JP7087637B2 - 樹脂組成物及び電子部品 - Google Patents
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Description
本発明の樹脂組成物は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)、ポリロタキサン(B)、及び架橋剤(C)を含有し、任意に、光酸発生剤(D)、及び/又はシランカップリング剤(E)を更に含有し得る。
樹脂組成物に配合する環状オレフィン重合体が、極性基を有することで、後述するポリロタキサン(B)との相溶性を確保することができる。極性基を有する環状オレフィン重合体(A)は、極性基を一種又は複数種有し得る。さらに、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)は、少なくとも、プロトン性極性基を有することが好ましい。極性基を有する環状オレフィン重合体(A)が、プロトン性極性基を有していれば、現像液(特には、後述するアルカリ現像液)に対する溶解性を有することとなり、且つ、架橋剤(C)により架橋されて所望の樹脂膜を形成することができる。
なお、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)は、プロトン性極性基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)(以下、「環状オレフィン単量体(a)」と記載することがある。)としては、上述したプロトン性極性基、及び環状オレフィン構造を有する単量体であれば特に限定されないが、例えば、カルボキシル基を有する環状オレフィン単量体、水酸基を有する環状オレフィン単量体が好適に挙げられる。これらの単量体の好適な例としては、国際公開第2017/038619号に記載された各種単量体を挙げることができる。中でも、現像液に対する溶解性を高めると共に、樹脂膜の基板に対する密着性を向上させる観点から、カルボキシル基を有する環状オレフィン単量体が好ましく、4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン(以下、「TCDC」とも称することがある。)がより好ましい。なお、環状オレフィン単量体(a)は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カルボキシル基を有する環状オレフィン単量体としては、例えば、2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-メチル-2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-カルボキシメチル-2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-メトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-エトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-プロポキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-ブトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-ペンチルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-ヘキシルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-フェノキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-ナフチルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-ビフェニルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-ベンジルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-2-ヒドロキシエトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2,3-ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ペンチルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ナフチルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ビフェニルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ベンジルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ヒドロキシエトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ヒドロキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、3-メチル-2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、3-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン、4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-メチル-4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4,5-ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-カルボキシメチル-4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、N-(ヒドロキシカルボニルメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルペンチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ジヒドロキシカルボニルエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ジヒドロキシカルボニルプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルフェネチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-(ヒドロキシカルボニル)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミドが挙げられる。