒子と補強効果を有するマイクロ銅粒子とを通常の沸点300℃未満の分散媒と混合したペースト状組成物であっても、接合する部材同士に顕著な熱膨張率の差が無ければ、高強度に接合することができる(例えば、表1における比較例1のNiメッキCu板に対するダイシェア強度を参照)。しかしながら、このようなペースト状組成物を熱膨張率の異なる部材同士の接合に用いた場合には、接合力が大きく低下しやすい(例えば、表1における比較例1のNiメッキSiチップに対するダイシェア強度を参照)。接合力の低下の要因としては、接合温度よりも分散媒の沸点が低いと昇温過程で分散媒が蒸発し、接合温度に達する前にペースト状組成物が乾固した脆い組成物になってしまうことが考えられる。この状態で熱膨張率の異なるそれぞれの部材に熱応力が働くと、乾固した脆い組成物は部材に追随できず剥離又は亀裂を生じるため、結果として接合力が低下すると考えられる。
接合温度において、分散媒が残留できる300℃以上の沸点を有する溶媒を含むことで、昇温過程で好ましくは1質量%以上の300℃以上の沸点を有する溶媒が無加圧接合用銅ペースト中に残留することができるため、無加圧接合用銅ペーストに可撓性及び付着姓を与えることができる。そのため、接合時に熱膨張率の異なるそれぞれの部材に熱応力が働いた場合であっても、無加圧接合用銅ペーストが変形・追随して、部材を剥離無く接合できる。
(無加圧接合用銅ペーストの調製)
無加圧接合用銅ペーストは、上述のサブマイクロ銅粒子、マイクロ銅粒子、その他の金属粒子及び任意の添加剤を、分散媒である300℃以上の沸点を有する溶媒に混合して調製することができる。各成分の混合後に、撹拌処理を行ってもよい。無加圧接合用銅ペーストは、分級操作により分散液の最大粒径を調整してもよい。このとき、分散液の最大粒径は20μm以下とすることができ、10μm以下とすることもできる。
無加圧接合用銅ペーストは、サブマイクロ銅粒子、表面処理剤、分散媒である300℃以上の沸点を有する溶媒をあらかじめ混合して、分散処理を行ってサブマイクロ銅粒子の分散液を調製し、更にマイクロ銅粒子、その他の金属粒子及び任意の添加剤を混合して調製してもよい。このような手順とすることで、サブマイクロ銅粒子の分散性が向上してマイクロ銅粒子との混合性が良くなり、無加圧接合用銅ペーストの性能をより向上させることができる。サブマイクロ銅粒子の分散液を分級操作によって凝集物を除去してもよい。
撹拌処理は、撹拌機を用いて行うことができる。撹拌機としては、例えば、石川式攪拌機、シルバーソン攪拌機、キャビテーション攪拌機、自転公転型攪拌装置、超薄膜高速回転式分散機、超音波分散機、ライカイ機、二軸混練機、ビーズミル、ボールミル、三本ロールミル、ホモミキサー、プラネタリーミキサー、超高圧型分散機、薄層せん断分散機が挙げられる。
分級操作は、例えば、ろ過、自然沈降、遠心分離を用いて行うことができる。ろ過用のフィルタとしては、例えば、水櫛、金属メッシュ、メタルフィルター、ナイロンメッシュが挙げられる。
分散処理としては、例えば、薄層せん断分散機、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、ハイシアミキサー、狭ギャップ三本ロールミル、湿式超微粒化装置、超音速式ジェットミル、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
無加圧接合用銅ペーストは、成型する場合には各々の印刷・塗布手法に適した粘度に調整してもよい。無加圧接合用銅ペーストの粘度としては、例えば、25℃におけるCasson粘度が0.05Pa・s以上2.0Pa・s以下であってもよく、0.06Pa・s以上1.0Pa・s以下であってもよい。
<接合体及び半導体装置>
以下、図面を参照しながら好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
図1は、本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを用いて製造される接合体の一例を示す模式断面図である。本実施形態の接合体100は、第一の部材2と、第一の部材とは異なる熱膨張率を有する第二の部材3と、第一の部材と第二の部材とを接合する上記無加圧接合用銅ペーストの焼結体1と、を備える。
第一の部材2及び第二の部材3としては、例えば、IGBT、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS-FET、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子、リードフレーム、金属板貼付セラミックス基板(例えばDBC)、LEDパッケージ等の半導体素子搭載用基材、銅リボン、金属ブロック、端子等の給電用部材、放熱板、水冷板等が挙げられる。
第一の部材2及び第二の部材3は、無加圧接合用銅ペーストの焼結体と接する面4a及び4bに金属を含んでいてもよい。金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、鉛、錫、コバルト等が挙げられる。金属は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、焼結体と接する面は、上記金属を含む合金であってもよい。合金に用いられる金属としては、上記金属の他に、亜鉛、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、チタン、クロム、鉄、モリブデン等が挙げられる。焼結体と接する面に金属を含む部材としては、例えば、各種金属メッキを有する部材、ワイヤ、金属メッキを有するチップ、ヒートスプレッダ、金属板が貼り付けられたセラミックス基板、各種金属メッキを有するリードフレーム又は各種金属からなるリードフレーム、銅板、銅箔が挙げられる。
