以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電力管理システムの構成例を示す模式図である。図1に示す電力管理システム1は、電力管理装置10と、一般家庭等の複数の需要家施設20と、大口の需要家施設30を備える。複数の需要家施設20は、それぞれ蓄電池21を有する。需要家施設30は、蓄電池31を有する。なお、需要家施設30の個数は、0個または複数個としてもよい。
電力管理装置10は、複数の需要家(複数の需要家施設20および需要家施設30)を束ねてDR、VPP等による需要削減または需要増加(まとめて需要変化ともいう)を、例えば電気事業者等の親アグリゲータ(アグリゲーションコーディネータ)と取引する事業者(リソースアグリゲータ)が運用するサーバ等のコンピュータである。
図2は、図1に示す電力管理装置10と需要家施設20の構成例を示すブロック図である。図2に示す構成例において、需要家施設20は、通信部24、制御装置22、分電盤23、蓄電池21、発電設備25、電力負荷設備26および電力メータ28を備える。
通信部24は、通信回線40を介して、電力管理装置10との間で所定の情報を送受信する。通信回線40は、通信回線43、インターネット等のネットワーク41、および通信回線42から構成されている。
制御装置22は、需要家施設20における電気設備(発電設備25、蓄電池21、電力負荷設備26および通信部24等)を制御する。また、制御装置22は、電力メータ28にて測定される消費電力の情報を入力し、入力された消費電力の情報を各種制御に利用することができる。
なお、本実施形態では、需要家施設20が備える蓄電池21、発電設備25および電力負荷設備26のうち、例えば制御装置22を介して電力管理装置10が管理可能なものを電力設備と呼ぶ。ここで、管理可能とは、電力管理装置10が出力した所定の指令に基づき消費電力、発電電力や充放電電力を制御可能であること、または、少なくとも消費電力、発電電力や充放電電力を示す情報を電力管理装置10が取得可能であることを意味する。なお、消費電力、発電電力や充放電電力を示す情報の取得は、1つの電力設備毎の取得であってもよいし、複数の電力設備毎の取得であってもよい。なお、本実施形態において、蓄電池21の充電電力と放電電力は電力管理装置10によって制御される。また、発電設備25の一部または全部は、電力管理装置10によって発電電力が制御可能であってもよい。また、電力負荷設備26の一部または全部は、電力管理装置10によって消費電力が制御可能であってもよい。
また、本実施形態では、電力設備の消費電力または充電電力を電力設備の入力電力と言い、電力設備の発電電力あるいは放電電力を電力設備の出力電力と言う。また、電力設備の電力の需要と発電とは、電力設備が、電力を消費すること、電力を充電すること、電力を発電すること、および、電力を放電することを含む。
制御装置22は、電力管理装置10から受信した指示に従い、需要家施設20が備える電力設備の充放電電力、発電電力、消費電力等を制御したり、消費電力、発電電力や充放電電力を示す情報を収集したりする。その際、制御装置22は、電力管理装置10から受信した充放電指令に従い、蓄電池21の充放電電力を制御する。
制御装置22は、例えば次のようにして、需要家施設20における電力関連の情報を収集する。制御装置22は、電力メータ28にて測定された需要電力と発電電力の情報を収集することができる。また、制御装置22は、発電設備25が発電する電力、蓄電池21の残容量(蓄電量;蓄積電力)や充放電電力、電力負荷設備26等による負荷電力(消費電力)等を収集することができる。制御装置22は、また、収集した発電電力、充放電電力、需要電力、発電電力等の情報を、例えば所定の時間間隔であるいは電力管理装置10からの要求に応じて、通信部24から電力管理装置10へ送信する。
分電盤23は、電力メータ28経由で引込線71から供給された電力を、蓄電池21や電力負荷設備26等に配線27を介して分配して供給する。引込線71は、一般送配電事業者側の配電系統の構成要素である。また、分電盤23は、発電設備25等から出力された電力を逆潮流のために電力メータ28経由で引込線71に出力させることができる。
蓄電池21は、充電のために入力される電力を蓄積し、また、蓄積した電力を放電して出力する設備である。蓄電池21は、例えば二次電池とインバータを備える。蓄電池21は電力の蓄積(充電)と蓄積された電力の出力(放電)を行う。インバータは、二次電池に充電するための電力を交流から直流に変換し、二次電池から放電により出力される電力を直流から交流に変換する。つまり、インバータは、二次電池が入出力する電力の双方向変換を行う。蓄電池21の充放電電力は制御装置22によって制御される。
蓄電池21は、分電盤23を介して供給される商用電源の電力を入力して充電することができる。また、蓄電池21は、発電設備25により発電された電力を入力して充電することができる。また、蓄電池21は、蓄積された電力を電力負荷設備26の電源として供給することができる。また、蓄電池21は、蓄積された電力を分電盤23から電力メータ28を経由して引込線71に出力することで逆潮流させることができる。
発電設備25は、例えば太陽光を受けて発電を行う設備である。発電設備25は、例えば太陽電池とPCS(Power Conditioning System)を備える。発電設備25は、太陽光を受けて発電し、発電により得られた電力をPCSにより交流に変換して出力する。
発電設備25にて発電された電力は、電力負荷設備26の電源として供給することができる。また、発電設備25にて発電された電力は、蓄電池21に充電することができる。また、発電設備25にて発電された電力は、分電盤23から電力メータ28を経由して引込線71に出力することで逆潮流させることができる。
なお、発電設備25と蓄電池21は、電力変換回路等の構成を一体化したものであってもよい。
