JP7084578B2 - 摺動部材及びその製造方法 - Google Patents
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[1]炭化ケイ素15~85質量%及び炭化ホウ素15~85質量%(但し、前記炭化ケイ素と前記炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する複合セラミックスからなる基材と、前記基材の少なくとも一部の表面上に形成されたホウ素を含む酸化物を含有する摺動層と、を備え、前記摺動層の表面が摺動面であるとともに、JIS R 1613:2010に準拠して測定される前記摺動面の初期の摩擦係数が0.3以下である摺動部材。
[2]前記複合セラミックスが、前記炭化ケイ素20~80質量%及び前記炭化ホウ素20~80質量%(但し、前記炭化ケイ素と前記炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する前記[1]に記載の摺動部材。
[3]前記摺動面の初期の摩擦係数が0.2以下である前記[1]又は[2]に記載の摺動部材。
[4]前記摺動面に水が浸入する条件下で使用されるメカニカルシールである前記[1]~[3]のいずれかに記載の摺動部材。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の摺動部材の製造方法であって、炭化ケイ素15~85質量%及び炭化ホウ素15~85質量%(但し、前記炭化ケイ素と前記炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する複合セラミックスからなる基材を熱処理し、前記基材の少なくとも一部の表面上にホウ素を含む酸化物を含有する摺動層を形成する工程を有する摺動部材の製造方法。
[6]前記基材を、酸素を含む環境下で850~1,100℃で熱処理する前記[5]に記載の摺動部材の製造方法。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の摺動部材は、複合セラミックスからなる基材と、この基材の少なくとも一部の表面上に形成されたホウ素を含む酸化物を含有する摺動層と、を備える。基材を構成する複合セラミックスは、炭化ケイ素(SiC)15~85質量%及び炭化ホウ素(B4C)15~85質量%(但し、炭化ケイ素と炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する。そして、本発明の摺動部材は、摺動層の表面が摺動面であるとともに、JIS R 1613:2010に準拠して測定される摺動面の初期の摩擦係数が、0.3以下である。以下、本発明の摺動部材の詳細について説明する。本明細書において、「~」を用いて数値範囲を表す場合、その両端の数値を含むものとする。
本発明の摺動部材を構成する基材は、複合セラミックスで形成されている。この複合セラミックスは、炭化ケイ素(SiC)15~85質量%及び炭化ホウ素(B4C)15~85質量%(但し、SiCとB4Cの合計を100質量%とする)を含有し、好ましくは炭化ケイ素20~80質量%及び炭化ホウ素20~80質量%、さらに好ましくは炭化ケイ素30~70質量%及び炭化ホウ素30~70質量%を含有する。炭化ケイ素と炭化ホウ素を上記の比率で含む複合セラミックスからなる基材とすることで、炭化ケイ素や炭化ホウ素の特性が有効に発揮され、硬度等の特性に優れた摺動部材とすることができる。また、試行錯誤の末、本発明者らは、上記の複合セラミックスからなる基材を熱処理(後述)することで、基材の少なくとも一部の表面上にホウ素を含む酸化物を含有する特定の摺動層を形成可能であることを見出した。
摺動層は基材の少なくとも一部の表面上に形成された、ホウ素を含む酸化物を含有する層である。そして、この摺動層の表面は、JIS R 1613:2010に準拠して測定される初期の摩擦係数が0.3以下、好ましくは0.2以下の摺動面である。本発明の摺動部材は、特定の酸化物を含有する摺動層の表面を摺動面とするため、水潤滑条件下での摺動と無潤滑条件下での摺動とを繰り返す場合であっても生ずる摩擦抵抗が低く、長期間運転に適用することができる。特定の酸化物を含有する摺動層の表面を摺動面とすることで上記のような効果が得られる理由につき、本発明者らは以下のように推測している。
次に、本発明の摺動部材の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とも記す)について説明する。本発明の製造方法は、上述の摺動部材の製造方法であり、炭化ケイ素15~85質量%及び炭化ホウ素15~85質量%(但し、炭化ケイ素と炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する複合セラミックスからなる基材を熱処理し、基材の少なくとも一部の表面上にホウ素を含む酸化物を含有する摺動層を形成する工程(熱処理工程)を有する。以下、その詳細について説明する。
熱処理工程では、まず、炭化ケイ素と炭化ホウ素を所定の比率で含有する複合セラミックスからなる基材を用意する。基材を構成する複合セラミックスを得るには、例えば、炭化ケイ素粉末と、炭化ホウ素粉末とを所望とする質量比で混合して原料粉末を調製する。原料粉末中の炭化ケイ素粉末の含有量は15~85質量%であり、好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは25~75質量%である。原料粉末中の炭化ケイ素粉末の含有量を上記範囲内とすることで、炭化ケイ素15~85質量%及び炭化ホウ素15~85質量%(但し、炭化ケイ素と炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する複合セラミックスを得ることができる。なお、必要に応じて、カーボンブラック等の焼結助剤を原料粉末に添加してもよい。