なお、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、環状オレフィン重合体(A)中における環状オレフィン単量体(a)に由来する繰り返し単位の含有割合は、全繰り返し単位を100モル%として、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましく、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましく、70モル%以下であることが更に好ましい。環状オレフィン単量体(a)に由来する繰り返し単位の割合が10モル%以上であれば、現像残渣を一層少なくすることができ、90モル%以下であれば、環状オレフィン重合体(A)の現像液への溶解性を十分に確保することができる。
その他の単量体(b)としては、上述した環状オレフィン単量体(a)と共重合可能な単量体であれば特に限定されない。環状オレフィン単量体(a)と共重合可能な単量体としては、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)、極性基を有さない環状オレフィン単量体(b2)、及び環状オレフィン以外の単量体(b3)が挙げられる。上記各種単量体(b1)~(b3)としては、それぞれ、国際公開第2017/038619号に記載された各種単量体を用いることができる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、樹脂膜の耐熱性を向上させる観点から、例えば、N-置換イミド基、エステル基、シアノ基、酸無水物基、又はハロゲン原子を有する環状オレフィン単量体等の、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)が好ましく、N-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド(以下、「NBPI」とも称することがある。)等のN-置換イミド基を有する環状オレフィン単量体がより好ましい。
N-置換イミド基を有する環状オレフィン単量体としては、例えば、下記一般式(1)で表される単量体が挙げられる。
そして、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)中におけるその他の単量体(b)に由来する繰り返し単位の含有割合は、全繰り返し単位を100モル%として、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましく、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましく、70モル%以下であることが更に好ましい。その他の単量体(b)に由来する繰り返し単位の割合が10モル%以上であれば、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)の現像液への溶解性を十分に確保することができ、90モル%以下であれば、現像残渣を一層少なくすることができる。
ポリロタキサン(B)とは、置換基を有する環状分子に直鎖状分子が貫通してなる分子骨格構造を有する化合物である。本発明の樹脂組成物が含有するポリロタキサン(B)の例としては、国際公開第2015/159875号に開示された構造を有するポリロタキサンを挙げることができる。好適に用いることができるポリロタキサンとしては、CASNo.928045-45-8で特定される「α-[2-オキソ-2-(トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル-1-アミノ)エチル]-ω-[2-オキソ-2-(トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル-1-アミノ)エトキシ]ポリ(オキシエチレン)と[(α-シクロデキストリンのメチルオキシラン付加物)とポリ(ヘキサノ-6-ラクトン)のエステル化反応生成物]のロタキサン化合物」を挙げることができる。かかるCASNo.928045-45-8で特定されるポリロタキサンは、例えば、「スーパーポリマーSH3400P」、「スーパーポリマーSH2400P」、「スーパーポリマーSH2300P」、及び「スーパーポリマーSH1300P」(何れも、アドバンスドソフトマテリアルズ社製)等として入手可能である。
樹脂組成物におけるポリロタキサン(B)の含有量は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100質量部当たり、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。ポリロタキサン(B)の含有量を上記下限値以上とすることで、得られる樹脂膜に伸長性を付与することができる。また、ポリロタキサン(B)の含有量を上記上限値以下とすることで、得られる樹脂膜に伸長性を付与することと、得られる樹脂膜を用いてパターニングを行った際に現像残渣の発生を抑制することとを、一層良好に両立することができる。さらに、ポリロタキサン(B)の含有量を上記上限値以下とすることで、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)との相溶性を高めることができる。また、ポリロタキサン(B)の好適な含有上限値は上記のように比較的小さい値であるが、ポリロタキサン(B)は、かかる比較的少ない配合量であっても、十分に高い伸長性を樹脂膜に付与することができる。
ポリロタキサン(B)の重量平均分子量は、10,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、100,000以上が更に好ましく、1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましく、500,000以下が更に好ましい。ポリロタキサンの重量平均分子量が上記下限値以上であれば、樹脂膜の伸長性を一層良好に高めることができる。また、ポリロタキサンの重量平均分子量が上記上限値以下であれば、樹脂膜の現像残渣抑制効果を一層高めることができる。
