JP7087753B2 - 粉体均し治具及びこれを用いた粉体均し装置 - Google Patents

粉体均し治具及びこれを用いた粉体均し装置 Download PDF

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Description

本発明は、粉体を均す粉体均し治具に係り、特に、均し治具本体の底部のうち当該均し治具本体回転時に粉体の表面に常時接触する回転支軸周辺領域が存在する態様における粉体の均し作用を改善した粉体均し治具及びこれを用いた粉体均し装置に関する。
タンタル酸リチウム(LT)結晶は、融点が約1650℃、キュリー温度が約600℃の強誘電体である。そして、LT基板の用途は、主に携帯電話の信号ノイズ除去用の表面弾性波(SAW)フィルター用材料である。育成されたLT結晶は、無色透明若しくは透明感の高い淡黄色を呈している。育成後、結晶の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、さらに単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LT結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、結晶の外形を整えるために外周研削されたLT結晶(インゴット)はスライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経てLT基板となる。最終的に得られたLT基板はほぼ無色透明であり、体積抵抗率はおよそ1014~1015Ω・cm程度である。
ところで、このような従来の方法で得られたLT基板では、表面弾性波素子製造プロセスにおいて、LT結晶の特性である焦電性のために、プロセスで受ける温度変化によって電荷が基板表面にチャージアップして発生するスパークにより、基板表面に形成したパターンが破壊され、さらには基板の割れ等が発生し、素子製造プロセスでの歩留まり低下が起きている。
また、LT基板の高い光透過率は、デバイス製造プロセスの1つであるフォトリソグラフ工程で基板内を透過した光が基板裏面で反射されて表面に戻り、形成パターンの解像度を悪化させるという問題も生じさせている。
そこで、この種の問題を解決するために、例えば特許文献1に示すように、LT結晶を、Ca、Al、Ti、Siからなる群より選択される1つの金属粉末(いわゆる還元剤)に埋め込み、350~600℃の保持温度で熱処理(以降、黒化処理とする)してウエハを黒化させることによりタンタル酸リチウム(LT)基板を製造する方法が既に提供されている。
ここで、LT基板の黒化処理の際に、LT基板の粉の埋め込み時にアルミニウム・アルミナ混合粉自体の凹凸・割れ亀裂などがあると黒化処理後のLT基板の焦電性に問題が生じる懸念がある。この種の問題を解決するには、充填された混合粉と埋め込まれた基板との間の表面を均一に均す必要がある。従来の粉体均し治具としては板状のへら或いは表面が平坦な円板を使用し、粉を充填する容器(例えばSUS製ポット)にアルミニウム・アルミナ混合粉を一定量入れ、手で回転させることにより容器内のアルミニウム・アルミナ混合粉を均一にし、アルミニウム・アルミナ混合粉自体の割れ、凹凸を防止するようにしていた。
また、特許文献2に示すように、従来手作業でなされていた粉末投入作業、粉末均し作業、円形板材投入作業等を機械化し作業のばらつきに起因する問題を解消した充填装置が既に開示されている。
特開2005-206444号公報(発明を実施するための最良の形態) 特開2016-69204号公報(発明を実施するための形態,図5,図6)
例えば特許文献2にあっては、アルミニウム・アルミナ混合粉を容器内に充填し、基板を投入後、容器に混合粉を適量量り取り、容器より内径が小さい円板状或いは平板状の粉体均し治具を回転させ、容器内に埋め込まれた基板上に充填させた混合粉を均一に均す方法が一般に採用されている。
しかしながら、この方法では、例えば容器より内径が小さい円板状の粉体均し治具では、回転支軸周りの中央部が混合粉の表面に常に接している状態となり、当該中央部とその周辺とでは混合粉に偏り(偏析)ができ、表面が均一にならないという現象が見られた。この現象は、平板状の粉体均し治具であっても、回転支軸周りの中央部とそれ以外の領域との間で混合粉に偏り(偏析)ができ、表面が均一にならないという現象が見られた。
特に、粉体がアルミニウム・アルミナ混合粉のように比重の異なる物質が混在するような場合には、混合粉中にある物質が比重差により、粉体均し治具の回転支軸周りの中央部に偏析してしまう問題があった。この現象は混合粉に埋め込む基板径が大きくなるほど顕著に現われ作業を著しく煩雑にさせていた。
本発明が解決しようとする技術的課題は、容器内に収容された粉体に常時接触する回転支軸周辺領域での偏析を抑制し、粉体の表面を均一に均す粉体均し治具を提供することにある。
本発明の第1の技術的特徴は、円筒状の容器に収容された粉体の表面に接触し、少なくとも前記容器よりも小さい内径を有し且つ偏心して配置された支軸を中心として予め決められた方向に回転し、底部が、回転時に当該底部に常時接触する粉体の表面領域に対応し前記支軸を中心とする円形状の支軸周辺領域を有する板状の均し治具本体と、前記均し治具本体の底部のうち前記支軸周辺領域から外れた領域で且つ前記均し治具本体の回転方向上流側領域との間に段差を持つように突出して設けられ、前記均し治具本体回転時に粉体の表面部に食い込んで少なくとも前記支軸周辺領域に向けて粉体の表面部を移動させる線状の突部と、を備えたことを特徴とする粉体均し治具である。
