JP7106935B2 - ミリ波透過性加飾品、銀鏡膜及びその形成方法 - Google Patents
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Description
基材にアンダーコート層を形成する工程Aa又は基材にプラズマ処理する工程Abと、
基材に塩化スズ溶液を塗布してから水洗する工程Bと、
前記基材に銀鏡膜形成液を塗布し銀鏡膜の一部を形成してから水洗する工程D1と、
前記基材に酸溶液を塗布してから水洗する工程βと、
前記基材に銀鏡膜形成液を塗布し銀鏡膜のさらに一部を形成してから水洗する工程D2とを含み、
工程βから工程D2までを1回以上繰り返し行って銀鏡膜を完成させることを特徴とするミリ波透過性銀鏡膜の形成方法。
後述する実施例1~4のイメージ図である図1に示すように、
工程Aa又はAbにより、次工程のスズ粒子と基材との密着性が向上する。
工程Bにより、基材の表面にスズ微粒子が付着する。
工程D1により、主に、スズ微粒子を起点として基材の表面に銀粒子が付着し、銀鏡膜の一部が形成される。銀鏡膜の一部であるから、銀粒子は小さく、互いに離間しているものが多い。また、スズ微粒子が無いところにも銀粒子が付着することがある。
工程βにより、工程D1(又はD2)で付着した銀粒子のうち付着力が弱い銀粒子(特にスズの微粒子が無いところに付着した銀粒子)が除去され、銀粒子の密度が低くなる。
工程D2により、工程D1で付着した銀粒子に被さるように銀が付着して、銀粒子が大きくなる。銀粒子どうしは、互いにくっつくものもあるが、依然として離間しているものが多い。また、スズ微粒子が無いところにも銀粒子が付着することがある。
工程βから工程D2までを1回以上繰り返し行うことで、光輝性とミリ波透過性とを有する銀鏡膜を完成させることができる。
銀粒子からなる銀鏡膜であって、銀粒子どうしは、互いにくっつくものもあるが、離間しているものもあり、L*a*b*表色系のL*値が65以上であり、表面抵抗値が1×1011Ω/□以上(好ましくは3×1011Ω/□以上)であり、ミリ波透過減衰量が2dB以下である銀鏡膜。
基材と、基材の表面に形成された銀粒子からなる銀鏡膜であって、銀粒子どうしは、互いにくっつくものもあるが、離間しているものもあり、L*a*b*表色系のL*値が65以上であり、表面抵抗値が1×1011Ω/□以上(好ましくは3×1011Ω/□以上)であり、ミリ波透過減衰量が2dB以下である銀鏡膜とを含むミリ波透過性加飾品。
工程Bよりも前に、クッション性、平滑性、基材との密着性等を向上させるためのアンダーコート層を形成する工程(Aa)を行ってもよい。
また、工程Bよりも前に、濡れ性、基材との密着性等を向上させるためのプラズマ処理工程(Ab)を行ってもよい。
工程Bと工程D1との間で、表面調整剤として変性シロキサンを塗布し浸透させる工程Cを行ってもよい。
工程Bの塩化スズ溶液が酸溶液である場合には、工程βに工程Bの塩化スズ溶液を用いてもよいし、工程βとして工程Bをそのまま行ってもよい。また、工程βは、塩化スズ酸溶液以外の酸溶液で行ってもよい。
工程D1と工程D2は、銀鏡膜の一部を形成する点において共通するが、各工程の内容は、同一でもよいし、銀鏡膜形成液や塗布量等において相違してもよい。
最後に行う工程D2の後に、銀鏡膜の未反応物除去及び銀の安定化(変色防止)を目的として、銀鏡膜の腐食防止処理(工程E)を行ってもよい。
さらに、工程Eの後に、銀鏡膜の保護等を目的として、トップコート層を形成する工程Fを行ってもよい。
基材の材料としては、特に限定されないが、樹脂、ガラス、セラミックス、木材等を例示できる。
