(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例が、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、当該実施形態に関する一連の説明の後に、まとめて記載されている。
(システム構成)
図1を参照すると、車両1には、車両制御システム2が搭載されている。車両制御システム2は、後述するように、複数のセンサ類、複数の車載ECU、等を備えている。ECUはElectronic Control Unitの略である。複数のセンサ類および複数の車載ECU等は、不図示の車載ネットワークと、情報通信可能に回線接続されている。
車両制御システム2は、インターネット等の通信回線3を介して、管理サーバ4、救急車5、および救急医療機関6と情報通信可能に回線接続されている。外部装置としての管理サーバ4は、車両1の外部に設けられている。管理サーバ4は、大規模容量の記憶媒体と、並列且つ高速処理可能な少なくとも1個のプロセッサとを備えている。救急車5には、車載コンピュータ5aが搭載されている。救急医療機関6には、コンピュータ7が設けられている。
車両1に備えられた車両制御システム2と、通信回線3と、管理サーバ4と、救急車5と、救急医療機関6に備えられたコンピュータ7とによって、通報システムSが構築されている。通報システムSは、車両1とその周囲の物体との衝突事故が発生した場合に、当該事故の発生に関する通報動作を実行するように構成されている。
また、通報システムSは、車両1にて対人衝突が発生した場合に、被害者Pの受傷状態に関する通報動作を実行するように構成されている。「対人衝突」には、車両1と歩行者との衝突の他に、車両1と乗員付き軽車両との衝突、車両1と乗員付き自動二輪車との衝突が含まれる。対人衝突の典型例は、車両1と歩行者との衝突、あるいは、車両1と乗員付き自転車との衝突である。よって、被害者Pには、車両1と衝突した歩行者の他に、車両1と衝突した自転車等における乗員が含まれる。「受傷状態」は、受傷部位と受傷程度とを含む。「部位」とは、人体における部位であって、例えば、頭部、腰部、大腿部、等である。すなわち、「受傷部位」とは、車両1にて対人衝突が発生した場合に、被害者Pが受傷した、身体の部位である。「受傷程度」は、受傷部位における受傷の度合、例えば、軽度、中程度、重度、重篤、等を含む。
(車両の概略構成)
車両1は、いわゆる自動車であって、箱状の車体10を有している。車両1における前端部には、車体10の一部を構成するフロントバンパ11が設けられている。
図2~図4を用いて、車両1の概略構成について説明する。車両1における、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、および「下」の概念は、図2~図4にて矢印で示した通りである。各図中にて矢印で示した方向概念において、前後方向は、「車両全長方向」に対応する。また、左右方向は、「車幅方向」に対応する。さらに、上下方向、すなわち、車両全長方向と直交し且つ車幅方向と直交する方向は、「車高方向」に対応する。
図2を参照すると、フロントバンパ11における最外殻を構成するバンパカバー12は、ポリプロピレン等の合成樹脂によって形成されている。バンパカバー12における外表面12aには、車体10における外観を構成するための表面仕上げ(例えば塗装等)が施されている。外表面12aの反対面である裏面12bは、後方に向かって開口する凹面状に形成されている。
フロントバンパ11は、バンパカバー12と、バンパ補強部材13と、バンパアブソーバ14とを備えている。バンパ補強部材13は、バンパカバー12における裏面12bと対向するように、バンパカバー12よりも後方に配置されている。バンパ補強部材13は、車幅方向を長手方向として設けられている。剛性部材であるバンパ補強部材13は、アルミニウム合金等の金属材料によって形成されている。
バンパアブソーバ14は、バンパカバー12とバンパ補強部材13との間に配置されている。すなわち、バンパアブソーバ14は、バンパカバー12の内側に収容されている。具体的には、バンパアブソーバ14は、バンパ補強部材13における前側表面に固定されている。バンパ補強部材13における前側表面は、バンパカバー12における裏面12bと対向する表面である。衝撃吸収部材であるバンパアブソーバ14は、発泡ポリプロピレン等の、発泡性の合成樹脂によって形成されている。
本実施形態においては、バンパアブソーバ14として、アッパアブソーバ14aとロワアブソーバ14bとが設けられている。ロワアブソーバ14bは、アッパアブソーバ14aの下方に配置されている。ロワアブソーバ14bの車幅方向における両端部は、アッパアブソーバ14aの車幅方向における両端部よりも、車幅方向における内側に設けられている。すなわち、アッパアブソーバ14aの車幅方向における両端部は、ロワアブソーバ14bの車幅方向における両端部よりも、車幅方向における外側に突出するように設けられている。
図3を参照すると、車体10における前面部には、フロントグリル15と一対のヘッドライト16とが設けられている。フロントグリル15および一対のヘッドライト16は、フロントバンパ11の上方に配置されている。フロントグリル15は、車幅方向における中央部に配置されている。一対のヘッドライト16は、車体10における前面部の、車幅方向における両端部に配置されている。すなわち、一対のヘッドライト16は、車幅方向について、フロントグリル15の外側に設けられている。
フロントフード17は、車体10における前部を上方から覆うように配置されている。すなわち、フロントフード17は、車体10における前面部から後方に向かって延設されている。
フロントウィンドゥ18は、フロントフード17よりも後方に配置されている。フロントウィンドゥ18は、上端の方が下端よりも後方となるように、側面視にて斜めに延設されている。
車幅方向におけるフロントウィンドゥ18の両側には、フロントピラー19が設けられている。すなわち、フロントピラー19は、フロントウィンドゥ18の車幅方向における両端部を支持しつつ、後方且つ上方に延設されている。
図4を参照すると、車両1には、出力装置20が備えられている。出力装置20は、音声または映像を再生出力するように構成されている。本実施形態においては、出力装置20は、映像を再生出力する表示装置と、音声を再生出力するスピーカとによって構成されている。
具体的には、運転席の周辺には、出力装置20としての第一表示装置21aおよび第一スピーカ21bが備えられている。第一表示装置21aは、運転者に対して各種情報の表示および作業指示等を行うように、インストルメントパネルに設けられている。第一スピーカ21bは、運転者に対して各種情報の伝達および作業指示等を行うように、ダッシュボードにおける運転席に対向する位置に設けられている。
また、助手席の周辺には、出力装置20としての第二表示装置22aおよび第二スピーカ22bが備えられている。第二表示装置22aおよび第二スピーカ22bは、助手席乗員に対して各種情報の表示および作業指示等を行うように構成されている。具体的には、例えば、第二表示装置22aおよび第二スピーカ22bは、ダッシュボードにおける助手席に対向する位置に設けられている。
また、後部座席の周辺には、出力装置20としての第三表示装置23aおよび第三スピーカ23bが備えられている。第三表示装置23aおよび第三スピーカ23bは、後部座席乗員に対して各種情報の表示および作業指示等を行うように構成されている。具体的には、例えば、第三表示装置23aは、運転席または助手席の背面に設けられている。第三スピーカ23bは、リヤトレイに装着されている。
さらに、車体10の外表面には、出力装置20としての第四表示装置24aおよび第四スピーカ24bが備えられている。第四表示装置24aおよび第四スピーカ24bは、車両1の周囲の第三者に対して、情報の表示および作業指示等を行うように設けられている。「第三者」は、例えば、車両1の周囲を通行する通行人である。第四表示装置24aは、例えば、車体10を構成する車体パネルの側面に貼り付けられた有機EL素子によって構成され得る。ELはElectro-Luminescenceの略である。第四スピーカ24bは、例えば、車体パネルを励振する圧電素子によって構成され得る。
(車両制御システムの構成)
車両制御システム2は、車両1の各部を制御することで、各種動作を実行するように構成されている。本実施形態においては、車両制御システム2は、車両1にて対人衝突が発生した場合に、車両1と衝突した人間である被害者Pを保護するように構成されている。
車両制御システム2によって保護すべき対象である、車両1と「衝突した人間」すなわち被害者Pは、典型的には、車両1と直接的に衝突した歩行者である。但し、車両1と「衝突した人間」には、車両1と衝突した自転車等の乗員も含まれる。例えば、車両1と乗員付き自転車との衝突においては、車両1と直接的に衝突した物体は、乗員ではなく自転車である場合がある。但し、この場合であっても、自転車の乗員は、車両1と「間接的」に衝突したということが可能である。
すなわち、車両制御システム2は、車両1すなわち車体10と特定物体とが衝突した場合に、保護対象としての被害者Pを保護するように構成されている。「特定物体」には、歩行者、乗員付き自転車等が含まれる。本実施形態においては、対人衝突として、前面衝突、すなわち、特定物体と車体10の前面との衝突が想定されているものとする。以下、図5を参照しつつ、本実施形態の車両制御システム2の概略構成について説明する。
フロントバンパ11には、衝突センサ30が装着されている。衝突センサ30は、車両1に備えられることで、車両1の周囲の物体と車両1すなわちフロントバンパ11との衝突により印加された衝撃に応じた出力を発生するように構成されている。
本実施形態においては、衝突センサ30は、圧力チューブ式センサであって、車幅方向に沿った長手方向を有する長尺状に形成されている。衝突センサ30は、バンパ補強部材13に沿って車幅方向に延設されている。具体的には、衝突センサ30は、チューブ部材30aと、右側圧力センサ30bと、左側圧力センサ30cとを有している。
チューブ部材30aは、車幅方向に沿って延設された管状部材であって、合成ゴム等の合成樹脂によって形成されている。チューブ部材30aの、車幅方向における、両端部を除く大部分は、図2に示されているようにアッパアブソーバ14aに埋設されている。すなわち、本実施形態においては、衝突センサ30は、車高方向について、アッパアブソーバ14aに対応する位置に設けられている。
チューブ部材30aの車幅方向における一端部は、右側圧力センサ30bに接続されている。チューブ部材30aの車幅方向における他端部は、左側圧力センサ30cに接続されている。右側圧力センサ30bおよび左側圧力センサ30cは、チューブ部材30a内の圧力に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。このような、圧力チューブ式センサである衝突センサ30の具体的な構成については、本願の出願時点で、既に公知あるいは周知である。よって、衝突センサ30の具体的な構成についての、これ以上の説明は省略する。
車両1には、監視カメラ31が搭載されている。監視カメラ31は、車両1の周囲の画像を撮影することで、当該画像に対応する画像情報を生成するように構成されている。監視カメラ31は、いわゆるデジタルカメラ装置であって、CCDあるいはCMOS等のイメージセンサを備えている。CCDはCharge Coupled Deviceの略である。CMOSはComplementary MOSの略である。