接合体のダイシェア強度は、第一の部材及び第二の部材を十分に接合するという観点から、10MPa以上であってもよく、15MPa以上であってもよく、20MPa以上であってもよく、30MPa以上であってもよい。ダイシェア強度は、万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)等を用いて測定することができる。
無加圧接合用銅ペーストの焼結体の熱伝導率は、放熱性及び高温化での接続信頼性という観点から、100W/(m・K)以上であってもよく、120W/(m・K)以上であってもよく、150W/(m・K)以上であってもよい。熱伝導率は、無加圧接合用銅ペーストの焼結体の熱拡散率、比熱容量、及び密度から、算出することができる。
第一の部材と第二の部材の熱膨張率の差は、2ppm~30ppmであってもよく、3ppm~23ppmであってもよく、5ppm~15ppmであってもよい。
次に、本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを用いた接合体の製造方法について説明する。
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを用いた接合体の製造方法は、第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、上記無加圧接合用銅ペースト、及び第一の部材とは異なる熱膨張率を有する第二の部材がこの順に積層された積層体を用意し、無加圧接合用銅ペーストを、第一の部材の自重、又は第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える。第一の部材の自重が働く方向とは、重力が働く方向ということもできる。
上記積層体は、例えば、第二の部材の必要な部分に本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを設け、次いで無加圧接合用銅ペースト上に第一の部材を配置することにより用意することができる。
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを、第二の部材の必要な部分に設ける方法としては、無加圧接合用銅ペーストを堆積させられる方法であればよい。このような方法としては、例えば、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、ジェットプリンティング法、ディスペンサー、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ソフトリソグラフ、バーコート、アプリケータ、粒子堆積法、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、電着塗装等を用いることができる。無加圧接合用銅ペーストの厚みは、1μm以上1000μm以下であってもよく、10μm以上500μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下であってもよく、10μm以上3000μm以下であってもよく、15μm以上500μm以下であってもよく、20μm以上300μm以下であってもよく、5μm以上500μm以下であってもよく、10μm以上250μm以下であってもよく、15μm以上150μm以下であってもよい。
第二の部材上に設けられた無加圧接合用銅ペーストは、焼結時の流動及びボイドの発生を抑制する観点から、適宜乾燥させてもよい。乾燥時のガス雰囲気は大気中であってもよく、窒素、希ガス等の無酸素雰囲気中であってもよく、水素、ギ酸等の還元雰囲気中であってもよい。乾燥方法は、常温放置による乾燥であってもよく、加熱乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよい。加熱乾燥又は減圧乾燥には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉、熱板プレス装置等を用いることができる。乾燥の温度及び時間は、使用した分散媒の種類及び量に合わせて適宜調整してもよい。乾燥の温度及び時間としては、例えば、50℃以上180℃以下で1分以上120分間以下乾燥させてもよい。
無加圧接合用銅ペースト上に第一の部材を配置する方法としては、例えば、チップマウンター、フリップチップボンダー、カーボン製又はセラミックス製の位置決め冶具が挙げられる。
積層体を加熱処理することで、無加圧接合用銅ペーストの焼結を行う。加熱処理には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等を用いることができる。
焼結時のガス雰囲気は、焼結体、第一の部材及び第二の部材の酸化抑制の観点から、無酸素雰囲気であってもよい。焼結時のガス雰囲気は、無加圧接合用銅ペーストの銅粒子の表面酸化物を除去するという観点から、還元雰囲気であってもよい。無酸素雰囲気としては、例えば、窒素、希ガス等の無酸素ガスの導入、又は真空下が挙げられる。還元雰囲気としては、例えば、純水素ガス中、フォーミングガスに代表される水素及び窒素の混合ガス中、ギ酸ガスを含む窒素中、水素及び希ガスの混合ガス中、ギ酸ガスを含む希ガス中等が挙げられる。