なお、ポリロタキサン(B)の重量平均分子量は、テトラヒドロフラン等の溶媒を溶離液としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として求めることができる。
架橋剤(C)としては、加熱により架橋剤分子間に架橋構造を形成する化合物や、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)と反応して架橋構造を形成する化合物が挙げられる。架橋剤(C)としては、エポキシ基含有化合物、アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物、メチロール基を2つ以上有する化合物、及びイソシアネート基を2つ以上有する化合物のうちの少なくとも一種を含むことが好ましく、少なくともイソシアネート基を2つ以上有する化合物を含むことがより好ましい。
エポキシ基含有化合物としては、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を含有する化合物が挙げることができる。エポキシ基含有化合物の具体例としては、例えば、ジシクロペンタジエンを骨格とするエポキシ化合物(商品名「HP-7200」、DIC社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(シクロヘキサン骨格及び末端エポキシ基を有する15官能性の脂環式エポキシ樹脂、商品名「EHPE3150」、ダイセル社製)、エポキシ化3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(3-シクロヘキセニルメチル)修飾ε-カプロラクトン(脂肪族環状3官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT301」、ダイセル社製)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT401」、ダイセル社製)、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021」、「セロキサイド2021P」、ダイセル社製)、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2081」、ダイセル社製)、1,2:8,9-ジエポキシリモネン(商品名「セロキサイド3000」、ダイセル社製)等の脂環構造を有するエポキシ化合物;及び、ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「jER825」、「jER827」、「jER828」、「jERYL980」、三菱化学社製、商品名「EPICLON840」、「EPICLON850」、DIC社製)、ビスフェノールF型エポキシ化合物(商品名「jER806」、「jER807」、「jERYL983U」、三菱化学社製、商品名「EPICLON830」、「EPICLON835」、DIC社製)、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「jERYX8000」、「jERYX8034」三菱化学社製、商品名「ST-3000」新日鉄住金社製、商品名「リカレジンHBE-100」新日本理化社製、商品名「エポライト4000」共栄化学社製)、長鎖ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「EXA-4816」、「EXA-4850-150」、「EXA-4850-1000」DIC社製)、EO変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「アデカレジンEP-4000L」、「アデカレジンEP-4010L」、ADEKA社製)、フェノールノボラック型多官能エポキシ化合物(商品名「jER152」、三菱化学社製)、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレンなどのナフタレン骨格を有する多官能エポキシ化合物(商品名「HP-4032D」、DIC社製)、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル(商品名「アデカレジンEP-4000L」、「アデカレジンEP-4088L」、ADEKA社製)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(商品名「商品名「jER630」、三菱化学社製、商品名「TETRAD-C」、「TETRAD-X」、三菱ガス化学社製)、鎖状アルキル多官能エポキシ化合物(商品名「SR-TMP」、阪本薬品工業社製)、多官能エポキシポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル社製)、(商品名「エポリードPB4700」、ダイセル社製)、グリセリンのグリシジルポリエーテル化合物(商品名「SR-GLG」、阪本薬品工業社製)、ジグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR-DGE」、阪本薬品工業社製)、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR-4GL」、阪本薬品工業社製)等の脂環構造を有さないエポキシ化合物;などを挙げることができる。
中でも、脂環構造を有するエポキシ化合物、すなわち、脂環式エポキシ化合物が好ましい。
樹脂組成物中におけるエポキシ基含有化合物の含有量は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100質量部あたり、1質量部以上100質量部以下が好ましい。エポキシ基含有化合物の含有量が上記範囲内であれば、樹脂膜の耐熱性及び耐薬品性を高めることができる。
アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物としては、例えば、2つ以上のアルコキシメチル基が芳香環に直接結合してなるフェノール化合物、アミノ基が2つ以上のアルコキシメチル基で置換されてなるメラミン化合物、2つ以上のアルコキシメチル基で置換されてなるウレア化合物が挙げられる。
メチロール基を2つ以上有する化合物としては、例えば、2つ以上のメチロール基が芳香環に直接結合してなるフェノール化合物が挙げられる。