監視カメラ31は、車両1の前方の画像を撮影するように、車室における前部、例えばルームミラー近傍に配置されている。また、本実施形態においては、監視カメラ31は、監視範囲を変更可能に構成されている。具体的には、監視カメラ31は、不図示のアクチュエータにより視野中心軸を所定の略円錐状の範囲内で揺動可能な構成を有している。
車両1には、レーダセンサ32が搭載されている。レーダセンサ32は、いわゆるミリ波レーダセンサであって、車両1の前方に存在する物体との距離を検出する、周知の構成を有している。本実施形態においては、レーダセンサ32は、図3に示されたフロントグリル15の車幅方向における中央部に装着されている。
フロントバンパ11には、複数の超音波ソナー33が装着されている。具体的には、超音波ソナー33は、フロントバンパ11における右角部と左角部とに、それぞれ1個ずつ設けられている。また、超音波ソナー33は、フロントバンパ11における前面部に、2個設けられている。超音波ソナー33は、超音波の送受信により車両1の周辺に存在する物体との距離を取得する、周知の構成を有している。
車両1には、車速センサ34、操舵角センサ35、ヨーレートセンサ36、および加速度センサ37が搭載されている。車速センサ34は、車両1の走行速度に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。車両1の走行速度を、以下単に「車速」と称する。操舵角センサ35は、車両1の操舵角に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。ヨーレートセンサ36は、車体10に作用するヨーレートに対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。加速度センサ37は、車体10に作用する加速度に対応する電気出力(例えば電圧)を発生するように構成されている。
車両1には、生体情報センサ38が搭載されている。生体情報センサ38は、運転席の周辺に配置されている。生体情報センサ38は、運転者の心理状態に関連する、運転者の生体情報を検出するように設けられている。運転者の生体情報には、心拍数、血圧値、発汗量、等のうちの少なくとも1つが含まれる。本実施形態においては、生体情報センサ38は、ステアリングホイールに装着された電極を有している。そして、生体情報センサ38は、当該電極が運転者の手と接触することで、運転者の生体情報を検出するように構成されている。
車両制御システム2は、情報受信部39aを有している。情報受信部39aは、情報発信部39bから発信された被害者Pの生体情報を受信するように設けられている。情報発信部39bは、被害者Pの生体情報を発信するように、被害者Pに装着されている。情報発信部39bから発信される被害者Pの生体情報には、被害者Pの救護のために必要な情報が含まれる。この情報は、例えば、心拍数、血圧値、血中酸素飽和度、血液型、病歴、負傷歴、等である。
(周辺監視ECUの構成)
車両制御システム2は、周辺監視ECU40を有している。周辺監視ECU40は、いわゆる車載マイクロコンピュータであって、不図示のCPU、ROM、RAM、および不揮発性RAMを備えている。不揮発性RAMは、例えば、フラッシュROM等である。周辺監視ECU40は、CPUがROMまたは不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで、各種の動作を実現可能に構成されている。また、ROMまたは不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータが、あらかじめ格納されている。各種のデータには、例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ、等が含まれる。
周辺監視ECU40は、監視カメラ31、レーダセンサ32、超音波ソナー33、車速センサ34、等と、車載ネットワークを介して回線接続されている。周辺監視ECU40は、これらの出力に基づいて、車両1の周囲の物体を検知するように構成されている。具体的には、図6を参照すると、周辺監視ECU40は、CPU等にて実現される機能上の構成として、物体認識部41と距離取得部42とを有している。
物体認識部41は、車両1の周辺に存在する物体の種別を認識するように設けられている。すなわち、物体認識部41は、画像認識技術により、カメラセンサの視野内に存在する物体の種別を認識するように構成されている。「種別」には、歩行者、自転車、自動二輪車、動物、固定障害物、等が含まれる。「動物」は、車両制御システム2による保護対象には含まれない、鹿、熊、等である。「固定障害物」は、例えば、柱、壁、等である。物体の種別を認識する画像認識技術には、パターンマッチング等が含まれる。
距離取得部42は、物体認識部41により種別を認識した物体の、車両1からの距離を取得するように設けられている。距離取得部42による、種別と対応付けた距離の取得には、周知の技術、例えば、ステレオカメラ技術、センサフュージョン技術、SFM技術、等を用いることが可能である。SFMはStructure from Motionの略である。すなわち、周辺監視ECU40は、監視カメラ31の視野内に存在する物体についての種別および距離を取得するように構成されている。また、周辺監視ECU40は、取得した種別と距離とを対応付けて、RAMまたは不揮発性RAMに記憶するように構成されている。物体認識部41による認識結果と距離取得部42による距離取得結果とを統合したものを、以下「物体検知結果」と称する。
(保護デバイスECUの構成)
車両制御システム2は、保護デバイスECU50を有している。保護デバイスECU50は、いわゆる車載マイクロコンピュータであって、不図示のCPU、ROM、RAM、および不揮発性RAMを備えている。不揮発性RAMは、例えば、フラッシュROM等である。保護デバイスECU50は、CPUがROMまたは不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで、各種の動作を実現可能に構成されている。また、ROMまたは不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータが、あらかじめ格納されている。各種のデータには、例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ、等が含まれる。
保護デバイスECU50は、衝突センサ30、周辺監視ECU40、等と、車載ネットワークを介して回線接続されている。保護デバイスECU50は、周辺監視ECU40による物体検知結果と、衝突センサ30の出力とに基づいて、フロントバンパ11に対して特定物体が衝突したか否かを検知するように構成されている。また、保護デバイスECU50は、歩行者保護デバイス51と電気接続されている。そして、保護デバイスECU50は、車両1と特定物体との衝突を検知した場合に、歩行者保護デバイス51を動作させるように構成されている。
歩行者保護デバイス51は、車両1に搭載されることで、一次衝突の後に発生する二次衝突による衝撃から被害者Pを保護するように構成されている。「一次衝突」とは、特定物体が、最初に車体10すなわちフロントバンパ11と衝突することをいう。車体10における、特定物体との一次衝突が発生した位置を、「一次衝突位置」と称する。「二次衝突」とは、一次衝突の後に、被害者Pが、車体10または地面と衝突することをいう。車体10または地面における、二次衝突が発生した位置を、「二次衝突位置」と称する。
本実施形態においては、歩行者保護デバイス51は、車体10の上面にて保護範囲を有している。すなわち、歩行者保護デバイス51は、車体10との二次衝突による衝撃から被害者Pを保護するように構成されている。具体的には、本実施形態においては、歩行者保護デバイス51として、フードポップアップ装置52と、歩行者エアバッグ装置53とが設けられている。
フードポップアップ装置52は、一次衝突発生後且つ二次衝突発生前に、車体10の一部を構成するフロントフード17を上昇させるように構成されている。具体的には、フードポップアップ装置52は、作動時にフロントフード17の後端部を上方に押し上げるように設けられている。
歩行者エアバッグ装置53は、車体10の外側にて展開することで、被害者Pを保護するように設けられている。本実施形態においては、歩行者エアバッグ装置53は、車体10上にて展開するように構成されている。具体的には、図5を参照すると、歩行者エアバッグ装置53は、右前方エアバッグ53aと、左前方エアバッグ53bと、右ピラーエアバッグ53cと、左ピラーエアバッグ53dとを有している。本実施形態においては、右前方エアバッグ53aと、左前方エアバッグ53bと、右ピラーエアバッグ53cと、左ピラーエアバッグ53dとは、それぞれ独立に展開可能に設けられている。
右前方エアバッグ53aおよび左前方エアバッグ53bは、フロントフード17とフロントウィンドゥ18とが車両全長方向について隣接する部分に対応して展開するように構成されている。右前方エアバッグ53aは、車幅方向における中央部から右端部に対応して設けられている。左前方エアバッグ53bは、車幅方向における中央部から左端部に対応して設けられている。右ピラーエアバッグ53cは、右側のフロントピラー19に対応して展開するように構成されている。左ピラーエアバッグ53dは、左側のフロントピラー19に対応して展開するように構成されている。
再び図6を参照すると、保護デバイスECU50は、CPU等にて実現される機能上の構成として、衝突検知部54と保護制御部55とを有している。衝突検知部54は、周辺監視ECU40による物体検知結果と、衝突センサ30の出力とに基づいて、フロントバンパ11に対して特定物体が衝突したか否かを検知するように設けられている。保護制御部55は、衝突検知部54が車両1と特定物体との衝突を検知した場合に、歩行者保護デバイス51を動作させるように設けられている。
(事故対応ECUの構成)
車両制御システム2は、事故対応ECU60を有している。本実施形態に係る事故対応装置である事故対応ECU60は、いわゆる車載マイクロコンピュータであって、不図示のCPU、ROM、RAM、および不揮発性RAMを備えている。不揮発性RAMは、例えば、フラッシュROM等である。事故対応ECU60は、CPUがROMまたは不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで、各種の動作を実現可能に構成されている。また、ROMまたは不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータが、あらかじめ格納されている。各種のデータには、例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ、等が含まれる。
事故対応ECU60は、衝突センサ30等の各種センサ、周辺監視ECU40、保護デバイスECU50、等と、車載ネットワークを介して回線接続されている。また、事故対応ECU60は、通信回線3と無線接続されることで、管理サーバ4等と回線接続されている。すなわち、事故対応ECU60は、管理サーバ4等と、通信回線3を介して情報通信可能に構成されている。
事故対応ECU60は、車両1に搭載されることで、車両1にて対人衝突が発生した場合の対応動作を実行するように設けられている。この対応動作には、通報動作および応急指示動作が含まれる。すなわち、事故対応ECU60は、車両1にて対人衝突事故が発生した場合に、当該事故の発生および被害者Pの受傷状態を、管理サーバ4等に通報するように構成されている。また、事故対応ECU60は、対人衝突が発生した場合に、被害者Pに対する応急処置に必要な情報を出力装置20に再生出力させるように構成されている。以下、図1~図6に加えて図7を参照しつつ、事故対応ECU60の構成の詳細について説明する。