加熱処理時の到達最高温度は、第一の部材及び第二の部材への熱ダメージの低減及び歩留まりを向上させるという観点から、250℃以上450℃以下であってもよく、250℃以上400℃以下であってもよく、250℃以上350℃以下であってもよい。到達最高温度が、200℃以上であれば、到達最高温度保持時間が60分以下において焼結が充分に進行する傾向にある。
到達最高温度保持時間は、分散媒を充分に揮発させ、また、歩留まりを向上させるという観点から、1分以上60分以下であってもよく、1分以上40分未満であってもよく、1分以上30分未満であってもよい。
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを用いることにより、積層体を焼結する際、無加圧での接合を行う場合であっても、接合体は充分な接合強度を有することができる。すなわち、無加圧接合用銅ペーストに積層した第一の部材による自重のみ、又は第一の部材の自重に加え、0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の圧力を受けた状態で、充分な接合強度を得ることができる。焼結時に受ける圧力が上記範囲内であれば、特別な加圧装置が不要なため歩留まりを損なうこと無く、ボイドの低減、ダイシェア強度及び接続信頼性をより一層向上させることができる。無加圧接合用銅ペーストが0.01MPa以下の圧力を受ける方法としては、例えば、第一の部材上に重りを載せる方法等が挙げられる。
上記接合体において、第一の部材及び第二の部材の少なくとも一方は、半導体素子であってもよい。半導体素子としては、例えば、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等からなるパワーモジュール、発信機、増幅器、LEDモジュール等が挙げられる。このような場合、上記接合体は半導体装置となる。得られる半導体装置は充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。
半導体装置において、第一の部材と第二の部材の熱膨張率の差は、第一の部材と第二の部材の熱膨張率の差は、2ppm~30ppmであってもよく、3ppm~23ppmであってもよく、5ppm~15ppmであってもよい。
図2は、本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを用いて製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。図2に示す半導体装置110は、リードフレーム5a上に、本実施形態に係る無加圧接合用銅ペーストの焼結体1を介して接続された半導体素子8と、これらをモールドするモールドレジン7とからなる。半導体素子8は、ワイヤ6を介してリードフレーム5bに接続されている。
本実施形態の無加圧接合用銅ペーストを用いて製造される半導体装置としては、例えば、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等からなるパワーモジュール、発信機、増幅器、高輝度LEDモジュール、半導体レーザーモジュール、ロジック、センサー等が挙げられる。
上記半導体装置は、上述した接合体の製造方法と同様にして製造することができる。すなわち、半導体装置の製造方法は、第一の部材及び第二の部材の少なくとも一方に半導体素子を用い、第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、上記無加圧接合用銅ペースト、及び第二の部材がこの順に積層された積層体を用意し、無加圧接合用銅ペーストを、第一の部材の自重、又は第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える。例えば、リードフレーム5a上に無加圧接合用銅ペーストを設け、半導体素子8を配置して加熱する工程が挙げられる。得られる半導体装置は、無加圧での接合を行った場合であっても、充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。本実施形態の半導体装置は、充分な接合力を有し、熱伝導率及び融点が高い銅の焼結体を備えることにより、充分なダイシェア強度を有し、接続信頼性に優れるとともに、パワーサイクル耐性にも優れたものになり得る。
[実施例1]
(無加圧接合用銅ペーストの調製)
サブマイクロ銅粒子としてCH-0200(50%体積平均粒径 0.36μm、三井金属社製)を15.84g(52.8質量%)、300℃以上の沸点を有する溶媒としてイソボルニルシクロヘキサノール(沸点308℃、以下、MTPHと略す)を3.6g(12質量%)秤量し、自動乳鉢で5分間混合した。さらにこの混合物を、超音波ホモジナイザー(US-600、日本精機製社製)により19.6kHz、600Wで10分間分散処理を行った。
分散処理した混合物をポリ瓶に移した後、マイクロ銅粒子としてMA-C025KFD(50%体積平均粒径 5μm、三井金属社製)を10.56g(35.2質量%)秤量して加え、2000rpm、2分間、減圧の条件でシンキー社製攪拌機(あわとり練太郎 ARE-310)にかけて無加圧接合用銅ペーストを得た。
(固形分測定)
