以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
ここでは以下、キャリパ及びガイドを用いて医用画像上の計測対象に対して計測処理を行う説明を行うに当たっては、超音波画像診断装置を例に挙げて説明する。超音波画像診断装置は、被検体の内部構造や血流状態などを非侵襲に調べることができる医用画像診断装置の一例である。
超音波画像診断装置は、先端に振動子(圧電振動子)を備えた超音波プローブから被検体の内部に向けて超音波を送信する。そして被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生ずる反射波を超音波プローブの振動子で受信する。このようにして得られた受信信号に基づいて超音波画像を生成する。
[超音波画像診断装置の構成]
図1は、実施の形態における超音波画像診断装置1の全体構成を機能的に示す機能ブロック図である。図1に示すように、超音波画像診断装置1は、被検体に対して超音波の送受信(送受波)を行う超音波プローブ2と、当該超音波プローブ2が着脱可能に接続される装置本体3とを備えている。
超音波プローブ2は、各超音波振動子により被検体内に超音波を送信してスキャン領域を走査し、被検体からの反射波を反射信号として受信する。なお、このスキャンとしては、例えばBモードスキャンやドプラモードスキャンなど各種のスキャンがある。また、超音波プローブ2には、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等があり、診断部位に応じて任意に選択される。
装置本体3は、送信回路31と、受信回路32と、信号処理回路33と、画像処理回路34と、ディスプレイ35と、入力回路36とを備える。送信回路31は、超音波プローブ2に対する駆動信号の送信を行う。受信回路32は、超音波プローブ2からの反射信号の受信を行う。信号処理回路33は、当該反射信号を処理する。画像処理回路34は、超音波画像を生成する。ディスプレイ35は、生成された超音波画像をはじめ、各種画像を表示する。入力回路36は、検査者などの操作者により入力操作されることで入力される信号を受信する。さらに、装置本体3は、図示しない他の機器との信号の送受信を制御する通信制御回路37と、記憶回路38と、各部を制御する制御回路39とを備えている。またこれら各回路は互いにバスBに接続され、各種信号のやりとりが可能とされている。なお、これら各回路の詳細な機能については、さらに以下に説明する。
送信回路31は、制御回路39による制御に基づき、超音波プローブ2に超音波を発生させるための駆動信号、すなわち各圧電振動子に印加する電気パルス信号(以下、「駆動パルス」という)を生成し、その駆動パルスを超音波プローブ2に送信する。送信回路31は、図示しない、例えば、基準パルス発生回路、遅延制御回路、駆動パルス発生回路等の各回路を備えており、各回路が上述した機能を果たす。
また、受信回路32は、超音波プローブ2からの受信信号である反射信号を受信し、その受信信号に対して整相加算を行い、その整相加算により取得した信号を信号処理回路33に出力する。
信号処理回路33は、受信回路32から供給された超音波プローブ2からの受信信号を用いて各種のデータを生成し、画像処理回路34や制御回路39に出力する。信号処理回路33は、いずれも図示しない、例えば、Bモード処理回路(或いは、Bcモード処理回路)やドプラモード処理回路、カラードプラモード処理回路などを有している。Bモード処理回路は、受信信号の振幅情報の映像化を行い、Bモード信号を基にしたデータを生成する。ドプラモード処理回路は、受信信号からドプラ偏移周波数成分を取り出し、さらに、FFT(Fast Fourier Transform)処理などを施し、血流情報のドプラ信号のデータを生成する。カラードプラモード処理回路は、受信信号に基づいて血流情報の映像化を行い、カラードプラモード信号を基にしたデータを生成する。