図7は、CPU等にて実現される、事故対応ECU60の機能上の構成を示す。図7に示されているように、事故対応ECU60は、画像取得部601および衝突判定部602を備えている。また、事故対応ECU60は、条件取得部603、範囲設定部604、情報取得部605、およびダメージ推定部606を備えている。さらに、事故対応ECU60は、通報部607、状態取得部608、および応急指示部609を備えている。
画像取得部601は、画像情報を取得するように設けられている。具体的には、画像取得部601は、監視カメラ31により生成された画像情報を、車載ネットワークを介して、周辺監視ECU40から受信するようになっている。また、画像取得部601は、この画像情報に対応する物体認識部41による認識結果を、車載ネットワークを介して、周辺監視ECU40から受信するようになっている。
衝突判定部602は、衝突センサ30の出力に基づいて、対人衝突の発生を判定するように設けられている。具体的には、本実施形態においては、衝突判定部602は、衝突センサ30の出力等に基づいて衝突検知部54が車両1と特定物体との衝突を検知した場合に、車載ネットワークを介して衝突検知部54から対人衝突検知信号を受信するようになっている。
条件取得部603は、対人衝突における衝突条件を取得するように設けられている。「衝突条件」は、車両1と被害者Pとの衝突状態を規定する条件である。衝突条件には、車両1の走行状態、車両1と被害者Pとの相対位置、および車両1における衝突位置のうちの少なくともいずれか1つが含まれる。本実施形態においては、条件取得部603は、上記の走行状態、相対位置、および衝突位置のすべてを取得するようになっている。
条件取得部603による取得対象である、車両1の走行状態を、以下単に「走行状態」と称する。この走行状態には、車速、ヨーレート、加速度、等が含まれる。すなわち、条件取得部603は、車速センサ34等の出力を受信することで、走行状態を取得するようになっている。
条件取得部603による取得対象である、車両1と被害者Pとの相対位置を、以下単に「相対位置」と称する。この相対位置は、周辺監視ECU40による物体検知結果に基づいて取得されたものである。すなわち、条件取得部603は、物体検知結果を周辺監視ECU40から受信することで、相対位置を取得するようになっている。
条件取得部603による取得対象である、車両1における衝突位置を、以下単に「衝突位置」と称する。本実施形態においては、条件取得部603は、一次衝突位置を取得するように構成されている。具体的には、条件取得部603は、衝突検知部54が車両1と特定物体との衝突を検知した時点における画像情報と、衝突センサ30の出力波形とに基づいて、一次衝突位置を推定するようになっている。
一次衝突位置が、監視カメラ31の視野範囲内である場合がある。この場合、条件取得部603は、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて、一次衝突位置を推定するようになっている。
一次衝突位置が、監視カメラ31の視野範囲外である場合がある。この場合、条件取得部603は、監視カメラ31の視野範囲と、衝突センサ30の出力波形とに基づいて、一次衝突位置を概算的に推定するようになっている。
範囲設定部604は、条件取得部603により取得された衝突条件に基づいて、監視カメラ31における監視範囲を設定するように設けられている。すなわち、範囲設定部604は、被害者Pの受傷状態の推定が良好に実行されるような監視範囲を設定するように構成されている。具体的には、範囲設定部604は、上記の走行状態、相対位置、および衝突位置のうちの少なくともいずれか1つに基づいて、監視範囲の略中心に被害者Pを位置させるようになっている。
情報取得部605は、被害者Pの生体情報を取得するように設けられている。具体的には、情報取得部605は、情報受信部39aにて情報発信部39bから受信した被害者Pの生体情報を、情報受信部39aから受信するようになっている。
ダメージ推定部606は、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて、被害者Pの受傷状態を推定するように設けられている。本実施形態においては、ダメージ推定部606は、画像情報等に基づいて推定された被害者挙動に基づいて、受傷状態を推定するように構成されている。「被害者挙動」とは、一次衝突後の被害者Pの挙動である。具体的には、図8に示されているように、ダメージ推定部606は、位置取得部661、挙動取得部662、ダメージデータベース663、および演算部664を有している。
位置取得部661は、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて、一次衝突位置を取得するように設けられている。具体的には、本実施形態においては、位置取得部661は、条件取得部603により取得すなわち推定された、衝突条件としての一次衝突位置を、条件取得部603から取得するようになっている。また、位置取得部661は、一次衝突が被害者Pと車両1との直接的な衝突である場合、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて一次衝突部位を取得するようになっている。「一次衝突部位」とは、被害者Pの身体における、一次衝突時に車体10と衝突した部位である。「一次衝突部位」における「部位」の意義は、受傷部位の場合と同様である。
挙動取得部662は、被害者挙動を取得するように設けられている。被害者挙動には、二次衝突位置と、一次衝突位置から二次衝突位置までの被害者Pの移動態様と、二次衝突部位とが含まれる。「二次衝突部位」とは、被害者Pの身体における、二次衝突時に車体10または地面と衝突した部位である。被害者Pの「移動態様」には、移動距離と移動速度とが含まれる。「二次衝突部位」における「部位」の意義は、受傷部位の場合と同様である。
具体的には、挙動取得部662は、一次衝突位置と、一次衝突部位と、車両1の衝突前後における挙動とに基づいて、被害者挙動を推定するように構成されている。一次衝突位置および一次衝突部位は、上記のようにして、位置取得部661により取得されたものである。車両1の衝突前後における挙動は、衝突前後における、車両1の走行状態の時間経過を含む。すなわち、挙動取得部662は、画像取得部601により取得された画像情報と、条件取得部603により取得された衝突条件とに基づいて、被害者挙動を推定するように構成されている。
ダメージデータベース663には、計算機シミュレーションによって算出されたマップが格納されている。このマップにおいては、受傷状態が、複数の受傷パラメータと対応付けられている。受傷パラメータには、一次衝突時の車両1と被害者Pとの相対速度、一次衝突時に車体10に作用する加速度、一次衝突位置、一次衝突部位、被害者挙動、病歴、および負傷歴が含まれる。被害者挙動には、二次衝突位置、一次衝突位置から二次衝突位置までの被害者Pの移動態様、および二次衝突部位が含まれる。
演算部664は、受傷パラメータの今回値とダメージデータベース663に格納されたマップとに基づいて、被害者Pの受傷状態を推定するように設けられている。上記の通り、受傷パラメータには、被害者挙動が含まれる。被害者挙動は、挙動取得部662により取得されたものである。また、上記の通り、受傷パラメータには、被害者Pの生体情報の一部である、病歴および負傷歴が含まれる。被害者Pの生体情報は、情報取得部605により取得されたものである。
再び図7を参照すると、通報部607は、通信回線3との無線通信インタフェースを有している。すなわち、通報部607は、通信回線3と情報通信可能に無線接続されている。通報部607は、衝突判定部602が対人衝突の発生を判定した場合に、通信回線3を介して、対人衝突の発生を管理サーバ4等の外部装置に通報するように設けられている。本実施形態においては、通報部607は、推定された受傷状態に応じて、管理サーバ4等への通報内容を設定するように構成されている。
具体的には、通報部607は、対人衝突の発生の基本情報を含む、通報内容を、管理サーバ4等に通報するように構成されている。基本情報には、事故発生の日時および場所が含まれる。通報内容には、ダメージ推定部606により推定された、被害者Pの受傷状態が含まれる。また、通報内容には、推定された受傷状態に応じた緊急度情報が含まれる。すなわち、通報部607は、推定された受傷状態に応じた緊急度情報を、通報内容に付加するように構成されている。本実施形態においては、「緊急度情報」は、緊急か非緊急かを区別する情報である。さらに、通報内容には、血液型、病歴、および負傷歴を含む、被害者Pの生体情報が含まれる。
状態取得部608は、運転者の心理状態に関連する、運転者の生体情報を取得するように設けられている。具体的には、状態取得部608は、生体情報センサ38により検出された運転者の生体情報を、生体情報センサ38から受信するように構成されている。また、本実施形態においては、状態取得部608は、取得した運転者の生体情報に基づいて、運転者の心理状態レベルを判定するようになっている。
応急指示部609は、出力装置20と、情報通信可能に有線または無線で回線接続されている。応急指示部609は、衝突判定部602が対人衝突の発生を判定した場合に、ダメージ推定部606により推定された受傷状態に応じて、指示情報を出力装置20に出力するように設けられている。「指示情報」とは、被害者Pに対する応急処置を、車両1の運転者を含む乗員、または、車両1の周囲の第三者に指示するための情報である。
具体的には、応急指示部609には、複数の指示情報が格納されている。複数の指示情報の各々は、受傷部位および受傷程度に応じて作成されている。また、応急指示部609は、推定された被害者Pの受傷状態に応じて、複数の指示情報のうちから1つを選択して、出力装置20に出力するように構成されている。さらに、本実施形態においては、応急指示部609は、状態取得部608により取得された運転者の生体情報に応じて、指示情報の出力先を選択するように構成されている。具体的には、応急指示部609は、状態取得部608により判定された運転者の心理状態レベルに応じて、指示情報の出力先を選択するようになっている。
すなわち、応急指示部609は、運転者の心理状態レベルが所定の標準レベルである場合に、運転者に対応する出力装置20である第一表示装置21aおよび第一スピーカ21bに指示情報を出力するようになっている。また、応急指示部609は、運転者の心理状態レベルが所定の非標準レベルである場合、下記のように、運転者に対応する出力装置20以外の出力装置20に指示情報を出力するようになっている。
具体的には、応急指示部609は、助手席乗員が存在する場合、助手席乗員に対応する出力装置20である第二表示装置22aおよび第二スピーカ22bに指示情報を出力するようになっている。また、応急指示部609は、後部座席乗員が存在する場合、後部座席乗員に対応する出力装置20である第三表示装置23aおよび第三スピーカ23bに指示情報を出力するようになっている。さらに、応急指示部609は、運転者以外の乗員が存在しない場合に、第三者に対応する出力装置20である第四表示装置24aおよび第四スピーカ24bに指示情報を出力するようになっている。
(動作概要)
以下、本実施形態の構成による動作概要について、同構成により奏される効果とともに説明する。
監視カメラ31は、車両1の前方の画像を撮影する。これにより、車両1の周囲の画像に対応する画像情報が生成される。レーダセンサ32は、車両1の前方に存在する物体との距離を検出する。超音波ソナー33は、車両1の周辺に存在する物体との距離を検出する。車速センサ34、操舵角センサ35、ヨーレートセンサ36、および加速度センサ37は、車両1の走行状態に対応する信号を出力する。