電力負荷設備26は、需要家施設20において自己の動作のために電力を消費する1または複数の所定の機器や設備等を一括して示したものである。なお、各需要家施設20が備える負荷としての機器や設備等の種類および数等はそれぞれ異なっていても構わない。電力負荷設備26は、分電盤23から供給される商用電源を入力して動作することができる。また、電力負荷設備26は、発電設備25により発電された電力を入力して動作することができる。また、電力負荷設備26は、蓄電池21から出力された電力を入力して動作することができる。
また、電力負荷設備26は、貯湯式給湯器、蓄熱型空調機、衣類乾燥機、食器乾燥機、蓄電池(充電対象としての負荷)等、制御装置22等によって消費電力をコントロールできる負荷を含んでいてもよい。
電力メータ28は、需要電力(順潮流電力)と発電電力(逆潮流電力)とを測定する。需要家施設20において、引込線71から分電盤23に供給される電力が需要電力である。一方、蓄電池21や発電設備25から出力され、分電盤23から電力メータ28を経由して引込線71に供給される電力が発電電力である。電力メータ28は、例えばスマートメータであり、ネットワーク41等を経由して、所定の計量単位毎(例えば30分毎)に測定した需要電力と発電電力(および各電力量)の情報を電力管理装置10や上位制御システム50に送信する。
なお、需要家施設20には、蓄電池21と発電設備25のいずれか一方を備えるものがあってよい。また、需要家施設20には、蓄電池21と発電設備25のいずれも備えないものがあってよい。また、発電設備25は、太陽電池を用いるものに限らず、風力発電、地熱発電等、他の再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
また、需要家施設20が備える蓄電池21や発電設備25は、商用電源と系統連系されている。これにより、蓄電池21または発電設備25を備える需要家施設20は、発電設備25が発電して出力する電力または蓄電池21が放電により出力する電力を商用電源の電力系統(配電網)に逆潮流させて、電力系統を通して売電することができる。
なお、需要家施設30は、需要家施設20と基本的な構成が同一である。すなわち、需要家施設30では、電力管理装置10から受信した指示に従い、需要家施設30が備える電力設備の充放電電力、発電電力、消費電力等が制御される。その際、需要家施設30では、電力管理装置10から受信した充放電指令に従い、蓄電池31の充放電電力が制御される。なお、一般的に、需要家施設20へは、配電系統の高圧配電線に接続された柱上変圧器、路上変圧器等から低圧配電線を介して商用電力が配電されるが、需要家施設30へは、例えば高圧配電線から直接、商用電力が配電される。
一方、電力管理装置10は、通信部11、制御装置12、および記憶部13を備える。制御装置12は、例えば、CPU(中央処理装置)、主記憶装置、補助記憶装置、入出力装置等のハードウェアと、CPUが実行する所定のプログラムとの組み合わせから構成することができる。
本実施形態において、電力管理装置10は、例えば計画値同時同量制度に対応させて、各需要家施設20および需要家施設30における電力の需要と発電を管理する。つまり、電力管理装置10の運用者は、各需要家施設20および需要家施設30全体として、需要計画と発電計画を所定の計量単位時間(例えば、30分)ごとに策定し、策定された需要計画と発電計画を一般送配電事業者に提出する。そのうえで、各需要家施設20および需要家施設30全体における需要と発電の実績が需要計画と発電計画に対して過不足(インバランス)を生じた場合には、電気事業者と一般送配電事業者との間でインバランスに対応する精算(インバランス精算)が行われる。
なお、本実施形態では、複数の需要家施設20および需要家施設30が有する複数の電力設備の電力の需要と発電の予測値の計量単位時間における平均値を、複数の電力設備の電力の需要と発電に係る基準値と呼ぶ。また、本実施形態においてこの基準値は、例えば、計画値同時同量制度におけるベースラインに対応する。ベースラインは、計画値同時同量制度のもとでは、発電計画と需要計画から求めることができる。あるいは、本実施形態において基準値は、発電電力の実績値と需要計画の実績値を基準として予測した値であってもよい。
また、電力管理装置10は、電力会社等(アグリゲーションコーディネータ)が運用する上位制御システム50(サーバ等のコンピュータ)から通信回線60を介して受信した電力調整の要請(電力調整の依頼)や例えば予め自システムで定めた条件に基づき、基準値を基準として所定の調整時間帯(調整時間)に複数の需要家施設20や需要家施設30における複数の電力設備の電力の需要と発電を所定量変化させる。本実施形態では、基準値を所定量変化させた値を調整計画値という。また、その所定量(=基準値と調整計画値の差)を調整提供量と呼び、調整提供量の計画値(目標値)を調整提供量計画値とも呼び、調整提供量の実績値を調整提供量実績値とも呼ぶ。また、複数の需要家施設20および需要家施設30が有する複数の電力設備の電力の需要と発電を調整計画値に一致させるために複数の需要家施設20および需要家施設30が有する複数の電力設備の電力の需要と発電を実際に変化させる目標値を、複数の電力設備の電力の需要と発電に係る制御目標値と呼ぶ。また、制御目標値に対する実績値を制御実績値と呼ぶ。
