JP7088140B2 - 高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度薄鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高強度薄鋼板およびその製造方法に関し、特に自動車などの構造部品の部材として好適な高強度薄鋼板およびその製造方法に関する。
近年、環境問題についての意識の高まりから、CO排出規制が厳格化しており、自動車分野においては、燃費向上に向けて車体の軽量化が課題となっている。そのため、自動車部品への高強度鋼板の適用による構造部品の薄肉化が進められており、特に、引張強さ(TS)が1180MPa以上の高強度薄鋼板を適用することが進められている。
自動車の構造用部品や補強用部品に使用される高強度鋼板は、加工性に優れることが要求される。特に、複雑形状を有する部品を成形するためには、伸び、穴広げ性といった個別の特性が優れていることだけではなく、その全てに優れた高強度鋼板が要求される。
また、自動車を組み立てるには、コストや効率の面から、プレス成形された部品を、抵抗スポット溶接によって組み合わせることが多い。1180MPa以上のTSを確保するためには、通常、鋼中に合金元素を多く含有させるが、これにより、抵抗スポット溶接部の引張りせん断強度(TSS:Tensile shear strength)が著しく低下することが懸念される。
従来、鋼板の加工性と抵抗スポット溶接部の特性とを向上させる手段としては、例えば、特許文献1には、溶接条件を変更することで、信頼性の高い溶接継手を得る方法が記載されている。特許文献2には、鋼板組織を制御してスポット溶接性を高めた鋼板が開示されている。
特許第5299257号 特許第5092481号
本発明者らは、自動車車体全体の剛性を保つために部品は抵抗スポット溶接により車体に組み立てられるが、部品の抵抗スポット溶接部には応力がかかることから、抵抗スポット溶接部において遅れ破壊が生じることが懸念されることを新規に知見した。そして、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性を向上させるという新規な課題を認識するに至った。上述した特許文献1に記載の方法では、耐遅れ破壊特性は改善されていない。また、特許文献2に記載の方法では、遅れ破壊が問題となる高い引張強さの鋼板は得られていない。つまり、加工性、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度(TSS)、さらには抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性の全てを総合的に満足する引張強さ1180MPa以上の高強度薄鋼板は開発されていない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、加工性、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度(TSS)、さらには抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性の全てを総合的に満足する引張強さ1180MPa以上の高強度薄鋼板を提供することを目的とする。
なお、本発明において、「薄鋼板」とは、厚みが0.3mm以上2.8mm以下の鋼板を意味する。
また、加工性に優れるとは、優れた伸びと、穴広げ性とを兼ね備えることを意味する。伸びが優れるとは、伸び(EL)が14%以上であることを意味する。また、穴広げ性に優れるとは、穴広げ率(λ)が50%以上であることを意味する。
また、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度(TSS)が高いとは、引張りせん断試験を実施し、引張せん断応力が22kN以上の場合を指す。
また、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性に優れるとは、抵抗スポット溶接部を定荷重試験に供し、100時間電解チャージしても割れが生じないことを意味する。なお、以下では、鋼板が抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度(TSS)および抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性のいずれも優れている場合、「抵抗スポット溶接性に優れる」とも称する。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、フェライト、残留オーステナイト、マルテンサイト、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの鋼板組織の体積分率を特定の比率で制御し、かつ、各鋼板組織の結晶粒を微細化し、鋼板組織内にNb系析出物を生成させることで、加工性、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度(TSS)、さらには抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性の全てを総合的に満足する引張強さ1180MPa以上の高強度薄鋼板を得ることができることを見出した。特に、本発明者らは、以下の知見を得た。
抵抗スポット溶接部を有する鋼板にせん断応力が加わったとき、ナゲット径が小さい場合には、まず母材が破断してから、ナゲットにせん断応力が作用してナゲット中央部においてせん断される。特に、鋼中の合金元素が多いと、ナゲット端部の靭性が劣化するため、せん断応力が顕著に低下する。
そこで、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、連続鋳造後の鋼スラブを、80℃/h以上の冷却速度で冷却し、次いで再加熱して、1200℃以上1350℃以下の加熱温度で60min以上保持する本発明の製造方法に想到した。そして、該製造方法により、微細なNb系炭化物を鋼中に分散させることで、抵抗スポット溶接部のナゲット端部の組織が微細化し、ナゲット端部の靭性が向上し、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度が向上することを見出した。さらに、このNb系炭化物が鋼板の使用環境から侵入する水素をトラップすることで、顕著に抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が向上することを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1] 質量%で、
C:0.14%以上0.22%以下、
Si:0.5%以上1.3%以下、
Mn:2.8%以上3.8%以下、
P:0.04%以下、
S:0.004%以下、
Al:0.01%以上0.50%以下、
N:0.010%以下、
Nb:0.005%以上0.08%以下、
Ti:0.005%以上0.04%以下および
B:0.0002%以上0.0040%以下を含有するとともに、
Cr:0.05%以上0.35%以下、
Mo:0.05%以上0.35%以下および
Co:0.05%以上0.35%以下からなる群から選択される一種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
フェライトを体積分率で0%以上5%以下、
残留オーステナイトを体積分率で3%以上15%以下、
マルテンサイトを体積分率で0%以上10%以下、
残部に、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトを含む複合組織を有し、
前記フェライトの平均結晶粒径は2.0μm以下であり、
前記残留オーステナイトの平均結晶粒径は2.5μm以下であり、
前記マルテンサイトの平均結晶粒径は3.0μm以下であり、