周辺監視ECU40は、監視カメラ31、レーダセンサ32、超音波ソナー33、車速センサ34、操舵角センサ35、ヨーレートセンサ36、および加速度センサ37から出力された情報および信号を受信する。周辺監視ECU40は、受信した情報および信号に基づいて、車両1の周囲の物体を検知する。具体的には、物体認識部41は、車両1の周辺に存在する物体の種別を認識する。また、距離取得部42は、物体認識部41により種別を認識した物体の、車両1からの距離を取得する。このようにして、車両1の周囲に、如何なる種別の物体が車両1に対して如何なる位置関係で存在するかが、周辺監視ECU40により認識される。
衝突センサ30は、車両1の周囲の物体と車両1との衝突により印加された衝撃に応じた出力を発生する。衝突検知部54は、周辺監視ECU40による物体検知結果と、衝突センサ30の出力とに基づいて、フロントバンパ11に対して特定物体が衝突したか否か、すなわち、車両1にて対人衝突が発生したか否かを検知する。
車両1にて対人衝突が発生したことを衝突検知部54が検知した場合、保護制御部55は、歩行者保護デバイス51を動作させる。これにより、対人衝突の被害者Pは、歩行者保護デバイス51の保護範囲内にて、二次衝突による衝撃から保護される。また、事故対応ECU60は、車両1にて対人衝突が発生した場合の対応動作を実行する。以下、事故対応ECU60の動作概要について詳述する。
衝突センサ30の出力等に基づいて衝突検知部54が車両1と特定物体との衝突を検知した場合、衝突判定部602は、車載ネットワークを介して、衝突検知部54から対人衝突検知信号を受信する。これにより、衝突判定部602は、対人衝突の発生を判定する。すなわち、衝突判定部602は、衝突センサ30の出力に基づいて対人衝突の発生を判定しているということが可能である。
画像取得部601は、車両1の周囲の画像に対応する画像情報を取得する。具体的には、画像取得部601は、監視カメラ31により生成された画像情報を、車載ネットワークを介して、周辺監視ECU40から受信する。また、画像取得部601は、物体認識部41による認識結果を、車載ネットワークを介して、周辺監視ECU40から受信する。画像取得部601により取得された画像情報および認識結果は、後述するように、衝突条件の取得、監視範囲の設定、および受傷状態の推定に用いられる。
条件取得部603は、車両1と被害者Pとの衝突条件を取得する。具体的には、条件取得部603は、一次衝突の際の、車両1の走行状態を取得する。また、条件取得部603は、一次衝突の際の、車両1と被害者Pとの相対位置を取得する。さらに、条件取得部603は、一次衝突位置を取得する。
範囲設定部604は、条件取得部603により取得された衝突条件に基づいて、監視カメラ31における監視範囲を設定する。すなわち、範囲設定部604は、被害者Pの受傷状態の推定が良好に実行されるような監視範囲を設定する。具体的には、範囲設定部604は、監視範囲の略中心に被害者Pを位置させるように、監視カメラ31の向きを制御する。
より詳細には、一次衝突位置が監視カメラ31の視野範囲内である場合、対人衝突における被害者Pは、物体認識部41により、視野範囲内にて認識されている。そこで、この場合、範囲設定部604は、画像情報に基づいて監視範囲を設定する。具体的には、範囲設定部604は、被害者Pが監視範囲の略中心に位置するように、監視カメラ31の視野中心軸を設定する。
これに対し、一次衝突位置が監視カメラ31の視野範囲外である場合、対人衝突における被害者Pは、物体認識部41による認識の範囲外である。一方、この場合における特定物体との一次衝突は、衝突センサ30の出力波形に基づいて検知可能である。このため、この場合における一次衝突位置は、監視カメラ31の視野範囲と、衝突センサ30の出力波形とに基づいて、概算的に推定可能である。また、一次衝突発生後の被害者Pの相対位置も、車速、ヨーレート等の衝突条件に基づいて概算的に推定可能である。
そこで、この場合、範囲設定部604は、衝突条件に基づいて監視範囲を設定する。具体的には、範囲設定部604は、上記のように推定された一次衝突位置と、車速と、加速度と、ヨーレートとに基づいて、一次衝突発生後の被害者Pの推定位置を算出する。また、範囲設定部604は、算出した推定位置が監視範囲の略中心に位置するように、監視カメラ31の視野中心軸を設定する。
情報取得部605は、被害者Pの生体情報を取得する。具体的には、情報取得部605は、情報受信部39aにて情報発信部39bから受信した被害者Pの生体情報を、情報受信部39aから受信する。被害者Pの生体情報は、心拍数、血圧値、血中酸素飽和度、血液型、病歴、負傷歴、等を含む。ダメージ推定部606は、画像取得部601により取得された画像情報と、情報取得部605により取得された被害者Pの生体情報とに基づいて、受傷状態を推定する。
具体的には、衝突検知部54が車両1と特定物体との衝突を検知した時点における画像情報に基づいて、条件取得部603により、一次衝突位置が取得される。位置取得部661は、条件取得部603により取得された一次衝突位置を、条件取得部603から取得する。すなわち、位置取得部661は、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて推定された一次衝突位置を取得する。また、位置取得部661は、一次衝突が被害者Pと車両1との直接的な衝突である場合、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて、一次衝突部位を取得する。
挙動取得部662は、二次衝突位置および二次衝突部位を含む、被害者挙動を取得する。被害者挙動は、一次衝突位置と、一次衝突部位と、一次衝突時の相対速度とに基づいて、計算機シミュレーション等により推定すなわち算出される。
演算部664は、受傷パラメータの今回値とダメージデータベース663に格納されたマップとに基づいて、被害者Pの受傷状態を推定する。上記の通り、受傷パラメータには、被害者挙動が含まれる。演算部664による被害者Pの受傷状態の推定に用いられる、被害者挙動は、挙動取得部662により取得されたものである。被害者挙動は、一次衝突位置等に基づいて算出される。また、被害者挙動は、二次衝突位置と、一次衝突位置から二次衝突位置までの被害者Pの移動態様とを含む。よって、本実施形態においては、演算部664は、車両1における衝突位置と被害者挙動とに基づいて受傷状態を推定していると評価することが可能である。また、上記の通り、受傷パラメータには、被害者Pの生体情報の一部である、病歴および負傷歴が含まれる。演算部664による被害者Pの受傷状態の推定に用いられる、被害者Pの生体情報は、情報取得部605により取得されたものである。具体的には、情報取得部605は、情報受信部39aにて情報発信部39bから受信した被害者Pの生体情報を、情報受信部39aから受信する。よって、本実施形態においては、演算部664は、情報発信部39bから取得した生体情報に基づいて受傷状態を推定していると評価することが可能である。
一次衝突時に被害者Pが受ける衝撃、すなわち、衝撃加速度および衝撃力は、一次衝突時の車両1と被害者Pとの相対速度、一次衝突時に車体10に作用する加速度、および一次衝突位置により推定され得る。一次衝突時の車両1と被害者Pとの相対速度は、条件取得部603によって取得された衝突条件により推定され得る。一次衝突時に車体10に作用する加速度は、加速度センサ37の出力に基づいて、条件取得部603により取得されている。一次衝突位置は、位置取得部661により取得されている。
一次衝突が被害者Pと車両1との直接的な衝突である場合、一次衝突位置に応じて、被害者Pが受ける衝撃が異なる。具体的には、一次衝突位置が、ヘッドライト16よりも車幅方向における外側に位置する車体10の角部である状況を、「第一の状況」と称する。また、一次衝突位置がヘッドライト16である状況を、「第二の状況」と称する。さらに、一次衝突位置がフロントグリル15である状況を、「第三の状況」と称する。第一の状況と、第二の状況と、第三の状況とで、被害者Pが車体10と一次衝突した際に受ける衝撃が異なる。そこで、本実施形態においては、被害者Pの受傷状態の推定に用いられる受傷パラメータとして、一次衝突位置を考慮している。
二次衝突時に被害者Pが受ける衝撃、すなわち衝撃加速度および衝撃力は、二次衝突位置を含む被害者挙動に基づいて推定され得る。具体的には、この衝撃は、二次衝突の際の被害者Pの車体10または地面との相対移動状態と、二次衝突位置を構成する物体の物性値とに基づいて推定され得る。
被害者Pの受傷状態は、一次衝突部位にて受ける衝撃と、二次衝突部位にて受ける衝撃と、実際の過去の事故例についての各種情報とに基づいて、計算機シミュレーションによって算出可能である。よって、ダメージデータベース663に格納されたマップにおいては、受傷状態が、複数の受傷パラメータと対応付けられている。受傷パラメータには、一次衝突時の車両1と被害者Pとの相対速度、一次衝突時の加速度、一次衝突位置、一次衝突部位、二次衝突位置、一次衝突位置から二次衝突位置までの被害者Pの移動態様、二次衝突部位、病歴、および負傷歴が含まれる。そこで、演算部664は、受傷パラメータの今回値に基づいて、上記のマップから受傷状態を読み出す。
上記の通り、演算部664による受傷状態の推定に用いられる受傷パラメータには、画像取得部601により取得された画像情報に基づくものが含まれる。したがって、ダメージ推定部606は、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて、受傷状態を推定しているということが可能である。また、受傷状態の推定は、事故対応ECU60に設けられたダメージ推定部606により実行される。すなわち、ダメージ推定部606は、事故対応装置である事故対応ECU60に、コンピュータ実装されている。
通報部607は、衝突判定部602が対人衝突の発生を判定した場合に、通信回線3を介して、対人衝突の発生を管理サーバ4等の外部装置に通報する。通報部607による通報内容には、ダメージ推定部606により推定された、被害者Pの受傷状態が含まれる。また、通報内容には、推定された受傷状態に応じた緊急度情報が含まれる。さらに、通報内容には、被害者Pの血液型、病歴、および負傷歴を含む、生体情報が含まれる。
応急指示部609は、衝突判定部602が対人衝突の発生を判定した場合に、推定された被害者Pの受傷状態に応じて、指示情報を出力装置20に出力する。この指示情報は、被害者Pに対する応急処置を乗員または第三者に指示するための情報である。具体的には、例えば、被害者Pが歩行者エアバッグ装置53によって一旦保護された後、被害者Pが頭部から地面に落下する場合があり得る。この場合、頭部打撲に対応する指示情報が出力される。また、この場合、被害者Pの手および脚の動きが確認されなければ、頭部打撲により意識がない状態に対応する指示情報が出力される。あるいは、例えば、被害者Pの大腿部に骨折が生じることで、脚部の外見形状が異常となることがあり得る。この場合、大腿部骨折に対応する指示情報が出力される。
上記の通り、本実施形態の構成によれば、対人衝突が発生した場合、取得した画像情報に基づいて推定された被害者Pの受傷状態に応じて、指示情報が出力装置20に出力される。これにより、車両1の運転者を含む乗員、または、車両1の周囲の第三者に、応急処置を指示することができる。すなわち、乗員または第三者は、出力装置20により再生出力される指示情報に基づいて、応急処置を確実に実行することができる。したがって、かかる構成によれば、対人衝突が発生してから救急車5が到着するまでの間に、応急処置を迅速且つ適切に行うことが可能となる。