画像処理回路34は、信号処理回路33から供給されたデータに基づいてスキャン領域に関する二次元や三次元の超音波画像を生成する。例えば、画像処理回路34は、供給されたデータからスキャン領域に関するボリュームデータを生成する。そしてその生成したボリュームデータからMPR処理(多断面再構成法)により二次元の超音波画像のデータやボリュームレンダリング処理により三次元の超音波画像のデータを生成する。画像処理回路34は、生成した二次元や三次元の超音波画像をディスプレイ35に出力する。なお、超音波画像としては、例えば、Bモード画像やドプラモード画像、カラードプラモード画像、Mモード画像などがある。
ディスプレイ35は、画像処理回路34により生成された超音波画像や操作画面(例えば、操作者から各種指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface))などの各種画像を制御回路39の制御に従って表示する。このディスプレイ35としては、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどを用いることが可能である。
入力回路36は、例えば、画像表示、画像の切り替え、モード指定や各種設定などの操作者による様々な入力操作を受け付ける。この入力回路36としては、例えば、GUI、或いは、ボタンやキーボード、トラックボール、ディスプレイ35に表示されるタッチパネル等の入力デバイスを用いることが可能である。
なお、本発明の実施の形態においては、図1に示すように、ディスプレイ35、入力回路36を超音波画像診断装置1の1つの構成要素として記載しているが、このような構成に限られない。例えば、ディスプレイ35を超音波画像診断装置1の構成要素ではなく、超音波画像診断装置1とは別体に構成することも可能である。また、入力回路を当該別体のディスプレイを用いたタッチパネルとすることも可能である。
通信制御回路37は、図示しない通信ネットワークに互いに接続される、例えば、図示しない医用画像診断装置(モダリティ)、サーバ装置や医用画像処理装置等と超音波画像診断装置1とを接続させる役割を担っている。この通信制御回路37及び通信ネットワークを介して他の機器とやり取りされる情報や医用画像に関する規格は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等、いずれの規格であっても良い。
記憶回路38は、例えば、半導体や磁気ディスクで構成されており、制御回路39で実行されるプログラムやデータ、計測処理に用いるキャリパ及びガイドの組み合わせ等が記憶されている。
制御回路39は、超音波画像診断装置1の各部を統括的に制御する。制御回路39は、画像処理回路34において生成された超音波画像をディスプレイ35に表示させる。また制御回路39は、操作者による超音波画像診断装置1を用いた診断が行われる際に、ディスプレイ35に表示された超音波画像上で診断対象部位における計測対象を計測する処理を行う。
制御回路39は定義機能、表示制御機能、計測機能を実行する。定義機能は、超音波画像上で診断対象部位における計測対象を計測する際に用いるひとまとまりのキャリパ及びガイドの形状や位置関係を定義する機能である。計測処理を行う場合には、当該キャリパ及びガイドを一体として用いることから、キャリパ及びガイドはひとまとまりで定義されている。
ここでキャリパとは、計測対象を計測する際に計測範囲を特定するために用いられる。例えば、超音波画像に表示された血管を挟み込むようにキャリパを配置することで、当該血管の直径を計測する。また、ガイドとは、キャリパを計測対象となる位置に配置させるために用いる。具体的には、ガイドは、操作者によって、超音波画像上に表示される計測対象近傍に設けられる指標の位置に配置される。
キャリパ及びガイドは、計測対象を計測する際に、操作者によって計測対象ごとに適切な形状のものが選択される。また、計測対象ごとにキャリパ及びガイドの間の間隔は予め定められている。当該間隔は、例えば、計測対象の計測を行うに当たって学会が定めた計測手順に定められている。また、被検体の人種、居住地、性別等の条件によって統計的に定められていても良い。また、キャリパとガイドとの表示角度も定められている。
このように、キャリパ及びガイドの形状や両者の位置関係は、計測対象ごとに定義されている。そして、当該定義は、記憶回路38に格納される。ここで制御回路39によるキャリパ及びガイドの定義例について図を用いて説明する。