ここで、図3を参照して、電力管理装置10による各需要家施設20および需要家施設30における電力の需要と発電の管理について説明する。図3は、図1に示す電力管理装置10の基本動作を説明するための模式図であり、30軒分の需要家施設20の電力の時間変化を示す。図3では、需要電力を正の値とし、発電電力を負の値としている。電力管理装置10は、電力調整の要請が無い状態において実線で示すように実際の電力が予測される場合、例えば、破線で示すように計量単位毎(例えば30分毎)に変化する基準値を定め、需要計画と発電計画を策定する。これに対し、例えば「10kWを18時~20時まで2時間、供出して下さい」との電力調整要請に応じる場合、電力管理装置10は、基準値から10kW分、発電側に電力を変化させて、鎖線で示すように調整計画値を設定する。そして、電力管理装置10は、制御時間単位毎(例えば5分毎)に予測された電力調整前の電力が調整計画値に一致するように制御目標値を設定し、各需要家施設20の電力設備を制御する。その際、電力管理装置10は、例えば各需要家施設20から電力値は1分毎に取得し、制御は5分毎に各需要家施設20に対して指令する。図3に示す例では、電力管理装置10は、例えば18時0分から18時5分までの5分間は1または複数の蓄電池21からの合計4kWの放電を指令し、18時5分から18時10分までの5分間は合計6kWの放電を指令する。
また、本実施形態では、調整時間帯、基準値、調整計画値、制御目標値、対象とする需要家施設20または需要家施設30や電力設備等を定める計画を、電力調整計画(調整計画)と呼ぶ。電力管理装置10は、制御目標値に基づき、複数の需要家施設20および需要家施設30毎に充放電指令等を生成して各需要家施設20および需要家施設30へ送信し、各需要家施設20および需要家施設30における電力設備を管理する。なお、基準値と調整計画値と制御目標値は、需要家施設20毎および需要家施設30毎に設定してもよいし、複数の需要家施設毎(グループ毎)に設定してもよい。なお、予め自システムで定めた条件に基づく電力調整計画は、例えば、電力管理システム1が、複数の需要家施設を複数のグループに分けて、グループ単位で発電計画と需要計画を策定する場合に、1つのグループで発電計画と需要計画を満足できないときに、他のグループでその未達成分を補うようなときに策定される。
例えば、制御目標値を複数の需要家施設20や需要家施設30が有する1または複数の蓄電池21または蓄電池31からの放電または1または複数の蓄電池21または蓄電池31への充電によって満足しようとする場合、電力管理装置10は、次のように動作する。すなわち、要請に基づく電力調整である場合、電力管理装置10は、上位制御システム50から複数の需要家施設20や需要家施設30に対する電力調整の要請を通信回線60を介して受信する。そして、電力管理装置10は、受信した電力調整の要請に応じて、1または複数の蓄電池21または蓄電池31の一部または全部を選択し、選択した各蓄電池21または蓄電池31を有する各需要家施設20または需要家施設30へ充放電指令を通信回線40を介して送信し、選択した各蓄電池21または蓄電池31における充放電を制御する。あるいは、要請に基づかない電力調整である場合、電力管理装置10は、1または複数の蓄電池21または蓄電池31の一部または全部を選択し、選択した各蓄電池21または蓄電池31を有する各需要家施設20または需要家施設30へ充放電指令を通信回線40を介して送信し、選択した各蓄電池21または蓄電池31における充放電を制御する。
なお、本実施形態において、電力調整の要請は、電力管理装置10が管理する複数の需要家施設20および需要家施設30全体としての需要削減の要請と需要増加の要請を含む。また、需要削減の要請は、潮流電力の削減の要請と、逆潮流電力の増加の要請を含む。また、電力調整の要請は、蓄電池21または蓄電池31における充放電電力、放電電力や充電電力の変化を直接指示する内容を含んでいてもよい。
なお、電力管理システム1は、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)等の電力管理システムに含まれる形態で(例えば一つの機能として)構成することができる。また、電力管理装置10は、TEMSやCEMS等の電力管理システムにおける管理装置(管理サーバ)に含まれる形態で(例えば一つの機能として)構成することができる。ここで、TEMSやCEMSは、例えば、所定の地域範囲における住宅、商業施設、産業施設等の複数の需要家施設20および需要家施設30における電力を一括して管理するシステムである。この場合、電力管理装置10は、複数の需要家施設20および需要家施設30が有する複数の蓄電池21および蓄電池31の充放電電力の管理(予測や制御)のほか、例えば、発電設備の発電電力の管理(予測や制御)、負荷設備の消費電力の管理(予測や制御)を行う装置として構成することができる。また、電力管理装置10が管理する需要家施設には、蓄電池を有していない需要家施設が含まれていてもよい。なお、本実施形態において、所定の地域範囲は、1つの地域範囲によって形成されていてもよいし、地理的に離散している複数の地域範囲によって形成されていてもよい。
本実施形態において、発電計画は、配電網に逆潮流させる電力についての各需要家施設20および需要家施設30全体としての計画値や、需要家施設20や需要家施設30の個別の計画値があり得る。また、需要計画は、配電網から順潮流で購入する電力についての各需要家施設20および需要家施設30全体としての計画値や、需要家施設20の個別の計画値があり得る。
本実施形態が対応する計画値同時同量制度のもとでは、発電計画と需要計画とのそれぞれについて実績が計画通りに達成されることが求められる。つまり、本実施形態が対応する計画値同時同量制度では、各需要家施設20および需要家施設30全体から逆潮流される電力の実績が発電計画に対して過不足のないことが求められるとともに、各需要家施設20および需要家施設30全体として順潮流を受ける電力の実績が需要計画に対して過不足のないことが求められる。なお、本実施形態において、発電電力とは配電網に逆潮流させる電力をいう。また、需要電力とは配電網から順潮流させる電力をいう。なお、本実施形態において、発電電力は、発電設備25が発電した電力と蓄電池21が放電した電力を含む。