そして、2つ以上のメチロール基が芳香環に直接結合してなるフェノール化合物としては、2,4-ジヒドロキシメチル-6-メチルフェノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール、4-ターシャリー-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、ビス(2-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン(商品名「DM-BIPC-F」、旭有機材社製)、ビス(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン(商品名「DM-BIOC-F」、旭有機材社製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン(商品名「TM-BIP-A」、旭有機材社製)などが挙げられる。
樹脂組成物がアルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物の双方又は何れか一方を含む場合における、これらの合計含有量は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100質量部あたり、1質量部以上100質量部以下とすることが好ましい。アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物の合計含有量が上記範囲内であれば、樹脂膜の耐熱性及び耐薬品性を効果的に高めることができる。
イソシアネート基を2つ以上有する化合物としては、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物及びかかる化合物の誘導体を挙げることができる。以下、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物の誘導体を「ブロックイソシアネート化合物」とも称する。分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物及びブロックイソシアネート化合物の少なくとも一方を樹脂組成物に含有させることで、得られる樹脂膜の伸長性を一層高めることができる。樹脂組成物の保存安定性を高める観点からは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物として、ブロックイソシアネート化合物を含有させることが好ましい。
分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1、4-シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体等が挙げられる。
また、ブロックイソシアネート化合物としては、常温では不活性であり、加熱されることにより、オキシム類、ジケトン類、フェノール類、カプロラクタム類、含窒素環状化合物等のブロック剤が解離してイソシアネート基を再生する化合物が挙げられる。なお、ブロックイソシアネート化合物は、特開2018-021174号公報に開示された方法に従って、上述した分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物に対して、例えば、下記のようなブロック剤を上記公報に記載された条件下にて作用させることで、調製することができる。ブロック剤の具体例としては、例えば、γ-ブチロラクタム、ε-カプロラクタム、γ-バレロラクタム、プロピオラクタム等のラクタム化合物;メチルエチルケトオキシム、メチルイソアミルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物;フェノール、クレゾール、カテコール、ニトロフェノール等の単環フェノール化合物;1-ナフトール等の多環フェノール化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、トリメチロールプロパン、2-エチルヘキシルアルコール等のアルコール化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル化合物;マロン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸アルキルエステル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物;一級アミン、二級アミン等を含む各種アミン化合物;イミダゾール、ピラゾール、ピロリジン、イミダゾリン、インドール、ベンゾイミダゾール、カルバゾール等の含窒素環状化合物;又はこれらの誘導体が挙げられる。ブロック剤は1種を単独で使用でき又は2種以上併用できる。
樹脂組成物中におけるイソシアネート基を2つ以上有する化合物の含有量は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100質量部あたり、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、80質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。イソシアネート基を2つ以上有する化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる樹脂膜の伸長性を一層高めることができる。
樹脂組成物は、光酸発生剤(D)を更に含むことが好ましい。光酸発生剤(D)を含有することで、樹脂膜を露光した際の光酸発生剤(D)の作用により、露光部分における樹脂膜の現像液に対する可溶性を変化させることができ、これにより樹脂膜をパターニングすることが可能となる。即ち、樹脂組成物が、光酸発生剤(D)のような感放射線化合物を含有する場合には、かかる樹脂組成物は、感放射線樹脂組成物として機能し得る。
上記エステル化合物の調製に用いるキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、例えば、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド(6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸クロライド)、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロライド、1,2-ベンゾキノンジアジド-5-スルホン酸クロライドが挙げられる。