図2は、実施の形態において、計測対象に対してキャリパ及びガイドが配置された第1の例を示す説明図である。図2には、診断対象部位における計測対象としての血管V1がディスプレイ35に示されており、分岐部を備えている。図2においては、血管V1の外径を計測する状態を示している。
図2を見ると、ガイドG1が当該分岐部に配置されている状態が示されている。ここでガイドG1は略丸形の形状で表示されている。一方キャリパC1は、ガイドG1から距離aだけ離間した位置に配置されている。また、キャリパC1はバツ(×)の形状で2カ所に示されている。これは計測対象となる血管V1の外径を計測するためであり、そのためにキャリパC1は血管V1を挟み込むように配置されている。
従ってこの場合、制御回路39は、その定義機能により、血管V1の外径を計測するに適切なキャリパ及びガイドとして、キャリパC1及びガイドG1の表示形状を定義している。また、キャリパC1が当該ガイドG1から所定の間隔(ここではa)離間した位置に配置されるように、その位置関係を定義している。
図3は、実施の形態において、計測対象に対してキャリパ及びガイドが配置された第2の例を示す説明図である。図3においては、診断対象部位における計測対象としての血管(頸動脈)V2がディスプレイ35に表示されている例を示している。当該頸動脈V2は分岐部を備え、さらに、当該分岐部近傍に、例えば、頸動脈洞と見られる膨らみが見られる。図3においては、頸動脈V2の血管壁の厚みを計測する状態を示している。
頸動脈V2の血管壁の厚みを計測する場合、図3に示すようにガイドG2は、血管分岐部ではなく、頸動脈洞の手前、血管が分岐部に向けて膨らみ始める位置に配置されている。また、ガイドG2の形状は、図2に示すガイドG1と同様、略丸形の形状で表わされている。
一方、キャリパC2は、ガイドG2から距離bだけ離間した位置に配置されている。また、キャリパC2は2つの略板状の形状で示されており、計測対象となる血管壁を間に挟み、互いに対向する位置に配置されている。血管壁を挟むようにキャリパC2を配置し、キャリパC2を構成する2つの略板状の形状(C21,C22)の間を計測することによって、当該血管壁の厚みを計測することができる。
このように制御回路39は、その定義機能により、頸動脈V2の血管壁の厚みを計測するに適切なキャリパ及びガイドとして、キャリパC2及びガイドG2の表示形状を定義している。また、キャリパC2が当該ガイドG2から所定の間隔(ここではb)離間した位置に配置されるように、その位置関係を定義している。
なお、これまで制御回路39によるキャリパ及びガイドの定義例について、図2及び図3に示す説明図を用いながら説明した。ここで、超音波プローブ2の持ち方(被検体への当て方)については、操作者によって異なる。すなわち、操作者によっては、例えば、頸動脈等、分岐のある血管が計測対象である場合に、分岐部が画面に向かって右側に表示されるように超音波プローブ2を持って操作を行うことがある。一方で、別の操作者においては、分岐部が画面に向かって左側に表示されるように超音波プローブ2を把持して操作を行う場合もある。
図4は、実施の形態において、計測対象が反転した場合におけるキャリパ及びガイドの配置を示す説明図である。図4には、診断対象部位における計測対象としての血管V1がディスプレイ35に示されており、分岐部を備えている。当該図4に示す血管V1の表示の向きを見てみると、血管の分岐部が画面に向かって左側に表示されており、図2に示す血管V1とその向きが反転していることがわかる。
このように、操作者がどのように超音波プローブ2を把持するかによって、ディスプレイ35に表示される計測対象の向きも異なる。但し、計測対象の向きが反転したにも拘わらずキャリパ及びガイドの表示がそのままではキャリパ及びガイドとして本来の機能を果たすことができない。そこで、計測対象のディスプレイ35における表示の向きに応じてキャリパ及びガイドもその向きを変更させる。