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた粉体均し治具において、前記線状の突部は、1mm以上3mm以下の幅寸法で且つ0.5mm以上2mm以下の高さ寸法を有することを特徴とする粉体均し治具である。
本発明の第3の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた粉体均し治具において、前記線状の突部は、前記均し治具本体の最外径円周軌跡の直径の30%以上40%以下の長さを有することを特徴とする粉体均し治具である。
本発明の第4の技術的特徴は、第1乃至第3の技術的特徴のいずれかを備えた粉体均し治具において、前記線状の突部は並行して複数設けられ、複数の突部間の幅寸法が当該突部の幅寸法よりも広く設定されることを特徴とする粉体均し治具である。
本発明の第5の技術的特徴は、第1乃至第4の技術的特徴のいずれかを備えた粉体均し治具において、前記線状の突部は並行して3本以上5本以下に設けられていることを特徴とする粉体均し治具である。
本発明の第6の技術的特徴は、第4又は第5の技術的特徴を備えた粉体均し治具において、前記線状の突部は、前記均し治具本体の回転方向側に位置する端部と前記支軸中心との間の距離が前記均し治具本体の反回転方向側に位置する端部と前記支軸中心との間の距離よりも長く設定されることを特徴とする粉体均し治具である。
本発明の第7の技術的特徴は、第4乃至第6の技術的特徴のいずれかを備えた粉体均し治具において、前記線状の突部は、前記均し治具本体の反回転方向側に位置する端部を結ぶ基準線が前記線状の突部の延長方向と直交する支軸中心線に対して40°以上50°以下の傾斜角を有することを特徴とする粉体均し治具である。
本発明の第8の技術的特徴は、粉体を収容する容器と、前記容器に収容された粉体の表面を均一に均す第1乃至第7の技術的特徴のいずれかを備えた粉体均し治具と、を備えたことを特徴とする粉体均し装置である。
本発明の第9の技術的特徴は、第8の技術的特徴を備えた粉体均し装置において、前記容器は、強誘電体物質からなるウエハと還元剤として作用する粉体とを交互に投入して各ウエハ間に略等量の粉体を介在させながらウエハを粉体内に埋め込むものであり、前記粉体均し治具は各ウエハ間に投入される粉体の表面を均すものであることを特徴とする粉体均し装置である。
本発明の第10の技術的特徴は、第9の技術的特徴を備えた粉体均し装置において、前記粉体は比重の異なる複数の粉体を含むことを特徴とする粉体均し装置である。
本発明の第1の技術的特徴によれば、容器内に収容された粉体に常時接触する回転支軸周辺領域での偏析を抑制し、粉体の表面を均一に均す粉体均し治具を提供することができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、線状の突部の幅寸法及び高さ寸法を調整することで、本構成を有しない態様に比べて粉体の表面をより均一にすることができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、線状の突部の長さ寸法を調整することで、本構成を有しない態様に比べて粉体の表面をより均一にすることができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、複数の線状の突部による粉体の表面部の移動を段階的に分散させながら実施することができ、本構成を有しない態様に比べて粉体の表面をより均一にすることができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、線状の突部を複数並設するに当たり、突部の数を調整することで、本構成を有しない態様に比べて粉体の表面をより均一にすることができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、線状の突部を複数並設するに当たり、線状の突部のレイアウトを工夫することで、均し治具本体の支軸周辺領域に向かって周辺の粉体を移動させることができ、本構成を有しない態様に比べて粉体の表面をより均一にすることができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、線状の突部を複数並設するに当たり、先行する線状の突部による粉体の移動可能な円環領域の外周側から均し治具本体の支軸周辺領域に向かって粉体を徐々に移動させることができ、本構成を有しない態様に比べて粉体の表面をより均一にすることができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、容器内に収容された粉体に常時接触する回転支軸周辺領域での偏析を抑制し、粉体の表面を均一に均すことが可能な粉体均し治具を含む粉体均し装置を提供することができる。
本発明の第9の技術的特徴によれば、強誘電体物質からなるウエハを黒化処理するに当たり、強誘電体物質からなるウエハと還元剤としての粉体とを交互に投入し、各ウエハ間に投入された粉体の表面を均す粉体均し装置を提供することができる。
本発明の第10の技術的特徴によれば、粉体均し治具の支軸周辺領域にて偏析し易い比重の異なる複数の粉体を含む態様であっても、粉体の表面を均すことが可能な粉体均し装置を提供することができる。