磁性るつぼに無加圧接合用銅ペーストを取り、磁性るつぼの風袋重量と無加圧接合用銅ペーストを入れた磁性るつぼの重量の差から、無加圧接合用銅ペーストの重量を得た。600℃に加熱したマッフル炉に、無加圧接合用銅ペーストを入れた磁性るつぼを設置し、1時間処理した。処理後のるつぼ重量と磁性るつぼの風袋重量の差から、無加圧接合用銅ペーストの不揮発分の重量を得た。無加圧接合用銅ペーストの固形分(質量%)は以下の式から算出した。
無加圧接合用銅ペーストの固形分(質量%)={(無加圧接合用銅ペーストの不揮発分の重量)/(加熱前の無加圧接合用銅ペーストの重量)}×100
(残溶媒割合の測定)
室温(25℃)から300℃まで昇温したときにおける、無加圧接合用銅ペースト中に残存する分散媒の割合(残溶媒割合)を計測した。銅板及びチップの質量を計測後、銅板上に無加圧接合用銅ペーストを印刷し、その上にチップを搭載し、積層体を得た。この段階で積層体の質量を計測した。積層体を窒素下のオーブンで25℃から300℃まで30分で昇温した後、積層体を取り出し、真鍮ブロック上で急速冷却した。冷却後の積層体の質量を測定し、300℃到達時の質量とした。300℃到達時の残溶媒割合を以下の式から算出した。
Figure 0007107355000001
(ダイシェア強度試験用接合サンプルの作製)
(Siチップを用いた接合サンプル)
3×3mmの正方形の開口を有する厚さ75μmのステンレスマスクとスキージを用いて、無加圧接合用銅ペーストを、サイズ25×20×厚さ3mmの銅板上にステンシル印刷した。無加圧接合用銅ペーストの印刷物上に、厚さ400μm、サイズ3×3mmの接合面全面にチタン/ニッケルがこの順でスパッタされたSiチップ(被着面ニッケル)をニッケル面が無加圧接合用銅ペースト組成物に接するように置き、チップをピンセットで軽く押さえてニッケル面と無加圧接合用銅ペーストを密着させた。これを管状炉に設置し、内部をアルゴンガス置換し、その後水素を導入して昇温30分、300℃、10分の条件で焼結した。その後、水素を止め、アルゴン気流下で50℃以下まで冷却し、空気中に接合サンプルを取り出した。
(Cu板を用いた接合サンプル)
厚さ250μm、サイズ2×2mmの全面にニッケルがめっきされたCu板(被着面ニッケル)を用いた以外は上記と同様にして接合サンプルを作製した。
(ダイシェア強度試験)
ダイシェア強度サンプルの接合強度は、ダイシェア強度により評価した。接合サンプルを、DS-100ロードセルを装着した万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、デイジ・ジャパン株式会社製)を用い、測定スピード5mm/min、測定高さ50μmでSiチップ、又はCu板を水平方向に押し、ダイシェア強度を測定した。ダイシェア強度20MPa以上を接合良好とした。
[比較例1]
イソボルニルシクロヘキサノールを用いず、α-テルピネオール(沸点220℃)を9.0質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして無加圧接合用銅ペーストを得た。この無加圧接合用銅ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシェア強度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007107355000002
分散媒の一部を沸点308℃のMTPHとした実施例1のサンプルでは、Siチップに対して31MPaの良好なダイシェア強度を示した。一方、300℃以上の沸点を有する溶媒を含まない無加圧接合用銅ペーストを用いた比較例1のサンプルでは、Siチップに対するダイシェア強度は9MPaであり、接合不良となった。
残溶媒割合を測定すると、実施例1では300℃到達時にも1.2質量%の溶剤が残存していた。これは体積では10体積%になり、この残溶媒が、銅板とSiチップとの熱膨張率差により無加圧接合用銅ペーストにかかる変位を十分吸収できるだけの可撓性及び密着性を、無加圧接合用銅ペーストに与えたと考えられる。一方、比較例1では300℃到達時における残存する溶媒は0.3質量%であり、また体積では3体積%だった。そのため、比較例1の無加圧接合用銅ペーストでは、粒子間に十分な溶剤が存在せず、熱膨張率差による変位で無加圧接合用銅ペーストがチップと剥離してダイシェア強度が低下したと考えられる。
銅基板とSiチップとを接合したダイボンド部のSiチップ/ダイボンド層界面の断面SEM像を観察した。SEM像の観察に用いた試験サンプルは、(ダイシェア強度試験用接合サンプルの作製)で作製したものを用いた。実施例1の断面SEM像を図3に示し、比較例1の断面SEM像を図4に示す。実施例1のサンプルでは、Ti/Niメッキ層10を有するシリコンチップ9と、無加圧接合用銅ペーストの焼結体11とは良好に接合していた。一方、比較例1のサンプルでは、Ti/Niメッキ層10を有するシリコンチップ9と、無加圧接合用銅ペーストの焼結体11との間に剥離部(クラック)12が生じたため、接合不良となっていた。これは、銅基板とSiチップの熱膨張率の差による変位で、接合前にSiチップ/ダイボンド層界面で剥離したものと考えられる。
[実施例2~5、比較例2]
(銅ペースト組成物の調製)