前記ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトは、平均結晶粒径が5μm以下であり、かつ平均アスペクト比が2.0以下であり、
さらに、鋼板表面から板厚方向で50μm以上100μm以下の領域中に、粒径が0.08μm未満のNb系析出物が100μm当たり25個以上存在する、高強度薄鋼板。
[2] 前記成分組成は、さらに、質量%で、V:0.05%以下を含有する、上記[1]に記載の高強度薄鋼板。
[3] 前記成分組成は、さらに、質量%で、
Cu:0.50%以下、
Ni:0.50%以下、
Sb:0.020%以下、
Ca:0.0050%以下および
REM:0.0050%以下からなる群から選択される一種以上を含有する、上記[1]または[2]に記載の高強度薄鋼板。
[4] 上記[1]から[3]のいずれかに記載の成分組成を有する溶鋼を連続鋳造によって鋼スラブとした後、600℃までの第1平均冷却速度を80℃/h以上として冷却し、
次いで、前記鋼スラブを1200℃以上1350℃以下の加熱温度まで再加熱して、該加熱温度で60min以上保持し、
次いで、前記鋼スラブに、仕上げ圧延の終了温度が850℃以上950℃以下の条件で熱間圧延を施して熱延板とし、
次いで、前記熱延板を、80℃/s以上の第2平均冷却速度で440℃以下の巻取温度まで冷却した後に該巻取温度で巻取り、
次いで、前記熱延板に酸洗を施し、
次いで、前記熱延板に冷間圧延を施して冷延板とし、
次いで、前記冷延板を、3℃/s以上30℃/s以下の平均加熱速度で850℃以上950℃以下の第1均熱温度まで加熱し、該第1均熱温度で30s以上400s以下保持した後、前記第1均熱温度から6℃/s以上の第3平均冷却速度で150℃以上275℃以下の冷却停止温度まで冷却し、
次いで、前記冷延板を、375℃以上475℃以下の第2均熱温度まで加熱し、該第2均熱温度で30s以上保持した後、室温まで冷却する、高強度薄鋼板の製造方法。
本発明によれば、加工性、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度(TSS)、さらには抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性の全てを総合的に満足する引張強さ1180MPa以上の高強度薄鋼板を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。先ず、母材鋼板の成分組成の適正範囲およびその限定理由について説明する。なお、以下の説明において、鋼板の成分元素の含有量を表す「%」は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。
C:0.14%以上0.22%以下、
Cは鋼板の高強度化に有効な元素であり、第2相であるベイナイト、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイト及びマルテンサイトの形成にも寄与する。さらに、本発明の重要な構成要件であるNb系析出物を形成する。なお、以下で「第2相」とは、特に明記しない限り「ベイナイト、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイト及びマルテンサイト」を意味する。Cの含有量が0.14%未満では、フェライトの体積分率が増加し、残留オーステナイトを必要な体積分率、確保することが難しい。また、微細なNb系析出物の個数が減少し、引張強さ、穴広げ性、および抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度が劣化する。Cの含有量は、好ましくは0.15%以上である。一方、Cを過剰に添加するとフェライト、焼戻しマルテンサイト、およびマルテンサイトの硬度差が大きくなるため、穴広げ性が劣化する。また、マルテンサイトの体積分率が増加し、伸びおよび抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が劣化する。Cの含有量は、好ましくは0.21%以下である。
Si:0.5%以上1.3%以下
SiはMn偏析を緩和させて、板厚方向の硬度分布を均一化させ、抵抗スポット溶接性を向上させる効果を奏する。この効果を得るためには、Siを0.5%以上添加する。Siの含有量は、好ましくは0.7%以上である。しかしながら、Siの過剰な添加は化成処理性を劣化させるため、Siの含有量は1.3%以下とする。Siの含有量は、好ましくは1.25%以下である。
Mn:2.8%以上3.8%以下
Mnは固溶強化および第2相を生成することで、鋼板の高強度化に寄与する元素である。また、Mnは焼鈍中にオーステナイトを安定化させる効果も奏する。これらの効果を得るためには、Mnを2.8%以上含有させる。Mnの含有量は、好ましくは2.9%以上である。一方、Mnを過剰に含有させた場合、ベイナイト変態を遅延させることでマルテンサイトの体積分率が過剰になり、さらにマルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトの硬度が増加してしまう。これにより、穴広げ性が劣化することに加えて、水素が鋼中に侵入した場合、粒界のすべり拘束が増加し、結晶粒界において、き裂が進展しやすくなるため、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が劣化する。そのため、Mnの含有量は3.8%以下とする。Mnの含有量は、好ましくは3.5%以下である。
P:0.04%以下
Pは固溶強化により鋼板の高強度化に寄与するが、過剰に添加された場合には、粒界への偏析が著しくなって粒界を脆化させ、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度、および抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性を劣化させる。よって、Pの含有量を0.04%以下とする。Pの含有量は、好ましくは0.03%以下である。Pの含有量の下限は特に規定しないが、Pの含有量を極低量とすると製造コストが上昇するため、Pの含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
S:0.004%以下
Sの含有量が多い場合には、MnSなどの硫化物が多く生成し、該硫化物の周辺から遅れ破壊が生じるため、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が劣化する。そのため、Sの含有量は0.004%以下とする。Sの含有量は、好ましくは、0.003%以下である。Sの含有量の下限は特に規定しないが、Sの含有量を極低量とすると製造コストが上昇するため、Sの含有量は0.0002%以上とすることが好ましい。
Al:0.01%以上0.50%以下
Alは脱酸に必要な元素であり、この効果を得るためには0.01%以上含有することが必要である。Alの含有量は、好ましくは0.02%以上とする。一方、Alはベイナイト変態時にセメンタイトの析出を抑制する効果があり、残留オーステナイト生成に寄与する。一方、Alを過剰に含有すると焼鈍時にフェライト相が過剰に生成して強度確保が困難となる事から、Alの含有量は0.50%以下とする。Alの含有量は、好ましくは0.45%以下である。
N:0.010%以下
Nは粗大な窒化物を形成することで穴広げ性を劣化させることから、Nの含有量を0.010%以下とする。Nの含有量は、好ましくは0.0075%以下である。Nの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、好ましくは、0.0005%以上とする。
Nb:0.005%以上0.08%以下