(a)は本発明が適用された粉体均し装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た粉体均し治具の要部を示す説明図、(c)は(b)中C-C線断面説明図である。 (a)は実施の形態1に係る粉体均し装置の全体構成を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。 (a)は実施の形態1で用いられる粉体均し治具の粉体に面した側から見た説明図、(b)は線状の突部の構成例を示す説明図、(c)は(b)中C-C線断面説明図である。 (a)は実施の形態1で用いられる粉体均し治具の線状の突部による移動軌跡を示す説明図、(b)は線状の突部による粉体への作用を示す説明図である。 (a)は粉体均し治具の第1の線状の突部による粉体への作用を示す説明図、(b)は同第2の線状の突部による粉体への作用を示す説明図、(c)は同第3の線状の突部による粉体への作用を示す説明図である。 (a)は実施の形態2に係る粉体均し装置の全体構成を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された粉体均し装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、粉体均し装置は、粉体11を収容する容器10と、容器10に収容された粉体11の表面を均一に均す粉体均し治具1と、を備えたものである。ここでいう粉体11としては一種だけを含むものでもよいし、複数種を混合したものであってもよい。
この種の粉体均し装置の代表的態様としては、容器10は、強誘電体物質からなるウエハと還元剤として作用する粉体11とを交互に投入して各ウエハ間に略等量の粉体11を介在させながらウエハを粉体11内に埋め込むものであり、粉体均し治具1は各ウエハ間に投入される粉体11の表面を均すものである。本例は、導電性の低いウエハ(例えばタンタル酸リチウム結晶)に対して導電性を向上させる熱処理(黒化処理)の前処理として、ウエハ間に投入される還元剤としての粉体11の表面を均すものである。
ここで、還元剤としての粉体11としては適宜選定して差し支えないが、比重の異なる複数の粉体を含むものが挙げられる。本例は、粉体11として比重の異なる複数の粉体(例えばアルミニウムAlとアルミナAl)を含むものであり、粉体均し治具1のうち粉体11に常時接触する支軸周辺領域には粉体11の比重差によって比重の大きい粉体が沈み、比重の軽い粉体が表面に浮上し易いことから、支軸周辺領域では粉体11の偏析が生じ易いため、本願は有効である。
また、本例において、粉体均し治具1は、図1(a)(b)に示すように、円筒状の容器10に収容された粉体11の表面に接触し、少なくとも容器10よりも小さい内径を有し且つ支軸2aを中心として予め決められた方向に回転する板状の均し治具本体2と、均し治具本体2の底部のうち当該均し治具本体2回転時に粉体11の表面に常時接触する支軸周辺領域R1から外れた領域R2で且つ均し治具本体2の回転方向上流側領域との間に段差を持つように突出して設けられ、均し治具本体2回転時に粉体11の表面部に食い込んで少なくとも支軸周辺領域R1に向けて粉体11の表面部を移動させる線状の突部3と、を備えたものである。
このような技術的手段において、均し治具本体2は支軸2aを中心に回転する板状部材であれば、円形状、矩形状、扇形状などを含む。
また、線状の突部3については、レイアウト及び機能の観点から以下のように構成されるものであればよい。
レイアウトとしては、(1)均し治具本体2のうち偏析の要因である常時接触する領域(支軸周辺領域R1)から外れた領域にあること、(2)均し治具本体2の回転方向上流側領域との間に段差を持つように突出して設けられることが必要である。(1)の要件は、仮に、支軸周辺領域R1内にあると、却って粉体11表面の均一性が損なわれる懸念があることによる。(2)の要件は、線状の突部3で粉体11表面を移動させた後に均し治具本体2の平坦部で均す作用を与えるためである。(2)の要件がないと、線状の突部3で粉体11表面を移動させた痕跡模様がそのまま残ってしまう懸念がある。
また、線状の突部3の機能としては、(3)均し治具本体2回転時に粉体11の表面部に食い込んで少なくとも支軸周辺領域R1に向けて粉体11の表面部を移動させるものであればよく、これにより、支軸周辺領域R1内に周辺の粉体11を送り込み、支軸周辺領域R1内に位置する粉体11の表面の偏析を抑制するものと推測される。
次に、本実施の形態に係る粉体均し治具1の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、線状の突部3の好ましい態様としては、1mm以上3mm以下の幅寸法で且つ0.5mm以上2mm以下の高さ寸法を有する態様が挙げられる。本例は、図1(c)に示すように、線状の突部3の好ましい幅寸法w1及び高さ寸法hを特定する。ここで、線状の突部3は粉体11の表面に食い込んで所定方向に向けて移動させる機能を備えていればよいが、幅寸法w1として、1mm未満であると強度面で懸念があり、3mmを超えると、食い込み範囲が広くなることに伴って粉体11の表面の均一性が損なわれる懸念がある。また、高さ寸法hとして、0.5mm未満であると、粉体11の表面部に対する食込量が不足する懸念があり、2mmを超えると、食い込み過多となり、粉体11の表面の均一性が損なわれる懸念がある。