図2において、電力管理装置10は、各需要家施設20および需要家施設30全体における電力設備を対象として電力制御を実行する。ここで、電力制御とは、需要計画、発電計画および電力調整計画の策定と、各計画に基づく目標値に対する実績値の管理を意味する。電力管理装置10は、通信回線40を介して需要家施設20および需要家施設30の各々と相互に通信が可能なように接続されている。これにより、電力管理装置10は、需要家施設20と需要家施設30が備える電力設備の運転を制御することができる。また、電力管理装置10は、通信回線60を介して、上位制御システム50と相互に通信が可能なように接続されている。
通信部11は、通信回線40経由で需要家施設20内の制御装置22と通信を行う。また、通信部11は、通信回線60経由で上位制御システム50と通信を行う。なお、通信回線60も、通信回線40と同様、インターネット等のネットワーク41を介して構成されるものであってもよい。
記憶部13は、電力制御にあたって制御装置12が利用する情報を記憶する。本実施形態の記憶部13は、発電計画情報131、需要計画情報132、および需要家施設基本情報133を記憶する。また、記憶部13は、調整計画情報134、調整実績情報135および予備力情報136を記憶する。また、記憶部13は、発電計画情報131、需要計画情報132、需要家施設基本情報133等に基づいて算出された所定の値を記憶する。
発電計画情報131は、策定された発電計画による発電電力を示す情報である。発電計画情報131は、例えば、発電時における各需要家施設20および需要家施設30が備える各電力設備の電力の需要と発電の予測値、各電力設備の電力の需要と発電に係る調整可能量(基準値を基準に増加減可能であると予想される電力量)、各蓄電池21や蓄電池31の蓄電量等の情報を含む。需要計画情報132は、策定された需要計画による需要電力を示す情報である。需要計画情報132は、需要時における各需要家施設20および需要家施設30が備える各電力設備の電力の需要と発電の予測値、各電力設備の電力の需要と発電に係る調整可能量(基準値を基準に増加減可能であると予想される電力量)、各蓄電池21や蓄電池31の蓄電量等の情報を含む。需要家施設基本情報133は、各需要家施設20および需要家施設30についての基本的な情報を含む。例えば、1つの需要家施設20に対応する需要家施設基本情報には、当該需要家施設20を一意に示す需要家施設ID(識別符号)、需要家施設20の契約電力の値、発電設備25の定格出力の値、蓄電池21の定格電力(定格出力)の値(定格充放電電力の値、定格放電電力の値や定格充電電力の値)および容量、当該需要家施設20が備える電力負荷設備26に関する情報、当該需要家施設20が備える通信部24や制御装置22のアドレス等の情報が含まれる。
調整計画情報134は、策定された電力調整計画を示す情報である。調整計画情報134は、電力調整計画を表す、調整時間帯、調整計画値、制御目標値、対象とする需要家施設20または需要家施設30や電力設備等を示す情報を含む。調整実績情報135は、電力調整計画に基づいて実行された電力制御(以下、電力調整計画に基づく電力制御を調整制御ともいう)に対する実績値を示す情報を含む。調整実績情報135は、例えば、各蓄電池21からの充放電指令(充放電の増減指令)に対して実際に充放電が増減された量や割合を示す情報を含む。
予備力情報136は、複数の電力設備の電力の需要と発電に係る過去の調整提供量の計画値とそれに対する実績値とに基づき複数の需要家施設20および需要家施設30に対して決定された予備力の情報を含む。電力調整計画に基づく制御では、例えば蓄電池の劣化、通信トラブル等によって、実績値が制御目標値に達しない場合がある。そこで、本実施形態では、実績値が制御目標値に達しない場合の発生を抑制するため、電力管理装置10が制御目標値を決定する際に、想定される調整可能量から予備力を控除した控除後調整可能量を基準として複数の需要家施設20および需要家施設30に対して調整計画値を設定する。予備力は調整計画値を設定する際の余裕であり、電力管理装置10は、予備力情報136を参照し、記憶部13に記憶した複数の電力設備の電力の需要と発電に係る過去の複数の調整提供量の計画値とそれに対する各実績値とに基づいて算出された各スコアを比較した結果に基づき予備力を決定する。あるいは、電力管理装置10は、発電計画情報131、需要計画情報132、調整計画情報134、調整実績情報135、予備力情報136を参照し、記憶部13に記憶した複数の電力設備の電力の需要と発電に係る過去の複数の制御目標値とそれに対する各制御実績値とに基づいて算出された各スコアを比較した結果に基づき予備力を決定する。
ここで、図11および図12を参照して、予備力情報136の構成例について説明する。図11は、図2に示す予備力情報136の構成例を示す模式図である。図12は、図2に示す調整計画管理部123が図11に示すスコアを算出する動作例を説明するための模式図である。図11に示す構成例では、予備力情報136が、複数の需要家施設20および需要家施設30の全部に対してあるいはグループ分けしたグループ毎に、日時、調整提供量の計画値、調整提供量の実績値、達成率、スコア、および予備力を対応づけて含む。日時は、調整時間帯の開始日時と終了日時を表す。調整提供量の計画値は、当該調整時間帯の調整提供量の計画値を表す。調整提供量の実績値は、当該調整時間帯の調整提供量の実績値の平均値を表す。
達成率は、調整提供量の実績値が調整提供量の計画値にどの程度近かったのかを表す値である。達成率は、例えば、図12に達成率1001として示すように、1から誤差の絶対値(調整提供量計画値と調整提供量実績値の差の絶対値を調整提供量計画値で割った値)を引いた値を百分率で表した値とすることができる。あるいは、達成率は、例えば、図12に達成率1002として示すように、調整提供量の計画値に対して実績値が±10%の誤差に収まるときを成功した場合に、成功した制御時間単位の個数(回数)を制御時間単位の全個数(全回数)で割った値を百分率で表した値とすることができる。すなわち、達成率は、制御単位時間毎に実績値が調整提供量の計画値から所定の範囲内に収まった回数と収まらなかった回数とに基づいて算出することができる。