Nbは、微細な炭化物、窒化物、および炭窒化物を形成することで、抵抗スポット溶接性を向上させる。こうした効果を得るためには、Nbの含有量を0.005%以上とする。Nbの含有量は、好ましくは0.010%以上、より好ましくは、0.020%以上とする。一方、多量にNbを添加すると、伸びが著しく劣化するだけでなく、鋼スラブの連続鋳造後にスラブに割れが生じる。また、フェライトの体積分率が増加し、穴広げ性が劣化する。さらに抵抗スポット溶接部におけるTSSも劣化する。そのため、Nbの含有量は0.080%以下とする。Nbの含有量は、好ましくは0.070%以下であり、さらに好ましくは0.055%以下である。
Ti:0.005%以上0.04%以下
Tiは微細な炭窒化物を形成することで、鋼板の強度上昇に寄与する元素である。さらに本発明において重要な元素であるBがNと反応することを抑制する役割を担う。また、Tiの微細な炭窒化物は水素のトラップサイトとなり、かつ、水素過電圧を上昇させて、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性を向上させる。このような効果を発揮させるためには、Tiの含有量を0.005%以上とする。Tiの含有量は、好ましくは0.008%以上である。一方、多量にTiを添加すると、伸びが著しく劣化するため、Tiの含有量は0.040%以下とする。Tiの含有量は、好ましく0.035%以下である。
B:0.0002%以上0.0040%以下
Bは焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで鋼板の高強度化に寄与する。また、マルテンサイト変態開始点を低下させずに焼入れ性を確保するために有効な元素である。さらに、熱間圧延の仕上げ圧延後に冷却する際、フェライトやパーライトの生成を抑制する効果がある。これらの効果を得るためには、Bの含有量を0.0002%以上とする。Bの含有量は、好ましくは0.0010%以上とする。一方、Bを0.0040%超含有させても効果が飽和するため、Bの含有量を0.0040%以下とする。Bの含有量は、好ましくは0.0035%以下である。
本発明の高強度薄鋼板は、上記の成分に加え、Cr:0.05%以上0.35%以下、Mo:0.05%以上0.35%以下およびCo:0.05%以上0.35%以下からなる群から選択される一種以上を含有する。
Cr:0.05%以上0.35%以下
Crは鋼中に固溶し、結晶粒の均一微細化に寄与する。結晶粒が均一微細化することで、穴広げ性、および抵抗スポット溶接性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、Crを0.05%以上含有させる必要がある。Crの含有量は、好ましくは0.10%以上である。一方、Crを0.35%超含有させると、過剰にマルテンサイトが生成し、また表面欠陥が発生しやすくなる。そのため、Crの含有量は0.35%以下とする。Crの含有量は、好ましくは0.32%以下である。
Mo:0.05%以上0.35%以下
MoはCrと同様、鋼中に固溶し、結晶粒の均一微細化に寄与する。結晶粒が均一微細化することで、穴広げ性、および抵抗スポット溶接性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、Moの含有量は0.05%以上とする。Moの含有量は、好ましくは0.10%以上である。また、Moを0.35%超含有させても前述の効果が飽和して製造コストが増加するだけであるため、Moの含有量は0.35%以下とする。Moの含有量は、好ましくは0.32%以下である。
Co:0.05%以上0.35%以下
CoはCrと同様、鋼中に固溶し、結晶粒の均一微細化に寄与する。結晶粒が均一微細化することで、穴広げ性、および抵抗スポット溶接性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、Coの含有量は、0.05%以上とする。Coの含有量は、好ましくは0.10%以上である。一方で、Coを0.35%超含有させても効果が飽和して製造コストが上昇するだけであるため、Coの含有量は0.35%以下とする。Coの含有量は、好ましくは0.32%以下である。
[任意成分]
本発明の高強度薄鋼板は、上記の成分組成に加えて、さらに、質量%で、V:0.05%以下を含有していてもよい。
V:0.05%以下
Vは微細な炭窒化物を形成することで、鋼板の強度をより上昇させる。こうした効果を得るためには、Vの含有量は、好ましくは0.005%以上とする。一方、多量のVを添加させても、0.05%を超えた分の強度上昇効果は小さく、製造コストの上昇を招く。したがって、Vの含有量は0.05%以下とすることが好ましい。
また、本発明の高強度薄鋼板は、上記の成分組成に加えて、さらに、質量%で、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Sb:0.020%以下、Ca:0.0050%以下およびREM:0.0050%以下からなる群から選択される一種以上を含有していてもよい。
Cu:0.50%以下
Cuを添加することで、水素過電圧を増加させ、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性をより向上させることができる。これらの効果を得るためには、Cuの含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、Cuを0.50%超含有させても効果が飽和し、また表面欠陥が発生しやすくなるため、Cuの含有量は0.50%以下とすることが好ましい。
Ni:0.50%以下
NiもCuと同様、水素過電圧を増加させて、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性をより向上させる元素である。これらの効果を得るためには、Niの含有量を0.005%以上とすることが好ましい。また、Cuと同時に添加すると、Cuに起因する表面欠陥を抑制する効果があるため、Cuとあわせて添加することが好ましい。一方、Niを0.50%超含有させても効果が飽和するため、Niの含有量を0.50%以下とすることが好ましい。
Sb:0.020%以下
Sbは鋼板表層部に脱炭層が生じることを抑制する効果を有するため、水溶液環境下における鋼板表面の電位分布が均一となり、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性がより向上する。このような効果を得るためには、Sbの含有量を0.001%以上とすることが好ましい。一方、Sbが0.020%超添加されると、圧延負荷荷重を増大させて生産性を低下させることから、Sbの含有量は0.020%以下とすることが好ましい。
Ca:0.0050%以下
Caは、硫化物の形状を球状化して、穴広げ性や、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性をより向上させる元素であり、必要に応じて添加することができる。これらの効果を得るためには、0.0005%以上含有させることが好ましい。一方、Caを0.0050%超含有させても効果が飽和するため、Caの含有量を0.0050%以下とすることが好ましい。
REM:0.0050%以下
REMは、Caと同様、硫化物の形状を球状化して、穴広げ性や、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性をより向上させる元素であり、必要に応じて添加することができる。これらの効果を得るためには、0.0005%以上含有させることが好ましい。一方、REMを0.0050%超含有させても効果が飽和するため、REMの含有量を0.0050%以下とすることが好ましい。
上述した成分以外の残部は、Fe及び不可避不純物とする。不可避的不純物としては、例えば、Sn、Zn等が挙げられ、これらの含有量の許容範囲としては、Sn:0.01%以下、Zn:0.01%以下である。