また、線状の突部3の別の好ましい態様としては、均し治具本体2の最外径円周軌跡mの直径の30%以上40%以下の長さを有する態様が挙げられる。本例は、線状の突部3の好ましい長さ寸法sを特定する。ここで、線状の突部3は、支軸周辺領域R1から外れた領域にあることから、必然的に均し治具本体2の最外径円周軌跡mの直径の50%未満の長さを有するものであればよいが、30%未満になると、線状の突部3による粉体11の表面部の移動領域が狭過ぎてしまい、また、40%を超えると、支軸周辺領域R1内に移動する周辺の粉体11が過多になり過ぎる懸念がある。
更に、線状の突部3の別の好ましい態様としては、図1(c)に示すように、並行して複数設けられ、複数の突部3(本例では3a,3b,3c)間の幅寸法w2が当該突部3の幅寸法w1よりも広く設定される態様が挙げられる。本例は、線状の突部3を複数並設し、その突部3(3a~3c)間を好ましい幅寸法w2とした態様である。線状の突部3(3a~3c)を所定の幅寸法w2の隙間を介在させて並設する態様では、均し治具本体2の回転方向の上流側に位置する線状の突部3(例えば3b,3c)は先行する線状の突部3(例えば3a)で移動した粉体11の表面部を再度移動させ、移動させられた粉体11を更に分散する作用を奏するものと推測される。尚、複数の突部3(3a~3c)の長さは同等であってもよいし、異なるものであってもよい。また、複数の突部3(3a~3c)間の幅寸法w2は突部3の幅寸法w1より広く設定されているため、先行する線状の突部3(例えば3a)に移動させられた粉体11が複数の突部3(例えば3a,3b)間の間隙に至ると、周囲に分散し易くなるものと推測される。
更にまた、線状の突部3の別の好ましい態様としては、並行して3本以上5本以下に設けられている態様が挙げられる。本例は、線状の突部3を複数並設する態様のうち、好ましい本数を特定するものである。ここで、線状の突部3が2本である態様では複数本による粉体11の段階的な分散作用の程度が少なく、また、6本以上の態様では、複数の突部3間の幅寸法w2を広く確保することが困難になる懸念がある。
また、線状の突部3の更に別の好ましい態様としては、均し治具本体2の回転方向側に位置する端部と支軸2a中心との間の距離が均し治具本体2の反回転方向側(回転方向の反対側に相当)に位置する端部と支軸2a中心との間の距離よりも長く設定される態様が挙げられる。本例は、少なくとも支軸周辺領域R1に向けて周辺の粉体11の表面部を移動させる上で必要な構成例を示すもので、均し治具本体2回転時に線状の突部3が粉体11の表面部を押圧するとき、押圧方向として少なくとも支軸周辺領域R1に向かう成分を含む。
また、線状の突部3の別の好ましい態様としては、図1(b)に示すように、均し治具本体2の反回転方向側(回転方向の反対側に相当)に位置する端部を結ぶ基準線Lが線状の突部3の延長方向と直交する支軸2a中心線に対して40°以上50°以下の傾斜角θを有する態様が挙げられる。本例は、線状の突部3を並設する態様において、複数の突部3(3a~3c)のうち均し治具本体2の反回転方向側に位置する端部を結ぶ基準線Lを所定の角度範囲に設定すると、図1(b)(c)に示すように、先行する線状の突部3(例えば3a)による粉体11の移動可能な円環領域に対し、後続する線状の突部3(例えば3b,3c)による粉体11の移動可能な円環領域が先行する線状の突部3(例えば3a)による円環領域の少なくとも外周寄り領域を含む構成(オーバーラップ構成)であるため、先行する円環領域の外周側から支軸周辺領域R1に向かって粉体11を徐々に移動させることが可能である。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-粉体均し装置の全体構成-
図2(a)は実施の形態1に係る粉体均し装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、粉体均し装置20は、粉体11を収容する容器10と、容器10に収容された粉体11の表面を均す粉体均し治具1と、粉体均し治具1を昇降可能に支持し、予め決められた粉体均し位置に降下させた後に回転駆動する昇降駆動機構21とを備えている。
本例において、粉体均し装置20は、導電性の低いウエハ12(例えばLT基板)に対して導電性を向上させる熱処理(黒化処理)の前処理として、例えば複数のウエハ12間に投入される還元剤としての粉体11の表面を均すものである。
このとき、還元剤としての粉体11は例えばアルミニウム・アルミナ混合粉が用いられ、また、ウエハ12は例えばSUS製の容器10内の粉体11内に埋め込まれ、例えば窒素ガス雰囲気下、LTのキュリー温度未満(例えば550℃)の温度条件で熱処理される。この熱処理により、粉体11中のアルミニウムがLT基板から酸素を奪い取り、その結果、LT基板中に酸素空孔が生じ、電気伝導度が向上するものと推測される。また、本例では、熱処理の前処理として、粉体均し装置20による粉体11の表面を均す処理が行われるが、仮に、この種の粉体均し処理が実施されない場合には、熱処理対象となるウエハ12間に投入される粉体11の厚さが不均一になってしまい、その分、ウエハ12に対する還元剤としての粉体11の還元作用がばらつき、電気伝導度が不均一になる懸念がある。
-粉体均し治具-