あるいは、達成率は、制御実績値が制御目標値にどの程度近かったのかを表す値としてもよい。この場合、達成率は、例えば、図12に達成率1003として示すように、1から誤差の絶対値(制御目標値と制御実績値の差の絶対値を制御目標値で割った値)を引いた値を百分率で表した値とすることができる。あるいは、達成率は、例えば、上記と同様に、図12に達成率1002として示すように、制御目標値に対して制御実績値が±10%の誤差に収まる場合を成功したときに、成功した制御時間単位の個数を制御時間単位の全個数で割った値を百分率で表した値とすることができる。
スコアは、DR等の電力調整の要請におけるリソースアグリゲータおよびアグリゲーションコーディネータにとってのメリットの大きさを表す指標である。DR等において、リソースアグリゲータは、アグリゲーションコーディネータからの決まった指令値に対し正確に応答する事が一義である。しかし、負荷変動等のため、必ずしも正確な応答が出来ない場合がある。極論すると計画値を絞れば絞るほど正確な応答が期待できるが(すなわち、予備力を大きくすればするほど正確な応答が期待できるが)、供出量も絞られてしまう。正確な応答と供出量はトレードオフの関係にある。そのため、本実施形態では、応答の正確性と供出量の大きさの両方の観点を加味したスコアという指標を用いて過去の予備力を評価している。
スコアは、記憶部13に記憶した複数の電力設備の電力の需要と発電に係る過去の複数の調整提供量の計画値(あるいは制御目標値)とそれに対する各実績値とに基づいて算出された値であり、例えば、図12にスコア1004として示すように、調整提供量の計画値と達成率を掛け合わせた値とすることができる。この場合、スコアは、調整提供量の計画値が大きいほど、また、達成率が高いほど大きくなる。ただし、スコアは、調整提供量の計画値と達成率を直接掛け合わせた値に限られない。例えば、スコアは、調整提供量の計画値を変数とする所定の関数の値と達成率を変数とする所定の関数の値を掛け合わせた値としてもよい。すなわち、スコアは、調整提供量の計画値に対する実績値の達成率に応じた値と、調整提供量の計画値に応じた値とを掛け合わせた結果に基づいて算出してもよい。この場合、スコアは、例えば、調整提供量の計画値や達成率に対して非線形な関係をとることができる。
予備力は、当該調整時間帯の予備力の平均値を表す。
本実施形態では、例えば図2に示す調整計画管理部123が図11に示す達成率とスコアを算出する。
あるいは、電力管理装置10は、記憶部13に記憶した過去の制御目標値とそれに対する実績値との差分に基づいて複数の需要家施設20および需要家施設30に対して予備力を決定してもよい。電力管理装置10は、例えば、予備力を差分と同一の値としてもよいし、差分に所定の係数を掛けた値を予備力の値としてもよい。例えば、過去の調整制御時に制御目標値に対して実績値が1kWh足りなかった場合には予備力を1kWhとしたり、制御目標値に対して実績値が70%しか満足しなかった場合には予備力を30%としたりすることができる。この予備力を決定する際に基準となる差分は、例えば次の値とすることができる。
なお、実績値が蓄積されるまで予備力は、例えば予め定めた初期値に設定することができる。
また、予備力を差分に基づいて決定する場合、過去の制御目標値とそれに対する実績値との差分は、例えば、(a1)過去の複数の電力調整計画(例えば過去のDR指令に基づく複数の調整制御時)における計画値と実績値の差分の平均値とすることができる。あるいは、差分は、(a2)前回の電力調整計画(例えば前回のDR指令に基づく1回の調整制御時)における計画値と実績値の差分の値とすることができる。あるいは、差分は、(a3)過去の一定期間における複数の電力調整計画(例えば過去の一定期間におけるDR指令に基づく複数の調整制御時)における計画値と実績値の差分の最大値とすることができる。
あるいは、差分は、(a4)実行中の電力調整計画における(同一調整時間帯における)過去の計画値と実績値の差分の平均値とすることができる。本実施形態では、電力調整計画に基づく調整時間帯の調整制御が、調整時よりも短い所定の制御時間単位毎に区切って実行される。したがって、実行中の電力調整計画における過去の計画値と実績値の差分とは、同一の電力調整計画に基づく同一の調整時間帯内の過去の制御時間単位における制御結果の値である。
あるいは、差分は、(a5)実行中の電力調整計画における(同一調整時間帯における)過去の計画値と実績値の差分の最大値とすることができる。あるいは、差分は、(a6)実行中の電力調整計画における(同一調整時間帯における)計画値と実績値の差分の直前の値とすることができる。あるいは、差分は、(a7)実行中の電力調整計画における(同一調整時間帯における)計画値と実績値の差分の直前30分間の平均値とすることができる。ただし、以上は一例であってこれらに限定されない。
制御装置12は、電力制御部121、受信部122、調整計画管理部123および蓄電池制御部124を備える。
電力制御部121は、記憶部13が記憶している発電計画情報131および需要計画情報132と、各需要家施設20および需要家施設30における電力の需要と発電の実績値(実測値)に基づき、各需要家施設20および需要家施設30における電力設備を制御する。
受信部122は、アグリゲーションコーディネータである電力会社等が運用する上位制御システム50からの所定の要請時間における電力調整の要請を通信部11を介して受信する。所定の要請時間は、電力調整すなわち需要削減または需要増加が要請される時間であり、例えば、開始時刻と終了時刻または開始時刻と継続時間で定義される。電力調整の要請は、DRによる要請に対応し、電力調整の要請時間と、需要削減または需要増加が要請される電力の値、電力量の値等を示す情報を含む。なお、制御装置12は、電力調整計画において、要請時間を調整時間(調整時間帯)として扱う。