次に、本発明の高強度薄鋼板のミクロ組織について説明する。本発明の高強度薄鋼板のミクロ組織は、平均結晶粒径が2μm以下のフェライトを体積分率で0%以上5%以下、平均結晶粒径が2.5μm以下の残留オーステナイトを体積分率で3%以上15%以下、平均結晶粒径が3μm以下のマルテンサイトを体積分率で0%以上10%以下、残部に平均結晶粒径が5μm以下、かつ平均アスペクト比が2.0以下のベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトを含む複合組織とする。なお、ここで述べる体積分率は鋼板の全体に対する体積分率であり、以下同様である。
フェライトの体積分率: 0%以上5%以下
フェライトの体積分率が5%超では、打抜き時のボイド生成量が増加して、穴広げ性が劣化する。また、強度確保のため、マルテンサイトや焼戻しマルテンサイトの硬度を高くすると、穴広げ性が劣化するため、強度と穴広げ性との両立が困難である。フェライトの体積分率は、好ましくは3%以下である。なお、フェライトの体積分率は、0%であってもよい。
フェライトの平均結晶粒径:2.0μm以下
また、フェライトの平均結晶粒径が2.0μm超では、穴広げ時の打抜き端面に生成したボイドが穴広げ中に連結しやすくなるため、良好な穴広げ性が得られない。そのため、フェライトの平均結晶粒径は2.0μm以下とする。フェライトの平均結晶粒径は、好ましくは1.5μm以下とする。フェライトの平均結晶粒径の下限は特に規定しないが、好ましくは0.5μm以上とする。
残留オーステナイトの体積分率: 3%以上15%以下
良好な伸びを確保するために、残留オーステナイトの体積分率を3%以上とする。残留オーステナイトの体積分率は、好ましくは4%以上である。一方、残留オーステナイトの体積分率が15%を超える場合、抵抗スポット溶接時に生成する水素が、抵抗スポット溶接部外の残留オーステナイト中に固溶する。そして、固溶していた水素が鋼板使用中に拡散して、抵抗スポット溶接部の遅れ破壊を促進する。そのため、残留オーステナイトは、体積分率で15%以下とする。残留オーステナイトは、好ましくは、体積分率で12%以下である。
残留オーステナイトの平均結晶粒径: 2.5μm以下
残留オーステナイトの平均結晶粒径が2.5μmを超えると、残留オーステナイト内でC分布に偏りが生じ、該C分布の影響で、プレス成形時に残留オーステナイトがマルテンサイト変態しやすくなり、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が劣化する。そのため、残留オーステナイトの平均結晶粒径は2.5μm以下とする。残留オーステナイトの平均結晶粒径は、好ましくは、2.3μm以下とする。残留オーステナイトの平均結晶粒径の下限は特に規定はしないが、0.3μm以上では伸びに及ぼす影響が大きいため、平均結晶粒径を0.3μm以上とすることが好ましい。
マルテンサイトの体積分率:0%以上10%以下
優れた伸びを確保しつつ、穴広げ性および抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性を確保するためにマルテンサイトの体積分率は10%以下とする。マルテンサイトの体積分率は、好ましくは8%以下である。なお、マルテンサイトの体積分率は、0%であってもよい。
マルテンサイトの平均結晶粒径:3.0μm以下
マルテンサイトの平均結晶粒径が3.0μm超では、マルテンサイトとフェライトとの界面に生成するボイドが連結しやすくなることで穴広げ性が劣化するだけでなく、抵抗スポット溶接後の結晶粒が粗大化することで、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度(TSS)、または抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が劣化するため、マルテンサイトの平均結晶粒径は、3.0μm以下とする。マルテンサイトの平均結晶粒径は、好ましくは、2.5μm以下とする。
ミクロ組織の残部:ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイト
良好な穴広げ性や抵抗スポット溶接性を確保するために、上記のフェライト、残留オーステナイト、マルテンサイト以外の残部には、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトを含有する。
ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均結晶粒径:5μm以下
ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均結晶粒径は5μm以下とする。平均結晶粒径が5μm超では、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトと、フェライトとの界面に生成するボイドが連結しやすくなり、穴広げ性が劣化するだけでなく、抵抗スポット溶接部の結晶粒径が粗大となることで、抵抗スポット溶接部の引張せん断応力が低下するためである。なお、平均結晶粒径は、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトを区別せずに、両組織の平均として求める。
ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均アスペクト比:2.0以下
ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均アスペクト比は2.0以下とする。平均アスペクト比が2.0を超えると、穴広げ性が劣化するためである。ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均アスペクト比は、好ましくは、2.0以下とする。平均アスペクト比は、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトを区別せずに、両組織の平均として求める。なお、ここでいう結晶粒のアスペクト比とは、結晶粒の長軸長さを短軸長さで除した値のことであり、下限は1.0である。
また、ベイナイトの体積分率は20%以上50%以下の範囲、焼戻しマルテンサイトの体積分率は35%以上85%以下とすることが好ましい。なお、ここで云うベイナイトの体積分率とは、観察面に占めるベイニティック・フェライト(転位密度の高いフェライト)の体積分率のことである。
ここで、フェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの体積分率の測定方法は、以下の通りである。まず、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)が観察位置となるように切断し、断面を研磨した後、3vol.%ナイタールで腐食し、観察面を得る。SEM(走査型電子顕微鏡)およびFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)を用いて、3000倍の倍率で観察面を観察し、組織写真を得る。ポイントカウント法(ASTM E562-83(1988)に準拠)により、各相の面積率を測定し、その面積率を体積分率とみなす。なお、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトは本発明においては区別せず、両組織の合計の体積分率を求める。
また、フェライト、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均結晶粒径は、以下の通りに算出する。上述したSEM、FE-SEMの組織写真から、予め各々のフェライト粒、ベイナイト粒、および焼戻しマルテンサイト粒を識別しておいたデータを、Media Cybernetics社のImage-Proに取り込み、写真中の全フェライト粒、ベイナイト粒、および焼戻しマルテンサイト粒の円相当直径を算出し、それらの値を平均して算出する。なお、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトは本発明においては区別せず、両組織の平均の結晶粒径を求める。