上記の通り、本実施形態の構成においては、事故対応ECU60は、車両1の外部に設けられた外部装置である管理サーバ4等と、通信回線3を介して情報通信可能に構成されている。また、事故対応ECU60は、通報部607を備えている。通報部607は、通信回線3を介して、対人衝突の発生を、管理サーバ4等に通報するように設けられている。
対人衝突の発生は、衝突判定部602により判定される。対人衝突が発生した場合、通報部607は、対人衝突の発生を、管理サーバ4等に通報する。すなわち、対人衝突の発生の判定および通報は、車両制御システム2により、乗員あるいは第三者による特別な操作を要することなく自動的に実行される。通報部607からの通報に対応して、救急車5は、被害者Pの救助のために、事故現場に急行する。したがって、かかる構成によれば、対人衝突が発生した場合に、通報が迅速且つ確実に実行されるとともに、通報により救急車5が到着するまでの間に応急処置を迅速且つ適切に行うことが可能となる。
上記の通り、本実施形態の構成においては、事故対応ECU60は、ダメージ推定部606を備えている。事故対応ECU60は、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて、被害者Pの受傷状態を推定するように設けられている。
かかる構成においては、被害者Pの受傷状態の推定は、コンピュータ実装されたダメージ推定部606により実行される。具体的には、受傷状態は、位置取得部661により取得された一次衝突位置および一次衝突部位と、挙動取得部662により取得された被害者挙動と、ダメージデータベース663に格納されたマップとに基づいて推定される。したがって、受傷状態が良好な精度で推定され得る。
上記の通り、本実施形態の構成においては、通報部607は、ダメージ推定部606により推定された受傷状態を管理サーバ4等に通報するように構成されている。かかる構成においては、通報部607からの通報に対応して、救急車5および/または救急医療機関6には、推定された受傷状態が提供される。したがって、救急車5および/または救急医療機関6にて、被害者Pの収容後に、適切な処置が迅速に行われ得る。
上記の通り、本実施形態の構成においては、通報部607は、ダメージ推定部606により推定された受傷状態に応じて、通報内容を設定するように構成されている。具体的には、通報部607は、推定された受傷状態に応じた緊急度情報を、通報内容に付加するようになっている。
かかる構成においては、救急車5および/または救急医療機関6には、推定された受傷状態に応じた通報内容が通報部607から通報される。この通報内容には、推定された受傷状態に応じた緊急度情報が付加される。したがって、かかる構成によれば、被害者Pの受傷状態に応じた救急車5および/または救急医療機関6による被害者Pの迅速な収容と、その後の適切な処置とが、良好に実現され得る。
上記の通り、本実施形態の構成においては、ダメージ推定部606は、被害者Pの生体情報を発信するように被害者Pに装着された情報発信部39bから取得した生体情報に基づいて、被害者Pの受傷状態を推定する。したがって、被害者Pの受傷状態が良好な精度で推定され得る。
上記の通り、本実施形態の構成においては、通報部607は、情報発信部39bから発信された被害者Pの血液型、病歴、および負傷歴に関する情報を、管理サーバ4等の外部装置に通報する。したがって、救急車5および/または救急医療機関6による被害者Pの収容後の、適切な処置が、良好に実現され得る。
上記の通り、本実施形態の構成においては、ダメージ推定部606は、衝突位置および被害者挙動に基づいて、被害者Pの受傷状態を推定する。衝突位置は、衝突センサ30の出力および/または画像情報に基づいて取得される。被害者挙動は、車両1における衝突前後の挙動と衝突位置とに基づいて、計算機シミュレーションにより推定される。したがって、被害者Pの受傷状態が良好な精度で推定され得る。
上記の通り、本実施形態の構成においては、事故対応ECU60は、条件取得部603と範囲設定部604とを備えている。条件取得部603は、対人衝突における、車両1の走行状態、車両1と被害者Pとの相対位置、および車両1における衝突位置のうちの少なくともいずれか1つを含む、衝突条件を取得する。範囲設定部604は、条件取得部603により取得された衝突条件に基づいて、監視範囲を変更可能な監視カメラ31における監視範囲を設定する。
かかる構成によれば、範囲設定部604は、被害者Pの受傷状態の推定が良好に実行されるような監視範囲を設定することができる。したがって、衝突条件の取得および受傷状態の推定に用いられる画像情報が、画像取得部601により良好に取得され得る。
上記の通り、本実施形態の構成においては、事故対応ECU60は、状態取得部608を備えている。状態取得部608は、車両1の運転者の心理状態に関連する、運転者の生体情報を取得する。応急指示部609は、状態取得部608により取得された運転者の生体情報に応じて、複数の出力装置20のうちから、指示情報の出力先を選択する。複数の出力装置20には、運転者に対応する出力装置20、運転者以外の乗員に対応する出力装置20、および第三者に対応する出力装置20が含まれる。
生体情報センサ38により検出され状態取得部608により取得される運転者の生体情報は、心拍数、血圧値、発汗量、等のうちの少なくとも1つを含む。これらの生体情報は、一般的に、運転者の心理状態が冷静であるほど低くなる。よって、生体情報センサ38により検出された運転者の生体情報に基づいて、運転者の心理状態を判定することが可能である。
対人衝突した車両1における運転者の心理状態が、正確な応急処置が可能な程度に安定している場合があり得る。この場合の、状態取得部608により判定される運転者の心理状態レベルは、所定の標準レベルとなる。そこで、この場合、応急指示部609は、運転者に対応する出力装置20である第一表示装置21aおよび第一スピーカ21bに指示情報を出力する。これにより、運転者による応急処置が、迅速且つ適切に行われる。
これに対し、対人衝突した車両1における運転者の心理状態が、正確な応急処置ができなくなる程度に不安定となる場合があり得る。この場合の、状態取得部608により判定される運転者の心理状態レベルは、所定の非標準レベルとなる。この場合、運転者以外の乗員、あるいは、車両1の周囲の第三者に助力を求めた方が、被害者Pに対する迅速且つ適切な応急処置の実行が期待できる。
そこで、この場合、応急指示部609は、運転者に対応する出力装置20である第一表示装置21aおよび第一スピーカ21bには、指示情報を出力しない。一方、応急指示部609は、助手席乗員が存在する場合、助手席乗員に対応する出力装置20である第二表示装置22aおよび第二スピーカ22bに指示情報を出力する。あるいは、応急指示部609は、後部座席乗員が存在する場合、後部座席乗員に対応する出力装置20である第三表示装置23aおよび第三スピーカ23bに指示情報を出力する。あるいは、応急指示部609は、運転者以外の乗員が存在しない場合に、第三者に対応する出力装置20である第四表示装置24aおよび第四スピーカ24bに指示情報を出力する。これにより、被害者Pに対する応急処置を迅速且つ適切に行うことが可能となる。
(動作例)
以下、上記構成による動作例について、フローチャートを用いて説明する。なお、図面中、「ステップ」を単に「S」と略記する。また、事故対応ECU60のCPU、ROM、RAM、および不揮発性RAMを、以下単にCPU、ROM、RAM、および不揮発性RAMと略記する。
(事故対応制御)
CPUは、図9に示された事故対応制御ルーチンを、所定時間(例えば10msec)毎に繰り返し起動する。図9に示された事故対応制御ルーチンが起動されると、まず、ステップ901にて、CPUは、対人衝突が発生したか否かを判定する。具体的には、CPUは、衝突判定部602が対人衝突検知信号を衝突検知部54から受信したか否かを判定する。
対人衝突が発生した場合(すなわちステップ901=YES)、CPUは、ステップ902以降の処理を実行した後、本ルーチンを終了する。一方、対人衝突が発生していない場合(すなわちステップ901=NO)、CPUは、ステップ902以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを終了する。よって、以下、対人衝突が発生したものとして(すなわちステップ901=YES)、本ルーチンの説明を続行する。
ステップ902にて、CPUは、監視カメラ31における監視範囲を設定する。ステップ903にて、CPUは、被害者Pの受傷状態を推定する。ステップ904にて、CPUは、通報部607による通報内容を設定する。ステップ905にて、CPUは、ステップ904にて設定された通報内容を、通報部607により、管理サーバ4等の外部装置に通報する。ステップ906にて、CPUは、ステップ903にて推定された被害者Pの受傷状態に応じた指示情報を取得する。ステップ907にて、CPUは、ステップ906にて取得された指示情報を出力装置20に出力する。ステップ902~ステップ907の処理を実行した後、CPUは、本ルーチンを終了する。
(監視範囲設定)
図10のフローチャートに示された一連の処理は、図9におけるステップ902の処理に対応する。図10に示された監視範囲設定処理において、まず、CPUは、ステップ1001にて、対人衝突が発生したか否かを判定する。ステップ1001の処理は、図9におけるステップ901の処理と同様である。
対人衝突が発生した場合(すなわちステップ1001=YES)、CPUは、処理をステップ1002以降に進行させる。一方、対人衝突が発生していない場合(すなわちステップ1001=NO)、CPUは、ステップ1002以降の処理をすべてスキップして、監視範囲設定処理を終了する。よって、以下、対人衝突が発生したものとして(すなわちステップ1001=YES)、監視範囲設定処理の説明を続行する。
ステップ1002にて、CPUは、画像情報を、物体検知結果とともに取得する。ステップ1002の処理は、画像取得部601の動作に対応する。次に、ステップ1003にて、CPUは、衝突条件を取得する。ステップ1003の処理は、条件取得部603の動作に対応する。続いて、ステップ1004にて、CPUは、現時点での監視カメラ31の視野範囲内に被害者Pが存在するか否かを判定する。
ステップ1004の判定が「YES」である場合、現時点での監視カメラ31の視野範囲内に、被害者Pが存在する。そこで、この場合、CPUは、ステップ1005の処理を実行した後、監視範囲設定処理を終了する。ステップ1005にて、CPUは、被害者Pが監視範囲の略中心に位置するように、画像情報に基づいて監視カメラ31の監視範囲を設定する。
ステップ1004の判定が「NO」である場合、現時点での監視カメラ31の視野範囲内には、被害者Pは存在しない。そこで、この場合、CPUは、ステップ1005の処理に代えてステップ1006の処理を実行した後、監視範囲設定処理を終了する。ステップ1006にて、CPUは、車速等の衝突条件に基づいて、監視カメラ31の監視範囲を設定する。
(受傷状態推定)
図11のフローチャートに示された一連の処理は、図9におけるステップ903の処理に対応する。図11に示された受傷状態推定処理において、CPUは、ステップ1101~ステップ1106の処理を、順に実行する。
ステップ1101にて、CPUは、被害者Pの生体情報を取得する。ステップ1101の処理は、情報取得部605の動作に対応する。ステップ1102にて、CPUは、画像情報を取得する。ステップ1102の処理は、画像取得部601の動作に対応する。ステップ1103にて、CPUは、一次衝突位置を、一次衝突部位とともに推定する。ステップ1103の処理は、位置取得部661の動作に対応する。ステップ1104にて、CPUは、被害者挙動を推定する。ステップ1104の処理は、挙動取得部662の動作に対応する。ステップ1105にて、CPUは、受傷部位を推定する。ステップ1106にて、CPUは、受傷程度を推定する。ステップ1105およびステップ1106の処理は、演算部664の動作に対応する。