本実施の形態において、粉体均し治具1は、図2(a)(b)に示すように、円筒状の容器10に収容された粉体11の表面に接触し、少なくとも容器10よりも小さい内径を有し且つ支軸2aを中心として予め決められた方向に回転する円板状の均し治具本体2と、均し治具本体2の底部のうち当該均し治具本体2回転時に粉体11の表面に常時接触する支軸周辺領域R1から外れた領域で且つ均し治具本体2の回転方向上流側領域との間に段差を持つように突出して設けられ、均し治具本体2回転時に粉体11の表面部に食い込んで少なくとも支軸周辺領域R1に向けて粉体11の表面部を移動させる線状の突部3と、を備えたものである。
尚、図2(b)中、容器10に収容された粉体11内には円板状のウエハ12(本例ではLT基板)が埋め込まれており、粉体均し装置20による粉体11の均し処理を実施する前ステージにて図示外のウエハ投入装置(例えば特許文献2参照)にて当該容器10内にウエハ12が投入されるようになっている。
本例において、容器10の内径Dcは例えば110mmであり、ウエハ12は容器10の内径Dcより小さい直径Dw(例えば100mm)のものが使用されている。
また、粉体均し治具1の均し治具本体2は、例えばステンレス鋼にて成形されており、容器10の内径Dc、ウエハ12の直径Dwより小さい外径Dnを有し、容器10の内径Dcの1/2よりは大きく2/3以下に収まる程度に選定されている。そして、粉体均し治具1は、均し治具本体2の最外径円周軌跡mが容器10の内周から5mm程度の間隔をおい位置を過るように、均し治具本体2の支軸2aを偏心して配置するようにしたものである。
-線状の突部-
本例では、線状の突部3は、図3(a)~(c)に示すように構成されている。
線状の突部3は一つでもよいが、本例では複数設けられている。線状の突部3の設置数については適宜選定して差し支えないが、並行して配置する場合には3本以上5本以下で選定するのがよい。
本例では、線状の突部3は並行した3つの突条(細長く平面方向に延びる突出部に相当)31~33として設けられている。
本例の複数の突条31~33は断面矩形状で均し治具本体2の底面に対して段差を持つロッド状のものであって、均し治具本体2と一体的に成形又は均し治具本体2と別体に形成したものを当該均し治具本体2に溶接などで固着して形成されるものである。
ここで、複数の突条31~33の寸法関係及びレイアウトについて説明する。
<長さ寸法s>
各突条31~33の線状に延びる長さ寸法sは、均し治具本体2の支軸周辺領域R1以外の領域R2内で可能な限り長く確保するようにすればよく、本例では均し治具本体2の最外径円周軌跡mの直径の30%以上40%以下の長さに選定されている。
<幅寸法w1>
各突条31~33の幅寸法w1は、粉体11の表面に食い込んで移動させる上で必要な強度と、均し治具本体2による本来の均し性能とを踏まえ、1mm以上3mm以下の範囲で適宜選定されている。
<各突条間の幅寸法w2>
各突条31~33間の幅寸法w2が各突条31~33の幅寸法w1よりも少なくとも広く設定されていればよく、例えば各突条31~33の幅寸法w1が2mmと仮定すると、幅寸法w2は2mmよりも広い適宜値(例えば6mm~10mm)を選定するようにすればよい。
<高さ寸法h>
各突条31~33の段差は、粉体11の表面に食い込んで移動させる上で必要な高さ寸法hを要するが、大きすぎると均し治具本体2による本来の均し性能を損なうことから、0.5mm以上2mm以下に設定するようにすればよい。
<レイアウト>
各突条31~33は、図4(a)(b)に示すように、均し治具本体2の回転方向側に位置する端部p4,p5,p6と支軸中心Oとの間の距離d1が均し治具本体2の反回転方向側に位置する端部p1,p2,p3と支軸中心Oとの間の距離d2よりも長く設定されている。
更に、各突条31~33は、図3(a)(b)に示すように、均し治具本体2の反回転方向側に位置する端部(p1~p3)を結ぶ基準線Lが各突条31~33の延長方向と直交する支軸中心線LOに対して40°以上50°以下の傾斜角θを有するように設置されている。
これらのレイアウトによる各突条31~33の作用については後述する。
-粉体均し装置の作動-
次に、本実施の形態に係る粉体均し装置の作動について説明する。
図2(a)に示すように、容器10に収容された粉体11内にウエハ12(本例ではLT基板)が埋め込まれており、容器10の粉体11内に埋め込まれたウエハ12上に所定厚の粉体11が介在されるように、粉体均し装置20による粉体11の均し処理が実施される。
本例では、昇降駆動機構21が粉体均し治具1を所定のセット位置まで降下させた後、支軸2aを所定の矢印方向に回転駆動させることで、均し治具本体2を偏心した支軸2aを中心に回転させ、容器10内の粉体11の表面を均す。
このとき、図3(a)に示すように、均し治具本体2の底部のうち、支軸周辺領域R1以外の領域R2では均し治具本体2回転時に粉体11の表面に対して接触、非接触を繰り返しながら、粉体11の表面が効果的に均されるものの、支軸周辺領域R1では均し治具本体2が容器10内の粉体11の表面に常時接触した状態になることから、支軸周辺領域R1に対応した粉体11の表面は支軸周辺領域R1以外の領域R2に比べて粉体11が偏析してしまう傾向が見られる。
特に、還元剤としての粉体11がアルミニウムAl・アルミナAl混合粉のように、比重の異なる粉体からなる場合には、比重の軽いアルミニウムAl粉が支軸周辺領域R1に偏析してしまう。
しかしながら、本実施の形態では、粉体均し治具1は均し治具本体2の底部に線状の突部3を具備した態様であるため、均し治具本体2の支軸周辺領域R1での粉体11の偏析は有効に改善されるに至った。