調整計画管理部123は、受信部122が電力調整の要請あるいは電力調整が可能な電力や電力量についての問い合わせを受信した場合、予備力を加味して基準値を基準として各電力設備の状態(蓄電量等)に基づき電力調整が可能な電力や電力量を算出して返信したり、電力調整の要請を受け付けるか否かを判断したり、受け付けた電力調整の要請に基づき電力調整計画を策定して、策定した電力調整計画に応じて調整時間帯に各需要家施設20および需要家施設30における電力設備を制御したりする。本実施形態では、調整計画管理部123が策定した電力調整計画を蓄電池制御部124に対して出力し、蓄電池制御部124が電力調整計画に基づいて各蓄電池21または蓄電池31を制御する。
なお、調整計画管理部123は、電力調整が可能な電力や電力量を算出する際に、記憶部13に記憶する複数の電力設備の電力の需要と発電に係る過去の複数の調整提供量の計画値とそれに対する調整提供量の各実績値とに基づいて図12を参照して説明したスコアを算出し、算出した各スコアを比較した結果に基づき予備力を決定するするとともに、調整可能量から予備力を控除して複数の需要家施設20および需要家施設30に対して控除後調整可能量を算出する。あるいは、調整計画管理部123は、電力調整が可能な電力や電力量を算出する際に、記憶部13が記憶する複数の電力設備の電力の需要と発電に係る過去の制御目標値とそれに対する実績値との差分に基づき複数の需要家施設20および需要家施設30に対して予備力を決定するとともに、調整可能量から予備力を控除して複数の需要家施設20および需要家施設30に対して控除後調整可能量を算出する。また、複数の需要家施設20および需要家施設30に対する控除後調整可能量に基づいて、調整計画管理部123は、電力調整の要請を受け付けるか否かを判断する。また、調整計画管理部123は、電力調整の要請を受け付けた場合には、複数の需要家施設20および需要家施設30に対する控除後調整可能量に基づき、調整計画値が控除後調整可能量以内となるように電力調整計画(調整計画値等)を決定する。電力調整計画は、上述したように、複数の需要家施設20および需要家施設30が有する複数の電力設備の電力の需要と発電に係る基準値から要請時間に対応する調整時間帯に複数の電力設備の電力の需要と発電を調整提供量分変化させる計画である。
また、調整計画管理部123は、複数の需要家施設20および需要家施設30毎のスコアのほか、複数の需要家施設20および需要家施設30全体の総和でのスコアに基づき、複数の需要家施設20および需要家施設30に対して予備力を決定することができる。また、調整計画管理部123は、複数の需要家施設20および需要家施設30毎の差分のほか、複数の需要家施設20および需要家施設30全体の総和での差分に基づき、複数の需要家施設20および需要家施設30に対して予備力を決定することができる。また、調整計画管理部123は、上述した過去の制御目標値とそれに対する実績値との差分に代えて、過去の制御目標値とそれに対する実績値との比較結果を用いてもよい。ここで、過去の制御目標値とそれに対する実績値との比較結果とは、例えば、実績値が制御目標値を満足できたか否かの判断結果であり、調整計画管理部123は、満足できなかったと判断した場合には予備力を増加させるようにし、満足できた場合は予備力を減少させるようにしてもよい。
また、調整計画管理部123は、調整時間帯に調整計画が満足されない場合、複数の需要家施設20および需要家施設30における予備力を不足分に融通し、調整可能量から融通後の予備力を控除して複数の需要家施設20および需要家施設30毎に控除後調整可能量を算出してもよい。なお、差分は、同一の調整時間帯に複数の需要家施設20および需要家施設30から得られた実績値に係る情報に基づくものとすることができる。また、差分は、過去の調整時間帯に複数の需要家施設20および需要家施設30から得られた実績値に係る情報に基づくものとすることができる。
蓄電池制御部124は、調整時間より短い所定の制御時間単位毎に、電力制御部121が管理する発電計画と需要計画と調整計画管理部123が決定した電力調整計画に基づき各需要家施設20または需要家施設30へ充放電指令を送信し、各蓄電池21または蓄電池31における充放電電力の制御を各需要家施設20または需要家施設30に対して指示する。ここで、充放電指令は、例えば、対象の制御時間単位を指示する情報と、当該制御時間単位における平均の放電電力の目標値または平均の充電電力の目標値を示す情報あるいは当該制御時間単位における放電電力量の目標値または充電電力量の目標値を示す情報等を含む。
なお、以下では、説明の簡単化のため、電力調整計画において電力の需要と発電を調整提供量分変化させる対象の電力設備を複数の蓄電池21または蓄電池31に限定する。すなわち、基準値を基準として所定の調整時間帯に複数の需要家施設20や需要家施設30における複数の電力設備の電力の需要と発電を調整提供量分変化させる場合の電力設備を、複数の需要家施設20や需要家施設30が有する1または複数の蓄電池21または蓄電池31に限定する。また、電力調整計画は、アグリゲーションコーディネータである電力会社等からの要請に基づいて策定されるものとする。
では、図4から図6を参照して、図2に示す制御装置12の動作例について説明する。図4は、図2に示す制御装置12の動作例を示すフローチャートである。図5および図6は、図4に示す制御装置12の動作例を説明するための模式図である。図4に示す動作例は、図2に示す受信部122が電力調整の要請を受信した場合に、調整計画管理部123が要請に基づいて電力調整計画を策定する場合の動作の一例である。制御装置12は、この動作例では、要請された電力の増減を、図6に示す5つの需要家施設20(「A01」~「A05」)の各蓄電池21からの充放電によって対応する。図5および図6は、制御装置12が「3kWを18時~20時まで2時間、供出して下さい」との電力調整要請を17時45分(時間断面A)に受信した場合の例である。なお、図5は、5軒分の電力の時間変化を図3と同様にして示す模式図であり、図5に示す例では17時30分から18時00分までの30分間の基準値が-10kW、18時00分から18時30分までの30分間の基準値が-4kW、18時30分から19時00分までの30分間の基準値が-1kW、19時00分から20時00分までの60分間の基準値が5kWである。図6は、各需要家施設20(「A01」~「A05」)における、蓄電池蓄電量(放電可能容量)(1)、電力の現在値(2)、基準値(3)、調整可能量(4)、予備力(5)、および控除後調整可能量(6)の時間断面A(17時45分)の各値の例を示す。