(通報内容設定)
図12のフローチャートに示された一連の処理は、図9におけるステップ904の処理に対応する。図12に示された通報内容設定処理において、CPUは、ステップ1201~ステップ1204の処理を順に実行した後、処理をステップ1205に進行させる。
ステップ1201にて、CPUは、ステップ1101にて取得した被害者Pの生体情報を読み出す。ステップ1202にて、CPUは、ステップ1105にて推定した被害者Pの受傷部位を読み出す。ステップ1203にて、CPUは、ステップ1106にて推定した被害者Pの受傷程度を読み出す。ステップ1204にて、CPUは、ステップ1201~ステップ1203にて読み出された情報を合成して、所定フォーマットの通報データを作成する。
ステップ1205にて、CPUは、受傷程度が軽傷であるか否かを判定する。受傷程度が重傷である場合(すなわちステップ1205=NO)、CPUは、ステップ1206の処理を実行した後、通報内容設定処理を終了する。ステップ1206にて、CPUは、ステップ1204にて作成された通報データに、緊急救護を要する旨の緊急度情報を付加する。一方、受傷程度が軽傷である場合(すなわちステップ1205=YES)、CPUは、ステップ1206の処理をスキップして、通報内容設定処理を終了する。この場合、緊急救護を要する旨の緊急度情報は付加されない。
(応急指示)
図13のフローチャートに示された一連の処理は、図9におけるステップ907の処理に対応する。図13に示された応急指示処理において、CPUは、まず、ステップ1301およびステップ1302の処理を実行する。
ステップ1301にて、CPUは、生体情報センサ38により検出された運転者の生体情報に基づいて、運転者の心理状態レベルを判定する。ステップ1301の処理は、状態取得部608の動作に対応する。次に、ステップ1302にて、CPUは、運転者の心理状態レベルが所定の標準レベルであるか否かを判定する。
運転者の心理状態レベルが標準レベルである場合(すなわちステップ1302=YES)、運転者による迅速且つ適切な応急処置が期待できる。そこで、この場合、CPUは、処理をステップ1303に進行させる。ステップ1303にて、CPUは、運転者に対応する出力装置20である第一表示装置21aおよび第一スピーカ21bに指示情報を出力する。これにより、運転者向けの、応急処置の指示が開始する。
運転者の心理状態レベルが非標準レベルである場合(すなわちステップ1302=NO)、運転者以外の者に応急処置を実行させることが好ましい。そこで、この場合、CPUは、処理をステップ1304に進行させる。ステップ1304にて、CPUは、運転者以外の乗員が存在するか否かを判定する。
運転者以外の乗員が存在する場合(すなわちステップ1304=YES)、当該乗員による迅速且つ適切な応急処置が期待できる。そこで、この場合、CPUは、処理をステップ1305に進行させる。ステップ1305にて、CPUは、乗員の存在態様に応じて、助手席乗員および/または後部座席乗員に対応する出力装置20に指示情報を出力する。これにより、当該乗員向けの、応急処置の指示が開始する。
運転者以外の乗員が存在しない場合(すなわちステップ1304=NO)、車両1の周囲の第三者による迅速且つ適切な応急処置が期待できる。そこで、この場合、CPUは、処理をステップ1306に進行させる。ステップ1306にて、CPUは、第三者に対応する出力装置20である第四表示装置24aおよび第四スピーカ24bに指示情報を出力する。これにより、第三者向けの、応急処置の指示が開始する。
ステップ1303、ステップ1305、またはステップ1306により、応急処置の指示が開始した後、CPUは、処理をステップ1307に進行させる。ステップ1307にて、CPUは、応急処置の指示が終了したか否かを判定する。応急処置の指示中は、ステップ1307の判定が「NO」となり、CPUは、応急指示処理の終了を待機する。応急処置の指示が終了すると、ステップ1307の判定が「YES」となり、応急指示処理が終了する。
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に限定されない。具体的には、例えば、本発明の「外部装置」は、管理サーバ4に限定されない。すなわち、例えば、「外部装置」は、救急車5に搭載された車載コンピュータ5aであってもよい。あるいは、例えば、「外部装置」は、救急医療機関6に備えられたコンピュータ7であってもよい。
換言すれば、管理サーバ4は、救急車5に搭載されていてもよい。すなわち、管理サーバ4は、救急車5に搭載された車載コンピュータ5aであってもよい。あるいは、管理サーバ4は、救急医療機関6に設けられていてもよい。すなわち、管理サーバ4は、救急医療機関6に備えられたコンピュータ7であってもよい。
通報システムSは、救急車5に代えて、あるいはこれとともに、救急ヘリコプタを含んでいてもよい。
出力装置20の構成および配置も、上記実施形態にて示された具体例に限定されない。例えば、第一表示装置21aおよび第一スピーカ21bの配置は、上記の具体例から適宜変更され得る。具体的には、例えば、第一表示装置21aは、車室における天井に設けられていてもよい。また、第一スピーカ21bは、運転席に対応するドアトリムに設けられていてもよい。また、第一表示装置21aおよび/または第一スピーカ21bは、運転席に対応するドアミラーに設けられていてもよい。あるいは、第一表示装置21aと第一スピーカ21bとのうちの一方は、省略され得る。
第二表示装置22aおよび第二スピーカ22bについても同様である。すなわち、例えば、第二表示装置22aおよび第二スピーカ22bの配置は、上記の具体例から適宜変更され得る。具体的には、例えば、第二表示装置22aは、車室における天井に設けられていてもよい。また、第二スピーカ22bは、助手席に対応するドアトリムに設けられていてもよい。また、第二表示装置22aおよび/または第二スピーカ22bは、助手席に対応するドアミラーに設けられていてもよい。あるいは、第二表示装置22aと第二スピーカ22bとのうちの一方は、省略され得る。
第三表示装置23aおよび第三スピーカ23bについても同様である。すなわち、例えば、第三表示装置23aおよび第三スピーカ23bの配置は、上記の具体例から適宜変更され得る。具体的には、例えば、第三表示装置23aは、車室における天井に設けられていてもよい。また、第三スピーカ23bは、ドアトリムに設けられていてもよい。あるいは、第三表示装置23aと第三スピーカ23bとのうちの一方は、省略され得る。
運転者向けの出力装置20と、助手席乗員向けの出力装置20とは、共通化され得る。すなわち、第一表示装置21aと第二表示装置22aとを共通化した表示装置が、センターコンソールに設けられ得る。また、第一スピーカ21bと第二スピーカ22bとを共通化したスピーカが、カーオーディオにおける前席用スピーカとして設けられ得る。この場合、生体情報センサ38および状態取得部608は、省略され得る。
衝突センサ30の構成は、上記実施形態にて示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、衝突センサ30は、圧力チャンバ式センサであってもよいし、光ファイバ式センサであってもよい。
衝突センサ30は、圧電性高分子フィルム素子によって形成された圧電フィルム式センサであってもよい。この場合、圧電フィルム式の衝突センサ30は、バンパカバー12における、バンパ補強部材13と対向する裏面12bに支持されている。なお、圧電フィルム式の衝突センサ30の具体的な構成および配置については、本願の出願時点で既に公知あるいは周知である。よって、圧電フィルム式の衝突センサ30についてのこれ以上の説明は省略する。
監視カメラ31は、視野範囲を機械的に移動することで監視範囲を変更可能な構成に限定されない。すなわち、例えば、監視カメラ31は、広角な視野範囲を有していて、そのうちの一部を監視範囲としてソフトウエア的に設定可能に構成されていてもよい。
レーダセンサ32は、レーザレーダセンサであってもよい。あるいは、レーダセンサ32として、ミリ波レーダセンサとレーザレーダセンサとの双方が設けられていてもよい。
運転者も情報受信部39aを装着している場合があり得る。この場合、生体情報センサ38に代えて、情報受信部39aが用いられ得る。
上記実施形態においては、歩行者エアバッグ装置53は、右前方エアバッグ53aと、左前方エアバッグ53bと、右ピラーエアバッグ53cと、左ピラーエアバッグ53dとを有していた。しかしながら、本発明は、かかる構成に限定されない。すなわち、歩行者エアバッグ装置53は、他のエアバッグを備えていてもよい。
上記実施形態においては、歩行者エアバッグ装置53は、複数領域にてそれぞれ独立に展開可能に分割されていた。しかしながら、本発明は、かかる構成に限定されない。すなわち、例えば、右前方エアバッグ53aと、左前方エアバッグ53bと、右ピラーエアバッグ53cと、左ピラーエアバッグ53dとは、一体的に膨張するように構成されていてもよい。
画像取得部601による画像情報の取得態様については、特段の限定はない。すなわち、上記実施形態においては、画像取得部601は、監視カメラ31から周辺監視ECU40に送信された画像情報を、周辺監視ECU40から受信していた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。具体的には、例えば、画像取得部601は、画像情報を監視カメラ31から直接的に受信してもよい。
衝突判定部602は、保護デバイスECU50に設けられた衝突検知部54と同様の機能を有していてもよい。すなわち、衝突判定部602は、衝突センサ30の出力を受信することで、フロントバンパ11に対して特定物体が衝突したか否かを検知するようになっていてもよい。あるいは、保護デバイスECU50の機能と事故対応ECU60の機能とが統合されて1個の衝突対応ECUが構成される場合があり得る。この場合、衝突検知部54と衝突判定部602とは、1個の機能ブロックとして共通化される。
条件取得部603は、衝突センサ30の出力に基づいて、一次衝突位置を推定するようになっていてもよい。すなわち、衝突センサ30が圧力チューブ式センサである場合、右側圧力センサ30bにおける出力波形と、左側圧力センサ30cにおける出力波形とに基づいて、車幅方向における一次衝突位置を推定することが可能である。あるいは、衝突センサ30が圧電フィルム式センサである場合、衝撃により電圧が発生した位置を特定することで、車幅方向における一次衝突位置を推定することが可能である。これらの場合、二次衝突位置は、推定した一次衝突位置と車両1の走行状態とに基づいて推定され得る。すなわち、二次衝突位置は、一次衝突位置と、車両1の衝突前後における挙動とに基づいて推定され得る。
上記実施形態においては、範囲設定部604による監視範囲設定のために条件取得部603が取得する「衝突条件」には、走行状態、相対位置、一次衝突位置、のすべてが含まれていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、上記の走行状態、相対位置、および衝突位置のうちの、いずれか1つまたは2つは、条件取得部603が取得する「衝突条件」から除外され得る。要するに、被害者Pの受傷状態の推定が良好に実行されるように監視カメラ31による監視範囲が設定される限度で、条件取得部603の機能は簡略化され得る。