なお、計測対象の向きに応じたキャリパ及びガイドの向きの変更は、操作者が手動で行っても、或いは、超音波画像診断装置が自動的に行っても良い。前者の場合、操作者はディスプレイ35の表示を見ながら、計測対象の向きに合わせて適宜入力回路36を操作してキャリパ及びガイドの向きを変更させる。一方後者の場合、制御回路39がディスプレイ35に表示された計測対象の向きを把握して、計測対象の向きに合わせてキャリパ及びガイドの向きを変更させる。なお、この場合に、計測対象の向きを把握する方法としては、例えば、ディスプレイ35に表示される計測対象を画像で認識し、その向きを把握することとしても良い。ここで、向きを把握することは比較的容易に行なうことができる。つまり、分岐部を境に一方は管腔が1つ(総頚動脈)で他方は管腔が2つ(外頚動脈、内頚動脈)であり、その管腔構造を画像認識すればよく困難性はない。
以上説明したように、計測対象の向きに応じて適宜キャリパ及びガイドの向きも変更させることによって、操作者に違和感のない表示を行って操作者の誤認識を招来することなく、キャリパ及びガイドを用いた計測処理を迅速かつ容易に行うことができる。
図5は、実施の形態において、計測対象に対してキャリパ及びガイドが配置された第3の例を示す説明図である。図5は受信した超音波のドプラ波形を示すものであり、山状に示されている。ドプラ波形の高さが診断対象部位における血流の速度を示している。従って、血流が早い場合には高い山状に表示され、血流が遅い場合には低い山状に表示される。すなわち、縦軸に血流の速度が示されており、横軸は時間の経過(時間軸)を示している。図5においては、血流において、基準となる時間から所定の時間が経過するまでの間における最大値、或いは、最小値を計測する場合、または、キャリパが配置される位置における値を計測する場合が示されている。
図5において、基準となる時間にガイドG3が配置されている。このようにガイドG3が示すのは基準となる時間であることから、例えば、これまで図2や図3を挙げて説明してきたガイドG1,G2とは異なり、横軸に示す時間軸に直交するように棒状に示されている。一方、キャリパC3は、バツ(×)の形状で示されており、ガイドG3から時間cだけ離間した位置に配置されている。すなわち、ここでは計測対象が診断対象部位における基準となる時間から所定の時間が経過するまでの間における最大値、或いは、最小値等であることから、ガイドG3とキャリパC3との間の間隔は時間軸上において規定されている。
このように制御回路39は、その定義機能により、血流において、基準となる時間から所定の時間が経過するまでの間における最大値を計測するに適切なキャリパ及びガイドとして、キャリパC3及びガイドG3の表示形状を定義している。また、キャリパC3が当該ガイドG3から時間軸上所定の間隔(ここではc)離間した位置に配置されるように、その位置関係を定義している。
なお、ここまで説明してきた、ガイドG(以下、ガイドG1ないしガイドG3をまとめて表示する場合には、適宜「ガイドG」と表わす)とキャリパC(以下、キャリパC1ないしキャリパC3をまとめて表示する場合には、適宜「キャリパC」と表わす)との間を示す所定の間隔は、被検体において実際に計測された値である。すなわち、ガイドG1とキャリパC1との間の距離、及び、ガイドG2とキャリパC2との間の距離は、被検体における診断対象部位における計測対象を計測した際に得られた実寸である。また、ガイドG3とキャリパC3との間の時間軸上の所定の間隔は、実時間である。なお、ガイドとキャリパとの間の時間軸上の所定の間隔は、ガイドを基準として、時間的に先(未来)にキャリパを設定しても、或いは逆に、ガイドを基準として、時間的に後ろ(過去)にキャリパを設定しても良い。
制御回路39の表示制御機能は、診断対象部位における計測対象が示されている超音波画像をディスプレイ35に表示させる機能である。また、入力回路36を介して操作者によって診断対象部位における計測対象の計測処理の指示がなされた場合に、当該指示に該当する操作信号に基づいて、キャリパC及びガイドGをディスプレイ35に表示されている超音波画像上に表示させる機能である。
さらに、制御回路39は、表示された超音波画像が備えている、例えば、撮影部位を示す情報等を基に、キャリパC及びガイドGを超音波画像上に表示させるために、記憶回路38に記憶されているキャリパC及びガイドGを抽出する。記憶回路38には、キャリパC及びガイドGが計測対象ごとに記憶されているが、計測対象によっては複数のキャリパC及びガイドGの組み合わせが記憶されている場合がある。制御回路39は、キャリパC及びガイドGの組み合わせが複数ある場合には,全てを抽出してディスプレイ35に表示させる。