加飾品(用途)としては、特に限定されないが、内側にミリ波レーダー装置が配置される自動車用外装樹脂部品が好適であり、ラジエータグリル、グリルカバー、サイドモール、バックパネル、バンパー、エンブレム等を例示できる。
基材に、アンダーコート液を塗布して、アンダーコート層を形成した。
アンダーコート液の材料として、次の主剤、硬化剤、希釈剤及びレベリング剤を使用した。
・主剤:表面化工研究所社の製品名「MFSアンダーコート主剤」製品番号「MFS-51」(アクリル樹脂40%、トルエン21.5%、キシレン(混合)16.5%、酢酸イソブチル22%の混合物)
・硬化剤:表面化工研究所社の製品名「MFSアンダーコート硬化剤21」製品番号「MFS-52AK21」(イソシアネートプレポリマー60%、酢酸エチル40%の混合物)
・希釈剤:表面化工研究所社の製品名「MFSアンダーコート希釈剤」製品番号「MFS-53」(トルエン3.0%、キシレン23.4%、エチルベンゼン12.6%、酢酸ブチル25~30%、酢酸エチル5~10%、メチルイソブチルケトン1~5%、ジアセトンアルコール10~15%、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート14.0%の混合物)
・レベリング剤:表面化工研究所社の製品名「MFSアンダーコートレベリング剤」製品番号「MFS-58」(ポリシロキサンとワキ防止剤2%、1,3,5-トリメチルベンゼン12%、1,2,4-トリメチルベンゼン28%、1,2,3-トリメチルベンゼン5%、エチルベンゼン24%、キシレン4%、ジイソブチルケトン15%、ブチルグリコレート3%の混合物)である。
塗布後、恒温槽にて65℃×30分保持して、硬化させるとともに乾燥させて、膜厚15~25μmのアンダーコート層を形成した。
その後、イオン交換水で水洗した。
基材に、芝浦メカトロニクス社製スパッタリング装置i-millerIIにより、RF100W・O2プロセスガス50sccm・60秒の条件で、プラズマ処理した。
銀析出促進及び付着性向上を目的として、表面調整液その1を吹き付けて、基材ないしアンダーコート層の表面調整をした。
表面調整液の材料として、次の表面調整剤a,bを使用した。
・表面調整剤a:表面化工研究所社の製品名「MFS表面調整剤A」製品番号「MFS-40A」(第一塩化錫~10%、塩酸~5%の水溶液)を、イオン交換水で15倍希釈した(例;表面調整剤A10mL、イオン交換水140mL)。
・表面調整剤b:表面化工研究所社の製品名「MFS表面調整剤B」製品番号「MFS-40B」(ナトリウム塩~1%の水溶液)を、イオン交換水で15倍希釈した(例;表面調整剤B10mL、イオン交換水140mL)
その後、10秒間静置して浸透させ、イオン交換水で水洗し、エアー乾燥させ、再びイオン交換水で水洗した。
さらに付着性向上を目的として、表面調整液その2を吹き付けて、基材ないしアンダーコート層の表面調整をした。
表面調整液の材料として、次の表面調整剤cを使用した。
・表面調整剤c:表面化工研究所社の製品名「MFS表面調整剤C」製品番号「MFS-40C」(変性シロキサン)を、イオン交換水で50倍希釈した(例;表面調整剤C5mL、イオン交換水245mL)。
その後、10秒間静置して浸透させた。
基材(アンダーコート又はプラズマ処理後)に、銀鏡膜形成液を塗布(銀鏡塗装)して、銀鏡膜の一部を形成した。
銀鏡膜形成液の材料として、次の銀主液、銀副液、及び還元液を使用した。
・銀主液:表面化工研究所社の製品名「MFS銀主液」、製品番号「MFS-10」(硝酸銀8.4%、水酸化アンモニウム~5%の水溶液)