監視カメラ31は、広角な視野範囲を有しているとともに、視野範囲の全範囲において良好な光学特性(例えば収差特性等)および解像度を有している場合があり得る。この場合、視野範囲の端部に被害者Pが位置していても、画像情報に基づく受傷状態の推定が可能となる。よって、この場合、範囲設定部604は省略され得る。
範囲設定部604が省略される場合、範囲設定部604による監視範囲設定のための衝突条件を取得する条件取得部603も、省略され得る。条件取得部603が省略される場合、位置取得部661は、上記実施形態における条件取得部603が有する機能の全部または一部を有していてもよい。
通報および/または受傷状態の推定において、被害者Pの生体情報は必須ではない。したがって、情報受信部39aおよび/または情報取得部605は、省略され得る。
上記実施形態においては、被害者Pの受傷状態の推定は、車両1すなわち車両制御システム2に備えられた事故対応ECU60により実行される。すなわち、ダメージ推定部606は、事故対応ECU60に設けられている。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。
具体的には、例えば、被害者Pの受傷状態の推定は、外部装置(例えば管理サーバ4)により実行されてもよい。すなわち、図14に示されているように、ダメージ推定部606は、外部装置に設けられていてもよい。この場合、上記実施形態に係る事故対応ECU60における、ダメージ推定部606以外の機能構成は、車両1すなわち車両制御システム2に設けられ得る。
かかる構成によれば、ダメージデータベース663の記憶容量を含めたダメージ推定部606の処理能力が、可及的に増大され得る。したがって、受傷状態の推定が、良好な精度で実行され得る。特に、ダメージ推定部606を人工知能により実現することで、処理速度および推定精度が、よりいっそう向上する。
同様に、ダメージ推定部606における機能構成の一部が外部装置(例えば管理サーバ4)に設けられ、残部が事故対応ECU60に設けられていてもよい。具体的には、例えば、ダメージデータベース663は、外部装置に設けられ得る。この場合、演算部664も、ダメージデータベース663が設けられる外部装置と同一の外部装置に設けられ得る。
上記実施形態に記載のように、近年、フードポップアップ装置52または歩行者エアバッグ装置53を含む歩行者保護デバイス51が車両1に搭載される割合が高まっている。また、歩行者保護デバイス51として、車両1の前方の地面上にて展開される、エアバッグまたは網も提案されている。これらのような歩行者保護デバイス51を搭載した車両1において、歩行者保護デバイス51による保護範囲外にて被害者Pが地面に落下すると、被害者Pの受傷程度が高くなる可能性がある。
そこで、通報部607は、被害者Pが歩行者保護デバイス51による保護範囲外にて地面に落下した場合に、緊急度情報を付加するように構成されていてもよい。かかる構成によれば、被害者Pの受傷程度が高い可能性がある対人衝突が発生した場合に、通報内容に緊急度情報が付加される。これにより、救急車5および/または救急医療機関6による被害者Pの迅速な収容と、その後の適切な処置とが、良好に実現され得る。図15は、かかる構成における動作例を示す。
図15におけるステップ1501~ステップ1504の処理内容は、それぞれ、図12におけるステップ1201~ステップ1204の処理内容と同一である。よって、以下、上記実施形態と本変形例との相違部分を主として説明する。
図15に示されているように、CPUは、ステップ1501~ステップ1504の処理を実行した後、処理をステップ1505に進行させる。ステップ1505にて、CPUは、一次衝突発生後の被害者Pの落下位置が、歩行者保護デバイス51による保護範囲内であるか否かを判定する。すなわち、CPUは、二次衝突位置が、歩行者保護デバイス51による保護範囲外の地面であるか否かを判定する。
被害者Pが歩行者保護デバイス51による保護範囲外にて地面に落下した場合、ステップ1505の判定が「NO」となる。この場合、CPUは、ステップ1506の処理を実行した後、通報内容設定処理を終了する。ステップ1506にて、CPUは、ステップ1504にて作成された通報データに、緊急度情報を付加する。
一方、被害者Pの落下位置が歩行者保護デバイス51による保護範囲内である場合、ステップ1505の判定が「YES」となる。この場合、CPUは、ステップ1506の処理をスキップして、通報内容設定処理を終了する。
上記の通り、歩行者保護デバイス51による保護範囲外にて被害者Pが地面に落下すると、被害者Pの受傷程度が高くなる可能性がある。そこで、応急指示部609は、被害者Pが歩行者保護デバイス51による保護範囲外にて地面に落下した場合に、指示情報を出力するように構成されていてもよい。かかる構成によれば、被害者Pの受傷程度が高い可能性がある対人衝突が発生した場合に、被害者Pに対する応急処置を乗員等に指示することができる。
図16は、かかる構成における動作例を示す。図16におけるステップ1601~ステップ1605の処理内容は、それぞれ、図9におけるステップ901~ステップ905の処理内容と同一である。よって、以下、上記実施形態と本変形例との相違部分を主として説明する。
ステップ1605の処理に続いて、CPUは、処理をステップ1606に進行させる。ステップ1606にて、CPUは、一次衝突発生後の被害者Pの落下位置が、歩行者保護デバイス51による保護範囲外であるか否かを判定する。ステップ1606の判定内容は、ステップ1505の判定内容と同様である。
被害者Pが歩行者保護デバイス51による保護範囲外にて地面に落下した場合、ステップ1606の判定が「YES」となる。この場合、CPUは、ステップ1607およびステップ1608の処理を実行した後、本ルーチンを終了する。ステップ1607およびステップ1608の処理内容は、それぞれ、図9におけるステップ906およびステップ907の処理内容と同一である。一方、被害者Pの落下位置が歩行者保護デバイス51による保護範囲内である場合、ステップ1606の判定が「NO」となる。この場合、CPUは、ステップ1607およびステップ1608の処理をスキップして、本ルーチンを終了する。
被害者Pが所有する携帯端末に加速度センサを設けることで、当該携帯端末により衝突検知がなされる場合があり得る。この場合、事故発生の通報は、当該携帯端末によって、自動的に実行され得る。あるいは、事故発生の通報は、道路脇に配置された監視カメラ画像の解析結果に基づいて実行されることがあり得る。したがって、通報部607は、省略され得る。
被害者Pに対する応急処置の内容は、受傷部位等に応じて異なり得る。一方、応急処置を実行する車両1の乗員あるいはその周囲の第三者は、医療専門家であるとは限らない。このため、応急処置の進捗状況に応じて、応急処置の実行者に対する作業指示を的確に行うことが重要である。なお、応急処置の実行者を、以下単に「実行者」と称する。
図17は、応急処置の進捗状況に応じた作業指示を実現するための構成を示す。図17に示された変形例において、事故対応ECU60は、画像取得部601~応急指示部609を備えている。さらに、本変形例においては、事故対応ECU60は、挙動取得部691および挙動判定部692を備えている。
挙動取得部691は、画像取得部601により取得された画像情報を解析することにより、実行者の挙動を取得するように設けられている。具体的には、挙動取得部691は、応急指示部609により指示情報の出力が開始された後の画像情報に基づいて、実行者を抽出するように構成されている。また、挙動取得部691は、抽出した実行者の挙動を解析するように構成されている。画像情報に基づく実行者の抽出および挙動解析の手法としては、例えば、モーションキャプチャを用いた挙動解析と同様の、周知の手法を応用することが可能である。
挙動判定部692は、挙動取得部691により取得された実行者の挙動が応急処置の手順と合致しているか否かを判定するように設けられている。具体的には、挙動判定部692は、辞書情報と実挙動情報とを照合することで、実際の実行者の挙動が応急処置の手順と合致しているか否かを判定するように構成されている。辞書情報は、応急処置実行中の実行者の標準的な挙動に対応する情報である。辞書情報は、事故対応ECU60のROM、不揮発性RAM、または書換可能な記憶媒体(例えばハードディスク等)に格納されている。実挙動情報は、挙動取得部691により取得された、実際の実行者の挙動に対応する情報である。
応急指示部609は、挙動判定部692の判定結果を実行者に通知するように構成されている。すなわち、応急指示部609は、実行者の挙動が応急処置の手順と合致していない事実を挙動判定部692が判定した場合に、当該事実を実行者に通知するとともに、正しい手順に対応する指示情報を出力装置20に出力するようになっている。
かかる構成を有する本変形例の事故対応ECU60においては、実行者の挙動が応急処置の手順と合致している場合、後続の手順が出力装置20に出力される。これにより、応急処置が簡易且つ適切に進行する。
一方、実行者の挙動が応急処置の手順と合致していない場合、応急指示部609は、挙動判定部692の判定結果を実行者に通知する。すなわち、音声および/または画像表示による警告が、出力装置20に出力される。これにより、実行者の挙動が応急処置の手順と合致していない事実が実行者に通知される。また、この場合、応急指示部609は、正しい手順に対応する指示情報を出力する。これにより、現手順が出力装置20に再度出力される。したがって、応急処置における誤りが的確に是正され得る。
図18は、本変形例における動作例を示す。図18におけるステップ1801~ステップ1806の処理内容は、それぞれ、図13におけるステップ1301~ステップ1306の処理内容と同一である。よって、以下、上記実施形態と本変形例との相違部分を主として説明する。
ステップ1803、ステップ1805、またはステップ1806により、応急処置の指示が開始する。これにより、応急処置における最初の手順に対応する指示情報が、所定の出力装置20に出力される。その後、CPUは、ステップ1807~ステップ1810の処理を、順に実行する。
ステップ1807にて、CPUは、応急指示部609により指示情報の出力が開始された後に取得された画像情報に基づいて、実行者を抽出する。次に、ステップ1808にて、CPUは、実行者の挙動を取得する。すなわち、CPUは、ステップ1807にて抽出した実行者の挙動を解析する。ステップ1807およびステップ1808の処理は、挙動取得部691の動作に対応する。
ステップ1809にて、CPUは、取得された実行者の挙動が応急処置の手順と合致しているか否かを判定する。ステップ1809の処理は、挙動判定部692の動作に対応する。続くステップ1810にて、CPUは、ステップ1809による判定結果に応じて、後続の処理を選択する。
実行者の挙動が応急処置の手順と合致している場合、ステップ1810の判定が「YES」となる。この場合、CPUは、処理をステップ1810からステップ1811およびステップ1812に進行させる。ステップ1811にて、CPUは、応急処置における現手順の次の手順に対応する指示情報を、所定の出力装置20に出力する。ステップ1812にて、CPUは、応急処置におけるすべての手順が終了したか否かを判定する。
応急処置におけるすべての手順がまだ終了していない場合(すなわちステップ1812=NO)、CPUは、処理をステップ1807に戻す。一方、応急処置におけるすべての手順が終了した場合(すなわちステップ1812=YES)、CPUは、応急指示処理を終了する。