蓄電池蓄電量(1)は、例えば需要家施設20「A01」では3kWの放電で12kWhであり、5軒分合計で12kWで48kWhである。電力の現在値(2)は-7kWで、基準値(3)は-10kWである。5軒分合計の調整可能量(4)は、9kW(=蓄電池蓄電量(1)+(基準値(3)-現在値(2)))で48kWh(=蓄電池蓄電量(1))である。また、この例では、5軒分合計の予備力(5)が、2kWと6kWhであるとしている。この場合、5軒分合計の控除後調整可能量(6)は、7kW(=調整可能量(4)-予備力(5))で42kWh(=調整可能量(4)-予備力(5))である。
図4に示す処理において、受信部122が上位制御システム50から新たな電力調整についての問い合わせを受信すると(ステップS1で「YES」)、調整計画管理部123は、予備力情報136等を参照して、過去の複数の調整提供量の計画値とそれに対する各実績値とに基づいて算出された各スコアを比較し(ステップS2)、比較結果に基づき予備力を決定する(ステップS3)。ステップS2およびステップS3において、調整計画管理部123は、例えば、予備力情報136において最もスコアが高い予備力の値を、今回の予備力の値とする。なお、ステップS2において、調整計画管理部123は、例えば、予備力情報136以外の情報も参照して、比較対象とする過去の予備力の範囲を、例えば、季節や曜日で限定したり、天気や気温で限定したり、電力や電力量の値で絞り込んだりしてもよい。
あるいは、ステップS2およびステップS3において、図示する場合と異なり、調整計画管理部123は、発電計画情報131、需要計画情報132、調整計画情報134、調整実績情報135等を参照して、過去の制御目標値とそれに対する実績値との差分を需要家施設20または需要家施設30に対して(この例では需要家施設20(「A01」~「A05」)に対して)算出することができる。この場合、過去の制御目標値とそれに対する実績値との差分を、例えば、上述した(a1)~(a3)の値とすることができる。そして、調整計画管理部123は、算出した差分に基づき複数の需要家施設20または需要家施設30に対して(この例では需要家施設20(「A01」~「A05」)に対して)予備力を決定することができる。
この動作例では、ステップS2およびステップS3において、図6に示すように、各需要家施設20(「A01」~「A05」)の予備力(5)が、総和で2kWで6kWhと決定されたとする。
次に、調整計画管理部123は、調整可能量から予備力を控除して複数の需要家施設20または需要家施設30に対して(この例では需要家施設20(「A01」~「A05」)に対して)控除後調整可能量を算出する(ステップS4)。この動作例では、図6に示すように、各需要家施設20(「A01」~「A05」)の総和の控除後調整可能量(6)が、7kWで42kWhと算出されたとする。
次に、調整計画管理部123は、控除後調整可能量に基づき提供可能な調整計画として例えば「7kWで42kWh提供できます」と返信する(ステップS5)。これに対して、例えば、上位制御システム50から「3kWで2時間、供出して下さい」との電力調整要請があったとすると(ステップS6で「YES」)、調整計画管理部123は電力調整計画を決定する(ステップS7)。すなわち、ステップS7において、調整計画管理部123は、要請内容に基づき、控除後調整可能量以内で調整計画値を決定する(ステップS7)。ステップS7において、調整計画管理部123は、控除後調整可能量の範囲内で、調整計画値を決定し、制御目標値を複数の需要家施設20または需要家施設30毎に決定する。そして、調整計画管理部123は、決定した制御目標値等を示す情報を調整計画情報134として記憶部13に記憶するとともに、ステップS2およびステップS3で決定した予備力等を示す情報を予備力情報136として記憶部13に記憶する。
以上のように、本実施形態の電力管理システム1は、複数の需要家施設20および需要家施設30が有する複数の電力設備の電力の需要と発電に係る基準値から所定の調整時間帯に複数の電力設備の電力の需要と発電を調整提供量分変化させる調整計画値を決定する際に、調整計画管理部123(制御部)によって、記憶部13に記憶した複数の電力設備の電力の需要と発電に係る過去の複数の調整提供量の計画値とそれに対する各実績値とに基づいて算出された各スコアを比較した結果に基づき予備力を決定するとともに、調整可能量から予備力を控除して複数の需要家施設20および需要家施設30に対して控除後調整可能量を算出し、複数の需要家施設20および需要家施設30に対する控除後調整可能量に基づき調整計画値を決定する。この構成によれば、過去の調整提供量の計画値とそれに対する実績値とに基づき複数の需要家施設20および需要家施設30に対して算出した予備力に基づいて控除後調整可能量が算出される。したがって、本実施形態によれば、想定した調整量をより確実に確保することが可能な電力管理方法および電力管理システムを提供することができる。
次に、図7から図10を参照して、図2に示す制御装置12の調整制御時の動作例について説明する。図7は、図2に示す制御装置12の動作例を示すフローチャートである。図8から図10は、図7に示す制御装置12の動作例を説明するための模式図である。図7に示す動作例は、図4から図6を参照して調整計画策定時の動作例を説明した電力調整計画の実行時の動作例である。