また、残留オーステナイトの体積分率は、以下のように測定する。まず、鋼板を板厚方向(深さ方向)に板厚の1/4まで研磨し、観察面とする。該観察面を、X線回折法により観察する。MoのKα線を線源とし、加速電圧50keVにて、X線回折装置(Rigaku社製RINT2200)を用いて、フェライトの{200}面、{211}面、{220}面と、オーステナイトの{200}面、{220}面、{311}面のX線回折線の積分強度を測定する。これらの測定値を用いて、「X線回折ハンドブック」((2000年、理学電機株式会社)、p.26、62-64に記載の計算式から、残留オーステナイトの体積分率を求める。
ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均アスペクト比は、以下の通りに算出する。まず、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)が観察位置となるように切断し、断面を研磨した後、3 vol.%ナイタールで腐食し、観察面を得る。SEM(走査型電子顕微鏡)およびFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)を用いて、3000倍の倍率で観察面を観察し、組織写真を得る。上記組織写真を、Media Cybernetics社のImage-Proに取り込み、全結晶粒のアスペクト比を平均して、平均アスペクト比を求める。
さらに、本発明の高強度薄鋼板のミクロ組織において、鋼板表面から板厚方向で50μm以上100μm以下の領域中に、粒径が0.08μm未満のNb系析出物が、100μm当たり平均で25個以上存在する。鋼板表面から板厚方向に50μm以上100μm以下の領域に、粒径が0.08μm未満のNb系析出物を、100μm当たり平均で25個以上存在させることで、抵抗スポット溶接部の引張せん断応力および耐遅れ破壊特性が向上する。なお、Nb系析出物としては、Nb系炭化物、窒化物、および炭窒化物、例えばNbC、NbN、Nb(C,N)が挙げられる。
Nb系析出物の数:25個以上/100μm
粒径が0.08μm未満のNb系析出物が100μm当たり平均で25個未満では、抵抗スポット溶接部のナゲット端部の組織の微細化が不十分であり、引張せん断応力が劣化する。さらに粒径が0.08μm未満のNb系析出物が100μm当たり25個未満では、水素のトラップサイトとなるNb系析出物の量が不十分となり、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が劣化する。鋼板表面から板厚方向で50μm以上100μm以下の領域中に存在する、粒径が0.08μm未満のNb系析出物の個数は、好ましくは100μm当たり30個以上であり、さらに好ましくは100μm当たり40個以上である。
Nb系析出物の粒径:0.08μm未満
Nb系析出物の粒径が0.08μm以下であると、水素が強くトラップされることから耐遅れ破壊特性が向上する。Nb系析出物の粒径の下限は、特に限定されないが、0.005μm未満のNb系析出物は観察が難しいことから、Nb系析出物の粒径は好ましくは0.01μm以上である。
鋼板表面から板厚方向で50μm以上100μm以下の領域中に存在するNb系析出物の粒径および100μm当たりの個数の測定は、以下のように行う。まず、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)が観察位置となるように切断し、断面を研磨した後、3 vol.%ナイタールで腐食し、観察面を得る。観察面を、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて10000倍の倍率で観察し、Image-Pro(Media Cybernetics社製)を用いて、下限を0.01μmとして、Nb系析出物の円相当直径を算出し、Nb系析出物の粒径とした。Nb系析出物の100μm当たりの個数は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて10000倍の倍率で鋼板表面から板厚方向で50μm以上100μm以下の領域を10箇所観察し、それらの平均を求めることによって算出する。
また、本発明におけるフェライト、ベイナイト、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイトおよびマルテンサイト以外に、パーライトを含んでいてもよい。ただし、パーライトの体積分率は3%以下であることが好ましい。
フェライト、ベイナイト、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイトおよびマルテンサイト以外の種類および体積分率の決定方法は以下の通りである。まず、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)が観察位置となるように切断し、断面を研磨した後、3 vol.%ナイタールで腐食し、観察面を得る。SEM(走査型電子顕微鏡)TEM(透過型電子顕微鏡)、およびFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)を用いて、3000倍の倍率で観察面を観察し、フェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、および残留オーステナイト以外の鋼組織の種類および体積分率を決定した。
また、本発明の薄鋼板は、めっき層を備えてもよい。めっき層の組成は特に限定されず、一般的な組成であり得る。めっき層はいかなる方法によって形成されていてもよく、例えば、溶融めっき層、または電気めっき層であり得る。また、めっき層は合金化されていてもよい。めっき金属は特に限定されず、Znめっき、Alめっき等であり得る。
次に、本発明の高強度薄鋼板の製造方法について説明する。なお、高強度薄鋼板の製造方法について、各温度範囲は、特に言及しない限り、鋼スラブまたは鋼板の表面温度である。
本発明の高強度薄鋼板の製造方法においては、上述した成分組成を有する溶鋼を連続鋳造によって鋼スラブとした後、600℃までの第1平均冷却速度を80℃/h以上として冷却し、
次いで、前記鋼スラブを1200℃以上1350℃以下の加熱温度まで再加熱して、該加熱温度で60min以上保持し、
次いで、前記鋼スラブに、仕上げ圧延の終了温度が850℃以上950℃以下の条件で熱間圧延を施して熱延板とし、
次いで、前記熱延板を、80℃/s以上の第2平均冷却速度で440℃以下の巻取温度まで冷却した後に該巻取温度で巻取り、
次いで、前記熱延板に酸洗を施し、
次いで、前記熱延板に冷間圧延を施して冷延板とし、
次いで、前記冷延板を、3℃/s以上30℃/s以下の平均加熱速度で850℃以上950℃以下の第1均熱温度まで加熱し、該第1均熱温度で30s以上400s以下保持した後、前記第1均熱温度から6℃/s以上の第3平均冷却速度で150℃以上275℃以下の冷却停止温度まで冷却し、
次いで、前記冷延板を、375℃以上475℃以下の第2均熱温度まで加熱し、該第2均熱温度で30s以上保持した後、室温まで冷却する。
[連続鋳造]
はじめに、上述した成分組成を有する溶鋼を、連続鋳造によって鋼スラブとする。連続鋳造法は、本発明の課題からして前提となるものであり、鋳型鋳造法と比較して生産能率が高い。そのため、本発明においては、鋼スラブの製造方法として、連続鋳造法を採用する。連続鋳造機としては、垂直曲げ型を採用することが望ましい。これは、垂直曲げ型の連続鋳造機は、設備コストと鋼スラブの表面品質とのバランスに優れ、かつ、鋼スラブ表面に割れが生じることを抑制する効果を奏するためである。