一方、実行者の挙動が応急処置の手順と合致していない場合、ステップ1810の判定が「NO」となる。この場合、CPUは、処理をステップ1810からステップ1813およびステップ1814に進行させる。ステップ1813にて、CPUは、実行者の挙動が応急処置の手順と合致していない事実を通知するための警告を、所定の出力装置20に出力する。ステップ1814にて、CPUは、応急処置における現手順に対応する指示情報を、所定の出力装置20に再度出力する。ステップ1814の処理実行後、CPUは、処理をステップ1807に戻す。
上記実施形態においては、状態取得部608は、取得した運転者の生体情報に基づいて、運転者の心理状態レベルを判定していた。また、応急指示部609は、状態取得部608により判定された運転者の心理状態レベルに応じて、指示情報の出力先を選択していた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、応急指示部609は、状態取得部608により取得された運転者の生体情報が所定範囲内にあるか否かに応じて、指示情報の出力先を選択してもよい。
出力装置20は、車体10の天井部等、車両1の周囲から指示情報を視聴しやすい位置に設けられ得る。この場合、運転者に対応する出力装置20と、運転者以外の乗員に対応する出力装置20と、第三者に対応する出力装置20とは、共通化される。よって、この場合、状態取得部608は、省略され得る。また、運転者の心理状態に応じた出力装置20の選択動作も、省略され得る。
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な動作例および処理態様に限定されない。例えば、上記実施形態において、範囲設定部604による監視範囲の設定処理に対応する図10のフローチャートにおける、ステップ1001の処理は、図9におけるステップ901と重複する。よって、ステップ1001の処理は、省略され得る。
上記実施形態において、図10に示された、範囲設定部604による監視範囲の設定処理は、図9に示された事故対応制御ルーチン内にてステップ902として組み込まれていた。すなわち、図10に示された監視範囲設定処理は、図9におけるステップ901にて対人衝突発生の判定があった場合に実行されていた。換言すれば、図10に示された監視範囲設定処理は、衝突センサ30にて対人衝突に対応する出力が発生した後に実行されていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。
具体的には、図10に示された監視範囲設定処理は、衝突センサ30にて対人衝突に対応する出力が発生する前から実行されてもよい。すなわち、図10に示された監視範囲設定処理は、実際の対人衝突の発生前から実行されてもよい。この場合、図9におけるステップ902は省略される。また、図10に示された監視範囲設定処理は、図9に示された事故対応制御ルーチンと同様に、CPUにより所定時間毎に繰り返し起動される。また、図10におけるステップ1001は、対人衝突の発生可能性が所定程度に到達したか否かの判定に変更される。具体的には、例えば、ステップ1001は、車両1に最近接の特定物体に対応する衝突余裕時間TTCが所定値未満となったか否かの判定であってもよい。TTCはTime To Collisionの略である。TTCは、周辺監視ECU40により算出され得る。
情報取得部605は、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて、被害者Pの年齢、身長、体重等の身体的特徴を推定するようになっていてもよい。
受傷状態の推定手法についても、上記実施形態に記載された具体的手法に限定されない。例えば、挙動取得部662は、画像認識結果の経時変化に基づいて、被害者挙動を推定してもよい。あるいは、演算部664は、カラー画像に基づいて推定される出血量を、受傷程度の推定に用いてもよい。
すなわち、画像情報に基づいて被害者Pの受傷状態を推定する手法としては、本願の出願時点で利用可能な様々な周知あるいは公知の技術を用いることが可能である。具体的には、例えば、特許文献1に記載の手法が利用可能である。この手法を上記実施形態の構成に適用した場合の、受傷状態の推定の概略は、以下の通りである。
監視カメラ31は、車両1と被害者Pとの衝突状態を撮像する。事故対応ECU60は、事故情報を取得する。この事故情報には、車速センサ34により検出された車速、加速度センサ37により検出された加速度、監視カメラ31により撮像された画像情報、等が含まれる。なお、乗員等は、被害者Pの負傷状態を、事故情報としてマニュアル入力可能である。
受傷状態の推定には、バーチャルテスティングデータベースが用いられる。バーチャルテスティングデータベースには、車両設計データと、車両力学モデルデータとが、車種別に記憶されている。車両設計データは、車両1の3次元設計図面データである。車両力学モデルデータは、車両力学モデルを設定するために用いられるデータである。車両力学モデルは、車両1の仮想的な力学モデルである。
また、バーチャルテスティングデータベースには、負傷者力学モデルデータが記憶されている。負傷者力学モデルデータは、負傷者力学モデルを設定するために用いられるデータである。負傷者力学モデルは、被害者Pの仮想的な力学モデルである。
車両力学モデルは、車両1における、車体10の構造およびこれによる剛性強度等に基づいて設定される。負傷者力学モデルデータには、被害者Pの身体的特徴、例えば、年齢、身長、体重に加え、病歴および負傷歴等が含まれる。負傷者力学モデルは、ダミー人形を使用した実験等に基づいて設定されている。
受傷状態の推定には、事故情報データベースも用いられる。事故情報データベースには、過去の事故情報と、当該事故情報に対応する被害者Pの受傷状態が記憶されている。事故情報データベースは、ダメージデータベース663に対応する。
受傷状態推定ロジックは、被害者情報解析機能と、事故再現シミュレーション機能と、受傷状態推定機能とを有している。被害者情報解析機能は、画像情報に基づいて、被害者Pの情報を解析する。具体的には、被害者情報解析機能は、被害者Pの年齢、身長、体重等の身体的特徴を推定する。被害者情報解析機能は、情報取得部605に対応する。
事故再現シミュレーション機能は、バーチャルテスティングデータベースに記憶された各種データに基づいて、車両1と被害者Pとの衝突状態をシミュレーションにより再現する。各種データには、車両設計データと、車両力学モデルデータと、負傷者力学モデルデータとが含まれる。バーチャルテスティングデータベースおよび事故再現シミュレーション機能は、位置取得部661および挙動取得部662により奏される機能に対応する。
受傷状態推定機能は、事故再現シミュレーション機能により再現された衝突状態と、事故情報データベースに記憶されている過去の事故情報および受傷状態とに基づいて、実際の被害者Pの受傷状態を推定する。受傷状態推定機能は、演算部664に対応する。
車両1が歩行者と衝突して、その歩行者が受傷した場合を例示する。この場合、事故再現シミュレーション機能において、車両力学モデルと負傷者力学モデルとをシミュレーションにより衝突させることで、車両1における衝突位置および被害者Pにおける衝突部位を特定する。ダミー人形と車両1との衝突実験による各種のデータに基づいて、今回発生した対人衝突と類似の衝突パターンを選定する。選定した衝突パターンに基づいて、被害者Pに加えられた衝撃を算出する。
すなわち、車両力学モデルでは、車体10の構造およびこれによる剛性強度等に基づいて、外部からの衝撃による影響(例えば変形吸収度等)が明確になるように設定されている。同様に、負傷者力学モデルでは、どの部位にどの程度の衝撃が作用した場合にどのような受傷状態となるかが明確に設定されている。よって、車両力学モデルと負傷者力学モデルとを衝突させるシミュレーションを行うことにより、被害者Pに加わった衝撃を算出することができる。
受傷状態推定機能は、上記の衝突シミュレーション結果から、類似の衝突パターンに対応する被害者Pの受傷状態の情報を抽出する。そして、受傷状態推定機能は、複数の推定要素に基づいて、実際の被害者Pの受傷状態を判定する。推定要素は、被害者Pにおける衝突部位、車体10における衝突位置、被害者Pに加えられた衝撃、類似の衝突パターンに対応する負傷者の受傷状態情報、等を含む。
被害者Pの受傷状態は、上記実施形態あるいは上記変形例よりも、より簡便な手法により、簡易的に推定可能である。すなわち、ダメージデータベース663に格納されたマップにおける受傷パラメータの数は、適宜低減され得る。すなわち、受傷状態を推定するための受傷パラメータとして、上記の例示中、病歴および負傷歴を除いた主要なもののうちの、少なくとも1つが用いられれば、受傷状態を良好に推定することが可能となる。
具体的には、例えば、受傷状態は、衝突による被害者Pの移動量に応じて推定され得る。衝突による被害者Pの移動量は、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて算出され得る。
あるいは、受傷状態は、一次衝突部位および二次衝突部位に基づいて推定され得る。具体的には、例えば、一次衝突部位または二次衝突部位に頭部が含まれ、且つ二次衝突位置が歩行者保護デバイス51による保護範囲外の地面である場合に、重傷である旨の推定が成立し得る。
あるいは、受傷状態は、画像取得部601により取得された画像情報と辞書情報とに基づいて推定され得る。すなわち、画像取得部601により取得された画像情報に基づいて、被害者Pにおける、身体形状、受傷部位、出血部位、等の特徴情報が抽出され得る。また、辞書情報は、過去の対人衝突発生時の、被害者Pにおける特徴情報と受傷状態とを対応付けた情報であって、ダメージデータベース663に格納されている。
この場合、画像情報に基づいて抽出された特徴情報に類似する辞書情報を検索することで、受傷状態が推定され得る。なお、被害者Pの病歴および負傷歴は、受傷状態の推定結果の補正に用いられ得る。すなわち、今回の受傷部位にて被害者Pに病歴あるいは負傷歴が存在する場合、受傷程度が重度側に補正され得る。
ダメージ推定部606すなわち演算部664は、被害者Pのバイタルサインに対応する生体情報の取得結果に基づいて、マップに基づく受傷状態の推定結果を補正してもよい。具体的には、例えば、取得した被害者Pの血圧、脈拍、呼吸数、血中酸素飽和度のうちの少なくともいずれか1つが所定範囲外となった場合に、受傷程度が最高値に設定され得る。この例においては、ダメージ推定部606すなわち演算部664は、情報発信部39bから取得した生体情報に基づいて受傷状態を推定していると評価することが可能である。
「受傷程度」は、受傷部位およびその受傷の度合を総合考慮した、被害者Pの要救護度合を含んでいてもよい。この場合、緊急度情報として、要救護度合が用いられ得る。「要救護度合」としては、例えば、トリアージ区分を用いることが可能である。トリアージ区分は、第一順位、第二順位、第三順位、および第四順位を含む。第一順位は、最優先治療群に対応する。第二順位は、非緊急治療群に対応する。第三順位は、軽処置群に対応する。第四順位は、不処置群に対応する。
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。
同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。各部を構成する材料についても、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の材料に限定される場合等を除き、特段の限定はない。
変形例も、上記の例示に限定されない。例えば、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。さらに、実施形態の全部または一部と、任意の変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。