上記エステル化合物の調製に用いるフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ノボラック樹脂のオリゴマー、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマーが挙げられる。
樹脂組成物中における光酸発生剤(D)の含有量は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100質量部あたり、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましく、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下が更に好ましい。光酸発生剤(D)の含有量がこの範囲にあれば、樹脂組成物からなる樹脂膜を用いてパターニングする際に、適度な露光強度にて、露光部と未露光部における極性基を有する環状オレフィン重合体(A)の現像液への溶解度差を十分に大きくすることができるため、良好な感度で明瞭なパターンが形成可能となる。
樹脂組成物はシランカップリング剤(E)を更に含有することが好ましい。樹脂組成物がシランカップリング剤(E)を含有していれば、樹脂膜の基板(特に、無機材料よりなる基板)に対する密着性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性の官能基を有するシラン化合物が挙げられる。
樹脂組成物中における、シランカップリング剤(E)の含有量は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100質量部当たり、好ましくは0.01質量部以上100質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上50質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以上20質量部以下である。シランカップリング剤(E)の含有量を上述した範囲内とすることにより、樹脂膜の基板に対する密着性を効果的に向上させることができる。
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。即ち、本発明の樹脂組成物は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)、ポリロタキサン(B)、架橋剤(C)、並びに、任意に添加される光酸発生剤(D)及び/又はシランカップリング剤(E)が、溶剤中に溶解及び/又は分散してなる、樹脂液であってもよい。
溶剤としては、特に限定されず、樹脂組成物の溶剤として既知のもの、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、4-オクタノンなどの直鎖のケトン類;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコールエーテル類;ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのジエチレングリコール類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-カプリロラクトンなどの飽和γ-ラクトン類;トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミドなどのその他の極性溶媒;が挙げられる。溶剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明の樹脂組成物中における溶剤の含有量は、極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100質量部当たり、好ましくは10質量部以上10000質量部以下、より好ましくは50質量部以上5000質量部以下、更に好ましくは100質量部以上1000質量部以下の範囲である。
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、所望により、上記以外のその他の添加剤を含有していても良い。かかるその他の添加剤としては、例えば、酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物、界面活性剤、増感剤、光安定剤、消泡剤、顔料、染料、フィラー等が挙げられる。これらのうち、例えば酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物は、特開2014-29766号公報に記載されたものなどを用いることができ、また、界面活性剤、増感剤、光安定剤は、特開2011-75609号公報に記載されたものなどを用いることができる。なお、フィラーとしては、例えば、ポリイミド粒子、シリカやカーボンブラックなどの無機フィラーのほか、ゴム粒子などの有機フィラーなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されず、樹脂組成物を構成する各成分を公知の方法により混合すればよい。混合の方法は特に限定されないが、樹脂組成物を構成する各成分を溶剤に溶解又は分散して得られる溶液又は分散液を混合するのが好ましい。これにより、樹脂組成物は、溶液又は分散液の形態(即ち、樹脂液の状態で)で得られる。上記混合は、特に限定されず、既知の混合機を用いて行う。また、混合後に既知の方法でろ過をおこなってもよい。
そして、本発明の樹脂組成物である樹脂液の固形分濃度は、通常、1質量%以上70質量%以下、好ましくは5質量%以上60質量%以下、より好ましくは10質量%以上50質量%以下である。固形分濃度が上述した範囲内であれば、樹脂液の溶解安定性及び塗布性、並びに形成される樹脂膜の膜厚均一性及び平坦性等が高度にバランスされ得る。
本発明の電子部品は、上述した本発明の樹脂組成物からなる樹脂膜を備える。そして、本発明の電子部品は、本発明の樹脂組成物から形成された現像残渣が十分に少なく且つ伸長性に優れた樹脂膜を備えているため、高性能である。
本発明の電子部品としては、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物からなる樹脂膜が、現像残渣が十分に少なく且つ伸長性に優れたものであることから、ウェハレベルパッケージ技術によって製造される電子部品が好適である。特に、本発明の樹脂組成物からなる樹脂膜が、ウェハレベルパッケージ技術によって製造される電子部品において、層状に配置される配線の間を絶縁するための層間絶縁膜(再配線用層間絶縁膜など)を形成するものとして用いられたものであることがより好適である。