(実施例1)
炭化ケイ素の粉末(純度:99質量%、屋久島電工社製)、及び炭化ホウ素の粉末(純度:99.5質量%(酸素含有量1.2%、窒素含有量0.2質量%を除く)、H.S.Starck社製)を用意した。これらの粉末を、炭化ケイ素の含有量が40質量%、及び炭化ホウ素の割合が60質量%となるように混合して混合粉末を得た。得られた混合粉末100質量部に対して、カーボンブラック3質量部を焼結助剤として添加した後、炭化ケイ素製のボールを用いたボールミルで4時間混合し、乾燥後に整粒して原料粉末を得た。得られた原料粉末を一軸加圧(100kgf/cm2)により予備成形した後、冷間静水等方圧プレス(CIP)により150MPaで加圧して成形体を得た。アルゴン(Ar)雰囲気下、得られた成形体を2,300℃で焼成して焼成体(複合セラミックスからなる基材)を得た。得られた焼成体の一部を粒径1μmのダイヤモンド砥粒を用いて鏡面加工して加工面を形成した。加工面を形成した焼成体を電気炉に入れ、大気雰囲気下、1,000℃で1時間熱処理して、摺動面を有する摺動層が形成された摺動部材を得た。
炭化ケイ素の含有量が97質量%及び炭化ホウ素の割合が3質量%となるように、炭化ケイ素の粉末と炭化ホウ素の粉末を混合して混合粉末を得たこと以外は、前述の実施例1と同様にして摺動部材を得た。実施例1と同様にラマン分光法により分析して得られたラマンスペクトルを図1Bに示す。図1Bに示すように、炭化ホウ素(B4C)及び炭化ケイ素(SiC)に帰属されるピークがそれぞれ検出されたが、ホウ酸(H3BO3)等のホウ素を含む酸化物に帰属されるピークが検出されなかったことがわかる。
炭化ケイ素の含有量が80質量%及び炭化ホウ素の割合が20質量%となるように、炭化ケイ素の粉末と炭化ホウ素の粉末を混合して混合粉末を得たこと以外は、前述の実施例1と同様にして摺動部材を得た。実施例1と同様にラマン分光法により分析し、ホウ素を含む酸化物を含有する摺動層が形成されたことを確認した。
炭化ケイ素の含有量が60質量%及び炭化ホウ素の割合が40質量%となるように、炭化ケイ素の粉末と炭化ホウ素の粉末を混合して混合粉末を得たこと以外は、前述の実施例1と同様にして摺動部材を得た。実施例1と同様にラマン分光法により分析し、ホウ素を含む酸化物を含有する摺動層が形成されたことを確認した。
炭化ケイ素の含有量が20質量%及び炭化ホウ素の割合が80質量%となるように、炭化ケイ素の粉末と炭化ホウ素の粉末を混合して混合粉末を得たこと以外は、前述の実施例1と同様にして摺動部材を得た。実施例1と同様にラマン分光法により分析し、ホウ素を含む酸化物を含有する摺動層が形成されたことを確認した。
炭化ケイ素の含有量が3質量%及び炭化ホウ素の割合が97質量%となるように、炭化ケイ素の粉末と炭化ホウ素の粉末を混合して混合粉末を得たこと以外は、前述の実施例1と同様にして摺動部材を得た。実施例1と同様にラマン分光法により分析し、ホウ素を含む酸化物を含有する摺動層が形成されたことを確認した。
(摩擦試験及び摩擦係数の測定)
トライボメータ(商品名「ピンオンディスクトライボメータ(TRB)」、Anton Paar社製)を使用し、JIS R 1613:2010に準拠した方法に従い、無潤滑下の摺動と、JIS R 1691:2011に準拠した方法に従い、潤滑下の摺動を交互に繰り返す摩擦試験を行い、製造した各摺動部材の摺動面の摩擦係数を測定した。摩擦試験の具体的な条件を以下に示す。また、各摺動部材の摩擦試験の結果を示すグラフを図2~7(図2:実施例1、図3:比較例1、図4:実施例2、図5:実施例3、図6:実施例4、図7:比較例2)に示す。
・ピン(ボール)の材質:炭化ケイ素
・ピン(ボール)の直径:10mm
・荷重:5N
・周速:0.1m/sec
・条件:無潤滑、潤滑
・潤滑流体:蒸留水
・摺動距離:100m(無潤滑)、1,000m(潤滑)
Claims (6)
- 炭化ケイ素15~85質量%及び炭化ホウ素15~85質量%(但し、前記炭化ケイ素と前記炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する複合セラミックスからなる基材と、
前記基材の少なくとも一部の表面上に形成されたホウ素を含む酸化物を含有する摺動層と、を備え、
前記摺動層の表面が摺動面であるとともに、JIS R 1613:2010に準拠して測定される前記摺動面の初期の摩擦係数が0.3以下である摺動部材。 - 前記複合セラミックスが、前記炭化ケイ素20~80質量%及び前記炭化ホウ素20~80質量%(但し、前記炭化ケイ素と前記炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する請求項1に記載の摺動部材。
- 前記摺動面の初期の摩擦係数が0.2以下である請求項1又は2に記載の摺動部材。
- 前記摺動面に水が浸入する条件下で使用されるメカニカルシールである請求項1~3のいずれか一項に記載の摺動部材。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の摺動部材の製造方法であって、
炭化ケイ素15~85質量%及び炭化ホウ素15~85質量%(但し、前記炭化ケイ素と前記炭化ホウ素の合計を100質量%とする)を含有する複合セラミックスからなる基材を熱処理し、前記基材の少なくとも一部の表面上にホウ素を含む酸化物を含有する摺動層を形成する工程を有する摺動部材の製造方法。 - 前記基材を、酸素を含む環境下で850~1,100℃で熱処理する請求項5に記載の摺動部材の製造方法。
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