つまり、本例では、線状の突部3としての各突条31~33は、図4(a)(b)に示すように、均し治具本体2回転時に粉体11の表面に食い込み、食い込んだ粉体11部分を矢印方向(各突条31~33の延びる方向に交差する方向、主として直交する方向)に移動させる。このとき、各突条31~33の回転方向側に位置する端部p4,p5,p6と支軸2a中心との間の距離d1が均し治具本体2の反回転方向側に位置する端部p1,p2,p3と支軸2a中心との間の距離d2よりも長く設定されているため、各突条31~33の設置姿勢は、各突条31~33の回転方向側に位置する端部p4,p5,p6を過る径方向に対して各突条31~33の反回転方向側に位置する端部p1,p2,p3が均し治具本体2の回転方向上流側に位置するように角度α(90°未満)だけ傾斜している。このため、本例では、各突条31~33は粉体11の表面部を矢印方向に移動させるが、粉体11の移動方向は均し治具本体2の支軸周辺領域R1に向かう方向成分を含んでいるため、均し治具本体2の支軸周辺領域R1以外の領域R2では各突条31~33により粉体11の表面部が支軸周辺領域R1側に向かって順次移動し、支軸周辺領域R1に対応した粉体11の表面部内に押し込まれるようになっている。よって、均し治具本体2の支軸周辺領域R1に対応した粉体11の表面部分には更に周辺の領域R2から粉体11のうちアルミナAlが補充されることになり、支軸周辺領域R1に対応した粉体11の表面部は、粉体11のうちアルミニウムAlのみが偏析する事態が解消され、周辺の粉体11の表面部と略同様に均される。
ここで、図4(b)に二点鎖線で示すように、仮に、各突条31’~33’が均し治具本体2の径方向に沿って配置されたと仮定すると、均し治具本体2の回転時には、二点鎖線で示す矢印方向に向かって粉体11の表面部を移動させるものと推測されるが、この態様では、粉体11の移動方向として均し治具本体2の支軸周辺領域R1に向かう方向が含まれないので、支軸周辺領域R1以外の領域R2の粉体11の表面部が支軸周辺領域R1に補充されるという作用は生じない。
尚、各突条31’~33’の設置姿勢として、均し治具本体2の径方向に沿う位置を境として各突条31~33とは逆方向に傾斜する態様、つまり、均し治具本体2の回転方向側に位置する端部と支軸2a中心との間の距離が均し治具本体2の反回転方向側に位置する端部と支軸2a中心との間の距離よりも短く設定されている態様では、粉体11の移動方向として均し治具本体2の支軸周辺領域R1から離れる方向が含まれることから、支軸周辺領域R1以外の領域R2の粉体11の表面部が支軸周辺領域R1に補充されるという作用は生じない。
また、本実施の形態では、線状の突部3は複数の突条31~33として設けられていることから、図4(a)に示すように、均し治具本体2の回転方向下流側に位置する第1の突条31の端部p1,p4が過る円周軌跡をm1,m4、第1の突条31に対して均し治具本体2の回転方向上流側に位置する第2の突条32の端部p2,p5が過る円周軌跡をm2,m5、第2の突条32に対して均し治具本体2の回転方向上流側に位置する第3の突条33の端部p3,p6が過る円周軌跡をm3,m6とすると、第1の突条31による粉体11の表面部の移動動作は、図5(a)に示すように、円周軌跡m1,m4で挟まれた第1の円環領域M1で実施され、第2の突条32による粉体11の表面部の移動動作は、図5(b)に示すように、円周軌跡m2,m5で挟まれた第2の円環領域M2で実施され、第3の突条33による粉体11の表面部の移動動作は、図5(c)に示すように、円周軌跡m3,m6で挟まれた第3の円環領域M3で実施される。
本実施の形態では、各突条31~33は、夫々の円環領域M1~M3において均し治具本体2の支軸周辺領域R1以外の領域R2の粉体11の表面部を移動させ、支軸周辺領域R1に向かって領域R2に存在する粉体11の表面部を移動させ、支軸周辺領域R1に対応した箇所で偏析する粉体11に対し周辺の粉体11が補充される。この結果、支軸周辺領域R1に面した箇所には周辺からアルミナAlが補充された状態で均されることから、支軸周辺領域R1内での粉体11の偏析は改善される。特に、本例では、線状の突部3としての複数の突条31~33によって粉体11の移動が行われているため、線状の突部3が一つである態様に比べて周辺からの粉体11の移動量を十分に確保することが可能である点で好ましい。
また、各突条31~33間には各突条31~33の幅寸法w1よりも広い幅寸法w2の凹所35が設けられるため、均し治具本体2の回転方向の上流側に位置する第2の突条32、第3の突条33は先行する第1の突条31で移動した粉体11の表面部を再度移動させ、移動させられた粉体11を更に分散させるという作用を奏するものと推測される。このとき、凹所35の幅寸法w2が広い方が狭い場合に比べて粉体11を周囲へより分散させ易い点で好ましい。
更に、本例では、均し治具本体2のうち線状の突部3以外の領域では、粉体11の表面部に対して本来の均し作用を奏することから、線状の突部3を設置したことに起因して均し治具本体2による粉体11の均し作用が損なわれる懸念はない。
特に、本実施の形態では、各突条31~33は、図3(a)(b)に示すように、均し治具本体2の反回転方向側に位置する端部(p1~p3)を結ぶ基準線Lが各突条31~33の延長方向と直交する支軸中心線LOに対して40°以上50°以下の傾斜角θを有するように設置されているため、図4(a)及び図5(a)~(c)に示すように、各突条31~33の各端部を過る円周軌跡m1~m6がm1<m2<m3<m4<m5<m6のような大小関係になっている。