・銀副液:表面化工研究所社の製品名「MFS銀副液」、製品番号「MFS-20」(苛性ソーダ~10%、水酸化アンモニウム~5%の水溶液)
・還元液:表面化工研究所社の製品名「MFS還元剤」、製品番号「MFS-30」(多糖類5~15%、塩酸~5%の水溶液)
還元液をイオン交換水で30倍希釈(例;還元液5mL、水145mL)し、もってアルデヒドを0.085~0.258モル/L含むものとなった還元液(希釈液)を作製した。
アンダーコート上で、次の銀鏡反応式により銀粒子が析出し、銀鏡膜が形成された。
R-CHO+2[Ag(NH3)2]++2OH-
→ R-COOH+2Ag↓+4NH3+H2O
ここで、R-CHOは、還元液(多糖類が塩酸で加水分解して単糖類となっている。)に含まれるアルデヒドである。
[Ag(NH3)2]+は、銀鏡液に含まれるアンモニア性硝酸銀である。
その後、イオン交換水で水洗した。
工程βは、付着力が弱い銀粒子を除去するために、前記基材に酸溶液を塗布してから水洗する工程である。
本実施例では、上記工程Bの表面調整剤aが酸溶液であることから、工程Bをそのまま工程βとして行った。
上記工程D1と同一内容の工程D2を行い、銀鏡膜の一部を形成した。
上記工程D1と同一の銀鏡液と還元液とを二頭スプレーガンにより同時にスプレーし、空中で混合させて、アンダーコートの表面に30秒塗布した。
アンダーコート上で、上記工程D1で記した銀鏡反応式により銀粒子が析出し、フルグロス銀鏡膜(一般的な光輝性の銀鏡膜)が形成された。
その後、イオン交換水で水洗した。
銀鏡膜形成液の材料として、次の銀主液、銀副液、及び還元液を使用した。
・銀主液:表面化工研究所社の製品名「MFS銀主液L」、製品番号「MFS-10L」
・銀副液:表面化工研究所社の製品名「MFS銀副液L」、製品番号「MFS-20L」
・還元液:表面化工研究所社の製品名「MFS還元剤L」、製品番号「MFS-30L」
還元液をイオン交換水で30倍希釈(例;還元液5mL、水145mL)し、もってアルデヒドを0.085~0.258モル/L含むものとなった還元液(希釈液)を作製した。
アンダーコート上で、上記工程D1で記した銀鏡反応式により銀粒子が析出し、ハーフグロスの銀鏡膜が形成された。
その後、イオン交換水で水洗した。
銀鏡膜形成液の材料として、次の銀主液、銀副液、及び還元液を使用した。
・銀主液:表面化工研究所社の製品名「MFS銀主液#50」、製品番号「MFS-10#50」
・銀副液:表面化工研究所社の製品名「MFS銀副液#50」、製品番号「MFS-20#50」
・還元液:表面化工研究所社の製品名「MFS還元剤#50」、製品番号「MFS-30#50」
還元液をイオン交換水で30倍希釈(例;還元液5mL、水145mL)し、もってアルデヒドを0.085~0.258モル/L含むものとなった還元液(希釈液)を作製した。
アンダーコート上で、上記工程D1で記した銀鏡反応式により銀粒子が析出し、ハーフグロスの銀鏡膜が形成された。
その後、イオン交換水で水洗した。
銀鏡膜の未反応物除去及び銀の安定化(変色防止)を目的として、腐食防止液を吹き付けて、銀鏡膜の腐食防止処理を行った。
腐食防止液の材料として、次の腐食防止剤を使用した。
・腐食防止剤:表面化工研究所社の製品名「Ag腐食防止剤#50」、製品番号「MFS-50」(チオ硫酸ナトリウム1~7%、酢酸<1%、硫酸アルミニウム<1%の混合水溶液)である。
腐食防止液で濡れている状態で、イオン交換水で水洗し、腐食防止液の余剰分を洗い流した。
恒温槽にて70℃×60分保持して乾燥させた。