300℃以上の沸点を有する溶媒としてイソボルニルシクロヘキサノール(沸点308℃、以下、MTPHと略す)、その他の溶媒としてα-テルピネオール(沸点220℃)を表2の割合に従って混合した。そこに、マイクロ銅粒子としてMA-C025KFD(50%体積平均粒径5μm、三井金属社製)を10.56g(35.2質量%)、サブマイクロ銅粒子としてCH-0200(50%体積平均粒径0.36μm、三井金属社製)を15.84g(52.8質量%)を秤量し、自動乳鉢で5分間混合した。混合物をポリ瓶に移した後、2000rpm、2分間、減圧の条件でシンキー社製攪拌機(あわとり練太郎 ARE-310)にかけて無加圧接合用銅ペースト組成物を得た。
(ダイシェア試験サンプル作製)
実施例1と同様にしてサイズ3×3mmの接合面全面にチタン/ニッケルがこの順でスパッタされたSiチップを用いた接合サンプル(Si)を作製した。さらにサイズ2×2mmの全面にニッケルがめっきされた銅板を用いて,実施例1と同様にして接合した接合サンプル(銅板)を作製した。それぞれの接合サンプルに対し、ダイシェア強度を実施例1と同様にして測定した。表2及び図5に結果を示す。
Figure 0007107355000003
[実施例6]
300℃以上の沸点を有する溶媒としてトリブチリン(沸点310℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして無加圧接合用銅ペーストを調製した。この無加圧接合用銅ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサイズ3×3mmの接合面全面にチタン/ニッケルがこの順でスパッタされたSiチップを用いた接合サンプル(Si)を作製し、ダイシェア強度を測定した。その結果、ダイシェア強度は20MPaと良好な値を示した。
[実施例7]
300℃以上の沸点を有する溶媒としてファインオキソコール180(イソオクタデカノール、沸点302℃、日産化学工業社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして無加圧接合用銅ペーストを調製した。この無加圧接合用銅ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサイズ3×3mmの接合面全面にチタン/ニッケルがこの順でスパッタされたSiチップを用いた接合サンプル(Si)を作製し、ダイシェア強度を測定した。その結果、ダイシェア強度は23MPaと良好な値を示した。
[実施例8]
300℃以上の沸点を有する溶媒としてステアリン酸ブチル(沸点343℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして無加圧接合用銅ペーストを調製した。この無加圧接合用銅ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサイズ3×3mmの接合面全面にチタン/ニッケルがこの順でスパッタされたSiチップを用いた接合サンプル(Si)を作製し、ダイシェア強度を測定した。その結果、ダイシェア強度は25MPaと良好な値を示した。
[実施例9]
300℃以上の沸点を有する溶剤組成物としてオクタン酸オクチル(沸点311℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして無加圧接合用銅ペーストを調製した。この無加圧接合用銅ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサイズ3×3mmの接合面全面にチタン/ニッケルがこの順でスパッタされたSiチップを用いた接合サンプル(Si)を作製し、ダイシェア強度を測定した。その結果、ダイシェア強度は26MPaと良好な値を示した。
[比較例3]
分散媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃、以下DEGBEと略す)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして無加圧接合用銅ペーストを調製した。この無加圧接合用銅ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサイズ3×3mmの接合面全面にチタン/ニッケルがこの順でスパッタされたSiチップを用いた接合サンプル(Si)を作製し、ダイシェア強度を測定した。その結果、ダイシェア強度は6MPaであり、接続不良と判断した。
[比較例4]
分散媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃、以下BDGACと略す)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして無加圧接合用銅ペーストを調製した。この無加圧接合用銅ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサイズ3×3mmの接合面全面にチタン/ニッケルがこの順でスパッタされたSiチップを用いた接合サンプル(Si)を作製し、ダイシェア強度を測定した。その結果、ダイシェア強度は5MPaであり、接続不良と判断した。
表3に実施例6~9及び比較例3、4の結果を示す。図6には、実施例1、6、7、8、9及び比較例1、3、4の無加圧接合用銅ペーストを用いた接合サンプル(Si)のダイシェア強度を溶媒の沸点に対してプロットした。300℃以上の沸点を有する溶媒を用いた実施例では、いずれも20MPa以上の良好なダイシェア強度が得られた。一方、300℃より低い沸点を有する溶媒を用いた比較例ではいずれも9MPa以下の低いダイシェア強度となり、接合不良だった。
Figure 0007107355000004