このため、本例では、各突条31~33による粉体11の移動動作は、図5(a)~(c)に示すように、第1乃至第3の円環領域M1~M3において実施されるが、第1の円環領域M1と第2の円環領域M2とは一部オーバラップし、第2の円環領域M2の内周側の円周軌跡m2が第1の円環領域M1の内周側の円周軌跡m1の外周側に位置し、かつ、第2の円環領域M2の外周側の円周軌跡m5が第1の円環領域M1の外周側の円周軌跡m4の外周側に位置することから、第2の突条32による粉体11の移動動作は、第1の突条31による第1の円環領域M1の境界域での粉体11の乱れを有効に均す。更に、第2の円環領域M2と第3の円環領域M3とは一部オーバラップし、第3の円環領域M3の内周側の円周軌跡m3が第2の円環領域M2の内周側の円周軌跡m2の外周側に位置し、かつ、第3の円環領域M3の外周側の円周軌跡m6が第2の円環領域M2の外周側の円周軌跡m5の外周側に位置することから、第3の突条33による粉体11の移動動作は、第2の突条32による第2の円環領域M2の境界域での粉体11の乱れを有効に均す。
このように、本例では、各突条31~33のレイアウトを工夫するようにしたので、各突条31~33による円環領域M1~M3の境界域での粉体11の乱れは有効に均される。
◎実施の形態2
図6(a)(b)は実施の形態2に係る粉体均し装置20の要部を示す説明図である。
同図において、粉体均し装置20の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、粉体均し治具1が実施の形態1と異なる構成を備えている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態において、粉体均し治具1は、略扇形状の均し治具本体2を有しており、この均し治具本体2を支軸2aを中心に回転させ、均し治具本体2の支軸周辺領域R1以外の領域R2に線状の突部3として例えば複数の突条31~33を設けるようにしたものである。
本実施の形態においても、実施の形態1と略同様に、略扇形状の均し治具本体2を回転させ、線状の突部3(突条31~33)にて均し治具本体2の支軸周辺領域R1以外の領域R2の粉体11を支軸周辺領域R1側に向けて移動させると共に、均し治具本体2にて本来の粉体11の均し作用を実施するようになっている。
尚、本実施の形態では、均し治具本体2は略扇形状に形成されているが、これに限られるものではなく、例えば略矩形状の均し治具本体を用いるようにしてもよいことは勿論である。
以下、実施の形態1に係る粉体均し装置を具現化した実施例及び性能評価のための比較例を挙げ、粉体の均し作用を評価する。
以下の実施例及び比較例においては、コングルエント組成の原料を用いて、チョコラルスキー法で、直径4インチのLT単結晶育成を行った。育成雰囲気は、酸素濃度約3%の窒素-酸素混合ガスである。得られた結晶のインゴットは、透明な淡黄色であった。
この結晶のインゴットに対して熱歪み除去のための熱処理と単一分極とするためのポーリング処理を行った後、外周研削、スライス、研磨を行って42°RY基板とした。得られた基板は、無色透明で、体積抵抗率は1015Ω・cmであった。
◎実施例1
得られた基板を、20重量%のAlと80重量%のAlの混合粉末中に埋め込み、温度は550℃以上、キュリー温度以下減圧条件中で、20時間の黒化処理を行った。
混合粉中に埋め込む際は、粉体均し治具の円形状の均し治具本体の底部に、線状の突部として、当該均し治具本体の直径の30%の長さと、1mmの幅と、0.5mmの段差とを持つ突条を有し、この突条が並行に3本、各突条の端部を結ぶ基準線と各突条に直角に交わる均し治具本体の支軸中心線とを40度の角度で傾斜するように各突条を配置するように加工し、これを用いて混合粉を均一にした。
◎実施例2
線状の突部として、突条の長さ寸法を円形状の均し治具本体の直径の40%にした以外は、実施例1と同様の条件にて黒化処理を行った。
◎実施例3
線状の突部として、突条の幅寸法を3mmにした以外は、実施例1と同様の条件にて黒化処理を行った。
◎実施例4
線状の突部として、突条の高さ寸法を2mmにした以外は、実施例1と同様の条件にて黒化処理を行った。
◎実施例5
線状の突部として、突条の本数を5本にした以外は、実施例1と同様の条件にて黒化処理を行った。
◎実施例6
線状の突部として、突条3本の並び角度(基準線と支軸中心線との角度)を50度の角度に配置した以外は、実施例1と同様の条件にて黒化処理を行った。
◎比較例1
円形状の均し治具本体の底部に線状の突部が加工されていない粉体均し治具を用いた以外は、実施例1と同様の条件にて黒化処理を行った。
◎比較例2
粉体均し治具による粉体均し処理を実施せずに、実施例1と同様の条件にて黒化処理を行った。
実施例1~6及び比較例1,2の結果を以下の表1に示す。
Figure 0007087753000001
表1において、実施例1によれば、黒化処理後のLT基板の体積抵抗率は基板中心部と外周部で差はなく1.5×1010Ω・cm程度であり良好な結果になった。また、基板表面において中心部分が黒く外周部分が薄くなる還元ムラは観察されず良好な結果となった。
尚、上記体積抵抗率は、JIS K-6911に準拠した3端子法により測定している。