制御回路39は、操作者によってキャリパC及びガイドGが選択されると、選択されたキャリパC及びガイドGをディスプレイ35に表示させるに当たっての事前準備を行う。すなわち、上述したように、キャリパC及びガイドGの間を示す間隔は、実寸、或いは、実時間で示される実測値である。そのためこの状態のままディスプレイ35に表示すると、背後に表示される超音波画像の表示スケールと合致しない可能性がある。
そこで、制御回路39は、ディスプレイ35に表示される超音波画像の表示スケールに合わせて、画面上どのくらいの大きさでガイドとキャリパを表示させるかを計算し、選択されたキャリパC及びガイドGの大きさを変更する。このような処理を行っておくことで、操作者がガイドGを置くと表示されている画面上の計測対象の位置に、すなわち、実際に計測したい位置にキャリパCが配置されることになる。
なお、ここで、上述したように、キャリパC及びガイドGは必ずしも両者が同時にディスプレイ35に表示されていなくても良い。但し、キャリパC及びガイドGのいずれか一方が表示される場合には、ガイドGのみが表示されることになる。ガイドGはキャリパCを計測対象となる位置に配置するために用いるものだからである。
但し、キャリパC及びガイドGの両者が超音波画像上に表示される場合はもちろんのこと、ガイドGのみが表示される場合であっても、操作者からの操作指示に基づくガイドGの移動に当たっては、両者を一体として超音波画像上を移動させる。これは、上述した通り、キャリパCとガイドGとはひとまとまりで定義されているからである。一方で、両者を一体に移動させるとしても、常に同時に超音波画像上に表示されていることまでを意味するものではない。
すなわち、計測処理が行われる際に、キャリパC及びガイドGを両者超音波画像上に表示させた上で、一体的に移動させる場合のみならず、例えば、ガイドGのみを表示させて移動させる場合であっても、キャリパCは非表示であるだけで、移動しない訳ではない。このように表示されているか否かに拘わらずキャリパC及びガイドGが一体に移動していることから、ガイドGが指標となる位置に配置されることで、当該ガイドGから所定の間隔、或いは、時間軸上所定の間隔離間した位置にキャリパCを配置することが可能となる。
そして、キャリパCが配置された位置が、計測対象の位置となる。このように、キャリパCはガイドGとの関係においてその配置位置が決定される。すなわち、例えば、図2を例に挙げて説明すると、キャリパC1とガイドG1とは、常に所定の間隔aという位置関係を保った状態で、ディスプレイ35に表示される超音波画像上を一体に移動する。
また、キャリパC1及びガイドG1を回転移動させる場合も両者は一体に回転する。なお、キャリパC1及びガイドG1を回転移動させる場合の回転軸については、キャリパC1、ガイドG1、或いは、両者の中間等、いずれにあっても良い。
操作者による超音波画像上に表示されているガイドGを指標となる位置に配置する操作に基づいて、制御回路39はガイドGを移動させる。当該指標は、計測対象の位置にキャリパCを配置するためにガイドをどの位置に配置すれば良いかを示すものであり、例えば、学会が推奨する計測手順の中に示されている。指標は超音波画像上には表示されておらず、操作者が超音波画像を見てその位置を特定するものであるが、例えば、超音波画像上に予め表示されていても良い。
そして、ガイドGとキャリパCとの間の間隔は予め定義されていることから、超音波画像上において、ガイドGの配置位置が確定されると、同時にキャリパCは計測対象の位置に配置されることになる。但し、キャリパCが計測対象の位置に配置されるといっても、実際に計測可能な状態に配置されるとも限らない。
すなわち、例えば、図3に示す計測対象に対してガイドG2及びキャリパC2が配置された第2の例を示す説明図を用いて説明すると、まず、ガイドG2が指標の位置に合わせて配置される。ガイドG2が配置されると、ガイドG2から所定の間隔bだけ離間した位置にキャリパC2が配置される。ここでは頸動脈V2の血管壁の厚みを計測する場合であるが、適切に計測するためには、血管壁を一対の略板状に表示されているキャリパC2(キャリパC21及びキャリパC22)で適切な間隔をもって挟み込まなければならない。そのため、キャリパC2が計測対象の位置に配置された際に、血管壁の厚みを計測するに適した位置に配置されていれば良いが、配置されていない場合、血管壁を挟むためにキャリパC21及びキャリパC22の間隔、及び、その角度を調整する必要がある。