連続鋳造を経て鋼スラブとした後、鋼スラブを、600℃までの第1平均冷却速度を80℃/h以上として冷却する。なお、「鋼スラブとした後」とは、鋼片を切断し鋼スラブとした後を意味し、第1平均冷却速度は、鋼片を切断し鋼スラブとした時点から600℃までの平均冷却速度である。鋼スラブとした後、600℃までの平均冷却速度を、80℃/hより小さい速度とすると、Mnの偏析が助長されるほか、粗大なNb系析出物が最終的に得られる鋼板中に残存するため、抵抗スポット溶接性が劣化する。鋼スラブとした後、600℃までの平均冷却速度は、好ましくは85℃/h以上、より好ましくは100℃/h以上、さらに好ましくは110℃/h以上とする。なお、第1平均冷却速度の上限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、第1平均冷却速度は好ましくは150℃/h以下とする。なお、600℃まで冷却した後は、室温まで冷却した後に再加熱して熱間圧延を施してもよいし、室温まで冷却せずに温片のまま再加熱して熱間圧延を施してもよい。
次いで、上記の連続鋳造後、鋼スラブを1200℃以上1350℃以下の加熱温度まで再加熱して、該加熱温度で60min以上保持する。
加熱温度:1200℃以上1350℃以下
加熱温度が1200℃未満では、鋼中に再固溶するNb系析出物の量が減少し、粗大なNb系析出物が最終的に得られる鋼板中に残存するため、抵抗スポット溶接性が劣化する。また、加熱温度が1200℃未満では、残部組織であるベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均アスペクト比が2.0を超えるため、穴広げ性が劣化する。加熱温度は、好ましくは1220℃以上、より好ましくは1250℃以上である。また、加熱温度が1350℃以上では、マルテンサイトならびにベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの結晶粒径が粗大化し、所望の平均結晶粒径が得られないため、穴広げ性および抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が劣化する。加熱温度は、好ましくは1310℃以下、より好ましくは1280℃以下である。
加熱時間:60min以上
加熱温度が60min未満では、鋼中に再固溶するNb系析出物の量が減少し、粗大なNb系析出物が最終的に得られる鋼板中に残存するため、抵抗スポット溶接性が劣化する。加熱時間は、好ましくは70min以上、より好ましくは100min以上である。
[熱間圧延工程]
・仕上げ圧延終了温度:850℃以上950℃以下
次いで、加熱後の鋼スラブに、仕上げ圧延の終了温度が850℃以上950℃以下の条件で熱間圧延を施して熱延板とする。鋼板内で組織を均一化させるために、また鋼板の異方性低減により、焼鈍後の鋼板の伸びおよび穴広げ性を向上させるために、熱間圧延をオーステナイト単相域にて終了する必要がある。よって、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。仕上げ圧延終了温度が850℃未満では、フェライト、マルテンサイト、ならびにベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均結晶粒径が増加し、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均アスペクト比が増加する。また、伸び、穴広げ性、および抵抗スポット溶接性が劣化する。一方、仕上げ圧延終了温度が950℃超えでは、熱延鋼板の組織が粗大になり、最終的に得られる鋼板の残留オーステナイト、マルテンサイト、ならびにベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均結晶粒径が増加し、穴広げ性、伸び、および抵抗スポット溶接性が劣化する。よって、仕上げ圧延終了温度は950℃以下とする。
熱間圧延終了後、ベイナイト変態する温度域まで熱延板を急冷して、熱延鋼板の鋼板組織をフェライト変態させずに均質に制御する。このように熱延板の組織を均質に制御することにより、最終的な鋼板組織、主にフェライトやマルテンサイトを微細化させることができる。
・第2平均冷却速度:80℃/s以上
第2平均冷却速度が80℃/s未満では、熱間圧延終了後にフェライト変態が開始されるため、熱延板の組織が不均質となり、組織の平均結晶粒径が増加し、穴広げ性や抵抗スポット溶接部のTSSが劣化する。よって、第2平均冷却速度は80℃/s以上とする。第2平均冷却速度は、好ましくは85℃/s以上とする。なお、第2平均冷却速度の上限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、好ましくは200℃/s以下とする。
・巻取り温度:440℃以下
巻取り温度が440℃超では、Nb系析出物が粗大化し、また、残部組織の平均結晶粒径が増加し、熱延板の組織が不均質となる。これにより、鋼板の穴広げ性、および抵抗スポット溶接性が劣化する。そのため、巻取り温度は440℃以下とする。巻取り温度は、好ましくは420℃以下、より好ましくは400℃以下とする。巻取り温度の下限は特に規定しないが、巻取り温度が低温になりすぎると、硬質なマルテンサイトが過剰に生成し、冷間圧延の負荷が増大するため、巻取り温度は300℃以上とすることが好ましい。
[酸洗工程]
熱間圧延工程後、熱延板に酸性処理を施し、熱延板表層のスケールを除去することが好ましい。酸洗処理は特に限定されず、塩酸、硫酸等を使用する常用の酸洗方法がいずれも適用できる。
[冷間圧延]
次いで、熱延板に冷間圧延を施し、所定の板厚の冷延板とする。冷間圧延の条件は特に限定されず、常法に従えばよい。
[焼鈍工程]
再結晶を進行させるとともに、鋼板組織にベイナイト、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイト、およびマルテンサイトを形成させて鋼板を高強度化するために、冷間圧延後に焼鈍工程を実施する。焼鈍工程としては、冷延板を、3℃/s以上30℃/s以下の平均加熱速度で850℃以上950℃以下の第1均熱温度まで加熱し、該第1均熱温度で30s以上400s以下保持した後、第1均熱温度から6℃/s以上の第3平均冷却速度で150℃以上275℃以下の冷却停止温度まで冷却し、次いで、冷延板を、375℃以上475℃以下の第2均熱温度まで加熱し、該第2均熱温度で30s以上保持した後、室温まで冷却する。なお、以下では、第1均熱温度での30s以上400s以下の保持を「第1均熱」、第2均熱温度での30s以上の保持を「第2均熱」とも称する。
・平均加熱速度:3℃/s以上30℃/s以下
冷延板を、3℃/s以上30℃/s以下の平均加熱速度で第1均熱温度まで加熱することで、焼鈍後の組織の結晶粒を微細化させ、優れた穴広げ性および抵抗スポット溶接性を得ることができる。急速に加熱すると再結晶が進行しにくくなるため、平均加熱速度は30℃/s以下とする。平均加熱速度は、好ましくは20℃/s以下とする。また、加熱速度が小さすぎるとNb系析出物が粗大化して抵抗スポット溶接性が劣化する。また、残部組織であるベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均結晶粒径が増加して、穴広げ性が劣化する。よって、平均加熱速度は3℃/s以上とする。平均加熱速度は、好ましくは5℃/s以上とする。
・第1均熱温度:850℃以上950℃以下
第1均熱はフェライトとオーステナイトの2相域もしくはオーステナイト単相域における均熱とする。第1均熱温度が850℃未満では、フェライトの体積分率が大きくなり、また、マルテンサイトの体積分率が増加し、さらに残部組織であるベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均アスペクト比が2.0を超えて、強度、穴広げ性および抵抗スポット溶接性の両立が困難になる。よって、第1均熱温度は850℃以上とする。第1均熱温度は好ましくは860℃以上とする。一方、第1均熱温度が高すぎると、Nb系析出物が粗大化し、またオーステナイトの結晶粒成長が顕著となり、マルテンサイトの平均結晶粒径が増加して、抵抗スポット溶接性および穴広げ性が劣化するため、第1均熱温度は950℃以下とする。第1均熱温度は、好ましくは920℃以下である。