樹脂膜を備える電子部品は、特に限定されることなく、例えば、半導体素子が実装されたシリコンウェハ等の基板上に、樹脂膜を形成することにより、製造することができる。基板上に樹脂膜を形成する方法は、特に限定されない。樹脂膜は、例えば、溶剤を含む樹脂組成物(即ち、樹脂液)を用いて、基板上に膜を形成する工程(膜形成工程)と、得られた膜を架橋して樹脂膜を得る工程(架橋工程)とを経て製造することができる。なお、必要に応じて、上記膜形成工程と架橋工程との間に、基板上の膜に対して活性放射線を照射して露光膜を得る工程(露光工程)と、露光膜を現像して現像膜を得る工程(現像工程)とをこの順に実施することで、パターン化された樹脂膜を得ることができる。以下、各工程について説明する。
膜形成工程では、塗布法やフィルム積層法等の既知の方法に従って、樹脂組成物を用いて基板上に膜を形成する。例えば塗布法では、樹脂組成物を、スピンコート法等の既知の方法に従って塗布した後、加熱乾燥して溶剤を除去して塗膜を得る。この際の加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて異なるが、加熱温度は、通常30~150℃、好ましくは60~120℃で、加熱時間は、通常0.5~90分間、好ましくは1~60分間、より好ましくは1~30分間としうる。また、例えばフィルム積層法では、樹脂組成物を、樹脂フィルムや金属フィルム等のBステージフィルム形成用基材上に塗布した後に加熱乾燥により溶剤を除去してBステージフィルム(塗膜)を得、次いで、このBステージフィルムを、基板上に積層する。この際の加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて適宜選択することができるが、加熱温度は、通常30~150℃であり、加熱時間は、通常0.5~90分間としうる。フィルム積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行なうことができる。
任意で行い得る露光工程では、基板上の膜に対して活性放射線を照射して露光膜を得る。より具体的には、露光工程では、膜に活性放射線を照射して潜像パターンを形成する。露光工程を行う場合において用いる樹脂組成物は、光酸発生剤(D)等の感放射線剤を含むことが好ましい。樹脂組成物が光酸発生剤(D)を含む場合には、上述したように、光酸発生剤(D)の作用により、露光部と非露光部における環状オレフィン重合体(A)の現像液に対する溶解性を異ならせることができる。なお、樹脂組成物に光酸発生剤(D)を配合することなく、パターン化樹脂膜を得るための方途としては、例えば、CO2レーザーやUV-YAGレーザーなどを用いたレーザー加工を用いる方法、あるいは、樹脂膜上にマスクパターンを形成して、ドライエッチングする方法、さらには、インクジェット法などの直接描画法等が挙げられる。
次に、露光工程で形成された潜像パターンを現像して顕在化させる。現像液としては、アルカリ現像液を用いることができる。アルカリ現像液は、アルカリ性化合物を水性溶媒に溶解させて調製することができる。アルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属塩、アミン、アンモニウム塩を使用することができる。アルカリ性化合物は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。これらの化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア水;エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一級アミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン等の第二級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、N-メチルピロリドン等の環状アミン類;等が挙げられる。これらアルカリ性化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アルカリ水性溶液の水性溶媒としては、水;並びに、メタノール及びエタノール等の水溶性有機溶剤を使用することができる。アルカリ水性溶液は、界面活性剤等を適当量添加したものであってもよい。
さらに、必要に応じて、樹脂組成物に含有させた光酸発生剤(D)を失活させるために、現像膜に対して、上述したような活性放射線を照射することもできる。活性放射線の照射には、上記潜像パターンの形成に例示した方法を利用できる。照射と同時に、又は照射後に現像膜を加熱してもよい。加熱方法としては、例えば、電子部品をホットプレートやオーブン内で加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、通常、100~300℃、好ましくは120~200℃の範囲である。
そして、上記膜形成工程で基材上に形成した膜、或いは、現像工程を経た現像膜について、架橋反応を行なう。このような架橋は、架橋剤(C)の種類に応じて適宜方法を選択すればよいが、通常、加熱により行なう。加熱は、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。加熱温度は、通常、150~250℃であり、加熱時間は、膜の面積や厚さ、使用機器等により適宜選択され、例えばホットプレートを用いる場合は、通常、5~60分間、オーブンを用いる場合は、通常、30~300分間の範囲である。加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、酸素を含まず、かつ、膜を酸化させないものであればよく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。特に、酸素含有量が0.1体積%以下、好ましくは0.01体積%以下の不活性ガス、特に窒素が好適である。これらの不活性ガスは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、実施例及び比較例に従う樹脂組成物を用いて形成した塗膜の外観、並びに、樹脂膜の伸長性及び現像残渣抑制効果は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