そこで制御回路39は、超音波画像上、ガイドGの位置を確定させると、次に、計測対象の位置に合わせてキャリパCとガイドGの傾き(角度)を設定する操作者からの入力信号を受けて、設定された角度となるようにキャリパCとガイドGを表示させる。
なお、超音波画像上におけるガイドGの配置位置の確定とキャリパC及びガイドGの角度の設定は、いずれが先の処理となっても良い。上述したように、ディスプレイ35上において、キャリパC及びガイドGは配置される計測対象とは関係なく一体に移動させることが可能とされており、当然、ガイドGの配置位置の確定とは関係なく角度の変更を行うことができるからである。
制御回路39は、さらにキャリパCが配置された計測対象の計測処理を行う機能を備えている。本発明の実施の形態においては、超音波画像上において指標の位置に合わせてガイドGを配置することによって、同時にキャリパCも計測対象の位置に配置されることになる。そのため、ガイドGの配置がされたことをもって、超音波画像診断装置1において自動的に計測処理を行うこととしても良い。
或いは、ガイドGが配置された後、操作者にキャリパCの配置位置を確認させる等の時間を確保するべく、ガイドGが配置された後、改めて操作者から計測処理の開始信号の入力を待って計測処理を開始しても良い。すなわち、キャリパCの配置位置が確定された後、自動的にすぐに計測処理に遷移させず、一旦操作者がキャリパCの位置が適切であるか否かを判断する機会を与えるようにしても良いことは、上述した通りである。この場合、計測処理を開始するための操作者による入力回路36の操作があり、当該操作に基づく入力信号を制御回路39が受信することによって、制御回路39が計測処理を開始することになる。
なお、ここで例えば、制御回路39の定義機能、表示制御機能、計測機能については、所定のメモリや記憶回路38等に記憶される、例えば、医用画像処理プログラムといったプログラムをプロセッサに実行させることによって実現することも可能である。ここで本明細書における「プロセッサ」という文言は、例えば、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit) arithmetic circuit(circuitry)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
プロセッサは、例えば記憶回路38に保存された、又は、プロセッサの回路内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムを記憶する記録回路は、プロセッサごとに個別に設けられるものであっても構わないし、或いは、例えば、図1における信号処理回路33が行う機能に対応するプログラムを記憶するものであっても、さらには図1に示す記憶回路38の構成を採用しても構わない。記憶回路の構成には、例えば、半導体や磁気ディスクといった一般的なRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置が適用される。
[動作]
次に、図6及び図7を利用して、超音波画像診断装置1における計測対象の計測処理の流れについて以下、説明する。図6及び図7は、実施の形態において、ガイドG及びキャリパCを用いて医用画像上の計測対象に対して計測処理を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、制御回路39は表示制御機能を介して、診断対象部位における計測対象が示されている超音波画像をディスプレイ35に表示させる(ST1)。これによって、ディスプレイ35に超音波画像が表示される。計測処理を行う操作者は、表示された超音波画像を用いて計測処理を開始する。具体的には、操作者が計測処理を行うために入力回路36を操作する。