・第1均熱温度での保持時間:30s以上400s以下
第1均熱温度において、再結晶を進行させ、かつ一部もしくは全ての組織をオーステナイト変態させるため、保持時間は30s以上とする。第1均熱温度での保持時間が30s未満では、フェライトの体積分率が大きくなり、TS、穴広げ性、および抵抗スポット溶接性が劣化する。第1均熱温度での保持時間は、好ましくは50s以上とする。一方、第1均熱温度での保持時間が400s超えでは、Nb系析出物が粗大化し、またマルテンサイトの平均結晶粒径が増加して、穴広げ性、ならびに抵抗スポット溶接性が劣化するため、第1均熱温度での保持時間は400s以下とする。第1均熱温度での保持時間は、好ましくは300s以下である。
次いで、上述した第1均熱温度から、6℃/s以上の第3平均冷却速度で150℃以上275℃以下の冷却停止温度まで冷却する。焼戻しマルテンサイトを生成させて優れた穴広げ性を得るために、第1均熱温度からマルテンサイト変態開始温度以下まで冷却する。これにより、第1均熱で生成したオーステナイトを一部マルテンサイト変態させる。
・第3平均冷却速度:6℃/s以上
第3平均冷却速度が6℃/s未満であると、フェライトの体積分率および平均結晶粒径が増加して、穴広げ性が劣化する。よって、第3平均冷却速度は6℃/s以上とする。第3平均冷却速度は、好ましくは8℃/s以上とする。なお、第3平均冷却速度の上限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、好ましくは50℃/s以下とする。
冷却停止温度:150℃以上275℃以下
第1均熱温度からの冷却の冷却停止温度は、150℃以上275℃以下とする。冷却停止温度が150℃未満では、冷却時にマルテンサイトが過剰に生成するため、未変態のオーステナイト、ベイナイト、および残留オーステナイトが減少して、伸びが劣化する。冷却停止温度が275℃以上では、焼戻しマルテンサイトが減少してマルテンサイトの体積分率が増加し、穴広げ性が劣化する。また、伸びおよび抵抗スポット溶接性が劣化する。そのため、冷却停止温度は150℃以上275℃以下とする。冷却停止温度は、好ましくは180℃以上である。また、冷却停止温度は、好ましくは250℃以下である。
次いで、150℃以上275℃以下の冷却停止温度まで冷却した冷延板を、375℃以上475℃以下の第2均熱温度まで再度加熱し、該第2均熱温度で30s以上保持した後、室温まで冷却する。これにより、150℃以上275℃以下のまでの冷却中に生成したマルテンサイトを焼戻して、焼戻しマルテンサイトとする。また、未変態のオーステナイトをベイナイト変態させ、ベイナイトおよび残留オーステナイトを組織中に生成する。
第2均熱温度:375℃以上475℃以下
第2均熱温度が375℃未満では、マルテンサイトの焼戻しが不十分となり、マルテンサイトの体積分率が増加して、フェライトおよびマルテンサイトとの硬度差が大きくなるため、穴広げ性、伸び、および抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が劣化する。第1均熱温度は、好ましくは400℃以上とする。また、第2均熱温度が475℃以上では、Nb系析出物が粗大化して抵抗スポット溶接性が劣化する。また、残留オーステナイトの体積分率が低下し、さらに伸びも劣化する。第1均熱温度は、好ましくは450℃以下とする。
第2均熱温度での保持時間:30s以上
第2均熱温度での保持時間が30s未満では、第2均熱でのベイナイト変態が十分に進行しないため、未変態のオーステナイトが多く残る。よって、最終的にマルテンサイトが過剰に生成してしまい、穴広げ性が劣化する。また、残留オーステナイトの体積分率が低下し、伸びおよび抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性も劣化する。そのため、第2均熱温度での保持時間は30s以上とする。第2均熱温度での保持時間は、好ましくは80s以上とする。なお、第2均熱温度での保持時間の上限は、特に規定しないが、生産技術上の制約から、好ましくは1200s以下とする。
上記の焼鈍後に、高強度薄鋼板にめっき処理を施してもよい。めっき金属の種類は特に限定されず、一例においては亜鉛である。亜鉛めっき処理としては、溶融亜鉛めっき処理、および溶融亜鉛めっき処理後に合金化処理を行う合金化溶融亜鉛めっき処理を例示できる。溶融亜鉛めっきを施す場合、めっき浴に浸漬する高強度薄鋼板の温度は、(溶融亜鉛めっき浴温度-40)℃以上、(溶融亜鉛めっき浴温度+50)℃以下とすることが好ましい。めっき浴に浸漬する高強度薄鋼板の温度が(溶融亜鉛めっき浴温度-40)℃を下回ると、鋼板がめっき浴に浸漬される際に、溶融亜鉛の一部が凝固してしまい、めっき外観を劣化させる場合があることから、高強度薄鋼板の温度は(溶融亜鉛めっき浴温度-40)℃以上とする。また、めっき浴に浸漬する高強度薄鋼板の温度が(溶融亜鉛めっき浴温度+50)℃を超えると、めっき浴の温度が上昇するため、量産性に問題がある。
また、溶融亜鉛めっき後は、450℃以上600℃以下の温度域で亜鉛めっきに合金化処理を施すことができる。450℃以上600℃以下の温度域で合金化処理を施すことにより、亜鉛めっき中のFe濃度は7%~15%になり、溶融亜鉛めっきの密着性や、塗装後の耐食性が向上する。450℃未満では、合金化が十分に進行せず、犠牲防食作用の低下や摺動性の低下を招く。一方、600℃より高い温度では、合金化の進行が顕著となり、耐パウダリング性が低下する。
溶融亜鉛めっきには、Alを0.10%以上0.20%以下含む亜鉛めっき浴を用いることが好ましい。めっき後は、めっきの目付け量を調整するために、ワイピングを行うことができる。
また、焼鈍後の冷延板に、調質圧延を施してもよい。焼鈍後の冷延板に、調質圧延を施す場合、調質圧延の伸長率は、好ましくは、0.05%以上2.0%以下とする。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す成分組成の鋼素材を溶製し、連続鋳造により鋼スラブとした。次いで、鋼スラブを、表2に示す第1平均冷却速度(冷速1)で600℃まで冷却した。次いで、鋼スラブを再加熱して、表2に示す加熱温度(加熱温度)で、表2に示す加熱時間保持した。次いで、仕上げ圧延終了温度(FDT)を表2に示す条件として鋼スラブに熱間圧延を施し、熱延板とした。次いで、熱延板を、表2に示す第2平均冷却速度(冷速2)で巻取温度(CT)まで冷却し、該巻取温度にてコイル状に巻取った。次いで、熱延板に酸洗を施した。次いで、熱延板に冷間圧延を施して、冷延板(板厚:1.4mm)とした。次いで、冷延板を、表2に示す平均加熱速度で第1均熱温度まで加熱し、該第1均熱温度において表2に示す時間(第1保持時間)保持した。次いで、冷延板を、表2に示す第3平均冷却速度(冷速3)で冷却停止温度まで冷却した。次いで、冷延板を再加熱し、表2に示す第2均熱温度で保持(第2保持時間)し、室温まで冷却して、最終的な鋼板を得た。
製造した鋼板から、JIS5号引張試験片を、圧延直角方向が長手方向(引張方向)となるように採取し、JIS Z2241(1998)に準拠した引張試験により、引張強さ(TS)および伸びを測定した。
穴広げ率は、JIS Z2256(2010)に準拠して測定した。クリアランス12.5%にて、10mmφの穴を打抜き、かえりがダイ側になるように試験機にセットした。次いで、60°の円錐状のポンチで穴を押し広げ、穴の縁に発生する割れが少なくとも1か所で厚さ方向に貫通したときの穴の径の拡大量を,初期の穴の径に対する貫通したときの穴の径の比で表し、穴広げ率(λ)とした。50%以上のλ(%)を有する鋼板を、良好な穴広げ性を有する鋼板とした。