図8は、図5に示す模式図に、時間断面B「18時50分」と時間断面C「18時55分」の各制御目標値を追記した図である。図9は、各需要家施設20(「A01」~「A05」)における、蓄電池蓄電量(放電可能容量)(1)、電力の現在値(7)、基準値(8)、調整可能量(9)(=(1)+((8)-(7))または=(1))、予備力(10)、控除後調整可能量(11)(=(9)-(10))、制御目標値(13)(=(7)-(12))および各邸制御目標値の時間断面B(18時50分~55分)の各値の例を示す。図10は、各需要家施設20(「A01」~「A05」)における、電力の現在値(14)、基準値(8)、調整可能量(15)(=(1)+((8)-(14))または=(1))、予備力(10)、控除後調整可能量(16)(=(15)-(10))、制御目標値(17)(=(14)-(12))、予備力融通量(18)(=(17)-(16))、および各邸制御目標値の時間断面C(18時55分~56分)の各値の例を示す。図9および図10に示す場合、予備力(10)は、2kW(同一調整時間帯の制御目標値と実績値の差)と5kWh(同一調整時間帯の制御目標値と実績値の差)である。同一調整時間帯の制御目標値と実績値の差は、例えば同一調整時間帯(18時から20時まで)の18時00分から18時30分までの制御目標値と実績値の差の平均値や最大値等とすることができる。また、予備力融通量は、控除後調整可能量(16)が制御目標値(17)を下回った場合に予備力(10)を控除後調整可能量(16)の不足分に充当した量である。なお、図8では、時間断面BおよびCにおける調整計画値を「(12)=-4」として示す。
図7に示す動作例において、調整計画管理部123は、調整開始時刻になると(ステップS101で「YES」)、図4に示す処理で策定した電力調整計画に基づく電力制御の実行を蓄電池制御部124に対して指示し、蓄電池制御部124が発電計画と需要計画と電力調整計画に基づき制御時間単位毎に各需要家施設20または需要家施設30へ充放電指令を送信し、各蓄電池21または蓄電池31における充放電電力の制御を各需要家施設20または需要家施設30に対して指示する(ステップS102)。ステップS102において、蓄電池制御部124は、例えば時間断面B(図9)において、需要家施設20「A01」、「A02」、「A03」、「A04」および「A05」に対して、制御目標値(電力)「3kW」、「3kW」、「0kW」、「0kW」および「0kW」の放電(基準値からの放電の増加分)とする内容の充放電指令を出す。
次に、調整計画管理部123は、調整終了時刻に到達したか否かを判断する(ステップS103)。調整終了時刻に到達した場合、調整計画管理部123は、当該電力調整計画に基づく調整制御を終了する(ステップS103で「YES」)。
一方、調整終了時刻に到達していない場合(ステップS103で「NO」の場合)、調整計画管理部123は、新たな制御時間単位が開始してから所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS104)。この所定時間は、制御目標値の変化に制御量が応答する時間と通信に要する時間等の経過を待機する時間である。調整計画管理部123は、新たな制御時間単位が開始してから所定時間が経過した場合(ステップS104で「YES」の場合)、各需要家施設20および需要家施設30から送られてきた各蓄電池21または蓄電池31の充放電電力、蓄電量等を表す情報に基づき、制御実績を確認する(ステップS105)。
次に、調整計画管理部123は、ステップS105における制御実績の確認結果に基づき、必要な場合、予備力を調節する(予備力を控除後調整可能量の不足分に融通する)(ステップS106)。次に、調整計画管理部123は、ステップS106で予備力を調節した場合に電力調整計画を再決定する(ステップS107)。ステップS107において、調整計画管理部123は、例えば時間断面C(図10)では、控除後調整可能量(16)が制御目標値(17)に対して不足しているので予備力融通量(18)を「1kW」とするとともに、需要家施設20「A01」、「A02」、「A03」、「A04」および「A05」の制御目標値(電力)を「3kW」、「0kW」、「2kW」、「2kW」および「0kW」の放電(基準値からの放電の増加分)とする。
次に、調整計画管理部123が最新の電力調整計画に基づく電力制御の実行を蓄電池制御部124に対して指示し、蓄電池制御部124が発電計画と需要計画と電力調整計画に基づき制御時間単位毎に各需要家施設20または需要家施設30へ充放電指令を送信し、各蓄電池21または蓄電池31における充放電電力の制御を各需要家施設20または需要家施設30に対して指示する(ステップS102)。
図7から図10を参照して説明したように、本実施形態の電力管理システム1は、複数の需要家施設20および需要家施設30が有する複数の電力設備の電力の需要と発電に係る基準値から所定の調整時間帯に複数の電力設備の電力の需要と発電を調整提供量分変化させる調整計画値を決定する。また、調整時間帯に調整計画が満足されない場合、調整計画管理部123は、複数の需要家施設20および需要家施設30における予備力を不足分に融通し、記憶部13に記憶されている複数の電力設備の電力の需要と発電に係る調整可能量から融通後の予備力を控除して控除後調整可能量を算出する。この構成によれば、複数の需要家施設20および需要家施設30において決定された予備力に基づいて控除後調整可能量が算出される。したがって、本実施形態によれば、想定した調整量をより確実に確保することが可能な電力管理方法および電力管理システムを提供することができる。
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。