制御回路39としては、操作者が入力回路36を介して計測処理を開始する信号を入力するまで待機の状態となる(ST2のNO)。一方、操作者が計測処理を行うための操作を入力回路36上で行った場合、計測処理開始の信号を受信して、計測処理を行うための一連の処理を開始する(ST2のYES)。
制御回路39では、計測処理開始の信号を受信すると、計測対象に適したガイドG及びキャリパCをディスプレイ35に表示させる(ST3)。
操作者は、ディスプレイ35に表示されたキャリパC及びガイドGの組み合わせの中から、計測対象を計測するに当たって最適なひとまとまりの組み合わせを選択する。制御回路39では、操作者が入力回路36を介して行った選択の信号を受信する(ST4)。
そこで、制御回路39は、ディスプレイ35に表示される超音波画像の表示スケールに合わせて、画面上どのくらいの大きさでガイドとキャリパを表示させるかを計算し、選択されたキャリパC及びガイドGの大きさを変更する(ST5)。その上で、ディスプレイ35に表示されている超音波画像の上に表示スケールを変更されたキャリパC及びガイドGを表示させる(ST6)。
ここで、キャリパC及びガイドGは一体として移動することになる(ST7)。操作者は、キャリパC及びガイドGを移動させる場合には、例えば、入力回路36を構成するトラックボールやマウス等を用いる。
操作者は超音波画像上において、指標となる位置を特定し、ガイドGが当該指標の位置に合うように、例えばトラックボールを操作する。制御回路39は操作者の操作に合わせて、ガイドGをディスプレイ35上にて移動させる(ST8)。この間はまだガイドGが超音波画像上のどの位置に配置されるか確定していないので、制御回路39ではガイドGの移動の制御は行うものの、その配置位置の確定処理については、次に操作者がガイドGの位置を確定する操作を行うまで待機状態となる(ST8のNO)。
操作者が例えば、トラックボールを操作することによって、超音波画像上指標となる位置にガイドGを配置すると(ST8のYES)、例えば、セットボタンといった、入力回路36に設けられているボタンを操作することによって、ガイドGの配置位置を確定する。制御回路39では、当該ボタンからの入力信号を受信し、超音波画像上においてガイドGを確定された位置に表示させる(ST9)。
以上で超音波画像上、ガイドGの位置が確定したので、次に、計測対象の位置に合わせて、キャリパCとガイドGの傾き(角度)を設定する(ST10)。ディスプレイ35に表示されている計測対象は、ディスプレイ35上において、必ずしも水平に表示されている訳ではないからである。角度を設定するに当たっては、操作者は、例えば、入力回路36を構成するダイアルを用いる。
なお、表示角度の設定が行われない場合(ST10のNO)は、キャリパC及びガイドGがディスプレイ35に表示された際の角度のままで良いということになる。この場合は、操作者はダイアル操作を行うことはない。そして、表示角度の設定が行われない場合も含めて設定が完了すると(ST10のYES)、操作者はキャリパC及びガイドGの表示角度を確定させる(図7のST11)。具体的には、制御回路39が操作者による確定操作に基づく確定信号の受信を受けてキャリパC及びガイドGを設定された角度に表示させる。
そこで、超音波画像上においてガイドGの配置位置、及び、ガイドGとキャリパCとの角度が計測対象との関係で適切な位置関係に配置された後、次に操作者はキャリパCの配置位置を調整する(ST12)。実際の操作としては、例えば、トラックボールを利用してキャリパCの配置位置を調整する。この場合、ガイドGを移動させるために用いられていたトラックボールの役割は、ガイドGの配置位置が確定されることによって、キャリパCの配置位置を調整する役割に遷移する。
なお、ここでのキャリパCの配置位置の調整は、上述したように血管壁の計測が可能なように血管壁を挟み込むだけではなく、血管壁の角度に合わせてキャリパC角度を調整することも含まれる。
制御回路39では、操作者がトラックボールの操作開始を示す信号を受信すると(ST12のYES)、当該信号に従って超音波画像上においてキャリパCの表示を移動させ、キャリパCの配置位置の調整を行う(ST13)。キャリパCが計測に適した位置に配置されるまでは引き続きキャリパCの配置位置の調整が行われ(ST14のNO)、操作者がセットボタンといったキャリパCの配置位置を確定させる処理が行われると(ST14のYES)、キャリパCの配置位置が最終的に確定される(ST15)。