腐食防止処理後の銀鏡膜に、銀鏡膜の保護等を目的として、トップコート液を塗布して、トップコートを施した。
トップコート液の材料として、次の主剤、硬化剤及び希釈剤を使用した。
・主剤:表面化工研究所社の製品名「MFSトップコートSpecial主剤(Clear)」製品番号「MFS-61-2」(アクリル樹脂33%、キシレン(混合)25.1%、エチルベンゼン25.1%、n-ブチルアルコール10~15%、イソブチルアルコール5~10%の混合物)である。
・硬化剤:表面化工研究所社の製品名「MFSトップコートSpecial硬化剤」製品番号「MFS-62-2」(キシレン10.7%、エチルベンゼン10.7%、イソプロピルアルコール25~30%、n-ブチルアルコール1~5%の混合物)である。
・希釈剤:表面化工研究所社の製品名「MFSトップコートSpecial希釈剤」製品番号「MFS-63-2」(トルエン30%、キシレン25%、エチルベンゼン25%、メトキシブチルアセテート5~10%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10~15%の混合物)である。
塗布後、恒温槽にて65℃×30分保持して、硬化させるとともに乾燥させ、膜厚15~25μmのトップコート層を形成した。
L*a*b*色度を、コニカミノルタ社製測色計CM-700dを用いてSCI方式にて測定した。測定結果を表1に示す。
銀鏡膜の表面抵抗値を、1.0×104Ω/□以下の場合はJIS-K7194に準拠し4端子4深針法により、1.0×104Ω/□以上の場合はJIS-K6911に準拠し2重リングプローブ法により、それぞれ測定した。測定結果を表1に示す。
ミリ波透過減衰量は、電磁波吸収測定装置(自由空間法、財団法人ファインセラミックスセンター所有)を用いて測定した。
具体的には、室温において、Wバンド(76.575GHz)の電磁波を発信器から入射角0°にて試料に入射させ、試料をはさんで発信器と対峙する受信器で試料を透過した電磁波を受信して、往復経路でのミリ波透過減衰量を測定した。参照値となる基材によるミリ波透過減衰量を差し引いて、銀鏡膜によるミリ波透過減衰量を算出した。その算出結果を1に示す。
SEM(走査型電子顕微鏡)により、表1に図番を記載したものについて、銀鏡膜の表面観察と断面観察をした。そのSEM写真を図3~図9に示す。
Claims (3)
- 基材にアンダーコート層を形成する工程Aa又は基材にプラズマ処理する工程Abと、
基材に塩化スズ溶液を塗布してから水洗する工程Bと、
前記基材に銀鏡膜形成液を塗布し銀鏡膜の一部を形成してから水洗する工程D1と、
前記基材に酸溶液を塗布してから水洗する工程βと、
前記基材に銀鏡膜形成液を塗布し銀鏡膜のさらに一部を形成してから水洗する工程D2とを含み、
工程βから工程D2までを1回以上繰り返し行って銀鏡膜を完成させることを特徴とするミリ波透過性銀鏡膜の形成方法。 - 銀粒子からなる銀鏡膜であって、銀粒子どうしは、互いにくっつくものもあるが、離間しているものもあり、 L*a*b*表色系のL*値が65以上であり、表面抵抗値が1×1011Ω/□以上であり、ミリ波透過減衰量が2dB以下であるミリ波透過性銀鏡膜。
- 基材と、基材の表面に形成された銀粒子からなる銀鏡膜であって、銀粒子どうしは、互いにくっつくものもあるが、離間しているものもあり、L*a*b*表色系のL*値が65以上であり、表面抵抗値が1×1011Ω/□以上であり、ミリ波透過減衰量が2dB以下である銀鏡膜とを含むミリ波透過性加飾品。
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