また、実施例2~6においても、実施例1と同様に、黒化処理後のLT基板の体積抵抗率は基板中心部と外周部で差はなく2.5×1010Ω・cm程であり良好な結果となった。また、中心部分が黒く外周部分が薄くなる還元ムラは観察されず良好な結果となった。
一方、比較例1,2においては、黒化処理後のLT基板の体積抵抗率は基板中心部と外周部で差はなく2.5×1010Ω・cm程度であった。また、中心部分が特に黒く変色し外周部分が薄くなる還元ムラが観察された。
本発明によれば、粉体均し治具として、均し治具本体の回転支軸周辺領域が容器内に収容された粉体に常時接触する態様であっても、濃度などの粉体の状態を問わず、回転支軸周辺領域での粉体の偏析を抑制でき、かつ、粉体の表面を均一に均すことが可能である。
このため、粉体均し装置に対して広く適用可能な粉体均し治具を提供することができるほか、例えば容器に収容された粉体内にウエハを埋め込み、このウエハに対する熱処理などの前処理として粉体の均し処理を効果的に実施する上でも有効である。粉体の均し処理を効果的に実現することで、粉体の均し処理の後処理において粉体の偏析に起因する不具合(例えば製品の色ムラ)を解消することができる。
粉体均し治具の構成を工夫することで、粉体の均し作用をより精度良く実現することが可能になり、これに伴い、粉体均し治具の回転速度を調整して生産性を向上させることも期待される。
1 粉体均し治具
2 均し治具本体
2a 支軸
3(3a~3c) 線状の突部
10 容器
11 粉体
12 ウエハ
20 粉体均し装置
21 昇降駆動機構
31~33 突条
31’~33’ 突条
35 凹所
R1 支軸周辺領域
R2 支軸周辺領域以外の領域
Dc 容器の内径
Dn 均し治具本体の外径
Dw ウエハの直径
s 線状の突部(突条)の長さ寸法
h 線状の突部(突条)の高さ寸法
w1 線状の突部(突条)の幅寸法
w2 線状の突部(突条)間の幅寸法
θ 傾斜角
L 基準線
LO 支軸中心線
O 支軸中心
m 最外径円周軌跡
p1~p6 突条の端部
d1 支軸中心と突条の端部p4(p5,p6)との距離
d2 支軸中心と突条の端部p1(p2,p3)との距離
m1~m6 突条の端部を過る円周軌跡
M1 第1の円環領域
M2 第2の円環領域
M3 第3の円環領域

Claims (10)

  1. 円筒状の容器に収容された粉体の表面に接触し、少なくとも前記容器よりも小さい内径を有し且つ偏心して配置された支軸を中心として予め決められた方向に回転し、底部が、回転時に当該底部に常時接触する粉体の表面領域に対応し前記支軸を中心とする円形状の支軸周辺領域を有する板状の均し治具本体と、
    前記均し治具本体の底部のうち前記支軸周辺領域から外れた領域で且つ前記均し治具本体の回転方向上流側領域との間に段差を持つように突出して設けられ、前記均し治具本体回転時に粉体の表面部に食い込んで少なくとも前記支軸周辺領域に向けて粉体の表面部を移動させる線状の突部と、を備えたことを特徴とする粉体均し治具。
  2. 請求項1に記載の粉体均し治具において、
    前記線状の突部は、1mm以上3mm以下の幅寸法で且つ0.5mm以上2mm以下の高さ寸法を有することを特徴とする粉体均し治具。
  3. 請求項1又は2に記載の粉体均し治具において、
    前記線状の突部は、前記均し治具本体の最外径円周軌跡の直径の30%以上40%以下の長さを有することを特徴とする粉体均し治具。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の粉体均し治具において、
    前記線状の突部は並行して複数設けられ、複数の突部間の幅寸法が当該突部の幅寸法よりも広く設定されることを特徴とする粉体均し治具。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の粉体均し治具において、
    前記線状の突部は、並行して3本以上5本以下に設けられていることを特徴とする粉体均し治具。
  6. 請求項4又は5に記載の粉体均し治具において、
    前記線状の突部は、前記均し治具本体の回転方向側に位置する端部と前記支軸中心との間の距離が前記均し治具本体の反回転方向側に位置する端部と前記支軸中心との間の距離よりも長く設定されることを特徴とする粉体均し治具。
  7. 請求項4乃至6のいずれかに記載の粉体均し治具において、
    前記線状の突部は、前記均し治具本体の反回転方向側に位置する端部を結ぶ基準線が前記線状の突部の延長方向と直交する支軸中心線に対して40°以上50°以下の傾斜角を有することを特徴とする粉体均し治具。
  8. 粉体を収容する容器と、
    前記容器に収容された粉体の表面を均一に均す請求項1乃至7のいずれかに記載の粉体均し治具と、
    を備えたことを特徴とする粉体均し装置。
  9. 請求項8に記載の粉体均し装置において、
    前記容器は、強誘電体物質からなるウエハと還元剤として作用する粉体とを交互に投入して各ウエハ間に略等量の粉体を介在させながらウエハを粉体内に埋め込むものであり、
    前記粉体均し治具は各ウエハ間に投入される粉体の表面を均すものであることを特徴とする粉体均し装置。
  10. 請求項9に記載の粉体均し装置において、
    前記粉体は比重の異なる複数の粉体を含むことを特徴とする粉体均し装置。
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