抵抗スポット溶接部の引張せん断応力(TSS)は、JIS Z 3136に準拠して、以下のように測定した。まず、得られた鋼板から、JIS Z 3136に準拠して、引張せん断試験片を2枚切り出した。該引張せん断試験片同士を重ね合わせ、交流溶接機にセットした。該交流溶接機に取り付けられたサーボモータ加圧式で単相交流(50Hz)の溶接ガンを用いて、抵抗スポット溶接によって引張せん断試験片同士を溶接した。溶接条件は、加圧力を3.6kN、ホールドタイムを0.1sとした。溶接電流と溶接時間はナゲット径が5.0mmとなるように調整した。溶接後の引張せん断試験片を試験機にクランプを用いて固定したのち、徐々に引っ張った。引張せん断試験片が破断するまでの最大引張り荷重を測定し、引張せん断応力とした。引張せん断応力が22kN以上の場合は、抵抗スポット溶接部の引張せん断応力が良好(○)とした。
抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性は、以下のように測定した。上記と同様の引張せん断試験片を、各実施例につき2枚ずつ作成した。一方の引張せん断試験片に、上記で求めた引張せん断応力の40%の荷重を負荷しながら、室温で3.0%NaCl+0.1% NHSCN水溶液に浸漬して、該引張せん断試験片を陰極とした電解チャージを行い、引張せん断試験片の鋼中に水素を侵入させた。電流密度は0.5mA/cmとし、対極は白金とした。浸漬開始から100時間後も引張せん断試験片が破断しないものを、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が良好(○)と評価した。また、他方の引張せん断試験片に、上記で求めた引張せん断応力の60%の荷重を負荷しながら、上記と同様の条件で引張せん断試験片の鋼中に水素を侵入させた。浸漬開始から100時間後も引張せん断試験片が破断しないものを、抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性が特に良好(◎)と評価した。
前述した方法にしたがって、製造した鋼板中のフェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの体積分率、およびそれらの平均結晶粒径を算出した。前述した方法にしたがって、残留オーステナイトの体積分率を求めた。また、前述した方法にしたがって、フェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、および残留オーステナイト以外の鋼組織の種類および体積分率を決定した。前述した方法にしたがって、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均アスペクト比を算出した。さらに、前述した方法にしたがって、鋼板表面から板厚方向で50μm以上100μm以下の領域中に存在する、粒径が0.08μm未満のNb系析出物の100μm当たりの個数を算出した。
鋼板組織、引張強さ、伸び、穴広げ性、抵抗スポット溶接部における引張りせん断強度、および抵抗スポット溶接部の耐遅れ破壊特性の測定結果を、表3に示す。なお、No.26において、残部組織であるパーライトの体積分率は2%であった。また、No.26において、残部組織の平均結晶粒径およびアスペクト比としては、パーライトについては考慮せず、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの平均結晶粒径およびアスペクト比を示している。
Figure 0007088140000001
Figure 0007088140000002
Figure 0007088140000003

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.14%以上0.22%以下、
    Si:0.5%以上1.3%以下、
    Mn:2.8%以上3.8%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.004%以下、
    Al:0.01%以上0.50%以下、
    N:0.010%以下、
    Nb:0.005%以上0.08%以下、
    Ti:0.005%以上0.04%以下および
    B:0.0002%以上0.0040%以下を含有するとともに、
    Cr:0.05%以上0.35%以下、
    Mo:0.05%以上0.35%以下および
    Co:0.05%以上0.35%以下からなる群から選択される一種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    フェライトを体積分率で0%以上5%以下、
    残留オーステナイトを体積分率で3%以上15%以下、
    マルテンサイトを体積分率で0%以上10%以下、
    残部に、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトを含む複合組織を有し、
    前記フェライトの平均結晶粒径は2.0μm以下であり、
    前記残留オーステナイトの平均結晶粒径は2.5μm以下であり、
    前記マルテンサイトの平均結晶粒径は3.0μm以下であり、
    前記ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトは、平均結晶粒径が5μm以下であり、かつ平均アスペクト比が2.0以下であり、
    さらに、鋼板表面から板厚方向で50μm以上100μm以下の領域中に、粒径が0.08μm未満のNb系析出物が100μm2当たり25個以上存在する、高強度薄鋼板。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、V:0.05%以下を含有する、請求項1に記載の高強度薄鋼板。
  3. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Cu:0.50%以下、
    Ni:0.50%以下、
    Sb:0.020%以下、
    Ca:0.0050%以下および
    REM:0.0050%以下からなる群から選択される一種以上を含有する、請求項1または2に記載の高強度薄鋼板。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に係る高強度薄鋼板の製造方法であって、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の成分組成を有する溶鋼を連続鋳造によって鋼スラブとした後、600℃までの第1平均冷却速度を80℃/h以上として冷却し、
    次いで、前記鋼スラブを1200℃以上1350℃以下の加熱温度まで再加熱して、該加熱温度で60min以上保持し、
    次いで、前記鋼スラブに、仕上げ圧延の終了温度が850℃以上950℃以下の条件で熱間圧延を施して熱延板とし、
    次いで、前記熱延板を、80℃/s以上の第2平均冷却速度で440℃以下の巻取温度まで冷却した後に該巻取温度で巻取り、
    次いで、前記熱延板に酸洗を施し、
    次いで、前記熱延板に冷間圧延を施して冷延板とし、
    次いで、前記冷延板を、3℃/s以上30℃/s以下の平均加熱速度で850℃以上950℃以下の第1均熱温度まで加熱し、該第1均熱温度で30s以上400s以下保持した後、前記第1均熱温度から6℃/s以上の第3平均冷却速度で150℃以上275℃以下の冷却停止温度まで冷却し、
    次いで、前記冷延板を、375℃以上475℃以下の第2均熱温度まで加熱し、該第2均熱温度で30s以上保持した後、室温まで冷却する、高強度薄鋼板の製造方法。
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