実施例、比較例において作製した樹脂組成物を基板上に塗布して得た塗膜の外観を、光学顕微鏡により観察した。その結果、全ての実施例及び比較例の場合に対応する塗膜に、塗膜が白く濁る、塗膜に気泡跡が残る、塗膜に放射状の筋が残る、及び膜厚が均一でない等の塗膜の外観不良に相当する現象が生じていなかったことを確認した。このことを「A」評価として表1に示す。
塗膜の外観が良好であるということは、塗膜と基板とが均一に密着していることを意味する。なお、塗膜の外観が不良であるということは、後述の各種特性の評価を行い得る品質の樹脂膜を形成不能であることを意味する。
スパッタリング装置(芝浦エレテック社製、「i-Miller CFS-4EP-LL」)を用いて、アルミニウム薄膜が100nmの膜厚で形成されたシリコンウェハ上に、実施例、比較例において作製した樹脂組成物をスピンコートした後、ホットプレートを用いてシリコンウェハを120℃で2分間加熱した(膜形成工程)。次いで、窒素雰囲気下、230℃で60分間の条件で架橋させることで樹脂膜を得て、膜厚10μmの樹脂膜を片面に備える積層体を得た(架橋工程)。
得られた積層体を0.5mol/Lの塩酸水溶液に浸漬し、シリコンウェハと樹脂膜の間に位置するアルミニウム薄膜を塩酸水溶液にて溶解させることで樹脂膜をシリコンウェハから剥離した。次いで剥離した樹脂膜を水洗し、乾燥した。乾燥後の樹脂膜を5mm×50mmを切り出して試験片とし、この試験片について引張試験を行うことで、引張伸び率を測定した。具体的には、オートグラフ(島津製作所社製、「AGS-5kNG」)を用いて、チャック間距離20mm、引張速度2mm/分、測定温度23℃の条件にて引張試験を行うことで、試験片の引張伸び率(%)を測定した。上記樹脂膜からそれぞれ8つの試験片を切り出し、各試験片について測定した引張伸び率(%)の値のうち、上位3点の平均値をそれぞれ以下の基準で評価した。引張伸び率の値が大きいほど、樹脂膜の伸長性が高いことを意味する。なお、樹脂組成物から形成される樹脂膜の伸長性が高いほど、当該樹脂組成物を用いて形成される樹脂膜が、温度サイクル試験や落下衝撃試験の際にクラックや剥離を生じ難いため、好ましい。
SA:引張伸び率が18%以上
A:引張伸び率が13%以上18%未満
B:引張伸び率が10%以上13%未満
C:引張伸び率が10%未満
シリコンウェハ上に、実施例、比較例にて作製した樹脂組成物をスピンコートした後、ホットプレートを用いて120℃で2分間プリベークして、厚さ10μmの膜を形成した(膜形成工程)。次いで、g線(436nm)、h線(405nm)、及びi線(365nm)の波長の光を発する高圧水銀ランプを用い、照射量400mJ/cm2にて露光を行った(露光工程)。そして、露光膜を23℃の2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(アルカリ現像液)にて3分間浸漬して現像し、次いで超純水で30秒間リンスを行った(現像工程)後、露光膜の状況を目視にて観察し、以下の基準で評価した。現像により不溶解又は膨潤が発生しない樹脂膜ほど、現像残渣の発生抑制効果が高く、好ましい。
A:露光膜が完全に溶解した。
B:露光膜が一部溶解したが、一部が不溶解又は膨潤により残存した。
C:露光膜全体が不溶解又は膨潤して残存した。
<環状オレフィン重合体(A-1)の調製>
N-置換イミド基を有する環状オレフィン単量体としてのN-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド(NBPI)40モル%及びカルボキシル基を有する環状オレフィン単量体としての4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン(TCDC)60モル%からなる単量体混合物100質量部、1,5-ヘキサジエン2.0質量部、(1,3-ジメシチルイミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド(「Org.Lett.,第1巻,953頁,1999年」に記載された方法で合成した)0.02質量部、並びにジエチレングリコールエチルメチルエーテル200質量部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、攪拌しつつ80℃にて4時間反応させて重合反応液を得た。
そして、得られた重合反応液をオートクレーブに入れて、150℃、水素圧4MPaで、5時間攪拌して水素化反応を行い、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)を含む重合体溶液を得た。得られたプロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)の重合転化率は99.7質量%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7150、数平均分子量は4690、分子量分布は1.52、水素添加率は、99.7モル%であった。また、得られたプロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)の重合体溶液の固形分濃度は34.4質量%であった。
<樹脂組成物の調製>
極性基を有する環状オレフィン重合体(A)としての、合成例1で得られたプロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)を含む重合体溶液291部(プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)として100部)と、ポリロタキサン(B)としての、スーパーポリマーSH1300P(アドバンスドソフトマテリアルズ社製、重量平均分子量:180,000)3部と、架橋剤(C)としての、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(商品名「エポリードGT401」、ダイセル社製、脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂)50部と、同じく架橋剤(C)としての、アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物であるN,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサメトキシメチルメラミン(製品名「ニカラックMW-100LM」、三和ケミカル社製)10部と、光酸発生剤(D)としての4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸クロライド(1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド)とのエステル体(2.0モル体)(東洋合成社製、製品名「TS200」)35部と、シランカップリング剤(E)としての3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、製品名「KBM-573」)2部と、溶剤としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル80部とを混合し、溶解させた後、孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して、樹脂組成物を調製した。
そして、得られた樹脂組成物を用いて上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
ポリロタキサン(B)としての、スーパーポリマーSH1300Pの配合量を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
ポリロタキサン(B)として、重量平均分子量が400,000であるスーパーポリマーSH2400P(アドバンスドソフトマテリアルズ社製)を6部配合した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
架橋剤(C)として、更に、イソシアネート基を2つ以上有する化合物であるブロックイソシアネート(製品名「SBN-70D」、旭化成ケミカルズ社製、固形分70%のジプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)14.3部(ブロックイソシアネート化合物換算で10部)を配合した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
ポリロタキサン(B)として、重量平均分子量が700,000であるスーパーポリマーSH3400P(アドバンスドソフトマテリアルズ社製)を6部配合した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
架橋剤(C)として、更に、イソシアネート基を2つ以上有する化合物であるブロックイソシアネート(製品名「SBN-70D」、旭化成ケミカルズ社製、固形分70%のジプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)28.6部(ブロックイソシアネート化合物換算で20部)20部を配合した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
架橋剤(C)として、更に、イソシアネート基を2つ以上有する化合物であるブロックイソシアネート(製品名「SBN-70D」、旭化成ケミカルズ社製、固形分70%のジプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)57.2部(ブロックイソシアネート化合物換算で40部)を配合した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
ポリロタキサン(B)を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
ポリロタキサン(B)を配合せず、代わりに、従来的な添加剤であるビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂(商品名「jER YX8100BH30」、三菱化学社製、固形分30%のシクロヘキサノンとメチルエチルケトンの混合溶液)33.3部(固形分換算で10部)を配合した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
また、特に、実施例1,4,6の比較により、ポリロタキサン(B)として配合した化合物の分子量が比較的大きい場合であっても、得られる樹脂膜に充分に高い現像残渣抑制効果を付与することができたことが分かる。
また、特に、実施例1,5,7,8の比較により、架橋剤(C)としてさらにイソシアネート化合物を適量配合することで、得られる樹脂膜の伸長性を一層高めることができることが分かる。
また、本発明によれば、高性能な電子部品を提供することができる。
Claims (9)
- プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A)、ポリロタキサン(B)、及び架橋剤(C)を含有する樹脂組成物。
- 前記ポリロタキサン(B)の含有量が、前記プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100質量部当たり、1質量部以上15質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリロタキサン(B)の重量平均分子量が、1,000,000以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- 前記架橋剤(C)として、エポキシ基含有化合物、アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物、メチロール基を2つ以上有する化合物、及びイソシアネート基を2つ以上有する化合物のうちの少なくとも一種を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記架橋剤(C)として、少なくとも前記イソシアネート基を2つ以上有する化合物を含むことを特徴とする、請求項4に記載の樹脂組成物。
- 光酸発生剤(D)を更に含有する、請求項1~5の何れかに記載の樹脂組成物。
- 前記光酸発生剤(D)として、キノンジアジド化合物を含有する、請求項6に記載の樹脂組成物。
- シランカップリング剤(E)を更に含有する、請求項1~7の何れかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1~8の何れかに記載の樹脂組成物からなる樹脂膜を備える、電子部品。
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