1…無加圧接合用銅ペーストの焼結体、2…第一の部材、3…第二の部材、5a、5b…リードフレーム、6…ワイヤ、7…モールドレジン、8…半導体素子、9…シリコンチップ、10…Ti/Niメッキ層、11…無加圧接合用銅ペーストの焼結体、12…剥離部。

Claims (11)

  1. 金属粒子と、分散媒と、を含む無加圧接合用銅ペーストであって、
    前記金属粒子が、体積平均粒径が0.01μm以上0.8μm以下のサブマイクロ銅粒子と、体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下のマイクロ銅粒子とを含み、
    前記マイクロ銅粒子の形状がフレーク状であり、
    前記分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を含み、前記300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、前記無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として、2質量%以上であり、
    前記分散媒の含有量が、前記金属粒子の全質量を100質量部として、5~50質量部である、無加圧接合用銅ペースト。
  2. 金属粒子と、分散媒と、を含む無加圧接合用銅ペーストであって、
    前記金属粒子が、体積平均粒径が0.01μm以上0.8μm以下のサブマイクロ銅粒子と、体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下のマイクロ銅粒子とを含み、
    前記マイクロ銅粒子の形状がフレーク状であり、
    前記分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を含み、前記300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、前記無加圧接合用銅ペーストの全容量を基準として、8体積%以上であり、
    前記分散媒の含有量が、前記金属粒子の全質量を100質量部として、5~50質量部である、無加圧接合用銅ペースト。
  3. 前記サブマイクロ銅粒子の含有量が、前記サブマイクロ銅粒子の質量及び前記マイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、30質量%以上85質量%以下である、請求項1又は2に記載の無加圧接合用銅ペースト。
  4. 前記サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.2μm以上0.5μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の無加圧接合用銅ペースト。
  5. 前記300℃以上の沸点を有する溶媒が、ヒドロキシ基、エーテル基、及びエステル基からなる群から選択された少なくとも一種の基を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の無加圧接合用銅ペースト。
  6. 前記300℃以上の沸点を有する溶媒がイソボルニルシクロヘキサノールである、請求項5に記載の無加圧接合用銅ペースト。
  7. 2つの部材間に存在する無加圧接合用銅ペーストを250℃以上350℃未満の温度で加熱したときに、前記マイクロ銅粒子及び前記サブマイクロ銅粒子が焼結して金属結合を形成し、前記2つの部材間がダイシェア強度10MPa以上、熱伝導率100W/(m・K)以上で接合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の無加圧接合用銅ペースト。
  8. 25℃から300℃まで昇温させたときに残存する前記300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が、300℃まで昇温させたときの無加圧接合用銅ペーストの質量を基準として、1質量%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の無加圧接合用銅ペースト。
  9. 第一の部材と、前記第一の部材とは異なる熱膨張率を有する第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合する請求項1~8のいずれか一項に記載の無加圧接合用銅ペーストの焼結体と、を備える、接合体。
  10. 第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、請求項1~8のいずれか一項に記載の無加圧接合用銅ペースト、及び前記第一の部材とは異なる熱膨張率を有する第二の部材がこの順に積層されている積層体を用意し、前記無加圧接合用銅ペーストを、前記第一の部材の自重、又は前記第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える、接合体の製造方法。
  11. 第一の部材と、前記第一の部材とは異なる熱膨張率を有する第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合する請求項1~8のいずれか一項に記載の無加圧接合用銅ペーストの焼結体と、を備え、
    前記第一の部材及び前記第二の部材の少なくとも一方が半導体素子である、半導体装置。
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