なお、ガイドGが指標となる位置に配置された時点で、キャリパCは計測対象に配置に配置されることになるが、さらなるキャリパCの配置位置の調整が不要な場合もある(ST12のNO)。この場合には、当該位置にてキャリパの配置位置が確定される(ST15)。
このようにキャリパCが計測対象において最終的な位置に配置されると、計測対象が計測され(ST16)、ディスプレイ35に計測結果が表示される(ST17)。
以上説明したように、医用画像上で計測対象に対して計測処理を行う場合に、指標となる位置にガイドを配置するだけで自動的にキャリパが計測対象に配置されることになるため、計測処理を迅速かつ容易に行うことができる超音波画像診断装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムを提供することができる。
なお、以上においては、キャリパ及びガイドを超音波画像診断装置において表示される超音波画像において利用することを説明した。但し、本発明の実施におけるキャリパ及びガイドについては、超音波画像を含む、各種モダリティによって取得された医用画像を表示させることが可能な、医用画像処理装置においても利用可能である。
また、上述した図2や図3においては、診断対象部位における計測対象として頸動脈等の血管を示して指標の位置におけるガイドの配置、及び、ガイドの配置に伴うキャリパの計測対象への配置について説明した。但し、キャリパ及びガイドの利用については、血管のみならず、例えば、心臓の心尖にガイドを配置し、所定の間隔離間した位置に配置されるキャリパが示す部位を把握するといった、診断対象部位を心臓とする場合についても適用できる。
さらに、ガイドとキャリパとの間の所定の間隔を時間軸上に定義する場合について、図5を挙げて説明した。図5においては、血流の速度に関してガイドとキャリパとを利用したが、例えば、心電波形にも利用可能である。すなわち、例えば、心臓疾患の早期診断を行う際に必要となるパラメータの取得に当たって、心電波形におけるR波により特定した拡張末期に基づいて収縮末期を基準とする拡張期心拍時相を設定する際に上述したキャリパ及びガイドを適用することができる。
さらに、上述したように、キャリパ及びガイドの表示に当たっては、事前準備として表示されている医用画像の表示スケールに合うようにその大きさを調整している。このような処理は事前準備の際に限らず、例えば、医用画像上にキャリパ及びガイドが表示された後であっても、拡大、或いは、縮小というように医用画像の表示スケールが変更されるたびに、合わせてキャリパ及びガイドの両者の間隔が調整される。これによって、どのような表示スケールにおいてもキャリパ及びガイドの相対的な位置関係は変化せず、操作者が計測対象の大きさを見間違う危険性を低減できる。
また、これまでの説明においては、キャリパ及びガイドの間の間隔が予め定義されていることを前提としていた。しかし、同じ診断対象部位における計測対象であっても、例えば、大人と子供、或いは、人種や性別等によってキャリパ及びガイドの間の間隔は変化し得る。そこで、操作者によって、キャリパ及びガイドの間の間隔は調整可能とされていても良い。さらにこの場合、患者ID等の条件から自動的に変更させることが可能である。
或いは、人種、性別、年齢等の条件ごとに収集されたある統計に基づいて行われる検査がある場合、当該検査が選択されると、その条件に合わせてキャリパ及びガイドの間の間隔を変更させることとしても良い。さらに、計測対象における計測値が他の計測項目との間で所定の関係がある場合に、当該他の計測項目に合わせてキャリパ及びガイドの間の間隔を変更することもできる。
さらには、キャリパ及びガイドの間の間隔について、異なる複数のパターンを予め定義して、記憶させておくことも可能である。この場合、操作者は被検体に合わせて適宜適切なキャリパ及びガイドの間の間隔に関するパターンを選択して適用させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。